可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具
【課題】 着色された被筆記面に筆記して形成された筆跡を消色させた際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることなく、良好な筆跡の消去性を示す実用性に富む可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水を少なくとも含有してなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲にある可逆熱変色性筆記具用インキ組成物8及びそれを収容した筆記具1。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水を少なくとも含有してなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲にある可逆熱変色性筆記具用インキ組成物8及びそれを収容した筆記具1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度変化により色調が変化する筆跡を形成できる可逆熱変色性筆記具用インキと、それを収容した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記筆記具により形成された筆跡は、手触等の体温、擦過により生じる摩擦熱、ヘアドライヤー等により筆跡中の可逆熱変色性材料を有色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去することができるものの、筆跡が消去された箇所には、白濁した残像(筆跡)が視認される。
前記白濁した残像は被筆記面(紙)が白色の場合は視認され難いものの、着色された被筆記面に筆記すると残像は顕著に視認され、実用性を損なうことがあった。
【特許文献1】特開平7−186588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前述した問題点を解消しようとするものであって、即ち、白色の被筆記面のみならず、着色された被筆記面に筆記した場合であっても形成された筆跡を消去した際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることのない可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記した従来の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具の問題点を解消しようとするものであって、即ち、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水を少なくとも含有してなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を要件とする。
更には、1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下であること、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にあること、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して完全消色温度(t4)が50℃以上であり、完全発色温度(t1)が0℃以下であること、剪断減粘性付与剤を含んでなること、8糖以上の澱粉糖化物及び/又はその還元物を30質量%以上含有してなる糖混合物を含有してなること、水溶性高分子凝集剤を含んでなること等を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を収容したボールペン形態或いはマーキングペン形態の筆記具を要件とする。
更には、前記筆記具に摩擦部材を設けてなること、前記摩擦部材がエラストマー又はプラスチック発泡体であること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、着色された被筆記面に筆記して形成された筆跡を消色させた際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることなく、良好な筆跡の消去性を示す実用性に富む可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図4】本発明の筆記具の一実施例を示す説明図である。
【図5】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図6】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図7】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図8】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図9】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図11】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図12】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図13】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図14】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図15】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図16】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図17】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図18】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図19】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図20】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図21】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図22】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前記可逆熱変色性筆記具用インキ組成物中に含まれる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が用いられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を適用できる(図1参照)。
【0008】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜80℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2〜t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
【0009】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0010】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度t1を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度である0℃以下、完全消色温度t4を摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度である50℃以上にすることにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
なお、前記完全発色温度t1として好ましくは−50〜0℃、より好ましくは−50〜−5℃、完全消色温度t4として好ましくは50〜95℃、より好ましくは55〜95℃である。
前記完全消色温度t4が50℃以上であれば、夏場のような気温の高い条件下でも変色前の状態を維持でき、また、95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の擦過による摩擦熱で十分に消去することができる。
完全消色温度t4が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による擦過で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に消去し難くなり、擦過回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて擦過する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。
また、完全発色温度t1の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、0℃以下が好適である。
更に、筆記具に充填された状態の可逆熱変色性組成物を発色状態にする必要がある。そのため、筆記具、インキ組成物、或いは、マイクロカプセル顔料を予め冷却して可逆熱変色性組成物を発色させておく必要がある。
製造工程における冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、−50℃迄が限度である。
【0011】
以下に可逆熱色性組成物の(イ)、(ロ)、(ハ)成分について化合物を例示する。
本発明の(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0012】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0013】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0015】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0016】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0017】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0019】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0020】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0021】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0022】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
【0023】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0024】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用される。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.01〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.65μm、より好ましくは0.1〜0.49μm範囲が実用性を満たす。
平均粒子径が1.0μmを越えると、光を乱反射するマイクロカプセル顔料の比率が多くなるため、筆跡中のマイクロカプセル顔料に内包された可逆熱変色性組成物を有色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去した状態における被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁し、残像として視認され易くなる。
また、平均粒子径が0.01μm未満では、残像は視認され難いものの、発色性に乏しいため消去前の筆跡の色濃度が十分ではない。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲を満たす系において、光を乱反射し易い1.5μm以上のマイクロカプセル顔料を全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下に調整することにより、いっそう消去時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの場合は、前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子は全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下に調整すると、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.49μmの場合も前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子は全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下であることにより、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
なお、粒子径、粒度分布の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出する。
ここで、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、円形断面の形態であっても非円形断面の形態であってもよく、円形断面の形態と非円形断面の形態のマイクロカプセル顔料が混在したものであってもよい。
【0025】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、15〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、更に好ましくは25〜40質量%配合することができる。
15質量%未満では発色濃度が不十分であり、50質量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性能が阻害される。
【0026】
前記インキに用いられる溶剤としては、有機溶剤のみであってもよいが、水と必要により水溶性有機溶剤が好適に用いられる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられる。
【0027】
前記インキ中に高分子凝集剤を添加することによって、前記凝集剤がマイクロカプセル顔料粒子間のゆるい橋かけ作用を生じさせ、ゆるい凝集状態を示す。このようなゆるい凝集状態を示すインキは繊維集束体からなるインキ吸蔵体(中綿)及び繊維の樹脂結束体からなるマーキングペン体の毛管状間隙においてマイクロカプセル顔料の分離が発生し難くなる。
前記水溶性高分子凝集剤としては非イオン性水溶性高分子化合物が用いられ、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0028】
また、前記インキ中に剪断減粘性付与剤を添加することによって、インキを充填するボールペンの不使用時にボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
なお、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキ組成物の粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S−1の剪断速度におけるインキ粘度が200〜3000mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.6を示すことが好ましい。
なお、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kjn(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、アルカガム、グアーガム、ダイユータンガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0029】
前記インキ組成物中には、8糖以上の澱粉糖化物及び/又はその還元物を30質量%以上含有してなる糖混合物を含有させると耐乾燥性を向上させることができると共に、垂れ下がり防止性能を付与することができる。
前記糖混合物として好ましくは8糖以上の糖類が50%以上含まれるものが用いられ、より好ましくは8糖以上の糖類が70%以上含まれるものが用いられる。
耐乾燥性を付与するためには、ある程度の乾燥皮膜の形成が必要であるが、単糖や二糖は乾燥皮膜の形成が充分でないので耐乾燥性に対する効果が小さく、吸水性が高いためにボールペンに適用した場合、チップを下向き(倒立)で放置することによる垂れ下がりが発生しやすい。また、3糖〜7糖程度では、単糖や二糖に比べて吸水性は低くなるが、十分な耐乾燥性を得るには至らない。
更に、十分な耐乾燥性を得るために多量の添加を試みると、吸水性が高くなり垂れ下がりの原因になったり、添加した糖が溶解しきれずにインキ中の固形分が増加し、耐乾燥性が低下することがある。
前記糖類は分子量が大きくなるに従い吸湿性が低くなり、乾燥皮膜を形成し易くなる特徴を有することから、8糖以上の糖類を用いることで高湿度下での垂れ下がりを防止できると共に、耐乾燥性も向上する。
更に、耐熱性、耐酸性、耐微生物性等の性能も向上し、インキ中で安定した状態を維持できる。
前記8糖以上の糖類としては、澱粉の酵素分解等によって得られる澱粉糖化物や、該澱粉糖化物の末端基を還元した還元澱粉糖化物を用いることができる。
また、澱粉を分解していくと、様々な重合度の糖類が生成するため、8糖以上の糖類のみを完全に単離することは技術的に困難であり、製造コストもかかってしまう。そこで、7糖以下の糖類が存在する糖混合物において、前記8糖以上の糖類を30質量%以上含有することにより、インキ中で前記性能を十分に得ることができ、耐乾燥性及び垂れ下がり防止性能を付与できる。
前記糖混合物はインキ組成物全量に対して0.5〜10.0質量%、好ましくは1.0〜8.0質量%の範囲で配合される。0.5質量%より少ないと耐乾燥性を向上させる効果が得られ難く、10.0質量%より多いとインキの粘度が上昇して泣き出しやボテの原因になったり、追従性を妨げることがある。更には耐乾燥性を悪化させてしまうこともある。
【0030】
更に、前記インキをボールペンに内蔵して実用に供する場合、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0031】
その他、必要に応じてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を使用してもよい。
また、必要により紙面への固着性や粘性付与のためにアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等を用いることもできる。
【0032】
前記インキ組成物は、チップを筆記先端部に装着したマーキングペン、ボールペン、筆ペン等の筆記具に充填して実用に供される。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペンチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、ボールペンチップを装着した筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内にインキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓を配設した構造のボールペンを例示できる。
【0033】
前記ボールペンチップは、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持したチップ、金属材料のドリル等による切削加工して形成したボール抱持部にボールを抱持したチップ、金属又はプラスチック成形体内部に樹脂製のボール受け座を設け、ボールを抱持したチップ等が挙げられる。
また、前記チップはバネ体によりボールを前方に付勢させる構成であってもよい。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜3.0mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1.0mmのものが用いられる。
【0034】
インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
前記ボールペンチップとインキ収容管は、直接又は接続部材を介して嵌合され、インキ組成物と必要によりインキ逆流防止体組成物を充填してボールペンレフィルを形成する。
【0035】
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体の逆流防止体を併用することもできる。
【0036】
前記ボールペンチップ先端には、ペン先乾燥防止用の樹脂被膜を固着させることもでき、チップ先端部のボールと、ボール抱持部と、ボールとボール抱持部の間隙を覆うように固着することにより、チップ先端部の乾燥防止及びインキ中の媒体の揮発を防止できる。
前記樹脂被膜を形成する樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂が用いられる。
【0037】
前記ボールペンレフィルは、軸筒内に収容してキャップ式のボールペンを得ることができる。
また、前記ボールペンレフィルは、軸筒内に収容して出没式のボールペンを得ることもでき、ボールペンレフィルは、チップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する。
出没機構としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に
設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0038】
前記筆記具により形成される筆跡は、指による擦過や加熱又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部である。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約1.2μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−35℃、T2:−15℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は1.0μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中26体積%であった。
【0040】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.9μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−18℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は0.8μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中11体積%であった。
【0041】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Cの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.7μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−18℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は0.65μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中7体積%であった。
【0042】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Dの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.5μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−20℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は0.45μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中2体積%であった。
【0043】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Eの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約2.3μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−18℃、T2:−9℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は2.0μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中70体積%であった。
【0044】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Fの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約1.5μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−20℃、T2:−10℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は1.3μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中35体積%であった。
【0045】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Gの調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.5μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−20℃、T3:45℃、T4:64℃)は青色から無色に色変化し、平均粒子径は0.45μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中3体積%であった。
【0046】
実施例1
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料A25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10.0部、グリセリン10.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水47.5部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0047】
筆記具の作製(図4参照)
ポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に接続部材5を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したチップ3と連結させた。
前記インキ組成物8をインキ収容管内に充填し、次いで、インキ後端にインキ逆流防止体12(液栓)を充填し、更に尾栓13をインキ収容管の後部に嵌合させてレフィル14を得た。
更に、前記レフィルを軸筒(先軸筒41と後軸筒42とからなる)内に組み込み、ゴムシール15を内在したキャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記後軸筒後部には、摩擦部材7としてSEBS製ゴムを設けてなる。
【0048】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0049】
実施例2
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10.0部、グリセリン10.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水47.5部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0050】
筆記具の作製(図5参照)
前記インキ組成物8を、ボールペンチップ3を接続部材5を介して固着した内径5mm、外形9mmのポリプロピレン製軸筒4に充填し、次いで、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体12を充填し、尾栓13を軸筒後部に嵌合させた。
更に、ゴムシール15を内在し、先端部にSEBS樹脂製の摩擦部材7を設けたキャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記ボールペンチップは、金属材料をドリルによる切削加工により形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0051】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0052】
実施例3
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0053】
筆記具の作製(図6参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後端部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、前記軸筒先端開口部の周囲には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0054】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0055】
実施例4
可逆熱変色性筆記具用性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料C25.0部、20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック70〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0056】
筆記具の作製(図7参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒側面に設けられたクリップ形状の出没機構(スライド機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0057】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0058】
実施例5
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D25.0部、20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0059】
筆記具の作製(図8参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、出没機構には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0060】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0061】
実施例6
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0062】
筆記具の作製(図9参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0063】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0064】
実施例7
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料C20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0065】
筆記具の作製(図10参照)
前記インキ組成物8と、撹拌体9(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒4内に内蔵し、接続部材5を介して先端部にマーキングペンチップ3(チゼル型)を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0066】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0067】
実施例8
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0068】
筆記具の作製(図11参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に直接収容し、軸筒内の前方に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持させたボールペンチップ3を接続部材5を介して嵌合して筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具には着脱自在のキャップ(図示せず)を備えてなり、且つ、軸筒後端部には摩擦部材7を設けてなる。
【0069】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0070】
実施例9
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0071】
筆記具の作製(図12参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に直接収容し、軸筒内の前方に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、マーキングペンチップ3(チゼル型)を接続部材5を介して嵌合して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記筆記具には着脱自在のキャップ(図示せず)を備えてなり、且つ、軸筒後端部には摩擦部材7を設けてなる。
【0072】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0073】
実施例10
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0074】
筆記具の作製(図13参照)
マーキングペンチップ3と、前記チップ後端に接続されるインキ吸蔵体2と、前記インキ吸蔵体の後方に配置される中間部材17と、前記中間部材の後方に配置される取り外し可能なインキタンク18(使用前は栓体181によりインキ組成物8を封入したインキカートリッジ)と、軸筒4と、前記軸筒の後端開口部に着脱自在に螺着される摩擦部材7を備えた尾栓13と、キャップ9とからなる筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記中間部材は、インキ吸蔵体とインキタンクとを区画する隔壁と、前記隔壁より突出されたインキ吸蔵体の内部に突き刺し接続される複数本(具体的には2本)の連通管と、前記隔壁より突出されたインキタンクに挿着される接続管を備えてなる。
【0075】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0076】
実施例11
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0077】
筆記具の作製(図14参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させた。
一端にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(砲弾型)を取り付けたポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に前記インキ吸蔵体2を収容し、ポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を取り付けた接続部材5を他端の軸筒と嵌合し、それぞれのペン先にキャップ6を装着して両頭式筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、それぞれのペン先は大きさが異なるものであり、一方のキャップ頂部にはSEBS樹脂からなる摩擦部材7を設けてなる。
【0078】
前記筆記具を用いて淡青色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられた摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0079】
実施例12
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0080】
筆記具の作製(図15参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0081】
前記筆記具を用いて淡黄色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップ頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0082】
実施例13
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0083】
筆記具の作製(図16参照)
前記インキ組成物8と、撹拌体9(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒4内に内蔵し、接続部材5を介して先端部にマーキングペンチップ3(チゼル型)を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0084】
前記筆記具を用いて灰色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップ頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0085】
実施例14
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0086】
筆記具の作製(図17参照)
前記インキ組成物8をインキタンク18内に収容した(使用前は栓体181によりインキ組成物を封入したインキカートリッジ)。
先軸筒41に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、マーキングペンチップ3(チゼル型)を接続部材5を介して嵌合し、インキ調節部材の後部に中間部材17を嵌合した。
次いで、前記中間部材にカートリッジを装着し、後軸筒42を螺合して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記筆記具にはポリエステル系樹脂からなるキャップ6を備えてなり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0087】
前記筆記具を用いて淡緑色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップの頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0088】
実施例15
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0089】
筆記具の作製(図18参照)
マーキングペンチップ3と、前記チップ後端に接続されるインキ吸蔵体2と、前記インキ吸蔵体の後方に配置される中間部材17と、前記中間部材の後方に配置される取り外し可能なインキタンク18(使用前は栓体181によりインキ組成物8を封入したインキカートリッジ)と、軸筒4と、前記軸筒の後端開口部に着脱自在に螺着される尾栓13と、キャップ9とからなる筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記中間部材は、インキ吸蔵体とインキタンクとを区画する隔壁と、前記隔壁より突出されたインキ吸蔵体の内部に突き刺し接続される複数本(具体的には2本)の連通管と、前記隔壁より突出されたインキタンクに挿着される接続管を備えてなり、キャップはポリエステル系樹脂からなり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0090】
前記筆記具を用いて淡青色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップの頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0091】
実施例16
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0092】
筆記具の作製(図19参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に内蔵し、先端部に筆穂からなるチップ3を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(筆ペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、軸筒後端部の操作機構を押圧することにより弁が開く構造である。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0093】
前記筆記具を用いて淡黄色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0094】
実施例17
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0095】
筆記具の作製(図20参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記マーキングペンチップは、中央部に透明部材31を備えてなる。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0096】
前記筆記具を用いて灰色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップ頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0097】
実施例18
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
前記マイクロカプセル顔料G25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0098】
ボールペンレフィルの作製
前記各インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
【0099】
筆記具の作製(図21参照)
複合式ボールペンの作製(図21参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペンレフィルを光遮蔽性(不透明)軸筒4(直径11mm)内に組み込み、出没機構の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する筆記具1(複合式ボールペン)を得た。
なお、前記複合式ボールペンの軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
【0100】
前記筆記具を用いて淡緑色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0101】
実施例19
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
前記マイクロカプセル顔料G25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0102】
ボールペンレフィルの作製
前記各インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.4mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
【0103】
筆記具の作製(図21参照)
前記のようにして得た二本のボールペンレフィルを、後部に開閉自在の蓋体19を有する透明な軸筒4(直径11mm)に組み込み、蓋体を閉めた後、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する筆記具1(複合式ボールペン)を得た。
なお、前記軸筒先端の開口部近傍には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
【0104】
前記筆記具を用いて灰色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0105】
実施例20
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0106】
筆記具の作製
前記インキ組成物をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管に吸引充填し、樹脂製接続部材を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)と、希ガスを充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させて内部を加圧状態にしたボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒内に組み込み、出没式の筆記具(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後端部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、前記軸筒先端開口部の周囲には、SEBS樹脂製の摩擦部材を設けてなる。
【0107】
前記筆記具を用いて淡黄色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0108】
比較例1
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料E25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10.0部、グリセリン10.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水47.5部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0109】
筆記具の作製
ポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管に樹脂製ホルダーを介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したペン体と連結させた。
前記インキ組成物をインキ収容管内に充填し、次いで、インキ後端にインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をインキ収容管の後部に嵌合させてレフィルを得た。
更に、前記レフィルを軸筒(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップを嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具(ボールペン)
なお、前記後軸筒後部には摩擦部材としてSEBS製ゴムを設けてなる。
【0110】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色するものの、筆記箇所に白濁の残像が視認された。
【0111】
比較例2
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料F20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、水59.88部、10%希釈リン酸溶液0.1部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0112】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペン体(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップを装着して筆記具(マーキングペン)を得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0113】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色するものの、筆記箇所に白濁の残像が視認された。
【符号の説明】
【0114】
t1 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
t2 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
t3 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
t4 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T1 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T2 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
T3 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
T4 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 筆記具
2 インキ吸蔵体
3 チップ
31 透明部材
4 軸筒
41 先軸筒
42 後軸筒
5 接続部材
6 キャップ
7 摩擦部材
8 インキ組成物
9 攪拌体
10 弁機構
11 インキ収容管
12 インキ逆流防止体
13 尾栓
14 レフィル
15 ゴムシール
16 インキ調節部材
17 中間部材
18 インキタンク
181 栓体
19 蓋体
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度変化により色調が変化する筆跡を形成できる可逆熱変色性筆記具用インキと、それを収容した筆記具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記筆記具により形成された筆跡は、手触等の体温、擦過により生じる摩擦熱、ヘアドライヤー等により筆跡中の可逆熱変色性材料を有色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去することができるものの、筆跡が消去された箇所には、白濁した残像(筆跡)が視認される。
前記白濁した残像は被筆記面(紙)が白色の場合は視認され難いものの、着色された被筆記面に筆記すると残像は顕著に視認され、実用性を損なうことがあった。
【特許文献1】特開平7−186588号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前述した問題点を解消しようとするものであって、即ち、白色の被筆記面のみならず、着色された被筆記面に筆記した場合であっても形成された筆跡を消去した際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることのない可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前記した従来の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具の問題点を解消しようとするものであって、即ち、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水を少なくとも含有してなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を要件とする。
更には、1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下であること、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にあること、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して完全消色温度(t4)が50℃以上であり、完全発色温度(t1)が0℃以下であること、剪断減粘性付与剤を含んでなること、8糖以上の澱粉糖化物及び/又はその還元物を30質量%以上含有してなる糖混合物を含有してなること、水溶性高分子凝集剤を含んでなること等を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を収容したボールペン形態或いはマーキングペン形態の筆記具を要件とする。
更には、前記筆記具に摩擦部材を設けてなること、前記摩擦部材がエラストマー又はプラスチック発泡体であること等を要件とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、着色された被筆記面に筆記して形成された筆跡を消色させた際、筆跡箇所に白濁した残像が視認されることなく、良好な筆跡の消去性を示す実用性に富む可逆熱変色性筆記具用インキ組成物及びそれを収容した筆記具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図4】本発明の筆記具の一実施例を示す説明図である。
【図5】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図6】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図7】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図8】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図9】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図11】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図12】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図13】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図14】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図15】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図16】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図17】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図18】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図19】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図20】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図21】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【図22】本発明の筆記具の他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前記可逆熱変色性筆記具用インキ組成物中に含まれる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が用いられる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を適用できる(図1参照)。
【0008】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜80℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2〜t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物も適用できる(図2参照)。
【0009】
前記可逆熱変色性組成物の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0010】
前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度t1を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度である0℃以下、完全消色温度t4を摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度である50℃以上にすることにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
なお、前記完全発色温度t1として好ましくは−50〜0℃、より好ましくは−50〜−5℃、完全消色温度t4として好ましくは50〜95℃、より好ましくは55〜95℃である。
前記完全消色温度t4が50℃以上であれば、夏場のような気温の高い条件下でも変色前の状態を維持でき、また、95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の擦過による摩擦熱で十分に消去することができる。
完全消色温度t4が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による擦過で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に消去し難くなり、擦過回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて擦過する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。
また、完全発色温度t1の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、0℃以下が好適である。
更に、筆記具に充填された状態の可逆熱変色性組成物を発色状態にする必要がある。そのため、筆記具、インキ組成物、或いは、マイクロカプセル顔料を予め冷却して可逆熱変色性組成物を発色させておく必要がある。
製造工程における冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、−50℃迄が限度である。
【0011】
以下に可逆熱色性組成物の(イ)、(ロ)、(ハ)成分について化合物を例示する。
本発明の(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができる。
【0012】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0013】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0014】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0015】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0016】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0017】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0019】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0020】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0021】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0022】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
【0023】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0024】
前記三成分からなる可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して使用される。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.01〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.65μm、より好ましくは0.1〜0.49μm範囲が実用性を満たす。
平均粒子径が1.0μmを越えると、光を乱反射するマイクロカプセル顔料の比率が多くなるため、筆跡中のマイクロカプセル顔料に内包された可逆熱変色性組成物を有色から無色に変色させ、その結果筆跡を消去した状態における被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁し、残像として視認され易くなる。
また、平均粒子径が0.01μm未満では、残像は視認され難いものの、発色性に乏しいため消去前の筆跡の色濃度が十分ではない。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲を満たす系において、光を乱反射し易い1.5μm以上のマイクロカプセル顔料を全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは15体積%以下に調整することにより、いっそう消去時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの場合は、前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子は全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下に調整すると、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.49μmの場合も前記マイクロカプセル顔料中の1.5μmを越える粒子は全マイクロカプセル顔料中の15体積%以下、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下であることにより、いっそう消色時の被筆記面上の乾燥塗膜(筆跡)が白濁することを防止でき、残像を視認し難くすることができる。
なお、粒子径、粒度分布の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出する。
ここで、可逆熱変色性組成物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たすことが好ましい。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
前記可逆熱変色性組成物のマイクロカプセル化は、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、コアセルベート法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料は、円形断面の形態であっても非円形断面の形態であってもよく、円形断面の形態と非円形断面の形態のマイクロカプセル顔料が混在したものであってもよい。
【0025】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、インキ組成物全量に対し、15〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、更に好ましくは25〜40質量%配合することができる。
15質量%未満では発色濃度が不十分であり、50質量%を越えるとインキ流出性が低下し、筆記性能が阻害される。
【0026】
前記インキに用いられる溶剤としては、有機溶剤のみであってもよいが、水と必要により水溶性有機溶剤が好適に用いられる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が用いられる。
【0027】
前記インキ中に高分子凝集剤を添加することによって、前記凝集剤がマイクロカプセル顔料粒子間のゆるい橋かけ作用を生じさせ、ゆるい凝集状態を示す。このようなゆるい凝集状態を示すインキは繊維集束体からなるインキ吸蔵体(中綿)及び繊維の樹脂結束体からなるマーキングペン体の毛管状間隙においてマイクロカプセル顔料の分離が発生し難くなる。
前記水溶性高分子凝集剤としては非イオン性水溶性高分子化合物が用いられ、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、非イオン性水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、非イオン性水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0028】
また、前記インキ中に剪断減粘性付与剤を添加することによって、インキを充填するボールペンの不使用時にボールとチップの間隙からのインキ漏れだしを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
なお、前記剪断減粘性付与剤を添加したインキ組成物の粘度は、20℃でのE型回転粘度計による3.84S−1の剪断速度におけるインキ粘度が200〜3000mPa・sを示し、且つ、剪断減粘指数が0.1〜0.6を示すことが好ましい。
なお、剪断減粘指数(n)は、剪断応力値(T)及び剪断速度値(j)の如き粘度計による流動学測定から得られる実験式T=Kjn(Kは非ニュートン粘性係数)にあてはめることによって計算される値である。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、アルカガム、グアーガム、ダイユータンガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0029】
前記インキ組成物中には、8糖以上の澱粉糖化物及び/又はその還元物を30質量%以上含有してなる糖混合物を含有させると耐乾燥性を向上させることができると共に、垂れ下がり防止性能を付与することができる。
前記糖混合物として好ましくは8糖以上の糖類が50%以上含まれるものが用いられ、より好ましくは8糖以上の糖類が70%以上含まれるものが用いられる。
耐乾燥性を付与するためには、ある程度の乾燥皮膜の形成が必要であるが、単糖や二糖は乾燥皮膜の形成が充分でないので耐乾燥性に対する効果が小さく、吸水性が高いためにボールペンに適用した場合、チップを下向き(倒立)で放置することによる垂れ下がりが発生しやすい。また、3糖〜7糖程度では、単糖や二糖に比べて吸水性は低くなるが、十分な耐乾燥性を得るには至らない。
更に、十分な耐乾燥性を得るために多量の添加を試みると、吸水性が高くなり垂れ下がりの原因になったり、添加した糖が溶解しきれずにインキ中の固形分が増加し、耐乾燥性が低下することがある。
前記糖類は分子量が大きくなるに従い吸湿性が低くなり、乾燥皮膜を形成し易くなる特徴を有することから、8糖以上の糖類を用いることで高湿度下での垂れ下がりを防止できると共に、耐乾燥性も向上する。
更に、耐熱性、耐酸性、耐微生物性等の性能も向上し、インキ中で安定した状態を維持できる。
前記8糖以上の糖類としては、澱粉の酵素分解等によって得られる澱粉糖化物や、該澱粉糖化物の末端基を還元した還元澱粉糖化物を用いることができる。
また、澱粉を分解していくと、様々な重合度の糖類が生成するため、8糖以上の糖類のみを完全に単離することは技術的に困難であり、製造コストもかかってしまう。そこで、7糖以下の糖類が存在する糖混合物において、前記8糖以上の糖類を30質量%以上含有することにより、インキ中で前記性能を十分に得ることができ、耐乾燥性及び垂れ下がり防止性能を付与できる。
前記糖混合物はインキ組成物全量に対して0.5〜10.0質量%、好ましくは1.0〜8.0質量%の範囲で配合される。0.5質量%より少ないと耐乾燥性を向上させる効果が得られ難く、10.0質量%より多いとインキの粘度が上昇して泣き出しやボテの原因になったり、追従性を妨げることがある。更には耐乾燥性を悪化させてしまうこともある。
【0030】
更に、前記インキをボールペンに内蔵して実用に供する場合、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗防止効果を付与することが好ましい。
【0031】
その他、必要に応じてベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を使用してもよい。
また、必要により紙面への固着性や粘性付与のためにアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等を用いることもできる。
【0032】
前記インキ組成物は、チップを筆記先端部に装着したマーキングペン、ボールペン、筆ペン等の筆記具に充填して実用に供される。
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペンチップを筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、ボールペンチップを装着した筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内にインキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓を配設した構造のボールペンを例示できる。
【0033】
前記ボールペンチップは、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部にボールを抱持したチップ、金属材料のドリル等による切削加工して形成したボール抱持部にボールを抱持したチップ、金属又はプラスチック成形体内部に樹脂製のボール受け座を設け、ボールを抱持したチップ等が挙げられる。
また、前記チップはバネ体によりボールを前方に付勢させる構成であってもよい。
前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.1〜3.0mm径程度のものが適用できるが、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.3〜1.0mmのものが用いられる。
【0034】
インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
前記ボールペンチップとインキ収容管は、直接又は接続部材を介して嵌合され、インキ組成物と必要によりインキ逆流防止体組成物を充填してボールペンレフィルを形成する。
【0035】
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体には、ゲル化剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物を例示できる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体組成物と、固体の逆流防止体を併用することもできる。
【0036】
前記ボールペンチップ先端には、ペン先乾燥防止用の樹脂被膜を固着させることもでき、チップ先端部のボールと、ボール抱持部と、ボールとボール抱持部の間隙を覆うように固着することにより、チップ先端部の乾燥防止及びインキ中の媒体の揮発を防止できる。
前記樹脂被膜を形成する樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化型樹脂が用いられる。
【0037】
前記ボールペンレフィルは、軸筒内に収容してキャップ式のボールペンを得ることができる。
また、前記ボールペンレフィルは、軸筒内に収容して出没式のボールペンを得ることもでき、ボールペンレフィルは、チップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する。
出没機構としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に
設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0038】
前記筆記具により形成される筆跡は、指による擦過や加熱又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は質量部である。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約1.2μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−35℃、T2:−15℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は1.0μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中26体積%であった。
【0040】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.9μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−18℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は0.8μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中11体積%であった。
【0041】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Cの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.7μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−18℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は0.65μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中7体積%であった。
【0042】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Dの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.5μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−20℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は0.45μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中2体積%であった。
【0043】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Eの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約2.3μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−18℃、T2:−9℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は2.0μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中70体積%であった。
【0044】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Fの調製
(イ)成分として1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン2.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約1.5μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−20℃、T2:−10℃、T3:45℃、T4:64℃)は橙色から無色に色変化し、平均粒子径は1.3μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中35体積%であった。
【0045】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Gの調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン2.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で、平均粒子径が約0.5μmになるよう分散条件を調整して乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記懸濁液を遠心分離して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料(T1:−40℃、T2:−20℃、T3:45℃、T4:64℃)は青色から無色に色変化し、平均粒子径は0.45μm、1.5μmを越える粒子が全マイクロカプセル顔料中3体積%であった。
【0046】
実施例1
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料A25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10.0部、グリセリン10.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水47.5部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0047】
筆記具の作製(図4参照)
ポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に接続部材5を介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したチップ3と連結させた。
前記インキ組成物8をインキ収容管内に充填し、次いで、インキ後端にインキ逆流防止体12(液栓)を充填し、更に尾栓13をインキ収容管の後部に嵌合させてレフィル14を得た。
更に、前記レフィルを軸筒(先軸筒41と後軸筒42とからなる)内に組み込み、ゴムシール15を内在したキャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記後軸筒後部には、摩擦部材7としてSEBS製ゴムを設けてなる。
【0048】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0049】
実施例2
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10.0部、グリセリン10.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水47.5部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0050】
筆記具の作製(図5参照)
前記インキ組成物8を、ボールペンチップ3を接続部材5を介して固着した内径5mm、外形9mmのポリプロピレン製軸筒4に充填し、次いで、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体12を充填し、尾栓13を軸筒後部に嵌合させた。
更に、ゴムシール15を内在し、先端部にSEBS樹脂製の摩擦部材7を設けたキャップ6を嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記ボールペンチップは、金属材料をドリルによる切削加工により形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持させてなり、且つ、前記ボールはバネ体により前方に付勢させたものである。
【0051】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0052】
実施例3
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0053】
筆記具の作製(図6参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後端部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、前記軸筒先端開口部の周囲には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0054】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0055】
実施例4
可逆熱変色性筆記具用性インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料C25.0部、20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック70〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0056】
筆記具の作製(図7参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒側面に設けられたクリップ形状の出没機構(スライド機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0057】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0058】
実施例5
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D25.0部、20.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0059】
筆記具の作製(図8参照)
前記インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒4内に組み込み、出没式の筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、出没機構には、SEBS樹脂製の摩擦部材7を設けてなる。
【0060】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0061】
実施例6
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0062】
筆記具の作製(図9参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0063】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0064】
実施例7
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料C20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0065】
筆記具の作製(図10参照)
前記インキ組成物8と、撹拌体9(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒4内に内蔵し、接続部材5を介して先端部にマーキングペンチップ3(チゼル型)を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記軸筒後端部には摩擦部材7としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0066】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0067】
実施例8
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0068】
筆記具の作製(図11参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に直接収容し、軸筒内の前方に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたチップの先端部に直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持させたボールペンチップ3を接続部材5を介して嵌合して筆記具1(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具には着脱自在のキャップ(図示せず)を備えてなり、且つ、軸筒後端部には摩擦部材7を設けてなる。
【0069】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0070】
実施例9
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0071】
筆記具の作製(図12参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に直接収容し、軸筒内の前方に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、マーキングペンチップ3(チゼル型)を接続部材5を介して嵌合して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記筆記具には着脱自在のキャップ(図示せず)を備えてなり、且つ、軸筒後端部には摩擦部材7を設けてなる。
【0072】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0073】
実施例10
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0074】
筆記具の作製(図13参照)
マーキングペンチップ3と、前記チップ後端に接続されるインキ吸蔵体2と、前記インキ吸蔵体の後方に配置される中間部材17と、前記中間部材の後方に配置される取り外し可能なインキタンク18(使用前は栓体181によりインキ組成物8を封入したインキカートリッジ)と、軸筒4と、前記軸筒の後端開口部に着脱自在に螺着される摩擦部材7を備えた尾栓13と、キャップ9とからなる筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記中間部材は、インキ吸蔵体とインキタンクとを区画する隔壁と、前記隔壁より突出されたインキ吸蔵体の内部に突き刺し接続される複数本(具体的には2本)の連通管と、前記隔壁より突出されたインキタンクに挿着される接続管を備えてなる。
【0075】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0076】
実施例11
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0077】
筆記具の作製(図14参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させた。
一端にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(砲弾型)を取り付けたポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に前記インキ吸蔵体2を収容し、ポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を取り付けた接続部材5を他端の軸筒と嵌合し、それぞれのペン先にキャップ6を装着して両頭式筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、それぞれのペン先は大きさが異なるものであり、一方のキャップ頂部にはSEBS樹脂からなる摩擦部材7を設けてなる。
【0078】
前記筆記具を用いて淡青色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられた摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0079】
実施例12
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0080】
筆記具の作製(図15参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0081】
前記筆記具を用いて淡黄色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップ頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0082】
実施例13
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0083】
筆記具の作製(図16参照)
前記インキ組成物8と、撹拌体9(SUS−304フェライト系ステンレス鋼球、直径3mm)を軸筒4内に内蔵し、接続部材5を介して先端部にマーキングペンチップ3(チゼル型)を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、筆記時のペン体への筆圧で弁が開く構造である。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0084】
前記筆記具を用いて灰色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップ頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0085】
実施例14
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0086】
筆記具の作製(図17参照)
前記インキ組成物8をインキタンク18内に収容した(使用前は栓体181によりインキ組成物を封入したインキカートリッジ)。
先軸筒41に櫛溝状のインキ調節部材16を有し、且つ、マーキングペンチップ3(チゼル型)を接続部材5を介して嵌合し、インキ調節部材の後部に中間部材17を嵌合した。
次いで、前記中間部材にカートリッジを装着し、後軸筒42を螺合して筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記筆記具にはポリエステル系樹脂からなるキャップ6を備えてなり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0087】
前記筆記具を用いて淡緑色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップの頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0088】
実施例15
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0089】
筆記具の作製(図18参照)
マーキングペンチップ3と、前記チップ後端に接続されるインキ吸蔵体2と、前記インキ吸蔵体の後方に配置される中間部材17と、前記中間部材の後方に配置される取り外し可能なインキタンク18(使用前は栓体181によりインキ組成物8を封入したインキカートリッジ)と、軸筒4と、前記軸筒の後端開口部に着脱自在に螺着される尾栓13と、キャップ9とからなる筆記具1(マーキングペン)を得た。
なお、前記中間部材は、インキ吸蔵体とインキタンクとを区画する隔壁と、前記隔壁より突出されたインキ吸蔵体の内部に突き刺し接続される複数本(具体的には2本)の連通管と、前記隔壁より突出されたインキタンクに挿着される接続管を備えてなり、キャップはポリエステル系樹脂からなり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0090】
前記筆記具を用いて淡青色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップの頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0091】
実施例16
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0092】
筆記具の作製(図19参照)
前記インキ組成物8を軸筒4内に内蔵し、先端部に筆穂からなるチップ3を取り付け、キャップ6を装着して筆記具1(筆ペン)を得た。
なお、前記軸筒内には弁機構10を備えてなり、前記弁機構は、弁座と、弁体と、前記弁体を弁座に圧接するように付勢する金属製スプリングからなり、軸筒後端部の操作機構を押圧することにより弁が開く構造である。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0093】
前記筆記具を用いて淡黄色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0094】
実施例17
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、10%希釈リン酸溶液0.1部、水59.88部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0095】
筆記具の作製(図20参照)
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体2内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒4内に収容し、接続部材5を介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペンチップ3(チゼル型)を接続状態に組み立て、キャップ6を装着して筆記具1(マーキングペン)を得た。
前記マーキングペンチップは、中央部に透明部材31を備えてなる。
前記キャップは、ポリエステル系樹脂からなるエラストマーであり、摩擦部材を兼ねてなる。
【0096】
前記筆記具を用いて灰色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、キャップ頂部でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0097】
実施例18
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
前記マイクロカプセル顔料G25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0098】
ボールペンレフィルの作製
前記各インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.5mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
【0099】
筆記具の作製(図21参照)
複合式ボールペンの作製(図21参照)
前記のようにして得た二本の複合式ボールペンレフィルを光遮蔽性(不透明)軸筒4(直径11mm)内に組み込み、出没機構の作動によっていずれかのボールペン用レフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する筆記具1(複合式ボールペン)を得た。
なお、前記複合式ボールペンの軸筒後端部には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
【0100】
前記筆記具を用いて淡緑色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0101】
実施例19
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料D25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
前記マイクロカプセル顔料G25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0102】
ボールペンレフィルの作製
前記各インキ組成物8をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管11に吸引充填し、樹脂製接続部材5を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.4mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップ3と連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させてボールペンレフィルを得た。
【0103】
筆記具の作製(図21参照)
前記のようにして得た二本のボールペンレフィルを、後部に開閉自在の蓋体19を有する透明な軸筒4(直径11mm)に組み込み、蓋体を閉めた後、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する筆記具1(複合式ボールペン)を得た。
なお、前記軸筒先端の開口部近傍には、SEBS樹脂製の摩擦部材10を設けてなる。
【0104】
前記筆記具を用いて灰色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0105】
実施例20
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料B25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、糖混合物〔三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30〕3.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン1.0部、水70.1部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0106】
筆記具の作製
前記インキ組成物をポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管に吸引充填し、樹脂製接続部材を介して金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させて形成したボール抱持部に直径0.7mmのステンレス鋼ボールを抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプロピレン製パイプの後端よりインキ逆流防止体(液栓)と、希ガスを充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させて内部を加圧状態にしたボールペンレフィルを得た。
前記ボールペンレフィルを、軸筒内に組み込み、出没式の筆記具(ボールペン)を得た。
なお、前記筆記具は、ボールペンレフィルに設けられたチップが外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、軸筒後端部に設けられた出没機構(ノック機構)の作動によって軸筒前端開口部からチップが突出する構造である。
なお、前記軸筒先端開口部の周囲には、SEBS樹脂製の摩擦部材を設けてなる。
【0107】
前記筆記具を用いて淡黄色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色し、筆記箇所に白濁の残像は視認されなかった。
【0108】
比較例1
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料E25.0部、サクシノグリカン(剪断減粘性付与剤)0.3部、尿素10.0部、グリセリン10.0部、リン酸エステル系界面活性剤0.5部、ノニオン系浸透性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防黴剤0.1部、トリエタノールアミン0.5部、水47.5部からなる可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を調製した。
【0109】
筆記具の作製
ポリプロピレン樹脂からなるインキ収容管に樹脂製ホルダーを介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したペン体と連結させた。
前記インキ組成物をインキ収容管内に充填し、次いで、インキ後端にインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をインキ収容管の後部に嵌合させてレフィルを得た。
更に、前記レフィルを軸筒(先軸筒と後軸筒とからなる)内に組み込み、キャップを嵌めた後、遠心処理により脱気処理を行なって筆記具(ボールペン)
なお、前記後軸筒後部には摩擦部材としてSEBS製ゴムを設けてなる。
【0110】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色するものの、筆記箇所に白濁の残像が視認された。
【0111】
比較例2
可逆熱変色性筆記具用インキ組成物の調製
前記マイクロカプセル顔料F20.0部、ヒドロキシエチルセルロース〔ユニオンカーバイド日本(株)製、商品名:セロサイズWP−09L〕0.5部、グリセリン18.0部、消泡剤0.02部、防腐剤1.5部、水59.88部、10%希釈リン酸溶液0.1部を加えて均一に攪拌を行い、可逆熱変色性筆記具用インキ組成物を得た。
【0112】
筆記具の作製
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、ホルダーを介して軸筒先端部にポリエステル繊維からなるマーキングペン体(砲弾型)を接続状態に組み立て、キャップを装着して筆記具(マーキングペン)を得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を設けてなる。
【0113】
前記筆記具を用いて黒色の用紙に筆記して文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は室温下(25℃)で橙色であり、軸筒に取り付けられたSEBS製摩擦部材でこすると、文字が消色するものの、筆記箇所に白濁の残像が視認された。
【符号の説明】
【0114】
t1 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
t2 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
t3 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
t4 加熱消色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T1 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全消色温度
T2 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の消色開始温度
T3 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の発色開始温度
T4 加熱発色型の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 筆記具
2 インキ吸蔵体
3 チップ
31 透明部材
4 軸筒
41 先軸筒
42 後軸筒
5 接続部材
6 キャップ
7 摩擦部材
8 インキ組成物
9 攪拌体
10 弁機構
11 インキ収容管
12 インキ逆流防止体
13 尾栓
14 レフィル
15 ゴムシール
16 インキ調節部材
17 中間部材
18 インキタンク
181 栓体
19 蓋体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水を少なくとも含有してなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下である請求項1記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にある請求項1記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して完全消色温度(t4)が50℃以上であり、完全発色温度(t1)が0℃以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
剪断減粘性付与剤を含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
8糖以上の澱粉糖化物及び/又はその還元物を30質量%以上含有してなる糖混合物を含有してなる請求項5記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項7】
水溶性高分子凝集剤を含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項8】
請求項5又は6記載の可逆熱変色性筆記具用水性インキ組成物を収容したボールペン形態の筆記具。
【請求項9】
請求項7記載の可逆熱変色性筆記具用水性インキ組成物を収容したマーキングペン形態の筆記具。
【請求項10】
筆記具に摩擦部材を設けてなる請求項8又は9記載の筆記具。
【請求項11】
前記摩擦部材がエラストマー又はプラスチック発泡体である請求項10記載の筆記具。
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、水を少なくとも含有してなり、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.01〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
1.5μm以上の粒子が全マイクロカプセル顔料中の30体積%以下である請求項1記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項3】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1〜0.65μmの範囲にある請求項1記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、色濃度−温度曲線に関して完全消色温度(t4)が50℃以上であり、完全発色温度(t1)が0℃以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
剪断減粘性付与剤を含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
8糖以上の澱粉糖化物及び/又はその還元物を30質量%以上含有してなる糖混合物を含有してなる請求項5記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項7】
水溶性高分子凝集剤を含んでなる請求項1乃至4のいずれかに記載の可逆熱変色性筆記具用インキ組成物。
【請求項8】
請求項5又は6記載の可逆熱変色性筆記具用水性インキ組成物を収容したボールペン形態の筆記具。
【請求項9】
請求項7記載の可逆熱変色性筆記具用水性インキ組成物を収容したマーキングペン形態の筆記具。
【請求項10】
筆記具に摩擦部材を設けてなる請求項8又は9記載の筆記具。
【請求項11】
前記摩擦部材がエラストマー又はプラスチック発泡体である請求項10記載の筆記具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2011−178979(P2011−178979A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68079(P2010−68079)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】
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