説明

合成床版の製造方法

【課題】 コンクリート層に空隙を形成して床版自重を軽量化させるために用いる型枠のコストを低減させる。
【解決手段】 発泡ポリスチレン又は発泡ウレタン等の軽量で切断加工が容易な樹脂によりコンクリート空隙形成用型枠4を形成する。製造すべき合成床版1の床版厚に対応させて、コンクリート空隙形成用型枠4を、初期形状のままか又は下端寄り部分を必要に応じて切断加工することにより底鋼板2の上面から突出させる寸法を調整した状態で、底鋼板2のコンクリート層3接合領域に、橋軸方向と橋幅方向に所要間隔で配列させて取り付ける。次いで、底鋼板2の上側に、コンクリート空隙形成用型枠4を埋没させるようにコンクリートを打設してコンクリート層3を形成することにより、底鋼板2と、下面側にコンクリート空隙形成用型枠4によるコンクリート空隙を備えたコンクリート層3とを一体に接合した構成の合成床版1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底鋼板上にコンクリート層を一体に接合してなる合成床版の製造方法に関するもので、特に、床版全体の自重の軽量化を図るようにした合成床版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高架道路を構成する床版の1つとして、鋼製型枠となる底鋼板の上側にコンクリートを打設し充填してコンクリート層(コンクリートスラブ)を形成して、上記底鋼板とコンクリート層とからなる構成を有する合成床版が用いられている。
【0003】
ところで、一般に、床版は自重が大きいため、床版を鋼桁上に取り付けている場合は、該床版を支持する鋼桁にかかる負担が大きくなるため、鋼桁を大きなものとする必要が生じている。したがって、床版の自重をより軽量化できれば、鋼桁をより小さく(細く)することが可能となる。
【0004】
又、橋梁の補修工事を行う場合、既存の鋼桁の鋼材に錆等による減肉が生じていたり、疲労が生じていると、該既存の鋼桁の強度が当初の設計強度よりも低下している可能性がある。そのため、橋梁の補修に際して床版を打ち替えるときに、既設の床版を軽い新たな床版に打ち替えるようにすれば、腐食減肉や疲労が生じている既存の鋼桁であっても、その負担を減らすことができると考えられる。
【0005】
以上のような点に鑑みて、本出願人は、床版全体の自重の軽量化を図ることが可能な合成床版の製造手法として、底鋼板の上に、中空の埋め殺し用型枠を複数配置し、次いで、上記底鋼板の上側に上記埋め殺し用型枠を埋設するようにコンクリートを打設してコンクリート層を形成させることにより、上記底鋼板とコンクリート層とを一体に接合し、且つ該コンクリート層の下面側に上記中空の埋め殺し用型枠による空洞を設けてなる構成の合成床版を製造するようにする手法を提案している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−216187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に示された合成床版の製造手法は、底鋼板上にコンクリート層を形成するために使用するコンクリートの使用量を、該コンクリート層の下面側に埋め殺し用型枠により形成してある空洞に相当する分、削減することができて、床版全体の自重の軽量化を図るのに有効である。
【0008】
ところで、合成床版は、適用する橋梁や高架道路の設計に応じて、必要とされる床版厚が異なる場合があり、このために、底鋼板上に設けるコンクリート層の厚さが異なる場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記特許文献1に示された軽量化を図ることが可能な合成床版を製造する手法を更に発展させて、合成床版の設計上、必要とされる床版厚が異なる場合であっても、その床版厚に応じて、底鋼板上にコンクリートを打設してコンクリート層を形成するときに型枠を用いて該コンクリート層の下面側に設けるコンクリートに関する空隙(型枠の存在によって打設されたコンクリートが排除された部分。以下、コンクリート空隙と云う)を、強度設計上、コンクリート層における該コンクリート空隙の上方となる部分に必要とされる或る寸法のコンクリート厚を確保した状態で容易に形成することができて、床版全体の自重の軽量化を効率よく図ることができ、更には、上記コンクリート空隙を形成するために用いる型枠に要するコストの低減化を図ることが可能な合成床版の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、底鋼板の上面側におけるコンクリート層接合領域に、該底鋼板の上面から上方へ突出する突出量を調整可能なコンクリート空隙形成用型枠を複数配置し、次に、上記底鋼板のコンクリート層接合領域の上側に、上記コンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようにコンクリートを打設して、コンクリート層を該コンクリート層の下面側に上記コンクリート空隙形成用型枠によるコンクリート空隙を備えた状態で形成させると共に該コンクリート層を上記底鋼板に接合して合成床版を構成する合成床版の製造方法とする。
【0011】
又、上記構成において、コンクリート空隙形成用型枠として、切断加工可能な樹脂製のコンクリート空隙形成用型枠を用いるようにして、該コンクリート空隙形成用型枠の下端寄りの部分を切断加工することにより、底鋼板の上面から上方へ突出する上記コンクリート空隙形成用型枠の突出量を調整するようにする。
【0012】
更に、上記構成において、コンクリート空隙形成用型枠を発泡ポリスチレン製又は発泡ウレタン製とする請求項2記載の合成床版の製造方法。
【0013】
上述の構成において、底鋼板におけるコンクリート層接合領域に、型枠取付用開口部を上下方向に貫通させて設け、該型枠取付用開口部にコンクリート空隙形成用型枠を下面側から挿入して取り外し可能に仮固定するようにして、上記底鋼板の上面から上方へ突出する上記コンクリート空隙形成用型枠の突出量を調整するようにし、上記底鋼板の上記コンクリート層接合領域の上側に上記コンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようコンクリートを打設して、コンクリート層を上記底鋼板に接合した後、上記底鋼板の型枠取付用開口部より上記コンクリート空隙形成用型枠を取り外して合成床版を構成するようにする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の合成床版の製造方法によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)底鋼板の上面側におけるコンクリート層接合領域に、該底鋼板の上面から上方へ突出する突出量を調整可能なコンクリート空隙形成用型枠を複数配置し、次に、上記底鋼板のコンクリート層接合領域の上側に、上記コンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようにコンクリートを打設して、コンクリート層を該コンクリート層の下面側に上記コンクリート空隙形成用型枠によるコンクリート空隙を備えた状態で形成させると共に該コンクリート層を上記底鋼板に接合して合成床版を構成するようにしてあるので、
底鋼板上に一体に接合したコンクリート層の下面側にコンクリート空隙形成用型枠によるコンクリート空隙を備えることにより、該コンクリート層を形成するために使用するコンクリートの使用量を、上記コンクリート空隙に相当する分、削減して、床版全体の自重の軽量化を図ることが可能な合成床版を製造することができる。
(2)又、製造すべき合成床版の床版厚が異なる場合であっても、コンクリート空隙形成用型枠によりコンクリート層の下面側に設けたコンクリート空隙の上方に位置する部分のコンクリート厚を、強度設計上、該部分に必要とされる所定のコンクリート厚とすることができる。このため、床版厚が異なる合成床版を製造する際に、底鋼板に接合したコンクリート層におけるコンクリート空隙の上方に位置する部分のコンクリート厚に過不足が生じる虞を防止できて、床版厚が異なる合成床版であっても品質を揃えた状態で製造することができる。
(3)コンクリート空隙形成用型枠として、切断加工可能な樹脂製のコンクリート空隙形成用型枠を用いるようにして、該コンクリート空隙形成用型枠の下端寄りの部分を切断加工することにより、底鋼板の上面から上方へ突出する上記コンクリート空隙形成用型枠の突出量を調整するようにすることにより、上記底鋼板のコンクリート層接合領域に配置するコンクリート空隙形成用型枠の上記底鋼板の上面から上方へ突出する寸法を、自在に且つ容易に調整することができる。
(4)しかも、上記コンクリート空隙形成用型枠は、床版厚が異なる合成床版を製造する場合であっても、一種類の上下方向寸法のものを用意しておけばよいため、該コンクリート空隙形成予型枠の製作コストを、削減することができる。
(5)コンクリート空隙形成用型枠を発泡ポリスチレン製又は発泡ウレタン製とすることにより、該コンクリート空隙形成用型枠を、上記切断加工を容易に実施可能なものとすることができると共に、軽量なものとすることができるため、製造される合成床版について、床版全体の自重の軽量化を図る上で有利なものとすることができる。
(6)更に、製造した合成床版のコンクリート層にひび等の損傷が生じて水が浸入するようになる場合であっても、このコンクリート層に浸入した水がコンクリート空隙形成用型枠に溜まる虞を防止することができる。
(7)底鋼板におけるコンクリート層接合領域に、型枠取付用開口部を上下方向に貫通させて設け、該型枠取付用開口部にコンクリート空隙形成用型枠を下面側から挿入して取り外し可能に仮固定するようにして、上記底鋼板の上面から上方へ突出する上記コンクリート空隙形成用型枠の突出量を調整するようにし、上記底鋼板の上記コンクリート層接合領域の上側に上記コンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようコンクリートを打設して、コンクリート層を上記底鋼板に接合した後、上記底鋼板の型枠取付用開口部より上記コンクリート空隙形成用型枠を取り外して合成床版を構成するようにすることにより、上記(3)(4)と同様の効果を得ることができる。
(8)更に、コンクリート空隙形成用型枠を、最終的に製造される合成床版より取り外すようにしてあるため、製造された合成床版の床版全体の自重の軽量化を図る上で更に有利なものとすることができる。しかも、上記合成床版より取り外したコンクリート空隙形成用型枠は、回収して再使用することが可能であるため、該コンクリート空隙形成用型枠に要するコストを更に引き下げることが可能になる。
(9)又、上記底鋼板には型枠取付用開口部が設けてあるため、製造される合成床版の更なる軽量化を図ることができる。しかも、製造された合成床版では、底鋼板に型枠取付用開口部が開口した構成となるため、コンクリート層にひび等の損傷が生じて水が浸入するようになる場合であっても、このコンクリート層に浸入した水を、上記底鋼板の型枠取付用開口部を通して外部へ逃がすことができて、上記コンクリート層の乾燥状態を保つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の合成床版の製造方法の実施の一形態の手順を示すもので、(イ)は底鋼板上面側のコンクリート層接合領域に底鋼板上面からの突出量を調整したコンクリート空隙形成用型枠を配置する状態を、(ロ)は底鋼板上にコンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようコンクリートを打設してコンクリート層を形成した状態をそれぞれ示す概略切断側面図である。
【図2】図1(ロ)のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の合成床版の製造方法で用いるコンクリート空隙形成用型枠を拡大して示すもので、(イ)は初期状態の斜視図、(ロ)は床版厚が大きい合成床版を製造する場合の使用状態を示す側面図、(ハ)は床版厚が小さい合成床版を製造する場合の使用状態を示す側面図である。
【図4】本発明の実施の他の形態を示すもので、(イ)は底鋼板上面側のコンクリート層接合領域に対応させて底鋼板に設けた型枠取付用開口部に、底鋼板上面からの突出量を調整したコンクリート空隙形成用型枠を取り付けた状態を、(ロ)は底鋼板上にコンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようコンクリートを打設してコンクリート層を形成した状態を、(ハ)はコンクリート層の形成後に底鋼板の型枠取付用開口部よりコンクリート空隙形成用型枠を取り外して撤去した状態をそれぞれ示す概略側面図である。
【図5】図4(ロ)のB−B方向矢視図である。
【図6】図4の合成床版の製造方法で用いるコンクリート空隙形成用型枠を拡大して示すもので、(イ)は斜視図、(ロ)は床版厚が大きい合成床版を製造する場合の使用状態を示す側面図、(ハ)は床版厚が小さい合成床版を製造する場合の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1(イ)(ロ)乃至図3(イ)(ロ)(ハ)は本発明の合成床版の製造方法の実施の一形態を示すものである。
【0018】
ここで、先ず、本実施の形態の合成床版の製造方法で用いる図3(イ)(ロ)(ハ)に示すコンクリート空隙形成用型枠4について説明する。
【0019】
上記コンクリート空隙形成用型枠4は、図3(イ)に示すように、上下方向に延びる柱形状、たとえば、水平断面が正方形の角柱形状とする。
【0020】
又、上記コンクリート空隙形成用型枠4は、その上端面5の中央部に平坦な部分を設けると共に、該上端面5の周縁部と各側面6の上端部との間のコーナ部が滑らかな曲面で形成してある。更に、コンクリート空隙形成用型枠4の隣接する側面6同士の間のコ−ナ部も、滑らかな円筒面(曲面)で形成してある。これにより、図3(ロ)に示すように、上記コンクリート空隙形成部材4を底鋼板2の上面側に配置した状態で、底鋼板2の上側に該コンクリート空隙形成部材4を埋没させるようにコンクリートを打設し硬化させて図3(ロ)に二点鎖線で示す如きコンクリート層3を形成する際に、該コンクリート空隙形成用型枠4により上記コンクリート層3の下面側に形成させるコンクリート空隙(コンクリートが排除された部分)の内面に鋭角に屈曲する部分が形成されないようにして、応力集中が生じ難くなるようにしてある。
【0021】
更に、上記コンクリート空隙形成用型枠4は、該コンクリート空隙形成用型枠4を上記底鋼板2の上面側におけるコンクリート層3の接合領域に配置した状態で該底鋼板2の上側にコンクリート層3を形成させるために打設するコンクリートの荷重が作用しても、大きく変形しない耐荷重性を有すると共に、切断加工が容易となる樹脂製とする。
【0022】
なお、本実施の形態の合成床版の製造方法では、後述するように、上記コンクリート空隙形成用型枠4は、底鋼板2の上側にコンクリート層3を接合して合成床版1を製造すると、上記コンクリート層3に永続的に埋め込まれるものであるため、製造する合成床版1全体の自重の軽量化を推し進めるという観点から考えると、上記コンクリート空隙形成用型枠4の材質はできるだけ軽量であることが望ましい。具体的には、上記コンクリート空隙形成用型枠4は、たとえば、発泡ポリスチレン製又は発泡ウレタン製とすることが望ましい。
【0023】
ところで、上記底鋼板2の上側に、上記コンクリート空隙形成用型枠4によるコンクリート空隙を下面側に設けてなるコンクリート層3を接合して製造する合成床版1では、コンクリート層3の自重、及び、該合成床版1を橋梁や高架道路等で使用する場合に上記コンクリート層3に上方から作用する荷重を、上記コンクリート空隙形成用型枠4の周りに位置する部分のコンクリートですべて支持させる必要がある。よって、上記コンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートには、該部分のコンクリートの自重と、該部分のコンクリートに対して上方から作用する荷重を上記コンクリート空隙形成用型枠4の周りに位置する部分のコンクリートへ伝えることができるようにするための剛性が求められる。
【0024】
そのため、強度設計上、上記コンクリート層3における上記コンクリート空隙形成用型枠4により設けるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートには、合成床版1を適用する橋梁や高架道路の設計に応じて設定される該合成床版1の床版厚の大小に依存して定まるコンクリート層3全体の厚さ寸法の大小の影響をあまり受けることなく、該コンクリート空隙形成用型枠4の平面形状や、使用するコンクリートの強度、後述する鉄筋9a,9bの配置等、コンクリート層3の厚さ以外の条件が同じであれば、ほぼ一定のコンクリート厚が必要になる。
【0025】
そこで、本実施の形態における上記コンクリート空隙形成用型枠4の上下方向寸法aは、図3(ロ)に示すように、製造することが想定される最も床版厚が大きい合成床版1におけるコンクリート層3(図3(ロ)に二点鎖線で示す)の厚み寸法bから、上述したように、強度設計上、合成床版1のコンクリート層3におけるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに必要とされる所定のコンクリート厚の寸法cを引いた寸法(b−c)と一致するように設定してある。
【0026】
これにより、図3(ロ)に示したように、想定される最も床版厚が厚い合成床版1を製造する場合は、底鋼板2の上面側に初期形状のまま無加工の上記コンクリート空隙形成用型枠4を配置した後、該底鋼板2の上側に、該合成床版1の設計に応じた床版厚が得られるようにコンクリートを打設して図3(ロ)に二点鎖線で示す如きコンクリート層3を形成することにより、該コンクリート層3における上記コンクリート空隙形成用型枠4により形成されるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに、上記強度設計上必要とされるコンクリート厚cを確保することができるようにしてある。
【0027】
一方、図3(ロ)に示した合成床版1よりも床版厚が小さい合成床版1を製造する場合は、図3(ハ)に示すように、製造すべき床版厚の合成床版1において必要とされるコンクリート層3の厚み寸法dから、上述した強度設計上、合成床版1のコンクリート層3におけるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに必要とされる所定のコンクリート厚の寸法cを引いた寸法eを求める。その後、使用するコンクリート空隙形成用型枠4について、上端からの上下方向寸法が上記求めた寸法eと一致する位置よりも下端寄りとなる部分(図3(ハ)に一点鎖線で示す部分)を水平に切断して除去する加工を行うようにする。
【0028】
これにより、上記下端寄り部分を切断加工したコンクリート空隙形成用型枠4を、図3(ハ)に示したように、底鋼板2の上面側に配置した後、該底鋼板2の上側に、製造すべき合成床版1の設計に応じた床版厚が得られるようにコンクリートを打設して図3(ハ)に二点鎖線で示す如きコンクリート層3を形成することにより、該コンクリート層3における上記切断加工後のコンクリート空隙形成用型枠4によって形成されるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに、上記強度設計上必要とされるコンクリート厚cを確保することができるようにしてある。
【0029】
したがって、上記コンクリート空隙形成用型枠4は、下端寄りの部分を必要に応じた量で水平に切断、除去する加工を行ってから底鋼板2の上面側におけるコンクリート層3の接合領域に設置することにより、該コンクリート空隙形成用型枠4が底鋼板2の上面から上方に突出する寸法を自在に且つ容易に調整することができるようにしてある。
【0030】
以上の構成としてあるコンクリート空隙形成用型枠4を使用して本発明の合成床版の製造方法を実施する場合は、底鋼板2上へのコンクリート層3形成用のコンクリートを打設する工程の前に、図1(イ)に示すように、初期状態のまま若しくは必要に応じて下端寄りの部分を水平に切断加工することにより底鋼板2の上面から上方へ突出させる突出量を製造すべき合成床版1の床版厚に応じて予め調整したコンクリート空隙形成用型枠4(図1(イ)では下端寄りの部分を或る寸法で切断加工したコンクリート空隙形成用型枠4を用いる場合が示してある)を、その側面6を図1(イ)及び図2に矢印xで示す橋軸方向、及び、図2に矢印yで示す橋軸方向に直角な橋幅方向にそれぞれ沿わせた姿勢で、上記底鋼板2の上面における継手部7を除くコンクリート層3接合領域に、橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で複数並べて配置して、各コンクリート空隙形成用型枠4の下面を、その下側に位置する上記底鋼板2の上面に、接着剤等の図示しない固定手段を用いて固定する。
【0031】
これにより、上記底鋼板2上で橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で配列させた各コンクリート空隙形成用型枠4のうち、橋軸方向(x方向)に配列された各コンクリート空隙形成用型枠4の隣接するもの同士の間に、橋幅方向(y方向)に連続する空間部を形成させるようにしてある。又、橋幅方向(y方向)に配列させた各コンクリート空隙形成用型枠4の隣接するもの同士の間に、橋軸方向(x方向)に連続する空間部を形成させるようにしてある。
【0032】
又、図2に示すように、上記底鋼板2のコンクリート層3接合領域における上記橋軸方向(x方向)に配列した各コンクリート空隙形成用型枠4の隣接するもの同士の間に形成させた橋幅方向(y方向)に連続する空間部と、上記橋幅方向(y方向)に配列した各コンクリート空隙形成用型枠4の隣接するもの同士の間に形成させた橋軸方向(x方向)に連続する空間部には、それぞれ橋幅方向(y方向)及び橋軸方向(x方向)に所要間隔でジベルとしてのスタッドジベル8を配置して、底鋼板2に固定する。この際、上記スタッドジベル8の配置個所は、上記橋幅方向(y方向)に連続する空間部と橋軸方向(x方向)に連続する空間部同士の交点及び交点以外の個所を含むようにすることが望ましい。
【0033】
次に、図1(ロ)及び図2に示すように、上記底鋼板2上に配設した各コンクリート空隙形成用型枠4の上方で且つ形成すべきコンクリート層3の表面位置よりも設計上必要とされるコンクリートのかぶり厚分、下方となる位置に、橋軸方向(x方向)に延びる鉄筋9aと橋幅方向(y方向)に延びる鉄筋9bを、それぞれ橋幅方向(y方向)と橋軸方向(x方向)に所要間隔で配置することにより格子状に配筋する。これにより、後の工程で上記底鋼板2上に上記各コンクリート空隙形成用型枠4を埋没させてなるコンクリート層3を形成するときに、該各鉄筋9a,9bをコンクリート層3に埋設させるようにすることにより、該コンクリート層3における上記各コンクリート空隙形成用型枠4の上方位置で上下方向のコンクリート厚の寸法が最も小さくなる部分を、上記交差させた各鉄筋9aと9bの双方で補強することができるようにする。
【0034】
次いで、上記各コンクリート空隙形成用型枠4が配置され且つ各スタッドジベル8が設置された上記底鋼板2の継手部7を除くコンクリート層3接合領域の上側に、図1(ロ)及び図2に示すように、上記各コンクリート空隙形成用型枠4、各スタッドジベル8及び鉄筋9a,9bを埋没させるようにして、製造すべき合成床版1の設計に応じた床版厚が得られるようコンクリートを打設し、養生することで、上記底鋼板2上に一体に接合したコンクリート層3を形成させる。
【0035】
これにより、上記形成されたコンクリート層3の下面側に、上記各コンクリート空隙形成用型枠4によってコンクリートが排除されたコンクリート空隙を、橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で複数並ぶ状態で形成させて、橋軸方向(x方向)に隣接する各コンクリート空隙同士の間に、橋幅方向(y方向)に連続するコンクリートのリブ状の部分(以下、橋幅方向コンクリートリブと云う)10aをそれぞれ形成させると共に、上記橋幅方向(y方向)に隣接するコンクリート空隙同士の間に、橋軸方向(x方向)に連続するコンクリートのリブ状の部分(以下、橋軸方向コンクリートリブと云う)10bをそれぞれ形成させるようにしてある。
【0036】
したがって、上記底鋼板2上に上記コンクリート層3を接合した状態では、該コンクリート層3の下面側に、上記橋軸方向(x方向)に所要間隔で平行に配列された各橋幅方向コンクリートリブ10aと、橋幅方向(y方向)に所要間隔で平行に配列された各橋軸方向コンクリートリブ10bが格子状に一体に連結された格子構造を形成させることにより、上記底鋼板2と該コンクリート層3との付着性を高めると共に、剪断耐力を高めることができるようにしてある。
【0037】
更に、上記底鋼板2の上面のコンクリート層3接合領域にて、上記橋軸方向(x方向)に配列した各コンクリート空隙形成用型枠4の隣接するもの同士の間に形成させた橋幅方向(y方向)に連続する空間部と、上記橋幅方向(y方向)に配列した各コンクリート空隙形成用型枠4の隣接するもの同士の間に形成させた橋軸方向(x方向)に連続する空間部に、該各空間部同士の交点及び交点以外の個所を含むようにそれぞれ橋幅方向(y方向)及び橋軸方向(x方向)に所要間隔で予め設けてあったスタッドジベル8が、上記コンクリート層3の下面側における橋幅方向コンクリートリブ10aと、橋軸方向コンクリートリブ10bに、該各コンクリートリブ10a,10b同士の交点を含むそれぞれの長手方向所要間隔個所に埋め込まれるようにしてある。これにより、上記底鋼板2とコンクリート層3との接合個所の剪断耐力を更に高めることができるようにしてある。更には、上記コンクリート空隙形成用型枠4を平面形状が大きいものとして、コンクリート層3の下面側に設けるコンクリート空隙の平面形状を大きくすることにより空隙率を高める場合であっても、上記底鋼板2とコンクリート層3との付着性、及び、両者間の剪断耐力を、十分に得ることができるようにしてある。
【0038】
上記コンクリート層3を形成するためのコンクリートとしては、鋼繊維補強コンクリートを用いることが好ましい。このようにすれば、上記コンクリート層3の強度を高めることができるため、通常のコンクリートを用いて上記コンクリート層3を形成させる場合に比して、上記コンクリート空隙形成用型枠4のサイズをより大きくして、形成したコンクリート層3にて隣接する各コンクリート空隙形成用型枠4同士の間に位置する各コンクリートリブ10a,10bや、各コンクリート空隙形成用型枠4の上方に位置する部分のコンクリートの厚みを薄くすることが可能になるため、合成床版1全体の軽量化を図るのに有利なものとすることができる。なお、上記鋼繊維補強コンクリートと同程度の強度が得られるようにしてあれば、鋼繊維以外の繊維補強コンクリートや、繊維補強以外の任意の手段で強度を高めた高強度コンクリートを用いてコンクリート層3を形成させるようにしてもよい。
【0039】
このように、本発明の合成床版の製造方法によれば、底鋼板2上にコンクリート層3を一体に接合し、且つ該コンクリート層3の下面側にコンクリート空隙形成用型枠4によるコンクリート空隙を備えることにより、該コンクリート層3を形成するために使用するコンクリートの使用量を、上記コンクリート空隙に相当する分、削減することができて、床版全体の自重の軽量化を図ることが可能な合成床版1を製造することができる。この際、製造した合成床版1では、上記コンクリート層3の下面側に複数のコンクリート空隙を設けた状態としてあっても、隣接する各コンクリート空隙同士の間に形成してある橋幅方向コンクリートリブ10aと橋軸方向コンクリートリブ10bによる格子構造によって該コンクリート層3が補強してあるため、該コンクリート層3の強度低下を未然に防止することができて、本発明の合成床版の製造方法により製造する合成床版1に、床版として所望される強度を容易に得ることができる。
【0040】
したがって、本発明の合成床版の製造方法で製造した合成床版1を用いることにより、橋梁の鋼桁の負担を減らすことができて、該鋼桁を小さく(細く)できる効果が期待できる。又、上記合成床版1は、橋梁の補修工事を行う場合に、既存の鋼桁の鋼材に錆等による減肉が生じていたり、疲労が生じていることに起因して、該既存の鋼桁の強度が当初の設計強度よりも低下している場合等に、打ち替え用の床版として用いるのに好適なものとすることができる。
【0041】
上記コンクリート空隙形成用型枠4は、樹脂製としてあって、切断加工が容易にできるようにしてあるため、該コンクリート空隙形成用型枠4を上記底鋼板2の上面側のコンクリート層3接合領域に配置する際に、予め該コンクリート空隙形成用型枠4の下端寄りの部分を必要に応じて切断加工することにより、上記コンクリート層3接合領域に配置したコンクリート空隙形成用型枠4の上記底鋼板2の上面から上方へ突出する寸法を、自在に且つ容易に調整することができる。
【0042】
よって、製造すべき合成床版1の床版厚が異なる場合であっても、底鋼板2に接合したコンクリート層3においてコンクリート空隙形成用型枠4により該コンクリート層3の下面側に設けたコンクリート空隙の上方に位置する部分のコンクリート厚を、強度設計上、該部分に必要とされる所定のコンクリート厚とすることができる。このため、床版厚が異なる合成床版1を製造する際に、底鋼板2に接合したコンクリート層3におけるコンクリート空隙の上方に位置する部分のコンクリート厚に過不足が生じる虞を防止できるため、床版厚が異なる合成床版1であっても品質を揃えた状態で製造することができる。
【0043】
しかも、上記コンクリート空隙形成用型枠4は、床版厚が異なる合成床版1を製造する場合であっても、一種類の上下方向寸法のものを用意しておき、使用する際に必要に応じて切断加工するようにしてあるため、該コンクリート空隙形成予型枠4の製作コストを、床版厚が異なる合成床版1を製造する毎に専用の上下方向寸法を備えたコンクリート空隙形成用の型枠を用意する場合に比して、大幅に削減することができる。
【0044】
更に、上記コンクリート空隙形成用型枠4を発泡ポリスチレン製又は発泡ウレタン製とすることにより、該コンクリート空隙形成用型枠4を、上記切断加工を容易に実施可能なものとすることができると共に、軽量なものとすることができるため、該コンクリート空隙形成用型枠4がコンクリート層3に埋め込まれた状態で製造される合成床版1について、床版全体の自重の軽量化を図る上で有利なものとすることができる。
【0045】
更には、上記コンクリート空隙形成用型枠4を中実のものとすることにより、製造した合成床版1のコンクリート層3にひび等の損傷が生じて水が浸入するようになる場合であっても、このコンクリート層3に浸入した水が該コンクリート空隙形成用型枠4に溜まる虞を防止することができる。
【0046】
上記コンクリート空隙形成用型枠4は、下端側を除くコーナ部を滑らかな曲面とした角柱形状としてあるため、該コンクリート空隙形成用型枠4によりコンクリート層3の下面側に設けるコンクリート空隙の容積を、該コンクリート空隙形成用型枠4と同一の水平断面で且つ頂部をドーム形状とした型枠を用いて形成させる空隙に比して拡大することができる。よって、コンクリート層3における空隙率を効率よく高めることができることから、製造する合成床版1の自重の軽量化を図るためにより有利な構成とすることができる。
【0047】
更に、本実施の形態では、底鋼板2に、上記コンクリート層3を、底鋼板2の橋軸方向(x方向)の両端部に所要の長さ寸法で設ける継手部7の上側を除いて形成した構成としてあるため、製造する合成床版1を、工場等で底鋼板2上にコンクリート層3を接合したプレキャスト形式の合成床版1とすることができる。
【0048】
したがって、上記のようにして製造したプレキャストの合成床版1を使用する場合は、床版設置現場へ搬入し、図示しない橋桁上に、該合成床版1を配置する。その後、上記合成床版1の底鋼板2の橋軸方向(x方向)の端部に設けてある継手部7を、図1(ロ)に二点鎖線で示すように、橋軸方向(x方向)に隣接して配置されている別の合成床版1の底鋼板2の継手部7と突き合わせた状態で、添接板11と高力ボルト12を介して連結し、しかる後、上記連結された各合成床版1の底鋼板2の継手部7の上側に、間詰コンクリート13を充填するように打設するようにすればよい。このように、製造する合成床版1をプレキャスト形式のものとすることにより、現場での急速施工に対応することができて、床版打ち替え工事のために交通を止める期間の短縮化を図る効果が期待できる。
【0049】
次に、図4(イ)(ロ)(ハ)乃至図6(イ)(ロ)(ハ)は本発明の実施の他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)乃至図3(イ)(ロ)(ハ)に示したと同様の構成において、使用するコンクリート空隙形成用型枠4を容易に切断加工可能な樹脂製のものとして、底鋼板2の上面側におけるコンクリート層3接合領域に、初期状態のままか又は予め下端寄りの部分を必要に応じた寸法で切断加工した上記コンクリート空隙形成用型枠4を配置することにより、該コンクリート層3接合領域に配置するコンクリート空隙形成用型枠4が底鋼板2の上面から上方へ突出する突出量を調整するようにした構成に代えて、コンクリート空隙形成用型枠4Aを、底鋼板2のコンクリート層3接合領域に予め上下方向に貫通させて設けた型枠取付用の開口部14に下面側から挿入可能なものとし、上記底鋼板2の型枠取付用開口部14に下面側から上記コンクリート空隙形成用型枠4Aを挿入して取り外し可能に仮固定するときに、該型枠取付用開口部14に対するコンクリート空隙形成用型枠4Aの挿入量を適宜調整することにより、底鋼板2の上面側のコンクリート層3接合領域に配置される該コンクリート空隙形成用型枠4Aの上端寄りの部分が底鋼板2の上面から上方へ突出する突出量を調整するようにしたものである。
【0050】
詳述すると、本実施の形態の合成床版の製造方法で用いる上記コンクリート空隙形成用型枠4Aは、図6(イ)に示すように、図3(イ)(ロ)(ハ)に示したコンクリート空隙形成用型枠4と同様に、水平断面が正方形の角柱形状とすると共に、下端を除くコーナ部を滑らかな曲面で形成した構成とする。
【0051】
一方、本実施の形態で用いる上記底鋼板2は、継手部7を除くコンクリート層3接合領域に、上記コンクリート空隙形成用型枠4Aの水平段面形状(平面形状)に対応するコーナを丸めた正方形で上下方向に貫通する型枠取付用開口部14が、図5に示すように、その各辺を矢印xで示す橋軸方向、及び、矢印yで示す橋幅方向にそれぞれ沿わせた角度姿勢で、橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で複数並べて設けてなる構成とする。
【0052】
これにより、図4(ロ)及び図5に示すように、上記底鋼板2の各型枠取付用開口部14に、下面側から上記コンクリート空隙形成用型枠4Aを挿入できるようにすると共に、該各型枠取付用開口部14に下面側から個別に挿入した各コンクリート空隙形成用型枠4Aにおける底鋼板2の上面側に突出させる上端寄り部分を、上記底鋼板2の上面側のコンクリート層3接合領域に、該コンクリート空隙形成用型枠4Aの各側面6を橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ沿わせた姿勢で、橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で複数並べて配置することができるようにしてある。
【0053】
更に、この際、上記底鋼板2の各型枠取付用開口部14に下面側から挿入する各コンクリート空隙形成用型枠4Aの挿入量を調整することにより、該各コンクリート空隙形成用型枠4Aにおける底鋼板2の上面より上方へ突出させる上端寄り部分の突出量を自在に調整することができるようにしてある。
【0054】
上記コンクリート空隙形成用型枠4Aは、上記したように底鋼板2に設けた型枠取付用開口部14に対して下面側から挿入することによって、その上端寄り部分を底鋼板2のコンクリート層3接合領域に配置するものである。このことに鑑みて、該コンクリート空隙形成用型枠4Aの上下方向寸法fは、図6(ロ)に示すように、製造することが想定される最も床版厚が大きい合成床版1におけるコンクリート層3(図6(ロ)に二点鎖線で示す)の厚み寸法bから、前述したように、強度設計上、合成床版1のコンクリート層3の下面側に設けるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに必要とされる所定のコンクリート厚の寸法cを引いた寸法(b−c)と、該コンクリート空隙形成用型枠4Aを上記底鋼板2の型枠取付用開口部14に挿入した状態で保持させるために必要とされる上記底鋼板2の厚み寸法以上の寸法gとの和となるように設定してある。
【0055】
これにより、図6(ロ)に示したように、想定される最も床版厚が厚い合成床版1を製造する場合は、底鋼板2の型枠取付用開口部14に、下面側から上記コンクリート空隙形成用型枠4Aを最大の挿入量で挿入配置し、この状態でコンクリート空隙形成用型枠4Aを図示しない仮固定手段を介して底鋼板2に取り外し可能に仮固定した後、上記底鋼板2の上側に、該合成床版1の設計に応じた床版厚が得られるようにコンクリートを打設して図6(ロ)に二点鎖線で示す如きコンクリート層3を形成することにより、該コンクリート層3における上記コンクリート空隙形成用型枠4Aにより形成されるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに、上記強度設計上必要とされるコンクリート厚cを確保することができるようにしてある。
【0056】
一方、図6(ロ)に示した合成床版1よりも床版厚が小さい合成床版1を製造する場合は、図6(ハ)に示すように、製造すべき床版厚の合成床版1において必要とされるコンクリート層3の厚み寸法dから、上述した強度設計上、合成床版1のコンクリート層3におけるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに必要とされる所定のコンクリート厚の寸法cを引いた寸法hを求める。その後、底鋼板2の型枠取付用開口部14に、下面側からコンクリート空隙形成用型枠4Aを挿入して、該コンクリート空隙形成用型枠4Aの上端の底鋼板2の上面からの突出量が、上記求めた寸法hと一致するように挿入量を調整して、この状態で、該コンクリート空隙形成用型枠4Aを図示しない仮固定手段を介して底鋼板2に取り外し可能に仮固定し、その後、上記底鋼板2の上側に、該合成床版1の設計に応じた床版厚が得られるようにコンクリートを打設して図6(ハ)に二点鎖線で示す如きコンクリート層3を形成することにより、該コンクリート層3における上記コンクリート空隙形成用型枠4Aにより形成されるコンクリート空隙の上側に位置する部分のコンクリートに、上記強度設計上必要とされるコンクリート厚cを確保することができるようにしてある。
【0057】
なお、本実施の形態の合成床版の製造方法では、後述するように、上記コンクリート空隙形成用型枠4Aは、底鋼板2とコンクリート層3とからなる合成床版1の製造後に、底鋼板2の型枠取付用開口部14より取り外すものである。よって、該コンクリート空隙形成用型枠4Aの重量が、製造される合成床版1の自重に影響することはない。
【0058】
したがって、上記コンクリート空隙形成用型枠4Aの材質は、型枠取付用開口部14に挿入して取り付けた状態の該コンクリート空隙形成用型枠4Aを埋没させるように上記底鋼板2の上側に打設するコンクリート層3形成用のコンクリートの荷重が作用しても、大きく変形しない耐荷重性を有し、更に、上記コンクリート層3の硬化後に、コンクリート層3の下面側に該コンクリート空隙形成用型枠4Aにより設けるコンクリート空隙より抜き取るようにして脱離させることができるようにしてあれば、任意の材質を採用してよい。又、上記コンクリート空隙形成用型枠4Aは、中実、又は、中空、若しくは、下端側のみが開放された中空のいずれの形式であってもよい。
【0059】
その他、図6(イ)(ロ)(ハ)において、図3(イ)(ロ)(ハ)に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0060】
以上の構成としてある底鋼板2及びコンクリート空隙形成用型枠4Aを使用して本実施の形態の合成床版の製造方法を実施する場合は、底鋼板2上へのコンクリート層3形成用のコンクリートを打設する工程の前に、図4(イ)に示すように、底鋼板2に設けてある各型枠取付用開口部14に、下面側よりコンクリート空隙形成用型枠4Aを個別に挿入し、該各コンクリート空隙形成用型枠4Aの上端の底鋼板2の上面より上方へ突出する突出量を製造すべき合成床版1の床版厚に応じて調整した状態で、該各コンクリート空隙形成用型枠4Aを、図示しない仮固定手段を介して底鋼板2に取り外し可能に仮固定する。
【0061】
これにより、上記底鋼板2に設けた上記各型枠取付用開口部14の配置に応じて、該底鋼板2上で橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で配列される各コンクリート空隙形成用型枠4Aのうち、橋軸方向(x方向)に配列された各コンクリート空隙形成用型枠4Aの隣接するもの同士の間に、橋幅方向(y方向)に連続する空間部が形成され、又、橋幅方向(y方向)に配列された各コンクリート空隙形成用型枠4Aの隣接するもの同士の間に、橋軸方向(x方向)に連続する空間部が形成されるようになる。
【0062】
又、図5に示すように、上記底鋼板2のコンクリート層3接合領域における橋軸方向(x方向)に配列した各型枠取付用開口部14の隣接するもの同士の間、すなわち、上記橋軸方向(x方向)に配列された各コンクリート空隙形成用型枠4Aの隣接するもの同士の間に形成させた橋幅方向(y方向)に連続する空間部と、上記底鋼板2のコンクリート層3接合領域における橋幅方向(y方向)に配列した各型枠取付用開口部14の隣接するもの同士の間、すなわち、上記橋幅方向(y方向)に配列された各コンクリート空隙形成用型枠4Aの隣接するもの同士の間に形成させた橋軸方向(x方向)に連続する空間部には、図2に示したと同様の配置でジベルとしてのスタッドジベル8を設ける。
【0063】
その後は、図4(ロ)及び図5に示すように、図1(ロ)及び図2に示した手順と同様に、橋軸方向(x方向)に延びる鉄筋9aと橋幅方向(y方向)に延びる鉄筋9bによる配筋を行ってから、上記底鋼板2の継手部7を除くコンクリート層3接合領域の上側に、上記各コンクリート空隙形成用型枠4A、各スタッドジベル8及び鉄筋9a,9bを埋没させるようにして、製造すべき合成床版1の設計に応じた床版厚が得られるようコンクリートを打設し、養生することで、上記底鋼板2上に一体に接合したコンクリート層3を形成させる。
【0064】
これにより、上記形成されたコンクリート層3の下面側に、上記各コンクリート空隙形成用型枠4Aによってコンクリートが排除されたコンクリート空隙を、橋軸方向(x方向)及び橋幅方向(y方向)にそれぞれ所要間隔で複数並ぶ状態で形成させて、橋軸方向(x方向)に隣接する各コンクリート空隙同士の間に、橋幅方向コンクリートリブ10aを、又、橋幅方向(y方向)に隣接するコンクリート空隙同士の間に、橋軸方向コンクリートリブ10bをそれぞれ形成させて、上記底鋼板2上に接合したコンクリート層3の下面側に、上記各橋幅方向コンクリートリブ10aと各橋軸方向コンクリートリブ10bが格子状に一体に連結された格子構造を形成させるようにしてある。よって、形成されたコンクリート層3は、図1(イ)(ロ)乃至図3(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態で形成されるコンクリート層3と同様のものとなる。
【0065】
その後、上記のようにしてコンクリート層3が形成された後、図4(ハ)に示すように、上記底鋼板2に対する各コンクリート空隙形成用型枠4Aの仮固定を解除して、該各コンクリート空隙形成用型枠4Aを、対応する底鋼板2の型枠取付用開口部14、及び、上記形成されたコンクリート層3における下面側のコンクリート空隙より抜き取るように取り外して撤去して、合成床版1を製造する。
【0066】
このように、本実施の形態の合成床版の製造方法によれば、底鋼板2上にコンクリート層3を一体に接合し、且つ該コンクリート層3の下面側にコンクリート空隙形成用型枠4Aによるコンクリート空隙を備えた合成床版1を製造できる。
【0067】
更に、上記コンクリート空隙形成用型枠4Aは、底鋼板2のコンクリート層3接合領域に設けてある型枠取付用開口部14に下面側から挿入して仮固定するときの挿入量を調整することにより、上記底鋼板2の上面側にてコンクリート層3接合領域に配置されるコンクリート空隙形成用型枠4Aの上端寄り部分の上記底鋼板2の上面から上方へ突出する寸法を、自在に且つ容易に調整することができる。
【0068】
このため、本実施の形態によっても、図1(イ)(ロ)乃至図3(イ)(ロ)(ハ)の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
更に、本実施の形態の合成床版の製造方法は、コンクリート層3にコンクリート空隙を形成させるために使用する上記コンクリート空隙形成用型枠4Aを、最終的に製造される合成床版1より取り外すようにしてあるため、製造された合成床版1の床版全体の自重の軽量化を図る上で更に有利なものとすることができる。
【0070】
しかも、上記最終的に製造される合成床版1より取り外したコンクリート空隙形成用型枠4Aは、回収して別の合成床版1を製造するときに再使用することが可能であるため、該コンクリート空隙形成用型枠4Aに要するコストを更に引き下げることが可能になる。
【0071】
又、上記底鋼板2には型枠取付用開口部14が設けてあるため、製造される合成床版1の更なる軽量化を図ることができる。しかも、製造された合成床版1では、上記底鋼板2に設けた型枠取付用開口部14が開口しているため、コンクリート層3にひび等の損傷が生じて水が浸入するようになる場合であっても、このコンクリート層3に浸入した水を、上記底鋼板2の型枠取付用開口部14を通して外部へ逃がすことができるため、上記コンクリート層3の乾燥状態を保つことが可能になる。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、底鋼板2のコンクリート層3接合領域にコンクリート空隙形成用型枠4,4Aを配置させるときの配列は、水平面内で60度ずつずれた3方向の列が形成されるようにして、コンクリート層3の下面側に、水平面内で60度ずつずれた3方向に延びるコンクリートリブが組み合わされた略ハニカム状の構造を形成させるようにしてもよい。この場合は、コンクリート空隙形成用型枠4,4Aの水平断面を、コーナ部を丸めた正六角形とするようにすればよい。
【0073】
更には、コンクリート空隙形成用型枠4,4Aの水平断面形状は、円形やコーナ部を丸めた他の正多角形等、略正方形や略正六角形以外の形状としてもよい。
【0074】
コンクリート空隙形成用型枠4,4Aの平面サイズは適宜変更してもよい。又、製造することが想定される最も床版厚が大きい合成床版1の床版厚に応じて定めるコンクリート空隙形成用型枠4,4Aの上下方向寸法と、平面サイズとの比は、図示した以外の任意の比に設定してよい。
【0075】
底鋼板2上に設けるスタッドジベル8の配置は、コンクリート層3の下面側に形成させるコンクリートリブ10a,10bの配置、コンクリート空隙形成用型枠4,4Aの水平断面形状や平面サイズに応じて、適宜変更してもよい。
【0076】
底鋼板2上に設けるジベルとして、スタッドジベル8を示したが、上下方向に延びるパイプ状のジベル等、スタッドジベル8以外の形式のジベルを用いるようにしてもよい。
【0077】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0078】
1 合成床版
2 底鋼板
3 コンクリート層
4,4A コンクリート空隙形成用型枠
14 型枠取付用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底鋼板の上面側におけるコンクリート層接合領域に、該底鋼板の上面から上方へ突出する突出量を調整可能なコンクリート空隙形成用型枠を複数配置し、次に、上記底鋼板のコンクリート層接合領域の上側に、上記コンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようにコンクリートを打設して、コンクリート層を該コンクリート層の下面側に上記コンクリート空隙形成用型枠によるコンクリート空隙を備えた状態で形成させると共に該コンクリート層を上記底鋼板に接合して合成床版を構成することを特徴とする合成床版の製造方法。
【請求項2】
コンクリート空隙形成用型枠として、切断加工可能な樹脂製のコンクリート空隙形成用型枠を用いるようにして、該コンクリート空隙形成用型枠の下端寄りの部分を切断加工することにより、底鋼板の上面から上方へ突出する上記コンクリート空隙形成用型枠の突出量を調整するようにする請求項1記載の合成床版の製造方法。
【請求項3】
コンクリート空隙形成用型枠を発泡ポリスチレン製又は発泡ウレタン製とする請求項2記載の合成床版の製造方法。
【請求項4】
底鋼板におけるコンクリート層接合領域に、型枠取付用開口部を上下方向に貫通させて設け、該型枠取付用開口部にコンクリート空隙形成用型枠を下面側から挿入して取り外し可能に仮固定するようにして、上記底鋼板の上面から上方へ突出する上記コンクリート空隙形成用型枠の突出量を調整するようにし、上記底鋼板の上記コンクリート層接合領域の上側に上記コンクリート空隙形成用型枠を埋没させるようコンクリートを打設して、コンクリート層を上記底鋼板に接合した後、上記底鋼板の型枠取付用開口部より上記コンクリート空隙形成用型枠を取り外して合成床版を構成するようにする請求項1記載の合成床版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154124(P2012−154124A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15564(P2011−15564)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(509338994)株式会社IHIインフラシステム (104)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】