説明

可撓性関節移植片

【課題】関節の全体的な補修を必要とすることなく、関節の一部を置換する移植片を提供することにある。
【解決手段】滑車溝を補修する滑車溝移植片は、関節支持面と、骨対抗面と、それらの間に延在する縁とを有する本体を備えている。関節支持面は、健常な滑車溝の一部を模倣するように構成されている。この移植片は、本体から外方に延在する少なくとも1つの係留機構をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、関節用の置換装置に関する。本発明が特に適するこのような1つの関節は、大腿骨の滑車溝である。本発明は、種々の関節と関連して用いられ得るが、膝関節に関して、説明する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの膝関節は、主に、大腿骨、頚骨、および膝蓋骨と解剖学的に呼ばれる3つの部分を含んでいる。膝関節は、さらに2つの関節、すなわち、(膝の皿と大腿骨の遠位側前面との間に位置する)膝蓋骨−大腿骨関節と、(大腿骨と頚骨との間に位置する)頚骨−大腿骨関節に、さらに細分されている。
【0003】
脚を普通に伸ばすと、膝蓋骨は、大腿骨の遠位側前面に位置する溝内において大腿骨に対して滑ることになる。この溝は、滑車溝と呼ばれる。大腿骨に対する膝蓋骨の移動に関して、いくつかの種類の異常が生じることがある。例えば、膝蓋骨は、脱臼、すなわち、所定の場所からの脱落、破損、またはトラッキングの問題を生じることがある。通常、膝蓋骨は、滑車溝の中心領域内を通り、かつその領域内で滑る。大腿骨に対して滑るときに、膝蓋骨がもはや溝内に芯合わせされていない場合、トラッキングの問題が生じる。その結果として生じる異常な生体力学によって、関節の慢性的な苦痛が生じ、もし治療されないままにされている場合、変形性関節炎を引き起こすことがある。滑車溝が位置する大腿骨の遠位端は、関節軟骨によって覆われている。この軟骨は、大腿骨と頚骨との間のクッションとして機能している。膝関節の関節炎では、関節軟骨が、前述の異常な磨耗、または損傷、老化、先天性体質、炎症性関節炎、または肥満のいずれかによって、損なわれる。この軟骨が損なわれると、クッション性が失われ、その結果、痛み、腫れ、骨刺激生成、および/または膝関節の運動範囲の縮小が生じることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
損傷した後、その損傷した軟骨は治療できないので、膝蓋骨を含む単顆疾患を患う患者に対する治療の範囲は、制限されている。最も一般的な所定の治療として、軟組織の離脱および/または膝蓋骨の腱の再配置、膝蓋骨を完全に除去する膝蓋骨切除法、または安定化膝蓋骨−大腿骨−頚骨プロテーゼによる人工膝関節置換術が挙げられる。場合によっては、これらの手術のいずれも、望ましくないかまたは効果的でないことがある。例えば、軟組織手術は、目的通りには行なわれないことがある。膝蓋骨切除法を受けた患者は、関節を一緒に保持する働きをする膝の皿が失われているので、部分的に活動不能になる。加えて、これらの患者は、残余の腱が溝の上を直接移動して接触することによって、依然として苦痛を受けることが多い。規格プロテーゼによる人工膝関節置換術も理想から程遠い。何故なら、大腿骨の殆どが、大腿骨の遠位面を規格プロテーゼに嵌合させるために、削り取られねばならないからである。加えて、患者は、多くの場合、若いので、プロテーゼの置換を必要とする傾向にある。各補修手術は、さらに困難である。従って、膝蓋骨/大腿骨膝関節の変形性関節炎を患う患者の良好な治療が、依然として必要とされている。
【0005】
類似の関節も、膝について述べたのと同様の課題を有し、従って、関節の全体的な補修を必要とすることなく、関節の一部を置換するさらなる選択肢が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
滑車溝移植片は、関節支持面と、骨対向面と、それらの間に延在する縁とを有する本体を備えている。関節支持面は、健常な滑車溝の一部を模倣するように、構成されている。移植片は、本体から外方に延在する少なくとも1つの係留機構をさらに備えている。少なくとも1つの係留機構は、本体に少なくとも部分的に取り付けられている。本体を骨に係留するために、この少なくとも1つの係留機構が、本体内に配置されているとよい。
【0007】
関節支持面は、滑車溝のかなりの部分と類似する形状を有することが可能である。この場合、滑車溝移植片は、移植されると、患者の滑車溝の外側から滑車溝の内側に延在することになる。滑車溝移植片の本体は、大腿の前皮質骨から大体骨の顆間窪みに実質的に延在してもよく、および/または移植片は、滑車溝のしわ内に配置されていてもよい。
【0008】
滑車溝移植片の本体は、滑車溝の外側または内側の関節面の一部と類似する形状を有してもよい。この場合、移植片の本体は、滑車溝の外側または滑車溝の内側のいずれかに隣接して移植され、本体の関節支持面は、滑車溝の片側に沿ってのみ延在している。
【0009】
本発明の一態様では、少なくとも1つの係留機構は、本体と係合する第1部分と、骨成長を可能とするのに充分な多孔率を有する第2部分とを備えている。他の態様では、少なくとも1つの係留機構は、本体と一体に形成される第1部分と、該第1部分に離脱可能に取り付けられる第2部分とを備えている。第2部分は、滑車溝に形成された凹部内に配置されているとよい。第1部分は、第2部分と離脱可能に係合されるとよい。この場合、必要に応じて、第1部分を第2部分から離脱させ、係留機構の第1部分を含む本体を取り外すことが可能となっている。
【0010】
本発明の代替的態様では、滑車溝を補修する方法が開示されている。この方法は、移植片受入れ領域を滑車溝に形成することによって、移植片を受入れる滑車溝を準備することを含んでいる。この方法は、移植片を移植片受入れ領域に挿入することをさらに含んでいる。移植片は、健常な滑車溝関節面を模倣するように移植片受入れ領域内に配置される関節支持面を有している。移植片は、該移植片を移植片受入れ領域に係留する係留装置をさらに備えている。移植片受入れ領域は、滑車溝の外側から滑車溝の内側に延在し、および/または大腿の前皮質骨から顆間窪みに実質的に延在してもよい。また、移植片は、滑車溝のしわ内にのみ配置されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、関節面、特に関節の支持面を、対向する骨部材間の比較的滑らかな相互作用が得られるように、再構成する装置および方法に関するものである。
【0012】
本発明の一態様は、患者の関節の元の運動を可能な限り厳密に再現するため、患者の関節、例えば、膝関節用の置換装置を提供することにある。例えば、この置換装置は、膝の元の関節運動を維持するために、患者の大腿骨の滑車追従パターンを実質的に再現すべきである。これを達成するために、骨の一部と共に健常ではない関節軟骨が除去され、滑車溝を中心とする膝蓋骨の元の関節運動を可能な限り厳密に維持するように、患者の大腿骨に特に適した置換体と取り替えられる。代替的実施形態では、移植片は、健常でない関節軟骨を単純に覆ってもよい。従って、本発明は、「OATS法」および微視破壊過程と関連して用いられるのに適している。いずれの場合も、特定の方法またはプロセスが行なわれた時点で、処理面が、滑らかな関節面をもたらすために、本発明の移植片によって覆われるとよい。
【0013】
本発明の一態様では、置換装置は、膝蓋骨の下面が大腿骨を中心として略2mmから6mmほど関節運動し、これによって、膝蓋骨が健常な関節軟骨上を関節運動する挙動を模倣するように、特に設計されている。上記の特徴は、大腿骨上の自然な滑車溝の外面を模倣する置換装置によって形成される滑車溝を設けることで、達成される。さらに、以下に詳述するように、置換装置の下面は、大腿骨内に部分的に埋め込まれるかまたは大腿骨に隣接して配置されている。この置換装置は、該置換装置をその場に保持することを可能にする係留要素を備えていてもよい。
【0014】
例えば、本発明の態様による整形外科移植片の第1実施形態は、図1および図2に示される可撓性関節移植片10である。可撓性関節移植片10は、特に、滑車溝を再構成するのに適するようになっているが、必要に応じて、他の関節に適するように異なって構成されていてもよい。可撓性関節移植片10は、関節支持面12と、反対側を向く骨接触面14とを備えている。関節支持面12と骨接触面14は、可撓性関節移植片10の本体16を構成している。縁13が、関節支持面12から骨接触面14に延在している。本体16は、ポリマーのような滑らかな材料の薄い層から構成されている。ポリマーの例として、制限はされないが、ポリウレタン、さらに具体的に、ポリカーボネート前駆体に基づくポリウレタン樹脂が挙げられる。また、滑らかな材料は、溶媒キャスト法または射出成形法に用いられるのに特に適応するポリビニルアルコールのようなヒドロゲルであってもよい。好ましい一実施形態では、本体16は、約1mmから6mmの間の厚みを有している。ポリマー製の関節支持面12によって、本体16は、関節構造の面において見出される健常な軟骨の感触および可撓性を模倣することが可能となる。
【0015】
本体16は、単一ポリマーから構成されてもよいが、一種よりも多いポリマーから構成されてもよい。例えば、本体16は、軟質ポリマーが硬質ポリマーの上に配置されるかまたはその逆に配置されるように、層状にされてもよい。また、組成の例として、3層または4層以上の層組成が挙げられる。具体的には、本体は、軟質ポリマー、硬質ポリマー、軟質ポリマー、硬質ポリマーを順次含む構成であってもよい。また、必要に応じて、他の組成であってもよい。
【0016】
また、可撓性関節移植片10は、好ましくは、骨接触面14から外方に延在するペグ(peg)20のような係留機構を備えている。図1に示されるように、本発明の好ましい一実施形態では、3つの係留機構、すなわち、3つのペグ20が、可撓性関節移植片をその移植片が係留される骨に確実に取り付けるために、可撓性関節移植片10に組み込まれている。他の実施形態では、可撓性関節移植片10を係留するのに、種々の数、例えば、1つまたは複数の係留機構が用いられてもよい。
【0017】
本発明の一態様では、本体16とペグ20との間の安定した接続を維持するために、可撓性移植片10の本体16の一部が、ペグ20内に埋め込まれている。この「埋込み」を実現するために、ペグ20は、好ましくは、図3に示されるような格子状構造を有するように構成されている。
【0018】
図3は、ポリマー係合部22、中間部24、および骨成長部26を有するペグ20の実施形態を示している。ポリマー係合部22は、多孔性を有する縦横の格子を形成するように、種々の支柱、壁、ビーム、および付属物から作製されている。ポリマー係合部22の多孔率は、ポリマー本体16がポリマー係合部22の内部および周囲に一体化されるのを最も促進するように、選択されている。好ましい細孔の大きさは、ペグが約6mmの直径を有する場合、約500μmから1200μmの間にあるとよい。ペグの直径が、これよりも小さいかまたは大きいと、それに比例した細孔の大きさが必要とされる。ペグ20の全体についても当てはまるが、ポリマー係合部22は、好ましくは、生体適合性材料、例えば、制限はされないが、チタンまたは同様の金属組織から構成されている。
【0019】
ペグ20のポリマー係合部22と骨成長部26との間に配置される中間部24は、好ましくは、ポリマー係合部22の多孔率よりは著しく小さく、かつポリマー本体16がポリマー係合部22に取り付けられるとき、以下に説明するように、ポリマー材料が骨成長部26と接触することを不能とするのに充分に小さい多孔率を有している。この中間部24は、ポリマー材料が骨成長部26に浸出するのを防ぐ防壁として作用するものである。
【0020】
骨成長部26は、ポリマー係合部22と同様に構成されてもよいが、特定の多孔率を有するように構成されているとよい。骨成長部26の多孔率は、可変であるが、好ましい多孔率は、ペグが骨内に移植されたときに、骨成長部26が周囲組織によって骨成長を促進するように、選択されている。骨成長に適する好ましい細孔の大きさは、約200μmから500μmの間である。
【0021】
ペグ20は、本発明の譲渡人に譲渡された米国特許出願第10/704,270号(表題:レーザで作製される多孔面)、第11/027,421号(表題:勾配多孔性移植片)、第11/295,008号(表題:レーザで作製される多孔面)、および第60/755,260号(表題:レーザで作製される移植片)に記載されているプロセスを用いて、作製されるとよい。これらの特許出願の開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。米国特許出願第10/704,270号において検討されているように、金属構造体、すなわち、ペグは、一層ごとに処理する(layer by layer)プロセスによって構造体を生長させる選択レーザ溶融法または選択焼結法を用いて作製されるとよい。代替的に、ペグ20は、米国特許出願第10/704,270に記載されている代替的プロセスを用いて作製されてもよい。このプロセスでは、中間部24が、ポリマー係合部22と骨成長部26をここでも一層ごとに作製するための基礎または基体として機能している。金属 格子、すなわち、ペグ20を作製する付加的な技術として、本発明の譲渡人に譲渡された「組織用の多孔性金属骨格」という表題の米国特許出願第10/071,667号(この開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする)に開示されているような技術、および「抽出性粒子を用いて形成される多孔性金属物品」という表題で2004年7月22日に出願された国際出願番号PCT/US2005/023118(この開示内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする)において開示されているような当技術分野において周知の付加的な方法が、用いられてもよい。
【0022】
ペグ20は、好ましくは、約2mmから15mmの間の高さを有している。個々の部分の高さは、可変である。例えば、ポリマー係合部22の高さは、1mmから4mmの間にあるとよく、これによって、金属格子が、充分な深さまで本体16内に係合し、本体をペグ20に係留することが可能となっている。骨係合部26は、好ましくは、約1mmから11mmの間の高さを有し、これによって、骨係合部の金属格子が、骨内に充分に埋め込まれ、骨成長を可能にし、ペグ20を周囲骨内に係留することが可能となっている。中間部24は、以下に説明するように、本体16を作製するのに用いられるポリマー材料が骨係合部26に浸出するのを妨げるのに充分な高さであるべきである。
【0023】
ペグ20は、円筒形状で示されているが、多角形のような他の幾何学的形状を有していてもよい。また、ペグ20は、該ペグを骨内に係留する突起または逆とげ状の延長部を有していてもよい。これらの突起は、ペグが骨の孔に容易に入るのを可能にしながら、その孔からの離脱または脱落の可能性を制限するように、下向きに傾斜しているとよい。また、これらの突起は、孔内におけるペグ20の回転を制限するように、横向きに傾斜していてもよい。
【0024】
可撓性関節移植片10を組み立てる方法として、図4に示されるような金型30を用いる射出成形法が用いられるとよい。代替的実施形態(図示せず)では、当技術分野において周知の溶媒キャスト法が用いられてもよい。金型30は、好ましくは、正面34を有する第1部品32と、正面38を有する第2部品36とを備えている。正面34,38は、好ましくは、互いに係合可能であり、これによって、2つの部品32,36を、第1面32の第1面34を第2部品36の第1面38と向き合わせて、互いに隣接させることができる。本発明の一態様では、第1部品32の第1面34は、複数の型38を備えている。各型38は、本体形成部42内に配置される複数の孔40を備えているとよい。本体形成部42は、型38内に窪み、好ましくは、可撓性関節移植片10の骨接触面14と実質的に同等の表面形状を有している。
【0025】
また、第2部品36の第1表面38も、複数の型44を備え、好ましくは、第1部品32の個々の型38に対して個々の型44を備えている。それぞれの部品における2つの型は、雄/雌の関係を有することになる。従って、第1部品32を第2部品36と隣接させ、第1表面34を第1表面38と係合させると、第1部品32の各型38は、第2部品36の対応する型44と係合し、各移植片用の単一型を形成することになる。好ましくは、各型44は、可撓性関節移植片10の関節支持面12の表面形状と実質的に同等の形状を有する型形成部46を有している。
【0026】
この金型30およびその種々の機構を用いて、可撓性関節移植片10を作製することが可能である。可撓性関節移植片10を形成するには、個々のペグ20を、各々、型38内の第1部品32の孔40内に配置する。孔40がペグ20で充填された時点で、第1部品32を第2部品36と係合させる。好ましくは、図示されるように、第1部品32は、凹部48のような係合要素を有し、第2部品34は、突起50を有し、これによって、2つの金型部品の確実な嵌合が可能になる。金型部品を組み合わせた時点で、溶融したポリマー液体材料を金型部品32,36の第1表面34,38内に配置された通路(図示せず)中に導く。この通路によって、溶融ポリウレタンのような溶融ポリマーが、金型部品の外側から金型部品32、36の本体形成部42と型形成部46との間に流れることが可能となる。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、溶融ポリマーは、略210℃の温度を有している。ポリマーの射出圧力は20バール未満であり、プロセス時間は30秒である。溶融したポリマーが金型内に導かれると、金型を密封する。その結果、圧力がポリマーに加えられ、溶融ポリマーが型38の孔40に押し込まれ、さらに詳細には、溶融ポリマーがペグ20のポリマー係合部22の素地内に埋め込まれる。勿論、ポリマーがポリマー係合部22内に押し込まれるとき、中間部24が、骨成長部26内への溶融ポリマーの浸出を防ぎ、これによって、骨成長部26の細孔が液体ポリマーで遮蔽されるのを防ぐ。2つの金型部品32,36間の最適な圧力に達した時点で、ポリマーは、冷却され、固化し、これによって、可撓性関節移植片10の本体16が形成されることになる。
【0028】
ポリマーが硬化した時点で、エジェクタ(図示せず)を用いて、第1部品32を第2部品36から分離する。次いで、こうして形成された可撓性関節移植片をそれぞれの型から取り外す。可撓性関節移植片の各々に対して、清浄化プロセスがなされるとよい。この清浄化プロセスでは、移植片に研磨処理を施すことによって、移植片の縁の周囲の余分のポリマーが除去される。各可撓性関節移植片10の関節支持面12に損傷を与えないように、従って、関節支持面の滑らかな面に損傷を与えないように、注意が払われるべきである。
【0029】
作製された時点で、移植片10は移植可能である。操作方法について述べると、図5および図6に示されているように、ペグ20をその下にある骨に取り付けることによって、骨への可撓性関節移植片10の固定が達成される。例えば、滑車溝に関連して、孔50は、大腿骨Fにおける前十字靭帯と後十字靭帯(図示せず)が大腿骨と接触する個所の近くでかつ外側顆52と内側顆54との間に、形成される。2つの追加的な孔56,58が、大腿の前皮質骨の縁60の近くに形成されている。好ましくは、孔56,58は、大腿骨の自然の軸と平行に孔50の中心を通る長手方向軸62が、孔56,58の間を通るように、ある距離を隔てて分離されている。孔50,56,58が形成された時点で、可撓性関節移植片10の形状が、骨に彫り込まれ、点線で示される移植片受入れ領域64を形成する。移植片受入れ領域64の深さは、移植片に依存し、受入れ領域64の縁66は、可撓性関節移植片10の縁13と係合することが可能である。勿論、移植片受入れ領域は、孔50,56,58が形成される前に彫り込まれてもよい。
【0030】
大腿骨を準備した状態で、可撓性関節移植片10を、図6に示されるように、大腿骨、具体的には、滑車溝の近くに移動する。可撓性関節移植片10のペグ20を孔50,56,58に位置合わせし、それらの孔内に嵌め込み、これによって、可撓性関節移植片を大腿骨に係留させる。図面では隠れているペグ20が孔50,56,58と位置合わせされると、そのペグ20を、可撓性関節移植片10の骨接触面14が大腿骨と接触するまで、内方に押し込む。具体的に述べると、骨接触面14は、可撓性関節移植片10を受入れるように切除されて形作られた移植片受入れ領域64と接触する。移植片10が正確に配置されると、可撓性関節移植片10の縁13が、移植片受入れ領域64の縁66と隣接して配置される。
【0031】
好ましくは、移植片受入れ領域64は、ある深さ、すなわち、関節支持面12が、大腿骨Fの外面に対する健常な滑車溝の表面の位置決めに近似する高さに位置決めされることを可能にする深さ、を有している。これによって、膝蓋骨(図示せず)は、健常な大腿骨であるかのように可撓性関節移植片10に沿って移動することが可能になる。
【0032】
図6Aに示される代替的実施形態では、可撓性関節移植片10は、移植片受入れ領域64A上に覆われるだけでもよい。このような状況では、骨の表面の軟骨は、移植片受入れ領域64Aから除去されてもよいし、除去されなくてもよい。図6Aに示されるように、複数の孔50A,56A,58Aを移植片受入れ領域64A内に形成する。移植片受入れ領域64Aが準備されると、係留機構、すなわち、ペグ20を孔50A,56A,58A内に嵌入し、可撓性関節移植片10を受入れ領域64Aに配置する。従って、この実施形態では、可撓性移植片10の本体16は、特定の領域を覆うと共にその領域内に埋め込まれるのではなく、特定の領域を単純に覆うことになる。
【0033】
図7を参照すると、可撓性関節移植片10Aは、可撓性移植片10と同様に構成されているが、可撓性の多孔性金属下面17Aを備えている。この金属下面17Aは、本体16Aの骨接触面14Aに対して位置付けられている。金属下面17Aは、ここに述べた係留機構に関してここで検討した方法を用いて、作製されるとよい。金属下面17Aは、ペグ20と同様のポリマー係合部と骨係合部とを備えている。金属下面17Aのポリマー係合部によって、本体16Aが、金属下面と係合し、金属下面に固着することが可能となっている。骨係合部は、骨成長を促進し、これによって、金属下面17Aを周囲組織と係止させることが可能である。従って、金属下面17Aは、前述したペグ20と同様に機能するものである。代替的実施形態では、下面はポリマー材料から作製され、軟組織の成長を促進する多孔性構造を有していてもよい。勿論、これらの2つの組合せも可能である。
【0034】
図示されない代替的実施形態では、本体16Aは、該本体16Aを金属下面に離脱可能に取り付けることを可能にする手段を用いて、金属下面17Aに取り付けられている。このような実施形態として、2つの要素のスナップ嵌合およびこれらの要素のネジ止めなどが挙げられる。
【0035】
本発明の一態様では、可撓性関節移植片は、可撓性本体を一時的に係留機構に取り付けることによって、製造される。例えば、図8および図9に示されるように、可撓性関節移植片110は、本体116がペグ120に離脱可能に取り付けられる以外、可撓性関節移植片10と同じように構成されていてもよい。ペグ120は、骨接触部126、中間部124、および中間部124から上方に延在する突起122を備えている。突起122は、図に示されるような円形の幾何学的形状を有していてもよいし、他の外形を有していてもよい。突起122は、突起の内面に露出する係合要素、例えば、雌ネジ山127を備えている。雌ネジ山127は、以下に述べるように、ネジの雄ネジ山と螺合するようになっている。本体116は、前述されたのと同様の成形法を用いて形成されるとよい。移植片110は、前述したように、関節支持面112と骨接触面114とを備えている。関節支持面112は、好ましくは、可撓性関節移植片110が取り付けられる関節形状部、この場合は、滑車溝を模倣する形状を有している。可撓性関節移植片110は、本体116の一部をペグ120の一部に埋め込むよりはむしろ、ここで検討するプロセスを用いて形成されるとよい。本体116は、複数の係合要素117を備えている。これらの係合要素117の各々は、関節支持面112から係合要素117の底まで延在する貫通孔119を有している。貫通孔119は、ペグ120の突起122の雌ネジ山127と同様の寸法の雌ネジ山131を有している。係合要素117は、移植片の係留要素の一部とみなされる。係合要素117は、好ましくは、本体116と同じ材料から形成されている。
【0036】
移植方法について説明すると、前述のように、孔および移植片受入れ領域を、関節、すなわち、滑車溝内に準備する。次に、複数のペグ120を、骨内に位置付けられた孔内に配置し、所望の位置に達するまで、孔内に下方に押し込む。ペグ120は、突起122が骨の外を向くように、位置付けられる。次いで、本体116を、移植片受入れ領域に隣接させる。本体116の係合要素117を、大腿骨内に形成された孔内に位置決めし、係合要素117がペグ120の突起122と嵌合するまで、孔内に移動させる。下方に強く押し込むことによって、ポリマー性係合要素117を雄/雌の関係で突起127の周りにすべり嵌めさせるとよい。
【0037】
次に、本体116をペグ120に係止するために、複数のネジ141を本体116の孔119内にねじ込む。これらのネジ141は、各々、頭143および柱145を有している。また、このネジ141は、好ましくは、孔119の雌ネジ山131および突起122の雌ネジ山127と係合する雄ネジ山147を有している。本体116がペグ120に係留されるまで、ネジ141を締め付ける。ネジの頭142は、移植片110の関節支持面112に沿って当接しないように、本体116の凹部151内に嵌入される。ネジ141は、好ましくは、関節支持面112が、滑車溝の表面の残りと同一平面になり、健常な滑車溝と同等の表面をなすように、充分に締め付けられる。関節支持面112は、軟骨、骨、および/または付加的な移植片に対して滑るように、設計されている。
【0038】
離脱可能な係止機構を用いることによって、もし本体116を移植片の全体を取り外さずに置き換えることが必要とされる場合、外科医は、本体116をペグ120に係止するネジ141を構造体から簡単に外し、次いで、可撓性関節移植片110の本体116を取り外すことが可能となる。ペグ120は、移植片受入れ領域の孔内に維持されているので、代わりの本体を、前述したように、ペグ120に連結し、これによって、外科手術を完全にかつ全体的に行なう必要性を回避することができる。
【0039】
図9Bおよび図9Cに示されるような代替的な実施形態では、可撓性関節移植片は、多孔性金属成長特徴部を有することなく、構成されている。例えば、図9Bに示されるように、可撓性関節移植片110Aは、関節支持面112Aと骨接触面114Aとを有する本体116Aを備えている。
【0040】
また、関節移植片110Aは、骨接触面114Aから外方に延在する複数の突起121Aも備えている。好ましくは、孔123Aが、関節支持面112Aから、各突起121Aを通って、突起の遠隔の端123Aに延在している。
【0041】
関節移植片110Aを大腿骨に、特に滑車溝に隣接して、取り付ける方法について説明すると、移植片受入れ領域を、前述したのと同様に、準備する。しかし、可撓性関節移植片110Aを移植片受入れ領域に取り付けるために、複数の海綿骨ネジ130Aを移植片受入れ領域内に配置する。海綿骨ネジ130Aは、雄ネジ山131Aと、開端135Aから海綿骨ネジを少なくとも部分的に貫通する孔133Aとを備えている。海綿骨ネジ130Aは、好ましくは、内部孔133A内に配置される雌ネジ山137Aを備えている。海綿骨ネジ130Aは、移植片受入れ領域内に配置されている。これらの海綿骨ネジは、骨内に埋め込まれ、可撓性関節移植片110Aを骨に係合し、固着することができる係留機構をもたらすものである。可撓性関節移植片110Aが移植片受入れ領域に配置されると、可撓性関節移植片の突起121Aを海綿骨ネジ130Aと位置合わせする。突起121Aの少なくとも一部を海綿骨ネジ130Aの開口135A内に嵌入する。
【0042】
次に、複数のネジ141Aを、突起121Aを通して、海綿骨ネジ130Aの開口135Aにねじ込む。ネジ141Aを締め付けると、ネジ141Aの雄ネジ山143Aが、海綿骨ネジ130Aの雌ネジ山137Aと係合し、これによって、可撓性関節移植片110Aの本体116Aを海綿骨ネジに係止する。このようにして、可撓性関節移植片110Aの本体116Aは、大腿骨内に埋設された海綿骨ネジ130Aに離脱可能に取り付けられる。これによって、本体116Aを、必要に応じて置き換えるために、骨との係合から離脱することができる。これは、係留具、すなわち、海綿骨ネジ130Aを取り外すことなく、形成される。
【0043】
図9Cに示されるように、可撓性関節移植片110Cは、可撓性関節移植片110Aと同じように構成され、関節支持面112Cと骨接触面114Cとを有する本体116Cを備えている。図9Bで検討した実施形態と同じように、可撓性関節移植片110Cは、骨接触面114Cから外方に延在する複数の突起121Cも備えている。突起121Cの各々は、突起を貫通する孔を備えている。可撓性関節移植片110Cを取り付けるために、移植片受入れ領域を大腿骨内に準備する。移植片受入れ領域は、好ましくは、突起121Cを受ける凹部または孔を備えている。可撓性関節移植片110Cを移植片受入れ領域内に正確に取り付けた後、複数のネジ141Cを突起121Cの孔内に配置し、骨内にねじ込む。これによって、可撓性関節移植片110Cが大腿骨または他の骨に係止されることになる。
【0044】
図9Dおよび図9Eに示されるさらに他の代替的な実施形態では、可撓性関節移植片110Dは、可撓性関節移植片110と同様に構成されてもよく、関節支持面112Dおよび骨接触面114Dを有する本体部116Dと、骨接触面114Dから外方に延在するペグ120Dとを備えている。しかし、可撓性関節移植片10とは対照的に、可撓性関節移植片110Dは、ペグ120Dを貫通する複数の孔を備えている。これによって、可撓性関節移植片110Dを移植片受入れ領域に嵌め込むとき、複数のネジ141Dをペグ120Dの貫通孔121Dに挿入することが可能となる。次いで、ネジ141Dを、可撓性関節移植片110Dが骨に密着して固定されるように、骨内にねじ込む。これは、可撓性関節移植片110Dを密着して固定することを可能にする。これによって、骨成長がペグ120Dと係合するにつれて、安定した比較的動きのない対象物が得られる。
【0045】
さらに、図9Fに示されるように、可撓性関節移植片110Fは、係留機構の一部をなす複数のロッド121Fを備えていてもよい。ロッド121Fは、ペグ20を形成するのに用いられた方法と同様の方法を用いて、形成されるとよい。この移植片110Fの本体116Fは、ここに説明したペグ20への取付け方法と同様の方法によって、ロッド121Fに取り付けられるとよい。移植片110Fをその場に係止するために、複数のカラー123Fが、骨の孔内に位置付けられるとよい。カラー123Fは、金属から作製され、骨成長を促進する多孔性を備えているとよい。カラー123Fを骨内に配置された時点で、ロッド121Fを特定のカラー123Fの開口124F内に嵌め込む。ロッド121Fは、カラー内にスナップ嵌合されてもよいし、または種々の他の係合装置を用いてカラー内に係止されてもよい。一実施形態では、カラーの内側は、カラーがロッド121Fに緊密に係合するように、ポリマーを備えている。
【0046】
本発明の一態様では、ペグを係留機構として用いるよりむしろ、可撓性関節移植片が、図10および図11に示されるような少なくとも1つのレールを備えている。図10および図11に示される可撓性関節移植片210は、ペグ以外は、可撓性関節移植片10と同じである。2つのレール220A,220Bは、図12に示されるように、可撓性関節移植片210を大腿骨Fに係留するように機能するものである。レール220A,220Bは、前述したペグ20または120と同様に構成され、好ましくは、骨接触部226、中間部224、およびポリマー係合部222を備えている。可撓性移植片210の本体216は、好ましくは、ポリウレタンのようなポリマー材料から構成され、この本体216を形成するのみならず、本体216をそれぞれのレール220A,220Bのポリマー係合部222内に埋め込むために、成形法を用いて、作製されるとよい。前述したように、本体216の関節支持面212が、移植片210から骨への比較的滑らかな遷移をなし、膝関節の正常な運動を維持ように、大腿骨Fに位置付けられるように、可撓性関節移植片210は、大腿骨内に十分に深く固定されるべきである。具体的には、可撓性関節移植片210は、膝蓋骨が大腿骨に沿って横断するのを可能にする滑車溝移植片と考えられる。
【0047】
図示されないが、可撓性移植片210は、大腿骨の滑車溝内に延在するのみならず、外側顆または内側顆の少なくとも1つを覆っていてもよい。
【0048】
本発明のさらに他の態様では、特に滑車溝の再構成に適するようにされた可撓性関節移植片310は、図13〜図15に示されるように、関節支持面312と骨係合部314とを有する単一レールとして構成されている。骨係合部314は、骨係合面316と比較的中実の中間部318とを備えている。骨係合部314は、ここで検討した方法、例えば、選択レーザ焼結、選択レーザ溶融、電子ビームまたは他の高いエネルギー源による方法を用いて、構成されるとよい。ここで、中間部318は、比較的非多孔性金属構造から構成され、骨係合面316は、骨成長を促進する多孔性を有する金属構造から構成されている。中間部318は、関節支持部に対して係留機構として作用するキー320を備えている。骨係合部が構成されると、関節支持部312が、前述したとの同様に、骨係合部314に対して成形されることになる。関節支持部312が硬化された時点で、キー320は、キー320の寸法によって、関節支持部に形成された溝322に嵌合すると、関節支持部312を骨係合部314に係止する。キー320または中間部318の少なくとも上部は、関節支持部のポリマーがキー320内に埋め込まれ、これによって、係留機構が形成されるような多孔性を有するように構成されるとよい。ただし、これは必ずしも必要ではない。
【0049】
図14に示されるように、2つの可撓性関節移植片310、例えば、個々のレール311が、滑車溝と膝蓋骨(図示せず)との間の自然な運動を可能にする自然な滑車溝を再構成するように、大腿骨の外側顆および内側顆の側方の内面に沿って配置されてもよい。可撓性関節移植片310は、前述したように、可撓性移植片310が配置される移植片受入れ領域を形成するように大腿骨の一部を削り取って、その大腿骨に移植される。可撓性移植片310は、好ましくは、関節支持部312が、削られていない部分と滑らかな連続面を形成し、これによって、膝関節の正常な運動が得られるように、大腿骨内に十分に深く配置される。レール311は、内側顆および外側顆に隣接して滑車溝の側方に沿って位置付けられて示されているが、レール311は、滑車溝のしわ内に配置されてもよい。レールの配置の種々の組合せには、単一レール311のみの配置または多数のレールの配置が含まれる。さらに、レール311は、前皮質骨から顆間窪みに向かう方向に延在して示されているが、外側顆から内側顆に向かう方向に延在してもよい。
【0050】
本発明の一態様では、各レールは、図16に示されるように構成されている。図16は、各レール411からなる可撓性関節移植片410を示している。各レール411は、本体416を構成する関節支持面412および骨接触面414を備えている。また、レール411は、骨接触面414から外方に延在する複数のペグ420も備えている。ペグ420は、ペグ20、または移植片を骨に取り付けるネジの使用に関して説明した実施形態を含むここに述べた種々の他の係留機構と同様に、構成されているとよい。各レール411を移植するために、可撓性関節移植片310に関して説明したように、移植片受入れ領域を準備する。移植片受入れ領域は、好ましくは、骨接触面414が大腿骨に隣接して配置されるのを可能としながらペグ420を受入れるのに適する複数の凹部または窪みを有している。好ましくは、可撓性関節移植片410が骨に固着されたとき、関節支持面412は、大腿骨、具体的には、滑車溝と連続的な面を形成している。
【0051】
種々の骨、具体的には、大腿骨、さらに具体的には、大腿骨の滑車溝内に移植される種々の可撓性関節移植片について説明したが、これらの外科手術を行なうには、種々の器具が用いられる。このような一態様として、図16A〜図16Eに示されるような可撓性穿孔テンプレート設計が挙げられる。テンプレート360A,360B,360C,360D,360Eは、固定孔362、ドリル孔364、逃げ切込み366、および位置決め機構368を備えている。固定孔362によって、各穿孔テンプレートを大腿骨に一時的に係留することが可能であるので、ドリル孔364をテンプレートとして用いて、大腿骨に孔を形成することができる。従って、大腿骨への孔の正確な位置合せが、達成される。大腿骨への孔の正確な位置合わせは、そのような位置合せがなされないと、特定の可撓性関節移植片が、骨に彫り込まれた移植片受入れ領域に完全に嵌合しないことがあるので、必要である。個々の穿孔テンプレート360A〜360Eの外縁370A〜370Eは写され、特定の骨、すなわち、大腿骨にパターンを形成する。次いで、このパターンが骨から削り取られ、その結果、可撓性関節移植片が、この移植片受入れ領域内に緊密に嵌合することになる。位置決めペグ368によって、可撓性穿孔テンプレートをすでに大腿骨または骨に形成された孔内に一時的に係留することができる。これによって、テンプレートの残りが写され、予ドリル孔が形成され、その結果、正確な位置合せが達成されることになる。
【0052】
図17に示されるように、孔ぐり(burr)テンプレート500が用意されるとよい。孔ぐりテンプレート500は、孔ぐりテンプレートの孔502を貫通するネジ、ピンまたは他の保持装置(図示せず)を用いて、大腿骨に係留されるとよい。孔ぐりテンプレート500は、好ましくは、その正確な位置に係留され、移植片受入れ領域を形成する前凹部504を備えている。凹部504は、孔ぐりテンプレート500の各壁506によって画定される。図17に示される実施形態では、孔ぐりテンプレートは、図13および図16に示されるような各レール用の移植片受入れ領域を形成するように、設計されている。しかし、用いられる移植片の具体的な形状ごとに、異なる孔ぐりテンプレートが用いられてもよい。孔ぐりテンプレート500が骨に取り付けられた時点で、図18に示されるような切削装置を用いて、凹部504に露出されている骨を削り取り、移植片受入れ領域を形成することができる。前述したように、可撓性骨移植片は、好ましくは、凹部504内に嵌合する大きさを有しているので、大腿骨または他の骨が下加工されると、可撓性移植片は、その切除された部分内に嵌合することが可能となる。
【0053】
図18〜図21は、ここに説明した可撓性関節移植片を移植するために用いられる工具のいくつかを示している。例えば、図18は、移植片を固定する移植片受入れ領域から骨の小さな凹みを除去するに用いられる切削器具600を示している。加えて、骨の局部的な領域を除去した時点で、可撓性関節移植片を、図19に示される針と縫合糸を用いて、小切開内に挿入することが可能である。針602は、長手方向延長部604と、針の第1端608に配置された孔606とを備えている。同様に、骨固定ペグを図20に示されるような衝撃装置610を用いて挿入することが可能である。図21〜図23は、ハンドルを備える穿孔テンプレートの代替的実施形態を示している。テンプレート620A〜620Cは、正確に位置決めされた時点で大腿骨の適所に保持されるように、外部工具に取り付けられるとよい。テンプレート620A〜620Cをガイドとして用いて、種々の孔および凹部を骨に形成することが可能となる。
【0054】
また、本発明が適する種々の関節のいくつかの例として、図24〜図28に示されるような寛骨臼、踝関節、膝蓋骨、大腿骨頭、および上腕骨頭が挙げられる。
【0055】
例えば、図24において、可撓性関節移植片710は、円形プラグ711の形状を有している。可撓性関節移植片710は、必要に応じて、他の幾何学的な形状を有していてもよい。骨の一部を除去することによって形成された寛骨臼の移植片受入れ領域764内には、円形プラグ711が配置されていてもよい。円形プラグ711は、ポリマー材料から作製される本体716を構成する関節支持面712および骨接触面714を有している。
【0056】
ここに述べた他の実施形態と同じように、円形プラグ711は、ペグ720のような複数の係留機構を有している。このペグ720は、前述したのと同様のポリマー係合部722、中間部724、および骨成長部726を備えている。図24および図24Aに示される実施形態では、ポリマー係合部722は、勾配断面を有している。勾配断面は、構造の多孔性を指し、具体的には、ポリマー係合部722の勾配断面は、中間部724から離れるにつれて大きくなる多孔率を含んでいる。骨係合部726も、好ましい金属構造が中間部724から離れるにつれて大きくなる多孔率を有するような勾配断面を有している。勿論、勾配断面は、上記の両構造において、逆であってもよく、さらに無作為で、従って、場所ごとに異っていてもよい。
【0057】
図25に示されるように、可撓性関節移植片810は、踝関節の近くに用いられてもよい。可撓性関節移植片810は、前述の実施形態と同様に構成されているとよい。
【0058】
さらに、可撓性関節移植片1010は、図26に示されるような大腿骨頭幹の一部、または図27に示されるような上腕骨頭の一部を形成するのに用いられてもよい。
【0059】
代替的な実施形態では、係留機構またはペグが、ポリマーを用いて骨に少なくとも一時的に取り付けられる。例えば、ペグの内部核が、移植中に、再吸収可能なポリマーで充填される。次いで、ポリマーが溶融され、溶融されたポリマーが、ペグから周囲骨内の亀裂内に浸出する。ポリマーは、冷却されると、ペグを骨に連結する。時間が経過すると、ポリマーは、患者の体内に吸収され、これに代わって、骨成長が生じることになる。
【0060】
さらに他の代替的な実施形態では、ペグを周囲骨に一時的に係止するために、ポリマーがペグの空洞内に導入される。導入されたポリマーは、紫外線などによって加熱され、これによって、ポリマーを溶融し、周囲骨と係合させることが可能となる。接着剤が、ポリマーの代わりに用いられてもよく、または処理用ポリマー内に分散されてもよい。
【0061】
本発明を具体的な実施形態を参照してここに説明したが、これらの実施形態は、本発明の原理と用途を単に例示するにすぎないことが理解されるべきである。従って、例示的な実施形態に対して多くの修正がなされてもよく、他の構成が特許請求の範囲に定義された本発明の精神および範囲から逸脱することなく考案されてもよいことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態の上方斜視図である。
【図2】図1に示される実施形態の下方斜視図である。
【図3】係留機構の側断面図である。
【図4】本発明の実施形態を形成する方法に用いられる工具の正面斜視図である。
【図5】移植片受入れ領域を有する関節の正面図である。
【図6】移植片が挿入された関節の正面図である。
【図6A】移植片が挿入された関節の正面図である。
【図7】本発明の一実施形態の下方斜視図である。
【図8】本発明による一実施形態の上方斜視図である。
【図9A】本発明による一実施形態の上方斜視図である。
【図9B】本発明による実施形態の上方斜視図である。
【図9C】本発明による実施形態の上方斜視図である。
【図9D】本発明による一実施形態の上方斜視図である。
【図9E】図9Dに示される実施形態の下方斜視図である。
【図9F】本発明による一実施形態の上方斜視図である。
【図10】本発明による一実施形態の上方斜視図である。
【図11】図10に示される実施形態の下方斜視図である。
【図12】関節に挿入された移植片の正面斜視図である。
【図13】本発明による実施形態の側方斜視図である。
【図14】関節に挿入された図13の移植片を示す斜視図である。
【図15】図13の実施形態の断面図である。
【図16】本発明による実施形態の上方斜視図である。
【図16A】本発明の移植片と関連して用いられる種々のテンプレートの斜視図である。
【図16B】本発明の移植片と関連して用いられる種々のテンプレートの斜視図である。
【図16C】本発明の移植片と関連して用いられる種々のテンプレートの斜視図である。
【図16D】本発明の移植片と関連して用いられる種々のテンプレートの斜視図である。
【図16E】本発明の移植片と関連して用いられる種々のテンプレートの斜視図である。
【図17】本発明と関連して用いられる孔ぐりテンプレートの上方斜視図である。
【図18】本発明と関連して用いられる工具の側方斜視図である。
【図19】本発明と関連して用いられる工具の側方斜視図である。
【図20】本発明と関連して用いられる工具の側方斜視図である。
【図21】本発明と関連して用いられる工具の側方斜視図である。
【図22】本発明と関連して用いられる工具の側方斜視図である。
【図23】本発明と関連して用いられる工具の側方斜視図である。
【図24】寛骨臼内に用いられる本発明による移植片を示す斜視図である。
【図24A】図24に示される移植片の側方断面図である。
【図25】踝関節内に移植された本発明による移植片を示す斜視図である。
【図26】大腿骨頭内に移植された本発明による移植片を示す斜視図である。
【図27】上腕骨頭内に移植された本発明による移植片を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
10 可撓性関節移植片
12 関節支持面
13 縁
14 骨接触面
16 本体
20 ペグ
22 ポリマー係合部
24 中間部
26 骨成長部
30 金型
32 第1部品
34 第1面
36 第2部品
38 第1面
38 型
40 孔
42 本体形成部
44 型
46 型形成部
48 凹部
50 突起
50 孔
52 外側顆
54 内側顆
56 孔
58 孔
60 縁
62 長手方向軸
64 移植片受入れ領域
66 縁
50A 孔
56A 孔
58A 孔
64A 移植片受入れ領域
10A 可撓性関節移植片
14A 骨接触面
16A 本体
17A 金属下面
110 可撓性関節移植片
112 関節支持面
114 骨接触面
116 本体
117 係合要素
119 貫通孔
120 ペグ
122 突起
124 中間部
126 骨接触部
127 雌ネジ山
131 雌ネジ山
141 ネジ
143 頭
145 柱
147 雄ネジ山
151 凹部
110A 可撓性関節移植片
112A 関節支持面
114A 骨接触面
116A 本体
121A 突起
123A 孔
130A 海綿骨ネジ
131A 雄ネジ山
133A 孔
135A 開端
137A 雌ネジ山
141A ネジ
143A 雄ネジ山
110C 可撓性関節移植片
112C 関節支持面
114C 骨接触面
116C 本体
121C 突起
141C ネジ
110D 可撓性関節移植片
112D 関節支持面
114D 骨接触面
116D 本体部
120D ペグ
121D 貫通孔
141D ネジ
110F 可撓性関節移植片
116F 本体
121F ロッド
123F カラー
124F 開口
210 可撓性関節移植片
220A レール
220B レール
222 ポリマー係合部
224 中間部
226 骨接触部
216 本体
212 関節支持面
310 可撓性関節移植片
311 レール
312 関節支持面
314 骨係合部3
316 骨係合面
318 中間部
320 キー
322 溝
410 可撓性関節移植片
411 レール
412 関節支持面
414 骨接触面
416 本体
420 ペグ
360A〜360E テンプレート
362 固定孔
364 ドリル孔
366 逃げ切込み
368 位置決め機構
370A〜370E 外縁
500 孔ぐりテンプレート
502 孔
504 凹部
506 壁
600 切削器具
602 針
604 長手方向延長部
606 孔
608 第1端
610 衝撃装置
620A〜620C 穿孔テンプレート
710 可撓性関節移植片
711 円形プラグ
712 関節支持面
714 骨関節面
716 本体
720 ペグ
722 ポリマー係合部
724 中間部
726 骨成長部
764 移植片受入れ領域
810 可撓性関節移植片
1010 可撓性関節移植片
F 大腿骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節支持面と、骨対向面と、それらの間に延在する縁とを有する本体であって、前記関節支持面は、健常な滑車溝の一部を模倣するように構成されている本体と、
前記本体から外方から延在する少なくとも1つの係留機構であって、前記本体に少なくとも部分的に取り付けられ、前記本体を骨に係留するために前記骨内に配置される、少なくとも1つの係留機構と、
を備えていることを特徴とする滑車溝移植片。
【請求項2】
前記関節支持面は、前記滑車溝のかなりの部分と類似する形状を有し、これによって、前記滑車溝移植片が移植されると、患者の前記滑車溝の外側から前記滑車溝の内側に延在するようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項3】
前記移植片の前記本体は、前記大腿の前皮質骨から前記大腿骨の顆間窪みに実質的に延在していることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項4】
前記移植片の前記本体は、滑車溝のしわ内に位置付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項5】
前記本体は、滑車溝の外側または滑車溝の内側の関節面の一部と類似する形状を有し、これによって、前記移植片の前記本体は、滑車溝の外側または滑車溝の内側のいずれかに隣接して移植され、前記本体の前記関節支持面は、前記滑車溝の片側にのみ沿って延在していることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項6】
前記少なくとも1つの係留機構は、前記本体と係合する第1部分と、骨成長を可能とするのに充分な多孔率を有する第2部分とを備えていることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項7】
前記少なくとも1つの係留機構は、前記本体と一体に形成される第1部分と、前記第1部分に離脱可能に取り付けられる第2部分とを備え、前記第2部分は、滑車溝に形成された凹部内に配置され、前記第1部分は、前記第2部分に離脱可能に係合され、これによって、必要に応じて、前記第1部分は、前記第2部分から離脱され、前記第1部分を含む前記本体は、取り外されるようになっていることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項8】
前記第2部分は、ネジを備え、前記本体は、前記関節支持面から前記骨対向面に延在する孔を備え、前記孔は、前記第1部分をさらに貫通し、前記第1部分は、内部にネジ山を有し、前記ネジは、前記ネジ山と係合し、前記第1部分を骨に固着させるように下方に移動されるようになっていることを特徴とする、請求項7に記載の滑車溝移植片。
【請求項9】
前記本体は、前記第1面から前記第2面に延在する少なくとも1つの孔を備え、前記少なくとも1つの孔は、ペグをさらに貫通していることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項10】
前記少なくとも1つの係留機構は、キーを備え、前記移植片の前記本体は、前記係留機構の前記キーと係合されるキー溝を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の滑車溝移植片。
【請求項11】
a.移植片受入れ領域を滑車溝に形成することによって、移植片を受入れる滑車溝を準備するステップと、
b.前記移植片を前記移植片受入れ領域に挿入するステップであって、前記移植片は、健常な滑車溝関節面を模倣するように前記移植片受入れ領域内に位置付けられる関節支持面を有し、前記移植片は、前記移植片を前記移植片受入れ領域に係留する係留装置をさらに備えるようなステップと、
を含むことを特徴とする滑車溝を補修する方法。
【請求項12】
前記移植片受入れ領域は、滑車溝の外側から滑車溝の内側に延在することを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項13】
前記移植片受入れ領域は、前記大腿の前皮質骨から顆間窪みに実質的に延在することを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項14】
前記移植片受入れ領域は、滑車溝のしわ内にのみ位置付けられることを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項15】
前記移植片受入れ領域を形成するとき、前記移植片の本体の少なくとも一部を受入れる凹部が、前記滑車溝の骨に形成され、前記移植片の前記係留装置を受入れるために、窪みが前記凹部内に形成されることを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項16】
前記係留機構は、前記移植片の前記本体と係合する第1部分と、骨成長を促進する多孔率を有する第2部分とを備えることを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項17】
前記移植片受入れ部は、外側顆または内側顆にのみ延在することを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項18】
前記係留機構は、前記移植片の本体と一体の第1部分と、前記第1部分に離脱可能に取り付けられた第2部分と、を備えることを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。
【請求項19】
前記移植片受入れ領域を準備するステップは、前記移植片の前記本体を受入れる凹部を形成するステップを含まないことを特徴とする、請求項11に記載の滑車溝を補修する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図16E】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図24A】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−6280(P2008−6280A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−151353(P2007−151353)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(500239373)ハウメディカ・オステオニクス・コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】