説明

合成シリカガラス製造装置

【課題】シリカガラス合成用バーナからの火炎と別の火炎を形成することにより、浮遊シリカ微粒子のインゴット合成面(溶融シリカ付着面)への付着を抑制し、脈理及び内部欠陥が抑制された合成シリカガラスを製造する合成シリカガラス製造装置を提供する。
【解決手段】シリカガラス合成用のバーナ4は、少なくとも原料ガスを導出するバーナ内筒管4aと、少なくとも可燃性あるいは支燃性ガスを導出するバーナ外筒管4bを備え、前記バーナ外筒管4bからのガスの導出によって、バーナ内筒管の外周面に沿って下方向に向かう第1の火炎流F1が形成され、炉は、耐火物製の円筒状の側壁部10と、前記側壁部の上部を閉塞する耐火物製の天井部11とから構成され、前記天井部11には複数のガス導出孔12が設けられると共に、前記ガス導出孔12からのガスの導出によって、ガス導出孔12から垂直下方向に向かう第2の火炎流F2が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成シリカガラス製造装置に関し、特にシリカガラス合成用バーナからの火炎流と別の火炎流を形成することにより、浮遊シリカ微粒子のインゴット合成面への付着を抑制する合成シリカガラス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外線透過材料として250nm以下の波長の光透過性がよく、不純物含有量の極めて少ない合成シリカガラスが用いられている。この合成シリカガラスは、一般的には紫外線(400nm以下)領域の波長を吸収してしまう原因となりうる金属不純物の混入を避ける目的で、高純度のケイ素化合物、例えば四塩化ケイ素(SiCl4)などを原料として製造されている。
【0003】
具体的には、図6の模式図に示すように、耐火物で組まれた炉体50の上部にバーナ51が設けられ、このバーナ51から下方に向けて原料ガス(例えばSiCl4+O2)、水素ガス(H2)、酸素ガス(O2)が供給される。バーナ51のノズル口付近では、水素(H2)と酸素(O2)との燃焼反応が発生し(図6のS1)、高温の水蒸気(H2O)が発生する(図6のS2)。
【0004】
そして、その水蒸気(H2O)と原料ガス(SiCl4+O2)とが加水分解反応(図6のS3)することによりシリカ微粒子(SiO2)が生成される(図6のS4)。
生成されたシリカ微粒子は、バーナ51から噴出されるガスの流れにのり、鉛直軸周りに回転するインゴット53(ターゲット52)上に堆積・溶融ガラス化され、透明なガラスとして製造される。
【0005】
ところで、このような火炎加水合成法によるシリカガラス製造方法においては、インゴット53(ターゲット52)上に堆積せず浮遊するシリカ微粒子や反応生成ガス等を排気するために、排気口を有した炉が用いられる。
しかしながら、炉の構造によっては炉内のガス流れが引き起こす気流に従い、浮遊シリカ微粒子をインゴット合成面(溶融シリカ付着面)へ飛来させ、欠陥(気泡、インクルージョン)を招く原因となっていた。
【0006】
この問題を解決する装置として、壁面に沿って常温の不活性ガスを流す石英ガラス製造装置が特開平7−109134号(特許文献1)において提案されている。この装置について図7に基づいて説明する。
図7に示すように、この石英ガラスの製造装置60は、炉61と、該炉内部に設置されたインゴット形成用のターゲット62と、該ターゲット62に先端を向けて設置された石英ガラス合成用のバーナ63と、前記ターゲット62上に堆積されなかった石英ガラス粉を排気する排気手段64とを備えている。また、炉61の内壁に不活性ガスを導出するガス管からなるガス流出手段65が設けられている。
【0007】
この石英ガラスの製造装置60にあっては、前記したようにガス流出手段65が設けられ、炉61の内壁に不活性ガスを導出するように構成されているため、インゴットに堆積されなかった浮遊シリカ微粒子は排気口64に導かれ、炉61の内壁への付着が抑制される。
【0008】
しかし、常温の不活性ガスを流した場合には炉61の内部温度が低下するため、石英ガラスの合成条件が変化し、脈理等の欠陥が生じやすいという欠点があった。また、常温の不活性ガスを炉内へ導出するノズルの温度は低く、そのため前記ノズルの周囲にはシリカ微粒子が付着しやすく、ノズルを詰まらせるおそれがあった。更に、ノズルの周囲に付着したシリカ微粒子がインゴット合成面に飛来し、依然として、欠陥(気泡、インクルージョン)を招く虞があった。
【0009】
更に、特開2000−26126号(特許文献2)に記載されているように、炉の内壁面に沿った火炎流を形成する装置が提案されている。
この特許文献2に記載されている石英ガラス製造装置70は、インゴット形成用ターゲット71と、内部にターゲット71が配設され、排気口72を有する炉73と、ターゲット71に先端を向けて配設された石英ガラス合成用バーナ74と、排気口72から炉73内のガスを排気する排気管75を備えている。また、この石英ガラス製造装置70には、可燃性の水素ガスおよび支燃性の酸素ガスをそれぞれ炉73内に導出して、炉73の内壁面に沿った火炎流を形成するノズル76が設けられている。
【0010】
この石英ガラス製造装置70にあっては、石英ガラス合成用バーナ74からの火炎と前記ノズル76からの火炎とが干渉し、石英ガラスの合成条件が変化する虞があり、このため、合成シリカガラスに脈理等の欠陥が生じやすいという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−109134号公報
【特許文献2】特開2000−26126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、特許文献1に記載されたような、炉の内壁に不活性ガスを導出させることは、前記したように炉の内部温度が低下し、石英ガラスの合成条件に変化を来たし、脈理等の欠陥が生じやすいため、石英ガラスの合成条件の変化が少ない特許文献2に記載されたような、シリカガラス合成用バーナからの火炎と別の火炎を形成する装置を前提に、鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、シリカガラス合成用バーナからの火炎と別の火炎を形成することにより、浮遊シリカ微粒子のインゴット合成面(溶融シリカ付着面)への付着を抑制すると共に、脈理及び内部欠陥が抑制された合成シリカガラスを製造できる合成シリカガラス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明に係る合成シリカガラス製造装置は、耐火物製の炉と、該炉内部に設置されたインゴット形成用のターゲットと、前記炉内に原料ガスと支燃性ガスと可燃性ガスを導出して火炎流を形成するシリカガラス合成用のバーナと、前記ターゲット上に堆積されなかった浮遊シリカ微粒子を排気する炉の下部に設けられた排気ポートとを備えた合成シリカガラスの製造装置であって、前記シリカガラス合成用のバーナは、少なくとも原料ガスを導出するバーナ内筒管と、少なくとも可燃性あるいは支燃性ガスを導出するバーナ外筒管を備え、前記バーナ外筒管からのガスの導出によって、バーナ内筒管の外周面に沿って下方向に向かう第1の火炎流が形成され、前記炉は、耐火物製の円筒状の側壁部と、前記側壁部の上部を閉塞する耐火物製の天井部とから構成され、前記天井部には複数のガス導出孔が設けられると共に、前記ガス導出孔からのガスの導出によって、ガス導出孔から垂直下方向に向かう第2の火炎流が形成されることを特徴としている。
【0015】
このように、シリカガラス合成用のバーナによって炉の下方向に向かう第1の火炎流が形成されると共に、天井部の複数のガス導出孔によって炉の垂直下方向に向かう第2の火炎流が形成されるため、炉の側壁、天井部、シリカガラス合成用のバーナ等へのシリカ微粒子の付着が抑制される。その結果、浮遊シリカ微粒子のインゴット合成面(溶融シリカ付着面)への付着が抑制され、脈理及び内部欠陥が抑制された合成シリカガラスを製造できる。
【0016】
ここで、前記バーナ外筒管のガス導出方向は、垂直下方向からインゴット形成用のターゲットの方向に、所定角度傾斜していることが望ましい。
このように、前記バーナ外筒管のガス導出方向が傾斜しているため、第1の火炎流と第2の火炎流の干渉を抑制でき、合成シリカガラスの合成条件を一定に保つことができ、脈理等の欠陥の発性を抑制できる。
【0017】
また、前記バーナ外筒管から導出されるガス種及び前記天井部のガス導出孔から導出されるガス種がO2ガスあるいはH2ガスであることが望ましい。
このように、支燃性ガスであるO2ガスあるいは可燃性ガスであるH2ガスを導出することにより、下方向に向かう第1、第2の火炎流を容易に形成することができ、炉の側壁、天井部、シリカガラス合成用のバーナ等へのシリカ微粒子の付着をより抑制することができる。
【0018】
また、前記バーナ外筒管の下端部は、バーナ内筒管の下端部よりも上方に位置するように配置されると共に、天井部の下面も上方に位置するように形成され、バーナ内筒管の下端部は、天井部の下面と同一面に形成されていることが望ましい。
このように、バーナ内筒管とバーナ外筒管とが特定の配置構成を備えているため、バーナ内筒管の外周面、及び天井部におけるバーナ外筒管の設置個所近傍等の部位へのシリカ微粒子の付着を抑制することができる。
【0019】
また、前記バーナ内筒管を、原料ガスとキャリアガスを供給するソースノズルと、前記ソースノズルを中心部に収容し、可燃性ガスを供給する可燃性ガスノズルと、前記可燃性ガスノズル内に前記ソースガスノズルを囲うように配置され、支燃性ガスを供給する複数の支燃性ガスノズルとで構成し、前記バーナ内筒管から原料ガス、可燃性ガス、支燃性ガスを供給することが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シリカガラス合成用バーナからの火炎と別の火炎を形成することにより、浮遊シリカ微粒子のインゴット合成面(溶融シリカ付着面)への付着を抑制すると共に、脈理及び内部欠陥が抑制された合成シリカガラスを製造できる合成シリカガラス製造装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る合成シリカガラス製造装置の概略構成図であって、炉については断面で示した図である。
【図2】図1の合成シリカガラス製造装置の要部拡大断面図である。
【図3】図1の合成シリカガラス製造装置における天井部の底面図である。
【図4】図2におけるI−I断面図である。
【図5】図1の合成シリカガラス製造装置における天井部の変形例を示す底面図である。
【図6】合成シリカガラスの製造の原理を説明するための概念図である。
【図7】従来の合成シリカガラス製造装置を示す概略構成図である。
【図8】従来の他の合成シリカガラス製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる合成シリカガラス製造装置の一実施形態について、図1に基づいて説明する。
本発明の合成シリカガラス製造装置1は、耐火物製の炉2と、該炉内部に設置されたインゴットXを形成するためのターゲット3と、該ターゲット3に先端を向けて設置され、前記炉2内に原料ガスと支燃性ガスと可燃性ガスを噴射して火炎を形成するシリカガラス合成用のバーナ4と、前記ターゲット3上に堆積されなかった浮遊シリカ微粒子を排気する炉の下部に設けられた排気ポート5とを備えている。尚、図示しないが、前記ターゲット3を回転および昇降するインゴット昇降手段が設けられている。
【0023】
前記炉2は、耐火物製の円筒状の側壁部10と、前記側壁部10の上部を閉塞する耐火物製の天井部11とから構成され、この天井部11には、図2、3に示すように、複数のガス導出孔12が同心円状に等間隔に設けられている。例えば、図3に示すように、48個のガス導出孔12が同心円状に等間隔に設けられている。尚、これら複数のガス導出孔12は、インゴット形成用のターゲット3の軸線Lと平行に、即ち垂直方向に穿孔されている。
また、この天井部11の上面には、ガス導出孔12からガスを導出するための石英ガラス製のガス流通部13が設けられている。このガス流通部13は、図2,図4に示すように、有底円筒状に形成され、側壁13aの開口周縁部13bが前記天井部11の上面と密接して取付けられ、天井部11の上面とガス流通部13によって、ガスが流通する空間Aが形成されている。尚、このガス流通部13には、ガスを導入するためのガス導入口13cが設けられている。
【0024】
そして、前記天井部11の上面に設けられたガス流通部13に供給された可燃性ガス(例えば水素ガス(H2))、または(及び)支燃性ガス(例えば酸素ガス(O2))は、前記ガス導出孔12を通過して炉2内に流入するように構成されている。この天井部11のガス導出孔12によって、第2の火炎流を形成するシリカ付着防止用バーナが構成される。
この第2の火炎流F2は垂直下方向に流れるため、炉2の内部のガスの流れを垂直下方向の流れになし、炉内、特に炉2の側壁及び天井部11へのシリカ微粒子の付着を抑制する。尚、前記ガス導出孔12をシリカガラス合成用のバーナ4側の内周側よりも炉の側壁側の外周側に数多く配置し、シリカガラス合成用のバーナ4側の内周側よりも炉の側壁側の外周側から多くのガスを導入するように構成するのが好ましい。またはシリカガラス合成用のバーナ4側の内周側に位置するガス導出孔12の径よりも、炉の側壁側の外周側に位置するガス導出孔12の径を大きく形成し、シリカガラス合成用のバーナ4側の内周側よりも炉の側壁側の外周側から多くのガスを導入するように構成するのが好ましい。
このように構成するのは、シリカガラス合成用のバーナ4からのガス流れが、インゴット形成用のターゲット3の方向に流れた後、炉の側壁側に沿って上昇する流れが生じる虞があり、その炉の側壁側に沿って上昇するガスの流れを抑制するためである。
【0025】
また、前記天井部11の中央部には、シリカガラス合成用のバーナ4を取り付けるために貫通孔11aが形成され、前記シリカガラス合成用のバーナ4が貫通孔11aに嵌合することによって、天井部11に取付けられる。尚、前記ガス流通部13にも貫通孔13dが形成され、前記シリカガラス合成用のバーナ4が貫通孔13dに嵌合することによって、ガスが流通する空間Aが密閉空間として形成される。
更に、天井部11の中央部の貫通孔11aの外周部には、天井部11の中心方向に行くに従って、天井部11の厚さ寸法が小さくなるように傾斜した傾斜面部11bが形成されている。
【0026】
前記シリカガラス合成用のバーナ4は、バーナ内筒管4aとバーナ外筒管4bを備える、いわゆる二重管構造を有している。前記バーナ内筒管4aには、少なくとも原料ガス(例えばSiCl4+O2)を導入するガス導入口4cが設けられ、バーナ外筒管4bには、可燃性ガス及び支燃性ガス(水素ガス(H2)及び酸素ガス(O2))を導入するガス導入口4dが設けられている。
尚、前記バーナ内筒管4aから原料ガスとキャリアガス(例えばSiCl4+O2)の他、可燃性ガス、支燃性ガスを導入しても良く、バーナ外筒管4bから可燃性ガスまたは支燃性ガスのいずれか一方のガスを導入しても良い。
【0027】
更に、このバーナ内筒管4aとバーナ外筒管4bについて詳述すると、前記バーナ外筒管4bの下端部は、バーナ内筒管4aの下端部よりも上方に位置するように配置されると共に、天井部11の下面も上方に位置するように形成されている。具体的には、バーナ外筒管4bの下端部は、前記天井部11の傾斜部11bの最上部(天井部厚さの最薄部)に位置するように配置されている。尚、バーナ内筒管4aの下端部は、天井部11の下面と同一面(同一高さ)に形成されている。
また、バーナ外筒管4bのガス導出方向は、垂直下方向からインゴット形成用のターゲット3の方向に、所定角度θ傾斜している。したがって、バーナ外筒管4bから導出されたガスは、バーナ内筒管4aの外周面に沿って、インゴット形成用のターゲット3の方向に流れる。
【0028】
このように、前記シリカガラス合成用のバーナ4が二重管構造を有し、バーナ内筒管4aとバーナ外筒管4bとが特定の配置構成を備えているため、生成されたシリカ微粒子は、バーナ4から噴出される第1の火炎流F1にのり、鉛直軸周りに回転するインゴットX(ターゲット3)上に堆積・溶融ガラス化され、透明なガラスとして製造される。
特に、バーナ外筒管4bから導出されるガスが、バーナ内筒管4aの外周面及び天井部11におけるバーナ外筒管4bの設置個所近傍(天井部11の傾斜面11b)を流れるため、これら部位への浮遊シリカ微粒子の付着を抑制することができる。
【0029】
このように、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ内筒管4aから、少なくとも原料ガスとキャリアガス(例えばSiCl4+O2)を導入し、バーナ外筒管4bから可燃性ガスまたは(及び)支燃性ガス(水素ガス(H2)または(及び)酸素ガス(O2))を導入し、第1の火炎流F1を形成する。
また、天井部11のガス導出孔12から可燃性ガスまたは(及び)支燃性ガス(水素ガス(H2)または(及び)酸素ガス(O2))を導入し、第2の火炎流F2を形成する。
【0030】
前記第1の火炎流F1は、バーナ外筒管4bからインゴット形成用のターゲット3の方向に、所定角度θをもって斜め下方向に向かう流れであり、一方、第2の火炎F2はガス導出孔12から垂直下方向に向かう流れである。
したがって、前記第1の火炎流F1と第2の火炎流F2は干渉することがなく、しかも、炉2の内部のガスの流れは上部(天井部)から炉下部に向かう下方向の流れとなり、前記ガスは炉2の上部に上昇することなく、排気ポート5から排出される。即ち、浮遊シリカ微粒子は排気ポート5に円滑に導かれ、炉2の側壁10、天井部11、シリカガラス合成用のバーナ4への付着が抑制される。
【0031】
次に、本発明に係る合成シリカガラス製造装置を用いた合成シリカガラスの製造方法について説明する。
図1、2に示すように、約1400℃の炉内に、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ内筒管4aを用いて原料ガス(例えば四塩化ケイ素(SiCl4)などの気体+酸素(O2))と、水素ガス(H2)、酸素ガス(O2)ガスを導入する。併せて、バーナ外筒管4bから可燃性ガスまたは(及び)支燃性ガス(水素ガス(H2)または(及び)酸素ガス(O2))を導入する。
また、天井部11のガス導出孔12から可燃性ガスまたは(及び)支燃性ガス(水素ガス(H2)または(及び)酸素ガス(O2))を導入する。
そして、原料ガスは酸水素炎により、火炎加水分解させてシリカガラス微粒子を回転するターゲット3上に堆積、溶融ガラス化させる。尚、合成シリカガラスの堆積速度に合わせてバーナ4からインゴットXの溶融シリカ付着面までの距離を一定に保つように引き下げながら合成シリカガラスの製造が行われる。
【0032】
ここで、バーナ外筒管4bから導出されるガスの流速及び天井部11のガス導出孔12から導出されるガスの流速は0.5m/sec以上であることが望ましい。
流速が0.5m/sec未満の場合、炉上部(天井部11)から炉下部に向かう下方向の流れが、炉2の側壁10の内面に沿った上昇気流に負け、炉内の気流が乱れ、浮遊シリカ微粒子が炉内部付着して、欠陥(気泡・インクルージョン)を招く虞があるためである。また天井部11のガス導出孔12から導出されるガスの流速は、上記したようにガスの流速は0.5m/sec以上であって、シリカガラス合成用のバーナ4側の内周側に位置するガス導出孔12の流速よりも、炉の側壁側の外周側に位置するガス導出孔12の流速を大きくするのが望ましい。シリカガラス合成用のバーナ4からのガス流れが、インゴット形成用のターゲット3の方向に流れた後、炉の側壁側に沿って上昇する流れが生じる虞があり、その炉の側壁側に沿って上昇するガスの流れを抑制するためである。
【0033】
尚、上記実施形態にあっては、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ内筒管4aから原料ガス(例えば四塩化ケイ素(SiCl4)などの気体+酸素(O2))、水素ガス(H2)、酸素ガス(O2)ガスを炉内に導入するように構成されている。しかしながら、図5に示すように、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ内筒管4a内に、原料ガスを供給するソースノズル4eと、前記ソースノズル4eを中心部に収容し、可燃性ガスを供給する可燃性ガスノズル4fと、前記可燃性ガスノズル4f内に前記ソースガスノズル4eを囲うように配置され、支燃性ガスを供給する複数の支燃性ガスノズル4gを形成し、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ内筒管4aから原料ガス、可燃性ガス、支燃性ガスを供給するようになしても良い。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の好ましい実施形態を実施例に基づき説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示す合成シリカガラス製造装置を用いて、合成シリカガラスのインゴットを製造した。尚、排気ポート5として、対称に2ヵ所設置した。また、天井部11のガス導出孔12として、φ1.0mmの穴を30mm間隔に48個開け、その上面にガス流通部13を設置し、シリカ付着防止用バーナとした。
そして、本装置を用い、シリカガラス合成用のバーナ4のガス導入口4cから原料ガスとしてSiCl4を60g/minとO2を10リットル/min導入し、バーナ内筒管4aから前記原料ガスと、支燃性ガスとしてO2ガスを250リットル/min、可燃性ガスとしてH2ガスを500リットル/minを炉内に導入した。またO2ガス/H2ガス比は0.5とした。
シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ外筒管4bからO2ガスを10リットル/minと、天井部ガス導出孔(シリカ付着防止用バーナ)からO2ガスを60リットル/minを炉内に供給しながら、外径φ500mm、1000kgの合成シリカガラスインゴットを製造した。この結果、合成されたインゴット内部に気泡、インクルージョンは1点も検出されなかった。
【0035】
[実施例2]
実施例1と同様の装置を用いて、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ外筒管4bからH2ガスを10リットル/min、天井部ガス導出孔(シリカ付着防止用バーナ)からH2ガスを60リットル/minを炉内に供給しながら、その他の条件は実施例1と同条件で合成を行った。この結果、合成されたインゴット内部に気泡、インクルージョンは1点も検出されなかった。
【0036】
[比較例1]
図1に示した装置の天井部にガス導出孔(シリカ付着防止用バーナ)を設けず、その他は実施例1と同条件として、外径φ500mm、1000kgの合成シリカガラスインゴットを製造した。この結果、合成されたインゴット内部に気泡5点、インクルージョンは10点検出された。
【0037】
[比較例2]
実施例1と同様の装置を用いて、シリカガラス合成用のバーナ4のバーナ外筒管4bからN2ガスを10リットル/min、天井部ガス導出孔(シリカ付着防止用バーナ)からN2ガスを60リットル/min炉内に供給しながら、その他の条件は実施例1と同条件で合成を行った。この結果、合成されたインゴット内部に気泡3点、インクルージョンは5点検出された。
【符号の説明】
【0038】
1 合成シリカガラス製造装置
2 炉
3 ターゲット
4 インゴット合成用のバーナ
4a バーナ内筒管
4b バーナ外筒管
5 排気ポート
10 炉の側壁部
11 天井部
12 ガス導出孔(シリカ付着防止用バーナ)
F1 第1の火炎流
F2 第2の火炎流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物製の炉と、該炉内部に設置されたインゴット形成用のターゲットと、前記炉内に原料ガスと支燃性ガスと可燃性ガスを導出して火炎流を形成するシリカガラス合成用のバーナと、前記ターゲット上に堆積されなかった浮遊シリカ微粒子を排気する炉の下部に設けられた排気ポートとを備えた合成シリカガラスの製造装置であって、
前記シリカガラス合成用のバーナは、少なくとも原料ガスを導出するバーナ内筒管と、少なくとも可燃性あるいは支燃性ガスを導出するバーナ外筒管を備え、前記バーナ外筒管からのガスの導出によって、バーナ内筒管の外周面に沿って下方向に向かう第1の火炎流が形成され、
前記炉は、耐火物製の円筒状の側壁部と、前記側壁部の上部を閉塞する耐火物製の天井部とから構成され、前記天井部には複数のガス導出孔が設けられると共に、前記ガス導出孔からのガスの導出によって、ガス導出孔から垂直下方向に向かう第2の火炎流が形成されることを特徴とする合成シリカガラスの製造装置。
【請求項2】
前記バーナ外筒管のガス導出方向は、垂直下方向からインゴット形成用のターゲットの方向に、所定角度傾斜していることを特徴とする請求項1記載の合成シリカガラスの製造装置。
【請求項3】
前記バーナ外筒管から導出されるガス種及び前記天井部のガス導出孔から導出されるガス種がO2ガスあるいはH2ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された合成シリカガラス製造装置。
【請求項4】
前記バーナ外筒管の下端部は、バーナ内筒管の下端部よりも上方に位置するように配置されると共に、天井部の下面も上方に位置するように形成され、バーナ内筒管の下端部は、天井部の下面と同一面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された合成シリカガラス製造装置。
【請求項5】
前記バーナ内筒管を、原料ガスを供給するソースノズルと、前記ソースノズルを中心部に収容し、可燃性ガスを供給する可燃性ガスノズルと、前記可燃性ガスノズル内に前記ソースガスノズルを囲うように配置され、支燃性ガスを供給する複数の支燃性ガスノズルとで構成し、前記バーナ内筒管から原料ガス、可燃性ガス、支燃性ガスを供給することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された合成シリカガラス製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−41231(P2012−41231A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183851(P2010−183851)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(592104944)コバレントマテリアル徳山株式会社 (24)
【Fターム(参考)】