説明

合成ペプチドとそれを含むワクチン

【課題】コイルドコイル構造内にエピトープをマッピングすることは一般的に困難である。さらに、保護エピトープは、抗体結合等による免疫学的認識のために、正しいコンホメーションで存在する必要がある。これは、安定な最少のエピトープを定義すること、並びにワクチンとしてそれを用いる際に特に重要である。
【解決手段】本発明によれば、配座エピトープから誘導された重複ペプチドが、類似した未変性のコンホメーションを備えたペプチドの内部に埋め込まれている。このアプローチは、ある領域の配座エピトープのマッピング、並びに、GASおよび種々の他の病原体に対するワクチン候補として最小エピトープを設計することに用いられる可能性を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合成ペプチドとそれを含むワクチン 本願発明は、免疫学的相互作用を可能にする形態に一つ以上の保護エピトープを含むキメラペプチド、およびそれを含むワクチン組成物に関連する。本発明は、 特に、グループA連鎖球菌属に対する保護抗体を含むキメラペプチドに向けられている。
【0002】
本願明細書に記載された参考文献の詳細は、この記載の最後にまとめられている。明細書中に記載されたアミノ酸配列の配列番号(SEQ ID NO)は、参考文献の次に定義されている。
【0003】
この明細書を通じて、文脈に別のことが要求されない限り、用語“含む(comprise)”、あるいはその変形である“含む(comprises)”または“含む(comprising)”は、定められた要素もしくは完全体あるいは要素もしくは完全体の群の含有を意味するが、他の要素もしくは完全体または 要素もしくは完全体の群の排除を意味するものではないと解する。
【0004】
いくつかの疾患に対して使用できるワクチン候補多くのタンパク質が、コイルしたコイル構造(コイルドコイル構造(a coiled-coil structure))を備え、構造的に重要で生物学的に豊富なモチーフが、種々のグループのタンパク質に見出された(cohen と parry,1990,1986)。200以上のタンパク質が、コイルドコイルドメインを含むと推定されている(Lupas ら,1991)。これらは、連鎖球菌属のプロテインAおよびMタンパク質等のある種のバクテリアの表面タンパク質;インフルエンザ等のウイルス赤血球凝集 素、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)糖タンパク質9p45;およびトリパノソーマ(Trypanosomes)のVSG等のプロトゾアを含む。全てのコイ ルドコイルモチーフは、特徴的な7つのアミノ酸残基の繰り返し(a-b-c-d-e-f-g)nを有する。いくつかのコイルドコ イルドメインのX線構造が得られ、これらは、酵素の転写因子GCN4ダイマーのロイシンジッパー部位(o′-shea ら,1991)α−スペクトリンの繰り返しモチーフ(Yan,1993)を含み、GCN4ロイシンジッパートリマー(Harburyら,1994)および テトラマー(Harbury ら,1993)変異体をともなう。
【0005】
これらのタンパク質に基づくサブユニットワクチンの開発において、コイルドコイル構造内にエピトープをマッピングすることは一般的に困難である。さらに、保護エピトープは、抗体結合等による免疫学的認識のために、正しいコンホメーションで存在する必要がある。これは、安定な最少のエピトープを定義すること、並びにワクチンとしてそれを用いる際に特に重要である。
【背景技術】
【0006】
グループA連鎖球菌属(以降“GAS”と称する)は、いくつかのヒト疾患の原因であり、深刻な熱病を引き起こす急性リウマチ熱を導くことがある。リウマチ 熱は、連鎖球菌属のMタンパク質と心臓の抗原との間の交差相互作用によって開始される自己免疫疾患を示す(Beachey ら,1988)。Mタンパク質は、七つの残基の周期を含み、これは、この分子の中心的なロッド領域がコイルドコイルコンホメーションであることを強力に示 唆している(Manula と Fischetti,1980)。この領域にまたがるオーバーラップしたペプチドが作製されており(国際特許出願 PCT/AU93/00131[WO93/21220]を参照)、高度に保存されたC末端領域に由来する合成20マーペプチド(“p145”と称される) に対して産生されたマウス抗体は、オプソニン作用を促進してGASの多重単離物を殺すことが可能である。さらに、p145は、ヒト血清に仲介された in vitro 殺傷を阻害することが可能である。重要なことは、p145が心臓交差反応性T細胞をも刺激してしまうことである(Pruksakornら,1992; 1994b)。
【0007】
切断されたペプチドが保護抗体反応を引き出せないことから、p145内のB細胞エピトープは配座し得る(conformational)と考えられる(Pruksakorn,1994)。それゆえ、オプソニン作用を有する抗体を誘導するのに必要とされるp145の最小領域を定義する必要があり、これはワクチンの基礎を形成することができる。このような方法は、病原体のタンパク質のある領域から最小エピトープ領域を同定することを可能にする。
【0008】
抗原から最小のエピトープをマッピングするために用いられてきた一つの方法が、PEPSCAN法(Geysenら,1987)である。しかしながら、短い ペプチドを用いた場合には、連続的なエピトープを示すのみである。配座エピトープ(conformational epitopes)、すなわちタンパク質の3次元構造によって形成されたエピトープ、を決定する別の方法は、ミモトープ法(mimotope strategies)による。ミモトープは、抗体を誘導するエピトープを模造したものである。ペプチドは、20の普通のアミノ酸を用いて作製されうるオクタペプチドの全レパートリー、すなわち208ペプチドをカバーするポリプロピレンのピンに合成することができる(Geysenら,1987)。
【0009】
あるいは、繊維状ファージクローンの莫大な混合物からなるエピトープライブラリーであって、ビリオン表面に一つのペプチド配列をそれぞれ示すものを、抗体認識について調べることができる(scott と smith,1990)。
【特許文献1】国際特許出願 PCT/AU93/00131
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明によれば、配座エピトープから誘導された重複ペプチドが、類似した未変性のコンホメーションを備えたペプチドの内部に埋め込まれている。このアプローチは、ある領域の配座エピトープのマッピング、並びに、GASおよび種々の他の病原体に対するワクチン候補として最小エピトープを設計することに用いられる可能性を備えている。
【0011】
従って、本願発明の一つの態様は、第二のアミノ酸配列に挿入された配座エピトープを含む第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドであり、前記第一および第 二のアミノ酸配列は、類似した未変性のコンホメーションを備えたペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質から誘導される。
【0012】
本発明の態様によれば、第二のアミノ酸配列は“フレームワークペプチド”を構成し、キメラペプチドに適切なコンホメーションを提供する。フレームワークペ プチドは、自然に生じる形態で最初のアミノ酸配列に類似したコンホメーションを提供するために、選択もしくは設計される。最も好ましい実施態様では、フ レームワークペプチドは、α−ヘリックスコイルドコイルコンホメーションをとるものであり、それゆえ、類似したコンホメーション、すなわちα−ヘリックス コイルドコイルコンホメーションで第一のアミノ酸配列に存在するエピトープを提示するのに使用することができる。
【0013】
本願発明の好ましい態様によれば、第二のアミノ酸配列内に挿入された配座エピトープを含む第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドが提供され、前記第二のアミノ酸配列はα−ヘリックスコイルドコイルコンホメーションに保持される。
【0014】
本願発明を、連鎖球菌属のMタンパク質から誘導され、特に以下のアミノ酸配列(アミノ酸残基の一文字略記を使用): LRRDLDASREAKKQVEKALE(SEQ ID NO:1)もしくは、これらのアミノ酸残基の一つ以上の機能的および/または化学的等価物の内部のB細胞配座エピトープを含む第一のアミノ酸配列を用いて、以下に例示する。
【0015】
従って、本願発明の特に好ましい実施態様は、以下の配列 LRRDLDASREAKKQVEKALE(SEQ ID NO:1)の内部から選択された少なくとも3つのアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドに向けられ、前記少なくとも3つのアミノ酸は、連鎖球菌属の Mタンパク質の配座B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列は、α−ヘリックスコイルドコイルコンホメーションに保持することができる第二のア ミノ酸配列の内部に挿入されている。好ましくは、第一のアミノ酸配列は、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、そしてさらに好ましくは少なくとも15 の連続するアミノ酸残基を含む。
【0016】
あるいは、ヘリックスの外表面上等であって、活性に必要もしくは十分である様な、不連続のアミノ酸を選択してもよい。
【0017】
フレームワークペプチドの構成は、七つのアミノ酸残基の繰り返し (a-b-c-d-e-f-g)nに 基づくものであって、aとdの位置は好ましくは大きな無極性残基を備え、b、cおよびfの位置は一般的に極性かつ帯電しており、eおよびgの位置は一般的 に鎖間のイオン相互作用に寄与する。特に好ましいフレームワークペプチドは、GCN4ロイシンジッパー(O′sheaら,1989; 1991)もしくはそのトリマー(Harbury ら,1994)またはテトラマー(Harbury ら,1993)およびα−スペクトリンの繰り返しモチーフ(Yan,1993)に対応するペプチドの構造に基づく。GCN4ロイシンジッパーは特に好まし く、GCN4ロイシンジッパーペプチドに共通の特徴から誘導された模範的な7つの繰り返し(a model heptad repeat)は、以下の配列: VKQLEDK(SEQ ID NO:2)を含み、これは、ここで(GCN4)4と称される4つの7つの繰り返しのフレームワークペプチドを与える。要求されるものは、フレームワークペプチドが、もはや4つの繰り返しより長くすることができること、もしくはそうする必要があるかもしれないことである。
最初のアミノ酸配列は、キメラペプチドを与えるフレームワークコイルドコイルペプチドの内部に埋め込まれる。
【0018】
本願発明のキメラペプチドは、組換え手段で産生することができ、また、例えば、固相ペプチド合成技術を用いて、決められた順番で一つ以上のアミノ酸残基を 段階的に付加して化学的に合成しても良い。ペプチドを他のタンパク質と組み合わせて合成し、次いで化学的切断によって単離してもよく、また、ペプチドもし くは多価ペプチドを多重繰り返しユニットで合成してもよい。ペプチドは、未変性に生じるアミノ酸残基を含んでもよく、また、D型異性体もしくは化学的に修 飾された未変性残基のように未変性には産生されないアミノ酸残基を含んでも良い。未変性には生じないアミノ酸残基は、例えば、ペプチドに配座の束縛および /または限定を促進または提供する必要があるかもしれない。主題のペプチドを産生する方法の選択は、ペプチドの所望のタイプ、量および純度等のファクター、並びに産生の簡便さおよび便利さによる。
【0019】
ペプチドそのものが十分に長い血清および/または組織半減期を備えていないために、本願発明のキメラペプチドは、in vivo で用いるための化学的な修飾を最初に必要とするかもしれない。主題のペプチドの化学的修飾は、ペプチドのある領域が、Bおよび/またはT細胞エピトープとして作用する能力を含めた抗原性を改良するためにも重要である。このように化学的に修飾されたキメラペプチドは、ここでは“類似体(analogues)”と称する。用語“類似体”は、本願発明のキメラペプチドのあらゆる機能的な化学的もしくは組換え等価物にまで拡張され、最も好ましい実施態様では、GASのMタンパク質の少なくとも一つのB細胞エピトープを備え、かつ、B細胞エピトープに反応する抗体がヒトの心臓の組織と最小限に反応することを特徴とする。用語“類似体”は、上記ペプチドのあらゆるアミノ酸誘導体にまで拡張して用いられる。
【0020】
ここで考慮されるキメラペプチドの類似体は、側鎖の修飾、ペプチド合成中における未変性に生じないアミノ酸および/またはその誘導体の取り込み、並びにペプチドもしくはその類似体における配座を束縛する架橋剤および他の方法の使用を含むが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明で考慮される側鎖修飾の例は、アルデヒドとの反応の後にNaBH4を用いて還元する還元的アルキル化;メチルアセチミダート(methylacetimidate)を用いたアミジネーション(amidination);無水酢酸を用いたアシル化;シアナートを用いたアミノ基のカルバモイル化;2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を用いたアミノ基のトリニトロベンジル化;無水スクシン酸および無水テトラヒドロフタル酸を用いたアミノ基のアシル化;およびピリドキサル−5’−ホスファートでリシンをピリドキシル化した後にNaBH4を用いて還元する等のアミノ基の修飾を含む。
アルギニン残基のグアニジン基を、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサルおよびグリオキサル等の試薬を用いて複素環縮合生成物を形成することによって修飾しても良い。
【0022】
カルボキシル基を、O−アシリソウレア(O-acylisourea)形成を介したカルボジイミド活性化の後に、例えば対応するアミドをデリビチゼーション(derivitisation)することによって修飾しても良い。
【0023】
スルフヒドリル基を、ヨード酢酸もしくはヨードアセトアミドを用いたカルボキシメチル化;システイン酸の過ギ酸酸化;他のチオール化合物を用いた混合ジスルヒドの形成;マレイミド、無水マレイン酸もしくは他の置換されたマレイミドとの反応;4−クロロメルクリベンゾアート、4−クロロメルクリフェニルスルホン酸、フェニルメルクリクロリド、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノールおよび他のメルクリアルを用いたメルクリアル誘導体の形成;アルカリ性pHにおけるシアナートを用いたカルバモイル化等の方法で修飾してもよい。
【0024】
トリプトファン残基を、例えば、N−ブロモスクシンイミドを用いた酸化、あるいは、2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミドまたはハロゲン化スルフェニルを用いたインドール環のアルキル化で修飾してもよい。一方、チロシン残基を、テトラニトロメタンでニトロ化して3−ニトロチロシン誘導体を形成してもよい。
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾を、ヨード酢酸誘導体を用いたアルキル化もしくはジエチルピロカルボナートを用いたN−カルボエトキシル化(N-carbethoxylation)によって行っても良い。
【0025】
ペプチド合成中における未変性にないアミノ酸および誘導体の取り込みの例は、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、2−チエニルアラニン(thienylalanine)および/またはアミノ酸のD型異性体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0026】
架橋結合材を、例えば、3次元コンホメーションを安定化させるために用いることができ、n=1からn=6の(CH2nスペーサー基を備えた二価性のイミドエステル等のホモ二価性架橋結合材、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、およびN−ヒドロキシスクシンイミド等のアミノ反応部と、マレイミドもしくはジチオ部(SH)またはカルボジイミド(COOH)等の他の基に特異的な反応部を含むヘテロ二価性試薬が用いられる。さらに、ペプチドを配座的に強制させることもできる。例えば、CαおよびNα−メチルアミノ酸の取り込み、アミノ酸のCαとCβ原子間の二重結合の導入、NおよびC末端の間、二つの側鎖の間、もしくは側鎖とNまたはC末端との間にアミド結合を形成するなどして、共有結合を導入することによって環状ペプチドまたは類似体を形成することもできる。
【0027】
しかして本願発明は、エピトープが免疫学的に相互作用し得る機能的配座状態で提供されるようなハイブリッド分子における連鎖球菌属のMタンパク質等の配座エピトープを提供する。
しかして本願発明は、抗原ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の最小エピトープを決定する方法に係り、この方法は、前記ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、もしくはエピトープを保有すると推定されるこれらの一部の未変性のコンホメーションを決定すること;前記ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質のペプチドフラグメントを調製すること;前記ペプチドフラグメントを、最初に言及されたペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質と似た未変性のコンホメーションを備えた別のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質から誘導もしくは基づいて得られた第二ペプチド中に挿入もしくは提示して、ペプチドフラグメントの推定上のエピトープを、免疫学的相互作用が可能なコンホメーションで提示されるようにすること;および免疫学的相互作用について前記ペプチドフラグメントを調べることを含む。
【0028】
本願発明に関連する態様としては、抗体に認識されるペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質における両親媒性ヘリックスの領域をマッピングする方法を提供することであり、この方法は、前記ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、もしくはエピトープを保有すると推定されるこれらの一部の未変性のコンホメーションを決定すること;前記ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質のペプチドフラグメントを調製すること;前記ペプチドフラグメントを、最初に言及されたペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質と似た未変性のコンホメーションを備えた別のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質から誘導もしくは基づいて得られた第二ペプチド中に挿入もしくは提示して、ペプチドフラグメントの推定上のエピトープを、免疫学的相互作用が可能なコンホメーションで提示されるようにすること;および免疫学的相互作用について前記ペプチドフラグメントを調べることを含む。
【0029】
抗体に認識される両親媒性ヘリックスは、価値あるワクチン候補となり得る。
【0030】
両親媒性ヘリックスは、タンパク質における一般的な構造部であり、表面に曝されるか(抗原性)もしくは他のタンパク質と相互作用しうる。螺旋のコイルドコイルは、ホモダイマー、トリマーおよびテトラマーに相互作用するヘリックスのより複雑な形態である。
【0031】
“免疫学的相互作用”は、免疫細胞または免疫エフェクター細胞との相互作用のあらゆる形態、および/またはあらゆる形態の免疫応答を意味する。一般的に、免疫学的相互作用は、抗体結合もしくはペプチドフラグメントとの相互作用によって測定される。しかしながら、免疫学的相互作用は、細胞性免疫応答を測定することにも拡張される。
【0032】
治療および診断の開発においては、免疫学的相互作用を提供することができ、かつ、治療において保護免疫反応を誘導し得る最小エピトープを決定することが重要である。従って、本願発明のキメラペプチドは、その製造方法も含めて、特にワクチンの開発に使用することができる。その例示的かつ好ましい形態では、本願発明は、GASに対するワクチンに使用するためのキメラペプチドを提供する。しかしながら、これは、本願発明が、バクテリア、寄生虫、酵母、真菌および原生動物を含む病原性微生物、もしくはレトロウイルス、インフルエンザウイルス、肝炎ウイルスおよびHIV等の免疫不全ウイルス等のウイルスに対する保護免疫応答を誘導するのに使用できるキメラペプチドにも拡張することができるという理解のもとに行われる。
【0033】
従って、本願発明の好ましい態様は、グループA連鎖球菌属に対して使用できるワクチンを提供するものであり、このワクチンは、以下の配列;
LRRDLDASREAKKQVEKALE(SEQ ID NO:1)
の内部から選択された少なくとも3つのアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記の少なくとも3つのアミノ酸は、連鎖球菌属のMタンパク質の配座B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列はα−ヘリックスコイルドコイルコンホメーションをとり得る第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、前記ワクチンは、一つ以上の薬学的に使用可能なキャリアおよび/または希釈剤をさらに含む。このワクチンは、アジュバントおよび/または他の免疫刺激分子をさらに含んでも良い。好ましくは、第二のアミノ酸配列が、GCN4から誘導されたフレームワークペプチドを形成する。上述したように、SEQ ID NO:1の連続もしくは非連続なアミノ酸を選択することもできる。
【0034】
本願発明の別の態様は、Mタンパク質に対する体液性免疫の開発に使用できるが、心臓の組織と最小限に交差反応するワクチンであって、このワクチンは、Mタンパク質の少なくとも一つのB細胞エピトープを有する第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記B細胞エピトープと反応する抗体は心臓の組織と最小限に反応する。前記第一のアミノ酸配列は、α−ヘリックスコイルドコイル形態をとり得る第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、前記ワクチンは、一つ以上の薬学的に使用可能なキャリアおよび/または希釈剤をさらに含む。
【0035】
ワクチンは、一種類のペプチドもしくは別異もしくは類似のエピトープをカバーするある範囲のペプチドを含んでもよい。さらに、もしくは、単一のポリペプチドに多重のエピトープが設けられてもよい。この場合のワクチンは、多価ワクチンと称される。多重エピトープは、二つ以上の繰り返しエピトープを含む。
【0036】
ワクチンの作製は、当該技術分野で一般に既知であり、Remington′s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Co.,Easton, Pennsylvania,USAを参照することができる。
【0037】
本願発明は、薬学的組成物もしくはワクチン組成物であり、体液性免疫の発達に有効量のキメラペプチド(上記の通り)またはその誘導体、類似体もしくは相同体および/またはこれらの組み合わせを含み、他の活性分子および一つ以上の薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤を含む。キメラペプチドを含む薬学的組成物の活性成分は、例えば、特定のケースに依存した量で投与された場合に、連鎖球菌属のMタンパク質に対する抗体の発達において優れた治療活性を示すが、これらの抗体が心臓組織とは最小限の反応性を示すと考えられる。例えば、一日に体重一キログラム当たり約0.5μ9〜20m9を投与してもよい。
【0038】
投与方法は、最適な治療反応を提供できるように調製しても良い。例えば、投与量をいくつかに分けて毎日投与してもよく、治療状況に示されるように比例的に減少させることもできる。活性化合物は、経口、静脈内(水溶性)、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮膚内もしくは座薬経路あるいは移植(例えば、核酸遅延分子を用いる)等の慣例的な方法で投与することができる。投与経路によっては、キメラペプチドを含む活性成分を、酵素、酸、並びに成分を不活性化する別の自然の条件の作用から前記成分を保護する材料で被覆する必要があるかもしれない。例えば、キメラペプチドの親油性が低いと、ペプチド結合を切断することのできる酵素によって胃腸で破壊され、または胃で酸加水分解される。非経口投与以外でキメラペプチドを投与するために、その不活性化を妨げるための材料で被覆するか、もしくは共に投与される。例えば、キメラペプチドを、アジュバントで投与しても、酵素阻害剤と共に投与しても、リポソームで投与してもよい。アジュバントはその最も広い意味で用いられ、インターフェロン等のあらゆる免疫刺激化合物を含む。ここで言及されるアジュバントは、レゾルシノール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびn−ヘキサデシルポリエチレンエーテル等の非イオン界面活性剤を含む。酵素阻害剤は、膵臓のトリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスファート(DFP)およびトラシロールを含む。リポソームは、ウォーター・イン・オイル・イン・ウォーター型エマルションおよび従来のリポソームを含む。
【0039】
活性化合物は、非経口的もしくは腹膜内に投与することもできる。分散物を、グリセロール、液状ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物中に、かつ油中に調製することもできる。貯蔵および使用の通常の条件下では、微生物の成長を妨げるために、これらの調製物は防腐剤を含む。
【0040】
注入に適した薬学的形態は、無菌の注入可能な溶液または分散物の即席の調製のための、無菌の水溶液(水溶性)もしくは分散物および無菌のパウダーを含む。どの場合でも、その形態は無菌でなければならず、容易に注入できるように液体でなくてはならない。製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、バクテリアや真菌等の微生物の混入作用に対して保護されていなければならない。キャリアは、溶剤もしくは分散物媒体とすることができ、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコール等)、これらの適切な混合物および植物油である。例えば、リシチン(licithin)等の被覆を使用することにより、分散物の場合には必要な粒子サイズを維持することにより、また、界面活性剤を使用することによって、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用を妨げることは、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チルメロサル(thirmerosal)等の種々の抗菌および抗カビ試薬によってもたらすことができる。多くの場合に、糖もしくは塩化ナトリウム等の等張試薬を含むことが好ましい。注入可能な組成物の長い吸収は、例えばアルミニウムモノステアラートおよびゼラチン等の吸収遅延試薬を組成物中に用いることによってもたらされる。
【0041】
無菌の注入可能な溶液は、上記とは別の種々の成分を含んだ適切な溶剤に必要量の活性化合物を取り込み、必要であれば、濾過された滅菌を行うことによって調製される。一般的に、分散物は、種々の無菌活性成分を無菌ビヒクルに導入することによって調製され、基礎的な分散媒体と上記とは別の必要な成分を含む。
無菌の注入可能な溶液の調製のための無菌パウダーの場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、活性成分のパウダーと前記無菌濾過溶液のさらなる所望の成分が得られる。
【0042】
キメラペプチドを上記のように適切に保護した場合には、例えば、不活性な希釈剤もしくは吸収できる食用キャリアと共に活性化合物を経口投与することができ、硬いもしくは柔軟な殻のゼラチンカプセルに内包することもでき、タブレットに圧縮してもよく、食事の食品に直接取り込まれても良い。経口治療投与では、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれてもよく、摂取できるタブレット、頬のタブレット(buccal tablets)、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハース等の形態で用いられても良い。このような組成物および調製物は、少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。組成物及び調製物のパーセントは、もちろん、変えることができ、ユニットの約5〜80重量%の間とすることができる。このような治療に用いられる組成物の活性化合物の量は、適切な投与量が得られるものである。本願発明に係る好ましい組成物もしくは調製物は、経口投与ユニット形態が0.1μg〜2000mgの間の活性化合物を含むように調製される。
【0043】
タブレット、トローチ、丸薬、カプセル等は以下を含んでも良い。トラガカントゴム、アカシア、コーンスターチもしくはゼラチン等の結合材;リン酸ジカルシウム等の賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等の分解試薬;ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;およびスクロース、ラクトースもしくはサッカリン等の甘味料を添加しても良く、ペパーミント、ウィンターグリーン油、もしくはチェリー香料等の香料を添加しても良い。投与ユニット形態がカプセルである場合には、上記のタイプの材料に液状キャリアを含んでも良い。種々の他の材料が、コーティングとして、あるいは投与ユニットの物理的形態を修飾するために含有されてもよい。例えば、タブレット、丸薬もしくはカプセルを、セラック、糖、またはその両方で被覆しても良い。シロップまたはエリクサが、活性化合物、甘味料としてスクロース、防腐剤としてメチルおよびプロピルパラベン、チェリーまたはオレンジの香料等の着色料および香料を含んでも良い。もちろん、あらゆる投与ユニット形態の調製に用いられる全ての材料は、薬学的に純粋で、用いられる分量で実質的に無毒であるべきである。さらに、活性化合物を、放出持続調製物および薬剤に取り込まれてもよい。
【0044】
ここで用いられる“薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤”とは、あらゆる、そして全ての溶剤、分散媒体、コーティング、抗菌および抗カビ剤、等張および吸収遅延剤等を含む。このような媒体および試薬の薬学的活性物質における使用は当該技術分野において周知である。活性成分に適さない従来の媒体以外は、治療組成物においてそれらを使用することが考えられる。補足的活性成分も組成物中に取り込むことができる。
【0045】
投与しやすく、かつ、一定量で投与できる投与ユニット形態をとる非経口組成物を調剤することが特に有利である。ここで用いられる投与ユニット形態とは、処置される哺乳動物への一回の投与に適した物理的に独立したユニットを指す。
【0046】
各ユニットは、必要とされる薬学的キャリアとともに、所望の薬学的効果を生じるように計算された所定量の活性剤を含む。本発明の新規の投与ユニット形態についての明細は、(a)活性剤の独特の特徴および達成される特定の治療効果と、(b)ここで詳細に記載したように、健康が害される疾患状態にある患者における疾患を治療するための活性物質等を含む当該技術分野における固有の限定によって決められ、これらに直接的に依存する。
【0047】
主な活性成分は、都合よくかつ効果的な投与のために、上記のような投与ユニット形態で適切な薬学的に利用できるキャリアと共に有効量で調合される。ユニット投与形態は、たとえば、0.5μg〜約2000mgの範囲の量で主な活性化合物を含むことができる。比率で表すと、活性化合物は一般的に約0.5μg〜約2000mg/mlキャリアで存在する。補足的活性成分を含む組成物の場合には、投与量は、通常の投与量および前記成分の投与方法を参照して決定される。
【0048】
本願発明の別の態様は、キメラペプチドに対する抗体に向けられている。このような抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであってもよく、Mタンパク質に対して自然に生じた抗体から選択されても、また、キメラペプチドに対して特異的に生じたものであってもよい。後者の場合には、最初に、ペプチドをキャリア分子と結合する必要があるかもしれない。本願発明の抗体および/またはキメラペプチドは、特に免疫治療および予防接種に使用することができ、感染の診断、または予防接種もしくは治療体制の進行を観察するための道具として用いることもできる。
【0049】
例えば、キメラペプチドは、Mタンパク質に対して自然に生じた抗体を調べるために用いることができる。あるいは、特異的抗体はMタンパク質を調べるために用いることができる。このようなアッセイ技術は、当該技術分野において周知であり、例えば、サンドウィッチアッセイやELISAを含む。
【0050】
本願発明のこの態様に基づいて、キメラペプチドはMタンパク質に対する抗体を調べるのに特に使用可能であり、連鎖球菌属の感染を検出する診断プロトコルを提供する。また、血清、唾液、組織および組織抽出物等の生物学的サンプルを、Mタンパク質について、キメラペプチドに対して生じた抗体を用いて直接的に調べることができる。
【0051】
従って、抗体−キメラペプチド複合体を形成するのに十分な時間および条件下で有効量のキメラペプチドを結合する抗体と、患者の生物学的サンプルとを接触させ、次いで前記複合体を検出することを含む、患者の連鎖球菌属の感染の診断方法を提供する。
【0052】
患者の血清、組織、組織抽出物もしくは他の体液中のMタンパク質抗体の存在を、米国特許第4016043、4424279および4018653に記載されているような広範囲の免疫アッセイ技術を用いて検出することができる。これは、非競合型の、一および二つの両方の部位の、すなわち“サンドウィッチ”アッセイと、慣例の競合結合アッセイを含む。サンドウィッチアッセイは、最も使用でき、かつ一般に用いられるアッセイであり、本願発明においても使用することが望ましい。多数の種類のサンドウィッチアッセイ技術が存在し、その全てを本願発明に取り込む。簡単に、典型的な先のアッセイでは、キメラペプチドを固相に固定して最初の複合体を形成し、Mタンパク質抗体について調べるサンプルをその結合分子と接触させる。インキュベーションに適した時間、すなわち、キメラペプチド−抗体の第二の複合体を形成するのに十分な時間でインキュベーションする。検出可能なシグナルを生じうるレポーター分子でラベルされた抗イムノグロブリン抗体を添加して十分にインキュベートして、キメラペプチド−抗体−ラベルされた抗体の第三の複合体を形成させる。全ての未反応の物質を洗浄し、レポーター分子によって生じるシグナルを観察することによって、第一抗体の存在を調べる。その結果は、視認できるシグナルを単に観察することによっても、あるいは、既知の量のハプテンを含む対照サンプルと比較することによっても定量することができる。先のアッセイの変化は、サンプルとラベルされた抗体の両方を結合抗体に同時に添加する同時アッセイ、もしくは、ラベルされた抗体と調べるサンプルを最初に結合させ、インキュベートして、結合抗体に同時に添加するリバースアッセイを含む。これらの技術は当業者に周知であり、小さい変更の可能性は容易に明らかである。類似したアプローチをMタンパク質の検出に適用してもよい。用いられる抗体は、モノクローナルであっても、ポリクローナルであってもよい。
【0053】
固相基質は、典型的にガラスまたはポリマーであり、最も一般に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルもしくはポリプロピレンである。固相支持体は、チューブ、ビーズ、円盤もしくはミクロプレート、あるいはイムノアッセイを行うのに適したあらゆる他の表面の形態をとることができる。結合方法は当該技術分野で周知であり、一般的に架橋結合、共有結合、もしくは不溶性キャリアに分子を物理的に吸着することからなる。
【0054】
本願明細書で用いられる“レポーター分子”とは、その化学的性質により、抗原−結合抗体を検出する分析的に同定可能なシグナルを生じる分子を意味する。
【0055】
検出は定量的であっても定性的であってもよい。この種のアッセイで最も一般的に用いられるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア(fluorophores)、もしくは放射性核種含有分子(すなわち、放射性同位元素)である。酵素イムノアッセイの場合には、グルタルアルデヒドもしくは過ヨウ素酸塩によって、酵素を第二抗体に接合する。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に容易に利用できる広範囲の種々の接合技術が存在する。一般的に用いられる酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼ等を含む。特異的な酵素と共に用いられる基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解により、検出可能な色の変化を生じるように選択される。また、蛍光生成物を生じる蛍光基質を用いることもできる。
【0056】
また、フルオレセインやローダミン等の蛍光化合物を、抗体の結合力を変えずに抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射して活性化した際に、蛍光色素ラベルされた抗体が光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導し、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色の光を発する。EIAでは、蛍光ラベルされた抗体は第一抗体−ハプテン複合体に結合する。未結合試薬を洗浄した後に、残存した3つの複合体を適切な波長の光に曝し、観察された蛍光が関心のハプテンの存在を示す。免疫蛍光法およびEIA技術は共に当該技術分野でよく確立されており、現行の方法では特に好ましい。しかしながら、放射性同位元素、化学発光分子もしくは生物学的発光分子等の他のレポーター分子も用いることができる。必要な目的に合うように方法をどのように変えるかは、当業者には容易に明らかであろう。キメラペプチドをラベルするため、並びにMタンパク質抗体の検出に直接的に同じものを使用するために、前述のことが用いられることも明らかであろう。
【0057】
本願発明のさらなる態様は、GASに対するワクチンとして使用される医薬の製造において記載されるキメラペプチドの使用である。
【0058】
関連する実施態様では、本願発明は、GASに対するワクチンとして使用できることが記載されたキメラペプチドを含む試薬を提供する。
【0059】
本願発明を、以下の非限定的な図面および実施例によってさらに記載する。以下の一および三文字略号をアミノ酸残基に用いた。
【0060】
【表1】

【実施例】
【0061】
実施例1
化学薬品
以下の実施例で用いられる全ての化学薬品および溶剤は、別に言及しない限り分析用である。ポリスチレン(1%v/vジビニルベンゼン)p−メチルベンズヒドリルアミンヒドロクロリド樹脂(0.81meq/gまたは樹脂置換)、tert−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)アミノ酸、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、トリフルオロ酢酸(TFA)をAuspep(オーストラリア)から購入した。
【0062】
実施例2
患者
原住民患者であって、あるものは現在もしくは過去においてRF/RHDの経歴をもつ、オーストラリアのノーザンテリトリーの連鎖球菌属の風土の地域の居住者を研究した。これらの患者の90%以上が、p145に対する未変性に生じる抗体を備えていることが見いだされた(Pruksakorn ら,1994a)。ドナーからの血清は、使用まで−20℃で貯蔵した。
【0063】
実施例3
マウスp145に応答することがわかっているB10.BRマウス(Animal Resources Centre,Willetton,Western Australia)を免疫化の研究のために用いた。
【0064】
実施例4
ペプチド合成
ペプチドを、Houghten(1985)の同時多重ペプチド合成“ティーバッグ”法を用いた手動の固相技術で合成した。出発樹脂はp−メチルベンズヒドリルアミンヒドロクロリドであり、慣例的なN−tert−ブチルオキシカルボニル(t−Boc)化学物質を用いた(Merrifield,1963)。全てのアミノ酸基をそのαアミノ位においてt−Boc基で保護し、以下の側鎖保護基、すなわちベンジルエステル(Glu、Asp)、2−クロロベンジルオキシカルボニル(Lys)、ベンジル(Ser)、トシル(Arg)を用いた。
【0065】
アミノ酸カップリングを、ジクロロメタン中の1,3−ジイソプロピルカルボジイミドを用いて行い、t−Boc基を55%v/vのTFA/ジクロロメタンを用いて各サイクルにおいて除去した。N−ヒドロキシベンゾトリアゾールをAsnとGlnを用いたカップリングに添加した。ペプチドを、フッ化水素で処理して樹脂から切断し、ジエチルエーテルで沈降させ、10%v/v酢酸から凍結乾燥させた。
【0066】
粗なペプチドを、水中に2%v/vアセトニトリルから100%v/vアセトニトリル(両方の溶剤が0.1%v/vTFAを含む)の線形勾配を使用した半調製用C18逆相HPLCカラム(Biorad)で精製した。精製されたペプチドは逆相HPLCおよびフライトマススペクトロメトリー(flight mass spectrometry)のレーザー脱着時間(LaserMat,FinniganMat,UK)で調べたところ均一であった。
【0067】
本願発明に基づいて合成されたペプチドは、表1A、1Bおよび1Cに示されている。ペプチド144、145および146は、Mタンパク質の保存されたC末端領域内に含まれた重複ペプチドである。Jconは、7つの繰り返し酵母タンパク質、GCN4に基づいたモデルペプチドである。ペプチドJ1−J9はJconペプチドとp145に基づいたハイブリッドペプチドである。145.1−145.5およびJI1−JI9は、p145配列内部の短い配列を示す。ペプチド169と171は、それぞれヒト心筋ミオシン(Liewら,1990)およびヒト骨格筋ミオシン(Saezら,1986)から誘導され、これらのタンパク質とp145との間の優れた相同性を示した。
【0068】
実施例5
T細胞増殖アッセイ
マウスのT細胞を刺激するために、動物を30μgの乳濁したペプチドで尾の付け根において免疫し、排出されたリンパ節細胞を8日目に採取して、先に記載した抗原でin vitro で刺激した(Pruksakornら、1994b)。4日後、増殖の程度を調べるために0.5μCiの3H−チミジンを培養に加えた。リンパ球の活性化を、刺激インデックス[SI]を評価することによって測定した(特異的ペプチドの存在下における増殖/ペプチドを欠いた増殖)。
【0069】
ヒトペプチド特異的T細胞増殖を、ペプチドを含む(もしくは対照のためにペプチドを含まない)ヒト末梢血液リンパ球(PBL)を培養し、かつ、記載の通りに(Pruksakornら,1994b)、6日後にリンパ球の増殖を評価することによって調べた。リンパ球の活性化を、マウスアッセイについて上述したようにして調べた。
【0070】
実施例6
タンパク質配列の比較
ヒト心筋ミオシンとヒト骨格筋ミオシンのタンパク質配列を、GCG(Wisconsin)プログラム、BESTFITを用いてp145について20アミノ酸配列との相同性を調べた。p145と相同な領域は二つのペプチド169と171(表1C)で表されている。
【0071】
実施例7
円偏光二色性(CD)スペクトル(CIRCULAR DICHROISM SPECTRA)
これらは、室温で、Aviv 62DS CDスペクトロメーター(Lakewood,NJ)を用いて記録された。ペプチドは、10mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.0、50%v/vトリフルオロエタノール中に20mMもしくは40mMの濃度とされた。データは、250nm〜190nmの間で1nmごとに収集した。楕円率は、平均残基楕円率[Θ]として表示されている。
【0072】
実施例8
マウス抗血清の調製
B10.BRおよびB10.D2マウスを尾の付け根において皮下に免疫した(Pruksakornら,1992)。PBSに溶解され完全フロイントアジュバントに乳濁された30μgのペプチドを含む50μlの全量を与えた。ペプチド145.1−145.5を、免疫の前に、グルタルアルデヒド固定を用いてジフテリアトキソイド(DT)に接合させたが、他の全てのペプチドは未接合のまま投与された。マウスにPBS中の30μgの接合ペプチドを与えた。
【0073】
実施例9
ELISA ELISAのプロトコルは先に記載されている(Pruksakornら,1992;1994a)。ペプチドを、ペプチド145.1−145.5を除いて0.5μg/mlの濃度で被覆し、JI1−JI9は1μ9/mlを用いた。
【0074】
正常なマウス血清の平均もしくはヒト血清のバックグラウンド(血清含まず)以上の3つの標準偏差より大きければ意味があるとして、マウスおよびヒト血清に対する力価を計算した。ペプチド特異的抗体枯渇アッセイを、特異的結合がほぼ消耗されるまで、ペプチド(p145)被覆プレート中でインキュベーションすることによってヒト血清を用いて行った。負の対照として、血清を、無関係の住血吸虫属(schistosoma)ペプチドで被覆されたプレート中で同様にインキュベートした。p145を欠いた、もしくは住血吸虫属を欠いた血清を、テストペプチドに対する抗体の存在について調べるためにテストペプチドで被覆されたプレートに移した。全ての反応をOPD基質キット(Sigma Chemical Co)で現像し、450nmにおいて吸収を読みとった。
【0075】
実施例10
オプソニン作用のペプチド阻害
ヒト血清を、60℃、15分間で、加熱不活性化した。GASと新鮮なドナーの全体のヘパリン処理した血液とを添加する前に30分間100μgのペプチドもしくはPBSと共にインキュベートした。阻害率を、ペプチドの存在および非存在下で生育するコロニー形成ユニットと無添加ヒト血清の対照とを比較することによって計算した。
【0076】
実施例11
キメラペプチドの設計原理
もしエピトープがαヘリックスコイルドコイル等の特定のタンパク質構造コンホメーション内に存在することがわかっているなら、このコンホメーションを保持するようにモデルペプチドを合成することができる。このペプチドはフレームワークペプチドとなる。αヘリックスコイルドコイルに保持するモデルペプチドが研究されている。平行な二本鎖コイルドコイルモチーフの設計において、7つの一般的な考察が重要である(cohen とparry,1990)。aとd位は、大きな非極性残基を備え、b、cおよびf位は、一般的に極性かつ帯電しており、eおよびg位は、通常鎖間イオン相互作用を支持する(すなわち、Glu/Lysの酸/塩基対)。aおよびd位がVとL、もしくはIとLに占有されたときには、コイルドコイルダイマーが支持されるが、IとIはトリマーの形成を支持し、LとIはテトラマー相互作用を支持することもわかっている(Harbury ら,1994)。
【0077】
モデルαヘリックスコイルドコイルペプチドはGCN4ロイシンジッパーに対応するペプチドの構造に基づいて設計された(o′sheaら 1989;1991)。このペプチドは7残基ロイシン繰り返し(d位)とa位に共通のValを備えている。最初の7つは以下の配列を含む。
【0078】
MKQLEDK(SEQ ID NO:3)
【0079】
この配列は安定なコイルドコイル7つの繰り返しに見られるいくつかの特徴を含む。これらは、eおよびg位に酸/塩基対(Gly/Lys)を含み、b、cおよびf位に極性基を含む(Lupas ら(1991)の推定と一致する)。モデル7つの繰り返しは、GCN4ロイシンジッパーペプチドの共通の特徴から誘導される。
【0080】
VKQLEDK(SEQ ID NO:2)
【0081】
繰り返しがモデルペプチド(VKQLEDK)nを与えた場合に、αヘリックスコイルドコイルを形成する能力を備える。4つの7つの繰り返しからなるこのようなモデルペプチドは(GCN4)4と称される[図1A]。研究中の配位エピトープの重複フラグメントは、モデルコイルドコイルペプチドの内部に埋め込まれ、7つの繰り返しと共に登録され、キメラペプチドを与える。
【0082】
実施例12
連鎖球菌属のMタンパク質ペプチド
連鎖球菌属のMタンパク質ペプチドp145を、先に記載されているように調製し(Pruksakornら,1992,国際特許出願第 PCT/AU93/00131[WO93/21220])、表1Aおよび1Bに示された切断されたフラグメント145.1、145.2、145.4、 145.5、145.12、145.13、145.14(pruksakorn,1994)を調製した。
【0083】
ペプチドp145の領域における連鎖球菌属のMタンパク質の配列を、コイルドコイル7つの繰り返しについて分析し、推定される7つの位置aからgを指定した(図1B)。ペプチドp145を1残基が重複する9つの12マーペプチドに分け、隣接するGCN4ペプチドを添加することによって、図1Cに示すように9つのJキメラペプチド(J1−J9)を与えるために(GCN4)4に埋め込んだ。同じ残基がGCN4モデルペプチドとp145配列の両方に見いだされた場合は常に、保存的アミノ酸置換をJペプチド中に取り込んだ。対照ペプチド(Jcon)を、図1Aに示されたGCN4モデルペプチドに基づいて合成し、これは、前記の全ての保存的アミノ酸置換も含有されている(図1D)。
【0084】
キメラペプチドJ1−4および対照ペプチドJconを、HPLCで精製した。ペプチドJ5−9を合成されたものとして使用した。
【0085】
実施例13
ペプチド145の免疫優勢エピトープは配座である
p145内部の重複する8マーおよび12マー(ペプチド145.1−145.5、JI1、JI5、JI7(表1Aおよび1B))を用いてp145内部の最小エピトープをマップすることを最初に試みた。ジフテリアトキソイドに接合した二つの短いペプチド(145.1、145.5)を用いるとp145特異的免疫応答をマウスに生じさせることができるにも関わらず、マウス抗p145抗血清は、重複するp146(表1C)も、p145内部の短いペプチドのいずれをも認識しなかった(表2)。結果は、免疫するペプチドがジフテリアトキソイドに接合されているか未接合であるかによらず類似していた。GASに高度に曝される地域に生活する90%以上のヒトがp145に対する抗体を備えているが、p145に対して高い力価(>6400)を備えたヒト血清の大半は、より短いペプチド(JI1−JI9)と反応しなかった(表1B、3)。これらの結果は、p145の内部に一つ以上の線形エピトープがあるが、p145で免疫した後もしくはGASに対する未変性の暴露の後に認識される優勢配位エピトープもあることを示している。円偏光二色性は、p145がヘリックス傾向を備えるが(50%TFE中)、短い12マーペプチド(JI1:LRRDLDASREAK[SEQ ID NO:23])は備えていないこと(図4)ことを示し、p145によって示される免疫優勢エピトープは配位であることを示唆した。
【0086】
実施例14
配位エピトープのマッピング
疎水性およびヘリックス形成残基を備えたMタンパク質に類似した7つの周期性を示す無関係のタンパク質を用い、かつ、他のペプチドの内部にp145の配列を埋め込むための方法を開発した。選択されたペプチドはGCN4のロイシンジッパーモチーフ、酵母のDNA結合タンパク質に基づくものである(o′ sheaら,1991)。GCN4に存在する7つの繰り返しの共通配列は、Val−Lys−Gln−Leu−Glu−Asp−Lysであり、この繰り返しに基づく28アミノ酸ペプチドは、“Jcon”と称されるペプチドを与えるためにいくつか置換して設計された(表1B)。ペプチド145配列の12アミノ酸ウィンドウは、あらゆる潜在的ヘリックス構造を保存するようにJconペプチドに挿入された。このウィンドウは、完全なp145配列を示す9つのペプチド(J1→J9)を与えるように一度に一つの残基がずれている。対応する12アミノ酸挿入配列(JI1→JI9)も、対照とする目的のために合成した(表1B)。
【0087】
p145は、Jキメラペプチドに対するある程度の反応性を示した(図2)。
【0088】
これらのJペプチドのあるもの(すなわちJ7,J8)は、上記(それぞれ、145.12、145.13、145.14)と同じ12マー配列を含むが、GCN4フレームワーク内部にある。ある血清は、p145のN末端残基を示すJペプチドと反応し(すなわちJ1、J2)、あるものはC末端残基と反応し、そしてあるものは両方と反応した(すなわちJ1、J2、J4、J7、J8)(図2)。どの血清もJcon配列とは反応しなかった。
【0089】
高力価145抗体を含むヒト血清は、ペプチド特異的抗体の“フィンガープリント”を与えるJペプチドに対する特異性の類似したスペクトルを示した。全てのヒト血清はJ2と反応した(図3)。二つの血清は、全てのJペプチドおよびJconペプチドと反応した。これらの場合では、Jペプチドに対する特異的反応が、GCN4様構造に対する交差反応性によって覆い隠されるかもしれない。
【0090】
全ての残りのヒト血清は、p145配列に特異的応答を示すGペプチドと反応できなかった。
【0091】
高い連鎖球菌属の暴露の地域にすむヒトおよびp145で免疫されたマウスからの血清を、これらのキメラペプチドを結合する能力について調べた。6400以上のペプチド145に対する力価を備えた23人の血清を調べた(表3)。これらの血清の19の抗体が、同様に高い力価で一つ以上のキメラペプチドを結合したが、重複する8マーペプチド145.1→145.5のいずれも全く認識しなかった。4つの血清が、>3200の力価で、9つの重複する12マー試験ペプチド(JI1→JI9)の一つ(JI3)と反応した(表3)。p145に対する抗体を含まない11の試験血清は、あらゆるキメラペプチドに対する抗体を含んでおらず、p145と反応する抗体がキメラペプチドとも反応していることを強力に示唆した。抗ペプチド145+ve抗血清によって最も広く認識されたキメラペプチドはJ2であり、J1とJ3はいくらか認識された(表3)。p145特異的抗体がJ2を認識していることを確かめるために、p145吸収研究を行い、p145涸渇ヒト血清が、本来認識されたJ2キメラペプチドに結合する能力を失ったことが示された(表4)。しかして認識された核心の残基は、RRDLDASREAKK[SEQ ID NO:24]からなるが、ある人(J1またはJ3ではなくJ2を認識したヒト)では、核心の残基はRDLDASREAK[SEQ ID NO:25]であった。この距離はαヘリックスの3と3.3ターンの間に対応する。抗体フットプリントは、ペプチドのヘリックス保持によってもたらされる不連続な残基を認識するようである。円偏光二色性は、キメラペプチドJ1→J4が50%TFE中でヘリックス形成の傾向を備えることを示した。
【0092】
ミオシンもコイルドコイル分子であり、ヒトの筋肉から誘導されたペプチドがp145と類似した配列を備えているため(表1B)、これらのヒト血清は交差反応エピトープを認識する可能性を備えている。たった二つの血清しかこれらのペプチド(169と171)と反応しなかったので(表3)、p145およびJ2を認識する抗体とp169およびp171との間の交差反応はほとんどない。
【0093】
実施例15
配座が維持されたペプチドJ2はオプソニン作用を備えた抗体と結合することができる
ペプチドJ2に特異的なヒト抗体がオプソニン作用を仲介するか否かを決めるため、遊離したJ2ペプチドがヒト抗血清によるオプソニン作用を阻害できるか否かを調べた。このアッセイは、p145そのものがオプソニン作用を備えたヒト抗体の標的であることを調べるために用いられた。オプソニン作用に与える影響を調べるためにp145に対する高力価の抗体を含む血清にJ2(100μg/ml)を添加し、J2に対する抗体を含有した3つの血清のうちの3つによるオプソニン作用を阻害することがわかったが(表5)、抗J2抗体を含まない血清ではそのようにならなかった。非連鎖球菌属の配列をコピーする20マーの無関係のペプチドは、オプソニン作用を阻害しなかった。
【0094】
実施例16
ペプチド145上のT細胞エピトープは、B細胞エピトープから区別することができる
T細胞が、同じ領域のペプチドを決定的な抗体結合ペプチドとして認識するか否かを調べるために、応答するB10.BRマウスをp145で免疫し、排出されたリンパ節細胞をp145,J2およびJI2で刺激した。これらはほとんどJ2およびJI2を認識しなかった(表6)。21人のRHD原住民患者および8人の対照原住民患者の末梢血液T細胞もペプチドJ2に対する反応を試験した。対照群からはペプチドに対して全く反応がなかった、そしてペプチドJ2には応答しなかった。
【0095】
実施例17
P145、J2およびJ7に対するヒト抗体は、ヒト好中球の存在下において、グループA連鎖球菌属をオプソナイズ(opsonise)する
p145に対する抗体を、p145の多重コピーを示すカラムを用いて親和精製した。プロテインA精製抗体をカラムに通して、p145特異的抗体を溶出した。カラムを通す前に、p145を認識した抗体と破傷風トキソイドをイムノグロブリン調製に存在させた。通過後、p145に対する抗体はまだ存在するが、破傷風トキソイドに対する抗体はもはや検出できなかった。これらの抗体と、p145への反応性のない等量のヒト抗体の対照調製物をオプソニン作用アッセイに用いた。表10に示されているように、精製された抗p145抗体は、対照イムノグロブリンと比較して58〜94%(平均80%)の間でタイプ5グループA連鎖球菌属のコロニーの総数を減少することができた。
【0096】
種々の合成ペプチドをこれらの精製された抗体に添加し、オプソニン作用に与える影響を調べた(表11)。使用されたペプチドは、p145,J2,J7および住血吸虫の配列をコピーする非特異的ペプチドであった。遊離したp145は、非特異的ペプチドと比べて73−88%(平均83%)でオプソニン作用を阻害することができ、遊離のJ2は89−93%(平均92%)でオプソニン作用を阻害することができ、遊離のJ7は82−86%(平均84%)でオプソニン作用を阻害することができた。これらのデータは、p145,J2およびJ7に特異的なヒト抗体がグループA連鎖球菌属をオプソナイズすることができることを示している。
【0097】
実施例18
αヘリックスコイルドコイルタンパク質内部のエピトープをマッピングする試みを説明するために、Caenorhabditis elegans パラミオシンタンパク質内部のある領域を詳細に研究した。他のコイルドコイル含有タンパク質に共通するように、ネマトーダパラミオシンは、分子の大部分がコイルドコイルコンホメーションをとることを強力に示唆する7残基の周期性を含む。多くの無脊椎動物の太いフィラメントの中心タンパク質であるパラミオシンは、C.elegans に単一遺伝子unc−15によってコードされている(waterston ら,1977)。いくつかのunc−15変異体は、高度に組織化されていない筋構造において見られる変わった表現形を有する。これらの一つである対立遺伝子e1215は、弱い未修飾の表現形を備えていることが示され、遺伝子の解析は809QからRへの一つのアミノ酸置換を示唆した(Gengyo-Ando とKagawa,1991)。e1215変異体のパラミオシンと反応しないモノクローナル抗体(mAb)NE1−6B2によって認識されたエピトープは、このポイント変異にマッピングされた。
【0098】
用いられたアプローチは、αヘリックスコイルドコイルコンホメーションエピトープから誘導された重複ペプチドを用いて、類似した未変性のコンホメーションを備えた完全に無関係のタンパク質から誘導されたヘリックス隣接ペプチド間にこれらのペプチドを埋め込むことである。得られたキメラペプチドを、免疫活性、すなわち抗原性(mAbによる認識)もしくは免疫原性(適切な抗体応答の生成)について調べることができる。C.elegans パラミオシンタンパク質であるunc−15の場合には、構造はαヘリックスコイルドコイルであると考えられ、このコンホメーションはmAbによって認識されるエピトープに関して最適な免疫学的応答をするために存在する必要があるのかもしれない。unc−15に基づいた一連のキメラペプチドは、mAb NE1−6B2によって認識された最小B細胞エピトープの細かいマッピングを可能にした。このアプローチは、配位エピトープをマッピングし、かつワクチン候補として用いるための最小エピトープを設計する可能性を備えている。
【0099】
(i)キメラペプチドの設計原理
もし、エピトープがαヘリックス等のある特定のタンパク質構造コンホメーションの内部に存在することがわかっているなら、このコンホメーションを保持するようにモデルペプチドを合成することができる。このペプチドはフレームワークペプチドとなる。αヘリックスコイルドコイルに保持するモデルペプチドが研究されている。平行な二本鎖コイルドコイルモチーフ(a-b-c-d-e-f-g)nの設計において、7つの一般的な考察が重要である(Cohen と Parry,1990)。aとd位は、大きな非極性残基を備え、b、cおよびf位は、一般的に極性かつ帯電しており、eおよびg位は、通常鎖間イオン相互作用を支持する(すなわち、Glu/Lysの酸/塩基対)。aおよびd位がVとL、もしくはIとLに占有されたときには、コイルドコイルダイマーが支持されるが、IとIはトリマーの形成を支持し、LとIはテトラマー相互作用を支持することもわかっている(Harbury ら,1994)。
【0100】
モデルαヘリックスコイルドコイルペプチドはGCN4ロイシンジッパーに対応するペプチドの構造に基づいて設計された(o′Sheaら 1989;1991)。このペプチドは7残基ロイシン繰り返し(d位)とa位に共通のValを備えている。最初の7つは以下の配列:MKQLEDK(SEQ ID NO:3)を含む。この配列は安定なコイルドコイル7つの繰り返しに見られるいくつかの特徴を含む。これらは、eおよびg位に酸/塩基対(Gly/Lys)を含み、b、cおよびf位に極性基を含む。モデル7つの繰り返しは、GCN4ロイシンジッパーペプチドの共通の特徴から誘導される:VKQLEDK(SEQ ID NO:3)。繰り返しがモデルペプチド(VKQLEDK)nを与えた場合に、αヘリックスコイルドコイルを形成する能力を備える。研究中の配位エピトープの重複フラグメントは、モデルコイルドコイルペプチドの内部に埋め込まれ、キメラペプチドを与える。
【0101】
(ii)unc−15の重複フラグメントをマッピングする未変性ペプチドエピトープ
mAb NE1−6B2によって認識されたエピトープの領域におけるC.elegans unc−15パラミオシンタンパク質の配列を、コイルドコイルの7つの繰り返しについて分析し、推定される7つの位置aから9を指定した(表7A)。
【0102】
unc−15タンパク質内部のmAb NE1−6B2エピトープをマップする最初の試みにおいて、1つのアミノ酸残基がずれた重複する21マーのペプチドを合成し(表7B)、ELISAでアッセイした。ペプチドba39は、最も高度なELISA活性を備えており、21マーのペプチドがエピトープの認識に十分な長さであることを示唆している。モノクローナル抗体の反応性は、ペプチドba37〜c9に制限された(図5)。ペプチドba36のmAbの負の反応性は、タンパク質のC末端に対するエピトープの範囲を描写し、エピトープ内部の809Q残基の必要性を確実にする(Gengyo-AndoとKagawa,1991)。抗体反応性は、ペプチドがN末端から切断されるにつれて減少し、ペプチドc9では弱く認識されるのみであり、このことは、最小エピトープ残基がペプチドba37とc8の重複の間の14マーペプチドADRLTEKLNIQKRQ[SEQ ID NO:26]であることを示唆している。しかしながら、最大の反応性はペプチドba39に見いだされ、ずっと長い21マーペプチドMAQDTADRLTEKLNIQKRQLA[SEQ ID NO:43]であり、最適な未変性のエピトープであると考えられる。
【0103】
(iii)unc−15のキメラペプチドエピトープマッピング
mAb NE1−6B2エピトープを含むunc−15タンパク質領域は、5残基ずつずれた6つの15マーペプチドに分けられており、ヘキサマーヘリックス隣接ペプチドの添加によって、キメラペプチドbd10,bd11,bc18,bc23,bd14およびbd15を与えるべくαヘリックスコイルドコイルフレームワークに埋め込まれている(表8A)。この変化するウィンドウの15残基は、αヘリックスの4つ以上の完全なターンを含む(ターン当たり3.5残基)。ペプチドbc18,bc23およびbd14は、必須残基809Qを含む。
【0104】
ヘリックス隣接ペプチドは、模範的なαヘリックスコイルドコイルペプチド(VKQLEDK)nに基づいており、unc−15のコイルドコイルタンパク質の7つの繰り返し周期を備えたフレームに添加された。ヘリックスモデルペプチドとunc−15配列の両方に同じ残基が見いだされた場合には、保存アミノ酸置換をキメラペプチドに取り込んだ。これらの置換は、正しいヘリックスコイルドコイルコンホメーションを確実にするように設計された(Cohen と Parry,1990)。以下の置換を用いた:位置a、VからI(疎水性残基、ダイマー支持);b、KからR(類似したチャージの官能基);c、QからN(同じ官能基);d、LからA(疎水性残基);e、EからQ(類似したサイズの残基);f、DからE(同じチャージの官能基);9、KからR(類似したチャージの官能基)。これらの置換残基の全ては、コイルドコイルタンパク質のそれぞれの位置において共通して見いだされる(Lupas ら,1991)。キメラペプチドbc18のみが、mAb NE1−6B2によるELISAで認識された(図6)。この粗なエピトープマッピングは、ペプチドbd11とbc23から誘導された790Vと814Eの間に25マーペプチドが重複し、エピトープを含むことを示唆した。(VKQLEDK)nモデルペプチドと(VKQLEDK)3(ペプチドba48)に基づく対照ペプチドav85とav86は、mAb NE1−6B2に認識されなかった。
【0105】
unc−15タンパク質は、より正確にmAb NE1−6B2エピトープをマップするように1残基ずつずれた15マーペプチドに分けられている。表8Bに挙げたキメラペプチドを与えるように、各フラグメントをヘリックス隣接ペプチド内部に埋め込んだ。mAb NE1−6B2との最大のELISA反応性を、ペプチドbc20に対して得た(図6)。キメラペプチド内部に埋め込まれたunc−15ペプチドのC末端に908Q残基を移動(ペプチドbc17)およびN末端に798R残基を移動(ペプチドbc22)した後は、活性は最小であった。
【0106】
このことは、残基798Rと809Qとの間に最小エピトープ、12マーペプチド:RLTEKLNIQKRQ[SEQ ID NO:27]があることを示している。
【0107】
このエピトープは上記の未変性のエピトープマッピングから調べられたものより2残基短い(図5)。
【0108】
(iv)unc−15のキメラペプチド最小エピトープマッピング
キメラペプチドアプローチを用いて、mAbNE1−6B2に認識される最小エピトープをよりよく調べるために、ペプチドbc20内部に含まれた最適エピトープを切りつめた。合成されたキメラペプチドは表9Aに挙げられている。
【0109】
N末端の切りつめ(ペプチドbe39)と同様に、C末端の埋め込まれたエピトープの切りつめ(ペプチドbd3、bd4)は、ELISA活性を低減させた(図7A)。エピトープのNまたはC末端の残基のさらなる切りつめ(ペプチドbd5,bd6,c4,c5)は、耐性がなかった。しかしながら、残基801Eから811Aを含むペプチドc6は、まだELISAに反応性があった。しかして、重複フラグメントエピトープマッピングは、RLTEKLNIQKRQが最小エピトープであることを示唆したが、切りつめマッピングは、この領域に隣接する残基797D、810Lおよび811Aが重要であることを示している。これは、配列DRLTEKLNIQKRQLA[SEQ ID NO:95]が最小の最適なエピトープであることを定義する。さらに、最適なエピトープ797Dから811Aからなる15マーペプチド(ペプチドc1)は、キメラペプチドbc20に埋め込まれた同じペプチドより低い度合いに認識された。これは、最大の反応性を確実にするために隣接領域が必要であることを強調する。
【0110】
ELISA反応性のためにmAb NE1−6B2エピトープに要求される決定的な残基のマッピングを、各残基の保存的置換によって行った。置換マッピングはキメラペプチドbc20(最適なエピトープを含む)に基づいており、合成されたペプチドは表9Bに挙げられている。ヘリックスフレームワーク残基を、上記モデルペプチドルール;位置a,V;b,K;c,Q;d,L;e,E;f,D;9,Kに基づいてエピトープ残基に代えて置換した。フレームワークペプチドとエピトープ配列との間に同じ位置に同一の残基が見いだされる場合には、保存的置換残基を置換した(上記キメラペプチドエピトープマッピングを参照)。
【0111】
置換が、それぞれペプチドbe40,be43,be47,be50およびbe51の残基798R,901E,805I,808Rおよび809Qに対してなされた場合には、ELISA反応性は廃止された(図7B)。エピトープ反応性の減少は、二つの別の置換、すなわちペプチドbe39とbe53における797Dと811Aに対しても見いだされた。興味深いことに、802K(KからD)および810L(LからV)における置換は反応性を増大させた。これらの結果は図8Aに示されている。
【0112】
mAb NE1−6B2エピトープを含むunc−15の配列を円筒状ネットとして図示すると(図8B)、全ての決定的な残基がヘリックスの親水性の表面に見いだされる。
【0113】
(v)キメラペプチドの免疫原性
エピトープ特異的抗体反応を誘導する能力を調べるために、Quackenbushマウスをキメラペプチドで免疫した。キメラペプチドbc20を、MCSリンケージを介してジフテリアトキソイドにカップリングさせるためにN末端システイン残基を用いて合成した(ペプチドbd1,CKQLEEKVDRLTEKLNIQKRQLAQLQDKVK[SEQ ID NO:28])。マウスを、ジフテリアトキソイドに接合され、完全フロイントアジュバントに乳濁された125μgのペプチドを用いて腹腔内に免疫した。不完全フロイントアジュバント中の125μgの等価のペプチド−ジフテリア接合体の追加免疫を4週間後に投与した。
【0114】
ペプチドbd1に対して生じた抗血清は、ペプチドbc20を認識したが、ペプチドba39もしくはペプチドc1を認識しなかった(図9)。一方、適切にアミノ酸が置換されたモデルヘリックスペプチドに基づく対照キメラペプチド(ペプチドbd2,CKQLEEKVDRLTEKLNIQKRQLAQLQDKVK)に対して生じた抗血清は、ペプチドbc20を認識したが、ペプチドba39もしくはペプチドc1を認識しなかった。しかして、キメラペプチドbd1を用いて生じた抗体反応は、ペプチドbc20およびba39に見いだされる配位エピトープに対してのみであった。
【0115】
当業者であれば、ここに記載された本願発明に、特に記載されたもの以外の変更および修飾を行うことができることを理解するであろう。本願発明はそのような変化および修飾の全てを含むことが理解される。また本発明は、本明細書に、個々にもしくは集合的に記載もしくは示唆された全ての段階、特徴、組成物および化合物、そして前記段階もしくは特徴のあらゆる二つ以上のあらゆる組み合わせも含む。
【0116】
【表2】

【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
【表5】

【0120】
【表6】

【0121】
【表7】

【0122】
【表8】

【0123】
【表9】

【0124】
【表10】

【0125】
【表11】

【0126】
【表12】

【0127】
【表13】

【0128】
【表14】

【0129】
【表15】

[参考文献]

[配列表]

































【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】キメラペプチドのアミノ酸配列。示された全ての配列は、以下に示された、α−ヘリックスコイルドコイルの7つの繰り返し(a-b-c-d-e-f-g)に関係する。A.α−ヘリックスコイルドコイルGCN4ロイシンジッパーペプチド(o′sheaら.1991)から得られたモデルGCN4ペプチドの配列。B.推定上のコイルドコイル7つの繰り返しをそろえた連鎖球菌属のMタンパク質ペプチドp145(pruksakornら.1992)の配列。C.キメラJペプチド(J1−9)の配列。p145ペプチドの重複する12マーフラグメントが太字で示されている。保存されたアミノ酸残基に下線が付されている。D.対照GCN4モデルペプチドJcon(G)の配列。
【図2】Jペプチドに対する抗p145マウス血清の反応性、反応性は405nmの波長における平均吸収値としてプロットされている。血清は1:100に希釈され、代表値が示されている。ジフテリアトキソイド(DT)に接合した血清を示した。NMS、正常なマウス血清。
【図3】Jペプチドに対する高力価抗p145ヒト血清の反応性。平均吸収値(450nm)は1:100に希釈された血清についてプロットされている。代表的なサンプルが示されている(GBD、MT、MY、FL、TB、MG)。NHS、正常なヒト血清。
【図4】図4は、αヘリックス誘導溶剤、50%のトリフルオロエタノール(TFE)の存在下におけるペプチドの円偏光二色性スペクトル(circular dichroisum spectra)を図示したものである。A,JI1;B,J2;C,Jcon;D,p145。Θ,モル楕円率。ペプチドは、水溶液中ではαヘリックス形態を示さなかった。ペプチドJ1,J3およびJ4も試験され、これらはJ2に似たプロフィールを示した。
【図5】図5は、未変性エピトープマッピングELISAを示す図である。c.elegans unc-15の合成ペプチドフラグメント(表7B)をミクロタイタープレート上に被覆し(ウェル当たり2μg)、モノクローナル抗体(mAb)NE1−6B2と共にインキュベートし、結合抗体を抗マウス抗体と450nmにおけるOPD比色アッセイで検出した。
【図6】図6は、キメラエピトープマッピングELISAを示す図である。モデルヘリックスペプチドに埋め込まれたc.elegans unc-15の重複フラグメント(表8)をミクロタイタープレート上に被覆し(ウェル当たり2μg)、mAb NE1−6B2 と共にインキュベートし、結合抗体を抗マウス抗体と450nmにおけるOPD比色アッセイで検出した。ペプチドbd10、bd11、bc18、bc23、 bd14、bd15は5残基ずつずれている。ペプチドbc17からbc25は1残基ずつずれている。対照ペプチドav85、av86およびba48は、モデルヘリックスペプチド残基のみを含む。
【図7A】Aは、キメラ最小エピトープマッピングELISAを示す図である。モデルヘリックスペプチドに埋め込まれたc.elegans unc-15の切断フラグメント(表9A)をミクロタイタープレート上に被覆し(ウェル当たり2μg)、mAb NE1−6B2と共にインキュベートし、結合抗体を抗マウス抗体と450nmにおけるOPD比色アッセイで検出した。ペプチドc1は、15マーのエピトープのみからなる。対照ペプチドav85、av86およびba48は、モデルヘリックスペプチド残基のみを含む。
【図7B】B は、キメラエピトープ置換マッピングELISAを示す図である。保存された置換によって代わって置換された各残基を備えたbc20から誘導されたキメラペプチド(表9B)をミクロタイタープレート上に被覆し(ウェル当たり2μg)、mAb NE1−6B2と共にインキュベートし、結合抗体を抗マウス抗体と450nmにおけるOPD比色アッセイで検出した。
【図8】Aは、MAb NE1−6B2で認識されたC.elegans unc-15エピトープのマップである。推定上の7つの繰り返し位置aとbは、上記の未変性の unc-15配列を示唆した。mAb NE1−6B2で認識されたエピトープは太字で示されている。Bは、極性表面を示すターン当たり3.5残基を備えたC.elegans unc-15ヘリックスの円筒状のネット(net)を示す。ヘリックスは左から右に走っている。影付きの残基は、mAb NE1−6B2と相互作用する。実線の円は決定的な残基を示し、点線の円は決定的ではない残基である。
【図9】は、キメラペプチドに対する抗体反応のELISAアッセイを示す図である。キメラペプチドbc20、ba39、bd1、bd2およびペプチドc1をミクロタイタープレート上に被覆し(ウェル当たり2μg)、bd1に対するマウス抗血清(抗bd1)もしくはbd2に対するマウス抗血清(抗bd2)、もしくは予め採取したマウスの血清(予め採取)と共にインキュベートした。結合抗体を抗マウス抗体と450nmにおけるOPD比色アッセイで検出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)未変性コンホメーションにおいて配位(構造)エピトープを示す第一のアミノ酸配列;および
(ii)前記第一のアミノ酸配列の未変性コンホメーションと類似するフレームワークコイルドコイルコンホメーションをとり得る第二のアミノ酸配列;
を含むキメラペプチドであって、
前記第一のアミノ酸配列と前記第二のアミノ酸配列とが異なるペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に由来し又は基づき、且つ、前記第一のアミノ酸配列が前記配位エピトープを示すように、第一のアミノ酸配列が第二のアミノ酸配列のフレームワークコイルドコイルコンホメーション内に挿入されているキメラペプチド。
【請求項2】
第二のアミノ酸配列が、αヘリックスコイルドコイルコンホメーションをとる、請求項1記載のキメラペプチド。
【請求項3】
第一のアミノ酸配列が、連鎖球菌属のMタンパク質から誘導された、請求項1記載のキメラペプチド。
【請求項4】
第一のアミノ酸配列が、アミノ酸配列LRRDLDASREAKKQVEKALE[SEQ ID NO:1]、もしくはその類似体(analogues)に由来するB細胞配位エピトープを含む、請求項3記載のキメラペプチド。
【請求項5】
第一のアミノ酸配列が、Caenorhabditis elegans から誘導された、請求項1記載のキメラペプチド。
【請求項6】
第一のアミノ酸配列が、アミノ酸配列CKQLEEKVDRLTEKLNIQKRQLAQLQDKVK[SEQ ID NO:28]、もしくはその類似体(analogues)に由来する配位B細胞エピトープを含む、請求項5記載のキメラペプチド。
【請求項7】
第一のアミノ酸配列が、アミノ酸配列MAQDTADRLTEKLNIQKRQLA[SEQ ID NO:43]に由来する配位B細胞エピトープを含む、請求項5記載のキメラペプチド。
【請求項8】
第一のアミノ酸配列が、アミノ酸配列ADRLTEKLNIQKRQ[SEQ ID NO:26]、もしくはその類似体(analogues)に由来する配位B細胞エピトープを含む、請求項5記載のキメラペプチド。
【請求項9】
第一のアミノ酸配列が、アミノ酸配列RLTEKLNIQKRQ[SEQ ID NO:27]、もしくはその類似体(analogues)に由来する配位B細胞エピトープを含む、請求項5記載のキメラペプチド。
【請求項10】
抗原ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質の一部上の最小エピトープを決定する方法であって、
推定上のエピトープを有する前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質の一部の未変性のコンホメーションを調べること、
前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質の一部の、推定上のエピトープを有するペプチドフラグメントを調製すること、
前記最初のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に類似した未変性のコンホメーションを備えた別のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質から誘導もしくは基づいて得られ、フレームワークコイルドコイルコンホメーションをとり得る第二のペプチド中に、前記ペプチドフラグメントを、ペプチドフラグメント上の推定上のエピトープが免疫学的相互作用ができるコンホメーションで存在するように、挿入もしくは提示させること、並びに、
前記ペプチドフラグメントを免疫学的相互作用について調べることを含む方法。
【請求項11】
アミノ酸配列LRRDLDASREAKKQVEKALE[SEQ ID NO:1]の内部から選択されたアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記アミノ酸は連鎖球菌属のMタンパク質の配位B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列はフレームワークコイルドコイルコンホメーションに保持可能な第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、さらに一つ以上の薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤を含む、グループA連鎖球菌属に対して用いられるワクチン。
【請求項12】
アミノ酸配列CKQLEEKVDRLTEKLNIQKRQLAQLQDKVK[SEQ ID NO:28]の内部から選択されたアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記アミノ酸は C.eleqans unc-15タンパク質の配位B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列はフレームワークコイルドコイルコンホメーションに保持可能な第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、さらに一つ以上の薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤を含む、Caenorhabditis elegansに対して用いられるワクチン。
【請求項13】
アミノ酸配列MAQDTADRLTEKLNIQKRQLA[SEQID NO:43]の内部から選択されたアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記アミノ酸はc.elegans unc-15タンパク質の配位B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列はフレームワークコイルドコイルコンホメーションに保持可能な第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、さらに一つ以上の薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤を含む、Caenorhabditis elegans に対して用いられるワクチン。
【請求項14】
アミノ酸配列ADRLTEKLNIQKRQ[SEQ ID NO:26]の内部から選択されたアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記アミノ酸は C.elegans unc-15タンパク質の配位B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列はフレームワークコイルドコイルコンホメーションに保持可能な第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、さらに一つ以上の薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤を含む、Caenorhabditis elegans に対して用いられるワクチン。
【請求項15】
アミノ酸配列RLTEKLNIQKRQ[SEQ ID NO:27]の内部から選択されたアミノ酸を備えた第一のアミノ酸配列を含むキメラペプチドを含み、前記アミノ酸は c.elegans unc-15タンパク質の配位B細胞エピトープを構成し、前記第一のアミノ酸配列はフレームワークコイルドコイルコンホメーションに保持可能な第二のアミノ酸配列の内部に挿入され、さらに一つ以上の薬学的に使用できるキャリアおよび/または希釈剤を含む、Caenorhabditis elegans に対して用いられるワクチン。
【請求項16】
抗体に認識されるペプチド、ポリペプチド、タンパク質、若しくはタンパク質の一部における両親媒性ヘリックスの領域をマッピングする方法であって、
推定上のエピトープを有する前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質の一部の未変性のコンホメーションを調べること、
前記ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質の一部の、推定上のエピトープを有するペプチドフラグメントを調製すること、
前記最初のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に類似した未変性のコンホメーションを備えた別のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質から誘導もしくは基づいて得られ、フレームワークコイルドコイルコンホメーションをとり得る第二のペプチド中に、前記ペプチドフラグメントを、ペプチドフラグメント上の推定上のエピトープが免疫学的相互作用ができるコンホメーションで存在するように、挿入もしくは提示させること、次いで、
前記ペプチドフラグメントを免疫学的相互作用について調べることを含む方法。
【請求項17】
前記第一のアミノ酸配列が、配列番号23から34のいずれか1つで表わされる配列からなる、請求項1記載のキメラペプチド。
【請求項18】
配列番号13から21のいずれか1つで表わされる配列からなる、請求項1記載のキメラペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−67810(P2009−67810A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284793(P2008−284793)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願平8−512795の分割
【原出願日】平成7年10月16日(1995.10.16)
【出願人】(505013561)ザ・カウンシル・オブ・ザ・クィーンズランド・インスティテュート・オブ・メディカル・リサーチ (4)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【出願人】(500074981)ザ ユニバーシティー オブ メルボルン (5)
【出願人】(508300231)ザ・ウォルター・アンド・エリザ・ホール・インスティテュート・オブ・メディカル・リサーチ (1)
【出願人】(507013833)バイオテック・オーストラリア・ピーティワイ・リミテッド (2)
【出願人】(500021413)シーエスエル、リミテッド (28)
【Fターム(参考)】