合成された哺乳動物のレトロトランスポゾン遺伝子
本発明は、天然のトランスポゾン及びレトロトランスポゾン遺伝子と比較して、高い発現レベルを示す合成のトランスポゾン及びレトロトランスポゾン遺伝子に関する。本発明はさらに、このような合成遺伝子を包含するトランスポゾン及びレトロトランスポゾンに関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月28日に出願された米国仮出願第60/473,658号の利益を主張するもので、その全ては参照により本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
トランスポゾンは、プラスミド、ウイルス及び細菌の染色体に共通する構成因子である、個別の可動遺伝因子(DNA)である。これらの因子は、自身をコードする表現型特性を、レプリコンからレプリコンへと転位させる能力、又は、公知の遺伝子へと転位しそれを不活性化する能力によって検出される。トランスポゾンには2つのタイプがあり、大きさは約750から50,000ヌクレオチド塩基対以上にも及ぶ。小さな挿入配列又はIS因子として知られる一つのタイプでは、如何なる公知の表現型特性もコードしてはいない。もう一方のタイプでは抗菌耐性等の表現型特性をコードする比較的大きなユニットを含んでいる(Plasmids and Transposons Environmental Effects and Maintenance Mechanisms;Edited by C.Stuttard and K.Rozee;Academic Press,New York;Pages165−205)。トランスポゾン又は転位因子は、反復配列が結合した核酸の一部分を含むものである。活性なトランスポゾンは、DNA配列に核酸を組込むのを助ける酵素をコードする。
【0003】
脊椎動物において、DNAトランスポゾン、すなわちDNAの媒介によって移動する可動性因子の発見は、比較的最近のことである(Radice,A.D.ら,1994.Mol.Gen.Genet.244 606−612)。それ以来、真核生物トランスポゾンのhAT(hobo/Ac/Tam)スーパーファミリーと同様、不活性で、高度に変異したTcl/marinerのメンバーが、魚類の異なる種、アフリカツメガエル、ヒトのゲノムから単離された(Oosumiら,1995.Nature378,873;Ivicsら,1995.Mol.Gen.Genet.247 312−322;Kogaら,1996.Nature 383,30;Lamら,1996.J.Mol.Biol.257,359−366及びLam,W.L.ら,Proc.Natl.Acad Sci.USA 93,10870−10875)。
【0004】
レトロトランスポゾンは、現在までに試験されたほとんど全ての動物、植物、細菌種の細胞で見出される、天然のDNA因子である。それらは、細胞内で発現し、染色体外因子に逆転写され、同じゲノム内の他の部位に再度組込まれる。
【0005】
レトロトランスポゾンは、レトロウイルス様のLTRレトロトランスポゾンと、ヒトL1因子、アカパンカビTAD因子(Kinsey,1990,Genetics 126:317−326)、ショウジョウバエのI因子(Bucheton ら,1984,Cell 38:153−163)、及びカイコのR2Bm(Luan ら,1993,Cell 72:595−605)等の非LTR因子の2つのクラスに分けることができる。レトロトランスポゾンのこれら2つのタイプは、構造的に異なり、また根本的に異なるメカニズムでレトロトランスポーズする。
【0006】
LTRレトロトランスポゾンとは異なり、非LTR因子(ポリA因子とも呼ばれる)はLTRを欠き、代わりに末端はポリA又はAに富んだ配列となっている。LTRレトロトランスポゾンの転位メカニズムは比較的よく理解されている。対照的に、非LTRレトロトランスポゾンによる転位メカニズムは解明が始まったところである(Luan and Eickbush,1995,Mol.Cell.Biol.15:3882−3891;Luanら,1993,Cell 72:595−605)。非LTRレトロトランスポゾンはさらに配列特異的な及び非−配列特異的なタイプに分けることができる。L1は、ヒト、マウス及び他の哺乳動物全ての染色体において散在的に組込まれていることが見出された、後者のタイプに属する。
【0007】
L1因子(LINEとしても知られる)はヒトゲノムへの定着に極めて成功している。初期の概算では、L1はヒトゲノム中に100,000コピー存在し、核DNAの5%を構成すると、見られていた(Fanning and Singer,1987,Biochim Biophys Acta 910:203−121)。しかしながら、最近の研究によれば、850,000もの多くのL1がヒトゲノム中に存在するようである(Smitら,1996,Current Opinion in Genetics and Development)。これらコピーの大部分は5’末端が切り詰められていて、欠陥があると推定されている。完全な長さの因子と同様に、5’末端が切り詰められているコピーもしばしば短い標的部位との重複(TSDs)によって挟まれている。
【0008】
完全長6.1kbのL1コンセンサス配列は、以下の保全機構(conserved organization):内部プロモーターを有する5’非翻訳リーダー領域(UTR)、2つの重複していないORF(ORF1及びORF2)、200bpの3’UTR及び3’ポリAテイル、を示している。ORF1は40kdタンパク質をコードし、RNAに対してパッケージング機能を提供しているようである(Martin,1991,Mol.Cell Biol.11:4804−4807;Hohjohら,1996,EMBO J.15:630−639)。一方、ORF2は逆転写酵素をコードしている(Mathiasら,1991,Science 254:1808−1810)。ORF1タンパク質、そしておそらくORF2タンパク質もL1 RNAと結合し、リボ核タンパク質の粒子を形成する。ORF2タンパク質による逆転写が起こり、L1 cDNAが生じ、そして、そのL1 cDNAがゲノムに組込まれる(Martin,1991,Curr.Opin.Genet.Dev.1:505−508)。さらに、L1因子は通常、7から20bpのTSDによって挟まれている。完全長のL1及び他の非LTRレトロトランスポゾンは、レトロウイルスインテグラーゼ、プロテアーゼ及びRNアーゼHと認識されるホモログを欠いている。この因子群においては、LTRレトロトランスポゾンとは根本的に異なる転位メカニズムが採用されている。
【0009】
ヒトL1因子の幾つかは、ヒトゲノムの新たな部位へ、レトロトランスポーズ(発現し、それらの標的部位を切断し、切断された標的部位をプライマーとして用いて自身のRNAを逆転写すること)可能であり、遺伝的な疾患を引き起こす。例えば、生殖細胞系列に於けるVIII因子及びジストロフィン遺伝子へのL1挿入は、それぞれ血友病A及び筋ジストロフィーを引き起こす(Kazazianら,1988,Nature 332:164−166;Naritaら,1993,J.Clinical Invest.91:1862−1867;Holmesら,1994,Nature Genetics 7:143−148)。一方、体細胞でのc−myc及びAPC腫瘍抑制遺伝子へのL1挿入は、それぞれ乳癌及び結腸癌の珍しい例に関与する(Morseら,Nature 333:87−90;Mikiら,1992,Cancer Research 52:643−645)。L1レトロトランスポゾンは、直接又は間接に、質量によって(Landerら,2001,Nature 409:860−921)、Alu因子の自己動員及びトランス動員によって(Dewannieuxら,2003,Nature Genet.35:41−48)、哺乳動物のゲノムの30%以上を占めいている。完全な長さ(約6kb)のL1は、レトロトランスポーズするためのタンパク質をコードする2つのオープンリーデングフレーム、ORF1及びORF2から成る(Fengら,1996,Cell 87:905−916;Moranら,1996,Cell 87:917−927)。
【0010】
このように、高度に活性なL1因子は、哺乳動物の遺伝学に於ける手段(tool)として有望な有用性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の要約)
一態様に於いては、本発明は、合成されたトランスポゾン遺伝子に関する。別の態様に於いては、本発明は、合成された哺乳動物のトランスポゾン遺伝子に関する。
【0012】
本発明者らは、合成されたトランスポゾン及びレトロトランスポゾン遺伝子が遺伝子治療への応用及び本明細書に記載の他の遺伝学的な応用に有用であることを見出した。
【0013】
更なる態様では、本発明は、合成されたレトロトランスポゾン遺伝子に関するものである。本発明の更なる態様は、哺乳動物の合成されたレトロトランスポゾン遺伝子を提供することである。
【0014】
一態様では、本発明は、合成されたORF2遺伝子に関する。別の態様では、本発明は、合成された哺乳動物のORF2遺伝子に関する。合成遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子に比較してより高レベルな発現を示す。
【0015】
一態様では、本発明は、合成されたORF1遺伝子に関する。別の態様では、本発明は、合成された哺乳動物のORF1遺伝子に関する。合成遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子に比較してより高レベルな発現を示す。
【0016】
更なる態様では、本発明は、ヒトと関連のあるコドンを含む合成されたORF2又はORF1遺伝子に関する。本発明の更なる態様は、合成されたORF2又はORF1遺伝子は、ヒトと関連のあるコドンのみを含む。これらの態様では、ヒトと関連のあるコドンとは、高度に発現される哺乳動物の遺伝子で最も頻繁に使用されるコドンを指す。注目すべきは、それぞれのアミノ酸をコードする2又はそれ以上のこのようなコドンがしばしば存在し、それゆえ多くの可能な合成因子が存在しうるのである。
【0017】
別の態様では、本発明は、配列番号1を含む合成された哺乳動物のORF2遺伝子を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、配列番号2を含む合成された哺乳動物のORF1遺伝子を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、配列番号3を含む合成された哺乳動物のORF2遺伝子を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、配列番号4を含む合成された哺乳動物のORF1遺伝子を提供する。
【0021】
一態様では、本発明は、合成されたトランスポゾン遺伝子を含むトランスポゾンに関する。別の態様では、本発明は、合成されたレトロトランスポゾン遺伝子を含むレトロトランスポゾンに関する。更なる態様では、本発明は、合成されたORF2又はORF1遺伝子を含むL1レトロトランスポゾンに関する。別の態様では、本発明は、合成されたORF2及び合成されたORF1遺伝子を含むL1レトロトランスポゾンに関する。本発明の更なる態様は、合成された哺乳動物のORF2遺伝子、合成された哺乳動物のORF1遺伝子、又は合成された哺乳動物のORF2遺伝子及び合成された哺乳動物のORF1遺伝子の両者を含む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンを提供する。レトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンと少なくとも同程度の効率でレトロトランスポーズする。本発明の更なる態様では、レトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする。
【0022】
別の態様では、本発明は合成されたORF2遺伝子を含むリコンビナントベクター構築物を提供する。別の実施例では、本発明は合成されたORF1遺伝子を含むリコンビナントベクター構築物を提供する。別の態様では、本発明は合成されたORF2遺伝子及び合成されたORF1遺伝子を含むリコンビナントベクター構築物を提供する。これらの構築物で形質導入され、形質転換され又は感染された真核細胞が同様に提供される。
【0023】
更なる態様では、本発明は、合成のORF2又はORF1遺伝子を調製するための方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、望ましい遺伝子又はその生物学的に活性な断片を哺乳動物の細胞へ送達する方法に関する。本発明の方法は、該哺乳動物へ、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子、又はそれらの組合せを望ましい遺伝子と共に投与することを包含する。
【0025】
本発明の更なる態様は、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子、又はそれらの組合せ、並びに望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体を含むカセットを更に含んで成る組成物を提供する。別の態様では、本発明は、哺乳動物の遺伝的な疾患を治療する方法に関する。本発明の方法は、問題の遺伝的な疾患を有する哺乳動物へ、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子、又はそれらの組合せ、並びに望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体を含む組成物を投与することを包含する。
【0026】
別の態様では、本発明は、特徴付けされていない遺伝子又はそれらの生物学的に活性な断片を細胞中で同定する方法に関する。本発明の方法は、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子又はそれらの組合せ及び検出可能なタグ配列を投与すること、並びにタグ配列を発現する細胞を同定すること及びタグ配列に隣接するDNAを特徴付けることを包含する。
本発明の他の態様は、以下に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本明細書は、合成されたトランスポゾン遺伝子を開示する。さらに、本明細書は、合成された哺乳動物のトランスポゾン遺伝子を開示する。加えて、本明細書は、合成されたレトロトランスポゾン遺伝子を開示する。さらに、本明細書は、合成された哺乳動物のレトロトランスポゾン遺伝子を開示する。
【0028】
合成されたレトロトランスポゾンは、一態様では、天然のレトロトランスポゾンと少なくとも同様の効率でレトロトランスポーズする。別の態様では、合成されたレトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約2倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約25倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約100から200倍以上効率よくレトロトランスポーズする。
【0029】
合成トランスポゾンは、一態様で、天然のトランスポゾンと少なくとも同様の効率で転位する。別の態様では、合成トランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより効率よく転位する。更に別の態様では、本発明の合成トランスポゾンは、天然のトランスポゾンより約2倍以上効率よく転位する。更に別の態様では、本発明の合成トランスポゾンは、天然のトランスポゾンより約25倍以上効率よく転位する。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約100から200倍以上効率よく転位する。
【0030】
本明細書は、合成されたORF2遺伝子を開示する。一態様では、本発明の合成されたORF2遺伝子は、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫等の脊椎動物のものである。一態様では、本発明の合成されたORF2遺伝子は、マウス(murine)、ウシ、ウマ等の哺乳動物のものである。合成遺伝子の一態様は、ヒトに対して最適なコドンを使用するのみならず、発現量が低い原因となるおそれがある核酸配列の偏りを無くしている。
【0031】
一態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子と比較して、より高レベルの発現を示す。
【0032】
本発明の別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然の遺伝子と同じタンパク質をコードしており、更にヒトに関連したコドンをも含んでいる。
本発明の別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、ヒトに関連したコドンのみを含んでいる。「ヒトに関連したコドン」とは、高度に発現される哺乳動物の遺伝子で最も頻繁に使用されるコドンを指す。当業者であれば、どのコドンが特定の遺伝子で最も頻繁に関連付けられているか決定することができる。注目すべきは、それぞれのアミノ酸をコードする2又はそれ以上のこのようなコドンがしばしば存在し、それゆえ多くの可能な合成因子が存在しうることである。例えば、それぞれのアミノ酸に対するヒトに関連したコドンは、以下を含んでいてもよい。アラニンGCC、アルギニンCGC又はCGG、アスパラギンAAC、アスパラギン酸GAC、システインTGC、グルタミンCAG、グルタミン酸GAG、グリシンGGC又はGGG、ヒスチジンCAC、イソロイシンATC、ロイシンCTG又はCTC、リジンAAG、メチオニンATG、プロリンCCC、フェニルアラニンTTC、セリンAGC又はTCC、トレオニンACC、トリプトファンTGG、チロシンTAC、及び、バリンGTG又はGTC。
【0033】
一態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子の配列と100%の相同性を示すDNA配列は有していない。別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子の配列と約90%未満の相同性を示すDNA配列を有している。別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子の配列と約80%未満の相同性を示すDNA配列を有している。
【0034】
別の態様では、合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号1と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号1を包含する。
【0035】
さらに本明細書は、合成されたORF1遺伝子を開示する。本発明の別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫等の脊椎動物のものである。本発明の別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、マウス、ウシ、ウマ等の哺乳動物のものである。本発明の更なる態様では、合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子と比較して、より高レベルの発現を示す。
【0036】
本発明の別の態様では、合成されたORF1遺伝子は、天然の遺伝子と同じタンパク質をコードしているが、ヒトに関連したコドンをも含んでいる。本発明の別の態様では、合成されたORF1遺伝子は、ヒトに関連したコドンのみを含んでいる。
【0037】
一態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子の配列と100%の相同性を示すDNA配列は有していない。別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子の配列と90%未満の相同性を示すDNA配列を有している。別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子の配列と約80%未満の相同性を示すDNA配列を有している。
【0038】
別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号2と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号2を包含する。
【0039】
別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号3と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号3を包含する。
【0040】
別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号4と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号4を包含する。
【0041】
一態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子はヒトのものである。本発明の別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子はヒトのものである。
【0042】
一態様に於いて、本発明の合成トランスポゾン遺伝子を包含するトランスポゾンが提供される。別の態様に於いて、本発明の合成レトロトランスポゾン遺伝子を包含するレトロトランスポゾンが提供される。
【0043】
更なる態様に於いて、本発明の合成されたORF2遺伝子を包含するL1レトロトランスポゾンが提供される。更なる態様に於いては、本発明の合成されたORF1遺伝子を包含するL1レトロトランスポゾンが提供される。更に別の態様は、本発明の合成されたORF2遺伝子及び本発明の合成されたORF1遺伝子の両者を包含するL1レトロトランスポゾンを提供する。トランスポゾン又はレトロトランスポゾンは、一態様では、天然のトランスポゾン又はレトロトランスポゾンと少なくとも同様の効率で、それぞれトランスポーズ又はレトロトランスポーズする。別の態様では、トランスポゾン又はレトロトランスポゾンは、天然のトランスポゾン又はレトロトランスポゾンより効率よく、それぞれトランスポーズ又はレトロトランスポーズする。
【0044】
更なる態様に於いて、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子を包む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンが提供される。更なる態様に於いては、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子を包む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンが提供される。更に別の態様は、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子及び本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子の両者を含む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンを提供する。哺乳動物のレトロトランスポゾンは、一態様では、天然のL1レトロトランスポゾンと少なくとも同様の効率でレトロトランスポーズする。別の態様では、哺乳動物のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより約2倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより約25倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより約100から200倍以上効率よくレトロトランスポーズする。
【0045】
更なる態様に於いて、本発明の合成されたORF2遺伝子を包むリコンビナントベクター構築物が提供される。本発明の合成されたORF1遺伝子を包むリコンビナントベクター構築物が更なる態様で提供される。本発明の合成されたORF2遺伝子及び本発明の合成されたORF1遺伝子の両者を含むリコンビナントベクター構築物が更なる態様で提供される。リコンビナントベクターは、化学的に結合されたもの;エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ポリオーマ性ウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイスル、ポックスウイルス等の(DNA又はRNA)ウイルスベクター;融合タンパク質;プラスミド;ファージから選択されてもよいがそれらに限定はされない。ベクター配列は自然に生じた真核細胞のウイルス因子に限定される必要はない。哺乳類の人工染色体を含む人工染色体も本発明の範囲のものとする。
【0046】
一態様では、目的のプラスミドは、天然のmORF2配列を、本発明の合成された哺乳動物のORF2又はORF1遺伝子のDNA配列で置き換えたpCEP4である。
【0047】
本発明のリコンビナントベクター構築物は、天然のベクターで観察されのよりも、より頻繁にレトロトランスポーズする。一態様では、本発明の構築物は、天然のベクターで観察されるより約2から約100倍の頻度でレトロトランスポーズする。
【0048】
別の態様に於いて、本発明のリコンビナントベクター構築物によって形質導入、形質転換又は感染された真核細胞が提供される。
【0049】
本発明の合成されたORF2又はORF1遺伝子の調製方法を提供する。一態様では、本発明の方法は、「ヒトに関連したコドン」を含む本発明の合成されたORF2又はORF1遺伝子の調製を包含する。別の態様では、本発明の方法は、「ヒトに関連したコドン」のみを含む本発明の合成されたORF2又はORF1遺伝子の調製を包含する。別の態様では、本発明の方法はさらに、約400から約600塩基対の間隔でユニークな制限酵素部位を組み込む工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、1つ以上のユニークな制限酵素部位を有する核酸配列からなる3’非翻訳領域を再合成するか、又は細胞の遺伝子の3’UTR(非翻訳領域)を使用する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、前記配列のセンス及び相補鎖の両者について約30塩基対から約90塩基対の長さのオリゴヌクレオチドを設計する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、それぞれの長さが約400から約600塩基対である約6から約12個のDNAフラグメントを合成するためにオリゴヌクレオチドを使用する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、前記フラグメントのそれぞれに対応するセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むほぼ等モル濃度の混合物を使用するPCRを実施する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、完全な遺伝子を作成するために、ユニークな制限酵素部位を使用してPCRにより得られたフラグメントをサブクローニングする工程を包含する。
【0050】
合成されたORF2又はORF1遺伝子は、「ヒトに関連したコドン」を含むように調製されてもよい。結果として得られる核酸配列は、およそ500塩基対間隔でユニークな制限酵素部位が組み込まれるように、さらに改変されていてもよい。さらに、3’非翻訳領域は、サブクローニングを容易にするために、複数のユニークな制限酵素部位で再合成されてもよい。オリゴヌクレオチドは、この新しい配列の両方の鎖を完全にカバーするように設計されてもよく、例えば、約30から約90塩基対のオリゴヌクレオチドが設計されてもよい。約65℃より高い融解温度を有するこれらのオリゴヌクレオチド内のヘアピン構造(例えば、コンピュータープログラムOligo5.0で予測されるような)は、アミノ酸配列を保存する突然変異で破壊されるであろう。これらの突然変異は、最適なコドンをそれより劣る改変されたコドンへと変更するであろう。
【0051】
結果として得られる最適化されたORF2又はORF1核酸配列は、その後修飾されたポリメラーゼ連鎖反応(Stemmerら,1995,Gene 164:49−53)に供されてもよい。例えば、約40塩基対から約80塩基対のセンス鎖全体をカバーするオリゴヌクレオチドが合成されてもよい。相補鎖もまた、センス鎖オリゴヌクレオチドに対して約30塩基対ずらして、約40塩基対から約80塩基対のオリゴヌクレオチドで、合成されてもよい。オリゴヌクレオチドは、相補鎖由来の2つのオリゴヌクレオチドからなる、約20から約50塩基対のハイブリッドであってもよい。これらのオリゴヌクレオチドを使用して、ORF2又はORF1核酸配列は、それぞれの長さが約400から約600塩基対である約6から約12個の間のフラグメントとして合成されてもよい。それぞれのフラグメントに対応するセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ほぼ等モル量で混合されてもよく、PCR反応が実施されてもよい。例えば、25サイクルの会合PCRを行ってもよい。他のPCRサイクルが実施されてもよく、本明細書で開示される利益を享受する当業者であれば、目的に応じて最適なサイクル数を決定することが可能である。この会合反応物は、例えば、増幅プライマーとしてのフラグメントである最も外側のオリゴヌクレオチドを含んでいるPCR反応物中に希釈されてもよい。
【0052】
結果として得られるフラグメントは、例えば、別々にプラスミド中にクローン化され、約20−30クローンはそれぞれ配列決定されてもよい。標準的なサブクローニングの手順に従って、オリゴ合成、会合又はPCRの際に導入された突然変異は取り除かれてもよい。結果として得られるフラグメントは、あらかじめ配列中に設計されているユニークな制限酵素部位を使用してサブクローニングされ、プラスミド中に、最適化された完全なORF2又はORF1核酸配列を作成する。
【0053】
哺乳動物の細胞中に、望ましい遺伝子又はそれらの生物学的に活性なフラグメントを送達する方法は、同様に、本発明の態様中で提供される。本発明の一態様では、望ましい遺伝子は、治療のための遺伝子である。本発明は、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子を哺乳動物へ投与することを包含する。遺伝子治療の方法もまた、本発明の態様に従って意図されている。レトロトランスポジションで遺伝子治療を通して送達される遺伝子は、第VIII因子、第IX因子、チロシン水酸化酵素、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ、アポトーシス性プロテアーゼ活性化因子−1−優性抑制阻害剤(Apaf−1−DN)、アルファ−ガラクトシダーゼA(AGA)を含むがそれらに限定されるものではない。レトロトランスポジションを用いる遺伝子治療に於いて標的とさる障害及び/又は疾病は、血友病、パーキンソン病、ファブリー病、家族性高コレステロール血症、ゴーシェ病、嚢胞性繊維症及び副腎白質ジストロトフィー、アデノシンデアミナーゼ欠損症(SCID)、アルファ−抗トリプシン欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血、テイ−サックス病及びサラセミア、を含むがそれらに限定されない。
【0054】
別の態様は、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体からなるカセットを含む組成物を提供する。一態様では、カセットは細胞のゲノムに挿入されてもよい異種又は同種のDNA(L1 DNAではない)を包含していてもよい。このDNAは、3’UTR配列内、又は3’UTRとポリAシグナルの間に、DNAの発現がプロモーターに制御されるよう部位に配置されてもよい。挿入されるDNAの種類は、挿入部位を同定するためのマーカーとして機能するDNA、例えば、ネオマイシン(neo)耐性遺伝子又は他の薬剤耐性遺伝子(例えば、zeo、hygro、gpt)、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、lacZ、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子、及び、限定はされないがT細胞受容体遺伝子等の細胞表面受容体遺伝子も含むが、それらに限定されるものではない。
【0055】
本発明に従った組成物の投与経路も、治療される疾患によって異なってもよい。組成物は、従来の方法(例えば、経口、非経口、経皮又は粘膜を通して)のうちの1つの形態、生分解性で生物学的適合性のあるポリマーを用いた持効性の製剤で、又は、ミセル、ゲル及びリポソームを用いた現場への送達によって患者に投与されてもよいし、又は、直腸へ(例えば、座薬又は浣腸によって)投与されてもよい。一態様では、肺感染症の患者の治療には、例えばエアロゾルによる鼻腔内への送達であるか、血管を通して投与されてもよい。適した薬学的に許容される担体は、当業者に明らかであり、投与経路に大いに依存するであろう。
【0056】
本発明の一態様では、プロモーターが以下から選択されるかもしれないが、それらに限定されない。アクチン、PGK、DNApolII又はユビキチンプロモーター等のハウスキーピングプロモーターのようなRNAポリメラーゼIIプロモーター、アルブミン、グロビン、オボアルブミンプロモーター配列等の組織特異的プロモーター、K12又はK14等の皮膚特異的プロモーター、ステロイド誘導プロモーター、テトラサイクリン誘導プロモーター等の誘導プロモーターなど、及び、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及びサイトメガロウイルス極初期プロモーター(CMV)等と同様に、L1因子プロモーター、tRNAプロモーター及び5SRNAプロモーター等の他のレトロウイルスLTR及びRNAポリメラーゼIIIプロモーター等のウイルスプロモーター。望ましいDNAの最適な発現を提供するプロモーターの種類は、望まれる結果に依存するであろうし、当業者に明らかであろう。
【0057】
細胞内でのレトロトランスポジションと、その結果である望ましいDNAの細胞ゲノム中への挿入を達成するため、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子からなるカセットは、細胞によるDNAの取り込みが達成されるのに適した組成物で細胞集団へ添加されてもよい。例えば、リコンビナントベクターがプラスミドである場合、インビトロでの細胞へのトランスフェクションに際して、カルシウムリン酸トランスフェクション混合物、リポソームトランスフェクション製剤等を含むがそれらに限定されない多数の製剤によって、カセットが細胞に添加されてもよい。この種のトランスフェクションの手順は、当業界で周知であり、例えば、Sambrookら,(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.)に記載されている。前記カセットは、カセットに適応した組換えDNA技術を用いて製造され、望ましい細胞にカセットを送達するのに適したウイルスの形で細胞に添加されてもよい。
【0058】
宿主細胞DNAの不活化領域にDNAの挿入をするために、ORF2及び/又はORF1タンパク質が特に害のない配列、例えばリボソームRNA遺伝子配列中で、宿主細胞DNAを切断するようにそれらを改変することが可能である。あるいは、ORF2又はORF1のエンドヌクレアーゼドメインを、特に害のない配列で特異的にDNAを切断する別の酵素のドメインで置換することが可能である。このような酵素は、アデノ随伴ウイルスのrep遺伝子及びあるグループIイントロンにコードされる部位特異的なエンドヌクレアーゼ、例えば酵母ミトコンドリアSCE1遺伝子の普遍的なコード等価物を含むがそれらに限定はされない。
【0059】
別の態様では、カセットに含まれるDNAは、挿入される細胞中の遺伝学的な欠陥を修正するのに有用である。このような遺伝学的な欠陥の修正に使用することができるDNAは、細胞内で突然変異し、その結果として遺伝学的な欠陥を引き起こした遺伝子の野生型又はその派生物を含む。このようなDNAは、欠陥を有する細胞で遺伝学的な欠陥を修正するのに使用できる公知の又は未知の如何なるDNAも限定されることなく包含するものである。このようなDNAの例は、嚢胞性線維症膜貫通伝導性調節因子(CFTR)をコードするcDNA、ベータグロビンをコードするcDNA、血液凝固タンパク質をコードするcDNA、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)等(これらに限定はされないが)の酵素をコードするcDNA、腫瘍抑制遺伝子p53、p21、p16、網膜芽腫、ウィルムス腫瘍等(これらに限定されないが)このような癌で役割を果たすcDNA、そしてまた、サイトカイン、インターロイキン及び治療用のペプチドをコードする遺伝子等が含まれる。
【0060】
したがって、一態様では、本発明は哺乳動物における遺伝的な障害を治療するための方法を提供し、そこでは、本発明の方法は本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体からなるカセットを含む組成物を前記の遺伝的な障害を有する哺乳動物に投与することを包含する。
【0061】
別の態様では、本発明は、動物において遺伝学的な欠陥を修正することに関する。更に関連する態様に於いては、哺乳動物及び、より好ましくはヒトが意図されている。動物の遺伝学的な欠陥を修正するために、上述した遺伝子送達の方法は、望ましい遺伝子又はその生物学的に活性なフラグメントをレトロトランスポジションによって遺伝学的な欠陥を有する動物の細胞に送達することに基づく本発明に包含される。治療する動物に於けるインビボでの細胞内のレトロトランスポジションを達成するために、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子を含むカセットは、当業界で公知の技術、例えば、参照により本明細書に取り込まれている国際公開第94/28938号及び米国特許第5,240,846号に記載される技術を用いて動物に投与される。本明細書に記載の組成物を動物に投与することにより、標的とされた細胞にカセットが取り込まれ、次いでレトロトランスポジションを引き起こす。
【0062】
レトロトランスポジションを用いて修正される遺伝学的な欠陥は、嚢胞性線維症、ジストロフィン遺伝子の突然変異、血液凝固に関連する遺伝学的な欠陥及びその他の公知又は未知の遺伝学的な欠陥(例えば、リソソーム蓄積症及び他の代謝性疾患)を含むがそれらに限定はされない。
【0063】
更に別の態様では、未だ特徴付けられていない遺伝子又はそれらの生物学的に活性なフラグメントを細胞中で同定するための方法が提供されるが、当該方法は、本発明の合成ORF2及び/又はORF1遺伝子及び検出可能なタグ配列を投与し、そのタグ配列を発現している細胞を同定し、そのタグ配列に隣接するDNAを単離して特徴付ける方法である。別の態様では、本発明の方法は未だに知られていない又はクローン化できていない遺伝子をクローニングすることを包含してもよい。「タグ」DNAは、neoR、GFP遺伝子、lacZ等から選択されてもよいが、これらに限定はされない。
【0064】
細胞中へのタグDNAのレトロトランスポジションに次いで、ゲノムに挿入されたタグ配列を有する細胞を同定する際に、当業界で周知の多くの手法を用いてもよい。例えば、ハイブリダイゼーションが使用されてもよく、そこではタグDNAからなるプローブがタグDNA又はRNAを有する細胞を同定するために使用される。タグDNAがタンパク質として発現される場合、タグタンパク質を発現している細胞の同定にあったて多様な免疫学的手法を用いてもよい。このような手法は当業界で周知であり、例えばSambrook ら,(上記)に記載されている。タグDNAに隣接するDNAは、例えばSambrook(上記)に記載されている一般的な手法で単離されクローン化されてもよく、その結果未だに知られていないDNAの遺伝子及び領域の同定及び特徴付けが達成される。
【0065】
本明細書で使用される「レトロトランスポジション」は、ゲノム中へ配列を組込み、ゲノム中で前記配列を発現させ、当該配列の染色体外コピーを作成するために組込まれた配列を逆転写し、ゲノム中へ配列を再組込みする過程を包含する。
【0066】
本明細書で使用される「遺伝子」は、遺伝子のエクソン及びイントロンの両者を含む現実の遺伝子を包含する。
【0067】
本明細書で使用される「異種のDNA」は、それが挿入された細胞で天然には見出されないDNAを包含する。例えば、マウス又は細菌のDNAがヒト細胞のゲノムに挿入されたとき、本明細書では、これらのDNAは「異種のDNA」とされる。一方、本明細書で使用される「同種のDNA」なる用語は、それが挿入された細胞で天然に見出されるDNAを意味する。例えば、マウス細胞のゲノムにマウスDNAが挿入されることは、その細胞への「同種のDNA」の挿入を意味する。後者の場合、同種のDNAが天然に見出される細胞ゲノム中での部位に、それが挿入される必要はなく、むしろ、同種のDNAは、天然に見出されるのとは異なる部位に挿入され、それによって、挿入部位に遺伝的な改変(突然変異)を生じさせてもよい。
【0068】
本明細書で使用される「L1ではないDNA」は、L1因子には天然で生じていないDNAを包含する。
【0069】
本発明の態様が、本明細書中で開示されるDNA配列に限定して解釈されるべきではないものと認識されたい。開示されたDNA配列と同様の機能を実質的に有する同種のDNA配列も、本発明に包含されるとみなされる。さらに、(本質的に同じ機能を有するレトロトランスポゾンORF等の)密接に関連する構造間の遺伝子配列は非常に多様であるが、このような配列も本発明に同様に包含されるものと認識されている。
【0070】
本明細書で使用されるように、「相同性」なる用語は、2つの重合分子間の、例えば2つの核酸分子間の、例えば2つのDNA分子又は2つのポリペプチド分子間の、サブユニット配列の相同性又は類似性を指す。2つの分子の両者でサブユニットの位置が同じモノマーのサブユニットで占められているとき、例えば2つのポリペプチド分子のそれぞれにおいて一つの部位がフェニルアラニンで占められているならば、それらはその部位において相同である。%相同性で最も明確に定義される2つの配列間の相同性は、同一である位置の数に直接相関している。例えば、2つのポリペプチド配列中で半分の位置(例えば、10サブユニットの長さのポリマー中で5つの位置)が同一であるならば、2つの配列は50%の相同性を示すものであり、70%の部位、例えば10のうち7、が一致又は相同ならば、2つの配列は70%の相同性を有するものである。例として挙げると、ポリペプチド配列ACDEFGとACDHIKは50%の相同性を有し、ヌクレオチド配列CAATCGとCAAGACは50%の相同性を有する。
【0071】
本明細書で使用される「相補性」は、2つの核酸、例えば2つのDNA分子間のサブユニット配列の相補性を指す。例えば、両方の分子においてヌクレオチドの位置が、常態で互いに塩基対を形成できるヌクレオチドで占められているとき、核酸はその位置で互いに相補的であるとみなされる。このように、それぞれの分子において実質的な数(少なくとも50%)の対応する位置が、常態で互いに塩基対を形成するヌクレオチド(例えば、A:T及びG:C)で占められているとき、2つの核酸は互いに相補的である。
【0072】
本明細書中で考察されるように、本発明のある態様は、細胞中で遺伝的な疾患を修正するために遺伝子治療で使用してもよいタンパク質産生物をコードするDNAを提供する。このようなタンパク質は、天然のポリペプチド配列を包含してもよく、又、一般に遺伝子治療剤としてより適し細胞中でより安定なタンパク質を提供する修飾体を包含してもよいと理解されるべきである。
【0073】
本発明の更なる態様は、細胞のゲノム中に挿入されるDNA配列によってコードされるタンパク質又はペプチドのアナログを提供する。アナログは、保存的なアミノ酸配列の差異によって又は配列に影響を与えない修飾によって、又はその両者によって、天然に生じるタンパク質又はペプチドとは異なることができる。例えば、保存的なアミノ酸変化はタンパク質又はペプチドの一次配列を改変するが、その機能はそのまま改変しないものであるが、そのような保存的なアミノ酸変化が為されるかもしれない。保存的なアミノ酸置換は、一般的に以下のグループ間:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン;での置換を含むがこれらのグループに限定はされない。
【0074】
(一次配列をそのまま改変しない)修飾は、例えば、アセチル化又はカルボキシル化のようなインビボ又はインビトロでのポリペプチドの化学的な誘導体を包含する。糖付加の修飾、例えばポリペプチド合成及びプロセッシングの間に又は更なるプロセッシング過程において、ポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することによって、例えば糖付加に影響を与える酵素、例えば哺乳動物のグリコシル化又は脱グリコシル化酵素にポリペプチドを曝すことによる糖付加の修飾も、包含される。リン酸化アミノ酸残基、例えばリン酸化チロシン、リン酸化セリン、リン酸化トレオニンを有する配列も包含される。後者の例において、再構成された核酸/タンパク質粒子が送達に使用されるならば、これは最も適用できるであろう。それは、インビボ送達が後に続く、本質的なインビトロでの修飾である。
【0075】
タンパク質分解に対する耐性を改良するために又は溶解特性を最適化するために又は治療剤としてそれらをより適合させるために、一般的な分子生物学的な技術を用いて修飾されたポリペプチドも包含される。このようなポリペプチドのアナログは、天然に生じるL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸又は天然には生じない合成アミノ酸を含むものを包含する。本発明のペプチドは、本明細書中に列挙された特定の例示的な工程のいずれの産生物にも限定されない。
【0076】
本明細書で使用される「遺伝学的な欠陥の修正」なる用語は、遺伝学的な欠陥により機能が異常とみなされた細胞に対して、正常な機能を回復する量で細胞中に野生型遺伝子産物を発現することを包含する。この用語は、実際に欠陥タンパク質を発現している細胞以外の細胞タイプに欠陥遺伝子の野生型コピーを送達することによって、動物の遺伝学的な欠陥が修正されるという状況にも適用される。他の細胞に遺伝子の野生型コピーを発現させること、及び、そこで発現された野生型タンパク質を分泌することも、動物で遺伝学的な欠陥を修正するために役立つものである。
(実施例)
【0077】
本発明はここに記載される実施例に限定されて解釈されるべきではなく、むしろ、本発明は本明細書中で提供される全ての適用及び当業者の技術の範囲内にある全ての均等物のいずれをも含むと解釈されるべきであると認識されたい。
【実施例1】
【0078】
smORF2及びORF1配列は、マウスL1 ORFs内のそれぞれのコドンを、高発現しているヒト遺伝子内の好まれるコドンで置換することによって作成された(Haasら,1996,Curr.Biol.6:315−324)。配列は、ユニークな切断部位を導入し、遺伝子の会合を阻害したかもしれない潜在的なヘアピン構造を排除するサイレント突然変異でさらに改変された。smORF2の両方の鎖を集合的にコードする60−merのオリゴヌクレオチドはキアゲン社のものを用い、遺伝子合成(Stemmer ら,1995,Gene 164:49−53)が図1bに示されるようにそれぞれ500bpセグメントで実施された。
【0079】
会合反応液は、全量25μl中にそれぞれのプライマー30nMと1×ExTaq mix(Takara)を含んでいた。増幅反応液は、全量25μl中にそれぞれのアウタープライマー0.5μM、2.5μlの会合反応液及び1×ExTaq mixを含んでいた。PCR条件は、94℃4分間、94℃30秒間−65℃30秒間−72℃30秒間が25サイクルで72℃7分間がそれに続いた。PCR産生物は、pCRII中にTOPO−TAクローニングキット(Invitrogen)でクローン化された。24−48クローンの全てがそれぞれのフラグメントについて配列決定され、突然変異が標準的なクローニング技術によって取り除かれた。最後に、合成されたフラグメントはpBluescriptKS−中に共に連結された。使用されたオリゴヌクレオチド配列は図10に示される。
【0080】
融合ベクターが(図1cに示されるように)調製され、そこではテスト配列(lacZ、mORF2又はsmORF2)がGFP ORFの下流にフレームに合わせて繋がれた。独立したneo転写物も挿入された。
【0081】
smORF2の発現が、次いでイムノブロット解析によって解析された。細胞は、5%のSDS/PBS中に回収され、次いで超音波処理された。全溶解産物は、7.5%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供され、ポリフッ化ビニリデン(Amersham)に転写された。抗体とのインキュベーションが0.05%のTween−20及び5%のミルクを含むPBS中で実施された。0.1%のTween−20を含むPBSで洗浄された。抗GFP(FL)抗体(Santa Cruz)が1:250希釈で使用された。抗ウサギIgG(Amersham)が1:5000希釈で使用された。ブロットはECL−plus(Amersham)で検出された。
【0082】
ヒト及びマウス両者の細胞において、GFPsmORF2の形質導入は野生型GFPmORF2と比較してRNA量の大規模な増加を引き起こした(図1d、上段、レーン3及び4)。mORF2のエンドヌクレアーゼ活性及び逆転写酵素活性を破壊する2つの突然変異の導入は、さらにsmORF2 RNAレベルのわずかな増加を提供した(図1d、上段、レーン5)。ベクターにコードされるneo転写物に対するプローブは、これらのRNAの増加が形質導入効率又は負荷の違いによらないことを示していた(図1d、中段)。抗GFPを用いたこれらの試料のイムノブロット(図1d、下段)は、タンパク質のレベルがRNAの増加と相関することを示し、哺乳動物のシステムでリコンビナントの全長ORF2タンパク質が検出可能な量で再現可能に発現できることを示した注目すべき最初の例であることを示した。
【実施例2】
【0083】
増加したRNAレベルがレトロトランスポゾンによる転位効率の改変を引き起こしたか否かを決定するために、確立された組織培養アッセイ、レトロトランスポジションアッセイ(図2a)が、HeLa細胞で相対的なレトロトランスポゾンによる転位頻度を測定するのに使用された。HeLa細胞での標準的なレトロトランスポジションアッセイは、基本的にはMoranら,1996,Cell 87:917−927に記載されるように実施した。形質導入された細胞は、10−12日間200μg/mlのヒグロマイシンで選択され、それから計数され、600μg/mlのG418で10日間培養された。コロニーは0.4%ギムザを含むPBSで染色された。
【0084】
mORF2は、全長のマウスL1中でsmORF2と置換され、部分的に合成されたマウスL1(psmL1)が作成された。再コードされたmORF2はレトロトランスポジションに必要とされる潜在的に重要なシス作用配列(例えば、内部リボゾーム挿入部位)を欠いているかもしれないと考えられたので、mORF2の最初の約500bpが野生型のL1配列からなり残りが合成である、部分的に合成されたORF2の変形物(psmL1−2)も構築した。HeLa細胞で、psmL1及びpsmL1−2の両者が野生型のmL1より約20−25倍以上活性であった(図2b)。合成されたmORF1(smORF1)及び部分的に合成されたmORF1の変形物の合成と取り込みは、更なるレトロトランスポジションの増加を引き起こし、2つの完全に合成されたORFを有する因子で、野生型に対して最大で200倍以上の増加に達した(図2b)。
【0085】
HeLa、3T3及びL細胞における一過性のレトロトランスポジションアッセイが、基本的にはWeiら,2000,Anal.Biochem.284:435−438に記載されるように実施された。それぞれの転位構築物は、GFP発現プラスミドpTracerEF(Invitrogen)を用いて共に形質導入され、形質導入効率が標準化された。形質導入後24時間で、細胞は100mm皿に1:2、1:20及び1:200に分割された。形質導入後36時間で、希釈された細胞はG418で選択され、残った細胞はフローサイトメトリーでGFPの発現について解析され、形質導入効率が標準化された。3T3細胞は1mg/mlのG418中で選択され、L細胞は400μg/mlのG418中で選択された。コロニーは0.4%のギムザ又は0.5%のクマシーブリリアントブルーで染色された。
【0086】
一過性アッセイの使用により、合成のマウスL1(pCEPsmLl)レトロトランスポジション頻度が、野生型の天然のヒトL1及び野生型の天然のマウスL1のそれと比較された(N=3)。HeLa、3T3及びL細胞に対するpJM101Llrpコロニーの平均的な絶対値(形質導入された106細胞当たりのコロニー数)は、それぞれ2904、108及び1568であった。
【表1】
【実施例3】
【0087】
smL1のG418耐性コロニーが真正なL1レトロトランスポーズによるものであることを確認するために、6つのsmL1挿入を特徴付けた。完全な挿入と隣接している配列のそれぞれを増幅することができるインバースポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、突然変異部位が同定された。それぞれのプライマー対に対して、親のHeLa細胞は空の部位を示す産物のみを産生した(図3a、奇数レーン)が、一方対応するG418耐性コロニーは空の部位(empty site)及び予想されるサイズの完全長smL1挿入産物の両者を産生した(図3a、偶数レーン)。
【0088】
一般的な構造とゲノム隣接部を決定するために、アンプリコンがクローン化され配列決定された。組込み部位は、基本的にMorrishら,2002,Nature Genet.31:159−165に記載されるようにインバースPCRによって決定された。それぞれのクローンから得られたゲノムDNA(5μg)がEcoRIで消化され、熱で不活化され、1mlに希釈され、一晩連結され、エタノールで沈殿され、30μlの水に再懸濁され、オリゴヌクレオチドJB6466/6467(1回目)及びJB6468/6469(2回目)を用いる2回のインバースPCRに供された。JB3529、JB3530及びJB3531での配列決定は30の隣接配列を同定した。隣接配列に基づくプライマーが、無傷のsmL1挿入を増幅するのに使用され、増幅されたsmL1挿入物は続けて配列決定された。
【0089】
図3bに要約するように、全てのアンプリコンが適切にスプライシングされたneo遺伝子、ポリAテイルを示し、ほとんど(6のうち5)が5〜108bpの長さの標的部位複製物を有していた。挿入番号10は10bpの標的欠失を有し、挿入番号18は5’L1逆位を有し、特徴はL1挿入に共通して見出された。
【0090】
さらに、様々な染色体が標的として使用され、標的部位複製物から推測されるエンドヌクレアーゼ切断部位は以前に報告された変性コンセンサス(下の鎖において5’−TTTT/AA−3’)(図3c)に一致した。
【実施例4】
【0091】
合成のマウスL1レトロトランスポゾンの活性が、野生型のヒト及びマウスL1とマウス細胞において比較された。標識されたレトロトランスポゾンを導入するために使用されたエピソーム性のプラスミドはマウス細胞中で効率よく複製されないので、3T3及びL細胞中での一過性レトロトランスポジションアッセイが使用された。(図2b及び表1のpTN201及びpCEPsmL1を比較し)標準的なアッセイで得られる相対的なレトロトランスポジション頻度を確認するために、HeLa細胞での一過性レトロトランスポジションアッセイも実施された。合成のマウスL1(pCEPsmL1)は、マウス細胞で野生型の対応物より非常に高い頻度で(200倍以上)レトロトランスポジションを行った。
【0092】
さらに、smL1をヒトL1(pJM101L1rp)と比較した。L1rpは以前にトランスジェニックマウス系統を作成するのに使用され、マウスでレトロトランスポジション頻度の基準として使用されるからである。L1rpが従来知られていた最も活性なL1因子であった全ての細胞タイプの試験において、smL1はL1rpより非常に活性が高かった。smL1mut2を産生するためにsmL1に導入された触媒作用の突然変異は、実質的にレトロトランスポジションを消滅させた。
【実施例5】
【0093】
野生型の全長mL1及びその合成の対応物のノーザンブロット解析が実施された。全RNAが製造者の指示に従ってTRIzol試薬(Invitrogen)を用いて単離された。それぞれのサンプルから得られた全RNA(6μg)は、10単位のDNaseIで37℃で15分間処理され、0.8%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上で泳動され、Genescreen plus nylon membrane(NEN)へ10× SSC中で一晩ブロットされ、紫外線照射により架橋された。プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションが共に42℃でULTRAhyb(Ambion)中で実施された。続いて[’y−32P]ATP末端ラベルされたオリゴヌクレオチドがプローブとして使用された。GFPプローブとしてJB4057、GFPプラスミドneoプローブとしてJB4059、トランスポジションプラスミドneoプローブとしてJB4541、hygプローブとしてJB6341が使用された。洗浄が2×SSC、0.1%のSDS及び0.2×SSC、0.1%のSDSで実施された。放射性シグナルは、Fujiイメージングプレート(Fuji imaging plates)及びFujiスキャナー(Fuji scanner)(BAS−1500)で測定した。次いで再度プローブするために、沸騰した0.1×SSC、1%のSDS中で10分間3回洗浄することにより、膜からプローブが除去された。
【0094】
野生型の全長mL1及びその合成の対応物のノーザンブロット解析によれば、合成のL1配列の長さの増加は全長L1RNAレベルの増加を導くことが明かとなった(図4)。hygro形質導入/負荷コントロールによって決定されるように(データ示さず)、pCEPsmL1はエピソームで維持することが困難なので、pCEPsmL1mut2がpCEPsmL1の代わりに使用された。無傷のpCEPsmL1プラスミドは形質導入された細胞で長期間、維持されない。
【実施例6】
【0095】
creリコンビナーゼタンパク質に曝されたときのみレトロトランスポーズする、合成マウスレトロトランスポゾンの条件的に活性化する変形物が構築された(図5a)。未成熟なRNAの切断を導く配列に操作可能に結合された、介在性のレポーター遺伝子(β−GEO等)によって、合成のレトロトランスポゾンが不活性化されている構築物が作成された。このカセットには、loxP組換え部位が隣接している。このDNAセグメントはcreタンパク質(インビトロで提供されるか、同時トランスフェクションにより又はcre発現トランスジェニックマウスの交配により提供される)の存在下で、creがloxP部位で組換えを行うことにより、β−geoを欠失し、合成レトロトランスポゾンを活性化するだろう。
【0096】
レトロトランスポジションに対するレポーターは、UVで励起される緑色蛍光タンパク質(gfp)であり、このタンパク質は単に紫外線を照射することにより新たな突然変異を視覚的に追跡することを可能にする。これは図5bに示される。不活性化された及び活性化されたDNA構築物(図5aに表される)はHELA細胞に形質導入され、表現型はβ−geo発現に対してX−gal染色、トランスポジション(gfp活性)に対して蛍光顕微鏡を用いて評価された。
【実施例7】
【0097】
ヒト(human version)の合成L1因子が上記と同じ方法を用いて合成された。この因子はヒトL1因子コンセンサス(Brouhaら,2003,Proc Natl Acad Sci USA 100:5280−5285)のアミノ酸配列に基づいている。ORF1及びORF2が、内部ORF領域及び3’UTRと同様に再度コードされ、完全な合成ヒトL1を作製した。
【0098】
レトロトランスポジション活性が測定され、天然のヒトL1と比較して活性が数倍増加することが明らかとなった。
【0099】
本明細書で引用されるそれぞれの特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全てが参照により本明細書中に取り込まれる。
【0100】
本発明は特定の態様に言及することで開示されているが、本発明の他の態様及び改変が本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって工夫されることは明かなことである。添付の特許請求の範囲は、このような態様及び均等な改変の全てを包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】図1aは、L1構造の模式図を示すものである。TSDは標的部位の重複を、UTRは非翻訳領域を表す。
【図1b】図1bは哺乳動物のORF2遺伝子の合成について概略図を示す。それぞれの断片をコードするオリゴヌクレオチドはPCR会合反応(PCR assembly reaction)で混合され、次いで増幅の鋳型として用いる。増幅産物はクローン化され唯一の制限部位(AからJとラベルされた)で繋がれた。
【図1c】図1cはプラスミドの構造を示す。テスト配列(lacZ,mORF2又はsmORF2)がGFP ORFの下流にインフレームで挿入される。それぞれのneo転写物は、形質転換の効率と負荷をモニターするのに使用された。プラスミドに沿って延びる短い線は、図1dで示された、プローブを表す。
【図1d】図1dはsmORF2発現解析を示す。上段は、GFPlacZ、GFPmORF2及びGFPsmORF2のRNA発現。中段は、負荷コントロールのRNA発現。下段は、GFPlacZ、GFPmORF2及びGFPsmORF2のタンパク質発現を示す。
【図2a】図2aはレトロトランスポゾンアッセイの概略図を示す。L1因子は、それ自身のプロモーターとポリアデニル化シグナルを有する3’非翻訳領域に、イントロンで中断されたneoレポーターを含む。neoがL1プロモーターから転写され、スプライシングされ、逆転写され、ゲノムに組込まれると、細胞はG418耐性となる。プラスミドの部分に沿って延びる短い線は、RNA解析のためのプローブを表す。SDはスプライスドナーを、SAはスプライスアクセプターを示す。
【図2b】図2bは、レトロトランスポゾンがHeLa細胞でアッセイされた際に得られた結果を示している(N=3)。pTN201は野生型の天然のマウスL1配列のみを含み、pTN203は野生型の天然のマウスL1配列と共にD709Y逆転写酵素の点突然変異を含む。pTN201のコロニーの平均絶対数は、形質導入された106個の細胞当たり440である。
【図3a】図3aは、それぞれ完全な挿入配列とフランキング配列を増幅したインバースポリメラーゼ連鎖反応の結果を示す。それぞれの挿入配列に隣接するプライマーは、G418耐性クローンから増幅するために使用された。奇数のレーンは、それぞれのプライマーについて、親のHeLa細胞が空の部位の産物のみを産生したことを示している。偶数のレーンは、それぞれのG418耐性クローンが、空の部位の産物及び予想されるサイズの完全長smL1挿入産物の両方を産生したことを示している。
【図3b】図3bは、クローン化された挿入物の特徴を提供する。TSDは標的部位の重複を示す。
【図3c】図3cは、クローン化された挿入物の構造と隣接する配列の概略図を示す。挿入物no.8はヒトゲノム配列には見られない7bp(青で強調された)の付加配列を含む。挿入物no.10は、ヒトゲノム配列データベースと比較して、1組の鋳型と異なる塩基対を含み、それにL1挿入物の直ぐ上流の10bpの欠失(青で示された)が続いている。TSDsは赤で強調され、推定されるエンドヌクレアーゼ切断部位は下線で示されている。
【図4】図4は、マウス細胞でのsmL1発現の全RNA解析による、高頻度なレトロトランスポジションを表している。天然、部分的に合成された及び完全に合成されたmL1の発現がHeLa細胞で比較された。
【図5a】図5aは、creリコンビナーゼタンパク質に曝された時のみレトロトランスポーズする、条件的に活性化するマウスレトロトランスポゾンの概略図を表す。
【図5b】図5bは、組織培養細胞での結果を示す。
【図6a】図6aは、配列番号1(合成されたマウスORF2)の前半部分を記載する。
【図6b】図6bは、配列番号1(合成されたマウスORF2)の残りの部分を記載する。
【図7】図7は、配列番号2(合成されたマウスORF1)を記載する。
【図8a】図8aは、配列番号3(合成されたヒトORF2)の前半部分を記載する。
【図8b】図8bは、配列番号3(合成されたヒトORF2)の残りの部分を記載する。
【図9】図9は、配列番号4(合成されたヒトORF1)を記載する。
【図10a】図10aは、マウスでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号5−72)を記載する。
【図10b】図10bは、マウスでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号73−143)を記載する。
【図10c】図10cは、マウスでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号144−209)を記載する。
【図11a】図11aは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号210−262)を記載する。
【図11b】図11bは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号263−319)を記載する。
【図11c】図11cは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号320−376)を記載する。
【図11d】図11dは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号377−411)を記載する。
【図12a】図12は、合成のマウスL1と天然のマウスL1の配列アラインメントを提供する。MacVector6.5.3(Oxford Molecular)を使用して、ORF1のATGで開始し、ORF2の終始コドンで終了する、天然のマウスL1と合成のマウスL1の核酸ClustalWアラインメントを作成した。これらの配列について、L1 spaの塩基構成は、41%A、20%T、21%C、18%Gである。smL1の塩基構成は、27%A、14%T、33%C、26%Gである。L1 spa(Genbankアクセッション番号#AF016099)が天然のマウスL1の配列として使用された。一致部分は灰色の陰影を付けて示されている。
【図12b】図12bは、図12aの続きである。
【図12c】図12cは、図12bの続きである。
【図12d】図12dは、図12cの続きである。
【図12e】図12eは、図12dの続きである。
【図12f】図12fは、図12eの続きである。
【図12g】図12gは、図12fの続きである。
【図12h】図12hは、図12gの続きである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年5月28日に出願された米国仮出願第60/473,658号の利益を主張するもので、その全ては参照により本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
トランスポゾンは、プラスミド、ウイルス及び細菌の染色体に共通する構成因子である、個別の可動遺伝因子(DNA)である。これらの因子は、自身をコードする表現型特性を、レプリコンからレプリコンへと転位させる能力、又は、公知の遺伝子へと転位しそれを不活性化する能力によって検出される。トランスポゾンには2つのタイプがあり、大きさは約750から50,000ヌクレオチド塩基対以上にも及ぶ。小さな挿入配列又はIS因子として知られる一つのタイプでは、如何なる公知の表現型特性もコードしてはいない。もう一方のタイプでは抗菌耐性等の表現型特性をコードする比較的大きなユニットを含んでいる(Plasmids and Transposons Environmental Effects and Maintenance Mechanisms;Edited by C.Stuttard and K.Rozee;Academic Press,New York;Pages165−205)。トランスポゾン又は転位因子は、反復配列が結合した核酸の一部分を含むものである。活性なトランスポゾンは、DNA配列に核酸を組込むのを助ける酵素をコードする。
【0003】
脊椎動物において、DNAトランスポゾン、すなわちDNAの媒介によって移動する可動性因子の発見は、比較的最近のことである(Radice,A.D.ら,1994.Mol.Gen.Genet.244 606−612)。それ以来、真核生物トランスポゾンのhAT(hobo/Ac/Tam)スーパーファミリーと同様、不活性で、高度に変異したTcl/marinerのメンバーが、魚類の異なる種、アフリカツメガエル、ヒトのゲノムから単離された(Oosumiら,1995.Nature378,873;Ivicsら,1995.Mol.Gen.Genet.247 312−322;Kogaら,1996.Nature 383,30;Lamら,1996.J.Mol.Biol.257,359−366及びLam,W.L.ら,Proc.Natl.Acad Sci.USA 93,10870−10875)。
【0004】
レトロトランスポゾンは、現在までに試験されたほとんど全ての動物、植物、細菌種の細胞で見出される、天然のDNA因子である。それらは、細胞内で発現し、染色体外因子に逆転写され、同じゲノム内の他の部位に再度組込まれる。
【0005】
レトロトランスポゾンは、レトロウイルス様のLTRレトロトランスポゾンと、ヒトL1因子、アカパンカビTAD因子(Kinsey,1990,Genetics 126:317−326)、ショウジョウバエのI因子(Bucheton ら,1984,Cell 38:153−163)、及びカイコのR2Bm(Luan ら,1993,Cell 72:595−605)等の非LTR因子の2つのクラスに分けることができる。レトロトランスポゾンのこれら2つのタイプは、構造的に異なり、また根本的に異なるメカニズムでレトロトランスポーズする。
【0006】
LTRレトロトランスポゾンとは異なり、非LTR因子(ポリA因子とも呼ばれる)はLTRを欠き、代わりに末端はポリA又はAに富んだ配列となっている。LTRレトロトランスポゾンの転位メカニズムは比較的よく理解されている。対照的に、非LTRレトロトランスポゾンによる転位メカニズムは解明が始まったところである(Luan and Eickbush,1995,Mol.Cell.Biol.15:3882−3891;Luanら,1993,Cell 72:595−605)。非LTRレトロトランスポゾンはさらに配列特異的な及び非−配列特異的なタイプに分けることができる。L1は、ヒト、マウス及び他の哺乳動物全ての染色体において散在的に組込まれていることが見出された、後者のタイプに属する。
【0007】
L1因子(LINEとしても知られる)はヒトゲノムへの定着に極めて成功している。初期の概算では、L1はヒトゲノム中に100,000コピー存在し、核DNAの5%を構成すると、見られていた(Fanning and Singer,1987,Biochim Biophys Acta 910:203−121)。しかしながら、最近の研究によれば、850,000もの多くのL1がヒトゲノム中に存在するようである(Smitら,1996,Current Opinion in Genetics and Development)。これらコピーの大部分は5’末端が切り詰められていて、欠陥があると推定されている。完全な長さの因子と同様に、5’末端が切り詰められているコピーもしばしば短い標的部位との重複(TSDs)によって挟まれている。
【0008】
完全長6.1kbのL1コンセンサス配列は、以下の保全機構(conserved organization):内部プロモーターを有する5’非翻訳リーダー領域(UTR)、2つの重複していないORF(ORF1及びORF2)、200bpの3’UTR及び3’ポリAテイル、を示している。ORF1は40kdタンパク質をコードし、RNAに対してパッケージング機能を提供しているようである(Martin,1991,Mol.Cell Biol.11:4804−4807;Hohjohら,1996,EMBO J.15:630−639)。一方、ORF2は逆転写酵素をコードしている(Mathiasら,1991,Science 254:1808−1810)。ORF1タンパク質、そしておそらくORF2タンパク質もL1 RNAと結合し、リボ核タンパク質の粒子を形成する。ORF2タンパク質による逆転写が起こり、L1 cDNAが生じ、そして、そのL1 cDNAがゲノムに組込まれる(Martin,1991,Curr.Opin.Genet.Dev.1:505−508)。さらに、L1因子は通常、7から20bpのTSDによって挟まれている。完全長のL1及び他の非LTRレトロトランスポゾンは、レトロウイルスインテグラーゼ、プロテアーゼ及びRNアーゼHと認識されるホモログを欠いている。この因子群においては、LTRレトロトランスポゾンとは根本的に異なる転位メカニズムが採用されている。
【0009】
ヒトL1因子の幾つかは、ヒトゲノムの新たな部位へ、レトロトランスポーズ(発現し、それらの標的部位を切断し、切断された標的部位をプライマーとして用いて自身のRNAを逆転写すること)可能であり、遺伝的な疾患を引き起こす。例えば、生殖細胞系列に於けるVIII因子及びジストロフィン遺伝子へのL1挿入は、それぞれ血友病A及び筋ジストロフィーを引き起こす(Kazazianら,1988,Nature 332:164−166;Naritaら,1993,J.Clinical Invest.91:1862−1867;Holmesら,1994,Nature Genetics 7:143−148)。一方、体細胞でのc−myc及びAPC腫瘍抑制遺伝子へのL1挿入は、それぞれ乳癌及び結腸癌の珍しい例に関与する(Morseら,Nature 333:87−90;Mikiら,1992,Cancer Research 52:643−645)。L1レトロトランスポゾンは、直接又は間接に、質量によって(Landerら,2001,Nature 409:860−921)、Alu因子の自己動員及びトランス動員によって(Dewannieuxら,2003,Nature Genet.35:41−48)、哺乳動物のゲノムの30%以上を占めいている。完全な長さ(約6kb)のL1は、レトロトランスポーズするためのタンパク質をコードする2つのオープンリーデングフレーム、ORF1及びORF2から成る(Fengら,1996,Cell 87:905−916;Moranら,1996,Cell 87:917−927)。
【0010】
このように、高度に活性なL1因子は、哺乳動物の遺伝学に於ける手段(tool)として有望な有用性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(発明の要約)
一態様に於いては、本発明は、合成されたトランスポゾン遺伝子に関する。別の態様に於いては、本発明は、合成された哺乳動物のトランスポゾン遺伝子に関する。
【0012】
本発明者らは、合成されたトランスポゾン及びレトロトランスポゾン遺伝子が遺伝子治療への応用及び本明細書に記載の他の遺伝学的な応用に有用であることを見出した。
【0013】
更なる態様では、本発明は、合成されたレトロトランスポゾン遺伝子に関するものである。本発明の更なる態様は、哺乳動物の合成されたレトロトランスポゾン遺伝子を提供することである。
【0014】
一態様では、本発明は、合成されたORF2遺伝子に関する。別の態様では、本発明は、合成された哺乳動物のORF2遺伝子に関する。合成遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子に比較してより高レベルな発現を示す。
【0015】
一態様では、本発明は、合成されたORF1遺伝子に関する。別の態様では、本発明は、合成された哺乳動物のORF1遺伝子に関する。合成遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子に比較してより高レベルな発現を示す。
【0016】
更なる態様では、本発明は、ヒトと関連のあるコドンを含む合成されたORF2又はORF1遺伝子に関する。本発明の更なる態様は、合成されたORF2又はORF1遺伝子は、ヒトと関連のあるコドンのみを含む。これらの態様では、ヒトと関連のあるコドンとは、高度に発現される哺乳動物の遺伝子で最も頻繁に使用されるコドンを指す。注目すべきは、それぞれのアミノ酸をコードする2又はそれ以上のこのようなコドンがしばしば存在し、それゆえ多くの可能な合成因子が存在しうるのである。
【0017】
別の態様では、本発明は、配列番号1を含む合成された哺乳動物のORF2遺伝子を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、配列番号2を含む合成された哺乳動物のORF1遺伝子を提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、配列番号3を含む合成された哺乳動物のORF2遺伝子を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、配列番号4を含む合成された哺乳動物のORF1遺伝子を提供する。
【0021】
一態様では、本発明は、合成されたトランスポゾン遺伝子を含むトランスポゾンに関する。別の態様では、本発明は、合成されたレトロトランスポゾン遺伝子を含むレトロトランスポゾンに関する。更なる態様では、本発明は、合成されたORF2又はORF1遺伝子を含むL1レトロトランスポゾンに関する。別の態様では、本発明は、合成されたORF2及び合成されたORF1遺伝子を含むL1レトロトランスポゾンに関する。本発明の更なる態様は、合成された哺乳動物のORF2遺伝子、合成された哺乳動物のORF1遺伝子、又は合成された哺乳動物のORF2遺伝子及び合成された哺乳動物のORF1遺伝子の両者を含む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンを提供する。レトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンと少なくとも同程度の効率でレトロトランスポーズする。本発明の更なる態様では、レトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする。
【0022】
別の態様では、本発明は合成されたORF2遺伝子を含むリコンビナントベクター構築物を提供する。別の実施例では、本発明は合成されたORF1遺伝子を含むリコンビナントベクター構築物を提供する。別の態様では、本発明は合成されたORF2遺伝子及び合成されたORF1遺伝子を含むリコンビナントベクター構築物を提供する。これらの構築物で形質導入され、形質転換され又は感染された真核細胞が同様に提供される。
【0023】
更なる態様では、本発明は、合成のORF2又はORF1遺伝子を調製するための方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、望ましい遺伝子又はその生物学的に活性な断片を哺乳動物の細胞へ送達する方法に関する。本発明の方法は、該哺乳動物へ、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子、又はそれらの組合せを望ましい遺伝子と共に投与することを包含する。
【0025】
本発明の更なる態様は、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子、又はそれらの組合せ、並びに望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体を含むカセットを更に含んで成る組成物を提供する。別の態様では、本発明は、哺乳動物の遺伝的な疾患を治療する方法に関する。本発明の方法は、問題の遺伝的な疾患を有する哺乳動物へ、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子、又はそれらの組合せ、並びに望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体を含む組成物を投与することを包含する。
【0026】
別の態様では、本発明は、特徴付けされていない遺伝子又はそれらの生物学的に活性な断片を細胞中で同定する方法に関する。本発明の方法は、合成されたORF2若しくはORF1遺伝子又はそれらの組合せ及び検出可能なタグ配列を投与すること、並びにタグ配列を発現する細胞を同定すること及びタグ配列に隣接するDNAを特徴付けることを包含する。
本発明の他の態様は、以下に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本明細書は、合成されたトランスポゾン遺伝子を開示する。さらに、本明細書は、合成された哺乳動物のトランスポゾン遺伝子を開示する。加えて、本明細書は、合成されたレトロトランスポゾン遺伝子を開示する。さらに、本明細書は、合成された哺乳動物のレトロトランスポゾン遺伝子を開示する。
【0028】
合成されたレトロトランスポゾンは、一態様では、天然のレトロトランスポゾンと少なくとも同様の効率でレトロトランスポーズする。別の態様では、合成されたレトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約2倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約25倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約100から200倍以上効率よくレトロトランスポーズする。
【0029】
合成トランスポゾンは、一態様で、天然のトランスポゾンと少なくとも同様の効率で転位する。別の態様では、合成トランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより効率よく転位する。更に別の態様では、本発明の合成トランスポゾンは、天然のトランスポゾンより約2倍以上効率よく転位する。更に別の態様では、本発明の合成トランスポゾンは、天然のトランスポゾンより約25倍以上効率よく転位する。更に別の態様では、本発明の合成レトロトランスポゾンは、天然のレトロトランスポゾンより約100から200倍以上効率よく転位する。
【0030】
本明細書は、合成されたORF2遺伝子を開示する。一態様では、本発明の合成されたORF2遺伝子は、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫等の脊椎動物のものである。一態様では、本発明の合成されたORF2遺伝子は、マウス(murine)、ウシ、ウマ等の哺乳動物のものである。合成遺伝子の一態様は、ヒトに対して最適なコドンを使用するのみならず、発現量が低い原因となるおそれがある核酸配列の偏りを無くしている。
【0031】
一態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子と比較して、より高レベルの発現を示す。
【0032】
本発明の別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然の遺伝子と同じタンパク質をコードしており、更にヒトに関連したコドンをも含んでいる。
本発明の別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、ヒトに関連したコドンのみを含んでいる。「ヒトに関連したコドン」とは、高度に発現される哺乳動物の遺伝子で最も頻繁に使用されるコドンを指す。当業者であれば、どのコドンが特定の遺伝子で最も頻繁に関連付けられているか決定することができる。注目すべきは、それぞれのアミノ酸をコードする2又はそれ以上のこのようなコドンがしばしば存在し、それゆえ多くの可能な合成因子が存在しうることである。例えば、それぞれのアミノ酸に対するヒトに関連したコドンは、以下を含んでいてもよい。アラニンGCC、アルギニンCGC又はCGG、アスパラギンAAC、アスパラギン酸GAC、システインTGC、グルタミンCAG、グルタミン酸GAG、グリシンGGC又はGGG、ヒスチジンCAC、イソロイシンATC、ロイシンCTG又はCTC、リジンAAG、メチオニンATG、プロリンCCC、フェニルアラニンTTC、セリンAGC又はTCC、トレオニンACC、トリプトファンTGG、チロシンTAC、及び、バリンGTG又はGTC。
【0033】
一態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子の配列と100%の相同性を示すDNA配列は有していない。別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子の配列と約90%未満の相同性を示すDNA配列を有している。別の態様では、合成されたORF2遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子の配列と約80%未満の相同性を示すDNA配列を有している。
【0034】
別の態様では、合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号1と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号1を包含する。
【0035】
さらに本明細書は、合成されたORF1遺伝子を開示する。本発明の別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、昆虫等の脊椎動物のものである。本発明の別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、マウス、ウシ、ウマ等の哺乳動物のものである。本発明の更なる態様では、合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子と比較して、より高レベルの発現を示す。
【0036】
本発明の別の態様では、合成されたORF1遺伝子は、天然の遺伝子と同じタンパク質をコードしているが、ヒトに関連したコドンをも含んでいる。本発明の別の態様では、合成されたORF1遺伝子は、ヒトに関連したコドンのみを含んでいる。
【0037】
一態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子の配列と100%の相同性を示すDNA配列は有していない。別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子の配列と90%未満の相同性を示すDNA配列を有している。別の態様では、本発明の合成されたORF1遺伝子は、天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子の配列と約80%未満の相同性を示すDNA配列を有している。
【0038】
別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号2と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号2を包含する。
【0039】
別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号3と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子は、配列番号3を包含する。
【0040】
別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号4と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有している。更に別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子は、配列番号4を包含する。
【0041】
一態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子はヒトのものである。本発明の別の態様では、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子はヒトのものである。
【0042】
一態様に於いて、本発明の合成トランスポゾン遺伝子を包含するトランスポゾンが提供される。別の態様に於いて、本発明の合成レトロトランスポゾン遺伝子を包含するレトロトランスポゾンが提供される。
【0043】
更なる態様に於いて、本発明の合成されたORF2遺伝子を包含するL1レトロトランスポゾンが提供される。更なる態様に於いては、本発明の合成されたORF1遺伝子を包含するL1レトロトランスポゾンが提供される。更に別の態様は、本発明の合成されたORF2遺伝子及び本発明の合成されたORF1遺伝子の両者を包含するL1レトロトランスポゾンを提供する。トランスポゾン又はレトロトランスポゾンは、一態様では、天然のトランスポゾン又はレトロトランスポゾンと少なくとも同様の効率で、それぞれトランスポーズ又はレトロトランスポーズする。別の態様では、トランスポゾン又はレトロトランスポゾンは、天然のトランスポゾン又はレトロトランスポゾンより効率よく、それぞれトランスポーズ又はレトロトランスポーズする。
【0044】
更なる態様に於いて、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子を包む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンが提供される。更なる態様に於いては、本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子を包む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンが提供される。更に別の態様は、本発明の合成された哺乳動物のORF2遺伝子及び本発明の合成された哺乳動物のORF1遺伝子の両者を含む哺乳動物のL1レトロトランスポゾンを提供する。哺乳動物のレトロトランスポゾンは、一態様では、天然のL1レトロトランスポゾンと少なくとも同様の効率でレトロトランスポーズする。別の態様では、哺乳動物のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより約2倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより約25倍以上効率よくレトロトランスポーズする。更に別の態様では、本発明のレトロトランスポゾンは、天然のL1レトロトランスポゾンより約100から200倍以上効率よくレトロトランスポーズする。
【0045】
更なる態様に於いて、本発明の合成されたORF2遺伝子を包むリコンビナントベクター構築物が提供される。本発明の合成されたORF1遺伝子を包むリコンビナントベクター構築物が更なる態様で提供される。本発明の合成されたORF2遺伝子及び本発明の合成されたORF1遺伝子の両者を含むリコンビナントベクター構築物が更なる態様で提供される。リコンビナントベクターは、化学的に結合されたもの;エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ポリオーマ性ウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、レトロウイスル、ポックスウイルス等の(DNA又はRNA)ウイルスベクター;融合タンパク質;プラスミド;ファージから選択されてもよいがそれらに限定はされない。ベクター配列は自然に生じた真核細胞のウイルス因子に限定される必要はない。哺乳類の人工染色体を含む人工染色体も本発明の範囲のものとする。
【0046】
一態様では、目的のプラスミドは、天然のmORF2配列を、本発明の合成された哺乳動物のORF2又はORF1遺伝子のDNA配列で置き換えたpCEP4である。
【0047】
本発明のリコンビナントベクター構築物は、天然のベクターで観察されのよりも、より頻繁にレトロトランスポーズする。一態様では、本発明の構築物は、天然のベクターで観察されるより約2から約100倍の頻度でレトロトランスポーズする。
【0048】
別の態様に於いて、本発明のリコンビナントベクター構築物によって形質導入、形質転換又は感染された真核細胞が提供される。
【0049】
本発明の合成されたORF2又はORF1遺伝子の調製方法を提供する。一態様では、本発明の方法は、「ヒトに関連したコドン」を含む本発明の合成されたORF2又はORF1遺伝子の調製を包含する。別の態様では、本発明の方法は、「ヒトに関連したコドン」のみを含む本発明の合成されたORF2又はORF1遺伝子の調製を包含する。別の態様では、本発明の方法はさらに、約400から約600塩基対の間隔でユニークな制限酵素部位を組み込む工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、1つ以上のユニークな制限酵素部位を有する核酸配列からなる3’非翻訳領域を再合成するか、又は細胞の遺伝子の3’UTR(非翻訳領域)を使用する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、前記配列のセンス及び相補鎖の両者について約30塩基対から約90塩基対の長さのオリゴヌクレオチドを設計する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、それぞれの長さが約400から約600塩基対である約6から約12個のDNAフラグメントを合成するためにオリゴヌクレオチドを使用する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、前記フラグメントのそれぞれに対応するセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むほぼ等モル濃度の混合物を使用するPCRを実施する工程を包含する。更に別の態様では、本発明の方法はさらに、完全な遺伝子を作成するために、ユニークな制限酵素部位を使用してPCRにより得られたフラグメントをサブクローニングする工程を包含する。
【0050】
合成されたORF2又はORF1遺伝子は、「ヒトに関連したコドン」を含むように調製されてもよい。結果として得られる核酸配列は、およそ500塩基対間隔でユニークな制限酵素部位が組み込まれるように、さらに改変されていてもよい。さらに、3’非翻訳領域は、サブクローニングを容易にするために、複数のユニークな制限酵素部位で再合成されてもよい。オリゴヌクレオチドは、この新しい配列の両方の鎖を完全にカバーするように設計されてもよく、例えば、約30から約90塩基対のオリゴヌクレオチドが設計されてもよい。約65℃より高い融解温度を有するこれらのオリゴヌクレオチド内のヘアピン構造(例えば、コンピュータープログラムOligo5.0で予測されるような)は、アミノ酸配列を保存する突然変異で破壊されるであろう。これらの突然変異は、最適なコドンをそれより劣る改変されたコドンへと変更するであろう。
【0051】
結果として得られる最適化されたORF2又はORF1核酸配列は、その後修飾されたポリメラーゼ連鎖反応(Stemmerら,1995,Gene 164:49−53)に供されてもよい。例えば、約40塩基対から約80塩基対のセンス鎖全体をカバーするオリゴヌクレオチドが合成されてもよい。相補鎖もまた、センス鎖オリゴヌクレオチドに対して約30塩基対ずらして、約40塩基対から約80塩基対のオリゴヌクレオチドで、合成されてもよい。オリゴヌクレオチドは、相補鎖由来の2つのオリゴヌクレオチドからなる、約20から約50塩基対のハイブリッドであってもよい。これらのオリゴヌクレオチドを使用して、ORF2又はORF1核酸配列は、それぞれの長さが約400から約600塩基対である約6から約12個の間のフラグメントとして合成されてもよい。それぞれのフラグメントに対応するセンス及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ほぼ等モル量で混合されてもよく、PCR反応が実施されてもよい。例えば、25サイクルの会合PCRを行ってもよい。他のPCRサイクルが実施されてもよく、本明細書で開示される利益を享受する当業者であれば、目的に応じて最適なサイクル数を決定することが可能である。この会合反応物は、例えば、増幅プライマーとしてのフラグメントである最も外側のオリゴヌクレオチドを含んでいるPCR反応物中に希釈されてもよい。
【0052】
結果として得られるフラグメントは、例えば、別々にプラスミド中にクローン化され、約20−30クローンはそれぞれ配列決定されてもよい。標準的なサブクローニングの手順に従って、オリゴ合成、会合又はPCRの際に導入された突然変異は取り除かれてもよい。結果として得られるフラグメントは、あらかじめ配列中に設計されているユニークな制限酵素部位を使用してサブクローニングされ、プラスミド中に、最適化された完全なORF2又はORF1核酸配列を作成する。
【0053】
哺乳動物の細胞中に、望ましい遺伝子又はそれらの生物学的に活性なフラグメントを送達する方法は、同様に、本発明の態様中で提供される。本発明の一態様では、望ましい遺伝子は、治療のための遺伝子である。本発明は、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子を哺乳動物へ投与することを包含する。遺伝子治療の方法もまた、本発明の態様に従って意図されている。レトロトランスポジションで遺伝子治療を通して送達される遺伝子は、第VIII因子、第IX因子、チロシン水酸化酵素、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ、アポトーシス性プロテアーゼ活性化因子−1−優性抑制阻害剤(Apaf−1−DN)、アルファ−ガラクトシダーゼA(AGA)を含むがそれらに限定されるものではない。レトロトランスポジションを用いる遺伝子治療に於いて標的とさる障害及び/又は疾病は、血友病、パーキンソン病、ファブリー病、家族性高コレステロール血症、ゴーシェ病、嚢胞性繊維症及び副腎白質ジストロトフィー、アデノシンデアミナーゼ欠損症(SCID)、アルファ−抗トリプシン欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血、テイ−サックス病及びサラセミア、を含むがそれらに限定されない。
【0054】
別の態様は、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体からなるカセットを含む組成物を提供する。一態様では、カセットは細胞のゲノムに挿入されてもよい異種又は同種のDNA(L1 DNAではない)を包含していてもよい。このDNAは、3’UTR配列内、又は3’UTRとポリAシグナルの間に、DNAの発現がプロモーターに制御されるよう部位に配置されてもよい。挿入されるDNAの種類は、挿入部位を同定するためのマーカーとして機能するDNA、例えば、ネオマイシン(neo)耐性遺伝子又は他の薬剤耐性遺伝子(例えば、zeo、hygro、gpt)、緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、lacZ、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ遺伝子、及び、限定はされないがT細胞受容体遺伝子等の細胞表面受容体遺伝子も含むが、それらに限定されるものではない。
【0055】
本発明に従った組成物の投与経路も、治療される疾患によって異なってもよい。組成物は、従来の方法(例えば、経口、非経口、経皮又は粘膜を通して)のうちの1つの形態、生分解性で生物学的適合性のあるポリマーを用いた持効性の製剤で、又は、ミセル、ゲル及びリポソームを用いた現場への送達によって患者に投与されてもよいし、又は、直腸へ(例えば、座薬又は浣腸によって)投与されてもよい。一態様では、肺感染症の患者の治療には、例えばエアロゾルによる鼻腔内への送達であるか、血管を通して投与されてもよい。適した薬学的に許容される担体は、当業者に明らかであり、投与経路に大いに依存するであろう。
【0056】
本発明の一態様では、プロモーターが以下から選択されるかもしれないが、それらに限定されない。アクチン、PGK、DNApolII又はユビキチンプロモーター等のハウスキーピングプロモーターのようなRNAポリメラーゼIIプロモーター、アルブミン、グロビン、オボアルブミンプロモーター配列等の組織特異的プロモーター、K12又はK14等の皮膚特異的プロモーター、ステロイド誘導プロモーター、テトラサイクリン誘導プロモーター等の誘導プロモーターなど、及び、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及びサイトメガロウイルス極初期プロモーター(CMV)等と同様に、L1因子プロモーター、tRNAプロモーター及び5SRNAプロモーター等の他のレトロウイルスLTR及びRNAポリメラーゼIIIプロモーター等のウイルスプロモーター。望ましいDNAの最適な発現を提供するプロモーターの種類は、望まれる結果に依存するであろうし、当業者に明らかであろう。
【0057】
細胞内でのレトロトランスポジションと、その結果である望ましいDNAの細胞ゲノム中への挿入を達成するため、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子からなるカセットは、細胞によるDNAの取り込みが達成されるのに適した組成物で細胞集団へ添加されてもよい。例えば、リコンビナントベクターがプラスミドである場合、インビトロでの細胞へのトランスフェクションに際して、カルシウムリン酸トランスフェクション混合物、リポソームトランスフェクション製剤等を含むがそれらに限定されない多数の製剤によって、カセットが細胞に添加されてもよい。この種のトランスフェクションの手順は、当業界で周知であり、例えば、Sambrookら,(1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.)に記載されている。前記カセットは、カセットに適応した組換えDNA技術を用いて製造され、望ましい細胞にカセットを送達するのに適したウイルスの形で細胞に添加されてもよい。
【0058】
宿主細胞DNAの不活化領域にDNAの挿入をするために、ORF2及び/又はORF1タンパク質が特に害のない配列、例えばリボソームRNA遺伝子配列中で、宿主細胞DNAを切断するようにそれらを改変することが可能である。あるいは、ORF2又はORF1のエンドヌクレアーゼドメインを、特に害のない配列で特異的にDNAを切断する別の酵素のドメインで置換することが可能である。このような酵素は、アデノ随伴ウイルスのrep遺伝子及びあるグループIイントロンにコードされる部位特異的なエンドヌクレアーゼ、例えば酵母ミトコンドリアSCE1遺伝子の普遍的なコード等価物を含むがそれらに限定はされない。
【0059】
別の態様では、カセットに含まれるDNAは、挿入される細胞中の遺伝学的な欠陥を修正するのに有用である。このような遺伝学的な欠陥の修正に使用することができるDNAは、細胞内で突然変異し、その結果として遺伝学的な欠陥を引き起こした遺伝子の野生型又はその派生物を含む。このようなDNAは、欠陥を有する細胞で遺伝学的な欠陥を修正するのに使用できる公知の又は未知の如何なるDNAも限定されることなく包含するものである。このようなDNAの例は、嚢胞性線維症膜貫通伝導性調節因子(CFTR)をコードするcDNA、ベータグロビンをコードするcDNA、血液凝固タンパク質をコードするcDNA、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)等(これらに限定はされないが)の酵素をコードするcDNA、腫瘍抑制遺伝子p53、p21、p16、網膜芽腫、ウィルムス腫瘍等(これらに限定されないが)このような癌で役割を果たすcDNA、そしてまた、サイトカイン、インターロイキン及び治療用のペプチドをコードする遺伝子等が含まれる。
【0060】
したがって、一態様では、本発明は哺乳動物における遺伝的な障害を治療するための方法を提供し、そこでは、本発明の方法は本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体からなるカセットを含む組成物を前記の遺伝的な障害を有する哺乳動物に投与することを包含する。
【0061】
別の態様では、本発明は、動物において遺伝学的な欠陥を修正することに関する。更に関連する態様に於いては、哺乳動物及び、より好ましくはヒトが意図されている。動物の遺伝学的な欠陥を修正するために、上述した遺伝子送達の方法は、望ましい遺伝子又はその生物学的に活性なフラグメントをレトロトランスポジションによって遺伝学的な欠陥を有する動物の細胞に送達することに基づく本発明に包含される。治療する動物に於けるインビボでの細胞内のレトロトランスポジションを達成するために、本発明の合成されたORF2及び/又はORF1遺伝子及び望ましい遺伝子を含むカセットは、当業界で公知の技術、例えば、参照により本明細書に取り込まれている国際公開第94/28938号及び米国特許第5,240,846号に記載される技術を用いて動物に投与される。本明細書に記載の組成物を動物に投与することにより、標的とされた細胞にカセットが取り込まれ、次いでレトロトランスポジションを引き起こす。
【0062】
レトロトランスポジションを用いて修正される遺伝学的な欠陥は、嚢胞性線維症、ジストロフィン遺伝子の突然変異、血液凝固に関連する遺伝学的な欠陥及びその他の公知又は未知の遺伝学的な欠陥(例えば、リソソーム蓄積症及び他の代謝性疾患)を含むがそれらに限定はされない。
【0063】
更に別の態様では、未だ特徴付けられていない遺伝子又はそれらの生物学的に活性なフラグメントを細胞中で同定するための方法が提供されるが、当該方法は、本発明の合成ORF2及び/又はORF1遺伝子及び検出可能なタグ配列を投与し、そのタグ配列を発現している細胞を同定し、そのタグ配列に隣接するDNAを単離して特徴付ける方法である。別の態様では、本発明の方法は未だに知られていない又はクローン化できていない遺伝子をクローニングすることを包含してもよい。「タグ」DNAは、neoR、GFP遺伝子、lacZ等から選択されてもよいが、これらに限定はされない。
【0064】
細胞中へのタグDNAのレトロトランスポジションに次いで、ゲノムに挿入されたタグ配列を有する細胞を同定する際に、当業界で周知の多くの手法を用いてもよい。例えば、ハイブリダイゼーションが使用されてもよく、そこではタグDNAからなるプローブがタグDNA又はRNAを有する細胞を同定するために使用される。タグDNAがタンパク質として発現される場合、タグタンパク質を発現している細胞の同定にあったて多様な免疫学的手法を用いてもよい。このような手法は当業界で周知であり、例えばSambrook ら,(上記)に記載されている。タグDNAに隣接するDNAは、例えばSambrook(上記)に記載されている一般的な手法で単離されクローン化されてもよく、その結果未だに知られていないDNAの遺伝子及び領域の同定及び特徴付けが達成される。
【0065】
本明細書で使用される「レトロトランスポジション」は、ゲノム中へ配列を組込み、ゲノム中で前記配列を発現させ、当該配列の染色体外コピーを作成するために組込まれた配列を逆転写し、ゲノム中へ配列を再組込みする過程を包含する。
【0066】
本明細書で使用される「遺伝子」は、遺伝子のエクソン及びイントロンの両者を含む現実の遺伝子を包含する。
【0067】
本明細書で使用される「異種のDNA」は、それが挿入された細胞で天然には見出されないDNAを包含する。例えば、マウス又は細菌のDNAがヒト細胞のゲノムに挿入されたとき、本明細書では、これらのDNAは「異種のDNA」とされる。一方、本明細書で使用される「同種のDNA」なる用語は、それが挿入された細胞で天然に見出されるDNAを意味する。例えば、マウス細胞のゲノムにマウスDNAが挿入されることは、その細胞への「同種のDNA」の挿入を意味する。後者の場合、同種のDNAが天然に見出される細胞ゲノム中での部位に、それが挿入される必要はなく、むしろ、同種のDNAは、天然に見出されるのとは異なる部位に挿入され、それによって、挿入部位に遺伝的な改変(突然変異)を生じさせてもよい。
【0068】
本明細書で使用される「L1ではないDNA」は、L1因子には天然で生じていないDNAを包含する。
【0069】
本発明の態様が、本明細書中で開示されるDNA配列に限定して解釈されるべきではないものと認識されたい。開示されたDNA配列と同様の機能を実質的に有する同種のDNA配列も、本発明に包含されるとみなされる。さらに、(本質的に同じ機能を有するレトロトランスポゾンORF等の)密接に関連する構造間の遺伝子配列は非常に多様であるが、このような配列も本発明に同様に包含されるものと認識されている。
【0070】
本明細書で使用されるように、「相同性」なる用語は、2つの重合分子間の、例えば2つの核酸分子間の、例えば2つのDNA分子又は2つのポリペプチド分子間の、サブユニット配列の相同性又は類似性を指す。2つの分子の両者でサブユニットの位置が同じモノマーのサブユニットで占められているとき、例えば2つのポリペプチド分子のそれぞれにおいて一つの部位がフェニルアラニンで占められているならば、それらはその部位において相同である。%相同性で最も明確に定義される2つの配列間の相同性は、同一である位置の数に直接相関している。例えば、2つのポリペプチド配列中で半分の位置(例えば、10サブユニットの長さのポリマー中で5つの位置)が同一であるならば、2つの配列は50%の相同性を示すものであり、70%の部位、例えば10のうち7、が一致又は相同ならば、2つの配列は70%の相同性を有するものである。例として挙げると、ポリペプチド配列ACDEFGとACDHIKは50%の相同性を有し、ヌクレオチド配列CAATCGとCAAGACは50%の相同性を有する。
【0071】
本明細書で使用される「相補性」は、2つの核酸、例えば2つのDNA分子間のサブユニット配列の相補性を指す。例えば、両方の分子においてヌクレオチドの位置が、常態で互いに塩基対を形成できるヌクレオチドで占められているとき、核酸はその位置で互いに相補的であるとみなされる。このように、それぞれの分子において実質的な数(少なくとも50%)の対応する位置が、常態で互いに塩基対を形成するヌクレオチド(例えば、A:T及びG:C)で占められているとき、2つの核酸は互いに相補的である。
【0072】
本明細書中で考察されるように、本発明のある態様は、細胞中で遺伝的な疾患を修正するために遺伝子治療で使用してもよいタンパク質産生物をコードするDNAを提供する。このようなタンパク質は、天然のポリペプチド配列を包含してもよく、又、一般に遺伝子治療剤としてより適し細胞中でより安定なタンパク質を提供する修飾体を包含してもよいと理解されるべきである。
【0073】
本発明の更なる態様は、細胞のゲノム中に挿入されるDNA配列によってコードされるタンパク質又はペプチドのアナログを提供する。アナログは、保存的なアミノ酸配列の差異によって又は配列に影響を与えない修飾によって、又はその両者によって、天然に生じるタンパク質又はペプチドとは異なることができる。例えば、保存的なアミノ酸変化はタンパク質又はペプチドの一次配列を改変するが、その機能はそのまま改変しないものであるが、そのような保存的なアミノ酸変化が為されるかもしれない。保存的なアミノ酸置換は、一般的に以下のグループ間:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸;アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;及びフェニルアラニン、チロシン;での置換を含むがこれらのグループに限定はされない。
【0074】
(一次配列をそのまま改変しない)修飾は、例えば、アセチル化又はカルボキシル化のようなインビボ又はインビトロでのポリペプチドの化学的な誘導体を包含する。糖付加の修飾、例えばポリペプチド合成及びプロセッシングの間に又は更なるプロセッシング過程において、ポリペプチドのグリコシル化パターンを修飾することによって、例えば糖付加に影響を与える酵素、例えば哺乳動物のグリコシル化又は脱グリコシル化酵素にポリペプチドを曝すことによる糖付加の修飾も、包含される。リン酸化アミノ酸残基、例えばリン酸化チロシン、リン酸化セリン、リン酸化トレオニンを有する配列も包含される。後者の例において、再構成された核酸/タンパク質粒子が送達に使用されるならば、これは最も適用できるであろう。それは、インビボ送達が後に続く、本質的なインビトロでの修飾である。
【0075】
タンパク質分解に対する耐性を改良するために又は溶解特性を最適化するために又は治療剤としてそれらをより適合させるために、一般的な分子生物学的な技術を用いて修飾されたポリペプチドも包含される。このようなポリペプチドのアナログは、天然に生じるL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸又は天然には生じない合成アミノ酸を含むものを包含する。本発明のペプチドは、本明細書中に列挙された特定の例示的な工程のいずれの産生物にも限定されない。
【0076】
本明細書で使用される「遺伝学的な欠陥の修正」なる用語は、遺伝学的な欠陥により機能が異常とみなされた細胞に対して、正常な機能を回復する量で細胞中に野生型遺伝子産物を発現することを包含する。この用語は、実際に欠陥タンパク質を発現している細胞以外の細胞タイプに欠陥遺伝子の野生型コピーを送達することによって、動物の遺伝学的な欠陥が修正されるという状況にも適用される。他の細胞に遺伝子の野生型コピーを発現させること、及び、そこで発現された野生型タンパク質を分泌することも、動物で遺伝学的な欠陥を修正するために役立つものである。
(実施例)
【0077】
本発明はここに記載される実施例に限定されて解釈されるべきではなく、むしろ、本発明は本明細書中で提供される全ての適用及び当業者の技術の範囲内にある全ての均等物のいずれをも含むと解釈されるべきであると認識されたい。
【実施例1】
【0078】
smORF2及びORF1配列は、マウスL1 ORFs内のそれぞれのコドンを、高発現しているヒト遺伝子内の好まれるコドンで置換することによって作成された(Haasら,1996,Curr.Biol.6:315−324)。配列は、ユニークな切断部位を導入し、遺伝子の会合を阻害したかもしれない潜在的なヘアピン構造を排除するサイレント突然変異でさらに改変された。smORF2の両方の鎖を集合的にコードする60−merのオリゴヌクレオチドはキアゲン社のものを用い、遺伝子合成(Stemmer ら,1995,Gene 164:49−53)が図1bに示されるようにそれぞれ500bpセグメントで実施された。
【0079】
会合反応液は、全量25μl中にそれぞれのプライマー30nMと1×ExTaq mix(Takara)を含んでいた。増幅反応液は、全量25μl中にそれぞれのアウタープライマー0.5μM、2.5μlの会合反応液及び1×ExTaq mixを含んでいた。PCR条件は、94℃4分間、94℃30秒間−65℃30秒間−72℃30秒間が25サイクルで72℃7分間がそれに続いた。PCR産生物は、pCRII中にTOPO−TAクローニングキット(Invitrogen)でクローン化された。24−48クローンの全てがそれぞれのフラグメントについて配列決定され、突然変異が標準的なクローニング技術によって取り除かれた。最後に、合成されたフラグメントはpBluescriptKS−中に共に連結された。使用されたオリゴヌクレオチド配列は図10に示される。
【0080】
融合ベクターが(図1cに示されるように)調製され、そこではテスト配列(lacZ、mORF2又はsmORF2)がGFP ORFの下流にフレームに合わせて繋がれた。独立したneo転写物も挿入された。
【0081】
smORF2の発現が、次いでイムノブロット解析によって解析された。細胞は、5%のSDS/PBS中に回収され、次いで超音波処理された。全溶解産物は、7.5%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供され、ポリフッ化ビニリデン(Amersham)に転写された。抗体とのインキュベーションが0.05%のTween−20及び5%のミルクを含むPBS中で実施された。0.1%のTween−20を含むPBSで洗浄された。抗GFP(FL)抗体(Santa Cruz)が1:250希釈で使用された。抗ウサギIgG(Amersham)が1:5000希釈で使用された。ブロットはECL−plus(Amersham)で検出された。
【0082】
ヒト及びマウス両者の細胞において、GFPsmORF2の形質導入は野生型GFPmORF2と比較してRNA量の大規模な増加を引き起こした(図1d、上段、レーン3及び4)。mORF2のエンドヌクレアーゼ活性及び逆転写酵素活性を破壊する2つの突然変異の導入は、さらにsmORF2 RNAレベルのわずかな増加を提供した(図1d、上段、レーン5)。ベクターにコードされるneo転写物に対するプローブは、これらのRNAの増加が形質導入効率又は負荷の違いによらないことを示していた(図1d、中段)。抗GFPを用いたこれらの試料のイムノブロット(図1d、下段)は、タンパク質のレベルがRNAの増加と相関することを示し、哺乳動物のシステムでリコンビナントの全長ORF2タンパク質が検出可能な量で再現可能に発現できることを示した注目すべき最初の例であることを示した。
【実施例2】
【0083】
増加したRNAレベルがレトロトランスポゾンによる転位効率の改変を引き起こしたか否かを決定するために、確立された組織培養アッセイ、レトロトランスポジションアッセイ(図2a)が、HeLa細胞で相対的なレトロトランスポゾンによる転位頻度を測定するのに使用された。HeLa細胞での標準的なレトロトランスポジションアッセイは、基本的にはMoranら,1996,Cell 87:917−927に記載されるように実施した。形質導入された細胞は、10−12日間200μg/mlのヒグロマイシンで選択され、それから計数され、600μg/mlのG418で10日間培養された。コロニーは0.4%ギムザを含むPBSで染色された。
【0084】
mORF2は、全長のマウスL1中でsmORF2と置換され、部分的に合成されたマウスL1(psmL1)が作成された。再コードされたmORF2はレトロトランスポジションに必要とされる潜在的に重要なシス作用配列(例えば、内部リボゾーム挿入部位)を欠いているかもしれないと考えられたので、mORF2の最初の約500bpが野生型のL1配列からなり残りが合成である、部分的に合成されたORF2の変形物(psmL1−2)も構築した。HeLa細胞で、psmL1及びpsmL1−2の両者が野生型のmL1より約20−25倍以上活性であった(図2b)。合成されたmORF1(smORF1)及び部分的に合成されたmORF1の変形物の合成と取り込みは、更なるレトロトランスポジションの増加を引き起こし、2つの完全に合成されたORFを有する因子で、野生型に対して最大で200倍以上の増加に達した(図2b)。
【0085】
HeLa、3T3及びL細胞における一過性のレトロトランスポジションアッセイが、基本的にはWeiら,2000,Anal.Biochem.284:435−438に記載されるように実施された。それぞれの転位構築物は、GFP発現プラスミドpTracerEF(Invitrogen)を用いて共に形質導入され、形質導入効率が標準化された。形質導入後24時間で、細胞は100mm皿に1:2、1:20及び1:200に分割された。形質導入後36時間で、希釈された細胞はG418で選択され、残った細胞はフローサイトメトリーでGFPの発現について解析され、形質導入効率が標準化された。3T3細胞は1mg/mlのG418中で選択され、L細胞は400μg/mlのG418中で選択された。コロニーは0.4%のギムザ又は0.5%のクマシーブリリアントブルーで染色された。
【0086】
一過性アッセイの使用により、合成のマウスL1(pCEPsmLl)レトロトランスポジション頻度が、野生型の天然のヒトL1及び野生型の天然のマウスL1のそれと比較された(N=3)。HeLa、3T3及びL細胞に対するpJM101Llrpコロニーの平均的な絶対値(形質導入された106細胞当たりのコロニー数)は、それぞれ2904、108及び1568であった。
【表1】
【実施例3】
【0087】
smL1のG418耐性コロニーが真正なL1レトロトランスポーズによるものであることを確認するために、6つのsmL1挿入を特徴付けた。完全な挿入と隣接している配列のそれぞれを増幅することができるインバースポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、突然変異部位が同定された。それぞれのプライマー対に対して、親のHeLa細胞は空の部位を示す産物のみを産生した(図3a、奇数レーン)が、一方対応するG418耐性コロニーは空の部位(empty site)及び予想されるサイズの完全長smL1挿入産物の両者を産生した(図3a、偶数レーン)。
【0088】
一般的な構造とゲノム隣接部を決定するために、アンプリコンがクローン化され配列決定された。組込み部位は、基本的にMorrishら,2002,Nature Genet.31:159−165に記載されるようにインバースPCRによって決定された。それぞれのクローンから得られたゲノムDNA(5μg)がEcoRIで消化され、熱で不活化され、1mlに希釈され、一晩連結され、エタノールで沈殿され、30μlの水に再懸濁され、オリゴヌクレオチドJB6466/6467(1回目)及びJB6468/6469(2回目)を用いる2回のインバースPCRに供された。JB3529、JB3530及びJB3531での配列決定は30の隣接配列を同定した。隣接配列に基づくプライマーが、無傷のsmL1挿入を増幅するのに使用され、増幅されたsmL1挿入物は続けて配列決定された。
【0089】
図3bに要約するように、全てのアンプリコンが適切にスプライシングされたneo遺伝子、ポリAテイルを示し、ほとんど(6のうち5)が5〜108bpの長さの標的部位複製物を有していた。挿入番号10は10bpの標的欠失を有し、挿入番号18は5’L1逆位を有し、特徴はL1挿入に共通して見出された。
【0090】
さらに、様々な染色体が標的として使用され、標的部位複製物から推測されるエンドヌクレアーゼ切断部位は以前に報告された変性コンセンサス(下の鎖において5’−TTTT/AA−3’)(図3c)に一致した。
【実施例4】
【0091】
合成のマウスL1レトロトランスポゾンの活性が、野生型のヒト及びマウスL1とマウス細胞において比較された。標識されたレトロトランスポゾンを導入するために使用されたエピソーム性のプラスミドはマウス細胞中で効率よく複製されないので、3T3及びL細胞中での一過性レトロトランスポジションアッセイが使用された。(図2b及び表1のpTN201及びpCEPsmL1を比較し)標準的なアッセイで得られる相対的なレトロトランスポジション頻度を確認するために、HeLa細胞での一過性レトロトランスポジションアッセイも実施された。合成のマウスL1(pCEPsmL1)は、マウス細胞で野生型の対応物より非常に高い頻度で(200倍以上)レトロトランスポジションを行った。
【0092】
さらに、smL1をヒトL1(pJM101L1rp)と比較した。L1rpは以前にトランスジェニックマウス系統を作成するのに使用され、マウスでレトロトランスポジション頻度の基準として使用されるからである。L1rpが従来知られていた最も活性なL1因子であった全ての細胞タイプの試験において、smL1はL1rpより非常に活性が高かった。smL1mut2を産生するためにsmL1に導入された触媒作用の突然変異は、実質的にレトロトランスポジションを消滅させた。
【実施例5】
【0093】
野生型の全長mL1及びその合成の対応物のノーザンブロット解析が実施された。全RNAが製造者の指示に従ってTRIzol試薬(Invitrogen)を用いて単離された。それぞれのサンプルから得られた全RNA(6μg)は、10単位のDNaseIで37℃で15分間処理され、0.8%アガロース/ホルムアルデヒドゲル上で泳動され、Genescreen plus nylon membrane(NEN)へ10× SSC中で一晩ブロットされ、紫外線照射により架橋された。プレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションが共に42℃でULTRAhyb(Ambion)中で実施された。続いて[’y−32P]ATP末端ラベルされたオリゴヌクレオチドがプローブとして使用された。GFPプローブとしてJB4057、GFPプラスミドneoプローブとしてJB4059、トランスポジションプラスミドneoプローブとしてJB4541、hygプローブとしてJB6341が使用された。洗浄が2×SSC、0.1%のSDS及び0.2×SSC、0.1%のSDSで実施された。放射性シグナルは、Fujiイメージングプレート(Fuji imaging plates)及びFujiスキャナー(Fuji scanner)(BAS−1500)で測定した。次いで再度プローブするために、沸騰した0.1×SSC、1%のSDS中で10分間3回洗浄することにより、膜からプローブが除去された。
【0094】
野生型の全長mL1及びその合成の対応物のノーザンブロット解析によれば、合成のL1配列の長さの増加は全長L1RNAレベルの増加を導くことが明かとなった(図4)。hygro形質導入/負荷コントロールによって決定されるように(データ示さず)、pCEPsmL1はエピソームで維持することが困難なので、pCEPsmL1mut2がpCEPsmL1の代わりに使用された。無傷のpCEPsmL1プラスミドは形質導入された細胞で長期間、維持されない。
【実施例6】
【0095】
creリコンビナーゼタンパク質に曝されたときのみレトロトランスポーズする、合成マウスレトロトランスポゾンの条件的に活性化する変形物が構築された(図5a)。未成熟なRNAの切断を導く配列に操作可能に結合された、介在性のレポーター遺伝子(β−GEO等)によって、合成のレトロトランスポゾンが不活性化されている構築物が作成された。このカセットには、loxP組換え部位が隣接している。このDNAセグメントはcreタンパク質(インビトロで提供されるか、同時トランスフェクションにより又はcre発現トランスジェニックマウスの交配により提供される)の存在下で、creがloxP部位で組換えを行うことにより、β−geoを欠失し、合成レトロトランスポゾンを活性化するだろう。
【0096】
レトロトランスポジションに対するレポーターは、UVで励起される緑色蛍光タンパク質(gfp)であり、このタンパク質は単に紫外線を照射することにより新たな突然変異を視覚的に追跡することを可能にする。これは図5bに示される。不活性化された及び活性化されたDNA構築物(図5aに表される)はHELA細胞に形質導入され、表現型はβ−geo発現に対してX−gal染色、トランスポジション(gfp活性)に対して蛍光顕微鏡を用いて評価された。
【実施例7】
【0097】
ヒト(human version)の合成L1因子が上記と同じ方法を用いて合成された。この因子はヒトL1因子コンセンサス(Brouhaら,2003,Proc Natl Acad Sci USA 100:5280−5285)のアミノ酸配列に基づいている。ORF1及びORF2が、内部ORF領域及び3’UTRと同様に再度コードされ、完全な合成ヒトL1を作製した。
【0098】
レトロトランスポジション活性が測定され、天然のヒトL1と比較して活性が数倍増加することが明らかとなった。
【0099】
本明細書で引用されるそれぞれの特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全てが参照により本明細書中に取り込まれる。
【0100】
本発明は特定の態様に言及することで開示されているが、本発明の他の態様及び改変が本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって工夫されることは明かなことである。添付の特許請求の範囲は、このような態様及び均等な改変の全てを包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1a】図1aは、L1構造の模式図を示すものである。TSDは標的部位の重複を、UTRは非翻訳領域を表す。
【図1b】図1bは哺乳動物のORF2遺伝子の合成について概略図を示す。それぞれの断片をコードするオリゴヌクレオチドはPCR会合反応(PCR assembly reaction)で混合され、次いで増幅の鋳型として用いる。増幅産物はクローン化され唯一の制限部位(AからJとラベルされた)で繋がれた。
【図1c】図1cはプラスミドの構造を示す。テスト配列(lacZ,mORF2又はsmORF2)がGFP ORFの下流にインフレームで挿入される。それぞれのneo転写物は、形質転換の効率と負荷をモニターするのに使用された。プラスミドに沿って延びる短い線は、図1dで示された、プローブを表す。
【図1d】図1dはsmORF2発現解析を示す。上段は、GFPlacZ、GFPmORF2及びGFPsmORF2のRNA発現。中段は、負荷コントロールのRNA発現。下段は、GFPlacZ、GFPmORF2及びGFPsmORF2のタンパク質発現を示す。
【図2a】図2aはレトロトランスポゾンアッセイの概略図を示す。L1因子は、それ自身のプロモーターとポリアデニル化シグナルを有する3’非翻訳領域に、イントロンで中断されたneoレポーターを含む。neoがL1プロモーターから転写され、スプライシングされ、逆転写され、ゲノムに組込まれると、細胞はG418耐性となる。プラスミドの部分に沿って延びる短い線は、RNA解析のためのプローブを表す。SDはスプライスドナーを、SAはスプライスアクセプターを示す。
【図2b】図2bは、レトロトランスポゾンがHeLa細胞でアッセイされた際に得られた結果を示している(N=3)。pTN201は野生型の天然のマウスL1配列のみを含み、pTN203は野生型の天然のマウスL1配列と共にD709Y逆転写酵素の点突然変異を含む。pTN201のコロニーの平均絶対数は、形質導入された106個の細胞当たり440である。
【図3a】図3aは、それぞれ完全な挿入配列とフランキング配列を増幅したインバースポリメラーゼ連鎖反応の結果を示す。それぞれの挿入配列に隣接するプライマーは、G418耐性クローンから増幅するために使用された。奇数のレーンは、それぞれのプライマーについて、親のHeLa細胞が空の部位の産物のみを産生したことを示している。偶数のレーンは、それぞれのG418耐性クローンが、空の部位の産物及び予想されるサイズの完全長smL1挿入産物の両方を産生したことを示している。
【図3b】図3bは、クローン化された挿入物の特徴を提供する。TSDは標的部位の重複を示す。
【図3c】図3cは、クローン化された挿入物の構造と隣接する配列の概略図を示す。挿入物no.8はヒトゲノム配列には見られない7bp(青で強調された)の付加配列を含む。挿入物no.10は、ヒトゲノム配列データベースと比較して、1組の鋳型と異なる塩基対を含み、それにL1挿入物の直ぐ上流の10bpの欠失(青で示された)が続いている。TSDsは赤で強調され、推定されるエンドヌクレアーゼ切断部位は下線で示されている。
【図4】図4は、マウス細胞でのsmL1発現の全RNA解析による、高頻度なレトロトランスポジションを表している。天然、部分的に合成された及び完全に合成されたmL1の発現がHeLa細胞で比較された。
【図5a】図5aは、creリコンビナーゼタンパク質に曝された時のみレトロトランスポーズする、条件的に活性化するマウスレトロトランスポゾンの概略図を表す。
【図5b】図5bは、組織培養細胞での結果を示す。
【図6a】図6aは、配列番号1(合成されたマウスORF2)の前半部分を記載する。
【図6b】図6bは、配列番号1(合成されたマウスORF2)の残りの部分を記載する。
【図7】図7は、配列番号2(合成されたマウスORF1)を記載する。
【図8a】図8aは、配列番号3(合成されたヒトORF2)の前半部分を記載する。
【図8b】図8bは、配列番号3(合成されたヒトORF2)の残りの部分を記載する。
【図9】図9は、配列番号4(合成されたヒトORF1)を記載する。
【図10a】図10aは、マウスでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号5−72)を記載する。
【図10b】図10bは、マウスでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号73−143)を記載する。
【図10c】図10cは、マウスでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号144−209)を記載する。
【図11a】図11aは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号210−262)を記載する。
【図11b】図11bは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号263−319)を記載する。
【図11c】図11cは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号320−376)を記載する。
【図11d】図11dは、ヒトでの実験で使用されたオリゴヌクレオチドの配列(配列番号377−411)を記載する。
【図12a】図12は、合成のマウスL1と天然のマウスL1の配列アラインメントを提供する。MacVector6.5.3(Oxford Molecular)を使用して、ORF1のATGで開始し、ORF2の終始コドンで終了する、天然のマウスL1と合成のマウスL1の核酸ClustalWアラインメントを作成した。これらの配列について、L1 spaの塩基構成は、41%A、20%T、21%C、18%Gである。smL1の塩基構成は、27%A、14%T、33%C、26%Gである。L1 spa(Genbankアクセッション番号#AF016099)が天然のマウスL1の配列として使用された。一致部分は灰色の陰影を付けて示されている。
【図12b】図12bは、図12aの続きである。
【図12c】図12cは、図12bの続きである。
【図12d】図12dは、図12cの続きである。
【図12e】図12eは、図12dの続きである。
【図12f】図12fは、図12eの続きである。
【図12g】図12gは、図12fの続きである。
【図12h】図12hは、図12gの続きである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然のトランスポゾン遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたトランスポゾン遺伝子。
【請求項2】
天然のレトロトランスポゾン遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたレトロトランスポゾン遺伝子。
【請求項3】
天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたORF2遺伝子。
【請求項4】
天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成された哺乳動物のORF2遺伝子。
【請求項5】
天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたORF1遺伝子。
【請求項6】
天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成された哺乳動物のORF1遺伝子。
【請求項7】
ヒトに関連したコドンを包含する、請求項1から6のいずれかに記載の合成遺伝子。
【請求項8】
それぞれのアミノ酸に対応するヒトに関連したコドンが、アラニンGCC、アルギニンCGC又はCGG、アスパラギンAAG、アスパラギン酸GAC、システインTGC、グルタミンCAG、グルタミン酸GAG、グリシンGGC又はGGG、ヒスチジンCAC、イソロイシンATC、ロイシンCTG又はCTC、リジンAAG、メチオニンATG、プロリンCCC、フェニルアラニンTTC、セリンAGC又はTCC、トレオニンACC、トリプトファンTGG、チロシンTAC、及び、バリンGTG又はGTCから選択される、請求項7に記載の合成遺伝子。
【請求項9】
天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子のDNA配列と約90%未満の相同性を示すDNA配列を有する、請求項3に記載の合成遺伝子。
【請求項10】
配列番号1と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項11】
配列番号1を包含する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項12】
天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子のDNA配列と約80%未満の相同性を示すDNA配列を有する、請求項5に記載の合成遺伝子。
【請求項13】
配列番号2と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項14】
配列番号2を包含する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項15】
前記遺伝子がマウスの遺伝子である、請求項1から14のいずれかに記載の合成遺伝子。
【請求項16】
配列番号3と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項17】
配列番号3を包含する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項18】
配列番号4と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項19】
配列番号4を包含する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項20】
前記遺伝子がヒトの遺伝子である、請求項1から9、12及び16から19のいずれかに記載の合成遺伝子。
【請求項21】
請求項1に記載の合成遺伝子を包含する、トランスポゾン。
【請求項22】
請求項2に記載の合成遺伝子を包含する、レトロトランスポゾン。
【請求項23】
請求項2から20のいずれかに記載の合成遺伝子を包含する、哺乳動物のL1レトロトランスポゾン。
【請求項24】
i)請求項3、7から11、15から17及び20のいずれかに記載の合成されたORF2遺伝子、及び
ii)請求項5から8、12から15及び18から20のいずれかに記載の合成されたORF1遺伝子、
を包含する、哺乳動物のL1レトロトランスポゾン。
【請求項25】
トランスポゾンが、天然のトランスポゾンと少なくとも同程度、効率よく転位する、請求項21に記載のトランスポゾン。
【請求項26】
レトロトランスポゾンが、天然のレトロトランスポゾンと少なくとも同程度、効率よくレトロトランスポーズする、請求項22に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項27】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンと少なくとも同程度、効率よくレトロトランスポーズする、請求項23又は24に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項28】
トランスポゾンが、天然のトランスポゾンより効率よく転位する、請求項25に記載のトランスポゾン。
【請求項29】
レトロトランスポゾンが、天然のレトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする、請求項26に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項30】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする、請求項27に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項31】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより少なくとも2倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項30に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項32】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより少なくとも25倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項31に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項33】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより約100倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項32に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項34】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより約200倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項33に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項35】
請求項1から20のいずれかに記載の合成遺伝子を包含する、リコンビナントベクター構築物。
【請求項36】
ベクターがサブクローニングのためのプラスミドである、請求項35に記載の構築物。
【請求項37】
レトロトランスポーズする頻度が、天然のベクターで観察される頻度より活性である、請求項35又は36に記載の構築物。
【請求項38】
レトロトランスポーズする頻度が、天然のベクターで観察される頻度より約100倍以上活性である、請求項37に記載の構築物。
【請求項39】
請求項35から38のいずれかに記載のリコンビナントベクター構築物で、形質導入され、形質転換され又は感染された真核細胞。
【請求項40】
請求項1から20のいずれかに記載の遺伝子及び望ましい遺伝子を哺乳動物に投与することを包含する、望ましい遺伝子又はその生物学的に活性なフラグメントを哺乳動物の細胞へ送達する方法。
【請求項41】
請求項1から20のいずれかに記載の遺伝子、望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体を包含するカセットを包含する、組成物。
【請求項42】
請求項41に記載の組成物を遺伝的な疾患を有する動物に投与することを包含する、哺乳動物において遺伝的な疾患を治療する方法。
【請求項43】
遺伝的な疾患が、血友病、パーキンソン病、ファブリー病、家族性高コレステロール血症、ゴーシェ病、嚢胞性繊維症、副腎脳白質ジストロフィー、ジストロフィン遺伝子中の突然変異に関連した欠陥、アデノシンデアミナーゼ欠損症(SCID)、アルファ−抗トリプシン欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血、テイ−サックス病、サラセミア、リソソーム蓄積症及び代謝性疾患からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から20のいずれかに記載の遺伝子及び検出可能なタグを投与すること、タグ配列を発現する細胞を同定すること及びタグ配列に隣接するDNAを特徴付けることからなる、細胞中で未だに特徴付けられていない遺伝子又はその生物学的に活性なフラグメントを同定する方法。
【請求項1】
天然のトランスポゾン遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたトランスポゾン遺伝子。
【請求項2】
天然のレトロトランスポゾン遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたレトロトランスポゾン遺伝子。
【請求項3】
天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたORF2遺伝子。
【請求項4】
天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成された哺乳動物のORF2遺伝子。
【請求項5】
天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成されたORF1遺伝子。
【請求項6】
天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子と比較して高い発現レベルを示す合成された哺乳動物のORF1遺伝子。
【請求項7】
ヒトに関連したコドンを包含する、請求項1から6のいずれかに記載の合成遺伝子。
【請求項8】
それぞれのアミノ酸に対応するヒトに関連したコドンが、アラニンGCC、アルギニンCGC又はCGG、アスパラギンAAG、アスパラギン酸GAC、システインTGC、グルタミンCAG、グルタミン酸GAG、グリシンGGC又はGGG、ヒスチジンCAC、イソロイシンATC、ロイシンCTG又はCTC、リジンAAG、メチオニンATG、プロリンCCC、フェニルアラニンTTC、セリンAGC又はTCC、トレオニンACC、トリプトファンTGG、チロシンTAC、及び、バリンGTG又はGTCから選択される、請求項7に記載の合成遺伝子。
【請求項9】
天然のL1レトロトランスポゾンORF2遺伝子のDNA配列と約90%未満の相同性を示すDNA配列を有する、請求項3に記載の合成遺伝子。
【請求項10】
配列番号1と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項11】
配列番号1を包含する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項12】
天然のL1レトロトランスポゾンORF1遺伝子のDNA配列と約80%未満の相同性を示すDNA配列を有する、請求項5に記載の合成遺伝子。
【請求項13】
配列番号2と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項14】
配列番号2を包含する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項15】
前記遺伝子がマウスの遺伝子である、請求項1から14のいずれかに記載の合成遺伝子。
【請求項16】
配列番号3と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項17】
配列番号3を包含する、請求項4に記載の合成されたORF2遺伝子。
【請求項18】
配列番号4と少なくとも約70%の相同性を示すDNA配列を有する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項19】
配列番号4を包含する、請求項6に記載の合成されたORF1遺伝子。
【請求項20】
前記遺伝子がヒトの遺伝子である、請求項1から9、12及び16から19のいずれかに記載の合成遺伝子。
【請求項21】
請求項1に記載の合成遺伝子を包含する、トランスポゾン。
【請求項22】
請求項2に記載の合成遺伝子を包含する、レトロトランスポゾン。
【請求項23】
請求項2から20のいずれかに記載の合成遺伝子を包含する、哺乳動物のL1レトロトランスポゾン。
【請求項24】
i)請求項3、7から11、15から17及び20のいずれかに記載の合成されたORF2遺伝子、及び
ii)請求項5から8、12から15及び18から20のいずれかに記載の合成されたORF1遺伝子、
を包含する、哺乳動物のL1レトロトランスポゾン。
【請求項25】
トランスポゾンが、天然のトランスポゾンと少なくとも同程度、効率よく転位する、請求項21に記載のトランスポゾン。
【請求項26】
レトロトランスポゾンが、天然のレトロトランスポゾンと少なくとも同程度、効率よくレトロトランスポーズする、請求項22に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項27】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンと少なくとも同程度、効率よくレトロトランスポーズする、請求項23又は24に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項28】
トランスポゾンが、天然のトランスポゾンより効率よく転位する、請求項25に記載のトランスポゾン。
【請求項29】
レトロトランスポゾンが、天然のレトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする、請求項26に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項30】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより効率よくレトロトランスポーズする、請求項27に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項31】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより少なくとも2倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項30に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項32】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより少なくとも25倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項31に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項33】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより約100倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項32に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項34】
レトロトランスポゾンが、天然のL1レトロトランスポゾンより約200倍以上効率よくレトロトランスポーズする、請求項33に記載のレトロトランスポゾン。
【請求項35】
請求項1から20のいずれかに記載の合成遺伝子を包含する、リコンビナントベクター構築物。
【請求項36】
ベクターがサブクローニングのためのプラスミドである、請求項35に記載の構築物。
【請求項37】
レトロトランスポーズする頻度が、天然のベクターで観察される頻度より活性である、請求項35又は36に記載の構築物。
【請求項38】
レトロトランスポーズする頻度が、天然のベクターで観察される頻度より約100倍以上活性である、請求項37に記載の構築物。
【請求項39】
請求項35から38のいずれかに記載のリコンビナントベクター構築物で、形質導入され、形質転換され又は感染された真核細胞。
【請求項40】
請求項1から20のいずれかに記載の遺伝子及び望ましい遺伝子を哺乳動物に投与することを包含する、望ましい遺伝子又はその生物学的に活性なフラグメントを哺乳動物の細胞へ送達する方法。
【請求項41】
請求項1から20のいずれかに記載の遺伝子、望ましい遺伝子及び薬学的に許容される担体を包含するカセットを包含する、組成物。
【請求項42】
請求項41に記載の組成物を遺伝的な疾患を有する動物に投与することを包含する、哺乳動物において遺伝的な疾患を治療する方法。
【請求項43】
遺伝的な疾患が、血友病、パーキンソン病、ファブリー病、家族性高コレステロール血症、ゴーシェ病、嚢胞性繊維症、副腎脳白質ジストロフィー、ジストロフィン遺伝子中の突然変異に関連した欠陥、アデノシンデアミナーゼ欠損症(SCID)、アルファ−抗トリプシン欠損症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、フェニルケトン尿症、鎌状赤血球貧血、テイ−サックス病、サラセミア、リソソーム蓄積症及び代謝性疾患からなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から20のいずれかに記載の遺伝子及び検出可能なタグを投与すること、タグ配列を発現する細胞を同定すること及びタグ配列に隣接するDNAを特徴付けることからなる、細胞中で未だに特徴付けられていない遺伝子又はその生物学的に活性なフラグメントを同定する方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図12e】
【図12f】
【図12g】
【図12h】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図11d】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図12e】
【図12f】
【図12g】
【図12h】
【公表番号】特表2007−515941(P2007−515941A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533239(P2006−533239)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/015810
【国際公開番号】WO2005/049789
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505045908)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2004/015810
【国際公開番号】WO2005/049789
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505045908)ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ (21)
【Fターム(参考)】
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