説明

可溶性組換えインフルエンザ抗原

本発明は、赤血球凝集素外部ドメインおよびオリゴマー化ドメインを含む組換え可溶性三量体赤血球凝集素(rHA)タンパク質を提供する。rHAは可溶性ホモ三量体として産生され、シグナルペプチドおよび/または小胞体(ER)保持シグナルをさらに含むことができる。本発明は、本発明のrHAをコードする核酸に加えて、核酸を含むベクターおよびキメラコンストラクトも指向する。rHAを産生する方法も提供される。本明細書に記載されたrHAは、インフルエンザワクチンの製剤化に使用することができるか、または既存のワクチンの濃縮に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可溶性組換えインフルエンザ抗原の産生に関する。より具体的には、本発明は免疫原性を保持する可溶性組換えインフルエンザ抗原の産生を指向する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、呼吸系ウイルスに起因するヒトにおける代表的な死因である。一般的な病徴は熱、咽頭炎、息切れおよび筋肉痛を特に含む。インフルエンザシーズンの間に、インフルエンザウイルスは、世界中で集団の10〜20%に感染し、毎年250,000〜500,000人の死亡をもたらす。
【0003】
インフルエンザウイルスは、存在する核タンパク質およびマトリックスタンパク質抗原に基づいてA型、B型またはC型へと分類される。インフルエンザA型ウイルスは、表面の糖タンパク質が提示する赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の組み合わせに従って亜型へとさらに分類することができる。HAは、ウイルスが宿主細胞に結合し浸透する能力を決定する。NAは宿主細胞およびウイルス表面タンパク質上のグリカン鎖から末端シアル酸残基を除去し、それによりウイルス凝集を妨害し、ウイルス移動性を促進する。現在、16個のHA(H1〜H16)および9個のNA(N1〜N9)亜型が認識されている。各々のA型インフルエンザウイルスは1つの型のHAおよび1つの型のNAの糖タンパク質を提示する。一般的には、各々の亜型は種特異性を示し、例えば、すべてのHAおよびNA亜型は鳥類に感染することが公知であるが、亜型H1、H2、H3、H5、N1およびN2のみがヒトに感染することが示されている。H5およびH7を含むインフルエンザウイルスはインフルエンザA型ウイルスの最も高病原性の形態と判断され、将来のパンデミックを引き起こす可能性が最も高い。
【0004】
インフルエンザパンデミックは通常、高度に伝播性の毒性のインフルエンザウイルスによって引き起こされ、疾病および死亡のレベルの上昇を世界的にもたらしうる。新しいインフルエンザA型亜型の出現は20世紀中で4つの大きなパンデミックをもたらした。1918〜1919年のスペインかぜ(H1N1ウイルスによって引き起こされた)は、1917年から1920年の間に世界中で5000万人以上の死亡をもたらした。新しい亜型の出現のリスクまたは動物に固有の亜型のヒトに対する伝播のリスクは常に存在する。特に重要なものは鳥類インフルエンザ(「トリインフルエンザ」とも呼ばれる)の高度に毒性の形態であり、大発生が世界中のいくつかの国で報告されている。多くの事例において、このトリインフルエンザは48時間以内に100%に近い死亡率をもたらしうる。最初に1997年に香港で同定された鳥類インフルエンザウイルス(H5N1)の他のアジア諸国およびヨーロッパへの広がりは、野鳥の移動パターンに関連することが提唱されている。
【0005】
ヒトに対するウイルスの感染率が高くなりうる懸念が増加している。ヒトの健康のための主要な問題は、インフルエンザウイルスが抗原的に不安定である、すなわち迅速に変異するという事実である。鳥類インフルエンザウイルスがヒトウイルスと接触すれば、鳥類ウイルスの遺伝子再結合は、ヒトにおける重症疾患または死亡を引き起こしうる高病原性インフルエンザウイルスをもたらすだろう。さらに、かかる変異は、ヒトにおいて容易に伝播されるインフルエンザウイルスをもたらすだろう。
【0006】
ヒトのインフルエンザに対抗する現行の方法は毎年のワクチン接種による。毎年、世界保健機構はその年のインフルエンザワクチンへの組入れのために3つのウイルス株(受精卵中で産生される)を選択する。しかしながら、毎年産生されるワクチン用量の数は世界の集団のワクチン接種には十分ではない。例えば、カナダおよび米国は集団の約3分の1の免疫に十分なワクチン用量を得るが、欧州連合では集団の17%しかワクチン接種することができない。インフルエンザワクチンの世界中の現行の産生は、世界的なインフルエンザパンデミックに直面して不十分であろうことは明らかである。従って、政府および民間産業の両方が効果的なインフルエンザワクチンの産生へ関心を持つようになった。
【0007】
今までに述べたように、インフルエンザウイルスワクチンを得る現行の方法は受精卵中での産生による。ウイルスを受精卵中で培養し、続いてウイルスの不活性化およびウイルス糖タンパク質の精製を行う。この方法は抗原エピトープおよび翻訳後修飾を維持しているが、全ウイルスの使用に起因する汚染リスクおよびウイルス株に依存する収率変動性を含む多数の短所がある。卵の中への導入に起因するウイルスの遺伝的異質性から、最適レベル以下の防御が生じうる。他の短所は、卵を得るための大規模な計画、精製において使用される化学物質に起因する汚染リスク、および長期の生産時間を含む。さらに、卵タンパク質に過度に感受性のある人は、ワクチンの服用にふさわしい候補ではない。
【0008】
インフルエンザウイルスは、卵の使用を回避するために哺乳類細胞培養(例えばMDCK細胞またはPERC.6細胞または同種のもの)においても産生されている。別のアプローチは、ウイルス遺伝子による細胞の形質転換によってウイルスが産生されるリバースジェネティクスである。しかしながら、これらの方法は手の込んだ方法および特殊な培養環境に加えて全ウイルスの使用も必要とする。
【0009】
ワクチンとしてのウイルスDNAの使用が探究されてきた。この技術において、防御はヒト細胞中でのウイルス抗原の発現によって得られ、次いで抗原は異種の抗原として認識され、それは特異的な抗体反応をもたらす。しかしながら、ヒト細胞ゲノムのデターミナントの一部の中へのDNAの導入からの癌遺伝子活性化のリスク(重要な短所)が存在する。
【0010】
ウイルスDNAにより形質転換された昆虫細胞または植物細胞において発現された組換えウイルス抗原を含むワクチンもダウ・アグロサイエンス(Dow Agroscience)社によって調製されている(例えばWO2004/098530を参照)。生ウイルスの使用と関連したリスクが回避され生産プロセスは短くなるが、タンパク質立体配座および翻訳後修飾は影響を受ける。抗原は細胞膜に結合するので、スケールアップおよび精製工程も比較的複雑である。さらに、動物における効果的な免疫のために必要とされるバキュロウイルス組換えHAの用量は受精卵中で産生された天然のHAよりも10倍高い。両方の事例において、ウイルス抗原発現のレベルは低い。
【0011】
膜タンパク質の精製と関連した難点を回避する取り組みにおいて、Huang et al(2001, Vaccine, 19:2163-2171)は、麻疹HAの膜貫通領域および細胞質尾部をER保留シグナルと置換した。生じたHAタンパク質は、経口ワクチン(食べるワクチン)の開発のためにタバコ細胞中で産生された。発現されたHAは、膜貫通領域を持つものほどER中で強く保持されず、したがって精製手順は単純化される。しかしながら、HAの天然の三量体形態はそれらの条件中で形成することができず、組換えタンパク質の免疫原性に影響を与えうる。
【0012】
Saelens et al(1999, Eur. J. Biochm, 260:166-175)は、酵母(ピキア・パストリス(Pichia pastoris))中で単量体HAの分泌をもたらす膜貫通領域を欠損するHA遺伝子を発現した。しかしながら、この形態は三量体HAほど免疫原性ではない。
【0013】
インフルエンザから世界人口を守り、将来のパンデミックを食い止めるために、ワクチン製造業者は、ワクチン用量を産生する効果的で迅速な方法を開発する必要があるだろう。ワクチンを産生するための受精卵の現行の使用は不十分であり、長いプロセスを含む。組換え技術はインフルエンザ抗原の産生に対する有望なアプローチを供する。しかしながら、赤血球凝集素の産生は、低収率で複雑な抽出プロセスを伴う膜結合タンパク質、または免疫抗原性の低い可溶性タンパク質に限定されている。
【発明の概要】
【0014】
本発明は可溶性組換えインフルエンザ抗原の産生に関する。より具体的には、本発明は、三量体集合および免疫原性を保持する可溶性組換えインフルエンザ抗原の産生を指向する。
【0015】
本発明の目的は可溶性組換えインフルエンザ抗原を提供することである。
【0016】
本発明は赤血球凝集素ドメインおよびオリゴマー化ドメインを含む組換え赤血球凝集素(rHA)を提供する。rHAは可溶性ホモ三量体として産生される。タンパク質はシグナルペプチドおよび/または小胞体(ER)保留シグナルをさらに含むことができる。
【0017】
本発明は、直前に記載されたようなrHAをコードするヌクレオチド配列も提供する。
【0018】
本発明は、a)赤血球凝集素ドメインをコードするヌクレオチド配列と;b)オリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列とを含む核酸配列をさらに提供する。核酸は、ホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードする。核酸は、シグナルペプチドおよび/または小胞体(ER)保留シグナルをコードするヌクレオチド配列をさらに含むことができる。
【0019】
本発明は、上記されたようなヌクレオチドを含むベクターも提供する。
【0020】
さらに本発明は、上記されたようなrHAを発現する宿主細胞、直前に記載されたようなヌクレオチドにより形質転換された宿主細胞、または直前に記載されたようなベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。
【0021】
本発明によって、組換えrHAタンパク質を産生する方法も提供される。該方法は、a)赤血球凝集素ドメインをコードするヌクレオチド配列であって、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードするヌクレオチド配列と、b)オリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列とを含むベクターを、宿主細胞に提供すること、次いでrHAを発現することを含む。
【0022】
本発明は、植物内で組換え赤血球凝集素(rHA)を発現する方法をさらに提供する。第1の工程において、赤血球凝集素ドメインをコードするヌクレオチド配列であって、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードするヌクレオチド配列、およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを植物に導入する。導入工程(工程a)において、核酸は一過性様式で植物中に導入され得るか、または核酸は安定的に植物中に導入され得る。
【0023】
本発明は、a)核酸配列を前記植物またはその一部に導入する工程であって、前記核酸配列が、赤血球凝集素ドメインおよびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された制御領域を含み、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードする核酸配列である工程と;b)トランスジェニック植物を増殖させて、それによってrHAを産生する工程を含む、植物中で組換え赤血球凝集素(rHA)を産生する方法も提供する。導入工程(工程a)において、核酸は一過性様式で植物中に導入され得るか、または核酸は安定的に植物中に導入され得る。
【0024】
rHAは産生するには非常に複雑な分子である。現行の産生システムからの組換えHAの発現レベルおよび収率は低く、それゆえ生産コストは高い。これは、主として合成の間に集合のために複雑なプロセスを行わなくてはならないタンパク質の複雑な三量体構造のためである。さらに、HAは膜貫通領域を有しており、高度に糖鎖が付加された巨大タンパク質である。HAの可溶性形態の産生は、より高いレベルでの産生を可能にし、精製プロセスの複雑さを低下させるだろう。これは生産コストに重要な影響を与えるだろう。可溶性α−ヘリックス、またはHAタンパク質の外部ドメインのコイルドコイルコアと構造的に適合するHAの安定化に適切な他の二次構造で、膜貫通領域を置換することは、安定した可溶性HA三量体を産出することが示される。かかる組換えタンパク質は、現行のインフルエンザワクチンを濃縮するために、または新しいワクチンの調製において、使用することができる。
【0025】
本発明のこの要約は、必ずしも本発明のすべての特色を記載しない。
これらおよび本発明の他の特色は、添付の図面を参照する以下の説明からより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】天然に存在する赤血球凝集素(HA)タンパク質のドメインの概略図を示した図である。
【図2】GCN4−pIIペプチドのアミノ酸配列(配列番号:1)を示した図である。
【図3】PDIのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列(配列番号:6および7;GenbankアクセッションZ11499)(アルファルファのシグナルペプチド)を示した図である。PDIシグナルペプチドはマウスERp59に相同である。BglII制限部位は太字で示される。
【図4】インフルエンザ株A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)(GenbankアクセッションAY289929;プライマリアクセッションユニプロット(UniProt)KB/TrEMBL:Q6WG00)からのHAのアミノ酸配列(配列番号:8)を示した図である。rHAシグナルペプチドはイタリック体で示される。HA0の切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれている。膜貫通領域は灰色の背景で示される。
【図5A】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。PDIシグナルペプチドおよび膜貫通領域および細胞質尾部を含む全長rHAのアミノ酸配列(配列番号:9)である。膜貫通領域は灰色の背景で示される。
【図5B】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。SEKDEL保留シグナルを使用するER保留rHAのアミノ酸配列(配列番号:10)である。保留シグナルは灰色の背景で示される。
【図5C】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。HDEL保留シグナルを使用するER保留rHAのアミノ酸配列(配列番号:11)である。保留シグナルは灰色の背景で示される。
【図5D】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。膜貫通領域のない可溶性rHAのアミノ酸配列(配列番号:12)である。
【図5E】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。GCN4−pII三量体ペプチドを使用する可溶性三量体rHAのアミノ酸配列(配列番号:13)である。GCN4−pIIペプチドは灰色の背景で示される。
【図5F】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。GCN4−pII三量体ペプチドを使用する可溶性三量体rHAのアミノ酸配列(配列番号:14)であり、ER中で保留される。GCN4−pIIペプチドは灰色の背景で示され、SKDEL保留シグナルはイタリック体で示される。
【図5G】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。PRD三量体ペプチドを使用する可溶性三量体rHAのアミノ酸配列(配列番号:15)である。PRDペプチドは灰色の背景で示される。
【図5H】本発明に従う様々なrHAコンストラクトのアミノ酸配列を示した図である。アミノ酸番号付けはHAのもとのアミノ酸番号付けに従って合わせた。PDIシグナルペプチドはイタリック体で示され、HA0切断部位は太字で示され、融合ペプチドは下線が引かれ、終止コドンは*によって表わされる。PRD三量体ペプチドを使用して、可溶性三量体rHAのアミノ酸配列(配列番号:16)で、ER中で保留される。PRDペプチドは灰色の背景で示され、保留シグナルはイタリック体で示される。
【図6A】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。HA0遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:17)を示す。
【図6B】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。膜貫通領域および細胞質尾部遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:18)を示す。
【図6C】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。ER保留SEKDEL遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:19)を示す。
【図6D】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。ER保留HDEL遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:20)を示す。
【図6E】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。GCN4−pII遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:21)を示す。
【図6F】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。ER保留GCN4−pII遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:22)を示す。
【図6G】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。PRD遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:23)を示す。
【図6H】本発明に従う様々な断片のヌクレオチド配列を示す。 非コード配列はスモールキャピタルで提示され、有用な制限部位は下線が引かれる。ER保留PRD遺伝子断片のヌクレオチド配列(配列番号:24)を示す。
【図7】本発明の1つの実施形態に従う、pCAMBIAのバイナリープラスミド中のrHA転移DNA(t−DNA)の概略図である。
【図8】タバコにおけるrHA発現の免疫検出を示すウエスタンブロットである。レーン:1)純粋なrHAスタンダード(1ng);2)1ngのスタンダードrHAを10μgの植物抽出物の中へ添加したもの;3)10μgの植物抽出物;4)コンストラクト#540を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物;5)コンストラクト#541を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物;6)コンストラクト#542を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物;7)コンストラクト#544を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物;8)コンストラクト#545を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物;9)コンストラクト#546を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物;および10)コンストラクト#547を発現するバイオマスからの10μgのタンパク質抽出物。
【図9】5μg pf抽出物により、タバコにおけるrHA発現の免疫検出を示すウエスタンブロットを示した図である。図9Aは、N.ベンサミアナ(N.benthamiana)からの結果を示し、図9Bは、N.タバカム(N.tabacum)からの結果を示す。レーン:1)パネルB、D及びA、C各々について、5μgの植物抽出物;2)パネルB、D及びA、C各々について、1ngのスタンダードrHAを5μgの植物抽出物の中へ添加したもの;3)コンストラクト#540を発現するバイオマスからの抽出物;4)コンストラクト#541を発現するバイオマスからの抽出物;5)コンストラクト#542を発現するバイオマスからの抽出物;6)コンストラクト#544を発現するバイオマスからの抽出物;7)コンストラクト#545を発現するバイオマスからの抽出物;8)コンストラクト#546を発現するバイオマスからの抽出物;および9)コンストラクト#547を発現するバイオマスからの抽出物。
【図10】還元条件下で、5μg pf抽出物により、タバコにおけるrHA発現の免疫検出を示すウエスタンブロットである。図10Aは、N.ベンサミアナからの結果を示す。図10Bは、N.タバカムからの結果を示す。レーン:1)5μgの植物抽出物;2)1ngのスタンダードrHAを5μgの植物抽出物の中へ添加したもの;3)コンストラクト#540を発現するバイオマスからの抽出物;4)コンストラクト#541を発現するバイオマスからの抽出物;5)コンストラクト#542を発現するバイオマスからの抽出物;6)コンストラクト#544を発現するバイオマスからの抽出物;7)コンストラクト#545を発現するバイオマスからの抽出物;8)コンストラクト#546を発現するバイオマスからの抽出物;および9)コンストラクト#547を発現するバイオマスからの抽出物。
【図11】赤血球凝集分析の結果のプレートを示した図である。列1:PBS(陰性対照);列2:PBS+1000ngのHA(PSC);列3:PBS+100ngのHA(PSC);列4:PBS+10ngのHA(PSC);列5:PBS+1ngのHA(PSC);列6:非形質転換植物抽出物;列7:非形質転換植物抽出物+1000ngのHA(PSC);列8:非形質転換植物抽出物+100ngのHA(PSC);列9:非形質転換植物抽出物+10ngのHA(PSC);列10:非形質転換植物抽出物+1ngのHA(PSC);列11:コンストラクト540(膜貫通rHA)を発現する植物抽出物;および列12:コンストラクト544(GCN4に融合した可溶性rHA)を発現する植物抽出物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は可溶性組換えインフルエンザ抗原の産生に関する。より具体的には、本発明は免疫原性を保持する可溶性組換えインフルエンザ抗原の産生を指向する。
【0028】
以下の説明は好ましい実施形態である。
【0029】
本発明は、赤血球凝集素ドメインおよびオリゴマー化ドメインを含む組換え赤血球凝集素(rHA)を提供する。組換えタンパク質は可溶性ホモ三量体として産生される。rHAはシグナルペプチドおよび/または小胞体(ER)保留シグナルも含むことができる。
【0030】
インフルエンザは、A型、B型またはC型へと分類されるインフルエンザウイルスによって引き起こされる。A型ウイルスおよびB型ウイルスは多くの場合流行と関連する。インフルエンザA型ウイルスは、表面の糖タンパク質が提示する赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)の組み合わせに従って亜型へとさらに分類することができる。現在、16個のHA(H1〜H16)および9個のNA(N1〜N9)亜型が認識される。各々のA型インフルエンザウイルスは1つの型のHAおよび1つの型のNAの糖タンパク質を提示する。
【0031】
組換え赤血球凝集素(recombinant hemagglutinin)(「組換えHA」および「rHA」とも呼ばれる)という用語によって、当業者に周知の組換え技術によって産生される赤血球凝集素タンパク質が意味される。赤血球凝集素(HA)はA型インフルエンザウイルスに見出されるウイルス表面タンパク質である。現在までに、16個のHA亜型(H1〜H16)が同定されている。HAは、感染宿主細胞の表面上の炭水化物モイエティのシアル酸残基へのウイルスの結合に関与する。細胞によるウイルスのエンドサイトーシスに続いて、HAタンパク質は大幅なコンフォメーション変化を受け、それによりウイルスと細胞膜の融合ならびに細胞の中へのウイルス侵入が開始される。
【0032】
HAは、一般的にはシグナルペプチド、HA0ドメイン、C末端での膜通過アンカー部位および小さな細胞質尾部を含む、ホモ三量体の膜のI型糖タンパク質である(図1)。「ホモ三量体(homotrimer)」または「ホモ三量体の」という用語は、3個のHAタンパク質分子によってオリゴマーが形成されることを示す。HAタンパク質は75kDaの単量体の前駆体タンパク質(HA0)として合成され、それは伸長した三量体タンパク質へと表面で集合する。三量体化が起こる前に、前駆体タンパク質HA0は、ジスルフィド結合によって連結される2つのポリペプチド鎖(HA1(328のアミノ酸)およびHA2(221のアミノ酸))へと、保存された活性化切断部位(融合ペプチドとも呼ばれる)で切断される。このステップはウイルス感染性のために重要であるが、タンパク質の三量体化に必須ではない可能性がある。宿主細胞の小胞体(ER)膜内部へのHAの挿入、シグナルペプチド切断、およびタンパク質糖鎖付加は、翻訳と同時に起こる事象である。HAの正しい再折畳みは、タンパク質の糖鎖付加および6個の鎖内ジスルフィド結合の形成を必要とする。HA三量体はシスゴルジ複合体およびトランスゴルジ複合体内で集合し、膜貫通領域が三量体化プロセスにおいて役割を果たす。ブロメラインで処理したHAタンパク質(膜貫通領域を欠損する)の結晶構造は、インフルエンザ菌株の中で高度に保存された構造を示した(Russell et al. 2004)。感染プロセス(前駆体HA0が2つのポリペプチド鎖HA1およびHA2へと切断されることを必要とする)の間にHAが大きなコンフォメーション変化を受けることも立証された。
【0033】
本発明の組換えHAは、任意の亜型からなり得る。例えば、HAは、亜型H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16からなり得る。本発明のrHAは、当技術分野において公知の任意の赤血球凝集素の配列に基づいたアミノ酸配列を含むことができる。さらに、rHAは、新興インフルエンザウイルスから単離される赤血球凝集素の配列に基づくことができる。
【0034】
本発明のrHAは、赤血球凝集素ドメインおよびオリゴマー化ドメインを含むキメラタンパク質コンストラクトでありえる。「赤血球凝集素ドメイン」という用語は、HA0ドメイン、またはHA1およびHA2のドメインのいずれかを含むアミノ酸配列を表す。言いかえれば、rHAタンパク質はプロセシングを受ける(すなわち、HA1ドメインおよびHA2ドメインを含む)か、またはプロセシングを受けない(すなわち、HA0ドメインを含む)。赤血球凝集素ドメインは、天然に存在するタンパク質中で見出されるシグナルペプチド、膜貫通領域または細胞質尾部を含まない。「オリゴマー化ドメイン」(「三量体ペプチド」とも呼ばれる)は、rHAタンパク質のオリゴマー化を促進するドメインを表す。オリゴマー化ドメインは、三量体の形成を促進する当技術分野において公知の任意のアミノ酸配列でありえる。例えば、オリゴマー化ドメインは、異種ペプチド(例えば、ロイシンジッパー、コイルドコイル構造を取り入れたペプチド)でありえる。オリゴマー化ドメインは、置換する膜貫通領域に類似する長さおよび/または構造でありえ、それは26アミノ酸長である。あるいは、オリゴマー化ドメインは、置換する膜貫通領域(26アミノ酸)および細胞質尾部(10アミノ酸)に類似する長さおよび/または構造でありえる。例えば、および限定されることなく、オリゴマー化ドメインは、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50アミノ酸長でありえる。具体的な非限定例において、オリゴマー化ドメインは約25〜48アミノ酸長、またはその間の任意の量である。適切なオリゴマー化ドメインの非限定例は、GCN4−pIIペプチド(Harbury et al, 1993, Science, 262:1401-7)、トウモロコシγ−ゼイン(maize γ-zein)のプロリンリッチドメイン(PRD)、バクテリオファージT4フィブリチン(Strelkov et al., 1996, Virology 219:190-194)、またはフィブロネクチンもしくはコレクチンファミリーにおいて同定された三量体化モジュールを含む。
【0035】
具体的な非限定例において、オリゴマー化ドメインは、GCN4−pIIペプチド(GCN4酵母ロイシンジッパーのバリアント)でありえる。このGCN4変異はαヘリックス上の7アミノ酸ごとに存在するaポジションおよびdポジション(pII)の両方でIle残基を持ち、高い三量体化の傾向をもたらす。三量体の融解温度(Tm)は100℃を超え、オリゴマーに高い固有の安定性を付与する(Harbour et al.)。GCN4−pIIのアミノ酸配列を図2中に示す。GCN4−pIIはオリゴマー化ドメインとして使用に適切であり、GCN4−pIIの29のアミノ酸配列はHAドメイン配列のC末端部に配置され、26アミノ酸の膜貫通領域を本質的に置換する。所望されるならば、組換え構造がα−ヘリックスで終わらないように、追加のアミノ酸をrHAのC末端部に配置することができる。例えば、しかし限定されることなく、Ser−Ala−Alaのアミノ酸残基をGCN4−pIIのC末端部に追加することができる。
【0036】
別の実例において、オリゴマー化ドメインはトウモロコシγ−ゼインのPRD(本明細書において「PRD」とも呼ばれる)でありえる。トウモロコシのガンマ−γ−ゼインは、ER内部のタンパク質顆粒中にスタックをいったん貯蔵することが公知である。合成PRDペプチドは両親媒性ポリプロリンIIコンフォメーションを取り入れ、それ自体を三量体として集合させる(Kogan et al, 2002, Biophysical J., 83:1194-1204)。その天然の形態において、PRDはペプチドPPPVHL(配列番号:2)の8個の反復を含む。トウモロコシのガンマ−γ−ゼインのPRDペプチドもHAドメインのC末端に配置され、膜貫通アンカーを置換する。PRDの天然の形態がかなり長いので、ペプチド長が変動した(4個、6個または8個ペプチド反復、すなわち24、36または48アミノ酸長)PRDを提供することも本発明の範囲内である。所望されるならば、ヘリックスに残されたポリプロリンに向けたPRDペプチド鎖の配向を可能にするために、アミノ酸リンカーをHAドメインとPRDとの間に配置することができる。当技術分野において公知の任意の適切なペプチドリンカーを使用することができる。例えば、およびいかなる方式でも限定されることなく、Gly−Gly−Ala−Gly(配列番号:3)などのテトラペプチドを使用することができる。さらに、所望されるならば、組換え構造がα−ヘリックスで終わらないように、追加のアミノ酸をrHAのC末端部に配置することができる。例えば、しかし限定されることなく、Ser−Ala−Alaアミノ酸残基をPRDのC末端部に追加することができる。
【0037】
別の非限定例において、オリゴマー化ドメインはバクテリオファージT4フィブリチンでありえる(Strelkov et al., 1996, Virology 219:190-194)。このドメインはフィブリチンのC末端部の最後の29アミノ酸残基を含む。
【0038】
さらに別の非限定例において、オリゴマー化ドメインは、テトラネクチンファミリーにおいて同定された三量体化モジュールである、WO98/56906(参照として本明細書に組み込まれる)中で開示される三量体化モジュールでありえる。テトラネクチン三量体化モジュールは、三量体が60℃、または700℃でさえも存在することが示されるという点でも安定性を示す。三量体化モジュールはrHAに共有結合で連結され、2つの他の三量体化モジュールにより複雑な安定を形成することができる。オリゴマー化ドメインの別の実例は、コレクチンファミリーにおいて同定された、WO95/31540(参照として本明細書に組み込まれる)で開示される三量体化ペプチドである。ペプチドは約25乃至約40アミノ酸長であり、コレクチンファミリー中のタンパク質のネック領域に由来する。
【0039】
本発明に従うrHAはシグナルペプチドをさらに含むことができる。シグナルペプチドは、所望される細胞コンパートメントまたは膜に組換えタンパク質を方向付ける当技術分野において公知の任意の適切なペプチドでありえる。例えば、および限定されることなく、ERにHAを方向付ける天然のHA中に見出されるシグナルペプチドを使用することができる。別の非限定例において、シグナルペプチドはPDI(アルファルファのシグナルペプチド)でありえる。PDIのアミノ酸およびヌクレオチド配列は図3中で示される。有利なことには、PDIシグナルペプチドはbglII制限部位を有し、それはクローニングのために有用でありえる。
【0040】
上記されるようなrHAは、小胞体(ER)保留シグナルもさらに含むことができる。当業者に公知の任意の適切なER保留シグナルを使用することができる。例えば、しかしいかなる方式で限定されることなく、Ser−Glu−Lys−Asp−Glu−Leu(SEKDEL;配列番号:4)またはHis−Asp−Glu−Leu(HDEL;配列番号:5)のER保留シグナルを使用することができる。選択されたER保留シグナルは、rHAタンパク質配列のC末端部に存在することができる。有利なことには、植物中の組換えタンパク質のER保留は発現レベルを2乃至10倍に改善することがいくつかの事例において示されている(Schillberg et al, 2003, Cell Mol. Life Sci. 60:443-445)。理論に束縛されるものではないが、ER保留シグナルは、ERとゴルジ複合体との間のタンパク質の行ったり来たりの動きを可能にし、それは三量体化を可能にする。
【0041】
「可溶性」という用語は、rHAが可溶性形態で宿主細胞中で産生されることを示す。上記されるように、組換えHAの可溶性形態への変換は、HAドメインと構造的に適合する可溶性αヘリックスによる膜貫通疎水性ドメインの置換から生じる。可溶性形態でのrHAの発現は収率を増加させ(より高い発現レベル)、精製の複雑度を低下させ、したがって生産コストを低下させる。
【0042】
本発明は上記されるようなrHAをコードする核酸も提供する。核酸は、赤血球凝集素ドメイン(HA0)をコードするヌクレオチド配列、およびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列を含むキメラコンストラクトである。rHAをコードする核酸は、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列および/またはER保留シグナルをコードするヌクレオチド配列も含むことができる。
【0043】
本発明は、上記されるように、調節エレメントに作動可能に連結されたrHAをコードする核酸を含むキメラ遺伝子コンストラクトをさらに指向する。「調節エレメント」または「調節領域」によって、典型的には遺伝子の上流であるが必ずしもそうではない核酸の一部が意味され、DNAもしくはRNAのいずれか、またはDNAおよびRNAの両方のからなることができる。調節エレメントは、器官特異性を媒介することが可能であるか、または発生的なもしくは時間的な遺伝子活性化を制御することが可能なものを含むことができる。さらに、「調節エレメント」は、プロモーターエレメント、コアプロモーターエレメント、外部刺激に応答する誘導可能エレメント、構成的に活性化されるエレメント、または負の調節エレメントまたは転写エンハンサーなどのプロモーター活性をそれぞれ低下または増加させるエレメントを含む。調節エレメント活性を示すヌクレオチド配列によって、プロモーター、コアプロモーター、構成的調節エレメント、負のエレメントもしくはサイレンサー(すなわちプロモーター活性を低下させるエレメント)、または転写もしく翻訳のエンハンサーとして、対象となる機能のコード配列と作動可能に連結された場合のヌクレオチド配列が意味される。
【0044】
「作動可能に連結された」によって、特定の配列(例えば調節エレメントおよび対象となるコード領域)が、遺伝子発現の媒介または修飾などの意図された機能を実行するために直接または間接的に相互作用することが意味される。作動可能に連結された配列の相互作用は、例えば、作動可能に連結された配列と相互作用するタンパク質によって媒介されうる。
【0045】
調節エレメントは、本明細書において使用される時、転写開始または転写の後に活性のあるエレメント、例えば、翻訳および転写のエンハンサー、翻訳および転写のリプレッサー、ならびにmRNAの安定性または不安定性のデターミナントなどの遺伝子発現を修飾する調節エレメントも含む。本開示の文脈において、「調節エレメント」という用語は、構造遺伝子のコード配列に対して通常上流(5’)であるが必ずしもそうではないDNAの配列も指し、それはRNAポリメラーゼおよび/または特定の部位での転写の開始に必要とされる他の因子のために認識を提供することによって、コード領域の発現を制御する配列を含む。特定の部位での開始を保証するためにRNAポリメラーゼまたは他の転写因子のために認識を提供する調節エレメントの一例は、プロモーターエレメントである。プロモーターエレメントは、転写の開始に関与するコアプロモーターエレメントに加えて、遺伝子発現を修飾する他の調節エレメント(上でリストされるような)を含む。イントロン内、またはコード領域配列の3’に位置するヌクレオチド配列も、対象となるコード領域の発現の調節に寄与できることを理解すべきである。調節エレメントは、転写開始の部位の下流(3’)、もしくは転写される領域内、または両方に位置するエレメントも含むことができる。本発明の文脈において、転写後の調節エレメントは、転写開始の後に活性のあるエレメント、例えば翻訳および転写エンハンサー、翻訳および転写リプレッサー、mRNA安定性デターミナントを含むことができる。
【0046】
調節エレメントまたはその断片は、異種調節エレメントの活性を修飾するために、異種調節エレメントまたはプロモーターと作動可能に結合(作動可能に連結)させることができる。かかる修飾は、異種調節エレメントの転写活性の促進または抑制、転写後事象の修飾、または異種調節エレメントの転写活性の促進/抑制および転写後事象の修飾の両方を含む。例えば、1つまたは複数の調節エレメントまたはその断片は、構成的な、誘導可能な、組織特異的なプロモーター、もしくはその断片、または調節エレメントの断片と作動可能に結合させることができ、例えば、TATA配列またはGC配列に限定されない配列は、植物、昆虫、真菌、細菌、酵母または動物細胞の内でかかるプロモーターの活性を修飾するために本発明の調節エレメントと作動可能に結合させることができる。
【0047】
発生的に調節されるもの、誘導可能なもの、および構成的なものを含むいくつかの型の調節エレメントがある。発生的に調節される調節エレメント、またはその制御下で遺伝子の差異的な発現を制御する調節エレメントは、その器官または組織の発生の間の特異的な時間で特定の器官または器官の組織内で活性化される。しかしながら、発生的に調節されるいくつかの調節エレメントは、特異的な発生段階の特定の器官または組織内で優先的に活性があってもよく、それらは、植物内の他の器官または組織中で発生的に調節される様式でも、または基底レベルでも同様に活性があってもよい。
【0048】
「プロモーター」によって、転写の開始および転写率の調節に必須のすべてのシグナルを含有するコード領域の5’末端のヌクレオチド配列またはその断片が意味される。一般的には2つの型のプロモーター(誘導可能プロモーターおよび構成的プロモーター)がある。遺伝子の組織特異的発現(例えば、種子特異的発現、または葉特異的発現)が所望されるならば、これらの組織に特異的プロモーターも用いることができる。
【0049】
誘導可能プロモーターは、インデューサーに応答して1つまたは複数のDNA配列または遺伝子の転写を直接または間接的に活性化することができるプロモーターである。インデューサーの非存在下において、DNA配列または遺伝子は転写されない。典型的には、転写を活性化するために誘導可能プロモーターに特異的に結合するタンパク質因子は不活性形態で存在し、次いでそれはインデューサーによって直接または間接的に活性形態に変換される。インデューサーは、タンパク質、代謝物質、増殖調節因子、除草剤もしくはフェノール化合物などの化学薬剤、または熱、寒冷、塩もしくは有毒物質によって直接、またはウイルスなどの病原菌もしくは病原体の作用を介して間接的に、課される生理的ストレスでありえる。誘導可能プロモーターを含有する植物細胞は、噴霧、潅水、加熱または類似する方法によってなど、細胞または植物にインデューサーを外部的に適用することによって、インデューサーに曝露することができる。誘導可能プロモーターの実例は、光調節されるアルファルファのプラストシアニンプロモーター(例えば、WO01/025455を参照);硝酸塩による施肥によって誘導することができる(3)アルファルファの亜硝酸還元酵素プロモーター(NiR;例えばW001/025454を参照);および寒冷などの環境ストレスによって誘導されるアルファルファのデヒドリンプロモーター(米国出願シリアル番号第60/757,486号)などの植物プロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0050】
構成的プロモーターは、植物の様々な部分にわたって、および植物発生の全体にわたって連続的に遺伝子の発現を方向付ける。宿主生物の形質転換された細胞、またはすべての器官もしくは組織、または両方におけるrHAの発現を駆動するために任意の適切な構成的プロモーターを使用し得る。公知の構成的プロモーターの実例は、CaMV 35S転写物(Odell et al., 1985, Nature, 313: 810-812)、コメのアクチン1遺伝子(Zhang et al, 1991, Plant Cell, 3: 1155-1165)およびトリオースリン酸イソメラーゼ1遺伝子(Xu et al, 1994, Plant Physiol. 106: 459-467)、トウモロコシユビキチン1遺伝子(Cornejo et al, 1993, Plant Mol. Biol. 29: 637-646)、シロイヌナズナユビキチン1および6遺伝子(Holtorf et al, 1995, Plant Mol. Biol. 29: 637-646)、ならびにタバコ翻訳開始因子4A遺伝子(Mandel et al, 1995 Plant Mol. Biol. 29: 995-1004)と関連するものを含む。
【0051】
本明細書において使用される時「構成的」という用語は、遺伝子がすべての細胞の型において同じレベルで発現することを必ずしも示さないが、ある程度の存在量の変動はしばしば観察されても、遺伝子が広範囲の細胞の型において発現することを示す。
【0052】
本発明のキメラ遺伝子コンストラクトは3’非翻訳領域をさらに含むことができる。3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナル、およびmRNAのプロセシングまたは遺伝子発現をもたらすことが可能な他の調節シグナルを含有するDNAセグメントを含む遺伝子の一部を指す。ポリアデニル化シグナルは、mRNAの前駆体の3Y末端にポリアデニル酸トラックの追加をもたらすことによって通常特徴づけられる。ポリアデニル化シグナルは、変動がないわけではないが、カノニカル形態5’AATAAA−3’に対する相同性の存在によって一般には認識される。
【0053】
適切な3’領域の実例は、ノパリンシンターゼ(Nos遺伝子)などのアグロバクテリウムの腫瘍誘導(Ti)プラスミド遺伝子、ならびにダイズ貯蔵タンパク質遺伝子およびリブロース−1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO)遺伝子などの植物遺伝子のポリアデニル化シグナルを含有する、3’の転写される非翻訳領域である。従って、本コンストラクトの構造遺伝子からの3’非翻訳領域は、植物における発現のためのキメラ遺伝子を構築するために使用することができる。適切な3’領域の他の実例は、プラストシアニン遺伝子もしくは亜硝酸還元酵素遺伝子またはデヒドリンアルファルファ遺伝子の配列の非コーディング3’領域を含むことができるがこれらに限定されないターミネーターである。
【0054】
本発明のキメラ遺伝子コンストラクトは、エンハンサー(翻訳エンハンサーまたは転写エンハンサーのいずれか)も必要に応じてさらに含むことができる。これらのエンハンサー領域は当業者に周知であり、ATG開始コドンおよび隣接した配列を含むことができる。完全な配列の翻訳を保証するために、開始コドンはコード配列のリーディングフレームと同調しなくてはならない。翻訳調節シグナルおよび開始コドンは天然および合成の様々な起原からでありえる。翻訳開始領域は、転写開始領域のソース、または構造遺伝子から提供されうる。配列は遺伝子を発現するように選択された調節エレメントにも由来し、mRNAの翻訳を増加させるように特異的に修飾することができる。
【0055】
さらに本発明の考慮される部分は、本発明に従うrHAをコードする核酸を含むキメラ遺伝子コンストラクトを含有する、植物、植物の一部または組織、植物細胞、樹木、樹木の一部、樹木細胞、酵母、細菌、真菌、昆虫および動物細胞である。しかしながら、本発明の調節エレメントは、形質転換に適用可能な宿主生物の範囲内の発現のために対象となるコード領域とも組み合わせることができることが理解されるべきである。かかる宿主生物は以下のものを含むが、これらに限定されない。
【0056】
−植物、単子葉植物および双子葉植物の両方、例えば、トウモロコシ、穀物用植物、コムギ、オオムギ、カラスムギ、タバコ、アブラナ、ダイズ、インゲンマメ、エンドウ、アルファルファ、ジャガイモ、トマト、チョウセンニンジン、シロイヌナズナ;これらの植物の一部または組織、例えば、これらの植物の葉、根、茎、分裂組織、花の構造体、細胞および
【0057】
−酵母、真菌、昆虫、動物および細菌細胞。
【0058】
これらの生物の形質転換および再生のための方法は当技術分野において確立され当業者に公知であり、形質転換され再生された植物を得る方法は本発明に重大ではない。
【0059】
「形質転換」によって、遺伝子型、表現型、または両方によって明示される遺伝情報(ヌクレオチド配列)の種間の移行が意味される。キメラコンストラクトから宿主への遺伝情報の種間移行は遺伝性であり、遺伝情報の移行は安定性であるか、または移行は一過性であり遺伝情報の移行は遺伝性ではないと判断される。
【0060】
植物細胞から全植物体を再生する方法も当技術分野において公知である。一般に、形質転換された植物細胞の同定を促進するために選択マーカーが使用される場合、形質転換された植物細胞は、適切な培地(抗生物質などの選択薬剤を含むことができる)中で培養される。いったんカルスが形成されたなら、公知の方法に従う適切な植物ホルモンを用いることによって芽形成を促進することができ、シュートを植物の再生のための発根培地に移す。次いで、種子または栄養繁殖技術の使用のいずれかからの反復世代を確立するために、植物を使用することができる。
【0061】
本発明のコンストラクトは、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接的DNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを使用して、植物細胞の中へ導入することができる。かかる技術の総説については、例えばWeissbach and Weissbach、Methods for Plant Molecular Biology、アカデミー・プレス(Academy Press)社、ニューヨークVIII、pp.421-463(1988);Geierson and Corey、Plant Molecular Biology、第2版(1988);およびPlant Metabolism中のMiki and Iyer、Fundamentals of Gene Transfer in Plants. 、第2版DT. Dennis, DH Turpin, DD Lefebrve, DB Layzell(編)、アディソン−ウェスリー・ラングマンズ社(Addison Wesly, Langmans Ltd.)ロンドン、pp.561−579(1997)を参照。他の方法は、直接的DNA取込、リポソームの使用、エレクトロポレーション(例えばプロトプラストを使用して)、マイクロインジェクション、マイクロプロジェクタイルまたはウィスカー、およびバキュームインフィルトレーションを含む。例えば、Bilang, et al.(Gene 100: 247-250, 1991)、Scheid et al.(Mol. Gen. Genet. 228: 104-112, 1991)、Guerche et al.(Plant Science 52: 111-116, 1987)、Neuhause et al.(Theor. Appl Genet. 75: 30-36, 1987)、Klein et al., Nature 327: 70-73(1987);Howell et al.(Science 208: 1265, 1980)、Horsch et al.(Science 227: 1229-1231, 1985)、DeBlock et al.(Plant Physiology 91: 694-701, 1989)、Methods for Plant Molecular Biology(Weissbach and Weissbach編、アカデミックプレス社(Academic Press Inc.)、1988年)、Methods in Plant Molecular Biology(Schuler and Zielinski編、アカデミックプレス社、1989年)、Liu and Lomonossoff(J Virol Meth, 105:343-348, 2002)、米国特許第4,945,050号;第5,036,006号;および第5,100,792号、1995年5月10日に出願された米国特許出願シリアル番号第08/438,666号、および1992年9月25日に出願された第07/951,715号、(そのすべては参照として本明細書に組み込まれる)を参照。
【0062】
以下に記載されるように、本発明のコンストラクトを発現するために一過性発現方法を使用することができる。(Liu and Lomonossoff, 2002, Journal of Virological Methods, 105:343-348を参照;参照として本明細書に組み込まれる)。あるいは、Kapila et al., 1997(参照として本明細書に組み込まれる)によって記載された真空に基づく一過性発現方法を使用することができる。これらの方法は、例えば、アグロ接種またはアグロインフィルトレーション、シリンジインフィルトレーションの方法を含むが、これらに限定されず、しかしながら、他の一過性方法も上述されるように使用することができる。アグロ接種、アグロインフィルトレーション、またはシリンジインフィルトレーションにより、所望される核酸を含むアグロバクテリアの混合物は、組織、例えば、葉、植物の地上構造の一部(茎、葉および花を含む)、植物の他の一部(茎、根、花)、または全草の細胞間の空間に入り込む。表皮の通過後にアグロバクテリアは感染し、細胞の中へt−DNAコピーを移行させる。t−DNAはエピソームとして転写され、mRNAは翻訳され、感染した細胞中で対象となるタンパク質の産生をもたらすが、核の内部でのt−DNAの継代は一過性である。
【0063】
形質転換された植物細胞の同定を支援するために、本発明のコンストラクトは植物選択マーカーを含むようにさらに操作することができる。有用な選択マーカーは、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシンおよび同種のものなどの抗生物質に対する耐性を提供する酵素を含む。同様に、GUS(β−グルクロニダーゼ)などの色変化またはルシフェラーゼなどの発光によって識別可能な化合物の産生を提供する酵素は有用である。
【0064】
特異的な配列が本発明において参照される場合、これらの配列は特異的な配列に対して「実質的に相同な」それらの配列を範囲内に含むか、または配列もしくは配列の相補物は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本明細書において定義されるような1つまたは複数のヌクレオチド配列にハイブリダイズすることが理解される。ヌクレオチドの少なくとも約70%、好ましくは75%以上がヌクレオチド配列の定義された長さにわたり一致し、かかる相同配列が本明細書において開示されるように1つまたは複数の調節エレメント活性を示せば、配列は「実質的に相同」である。
【0065】
かかる配列相同性は、DNASIS内で提供されるものなどのヌクレオチド配列比較プログラムを使用して決定することができる(例えば以下のパラメーターを使用するが、これらに限定されない:ギャップペナルティ5、トップダイアゴナル数5、固定ギャップペナルティ10、k−タプル2、フローティングギャップ10、およびウィンドサイズ5)。しかしながら、比較のための配列のアライメントの他の方法は当技術分野において周知であり、例えば、Smith & Waterman(1981, Adv. Appl. Math. 2:482)、Needleman & Wunsch(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)、Pearson & Lipman(1988, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444)のアルゴリズムであり、これらのアルゴリズムのコンピューターによる遂行(GAP、BESTFIT、FASTAおよびBLAST、NIHを介して利用可能)によって、または手動アライメントおよび目視検査によって(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubel et al.編、1995年サプリメントを参照)、またはストリンジェントな条件下のサザンハイブリダイゼーションまたはノーザンハイブリダイゼーションを使用して(Maniatis et al.Molecular Cloning(A Laboratory Manual)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)社(1982年)を参照)行われるものである。好ましくは、実質的に相同な配列は、分子の定義された長さにわたり少なくとも約80%および最も好ましく少なくとも約90%の配列相同性を示す。
【0066】
1つのかかるストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、65℃で、4×SSC中で一晩(約16〜20時間)のハイブリダイゼーション、続いて65℃で、0.1×SSC中で1時間の洗浄、または65℃で、0.1×SSC中で各々20分間もしくは30分間の2回の洗浄でありえる。あるいは、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃で、50%ホルムアミド、4×SSC中で一晩(16〜20時間)、続いて65℃で、0.1×SSC中で1時間の洗浄、または65℃で、0.1×SSC中で各々20分もしくは30分間の2回の洗浄、または一晩(16〜20時間)、または65℃でChurch水性リン酸緩衝液(7% SDS;0.5M NaPO4緩衝液pH7.2;10mM EDTA)中でハイブリダイゼーション、そして50℃で0.1×SSC、0.1%SDS中で各々20分間もしくは30分間の2回の洗浄、またはユニーク配列領域については65℃で2×SSC、0.1%SDS中で各々20分間もしくは30分間2回の洗浄でありえる。
【0067】
本発明のrHAは、ワクチンを補足し、それらをより効果的にするために、および必要な投与量を減少させるために、既存のインフルエンザワクチンと併用して使用することができる。当業者に公知であるように、ワクチンは1つまたは複数のインフルエンザウイルスに対して指向し得る。適切なワクチンの実例は、サノフィ・パスツール(Sanofi−Pasteur)社、IDバイオメディカル(ID Biomedical)、メリアル(Merial)社、シノバック(Sinovac)社、カイロン(Chiron)社、ロッシュ(Roche)社、メディミューン(MedImmune)社、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)社、および同種の業者から商業的に入手可能なものを含むが、これらに限定されない。
【0068】
本発明は、ここで以下の非限定例を単なる参照として詳細に記載される。
【実施例】
【0069】
実施例1:rHAストラテジー
本発明を例示する選択されたHAは、インフルエンザ株A/ニューカレドニア/20/99(H1N1)から得られた。A/ニューカレドニア/20/99 HAはよく特徴づけられており、免疫検出ツールは商業的に入手可能である。すべてのHAの三次元構造がよく保存されるので、本発現ストラテジーは直接他のHAに適用することができる。
【0070】
rHAの発現は、アルファルファのPDIのシグナルペプチド(配列番号:3)を使用して、ERおよび分泌経路に方向付けられた。このシグナルペプチドは成熟rHAのN末端一次配列に直接融合された(図4;配列番号:8)。PDIシグナルペプチドを持つ成熟rHAからのシグナルペプチドの理論的な切断はシグナルP(SignalP)サーバー3.0を使用して確認された。
【0071】
SEKDEL(配列番号:4)保留シグナルまたはHDEL(配列番号:5)保留シグナル(両方ともrHAタンパク質配列のC末端に融合される)を使用して、rHAをER中で保留することができる。
【0072】
GCN4−pIIペプチドがオリゴマー化ドメインとして使用されたときに、それはHA0の最後のTyr残基のC末端に直接融合された。LeuはMetよりも不活性であり、もとのMetと比較して類似したパッキング体積を有するので、GCN4−pIIのポジション1でのMet残基をLeuに変化させた。アミノ酸Ser−Ala−AlaをGCN4−pIIのC末端に追加した。
【0073】
トウモロコシのガンマ−γ−ゼインのPRDを使用した場合、PPPVHL(配列番号:2)の8個の反復を持つペプチドをHAに融合して、HAの膜貫通領域を置換した。4個の最初のプロリン残基も融合物中に含まれていた。C末端システインは除外された。HAのC末端にポリプロリンヘリックスの融合を適応させるために、ペプチドGly−Gly−Ala−Gly(配列番号:3)をPRDのN末端に追加した。Ser−Ala−AlaペプチドをPRDのC末端に追加した。
【0074】
合計で、植物体中での発現を検査するために8つの異なったrHA遺伝子コンストラクトを調製した。
1.PDIシグナルペプチドを持ち、膜貫通領域を含む全長rHA(配列番号:9);
2.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去し、保留シグナルSEKDELによって置換した(配列番号:10);
3.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去し、保留シグナルHDELによって置換した(配列番号:11);
4.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去した(配列番号:12);
5.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去し、GCN4−pIIによって置換した(配列番号:13);
6.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去し、GCN4−pIIによって置換し、C末端でSEKDEL保留シグナルを持つ(配列番号:14);
7.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去し、PRDドメインによって置換した(配列番号:15);および
8.項目1のrHAから膜貫通領域および細胞質尾部を除去し、PRDドメインによって置換し、C末端でSEKDEL保留シグナルを持つ(配列番号:16)。
【0075】
実施例2:遺伝子合成
実施例1中に記載された8つの異なる遺伝子コンストラクトを合成した。インフルエンザ株A/ニューカレドニア/20/99からのHAの野生型ヌクレオチド配列は、制限部位を挿入または除去するためにのみ修飾して、クローニング工程を促進した。遺伝子配列中でこれらの小さな修飾は、生じたタンパク質のアミノ酸配列を変化させなかった。HA0遺伝子はPDIシグナルペプチドのATGと同調して5’末端にApaI制限部位を持って合成された。7個の他の遺伝子は5’末端にKpnI制限部位を持つ。すべての遺伝子は終止コドン(TAA)により3’末端で終了し、SacIおよびStuI制限部位が続く。デザインされたクローニングストラテジーに従って、以下の制限部位は最終的なプラスミド中で唯一であるようにデザインされた。ApaI、BstZ17I、SacI、KpnI、BglII、およびStuI。異なる遺伝子断片を植物バイオテクノロジー研究所(Plant Biotechnology Institute)で合成し、pUC18の中へクローン化し導入した。選択されたヌクレオチド配列情報は図6中で与えられる(配列番号:17〜24)。
【0076】
実施例3:rHA融合物を発現するベクターの遺伝学的組み立て
様々なDNAコンストラクションは公知の組換えDNA技術を使用して組み立てられた。(Sambrook et al (1989) Molecular cloning: A laboratory Manual、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク)。大腸菌DH5α株を、特別の定めのない限り、バイナリーベクターの増幅のための宿主に使用した。HA0遺伝子断片は、bglIIおよびSacIの制限部位を使用して、プラストシアニンカセット(既にpdiシグナルペプチドを含有する)の中へ直接ライゲーションされるか、またはKpnI、bglIIおよびSacI制限部位を使用して、7個の他のC末端とコライゲーションした。各々の事例において、遺伝子は、バイナリーベクターの転移DNA(t−DNA)上に含有されるプラストシアニン発現カセットの中へ挿入された。t−DNAは、形質転換に際して宿主植物細胞のゲノム(右境界から左境界)中に組込まれるバイナリーベクターの部分である。この実施例において使用されるバイナリーベクターは商業的プラスミドpCAMBIA 2300(キャンビア(Cambia)社、キャンベラ、オーストラリア)に由来し、t−DNAの右境界配列から左境界配列に以下のエレメントを含有する。
−rHA遺伝子が挿入されるウマゴヤシ属から利用可能な様々な専用発現カセット(プロモーターおよびターミネーター);
−クローニングを促進するマルチプルクローニング部位;および
−ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーターおよびカリフラワー35Sモザイクウイルス(35S)ターミネーターの制御下のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)(カナマイシンに対する耐性を付与する選択可能なマーカー)についての遺伝子コード。
【0077】
各々のクローンのヌクレオチド配列を確認するために、クローンはDNA塩基配列決定を行った。生じたアミノ酸配列がなお全く同じタンパク質配列(配列番号:9〜16)をコードするならば、rHA遺伝子の配列中のヌクレオチド変化は許容された。8つの異なるDNAコンストラクションを表1中にリストし、生じたrHA t−DNAの一例を図7中に概略的に示す。
【0078】
表1:rHAについてのDNAコンストラクション
【表1】

【0079】
大腸菌の適切なクローンから単離したDNAを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)Agl1または他の株の中へ最終的に挿入した。本発明において使用される様々なt−DNAを含有するアグロバクテリウムクローンのリストを表1に示す。植物の一過性発現実験のための調製において、プラスミドDNAをアグロバクテリウムクローンから単離し、DNAの全体性を保証するために制限消化によるマッピングを行った。
【0080】
実施例4:タバコにおけるrHAの一過性発現
アグロバクテリウム増殖。rHA DNAコンストラクションを持つバイナリーベクターを含有するアグロバクテリウムクローン(表1)を、カルベニシリンおよびカナマイシンを各々25μg/mLおよび50μg/mLで含有する2mLのYEB培地またはLB培地中で28℃24時間でそれぞれ増殖させた。10μLのこれらの培養を出発接種物として使用して、YEB誘導培地(YEB培地、10mMの2(Nモルホリノ)エタンスルホン酸(MES)(pH5.6に調節)、25mg/Lカルベニシリン、50mg/Lカナマイシン、20μMアセトシリンゴン)の25mLの培養を生成した。後者は、28℃で18時間、または、0.8乃至1の600nmでの光学的密度(OD600)が達成されるまで、回転振盪機(220rpm)インキュベーター中で増殖させる。
【0081】
非遺伝子導入タバコの増殖。ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)およびニコチアナ・タバカムの植物は、温室で泥炭ベースの基質(アグロミックス(AgroMix))中で種子から増殖させた。実生の苗を最初に苗床で育て、後にポットに移した。植物に1日2回水やりし、各々の適用で180ppmの窒素を与えた。温室条件は、植物のレベルで20ワット/m2の人工照明による長日性光周期レジーム(16時間明/8時間暗サイクル)下で、日中25℃および夜間に21℃で維持した。
【0082】
rHAタバコの一過性発現。以前に記載されるように調製したアグロバクテリウム培養を10000gで8分遠心分離し、同体積の接種培地(10mM MgCl2、10mM MES、pH5.6に調整し、100μMアセトシリンゴンを補足した)中に再懸濁し、接種の前に室温(室温、23℃)で1時間維持した。あるいは、懸濁を接種の前に4℃で24時間維持することができる。N.ベンサミアナおよびN.タバカムの一過性形質転換は、本質的には、以下の修飾と共にLiu and Lomonossoff(2002, Journal of Virological Methods, 105:343-348)において記載されるように行なわれた。rHAの発現のために、2つのアグロバクテリア株の混合物を接種した。第1の株は、表1で記載されたクローンの1つを含有し、第2の株は、35S プロモーターの制御下でジャガイモウイルスYからのHcProサイレンシングサプレッサーを含有していた。接種後に、植物は温室でインキュベーションした。温度は、日中の間の最低23℃および夜間は21℃で維持された。植物に1日2回水やりし、各々の適用で180ppmの窒素を与えた。バイオマスの採取を4〜8日後に試みた。
【0083】
実施例5:タバコ葉中のrHAの発現の実証
接種した葉からの可溶性タンパク抽出物の調製。葉は、収穫後に直接、または−80℃でバイオマスを凍らせた後に分析した。〜0.1gのアグロ接種した葉の植物性バイオマスを秤量し、rHA一過性発現の解析のために使用した。
【0084】
2つの抽出法のうちの1つを使用して、即ち、乳鉢および乳棒により植物組織を細かく砕くことによって、またはレッチェ(Retsch)社からのミキサーミル(MixerMill)300(MM300)中で粉砕することによって、全タンパク質抽出物を生成した。0.1gの植物バイオマスを清浄な予冷却された乳鉢の中へ移した。0.3mLの冷却抽出緩衝液(NaCl 150mM、0.1%トリトンX−100および5%グリセロールを含有する50mMトリスpH7.4)を追加し、PMSFおよびキモスタチンをそれぞれ1mMおよび10μMの最終濃度まで追加した。均質の調製物が得られるまで、葉を乳棒により破砕した。次いで植物抽出物を1.5mLマイクロチューブの中へ移し、4℃で20分間20,000gの遠心分離をした。あるいは、0.1gの植物組織を0.3mLの抽出緩衝液と共に非滅菌の1.5のマイクロチューブの中へ入れた。タングステンビーズを各々のチューブに追加した。30Hzの撹拌を3分のサイクルでボックスに行った。サイクルを2回反復した。次いで上記されるように植物抽出物を遠心分離した。
【0085】
遠心分離に続いて、上清を清浄なマイクロチューブの中へ移し、氷上で維持した。最終的に、個別のタンパク質抽出物の全タンパク質含有量は、参照タンパク質としてBSAを使用して、ブラッドフォード方法によって測定した。
【0086】
タバコ葉材料中で一過性に発現させたrHAの免疫検出。上記されるように、アグロ接種したタバコ葉タンパク質抽出物を調製した。以下の3つの対照も調製した。1)1μgのBSA(ピアース)を追加した1ngの純粋なrHA(CHO細胞によって産生された組換えrHA、プロテイン・サイエンス社(Protein Sciences Corporation)、カタログ番号3006)、2)空のpCAMBIAプラスミドで形質転換したアグロバクテリアによりアグロ接種したバイオマスから得た2〜10μgのタバコタンパク質抽出物、および3)1ngの純粋なrHAを添加した2〜10μgのサンプル#2のタンパク質抽出物。
【0087】
典型的には、各々のバイオマス(8個の異なるDNAコンストラクションのうちの1つにより形質転換した、表1を参照)からの2〜10μgのタンパク質抽出物を、ウエスタンブロット解析のためにSDS−PAGEにロードした。サンプルを100℃で5分間煮沸した後に、Thomas(1975, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 72:2626-2630)によって本質的には記載されたように、変性SDS−PAGE(濃縮6%アクリルアミド;分離10%アクリルアミド、トリス−グリシン緩衝液)上にローディングした。電気泳動はミニ・プロテアン(Mini Protean)III装置(バイオラッド(BioRad)社)を使用して、90分間110ボルトで行った。次いで分離されたタンパク質を、30分間または60分間(それぞれ、クライテリオン(Criterion)ブロッターまたはミニ−トランスブロットユニット(バイオラッド社)を使用する場合)100Vで、トリス25mM、グリシン192mM、メタノール10%(v/v)pH8.3緩衝液中でPVDF膜上にブロットした。
【0088】
rHAの免疫検出は以下の抗体により達成された。インフルエンザA型ウイルスに対するマウスモノクローナル抗体(フィッツジェラルド・インダストリーズ・インターナショナル社(Fitzgerald Industries International Inc.)、カタログ番号10−I50)を、1/1,000で一次抗体として使用した。二次抗体はペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H+L)(ジャクソン・イムノリサーチ(Jackson ImmunoResearch)社、番号111−035−146)であり、1/10,000で使用した。ペルオキシダーゼ活性は、イモビロン(Immobilon)ウエスタン化学発光HRP基質(ミリポア(Milipore)社、カタログ番号WBRL50100))またはBM化学発光ブロッティング基質(POD)(ロッシュ(Roche)社、カタログ#11500 694 001)を使用して検出した。
【0089】
免疫検出方法は、内在性の植物タンパク質との交差反応性なしに、各々のrHAに対する特異的なシグナルを得るように至適化された。検出限界は低く、全可溶性タンパク質(TSP)の>0.004%(25μgの抽出物の中に1ng)程度の低レベルで発現されたタンパク質の検出を可能にした。
【0090】
図8中に示されるように、rHAは検査されたすべての条件および両方のタバコ種中で発現された。非還元条件の使用により、赤血球凝集素の異なるオリゴマー形態(単量体、二量体および三量体)の検出を可能にした。ゲルにロードする量のタンパク質を減少させると、図9で例示されるように、rHAのオリゴマー形態は溶解される。後者は検査されたすべてのコンストラクトについておよび両方のタバコ種中で同じであり、免疫検出シグナルは三量体、および単量体のレベルで観察される。二量体の予想される分子量と三量体の予想される分子量との間に移動する第3の免疫反応性のバンドも観察される。
【0091】
異なる三量体コイル−コイルド(coil−coiled)ペプチドによる膜貫通領域の置換は、rHAの膜貫通形態以上の発現レベルを持つrHAの発現を可能にした。これは、GCN4−pIIを持つ融合物について特に当てはまる。PRDを持つrHAの融合物は、GCN4−pII融合物と比較してより低いレベルの発現となる。GCN4−pII−rHA融合物の発現レベルは最小でTSPの0.01%である(10μgのTSP中で1ng以上のrHA)。rHA融合物の蓄積は、N.タバカムと比較して、N.ベンサミアナにおいてより高いようである。最終的に、ERへのrHAの保留は、検査されたすべてのコンストラクトについてrHAの発現レベルを有意に増加させる。この傾向は他の多くのタンパク質について観察された。ER細胞内空間は、一般的には、アポプラストなどの他のコンパートメントと比較してタンパク質分解活性が低く、組換えタンパク質の高蓄積が生じることが認識される。
【0092】
同じタンパク質抽出物は、以前に記載されたように還元条件下で免疫検出および分析して、HA0鎖がrHAの二本鎖形態(すなわちHA1およびHA2)へとタンパク質分解されるかどうかを調べた。後者の予想される分子量はそれぞれ47kDaおよび28kDaである。HA0が二本鎖形態に容易に変換されないことが図10で示される。N.タバカム抽出物においてrHAのタンパク質分解または短縮がより多いことを指摘する必要がある。
【0093】
実施例6:rHAの三量体集合の実証
赤血球凝集試験。赤血球凝集分析は、本質的には、以下の修飾と共に、Nayak et al.(2004, J. Virol Methods, 122:9-15)によって記載されるように行なわれた。抽出物は、50mMトリスpH7.4、150mM NaCl、0.1%トリトンX−100、ならびにプロテアーゼ阻害剤としてPMSV 1MMおよびキモスタチン10μMを含有する中での組織のホモジナイゼーションによって調製された。可溶性画分をPBS中で0.2mg/mLに希釈した。サンプル(100μL)の連続的な二重希釈物は、100μLのPBSを含有する丸底の96ウェルマイクロプレート中で作製した。100μLのトリ赤血球(2×107rbc/mL)(イノベイティブ・リサーチ(Innovative Research)社、サウスフィールド、ミシガン、アメリカ)を、各々のウェルに追加した。次いでプレートを室温で60〜120分間インキュベーションした。分析は以下の陽性対照を含む。PBS中で希釈されるかまたは形質転換されていない抽出物中に添加される、1μg乃至7.8pgにわたるPSCからのrHA。形質転換されていない抽出物を使用する陰性対照も実行された。
【0094】
赤血球凝集分析を使用して、コイルドコイルペプチドに融合させたrHAの三量体集合を実証する。その試験は、非常に単純であるが、インフルエンザ力価を定量するためにルーチンベースで使用される。分析の原理は、遊離赤血球は容易に検出することができる赤血球の細胞堆積を形成してELISAウェルの底で丸くなるというものである。赤血球凝集が起これば、血球はマトリックスを形成し、従って血球はELISAウェルの底で丸くなることができず、点は見られない。図11は、植物抽出物中で発現されたrHAに対してトリ赤血球の赤血球凝集を直接行なうことができることを示す。さらに、赤血球凝集は、GCN4−pIIに融合したrHAを発現する植物抽出物により起こりうる。rHA単量体は赤血球を凝集できないので、その結果は、キメラrHAが植物中で三量体として集合することを最終的に実証する。
【0095】
表2は本出願においてリストした配列を要約する。
【0096】
表2:配列識別名に対する配列記載。
【表2】

【0097】
本発明は1つまたは複数の実施形態に関して記載された。しかしながら、請求項中で定義される本発明の範囲から逸脱せずに、多数の変化および修飾を行うことができることは当業者に明らかだろう。
【0098】
本出願の全体にわたって引用されたすべての参照文献および特許の内容の全体は、参照として本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)赤血球凝集素ドメインと;
b)オリゴマー化ドメインと
を含む組換え赤血球凝集素(rHA)であって、キメラ可溶性ホモ三量体として産生される、前記rHA。
【請求項2】
前記タンパク質がシグナルペプチドをさらに含む、請求項1に記載のrHA。
【請求項3】
前記タンパク質が小胞体(ER)保留シグナルをさらに含む、請求項1または2に記載のrHA。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のrHAをコードするヌクレオチド配列。
【請求項5】
a)赤血球凝集素ドメインをコードするヌクレオチド配列と;
b)オリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列と
を含む核酸配列であって、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードする、前記核酸配列。
【請求項6】
シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項5に記載の核酸配列。
【請求項7】
小胞体(ER)保留シグナルをコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項5または6に記載の核酸。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載のヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のrHAを発現する宿主細胞。
【請求項10】
請求項4乃至7のいずれか一項に記載のヌクレオチドにより形質転換された宿主細胞。
【請求項11】
請求項8に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項12】
組換えrHAタンパク質を産生する方法であって、
a)赤血球凝集素ドメインをコードするヌクレオチド配列と;
b)オリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列と
を含み、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードするベクターを、宿主細胞に提供することを含む、前記方法。
【請求項13】
植物内で組換え赤血球凝集素(rHA)を発現する方法であって、
a)赤血球凝集素ドメインをコードするヌクレオチド配列であって、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードするヌクレオチド配列と;
b)オリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列と
を含むベクターを、植物に導入すること、およびrHAを発現することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記導入工程(工程a)において、前記核酸が一過性様式で前記植物中に導入される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記導入工程(工程a)において、前記核酸が安定的に前記植物中に導入される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
植物中で組換え赤血球凝集素(rHA)を産生する方法であって、
a)核酸配列を前記植物またはその一部に導入する工程であって、前記核酸配列が、赤血球凝集素ドメインおよびオリゴマー化ドメインをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された制御領域を含み、核酸がホモ三量体を形成する可溶性rHAをコードする核酸配列である、前記工程と;
b)トランスジェニック植物を増殖させて、それによってrHAを産生する工程と
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記導入工程(工程a)において、前記核酸が一過性様式で前記植物中に導入される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記導入工程(工程a)において、前記核酸が安定的に前記植物中に導入される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図6H】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−527181(P2011−527181A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516935(P2011−516935)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000941
【国際公開番号】WO2010/003235
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(502121395)メディカゴ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】