説明

可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システム

【課題】システム構築が容易で、端末からの受信性能に優れた可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システムを提供する。
【解決手段】LED作業灯1は、円筒状の作業灯本体11を備えており、その内部に発光体であるLEDと制御用の電子回路を内蔵する。作業灯本体11の上部にケーブル2を接続するための基板12を設ける。作業灯本体11の上部にフック13を設ける。作業灯本体11の下面に、LEDを覆うドーム状の透光カバー14を設ける。赤外線フィルタカバー15の内部に受光部16a,16bを設ける。受光部16aは、作業灯1の主として側方のエリアをカバーする。受光部16bは、作業灯1の主として下方のエリアをカバーする。受光部16a,16bは、作業灯本体11の周面に所定の間隔で複数個設けられ、作業灯1の全周囲で端末からの赤外線を受光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い受光範囲を有する可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来作業灯として用いられてきた照明器具は、白熱灯、蛍光灯などの発光部分を器具で覆い発光体が損傷しないようにしたものである。また、近年では、特許文献1や特許文献2に示すように、発光体の損傷の可能性が低い発光ダイオードを用いた作業灯も使われるようになっている。
【0003】
また、LEDを発光体として使用した可視光通信システムも、特許文献3から特許文献5に示すように多々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−059362号公報
【特許文献2】特開2007−074976号公報
【特許文献3】特開2009−260842号公報
【特許文献4】特開2009−225196号公報
【特許文献5】特開2009−219032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2の発明は、単に発光体としてLEDを使用するだけのものであり、可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システムを提供するものではなかった。一方、特許文献3から特許文献5に記載の発明は、可視光通信用の発光体としてLEDを使用するものであっても、これを作業灯に適用することまでは考慮されていない。すなわち、作業灯は、工事現場などにおいて仮設の光源として使用されるものであり、そのため、作業灯を可視光通信用に使用するには、単に光源としてLEDを採用しただけでは、実用性に乏しい。
【0006】
特に、特許文献3から特許文献5に記載の発明は、建築物の内部に固定あるいは永続的に設置される光源を対象としているため、建築物ごとに光源間の配線や通信用の基板などをあらかじめ設計し設置している。しかし、作業灯の場合には、現場に応じて、必要とする作業灯数が異なり、また作業灯と通信する移動側の端末(例えば、個々の作業員が装着しているヘッドセット)の距離や方向も、固定の光源と比較すると大きく変化する。例えば、作業灯を設置する位置が通路や建物の天井の場合と壁の場合とでは、光源と端末との角度や距離が異なるため、光源から同じ距離に端末があっても必ずしも確実な通信を行えるとは限らない。
【0007】
このように、従来のLED可視光通信システムを作業灯に転用しただけでは、作業灯数が変化した場合でも簡単にシステムを構築することができず、また作業灯と端末間の通信を確実に実施することができない問題があった。
【0008】
本発明は前記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであって、その目的は、作業現場に応じたシステム構築が容易で、しかも各作業灯と端末間の通信が安定して実施できる可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の可視光通信機能付きLED作業灯は、発光体として可視光LEDを使用した作業灯の本体に作業灯を使用箇所に設置するための係止部材を設け、この作業灯本体には、作業灯の可視光LEDを電源と信号に接続するためのケーブルを接続するための基板と、端末からの信号を受信する受光部を設け、この受光部を作業灯本体の側方の通信エリアを確保する位置と、作業灯本体の下方のエリアを確保する位置とに設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、作業灯本体の側面に所定の間隔で複数個の受光部を設けると共に、作業灯本体の下方に向いた部分に所定の間隔で複数個の受光部を設けることも、本発明の一態様である。また、前記作業灯本体における前記可視光LEDの発光方向には、可視光LEDの透光部を覆う半球状あるいは多面体状のドーム形透光カバーを設け、このドーム形透光カバーに複数の受光部を配置することも、本発明の一態様である。
【0011】
更に、前記のような構成を有するLED作業灯を用いた可視光通信システムも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0012】
前記のような構成を有する本発明の可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システムでは、作業灯本体に基板を設け、この基板にケーブルを接続することで可視光LEDに電源と信号を供給することが可能になる。その結果、ケーブルを利用して複数個の作業灯をカスケード接続するだけの簡単な作業で、作業灯数を自在に変更するとが可能になる。また、各作業灯には、作業灯本体の側方と下方の通信エリアを確保する受光部をそれぞれ設けたので、作業灯をどのような位置や角度に設置しても、端末からの信号を確実に受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業灯を使用した可視光通信システムの構成を示す配線図。
【図2】本発明の可視光通信機能付きLED作業灯及びこれを用いた可視光通信システムの実施例1を示す斜視図。
【図3】実施例1の作業灯の受光部の拡大断面図。
【図4】実施例1の作業灯の受光部の拡大正面図。
【図5】本発明の作業灯の実施例2を示す斜視図。
【図6】実施例2の作業灯の受光部の配置を示す底面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を図1から図4に従って具体的に説明する。図1において、符号1は本発明のLED作業灯である。本実施例において、複数個のLED作業灯1が、電源及び通信データを供給するケーブル2によって、カスケード接続されている。このケーブル2は、通信データに従って各LED作業灯1の発光を制御したり、各LED作業灯1を通じて端末から受信した信号を処理する通信制御用の親機3に接続され、更に、公衆回線網4などの外部ネットワークにも接続されている。
【0015】
各LED作業灯1の近傍(通信範囲)には、ヘッドセット5やPDA6などの端末が配置(作業員が携行)されている。この端末としては、必ずしもヘッドセットやPDAに限定されることなく、可視光通信を行うことが可能なものであれば、どのようなものでも使用可能である。この端末と各LED作業灯1とは、可視光通信システムによって信号を授受するが、必ずしも双方向可視光通信である必要はなく、本実施例では、ダウンリンクを可視光通信とし、アップリンクを赤外線通信とする。そのため、本実施例における受光部は、赤外線の受信用フォトダイオードなどから構成される。なお、アップリンクとして電波を使用することも可能であり、そのため、本発明における「受光部」には「電波の受信部」を含む。
【0016】
本実施例のLED作業灯1の具体的な構成は、図2示すとおりである。すなわち、LED作業灯1は、円筒状の作業灯本体11を備えており、その内部に発光体であるLEDと、その制御用の電子回路を内蔵している。特に、作業灯本体11の上部には、前記ケーブル2を接続するための基板12が設けられ、この基板12に設けられた図示しないコネクタに前記ケーブルが着脱自在に接続される。
【0017】
作業灯本体11の上部には、作業灯1を現場の天井、壁、スタンド、ケーブル、手摺りなどに係止するためのフック13が設けられている。この係止部材としては、図示のフックに限定されるものではなく、リング、クリップなど公知の手段を適宜採用できる。作業灯本体11の下面には、ドーム状の透光カバー14が設けられ、この透光カバー14が本体11内部に設けられた発光体であるLEDの発光方向を覆っている。なお、この透光カバー14は、必ずしも半球状でなくても良く、多面体のドーム形でも良い。
【0018】
この透光カバー14により、LEDの発光が乱反射され、作業灯として適切な広範囲を照らす光が得られる。この透光カバー14の根本部分には、赤外線フィルタカバー15が設けられ、その内部に受光部16a,16bが設けられている。このうち、受光部16aは、作業灯1の主として側方のエリアをカバーするものであって、図3の断面図に示すように、受光部を構成するフォトダイオードが水平方向を向いて、その基板17に固定されている。
【0019】
一方、受光部16bは、作業灯1の主として下方のエリアをカバーするものであって、受光部を構成するフォトダイオードが下方を向いて、その基板17に固定されている。更に、これらの受光部16a,16bは、図4の正面図に示すように、作業灯本体11の周面に所定の間隔で複数個設けられており、作業灯1の全周囲で端末からの赤外線を受光する。
【0020】
前記のような構成を有する実施例1によれば、作業灯本体11に基板12を設け、この基板12にケーブル2を着脱自在に接続可能としたので、複数個の作業灯1をケーブル2によりカスケード接続するだけの簡単な作業で、作業灯数を自在に変更することが可能になる。その結果、現場の広狭にかかわらず、簡単に可視光通信システムを構築することができる。また、各作業灯1には、作業灯本体の側方と下方の通信エリアを確保する受光部16a,16bをそれぞれ設けたので、作業灯1をどのような位置や角度に設置しても、LED発光の照射範囲にある端末からの信号を確実に受信することができる。更に、透光カバー14を設けることで、LEDの光を広い範囲に分散することができる点も、作業灯として優れている。
【実施例2】
【0021】
実施例2は、受光部をドーム形のカバーに所定の間隔で点状に配置したものである。すなわち、実施例2においては、図5及び図6に示すように、赤外線の受光部16a,16bが半球状のドーム形をした透光カバー14の全域に、所定の間隔を保って点状に配置されている。
【0022】
このような構成の実施例2によれば、受光部16a,16bが作業灯1の側方並びに下方の全周囲にわたって配置されることになり、どの方向からの赤外線でも確実に受光することが可能である。従って、この実施例においても、作業灯をどのような位置に設置しても、端末からの赤外線を各自に受光して安定した通信を実施することができる。
【符号の説明】
【0023】
1…LED作業灯
2…ケーブル
3…親機
4…公衆回線網
5…ヘッドセット
6…PDA
11…作業灯本体
12…基板
13…フック
14…透光カバー
15…赤外線フィルタカバー
16a,16b…受光部
17…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体として可視光LEDを使用した作業灯の本体に作業灯を使用箇所に設置するための係止部材を設け、
この作業灯本体には、作業灯の可視光LEDを電源と信号に接続するためのケーブルを接続するための基板と、端末からの信号を受信する受光部を設け、
この受光部を作業灯本体の側方の通信エリアを確保する位置と、作業灯本体の下方のエリアを確保する位置とに設けたことを特徴とする可視光通信機能付きLED作業灯。
【請求項2】
前記作業灯本体の側面に所定の間隔で複数個の受光部を設けると共に、作業灯本体の下方に向いた部分に所定の間隔で複数個の受光部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の可視光通信機能付きLED作業灯。
【請求項3】
前記作業灯本体における可視光LEDの発光方向には、可視光LEDの透光部を覆う半球状あるいは多面体状のドーム形透光カバーを設け、このドーム形透光カバーに複数の受光部を間隔を保って配置したことを特徴とする請求項2に記載の可視光通信機能付きLED作業灯。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のLED作業灯を、電源並びに通信制御用の親機に同軸ケーブルを介して接続し、この同軸ケーブルを介して前記電源からLED作業灯の点灯用電力と親機からの通信データを前記LED作業灯に供給し、
前記LED作業灯からは、その照射範囲内にある通信端末に対して前記親機からの通信データに基づいてLEDを発光させる可視光通信により送信し、
前記端末からの信号は前記LED作業灯に設けられた受光部によって受信し、これを親機に送信することを特徴とする可視光通信機能付きLED作業灯を用いた可視光通信システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−233321(P2011−233321A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101711(P2010−101711)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】