説明

可燃性ガスセンサー

【課題】高濃度の被検ガスが流入した場合にも、センサーに障害を起こすことなく測定を可能ならしめるためのケース構造を備えた可燃性ガス検出センサを提供すること。
【解決手段】被検ガスと接触して電気信号を発生する検出領域が基板に形成された平板状のセンサ本体1と、センサ本体1に被検ガスを接触させるようにセンサ本体1を収容するケースとからなる可燃性ガスセンサーにおいて、ケースが、センサー本体1を固定するとともに外部に信号を出力するリードを備えたケース本体22と、ケース本体22に装着可能でかつ被検ガスの流入を可能ならしめる開口27を備えた筒型状のカバー23と、開口23のガス流入量を制限するガス流量制限手段41とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可燃性ガスとの接触により電気信号を出力する可燃性ガスセンサー、より詳細には平板状のセンサー本体を収容するのに適したケース構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の普及に伴ない、水素等の可燃性ガス用のセンサとして、特許文献1に記載されているように基板に、可燃性ガスとの接触により発熱する触媒層と、発熱部と、触媒層での温度変化を検出する検出部とを形成したものが提案されている。
このセンサーは、発熱部での熱損失を抑えるため、基板の発熱部、触媒層の領域が他の領域に比較して薄膜化され、消費電力を抑えるように構成されている。
【特許文献1】特開平7-198646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、このような触媒層による発熱で検出する関係上、規格外の高濃度の可燃性ガスが流入すると、触媒層での温度が急激に上昇し、また過熱して、機械的応力などにより検出信号に変動が生じるなどの不都合がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであってその目的とするところは、高濃度の被検ガスが流入した場合にも、センサーに障害を起こすことなく測定を可能ならしめるためのケース構造を備えた可燃性ガス検出センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために本発明においては、被検ガスと接触して電気信号を発生する検出領域が基板に形成された平板状のセンサ本体と、前記センサ本体に前記被検ガスを接触させるように前記センサ本体を収容するケースとからなる可燃性ガスセンサーにおいて、前記ケースが、前記センサー本体を固定するとともに外部に信号を出力するリードを備えたケース本体と、前記ケース本体に装着可能でかつ被検ガスの流入を可能ならしめる開口を備えた筒型状のカバーと、前記開口のガス流入量を制限するガス流量制限手段とを備える。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、ガス流量制限手段により高濃度の被検ガスが流入するのが制限されるため、急激な温度変化が抑制され、熱応力による破損を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
そこで以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明のケース構造が適用されるセンサー本体の一実施例を示すものであって、センサー本体1は、高い精度で凹部の形成が可能な材料、例えば異方性エッチングが容易なシリコン単結晶基板のセンサー基板2にエッチングにより検出部3の裏面側に凹部4を形成し、検出部3には蒸着などによりヒータ5と、その表面に可燃性ガスを酸化させるための触媒層6とを形成して構成されている。
【0007】
なお、図中符号7、8は、リード部9、10を介してヒータ5に接続する端子をそれぞれ示す。
【0008】
このように構成されたセンサー本体1は、ヒータ5が凹部4によりセンサー基板2の薄く形成された領域に配置されてるため、熱伝導による熱損失が可及的に小さくなる。
【0009】
すなわち、端子7、8に通電してヒータ5を所定の温度に加熱すると、ヒータ5が所定の抵抗値を維持する一方、水素などの可燃性ガスが触媒層6に接触した場合には可燃性ガスが接触燃焼してヒータ5の温度が上昇してヒータ5の抵抗値が上昇する。端子7、8からヒータ5の抵抗値を検出することにより、可燃性ガスの濃度を知ることができる。
【0010】
なお、上述の実施例においては、水素を検出する場合について説明したが、炭化水素など他の可燃性ガスを同様に検出することができる。
【0011】
図2は、上述のセンサー本体1をセンサーとして実用的に使用可能とするための本発明の要部をなすケース構造の一実施例を示すものであって、ケース20は、センサー本体1を固定するとともに外部に信号を出力するリード21を備えたケース本体22と、ケース本体22に装着可能な筒型状のカバー23とから構成されている。
【0012】
ケース本体22にはセンサー本体1の少なくとも3隅を固定可能で、残部との間に空間24を確保するように環状部25が形成され、外部にカバー23が係合する凸部26を形成して構成されている。
【0013】
一方、カバー23は一端に被検出ガス流入口となる開口27を有する筒状に形成され、開口27には通気性を備えた消炎フィルタ、この実施例では金属粉末の焼結板28が装着されている。
【0014】
このように構成されたケース本体22にセンサー本体1を固定する場合には、センサー本体1の複数の隅、好ましくは3隅以上を点線Cで示すようにケース本体1の内周面29のサイズに合わせて切り欠く一方、内周面29に接着剤層30を形成する(図4)。
【0015】
この状態でセンサー本体1の検出面側を上面とするようにして内周面29に軽く押し込むと、センサー本体1の角部の裏面が環状部25に支持され、また角部が接着剤層30で保持される。この状態で図示しないリード線によりセンサー本体1と端子とケース本体22のリード21とを接続し、最後にカバー23を装着することによりセンサーが完成する。
【0016】
もとより接着剤層は、若干の弾性を有するからセンサー本体1の温度変化による膨張を吸収するから検出部3の境界への応力集中を緩和することができる。
【0017】
その上で、図5(イ)に示したように本願発明はケースの被検ガス流入口である開口27の前面側にガス流量を制限するためのガス流量制限手段40が配置されている。
ガス流量制限手段は40は、開口27を覆うことができるサイズのシャッタ板41と、シャッタ板41を進退させるためのソレノイドなどの駆動手段42とから構成され、シャッタ板41には開口27よりもサイズの小さな通孔43が形成されている。
【0018】
駆動手段42には駆動回路44が接続されていて、駆動回路44は、センサー本体1からの検出信号を受けて所定のレベル、つまりセンサー本体に損傷が生じない限界のレベルを超えた時点で駆動信号を出力するように構成されている。
【0019】
この実施例において、センサーが作動している状態でセンサー本体1の検出限界を超える高濃度の水素が発生すると、センサー本体1からの検出信号のレベルが急激に上昇するため、駆動回路44から信号が出力して図5(ロ)に示したようにシャッタ板41が開口27を封止する。この状態では高濃度の水素はシャッタ板41に設けられた通孔43により制限されるため、触媒層6での発生熱が抑制される。
【0020】
したがって、通孔43により流入量が減少するためセンサー出力のレベルは低下するものの、通孔43による信号レベルの減少率を予め調査しておくことにより、高濃度の水素等の可燃性ガスを測定することが可能となる。
なお、センサー出力が所定レベル、つまり測定誤差が生じない程度の濃度に対応する信号レベルまで低下した時点で駆動回路44を作動させてシャッタ板41を開口27から後退させることもできる。
【0021】
なお、上述の実施例においてはシャッタ板41を電気信号により作動する駆動手段44により作動させているが、水素の吸収により伸長する水素吸蔵合金を使用したアクチュエータを駆動手段42として用いると、駆動回路44が不要となる。
【0022】
さらに、上述の実施例においてはシャッタ板41を用いるようにしているが、高濃度の水素が発生する環境での水素の検出に用いることが予め判明している場合には、図6に示したようにケース本体のセンサー本体取り付け面の開口に比較してサイズの小さい開口27’を形成したカバー23’を装着しておくことにより、このカバー23’がガス流量制限手段40として機能する。
【0023】
すなわち、もともと高濃度の水素を検出するため、小さな開口27’によりセンサー出力が低下するとしても、実用範囲内での信号を得ることが可能となる。
【0024】
これらのことから、検出対象が数千な乃至数万ppmの水素を検出する場合には、センサーのガス流入口を、センサー基板のサイズに比較して大幅に絞ることにより、パーセントレベルの濃度の水素に対してセンサーを保護することができる。
【0025】
なお、上述の実施例においては、ヒータの抵抗変化によりガス濃度を検出しているが、ヒータ5に接するように、つまり熱伝導関係を形成するように温度検出手段を配置してガスの濃度による温度変化を検出するように構成された平板状のセンサーに適用しても同様の作用を相することは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図(イ)、(ロ)は、それぞれセンサー本体の一実施例を示す上面図と、センサー基板の断面構造を示す図である。
【図2】図(イ)乃至(ハ)は、それぞれ同上センサー本体を収容するケース全体、ケース本体、及びカバーを示す図である。
【図3】図(イ)、(ロ)は、それぞれカバーを外して示す上面図と、断面図である。
【図4】図3(ロ)における領域Aを拡大して示す図である。
【図5】図(イ)は本発明の一実施例を示す断面図であり、図(ロ)は高濃度の可燃性ガスを測定する場合の状態を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 センサー本体1
2 センサー基板
3 検出部
4 凹部
5 ヒータ
6 触媒層
7、8 端子
20 ケース
22 ケース本体22
23 カバー
24 空間
25 環状部
27 被検出ガス流入口となる開口
28 金属粉末の焼結板
30 接着剤層
40 ガス流量制限手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検ガスと接触して電気信号を発生する検出領域が基板に形成された平板状のセンサ本体と、前記センサ本体に前記被検ガスを接触させるように前記センサ本体を収容するケースとからなる可燃性ガスセンサーにおいて、
前記ケースが、前記センサー本体を固定するとともに外部に信号を出力するリードを備えたケース本体と、前記ケース本体に装着可能でかつ被検ガスの流入を可能ならしめる開口を備えた筒型状のカバーと、前記開口のガス流入量を制限するガス流量制限手段とを備えた可燃性ガスセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−266715(P2006−266715A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−81449(P2005−81449)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー産業技術総合開発機構の水素安全利用等基盤技術開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】