説明

可撓性燃料タンク容器用ポリエチレン及び可撓性燃料タンク容器

【課題】耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性ともにバランスよく改良された燃料タンク容器用材料、特に車両用の内容積が変化する燃料室を有する可撓性燃料タンクの袋状の容器等に好適な可撓性材料、およびそれを用いてなる可撓性燃料タンク容器を提供する。
【解決手段】下記の特性(1)〜(5)を満足することを特徴とする可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンなどを提供した。
特性(1):密度が0.910g/cm以上0.940g/cm以下である。
特性(2):190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(HLMFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下である。
特性(3):曲げ弾性率が300MPa以上700MPa以下である。
特性(4):温度−40℃の引張衝撃強度が300kJ/m以上800kJ/m以下である。
特性(5):温度190℃、引取り速度4.0m/分により測定した溶融張力が10g以上100g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性燃料タンク容器用ポリエチレン及び可撓性燃料タンク容器に関し、さらに詳しくは、耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性ともにバランスよく改良された燃料タンク容器用材料、特に車両用の内容積が変化する燃料室を有する可撓性燃料タンクの袋状の容器等に好適な可撓性材料、およびそれを用いてなる可撓性燃料タンク容器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンク内の燃料液上方の空間には燃料蒸気が存在し、該空間が大気と連通すると、燃料蒸気が大気に放出されてしまう。そこで、こうした大気に放出される燃料量の低減を図るため、燃料タンク内の燃料量に応じて内容積が変化する燃料室を具備した燃料タンクが提案されている。
例えば、特許文献1(特開平08−091060号公報)には、タンク内部での燃料蒸気の発生を抑制し、給油時での蒸気放散を防止できる燃料タンクが開示されており、該燃料タンクの袋体の材料としてナイロンフィルム又は塩化ビニリデンフィルムを耐油性ゴムで挟み込んだ積層材料が提案されている。
また、特許文献2(特開平08−170568号公報)には、燃料タンク内において燃料注入管から注入された燃料が貯留されて形成される燃料貯留部と、該燃料貯留部と燃料タンク内壁の間に形成される空間部のいずれか一方を可撓性材料からなる袋状の伸縮膜で包囲して互いに分離せしめた車両用燃料貯留装置が提案されている。
さらに、特許文献3(特開平11−013571号公報)には、加圧流体の導入口と、燃料吐出口とを互いに反対側に設けた剛体容器内に、燃料吐出口に連通する可撓性材料から成る膨張収縮可能なブラダーを収容し、かつ該ブラダーの膜厚を順次厚く形成した構造の燃料タンクが提案されている。
【0003】
このように、内容積が変化する燃料室を有する燃料タンクは、燃料量に応じて内容積が変化する袋状の容器を具備し、その容器には可撓性材料が用いられている。そして、可撓性材料としては様々な材料が検討されているが、いまだ燃料タンク用に適した特性を有する材料が存在していないことから、耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性ともに満足し、更に性能の改善されたものが求められている。
例えば、ポリオレフィン系材料の中でもポリエチレンは、耐薬品性、安定性などに優れた材料であり、容器用材料として広く使用されており、燃料タンク用の可撓性材料としても適用可能であるが、伸縮性、強度及び成形性について、更にバランスよく改良された材料が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開平08−091060号公報
【特許文献2】特開平08−170568号公報
【特許文献3】特開平11−013571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性ともにバランスよく改良された燃料タンク容器用材料、特に車両用の内容積が変化する燃料室を有する可撓性燃料タンクの袋状の容器等に好適な可撓性材料を提供すること、さらには、それを用いることにより従来よりも一段と耐久性、信頼性が高められた可撓性燃料タンク容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、燃料タンクの要求特性に十分に適合できる材料について鋭意研究を重ねた結果、特定の性質を備えたポリエチレン材料を選定すると、それにより耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性のバランスに優れた燃料タンクを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の特性(1)〜(5)を満足することを特徴とする可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンが提供される。
特性(1):密度が0.910g/cm以上0.940g/cm以下である。
特性(2):190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(HLMFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下である。
特性(3):曲げ弾性率が300MPa以上700MPa以下である。
特性(4):温度−40℃の引張衝撃強度が300kJ/m以上800kJ/m以下である。
特性(5):温度190℃、引取り速度4.0m/分により測定した溶融張力が10g以上100g以下である。
【0008】
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、下記の成分(A)20〜80重量%と、成分(B)80〜20重量%とからなることを特徴とする可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンが提供される。
成分(A):密度が0.940g/cm以上0.970g/cm以下、HLMFRが1g/10分以上20g/10分以下のポリエチレン。
成分(B):密度が0.880g/cm以上0.940g/cm以下、HLMFRが10g/10分以上100g/10分以下のポリエチレン。
【0009】
本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明に係るポリエチレンを用いてなる可撓性燃料タンク容器が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性のバランスに優れた可撓性燃料タンク容器用材料、特に車両用の内容積が変化する燃料室を有する燃料タンクの袋状の容器に好適な可撓性材料が得られる。本発明の可撓性材料を用いると、それを装着した燃料タンクの耐久性や信頼性が従来よりもさらに改善するため、産業上の有用性は非常に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンの密度は、0.910g/cm以上0.940g/cm以下、好ましくは0.915g/cm以上0.935g/cm以下、さらに好ましくは0.920g/cm以上0.930g/cm以下である。
密度は、JIS−K6922−1,2に準拠し測定されるもので、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し厚み2mmのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ測定される。
密度が0.910g/cm未満であると、成形品の剛性不足が顕在化し、0.940g/cmを超えると衝撃性能が不足する。
密度は、エチレンと共重合させるα−オレフィンの量を変化させることによって調整することができ、α−オレフィンの量を増加させると小さくすることができる。
【0012】
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンの190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(HLMFR)は、1.0g/10分以上50g/10分以下、好ましくは1.5g/10分以上45g/10分以下、さらに好ましくは2.0g/10分以上40g/10分以下である。
メルトフローレート(HLMFR)(温度190℃、荷重21.6kg)は、JIS−K6922−1,2に準拠して測定されるもので、1.0g/10分未満であると、成形時に押し出し量が不足し、成形不安定な状態となり実用的では無い。また、50g/10分を超えると押し出し成形時に押出量が不安定となり実用的では無い。
HLMFRは、エチレン重合中に共存させる水素の量を変化させるか、重合温度を変化させること等によって調整することができ、水素の量を増加させる又は重合温度を高くすることにより大きくすることができる。
【0013】
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンの曲げ弾性率は、300MPa以上700MPa以下、好ましくは310MPa以上690MPa以下、さらに好ましくは320MPa以上680MPa以下である。曲げ弾性率はJIS−K6922−1,2に準拠して測定されるもので、300MPa未満では液充満時に大きく変形し、700MPaを超えると伸縮性が低下する傾向となる。
曲げ弾性率は、ポリエチレンの密度および分子量を調整することによって調整することができ、密度を大きくすると大きくすることができる。
【0014】
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンの温度−40℃の引張衝撃強度は、300kJ/m以上800kJ/m以下、好ましくは310kJ/m以上790kJ/m以下、さらに好ましくは320kJ/m以上780kJ/m以下である。温度−40℃の引張衝撃強度はASTM D 1822に準拠して測定されるもので、300kJ/m未満では落下時の強度が低下する傾向にある。
引張衝撃強度は、ポリエチレンの密度とHLMFRによって調整することができ、密度を大きくするかHLMFRを小さくすると大きくすることができる。
【0015】
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンの温度190℃、引取り速度4.0m/分により測定した溶融張力は、10g以上100g以下、好ましくは11g以上80g以下、さらに好ましくは11g以上50g以下である。溶融張力は、東洋精機製作所社製キャピログラフを使用し、ノズル径2.095mmφ、ノズル長8.00mm、流入角180°、設定温度190℃で、ピストン押出速度10.0mm/分、引取速度4.0m/分の条件で測定され、10g未満では成形時のドローダウンが大きくなり成形しにくくなる傾向にある。
溶融張力は、ポリエチレンに含まれる長鎖分岐の量によって調整することができ、通常、長鎖分岐の量を多くすると大きくすることができる。
【0016】
本発明のポリエチレンは、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の公知の触媒を用いてエチレンを主として重合することによって得られる。本発明のポリエチレンは、エチレンの重合に際してエチレン単独重合またはエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンから選ばれる1種またはそれ以上のコモノマーを所定の密度になるように共重合することにより得られる。共重合するα−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられるが、耐久性ならびに経済性の見地からは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が好ましい。
【0017】
本発明のポリエチレンの具体的なものを例示すれば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0018】
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンは、単一のポリエチレンでもよいが、複数、例えば異なる二種類の物性を有するポリエチレン成分から構成することもできる。
特に、下記成分(A)20〜80重量%及び成分(B)80〜20重量%からなるものが可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンとして好適である。
成分(A):密度が0.940g/cm以上0.970g/cm以下、HLMFRが1g/10分以上20g/10分以下のポリエチレン。
成分(B):密度が0.880g/cm以上0.940g/cm以下、HLMFRが10g/10分以上100g/10分以下のポリエチレン。
【0019】
上記成分(A)の密度が、0.940g/cm未満では耐燃料油性が低下するおそれがあり、0.970g/cmを超えたものは製造が難しい。また、上記成分(A)のHLMFRが、1g/10分未満の場合は成形が難しくなり、20g/10分を超えると耐久性ならびに耐衝撃性が低下する傾向にある。
さらに、上記成分(B)の密度が、0.880g/cm未満では耐燃料油性が低下し、0.940g/cmを超えると耐衝撃性ならびに耐久性が低下する傾向にある。また、上記成分(B)のHLMFRが10g/10分未満の場合は成形性が不十分となり、100g/10分を超えると耐久性が低下する傾向がある。
上記成分(A)の割合が20重量%未満の場合(上記成分(B)の割合が80重量%を超える場合)、成形性が低下する傾向があり、上記成分(A)の割合が80重量%を超える場合(上記成分(B)の割合が20重量%未満の場合)、可撓性が低下する傾向にある。
【0020】
成分(A)のポリエチレンは、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の公知の触媒を用いてエチレン及びα−オレフィンを重合することによって得られ、好ましくはフィリップス触媒を用いて製造された高密度ポリエチレンが好適である。
成分(B)のポリエチレンは、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の公知の触媒を用いてエチレン及びα−オレフィンを重合することによって得られ、好ましくはメタロセン系触媒を用いて製造されたポリエチレンが好適である。さらに、メタロセン系触媒を用いて製造されたポリエチレンの中でも、特開平08−325333号公報、特開平09−025317号公報に記載の実施例中のポリエチレンは、特定の分子量分布(Mw/Mn)、組成分布パラメーター(Cb)、連続昇温溶出分別法(TREF)による特定の溶出温度−溶出量曲線を有するものであり、ガソリン耐久性の改良効果が優れているため好ましい。特に、分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4.5、好ましくは1.8〜3.5のものや、組成分布パラメーター(Cb)が1.08〜2.00のものや、連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個のものが好ましい。
【0021】
本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンには、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種公知の添加剤、充填材等を適宜の量で添加できる。
添加剤としては、例えば酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、着色剤、顔料、染料、紫外線吸収剤等を1種または2種以上適宜併用することができる。充填材としては、例えばタルク、マイカ等が使用できる。また、本発明のポリエチレンは、必要に応じて無水マレイン酸変性等をしたり、或いは無水マレイン酸変性ポリエチレン等を併用することもできる。
【0022】
本発明のポリエチレンを用いると、各種容器を成形することができ、工業薬品缶、ドラム缶、燃料タンク等、特に内容積が変化する燃料室を有する可撓性燃料タンク容器用の材料として好適であり、袋状の中空容器とすることができる。
【0023】
本発明の可撓性燃料タンク容器は、各種の成形方法で成形可能であり、必要に応じてブロー成形法以外の成形方法により成形品とすることもできるが、好ましくはブロー成形により好適に製造することができ、本発明の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレンを用いることにより、低温かつ高速でブロー成形することができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各種の物性は以下の方法で測定した。
(1)密度:JIS−K6922−1,2に準拠して測定した。
(2)190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(HLMFR):JIS−K6922−1,2に準拠して測定した。
(3)曲げ弾性率:JIS−K6922−1,2に準拠して測定した。
(4)温度−40℃の引張衝撃強度:ASTM D 1822に準拠して測定した。
(5)溶融張力:東洋精機製作所社製キャピログラフを使用し、ノズル径2.095mmφ、ノズル長8.00mm、流入角180°、設定温度190℃で、ピストン押出速度10.0mm/分、引取速度4.0m/分の条件で測定した。
(6)ドローダウン(成形性):ダイ/コア径が300/290mmφの日本製鋼所社製多層中空成形機NB150を使用し、樹脂温210℃、重量8kg、長さ1500cmのパリソンを押出量200kg/hrで押し出し、時間経過によるパリソンの長さ変化を測定した。パリソンを形成する際、パリソン長300mmに達する時間(T300)とパリソン長1500mmに達する時間(T1500)を測定し、T1500/T300の割合をドローダウンの指標とした。
(7)製品外観(可撓性):上記日本製鋼所社製多層中空成形機NB150を使用し、樹脂温210℃で、製品重量4kgの500mm×500mm×10mmの中空容器を成形した後、該中空容器に25℃の水を40L充填し、漏れのない状態で成形品表面の変形有無を確認し、水40Lの充填が可能で変形がないものを○、大きな変形があるものを×とした。
(8)落下試験:上記日本製鋼所社製多層中空成形機NB150を使用し、樹脂温210℃で、製品重量4kgの500mm×500mm×10mmの中空容器を成形した後、該中空容器にエチレングリコール50重量%水溶液を40L充填し、−40℃、6mの高さから垂直に落下させ、異常の有無を確認し、異常がないものを○、異常があるものを×とした。
【0025】
(実施例1)
フィリップス触媒を用いて製造したポリエチレン(密度が0.945g/cm、HLMFRが6g/10分)70重量%、メタロセン系触媒を用いて製造したポリエチレン(密度が0.906g/cm、HLMFRが6g/10分)30重量%を溶融混練し、密度が0.933g/cm、HLMFRが9g/10分、曲げ弾性率が600MPa、温度−40℃の引張衝撃強度が500kJ/m、温度190℃、引取り速度4.0m/分により測定した溶融張力が14gのポリエチレンを製造した。
上記メタロセン系触媒を用いて製造したポリエチレンは、特開平08−325333号公報号公報に記載の実施例に準じて製造され、分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜4.5の範囲内、組成分布パラメーター(Cb)が1.08〜2.00の範囲内、連続昇温溶出分別法(TREF)による溶出温度−溶出量曲線のピークが複数個のものを用いた。
得られたポリエチレンについて、各種性能試験を行なった結果を表1に示した。
【0026】
(実施例2〜3)
表1に示すポリエチレンを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示した。可撓性燃料タンク容器としての適性は良好であった。
【0027】
(比較例1〜4)
表1に示すポリエチレンを用いた以外は、実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示した。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、実施例1、2のポリエチレンは、本発明に規定する特性を有するため、可撓性燃料タンク容器としての適性が良好である。
一方、比較例1のポリエチレンでは、剛性が高過ぎるため可撓性が足りず40Lを注入することができず、比較例2のポリエチレンでは、ドローダウンが大きく成形品が得られず、比較例3のポリエチレンでは、落下強度が劣っており、比較例4のポリエチレンでは、剛性が足りないため成形品の変形が大きく側面が変形してしまい、可撓性燃料タンク容器としての適性はそれぞれ不適である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のポリエチレンは、耐薬品性のみならず伸縮性、強度、耐久性、成形性のバランスに優れた可撓性材料であるため、特に車両用の内容積が変化する燃料室を有する燃料タンクの袋状の容器として好適に使用することができる。そして本発明の可撓性材料を用いると、それを装着した燃料タンクの耐久性や信頼性が従来よりもさらに改善するため、産業上の有用性は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の特性(1)〜(5)を満足することを特徴とする可撓性燃料タンク容器用ポリエチレン。
特性(1):密度が0.910g/cm以上0.940g/cm以下である。
特性(2):190℃、21.6kg荷重におけるメルトフローレート(HLMFR)が1.0g/10分以上50g/10分以下である。
特性(3):曲げ弾性率が300MPa以上700MPa以下である。
特性(4):温度−40℃の引張衝撃強度が300kJ/m以上800kJ/m以下である。
特性(5):温度190℃、引取り速度4.0m/分により測定した溶融張力が10g以上100g以下である。
【請求項2】
下記の成分(A)20〜80重量%と、成分(B)80〜20重量%とからなることを特徴とする請求項1に記載の可撓性燃料タンク容器用ポリエチレン。
成分(A):密度が0.940g/cm以上0.970g/cm以下、HLMFRが1g/10分以上20g/10分以下のポリエチレン。
成分(B):密度が0.880g/cm以上0.940g/cm以下、HLMFRが10g/10分以上100g/10分以下のポリエチレン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエチレンを用いてなる可撓性燃料タンク容器。

【公開番号】特開2009−155492(P2009−155492A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335711(P2007−335711)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】