説明

可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤を含む組成物

酸化剤ではない可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤を含む歯みがき剤組成物が開示され、該組成物は、30以下のRDA値および50以上のIVSR値(対照と比較したとき)ならびに口腔に許容可能なビヒクルを有し、その際、上記カルシウム金属イオン封鎖剤は、組成物の1〜20重量%の比率で存在し、研磨材が組成物の0〜5重量%の比率で存在する。この組成物は、天然の歯および義歯から汚れを除去するのに極めて有効であり、しかも、過剰な研磨により歯または義歯を損傷させることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の歯および義歯を洗浄するための歯みがき剤組成物、特に、フッ化物源と、酸化剤ではない可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤を含む組成物に関する。このような組成物は、優れた洗浄特性と同時に、低い研磨性を呈示する。
【背景技術】
【0002】
歯みがき剤は、2,000年以上にわたり使用されているが、歯みがき剤の主な目的が歯からの表面付着物の除去であることに変わりはない。歯からの表面付着物の除去は、化学的または機械的洗浄剤のいずれかを用いて達成することができる。化学的洗浄剤の例として、カルシウム−金属イオン封鎖剤、例えば、ポリリン酸塩(例:トリポリリン酸塩)が挙げられ、また、機械的洗浄剤としては、研磨材、例えば、沈降シリカまたは炭酸カルシウムが挙げられる。研磨洗浄剤の一例として、非晶質水和シリカがある。また、歯の汚れを脱色するために、歯みがき剤に漂白剤が含まれる場合もある。しかし、これでは、汚れを効果的に除去することにはならず、しかも、有効な漂白剤は口腔組織を損傷させる可能性があり、適切に製剤化するのは難しい。過酸化水素はよく知られた漂白剤であるが、過酸化物を含有する歯みがき剤の場合、口腔内の過酸化物の寿命は非常に短い。ヒトの歯垢は有意なレベルの過酸化物分解酵素カタラーゼを含んでおり、これは、汚れを漂白するのに十分な時間、歯の表面に有効なレベルの過酸化物を維持するのは極めて難しいことを意味する。過酸化物よりさらに傷害性の漂白剤を使用すれば、組織損傷についての懸念が生じる。
【0003】
伝統的歯みがき製剤は、多数の特定成分、例えば、研磨剤、保湿剤、フッ化物源、結合剤、抗歯垢剤、染料、香味料、防腐剤、水およびその他の選択成分を含む。フッ化物は口腔の健康、特に歯のエナメル質の健康のための重要な補助薬である。歯または義歯からの表面付着汚れの有効な除去は、実質的に研磨性の製剤と関連しているのが常である。しかし、研磨材を含む歯みがき剤組成物は、歯の表面、ならびに義歯の表面も損傷させる恐れがあるため、歯みがき製剤が、歯または義歯に過剰な研磨を被らせずに、有効な洗浄を達成することが極めて重要であると認識されている。
【0004】
WO-A-95/17158は、5〜15重量%の水溶性アルカリ金属トリポリリン酸塩を含有する歯科的に許容可能な製剤を含む、天然の歯または義歯から表面付着汚れを低減または除去するための組成物を記載および請求している。WO-A-95/17158に記載される歯みがき製剤例はすべて、通常の歯研磨剤、例えば、研磨シリカを含んでおり、5〜80重量%の範囲で含むことが開示されている。
【0005】
歯みがき製剤の研磨性を決定するのに確立された方法は、相対象牙質研磨性(RDA)を測定することによる方法である(Hefferen, JJ. A laboratory method for measuring dentifrice abrasivity. J. Dent. Res. 55 563-573, 1976)。このアッセイでは、用意したヒト象牙質のサンプルから、25:40 w/wスラリーの試験練り歯みがきを用いた長時間の歯みがきによる象牙質の摩損を測定する。象牙質サンプルを照射することにより、無機質中に32Pを生成する。このアッセイでは、ピロリン酸カルシウムの標準的スラリーでの歯みがきにより遊離した放射能に対する、歯みがき後の上清中の放射能を測定する。
【0006】
洗浄性能は汚れの除去と密接に関連しており、様々な方法で測定することができる。非常に有用なin vitro汚れ除去(IVSR)アッセイ(Layer TM, McConville PS and Wicks MA. Stain removal efficacy of whitening toothpastes - in vitro studies. J. Dent. Res. 79: 216 abstract 581, 2000)が公開されており、本発明でも用いる。このアッセイは、基質として非処理の自然に汚れたウシの歯を用いることにより、該アッセイのin vivo状況との関連性を最大にすることを目標とする。水を用いた試験練り歯みがきの1:3スラリーで歯を長時間歯ブラシでみがく。色彩輝度計を用いて汚れ除去を定量する。水、ソルビトール、グリセリン、PEG、香味料、SLS、ナトリウムサッカリン、キサンタムガムおよびフッ化ナトリウムを含む通常の基材中に14%Zeodent 113(商標)研磨シリカを含む対照歯みがき製剤(J.M. Huber Corporationから入手可能)と比較して性能を測定してもよい。IVSRはまた、自然の外因性汚れ除去アッセイ、すなわちNESRとしても知られており、いくつかの刊行物ではそのように呼ばれている。
【0007】
従って、洗浄効率はIVSRとRDAの比として表すことができる。
【0008】
本明細書で引用するIVSR値は、100という任意の値を割り当てた対照製剤に対するものである。
【0009】
EP 0 835 223Bには、低研磨値を有する非晶質シリカが開示されており、これを歯みがき剤に含有させると、優れた洗浄性を維持する。しかし、この文献では、研磨シリカを組成物の洗浄材料としてしか考慮せず、非晶質シリカをその物理的性質に関して説明している。従って、EP 0 835 223Bは、RDA値が30〜70の間で、油吸収能力が100〜155 cm3/100gであり、BET表面積が200 m2/g以下であることを特徴とする非晶質シリカを請求する。
【0010】
この文献から、洗浄特性がその研磨材含量に左右される多くの製剤は、研磨材の物理的性質に関して記載および請求されているのが明らかである。例えば、EP-A-0 396 460では、実施例1において、非晶質シリカをBET表面積、油吸収量、気孔体積、pH、屈折率および半透明性に関して記載している。
【0011】
EP-A-0 002 184は、歯の洗浄のための微細な粒質形態をしたポリリン酸ナトリウムを単独で、または市販の練り歯みがき製剤と組み合わせて使用することを開示しており、この文献では、ポリリン酸ナトリウムの研磨効果と、この材料により歯の構成物質を損傷させずに歯の洗浄が強化されることについて述べている。
【0012】
従来技術には、伝統的量の研磨材を含まない極めて有効な歯みがき製剤は開示または記載されていない。「極めて有効な歯みがき製剤」とは、天然の歯または義歯から汚れを十分に除去すると同時に、過剰な研磨性により象牙質、エナメル質もしくは義歯に損傷を与えない歯みがき製剤を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、前述した1以上の問題を解決する、天然の歯または義歯のための歯みがき剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、酸化剤ではない可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤を含む歯みがき剤組成物であって、該組成物は、30以下のRDA値および50以上のIVSR値(対照と比較したとき)ならびに口腔に許容可能なビヒクルを有し、その際、上記カルシウム金属イオン封鎖剤は、組成物の1〜20重量%の比率で存在し、研磨材が組成物の0〜5重量%の比率で存在する、上記歯みがき剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましくは、前記組成物は、非ゲル練り歯みがきであって、これは折りたたみ可能な容器(例:チューブまたはポンプ)中に供給され、そこから歯ブラシ上に押出して使用することができる粘性の押出し可能な流体である。
【0016】
好ましくは、前記RDA値は25以下であり、好ましくは20以下、さらには、組成物が実質的に非研磨性になるように、可能な限り低いのが最も好ましい。好ましくは、前記IVSR値は250に達し、好ましくは200以上、さらに好ましくは100以上、例えば、75〜150(例:75〜120)の範囲であるのが好ましい。
【0017】
前記可溶性カルシウム−金属イオン封鎖剤は、カルシウムキレート剤でよい。好適な可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤として、以下のものが挙げられる:
式:M+n+2[PnO3n+1]
(式中、n>1、M=アルカリ金属、水素イオンもしくはアンモニウムイオン)
のポリリン酸塩(縮合リン酸塩としても知られる)。これは、以下のものを含む:ポリリン酸塩、例えば、ピロリン酸塩のアルカリ金属塩、ならびにピロリン酸塩(その場合、水素イオンおよび/またはアンモニウムイオンでアルカリ金属イオンを部分的に置換してもよい)。これらの例を以下に挙げる:
Na4P2O7 ピロリン酸四ナトリウム
Na2H2P2O7 ピロリン酸二水素二ナトリウム
K4P2O7 ピロリン酸四カリウム
K2H2P2O7 ピロリン酸二水素二カリウム
Na2K2P2O7 ピロリン酸二カリウム二ナトリウム
トリポリリン酸塩、例えば、ポリリン酸塩のアルカリおよび混合アルカリ金属塩、ならびにトリポリリン酸塩(その場合、水素イオンおよび/またはアンモニウムイオンでアルカリ金属イオンを部分的に置換してもよい)。これらの例を以下に挙げる:
Na5P3O10 トリポリリン酸五ナトリウム
K5P3O10 トリポリリン酸五カリウム
さらに高度のポリリン酸塩、例えば、テトラリン酸ナトリウムおよびカリウム、ならびに、ヘキサメタリン酸塩(「ガラス状リン酸塩」または「ポリピロリン酸塩」としても知られる)。カルボキシレート、例えば、アルカリ金属クエン酸塩(水素イオンまたはアンモニウムイオンで部分的に置換してもよい)、アルカリ金属酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩およびマレイン酸塩(水素イオンまたはアンモニウムイオンで部分的に置換してもよい)。エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)のアルカリ金属塩(水素イオンまたはアンモニウムイオンで部分的に置換してもよい)およびエジトロン酸のアルカリ金属塩。
【0018】
前記カルシウム金属イオン封鎖剤の2種以上を組み合わせて組成物に用いてもよい。
【0019】
好ましい可溶性カルシウム−金属イオン封鎖剤は、トリポリリン酸五ナトリウムであり、これは往々にしてトリポリリン酸ナトリウムと呼ばれる。
【0020】
高レベルの可溶性カルシウム−金属イオン封鎖剤を製剤に用いる場合には、往々にして製剤中に特定量の溶解していない固体が存在する。本発明の組成物に溶解していないカルシウム−金属イオン封鎖剤があったとしても、これは、使用中急速に溶解し、その溶解状態で洗浄効果をもたらす。
【0021】
トリポリリン酸ナトリウムのような可溶性カルシウム−金属イオン封鎖剤は、歯みがき剤組成物の1〜20重量%、好ましくは2〜15%、さらに好ましくは5〜15重量%の割合で含有させることができる。組成物中カルシウム−金属イオン封鎖剤を溶解限界より低い比率で用いることにより、カルシウム金属イオン封鎖剤が溶解した状態のゲルまたは液体組成物を提供することができ、これにより、ゲルまたは液体は、溶解していない固体粒子を含まず、透明なゲルまたは液体となりうる。
【0022】
組成物に、フッ化物イオン源を含有させることができる。フッ化物イオンは口腔のポリリン酸塩を安定化させる。天然の歯を洗浄するのに用いる組成物の場合、フッ化物イオン源の含有は、そのう蝕予防活性のために望ましいが、人工義歯の洗浄に用いる組成物の場合には、そのような活性は必要ない。フッ化物イオン源は、アルカリ金属フッ化物、好ましくは、フッ化ナトリウム、アルカリ金属モノフルオロリン酸塩、フッ化第一スズなどにより提供される。しかし、フッ化物イオン源は、アルカリ金属フッ化物であるのが好ましく、フッ化ナトリウムが最も好ましい。フッ化物イオン源は、う蝕予防のために周知の様式で役立つ。好ましくは、フッ化物イオン源は、う蝕予防有効量およびホスファターゼ酵素阻害量を達成する量、例えば、フッ化物イオンとして、約25 ppm〜約3,500 ppm、好ましくは約1,100 ppmを供給するのに十分な量用いる。例えば、製剤は、0.1〜0.5重量%のアルカリ金属フッ化物(フッ化ナトリウムなど)を含む。
【0023】
好ましくは、組成物のpHは、6〜10.5、さらに好ましくは7〜9.5である。典型的には、組成物は、好適なpHを達成するために0.5重量%以下の水酸化ナトリウムを含んでもよい。
【0024】
本発明の組成物、すなわち、歯ブラシ上に押出し可能な組成物において、口腔に許容可能なビヒクルは、一般に通常の組成物からなるものでよく、例えば、増粘剤、結合剤および保湿剤が含まれる。好ましい結合剤として、例えば、キサンタンゴム、カラゲエニン、アルギン酸塩、セルロースエーテルおよびエステルが挙げられる。好ましい保湿剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい保湿剤系は、グリセリン、ソルビトールおよびポリエチレングリコールからなる。加えて、口腔に許容可能なビヒクルは、随意に1種以上の界面活性剤、甘味料、香味料、う蝕予防剤(フッ化物イオン源以外に)、抗歯垢剤、抗菌剤(例えば、トリクロサンまたは塩化セチルピリジニウム)、歯の知覚鈍磨剤、着色剤および顔料を含む。有用な界面活性剤として、アルキル部分中に10〜18個の炭素原子を含む硫酸アルキルの水溶性塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムが挙げられるが、その他のアニオン界面活性剤、ならびにノニオン、双イオン、カチオンおよび両性界面活性剤を用いてもよい。
【0025】
水性の口腔に許容可能なビヒクルを用いる場合には、本発明の練り歯みがき組成物は、約10〜約80重量%の保湿剤(例:ソルビトール、グリセリン、ポリエチレングリコールもしくはキシリトール);約0.25〜約5重量%の洗剤;0〜約5重量%の甘味料および香味料;ならびに、水と、有効量の結合および増粘剤(例えば、約0.1〜約15重量%)を好適に含むことにより、所望の安定性と流動性を備えた本発明の練り歯みがきを提供する。
【0026】
増粘剤として増粘シリカを用いるのが好ましい。いわゆる「増粘シリカ」は、Zeodent 113(商標)のような周知の研磨シリカと比べて研磨作用は比較的小さいが、組成物に増粘作用をもたらす周知のシリカである。好適な増粘シリカは周知であり、Zeodent(例:Zeodent 167)の商標でHuberにより、SIDENT(登録商標)(例:SIDENT 22S(登録商標))の商標でDegussa AGにより、SYLOBLANC(登録商標)(例:SYLOBLANC 15(登録商標))の商標でそれぞれ市販されているものが挙げられる。例えば、組成物は、約20重量%、典型的には5〜15重量%の増粘シリカを含んでいてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、研磨性材料、例えば、前述した練り歯みがき、例えば、Zeodent 113(商標)に通常用いられる周知のタイプの「研磨シリカ」を含んでいてもよい。しかし、30以下のRDAを達成するためには、この種の研磨材は、可能な限り少量含有させるのが好ましく、組成物の他の固体粒子(例えば、溶解していないカルシウム金属イオン封鎖剤や、存在するあらゆる増粘シリカなど)により生じる軽度の研磨作用以外に、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、最も好ましくは0重量%の研磨材を含有する。本発明の目的のためには、研磨材とは、30以上のRDAを有する材料として定義する。シリカのRDAが30以下であれば、上記より多量のシリカを含有させてもよく、これは、練り歯みがきにおける代表的な研磨シリカ含有レベル(例えば、25%まで)である。
【0028】
前段落に示したRDA値に関して、研磨性原料のRDAを決定するのに用いるスラリー条件は、製剤化した練り歯みがきのRDAを決定するのに用いられるものとは異なることに留意すべきである。原料のスラリー条件は、10%グリセリン中10gの研磨材と50 mlの0.5%カルボキシメチルセルローススラリーであるのに対し、製剤化した練り歯みがきのスラリー条件は、25gの練り歯みがきと40 mlの水である。従って、原料としての研磨材についてのRDA数値と完全に製剤化した練り歯みがきのRDA数値を比較する際、注意する必要がある。
【0029】
従って、本発明の好ましい歯みがき剤組成物は、酸化剤ではない可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤を含み、該組成物は30以下のRDA値および50以上のIVSR値(対照と比較したとき)ならびに口腔に許容可能なビヒクルを有し、その際、上記カルシウム金属イオン封鎖剤は、組成物の1〜20重量%、好ましくは5〜10重量%の比率で存在し、0〜5重量%、好ましくは0重量%の研磨材、典型的には研磨シリカを含む。
【0030】
歯みがき剤組成物は、単一または二相組成物のいずれの形態をしていてもよい。
【0031】
組成物は、折りたたみ可能なチューブから絞り出すことができる通常の練り歯みがきタイプの組成物の形態をしているのが好適である。これはまた、加圧エーロゾル容器から計量分配するのにも適している。
【0032】
本発明の練り歯みがきタイプの組成物は、常用の方法に従って、カルシウム金属イオン封鎖剤およびフッ化物源(もし存在すれば)と、口腔に許容可能な歯科用ビヒクル(無水でもよいが、好ましくは水性の口腔に許容可能な歯科用ビヒクル)を混合して、歯みがき剤として有用な貯蔵安定性半固体の押出し可能な材料を形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0033】
本発明の組成物を以下に説明するが、これは非制限的例にすぎない。
【表1】

【0034】
本発明の様々な実施形態を調製することができる。
【0035】
実施例1は、カルシウム−金属イオン封鎖化学洗浄系がトリポリリン酸ナトリウム(STP)である、製剤である。増粘シリカが増加すると、製剤中の固体レベルが低くなるのがわかる。その他のポリリン酸塩を化学洗浄剤および/またはう蝕予防剤として用いてもよい。
【0036】
実施例2は、STPの代わりに、混合したピロリン酸塩を用いた同等の製剤である。水酸化ナトリウムを添加してpHを高めることにより、ポリリン酸塩成分の安定性を高めている。
【0037】
実施例3は、トリメタリン酸塩を用い、実施例4はヘキサメタリン酸ナトリウムを用いる。
【0038】
実施例5から、混合したカルシウム−金属イオン封鎖系を使用できることがわかる。この実施例は、様々なポリリン酸塩を組み合わせている。
【0039】
実施例6は、カルシウム−金属イオン封鎖剤として、有効量のポリカルボキシレート、すなわちクエン酸三ナトリウムを用いる。
【表2】

【0040】
実施例7から、研磨シリカの欠如を補うために増粘シリカを増加する必要はないことが明らかである。この実施例では、増粘シリカのレベルは、標準レベルの研磨材(6.5%)を含む製剤と同じである。しかし、ゴムレベルを高めることにより適度の粘性を維持する。
【0041】
実施例8から、本発明に従い透明なゲルを調製できることがわかる。この場合、所定のカルシウム−金属イオン封鎖塩のレベルをその溶解限界以下、もしくは限界をわずかに上回る程度に維持することが重要であり、従って、様々な塩の組み合わせを用いる。またこの実施例から、ポリリン酸塩をカルボキシレートカルシウム−金属イオン封鎖剤と組み合わせて使用できることもわかる。
【0042】
実施例9は、シリカを製剤からすべて排除しても、カルボキシレートカルシウム−金属イオン封鎖剤から良好な洗浄を維持できることを示す。
【0043】
実施例10は、本発明の製剤に低レベルの研磨シリカの含有が可能であることを示す。最終RDA値が30以下であれば、本発明の顕著な洗浄効率が保持されることがわかる。
【0044】
実施例11は、低粘度液体練り歯みがき製剤を示す。
【0045】
実施例12は、双性イオン界面活性剤を含む製剤を示し、この界面活性剤を用いることにより、口腔組織に起こりうる刺激を最小限に抑えることができる。
【表3】

【0046】
実施例13は、知覚過敏の歯の痛みを軽減する治療量の硝酸カリウムを含む本発明の製剤である。
【0047】
実施例14は、トリクロサン(Triclosan)を含有させた本発明の抗歯肉炎製剤である。
【0048】
実施例15は、極めて有効な窩洞予防を達成するために設計された本発明の製剤であり、2,500 ppmフッ化物、キシリトールおよびカゼインホスホペプチドを含む。
【0049】
実施例16は、歯垢を抑制するための活性酵素を含む本発明の製剤であり、ノニオン界面活性剤を用いることにより、生物学的分子の安定性を最大限にする。
【0050】
実施例17は、加圧エーロゾル容器から計量分配するのに適した本発明の製剤である。
【表4】

【0051】
表4に示す14%Zeodent 113研磨シリカ製剤のRDAを試験した。RDA値は本発明の製剤のそれより高い。
【0052】
洗浄効果および研磨性試験
実施例1に記載した製剤の洗浄効果を試験した。Layerらの方法を用いて、水を負の対照とし、標準的研磨材含有の対照歯磨きペースト製剤(表1参照)と比較して、この製剤を試験した。また、製剤をインディアナ大学、口腔衛生研究所にRDA試験のために送付した。汚れ除去と研磨性についての値を以下の表5に示す。
【表5】

【0053】
表5からわかるように、本発明の実施例1に従う製剤の研磨性は極めて低かった(RDA=9.99)。対照ペーストの研磨性は、この種の製剤に予想される範囲内であった。しかし、プロトタイプ製剤の洗浄値は、研磨材含有対照の115.5であり、極めて有効な洗浄性能が明らかにされた。また同表から、水での歯みがきはこの基質から汚れを除去しないこともわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤ではない可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤を含む歯みがき剤組成物であって、該組成物は、30以下のRDA値および50以上のIVSR値(対照と比較したとき)、ならびに口腔に許容可能なビヒクルを有し、その際、上記カルシウム金属イオン封鎖剤が、組成物の1〜20重量%の比率で存在し、研磨材が組成物の0〜5重量%の比率で存在する、上記歯みがき剤組成物。
【請求項2】
前記RDA値が20以下であり、前記IVSR値が250までである、請求項1に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項3】
カルシウム金属イオン封鎖剤が組成物の2〜15重量%の量存在する、請求項2に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項4】
前記可溶性カルシウム金属イオン封鎖剤がカルシウムキレート剤である、請求項3に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項5】
前記カルシウムキレート剤がポリリン酸塩またはピロリン酸塩である、請求項4に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項6】
前記ピロリン酸塩がトリポリリン酸五ナトリウムである、請求項5に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項7】
前記組成物中に0重量%の研磨材が存在する、請求項6に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項8】
水、ソルビトール、グリセリン、PEG、香味料、SLS、ナトリウムサッカリン、キサンタムガムおよびフッ化ナトリウムを含む通常の基材中に14%Zeodent 113研磨シリカを含む対照歯みがき製剤と比較して前記IVSR値が測定される、請求項7に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項9】
天然の歯または義歯を治療するのに用いる、前記請求項のいずれか一項に記載の歯みがき剤組成物。
【請求項10】
折りたたみ可能な容器中に備えることができる粘性の押出し可能な流体の形態をした、前記請求項のいずれか一項に記載の歯みがき剤組成物。

【公表番号】特表2007−505863(P2007−505863A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526612(P2006−526612)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010629
【国際公開番号】WO2005/027858
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】