説明

合成有機無機ナノクラスター

【解決手段】レーザによって励起された際に、複数の表面増感ラマン信号(SERS)を生成する、複数の合成有機無機ナノクラスター(COIN)が提供される。前記複数のナノクラスターは、複数の金属粒子およびラマン活性な有機化合物を含む。適切なSERS信号を達成するために必要とされる前記金属は、前記ナノクラスターに固有であり、広い種類のラマン活性な複数の有機化合物とその複数の組み合わせとを前記ナノクラスター内に組み込むことができる。さらに、前記複数のナノクラスターを含む複数の重合マイクロ球、およびそれらの複数の作成方法が提供される。前記複数のナノクラスターおよび前記複数のマイクロ球は、例えば、複数の生物製剤の分子の多重検出のための検定に用いられ得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願のクロスリファレンス)本発明は、2003年12月29日に出願された係属中の米国特許出願第10/748336号、および2004年4月21日に出願された係属中の米国特許出願第10/830422号の一部継続であり、その開示内容が本出願の一部であるとされ、そして、その開示内容は本出願の開示において参照されて組み込まれる。
【0002】
一般的に本発明は、金属粒子および有機化合物を含むナノクラスター、および表面増感ラマン分光法による被分析物の検出におけるそのようなナノクラスターの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多重反応は、物理学および生物学の世界に当然に存在する、並列なプロセスである。この原則が生化学または臨床分析の効率の向上に適用された場合には、主要な挑戦は、複数の被分析物の大きな集団の個別の被分析物から複数の成分を区別できるプローブの同定システムの開発をすることである。複数の高濃度DNAチップおよび複数のマイクロアレイは、固体基板上の複数の物理的位置が核酸またはたんぱく質のプローブを同定するために用いられる、プローブ同定システムである。
【0004】
さらに、地下水中の10億分の1の汚染物質の分析から血清中のがんの処置薬の分析までの、実質的に全ての科学分野において、微量の複数の分析物を検出して同定する能力は、ますます重要になっている。ラマン分光法は、多くの光学スペクトル情報を提供する1つの分析手段であり、表面増感ラマン分光法(SERS)は、定量および定性分析を実行するための最も感度のよい方法のうちの1つであることが分かっている。ラマンスペクトルは、赤外スペクトルと同様に、分析される試料(すなわち、被分析物)に特有な分子の振動と一致する複数のバンドの波長分散を含む。ラマン分光法の実施においては、一般的にはレーザのような光源からのビームは、試料の上に集束されて、非弾性的に散乱される放射が生成され、それは光学的に集められて、波長分散分光計に導かれ、その中で検出器が、衝突した複数のフォトンのエネルギーを電気的な信号強度に変換する。
【0005】
化学構造を分析するために用いられる多くの分析手法の中で、ラマン分光法は、小さな光学的に集束された領域、または検出キャビティからの、豊富な構造に関する情報を提供する能力により、魅力的である。数十ナノメータから数百ナノメータのピーク半値幅である単一ピークを通常有する蛍光スペクトルと比較すると、ラマンスペクトルは、数ナノメータと同程度のピーク半値幅である多重結合構造に関連した複数のピークを有する。さらに、表面増感ラマン散乱(SERS)技術は、10から1014フォールドのラマン信号増感を取得することを可能とする。そのような巨大な増感ファクターは、主として、貨幣金属の湾曲した複数の表面上の増感された複数の電磁場に起因する。電磁気の増感(EME)が、複数の金属表面の粗さ、または個別の金属の複数のコロイドが用いられた場合には粒子の大きさに関係していることが示されているものの、SERSは複数の会合したコロイドから最も効率的に検出される。また、所定の配向で表面の近接近に複数の分子を配置することにより、化学増感が得られることが知られている。
【0006】
SERSによる多数の化学物質および生化学物質の複数の分析が、(1)複数の電解セル中の活性化された複数の電極、(2)活性化された銀および金コロイド試薬、および(3)活性化された銀および金基板を用いて示されている。しかしながら、このような手法のいずれも、複数の定量分析に用いることはできない。その結果、SERSは広く普及していない。さらに、複数のたんぱく質および複数の核酸のような多くの生体分子は、複数の分子のこれらの型が、一般的に、複数の共通のモノマーの限られた数を有するので、特有のラマン信号を有していない。
【0007】
SERS効果は主として、電磁場の増感および化学増感に起因する。50から100nmの範囲内の銀粒子の大きさが、SERSに最も効果的であることが報告されている。また、理論的および実験的な複数の研究が、金属粒子の複数の接点が、効果的なSERSのための複数のサイトであることを明らかにしている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】複数のラマン信号により、目標分子"A"および"B"を検出するための増幅手段として用いられるSERSによる手法、および当該方法を、検出する分子"C"および"D"に分子"A"および"B"を含む複数のCOINの使用と比較する図である。
【0009】
【図2】(A)および(B)は、複数の吸収スペクトル、およびクエン酸ナトリウムで1:30に希釈された後に8−アザ−アデニン(AA)から合成された平均粒径が12nmの複数の銀コロイド(50mL)から作られた複数のCOIN(合成有機無機ナノクラスター)のラマン活性を示すグラフである。図2の(A)は、表示された時間に、95℃の溶液から取り出された試料アリコート(1mL)の吸収スペクトルを示し、より高い波長(450nm以上)において、ピークシフトおよび増加した吸収を示す。複数の小さな矢印は、複数の吸収の変化がさらに分析された複数の位置を指し示す。挿入(Insert)は、熱への暴露の時間につれて、複数の試料が暗くなることを示す。図2の(B)は、反応(加熱)時間の関数としての吸収およびラマン活性のグラフを示す。Y軸の値は、最大値に応じて規格化された後の任意の単位であり、420nm/395nmの吸収の比率が、主要吸収ピークのシフト(395nm→420nm)の監視に用いられた。複数のラマン散乱信号が、コロイドの会合を引き起こす塩を使用していない、同一の希釈された試料から直接測定された。65分後の700nmでの吸収の減少は、溶液中ですばやく定着した大きな複数の会合体の形成によって起こった者である。
【0010】
【図3】(A)から(D)において、SERSとCOINとの複数のラマン信号の比較を示す。各SERSテストにおいて、4μMの8−アザアデニン(AA)を含む100μLの銀コロイドが、以下から選択された100μLの試薬に混合された。試薬は、水(対照用)、N−ベンゾイルアデニン(BA、10μM)、BSA(1%)、Tween−203(Twn、1%)、エタノール(Eth、100%)である。結果として生じた200μlの混合物は、続いて、ラマン信号が測定される前に、100μLの水(−Li)または100μLの0.34MのLiCl(+Li)のいずれかと混合された。ラマン信号強度は任意の単位であり、最大値に応じて規格化された。同一の工程が、さらなる8−アザアデニンを用いることなしに、COIN試験(20μMの8−アザアデニンを用いて作成)に用いられた。図3の(A)は、試薬としての水中の8−アザアデニンのラマンスペクトルを示しており、塩が必要であり、多重主要ピークが検出されたことを示す。また、複数の矢印は、複数のCOIN中におけるラマンスペクトルよりも強い複数のピークを指し示す。図3の(B)は、試薬として水を用いたCOINからのラマンスペクトルを示し、複数の矢印は、SERSからのラマンスペクトルと比較して、複数の減少したピークを指し示す。図3の(C)は、異なる複数の試験条件下の1340cm−1におけるSERS信号強度の棒グラフを示す。図3の(D)は、異なる複数の試験条件下の1340cm−1におけるCOIN信号強度の棒グラフを示す。
【0011】
【図4】(A)および(B)は、多重検出における複数のCOIN信号を示す。複数のCOINは、所望される複数の信号に依存して、2.5μMから20μMまでの濃度の複数のラマン標識、すなわち、8−アザアデニン(AA)、9−アミノアクリジン、メチレンブルー(MB)のそれぞれ、または混合物を用いて作られた。複数の典型的なピークが複数の矢印で指し示されている。ピーク強度の値は、最大値に応じて規格化されている。Y軸の値は任意の単位である。複数のスペクトルはお互いに1ユニットずつオフセットされている。図4の(A)は、3つのラマン標識のそれぞれから作られた複数のCOIN信号であり、各標識が単一の信号を生成することが示されている。図4の(B)は、必要とされる信号を生成する濃度における3つのラマン標識の混合物から作られたCOINの信号を示す。HLLは、AA(H)が高いピーク強度であり、AN(L)とMB(L)の双方が低いピーク強度であることを示す。LHLは、AA(L)が低いピーク強度であり、AN(H)が高いピーク強度で、MB(L)が低いピーク強度であることを示す。LLHは、AA(L)とAN(L)の双方が低く、MB(H)が高いことを示す。複数の金属表面上の複数のラマン標識の異なる吸着親和力によって使用される標識の濃度に必ずしも比例しないが、複数の標識の濃度を変化させることによって、複数のピーク強度は調整され得ることに留意すべきである。
【0012】
【図5】多重の被分析物の検出のための複数のタグとしての複数のCOINの使用を示す図である。図5の(A)は、抗体が結合した複数のCOINが結合した被分析物の検出スキームの例である。図5の(B)は、複数の8−アザアデニンCOIN(主要ピークの位置は1340cm−1である)をタグとして用いたIL−2の免疫サンドイッチ検定から集められた50のスペクトルのセットを示す。複数のバックグラウンドの信号が差し引かれている。複数のスペクトルは、複数のスペクトルのそれぞれが見えるように、XおよびY軸の双方においてオフセットされた。図5の(C)は、複数の被分析物の棒グラフである。複数の被分析物は、IL−2およびIL−8(両方ともおよそ20kDaの分子量を有する)であった。1または2の被分析物を異なる複数の比率(5:0、4:1、1:1、1:4、および0:5)で含む複数の試料を用いて複数の実験が実施された。IL−2検出抗体は、8−アザアデニン(AA)を用いて生成されたCOINに結合され、IL−8検出抗体は、N−ベンゾイルアデニン(BA)を用いて生成されたCOINに結合された。それらは1:1の比率で使用された。データは、各試料の合計400個のデータポイントから集められた。予想されたラマンシフト位置でのプラスの信号を示す複数のスペクトルは、測定された複数の信号(幅広の棒)ポイントとしてカウントされ、複数の試料に対応する被分析物の双方のプラスの信号の合計の百分率で表されている。複数の幅が狭い棒は、予想値を示す(2つの標識の合計が100%である)。
【0013】
【図6】(A)および(B)は、複数の金属粒子(15nmの金、Abs520nm=0.37;60nmの銀、1mMのクエン酸ナトリウム中のAbs420nm=0.3)の、有機標識が誘起された会合体を示す複数のグラフである。各有機化合物(表1の略称を参照)が、スペクトル測定前に10分間、示した複数の濃度における金属コロイド溶液の試料中で混合された。各試料において、主要ピークの吸光度がピーク1の値として用いられ、より高波長(600nmから700nm)での増加した吸光度がピーク2の値として用いられた。ピーク2/ピーク1の比率は、有機化合物の濃度に対して描かれた。比率の高い値は、高度の金属粒子会合体を示している。
【0014】
【図7】(A)および(B)は、それぞれ、1.00mMのクエン酸ナトリウム懸濁溶液中の47nm(0.10mM)の初期のz平均サイズの複数の銀粒子のゼータ電位測定、および20μMの8−アザアデニンの存在下での発生した会合体の大きさ(z平均)を示す。
【0015】
【図8】図8−1の(A)および(B)、並びに図8−2の(C)および(D)は、COINスペクトルと比較したSERSを示す。示されている複数の有機化合物の例が、COIN合成のために用いられた。8つのラマン標識の化学構造が示されている。複数のCOIN(C)のラマンスペクトルが、SERSから得られた複数のスペクトルに重ねあわされており、各SERSと比較すると、複数のCOINスペクトルが異なる複数の主要ピークを有することを示す。ある場合には、COIN中でいくつかのピークがブロード化される。複数のスペクトルが、最大値(任意の単位)に応じて規格化されて、複数の相対ピーク強度を示す。複数のスペクトルの主要な特徴は、被分析物の濃度に依存しないことに留意すべきである。
【0016】
【図9】図9−1の(A)から(D)、および図9−2の(E)から(H)は、SERSとCOINの複数のラマン信号の比較を示す。複数のSERSテストにおいて、8−アザアデニンを含む複数の銀コロイドが試薬と混合され、続いて、ラマン散乱信号が測定される前に、水(−Li)あるいはLiCl(+Li)のいずれかが混合された。8−アザアデニンを含むCOINに対しても同一の工程が用いられた。BAはN−ベンゾイルアデニン、BSAは牛血清アルブミン、TwnはTween−20(登録商標)、ethはエタノール、複数のCOIN(C)の複数のラマンスペクトルは、SERS(S)から得られた複数のスペクトルと重ね合わされている。示している複数のCOINスペクトルは、各SERSと比較して異なる複数の主要ピークを有する。
【0017】
【図10】複数のラマン標識の吸収スペクトルを示す。25μMの8−アザアデニン(AA)および5μMのN−ベンゾイルアデニン(BA)がそれぞれ、複数のCOINを作るのに用いられた。COINが合成された後に、COIN溶液が、300kDaのフィルター(Pall Life Sciences、VWRを介して)ユニットを通して、遠心分離(1000xg、5分)によってろ過され、ろ過後の透明な液が吸収測定に用いられた。また、25μMのAAと、5μMのBAと、1mMのクエン酸ナトリウムの複数の吸収スペクトルも示す。データは、ラマン標識のない複数の分子が溶液からなくなったことを示唆する。
【0018】
【図11】(A)および(B)は、多重分析において取得された複数のCOIN信号を示す(図7からの続きである)。複数のCOINは、所望する複数の信号に応じて、上述した2.5から20μMの濃度で2または3のラマン標識の混合を用いて、オーブンインキュベーション手法により作られた3つのラマン標識は、8−アザアデニン(AA)、9−アミノアクリジン(AN)、メチレンブルー(MB)であった。複数の主要なピークの位置は、複数の矢印で示されている。複数のピーク高さ(任意の単位)は、最大値に応じて規格化された。複数のスペクトルは、お互いに1ユニットずつオフセットされている。図11の(A)は、示された相対ピーク高さが得られる濃度での2つのラマン標識(AAおよびMB)を用いて作られたCOIN信号を示す。AA=MB(HH)、AA>MA(HL)、およびAA<MB(LH)である。図11の(B)は、示された複数の信号を生成する濃度で3つのラマン標識の混合物から作られた複数のCOINの複数のラマン信号を示す。HHLは、AA(H)およびAN(H)の高いピーク強度、並びにMB(L)の低いピーク強度を意味しており、HLHは、AA(H)の高いピーク強度および、AN(L)の低いピーク強度、およびMB(H)の高いピーク強度を意味している。他の複数の特徴がコンピュータ分析によって明らかにされた。
【0019】
【図12】典型的なCOIN含有マイクロ球の概略図である。
【0020】
【図13】COIN含有マイクロ球の生成の方法(インクルージョン法)を示すフローチャートである。
【0021】
【図14】COIN含有マイクロ球の他の生成方法(ソークイン法)を示す。
【0022】
【図15】COIN含有マイクロ球の他の生成方法(ビルドイン法)を示す。
【0023】
【図16】COIN含有マイクロ球の他の生成方法(ビルドアウト法)を示す。
【発明の開示】
【0024】
本発明の複数の実施形態は、複数の会合した粒子の表面、および複数の金属粒子が最初に接触した複数の接合部に吸着した、複数のラマン活性有機化合物を含む金属クラスターを形成する、いくつかの融合または会合した複数の金属粒子を含む複数の合成有機無機ナノクラスター(COIN)を提供する。一般的に、複数のCOINは、複数の増感ラマン信号および複数の区別できるラマン信号を生成するために広範囲の複数の有機化合物から合成される。合成される複数のCOINが広範囲であることにより、本発明の複数の実施形態においては、複数のCOINは、複数の生体被分析物の多重検出のためのコーディングシステムとして用いられる。
【0025】
一般的に、本発明による複数の粒子は、約1μm以下の大きさで、複数の有機化合物の存在下で粒子成長により形成される。そのような複数のナノクラスターの準備は、複数の金属が複数の有機化合物を吸着する能力を利用する。実際には、ラマン活性な複数の有機化合物が、複数の金属コロイドの形成中に複数の金属粒子上に吸着されるので、多くのラマン活性な有機化合物が、特別な結合化学を必要とせずに、ナノ粒子中に組み込まれる。
【0026】
典型的なSERS測定においては、被分析物は、複数の金属原子または被分析物があるコロイド上に堆積させる、またはともに会合させることにより検出される。図1(A)に示したように、標準SERSが、複数の銀粒子上に目標被分析物"A"および"B"が吸着することによって、目標分子"A"および"B"をそれらのラマン信号に従って検出するための増幅段階として用いられる。図1(C)の複数のスペクトルは、複数の塩によって生じたコロイドの会合の後に得られたSERS信号が、標識が誘起されたコロイド会合体に起因する、複数の信号がほとんど検出できない塩の添加がない場合に比べて、少なくとも10倍強いことを示す。
【0027】
複数の有機化合物が金属コロイド上に吸着されて、金属コロイド会合体となることが分かっている。さらに、会合した複数の金属コロイドが、上昇した温度において融合することが発見されている。複数の誘起ラマン標識は、真性SERS活性体を有する複数の合成有機無機ナノクラスター(COIN)を形成するために、一体化した金属の複数の粒子に組み込まれる。例えば、われわれは、直径が約12nmの銀の種コロイドを合成して、有機ラマン標識(例えば、20μMの8−アザアデニン)と複数の銀コロイドとを混合した。続いて、還元剤の存在下で溶液を加熱することにより、AgNOからの金属銀を追加的に生成した。溶液の色が黄色からオレンジへ、続いて、茶色、そして最終的には青色へと変化した。色変化は吸光測定により定量した(図2(A))。主要吸収ピークは、はじめの50分で、395nmからレッドシフトして、およそ420nmを維持した。同時に、小さなショルダーピークが500nmのところに生じた(図2(B))。その後に、より長波長(すなわち700nm)での吸収が、62.5分の時点まで増加した。12.5分の期間の間、SERS活性は、最大に達した(図2(B))。主要ピークの遷移の完了の後であって、銀が会合して沈殿し始める前(700nmのピークが減少する前)に、SERS活性は頂点に達するので、われわれは、SERS活性COINの形成は、粒子の拡大(融合)段階、および続いて起こる粒子クラスター化段階の2つの段階を有すると結論付けた。2つの段階は、電子顕微鏡による研究により裏付けられる。銀の種の懸濁液が、有機ラマン標識がない状態で40分間の間100℃で加熱された場合には、溶液は、明るいオレンジ色を維持し、複数の銀粒子の大部分は10nm以下のままであった。ラマン標識は、銀の種溶液に添加され、オレンジ色を発色するまで溶液が過熱された。この点では、SERS活性は検出されず、小さな銀コロイドのほとんどが、10nmよりも大きい、比較的大きなコロイドに変化した。さらに加熱した後に、強いラマン活性に関連する茶色がかった色が発色した。この段階では、本例において、複数の粒子クラスターは、2以上の主要な粒子を含んでいることが明らかとなった。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、本例における複数のSERS活性粒子が、約20から30nmの複数の主要な粒子を含む、約100nmの複数の会合体であることを示した。
【0028】
複数のCOINは、複数の真性SERS信号を生成する。われわれは、様々な試薬の存在下での典型的なSERS反応と、複数のCOINのSERS活性のデータとを比較した(図3(A)から(D))。典型的なSERS反応は、強いSERS活性のための複数のナノ粒子の会合を引き起こすために塩の添加を必要とする。図3(A)は、ラマン標識(8−アザアデニン)が複数の銀コロイドおよび1価の塩(+LiCl)と混合されたときの、典型的なラマンスペクトルを示す。反応物から塩がなくなったときには(−LiCl)、SERS信号は検出されなかった。それに反して、塩が添加されていない(図3(B))COIN試料から強いラマン信号が検出され、塩が含まれた場合には、ラマン信号は大幅に減少した。これは、おそらく、増加した会合、および複数のCOIN粒子の沈殿に起因する。典型的なSERSスペクトルと比較すると、1100cm−1および1570cm−1のピークが、COINスペクトルからはほとんど完全に消失する。また、スペクトルの違いは、検査された他の複数のラマン標識からも観察された(図8の複数の例を参照。)。例えば、複数のCOIN粒子は、複数のラマン標識の検査のためのごくわずかなラマン増感活性を有していた(10μMのN−ベンゾイルアデニン。図9(A)(B)を参照。)。また、0.3%の牛血清アルブミン(BSA)によって、複数のSERS信号が完全に抑制されたことが観察された。それに反して、COINの複数の信号は、塩が存在するか否かにかかわらず、添加されたBSAの存在下で著しく変化することはなかった。Tween−20(登録商標)、複数の生化学反応で一般に用いられる非イオン性界面活性剤は、塩によって生じた会合を阻害することが分かったが、低度のコロイド会合の原因となることが、別々の実験から観察された。エタノールがない反応物と比較して、30%のエタノール(塩を添加している)の存在下でのSERS反応が、1550cm−1におけるピーク高さを増大させることは興味深いことである(図9(G)参照。)。他方では、複数のCOIN信号は、水中の複数のCOINと、複数のスペクトルおよび関連している複数のピーク強度の観点からは、等価であった(図3(D)および図9(H)参照。)。これらの機能分析は、複数のCOINが、典型的な複数のSERS反応に用いられる塩によって生じた複数のコロイド会合体とは異なる、明らかな化学的および物理的な複数の特性を有することを明白に示す。
【0029】
さらなる複数の実施例において、複数の合成有機無機ナノクラスターの複数の合成方法が提供される。例えば、金属コロイドを形成するために適した状態のもとでラマン活性な有機化合物の存在下で金属を減少させることにより、そのような複数の方法は実行され、その結果、ラマン活性な有機化合物が複数の金属粒子上、および/または複数の金属粒子の接続部に吸着している、いくつか融合または会合した複数の金属粒子のクラスターが生成される。
【0030】
本発明による複数のナノクラスターは、有機化合物アシスティッドメタルフュージョン(OCAMF)と呼ばれる物理化学的プロセスによって生成される。複数の有機化合物が金属コロイド上に吸着され、複数の粒子の表面ゼータ準位を変化させることによって会合の原因となる(図7(A)(B)参照。)。そして、会合した金属コロイドは、消音によって融合することが分かっている。複数の有機ラマン標識が、安定な複数のクラスターを作り、本質的に増感ラマン散乱信号を生成するために融合した複数の金属粒子へ組み込まれる。複数の有機ラマン標識分子と、複数の金属コロイドとの間の相互作用は、相互利益を有する。複数の信号源としての役割以外に、複数の有機分子は、SERSのEMEを支持して、金属粒子の会合を、促進して安定化させる。一方で、複数の金属粒子は、特に複数のクラスター接合部分に、複数のラマン標識分子を保持し安定化させる空間を提供する。これらの合成有機無機ナノクラスター(COIN)は、複数の分子プローブの複数のレポーターとして用いられる。当該コンセプトは図1(B)に図示されており、化合物"A"および"B"から2種類のCOINが作られて、目的とする被分析物へのプローブの付着を通して被分析物"C"および"D"を検出するための複数の特定の親和性プローブで修飾される。
【0031】
OCAMFベースのCOIN合成化学を用いることにより、複数のラマン標識の限られた数を混合することにより、多数の異なるCOIN信号を生成することが可能である。複数のCOINは、多重アッセイでの使用に適している。簡略化したシナリオにおいて、複数のCOINで標識化された試料のラマンスペクトルは、3つのパラメータによって特徴づけられる。(a)複数のラマン標識の化学構造および利用可能な複数の標識の数に依存する、ピーク位置(Lと表す)、(b)単一のCOINとともに用いられる標識の数に依存する、ピークの数(Mと表す)、(c)相対的なピーク強度の範囲に依存する、ピーク高さ(iと表す)。可能なラマン信号(Tと表す)の合計は、以下の式により計算できる。
【数1】

ここで、
【数2】

であり、k(k=1からMまで)のラベルを、与えられたi値と組み合わせることにより生成される、異なる複数のラマンスペクトルの数を示す強度乗数である。多重標識が混合されて複数のCOINを作ることを証明するために、われわれは、COIN合成(L=3、M=3、およびi=2)のための3つのラマン標識の組み合わせを試験した。図4に示したように(図11も参照)、1つの標識、2つの標識、および3つの標識の結果は全て、予想したものだった。これらのスペクトル信号は、近接した位置の複数のピーク(AAとANとの間は15cm−1)は、視覚的に分離されうることを明示する。理論的には、OCAMFベースのCOIN合成化学を用いて、複数の有機分子が複数のCOIN中にラマン標識として組み込まれることにより、百万を超えるCOIN信号が、ラマンシフトが500から200cm−1の範囲内で生じうる。
【0032】
ここで用いたように、有機化合物という用語は、少なくとも1つの芳香環および少なくとも1つの窒素原子を含むいかなる炭化水素をも言及する。また、複数の有機化合物は、O、S、P、および同様の原子を含んでいてよい。ここで用いたように、ラマン活性な有機化合物は、レーザによる励起に応じて単一のSERS信号を生成する有機分子を言及する。ラマン活性とラマン活性でない化合物の双方を含む、様々な有機化合物が、複数のナノクラスターの複数の構成要素として用いられることが意図されている。ある実施形態においては、複数のラマン活性な有機化合物は、多環芳香族、または複素環式芳香族化合物である。典型的には、ラマン活性な化合物は、約500ダルトン以下の分子量である。
【0033】
限定されないいくつかの例においては、表1に示すように様々な有機ラマン標識が、COIN合成に使用された。検査された複数の化合物は、いくつかのクラスに分類されることができる。(a)透明で蛍光性のないもの(例えば、8−アザアデニン)、(b)色つきの複数の色素(例えば、メチレンブルー)、(c)複数の蛍光性色素(例えば、9−アミノアクリジン)、および(d)複数のチオール化合物(例えば、6−メルカプトプリン)。複数の化合物の全ては、1mM以下の水溶液に可溶性であった。複数のCOINからの複数のラマンシフトピークは、必ずしもSERSのピークとは一致する必要のないことに留意すべきである。検査において、40以上の有機化合物が、COIN(表1−1から表1−6および図8を参照)中に組み込まれた場合にプラスの信号を示し、その中で、複数の蛍光性色素が最も強いCOIN信号を示した。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【0034】
さらに、これらのラマン活性な化合物は、複数の蛍光性化合物または複数の非蛍光性化合物を含み得ることが理解される。典型的なラマン活性な複数の有機化合物は、いかに限られないが、アデニン、4−アミノピラゾロ(3,4−d)ピリミジン、2−フルオロアデニン、N6−ベンゾイルアデニン、キネチン、ジメチルアリルアミノアデニン、ゼアチン、ブロモアデニン、8−アザアデニン、8−アザグアニン、6−メルカプトプリン、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ(3,4−d)ピリミジン、8−メルカプトアデニン、9−アミノ−アクリジン、および同様の化合物を含む。
【0035】
さらに、ラマン活性な複数の有機化合物の限定されない例は、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール)、テキサス赤色染料、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリトロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5−カルボキシ−4’、5’−ジクロロ−2’、7’−ジメトキシフルオレセイン、5−カルボキシ−2’、4’、5’、7’−テトラクロロフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシローダミン、6−カルボキシローダミン、6−カルボキシテトラメチルアミノフタロシアニン、アゾメチン類、シアニン類、キサンチン類、スクシニルフルオレセイン類、アミノアクリジン、および同様の化合物を含む。これらおよび他の複数のラマン活性な有機化合物が、商業的に取得しうる(例えば、Molecular Probes、Eugene、OR)。
【0036】
本願で述べる蛍光性化合物が複数のナノクラスターに組み込まれる場合、以下のものに限られないが、複数の化合物は、複数の色素、本質的に蛍光性の複数のタンパク質、複数のランタニドリン化合物、および同様の化合物を含む。複数の色素は、例えば、テキサスレッド、ROX(6−カルボキシ−X−ローダミン)、ローダミン−NHS、およびTAMR(5/6−カルボキシテトラメチルローダミンNHS)のようなローダミンおよびその誘導体、5−ブロモメチルフルオレセイン、およびFAM(5’−カルボキシフルオレセインNHS)、ルシファーイエロー、IAEDANS、7−Me、N−クマリン−4−アセテート、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン−3−アセテート、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセテート(AMCA)、モノブロモビマン、トリスルホン酸ピレン、カスケードブルー、並びにモノブロモトリメチル−アンモニオビマンのようなフルオレセインおよびその誘導体を含む。
【0037】
OCAMF化学反応は、多くの種類のCOINを生成するために、複数の金属のコロイドに広範囲の種類のラマン標識を組み込むことを可能とする。様々な比率で複数のラマン活性な有機化合物を数時間混合することにより、単純な1段階の化学的な工程が、異なる複数のラマン信号を有する多量のCOINの並行合成を可能とする。
【0038】
COIN合成に用いられる複数の金属ナノ粒子は、複数の所望する結果のCOINの大きさよりも小さい大きさが選ばれるものの、大きさの点で異なる。例えば、オーブンおよびリフラックス合成方法のいくつかの応用において、平均直径が約3から約12nmの範囲の複数の銀粒子が、複数の銀COINの形成に用いられ、約13から約15nmの範囲の複数の金粒子が複数の金COINの形成に用いられた。他の応用においては、例えば、コールド合成法において、約10から約80nmの広いサイズの分散を有した複数の銀粒子が用いられた。複数の典型的な金属、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウム、および他の同種の金属が、複数のナノクラスターの形成に用いられることが意図される。さらに、例えば、金のコアを有した複数の銀ナノ粒子のような、複数の多重金属ナノ粒子が用いられてもよい。
【0039】
被分析物の検出のような応用において、典型的には、複数のCOINは平均直径が、約20nmから約200nmの範囲、より好ましくは平均直径が約30nmから約200nmの範囲、そしてより好ましくは約40nmから約200nm、さらに好ましくは約50nmから約200nm、より好ましくは約30nmから約150nmの範囲である。
【0040】
本発明のある実施形態によれば、用いられる複数の金属粒子は複数の金属コロイドである。本願で用いられるように、コロイドという用語は、通常、水性溶液である液体中に懸濁された、複数のナノメータサイズの粒子を有する複数の錯体の流動体の分類を言及する。金属コロイドの形成、または、液体中での複数の有機化合物の存在下での成長の間に、複数の有機化合物は、液体中に懸濁した複数の第1の金属粒子上、および/または、複数の第1の金属粒子間の隙間に吸着される。複数の金属コロイドから複数のナノクラスターの形成に用いられる典型的な複数の金属は、例えば、銀、金、白金、銅、アルミニウム、および同様の金属であること害とされる。本発明の複数の方法および複数の組成において用いられる複数のコロイド中の複数の金属粒子の典型的な平均の大きさは、約3nmから約15nmの範囲である。
【0041】
一般的に、複数のCOINは、以下のように合成される。適切な複数の金属カチオン、還元剤、および少なくとも1つの適切なラマン活性な有機化合物を含む水性溶液が準備される。続いて、複数の中性なコロイド状の金属粒子を形成するために、溶液の複数の成分が、複数の金属カチオンを還元させる状態にさせる。複数の金属コロイドの形成が、適切なラマン活性名有機化合物の存在下で発生するので、ラマン活性な有機化合物は、コロイドの形成中に容易に金属上に吸着される。この種のナノ粒子は、クラスター、または、複数の金属粒子の表面に吸着され、第1の金属粒子間の接点に捕捉された複数のラマン活性な有機化合物を有するいくつかの第1の金属粒子の会合体である。複数のCOINは、通常球形であり、しばしば、複数の溝および複数の隆起を含む。複数のCOINは、膜ろ過により分離でき、遠心分離により異なる大きさの複数のCOINを濃縮できる。
【0042】
本発明の他の実施形態においては、複数のナノクラスターは第1の金属とは異なる第2の金属を含み、第2の金属は、ナノクラスターの表面を覆う層を形成する。この種のナノクラスターを生成するために、複数のCOINが、適切な複数の第2の金属のカチオンおよび還元剤を含む水性溶液中に置かれる。続いて、溶液の複数の成分が、複数の第2の金属カチオンを還元させる状態にさせ、それゆえ、ナノクラスターの表面を覆う金属層が形成される。ある実施形態によれば、第2の金属層は、例えば、銀、金、白金、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、および同種の金属のような、複数の金属を含む。この種のナノクラスターは分離され、あるいは、複数の単一金属COINと同様にして濃縮される。
【0043】
ある実施形態によれば、ナノクラスターの表面を覆っている金属層は、保護層と言及される。保護層は、複数のナノクラスターの水溶液中での安定性に寄与する。他の複数の金属保護層、またはさらなる複数の金属保護層として、複数のCOINは、シリカの層で覆われうる。仮に、複数のCOINが既に、例えば、金のような金属層で覆われている場合には、シリカ層は、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)によって、複数のCOINのビトレオフィリゼーションによって金層に結合する。シリカの堆積は、過飽和シリカ溶液から開始され、アンモニアおよびテトラエチルオルトシリケート(TEOS)の滴下によるシリカ層の成長がその後に続く。複数のシリカで覆われたCOINは、標準的なシリカ化学反応を用いて容易に官能基化できる。
【0044】
他のある実施形態によれば、複数のCOINは、金属表面またはシリカ層を覆う有気層を含む。ある実施形態によれば、これらの型の複数のナノ粒子は、複数の有機化合物の複数のCOIN表面への吸着あるいは共有結合によって生成される。金属表面への有機層の共有結合は、例えば、チオールメタル結合を介する方法のような、当業者にとって周知の様々な手法によって達成される。他の実施形態においては、複数の有機化合物は、架橋して分子のネットワークを形成する。
【0045】
また、有機層は、コロイドの安定性およびさらなる誘導体化のための複数の官能基を提供するために用いられる。有機層は任意に架橋して、固体のコーティングを形成する。典型的な有機層は、複数のCOIN上にポリアクリル酸で修飾されたオクチルアミンの吸着によって生成され、正に帯電した複数のアミン基によって、吸着は促進される。続いて、高分子の複数のカルボキシル基は、リシン、(1,6)−ジアミノヘプタン、および同様の化合物のような適切な薬剤により架橋される。複数の未反応カルボキシル基は、さらなる誘導体化に用いられ得る。また、他の複数の官能基が、修飾されたポリアクリル骨格を通じて導入される。
【0046】
さらに、複数のコーティングされたCOINの所望の特性を提供するために、様々な組み合わせの金属および有機コーティングによって覆われる。例えば、複数のCOINは、シリカまたは固体の複数の有機コーティングのような吸着層を提供する前に、まず、より反応活性な銀を密封するために金層で覆われる。外側の層はポーラスではあるが、内側の金層は、複数のCOINが異なる複数の応用において用いられる複数の薬剤による化学的なアタックを阻止する。他の例では、さらにコロイドの安定性を提供するために、シリカまたは金層に吸着層を適用する。
【0047】
他の実施形態によれば、複数のCOINに用いられる複数の金属粒子は、例えば、酸化鉄、および同種のもののような、複数の磁性体を含む。複数の磁性COINは、一般的に利用可能な磁気粒子取り扱いシステムを用いて、遠心分離せずに取り扱われる。実際、特定の生物学的プローブでタグ付けされた複数のCOIN粒子の分離に、磁力が用いられる。
【0048】
また他の実施形態によれば、試料中の被分析物の検出のために複数の方法が提供される。そのような複数の方法は、例えば、被分析物を含む試料を、結合したプローブを有する複数のCOINに接触させ、プローブが被分析物に結合し、いかなる複数のCOIN−被分析物複合体もいかなる複数の複合化していないCOINから分離され、ナノクラスターからの、被分析物の存在を示す複数のSERS信号を検出することによって実行される。
【0049】
さらに他の実施形態によれば、セットにとって特有のラマン信号を有するセットの各要素を有する、複数のラマン活性な金属ナノクラスターのセットを用いて、試料中の複数の被分析物を同定するための複数の方法が提供される。例えば、そのような複数の方法は、複数の被分析物を含むと思われる試料を多数のナノクラスターに接触させ、複数のナノクラスターと接触した試料の多重の種類の複数のSERS信号を検出し、複数のナノクラスターからの複数のSERS信号と、複数のナノクラスターが結合した複数の被分析物の同一性とを関連付けることにより実行される。
【0050】
他の実施形態によれば、本発明は、試料中の複数の生物的な被分析物をセットの各要素が、そこに組み込まれている当該セットに特有なラマン信号を有する、少なくとも1つのラマン活性な有機化合物によって生成される、平均直径が約50nmから約200nmであるラマン活性な金属クラスターのセットと多数の生物的な被分析物と、複数の複合体を形成するための試料中に存在する複数の被分析物へ、複数のプローブの結合を可能とするのに適した状況下で既知の生物学的な被分析物に特異的に結合しているプローブとを備える試料とを接触させることによって見分ける複数の方法を提供する。結合した複数のクラスターが分離され、結合した複数の複合体のラマン活性な複数の有機化合物によって放出される複数のラマン信号が、多数の手法によって検出される。各ラマン信号は、試料中に、既知の生物学的な被分析物が存在することを示す。
【0051】
複数のCOINが、生物学上の被分析物の検出のための複数のタグとして使用され、1つの例においては、われわれは、他の複数の標識を用いたサンドイッチ免疫学的検定において必要な特定の結合の後の信号増幅段階が、複数の被分析物のタグ(図5(A))として複数のCOINが用いられたときには必要ではないことを除いて、標準的なサンドイッチ免疫的検定(図5(A)参照)と同様な分析スキームを用いた。たんぱく質のインターロイキン(IL−2)が、IL−2分子の平均密度の最大値がレーザビームのクロスセクション領域あたり1分子以下(12ミクロンあたり0.77分子、レーザビーム内に1.3ヨクトモル)となるように、予め反−IL−2捕捉抗体によって覆われた表面に結合され、反−IL−2抗体で覆われた複数のCOINが、固定化された複数のIL−2分子の検出に用いられた。図5(B)に示したように、所望のIL−2信号を有する平均28%のスペクトルが観察され、 全ての適用された被分析物分子のうち36%が検出された割合であることを示唆した。この検出割合は、実験条件下において、サンドイッチ検定における不完全な結合の可能性、および不活性な複数のCOINの存在の可能性を考慮すれば、平均して10個以下の被分析物分子を各データ収集領域が持っているときだけに可能である。
【0052】
複数の捕捉基板は、複数の抗体をIL−2およびIL−8に接触させて混合させることにより生成した。同様にして、COIN(それぞれAAとBAの信号を有する)の2つのセットが、2つの被分析物に特異的に結合している複数の検出抗体によって生成された。2つの被分析物の異なる割合を用いた場合に、複数の正のCOIN信号が、用いられた複数の被分析物の既知の割合に基づく予想値とよく適合する割合で検出された。
【0053】
複数の被分析物の検出に用いるために、COINにプローブが結合される。ある実施形態によれば、複数の実験プローブは、複数の抗体、複数の抗原、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、複数の受容体、複数の配位子、および同様のものである。ポリヌクレオチドという用語は、本願では、広く、リン酸ジエステル結合によってお互いに架橋しているデオキシリボヌクレオチド、またはリボヌクレオチドの配列を意味する。便宜上、オリゴヌクレオチドという用語は、本願では、プライマーまたはプローブとして用いられるポリヌクレオチドを言及する。一般的に、選択されたヌクレオチドの配列に選択的にハイブリダイズするプローブまたはプライマーとして有益なオリゴヌクレオチドは、少なくとも約10個のヌクレオチドの長さであり、通常、少なくとも15個のヌクレオチドの長さであり、例えば、約15個と約50個のヌクレオチドの間の長さである。ポリヌクレオチドの複数のプローブは、生物学的な試料中の相補的な複数のポリヌクレオチドを検出するのに特に有用であり、また、既知のポリヌクレオチドのプローブを、本願で述べたラマン活性な複数の有機化合物の組み合わせによる既知のラマン活性信号と対にすることにより、DNA配列に用いられ得る。
【0054】
ポリヌクレオチドは、RNAまたはDNAであってよく、それは、遺伝子またはその一部であってよく、cDNA、合成ポリデオキシリボ核酸配列、あるいは同様のもの、およびDNA/RNAハイブリッドと同様な一本鎖または二本鎖であってよい。様々な実施形態によれば、オリゴヌクレオチド(例えば、プローブまたはプライマー)を含むポリヌクレオチドは、ヌクレオシド、または複数のヌクレオチド類似物、あるいは、リン酸ジエステル結合以外のバックボーン結合を含む。一般的に、ポリヌクレオチドを有する複数のヌクレオチドは、2’−デオキシリボースあるいはリボースに連結したアデニン、シトシン、グアニン、あるいはウラシルのような複数のリボヌクレオチドに連結した、アデニン、シトシン、グアニン、あるいはチミンのように、自然に複数のデオキシリボヌクレオチドを発生する。しかしながら、ポリヌクレオチドあるいはオリゴヌクレオチドは、また、自然発生しない合成ヌクレオチド、あるいは自然に発生する修飾された複数のヌクレオチドを含む、複数のヌクレオチド類似物を含みうる。
【0055】
一般に、ポリヌクレオチドの複数のヌクレオチドを結合する共有結合はリン酸ジエステル結合である。しかしながら、共有結合はまた、チオジエステル結合、ホスホロチオアート結合、ペプチドライクアミド結合、あるいは当該技術分野で周知の複数の合成ポリヌクレオチドを形成する複数のヌクレオチドを結合させる他のいかなる結合を含む、多数の他の結合のいずれであってもよい。例えば、組織培養基あるいは、生体への投与を含む、核酸分解活性物質を含む環境にポリヌクレオチドがさらされるところでの、自然に発生しない複数のヌクレオチド類似体の組み込み、あるいは、複数のヌクレオチドまたは複数の類似体を結合する複数の結合は、修飾された複数のポリヌクレオチドは分解による影響が少ないので、部分的に有益である。
【0056】
本願で用いる、選択ハイブリダイゼーション、または選択的ハイブリダイズという用語は、ヌクレオチド配列が、選択されたヌクレオチド配列を特定するのに役に立つように、無関係の複数のヌクレオチド配列の上で選択されたヌクレオチド配列と十分大きい程度まで優先的に結合するように、適度にストリンジェントな、または特にストリンジェントな状況下でハイブリダイゼーションすることを言及する。若干量の非特異的なハイブリダイゼーションが起こり得ることが認識されるであろうが、しかし、目標ヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションが、非特異的なクロスハイブリダイゼーションが区別できるほどに十分に選択的ならば、例えば、少なくとも2フォールドより選択的であり、一般的には少なくとも3フォールドより選択的であり、通常少なくとも約5フォールドより選択的であり、特に少なくとも約10フォールドより選択的であるならば、例えば、特に、目標核酸分子を除く分子と十分に類似または同一の核酸分子である、目標分子を除く他の核酸分子と比較して、目標核酸分子に結合している標識化されたオリゴヌクレオチドに量を基にして許容される。選択的ハイブリダイゼーションを可能とする状態は、実験的に決定され得、あるいは、例えば、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドのGC:ATコンテンツの比較、およびハイブリダイズされた配列、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドの長さ、並びに数、もしあれば、オリゴヌクレオチドとハイブリダイズした配列との間のミスマッチを基に推定される。
【0057】
進歩的により高度にストリンジェントな状態での例は以下の通りである。すなわち、略室温における2xSSC/0.1%SDS(ハイブリダイゼーションコンディション);略室温における0.2xSSC/0.1%SDS(低ストリンジェンシーコンディション);略42℃における0.2xSSC/0.1%SDS(中程度のストリンジェンシーコンディション);略68℃における0.1xSSC(高ストリンジェンシーコンディション)。洗浄はこれらのコンディションのうちの1つだけを用いて実施された。例えば、高ストリンジェンシーコンディション、または、複数のコンディションの各々が用いられ、例えば、各々10から15分なされ、上記で挙げた順に、挙げた段階の一部または全部を繰り返した。しかしながら、上述したように、複数の最適な状態は、特定のハイブリダイゼーション反応に依存して変化し、実験的に定められる者である。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、有機層は抗体プローブを含む。本願では、抗体という用語は、ポリクローナルおよびモノクローナルな複数の抗体を含み、そのような複数の抗体の複数の断片に結合した抗原も同様に含む、その最も広い意味で用いられる。本発明の方法で有益な抗体、またはその断片に結合した抗原は、例えば、被分析物のエピトープのための特定の結合活性を有することにより特徴づけられる。
【0059】
本発明のある複数の態様によれば、抗体は複数のナノクラスターに結合されている。例えば、抗体は、例えば、複数の一本鎖抗体、キメラ、二官能性、およびヒト抗体、そして、これらの複数の断片に抗原が結合したものを含む、自然に発生しない複数の抗体と同様に自然発生する複数の抗体を含む。そのような自然に発生しない複数の抗原は、固相ペプチド合成を用いて構成され、例えば、様々な重鎖および軽鎖を含む複数のスクリーニング組み合わせライブラリーによる、組み換え技術によって生成または取得できる。例えば、キメラ、ヒト化、CDRグラフト化、一本鎖、および二官能性抗体を作成するこれらおよび他の方法は、当業者にとって周知である。
【0060】
特異的に結合する、または特定の結合活性という用語は、抗体に関して用いられた場合には、抗体と特定のエピトープとの相互作用が、少なくとも約1×10−6の、一般的には少なくとも約1×10−7の、通常少なくとも約1×10−8の、そして特に少なくとも約1×10−9または1×10−10またはより少ない解離定数を有することを意味する。そのようなものとして、抗原のエピトープのための特定の結合活性を保有する抗体のFab、F(ab’)2、FdおよびFv断片は、抗原の定義内に含まれる。
【0061】
本発明の状況においては、配位子という用語は、自然に発生する受容体の特定の結合パートナー、合成される受容体の特定の結合パートナー、あるいは、自然または合成された複数の配位子の適切な誘導体を意味する。当業者ならば、分子(あるいは、高分子複合体)が受容体および配位子の双方であり得ることを理解するであろう。一般的に、より小さな分子量を有する結合パートナーは、配位子と言及され、より大きな分子量を有する結合パートナーは、受容体と言及される。
【0062】
他の実施形態によれば、試料中の被分析物を検出する複数の方法が提供される。例えば、そのような複数の方法は、被分析物を含む試料を、プローブを含むナノクラスターに接触させることにより実行される。すなわち、プローブが被分析物に結合し、ナノクラスターによって放出された、被分析物の存在を示す複数のSERS信号が検出される。より一般的には、試料は、生物学的な複数の被分析物の集積を含み、 試料は複数のCOINのセットと接触しており、本願で述べたように、セットの各要素には既知の生物学的な被分析物に特異的に結合するプローブが適用される。そして、ラマン活性な複数の有機化合物の異なる組み合わせが、プローブが明確に結合する既知の被分析物に容易に相互に関連付けられる固有のラマン信号を提供するために、セットの複数の要素に組み込まれる。
【0063】
被分析物は、いかなる分子または化合物をも意味する。被分析物は、固体、液体、ガス状、あるいは気相状態であってよい。ガス状あるいは気相の被分析物は、例えば、液体のヘッドスペースに、外気に、呼気標本に、ガス中に、あるいは、上述のいかなるものの混入物質として存在する分子または化合物を意味する。ガスあるいは気相の物理的状態が、例えば、複数の塩の存在または添加によって液体の表面張力に影響を与えることによるのと同様に、圧力、温度によって変化されることが理解されるであろう。
【0064】
上記で述べたように、本発明の複数の方法は、ある面において、プローブへの被分析物の結合を検出する。被分析物は、特定の結合ペア(sbp)の要素から構成され得、また、一価(モノエピトープ)、あるいは多価(ポリエピトープ)の、通常、抗原性あるいはハプテン性の配位子であってもよく、また、少なくとも1つの共通のエピトープまたは決定基を共有する単一の化合物あるいは多数の化合物である。被分析物は、バクテリア、あるいはA、B、D等のようなセルベアリング血液型抗原のような細胞の一部であってよく、あるいは、HLA抗原、または、例えば、バクテリア、真菌、原生動物、あるいはウイルスのようなマイクロ抗原であってもよい。本発明のある面によれば、被分析物は帯電する。
【0065】
特定の結合ペアの要素(sbp要素)は、2つの異なる分子の1つであり、表面上に、あるいは特異的に結合している空洞中に領域を有し、それゆえ、もう一方の分子の特定の空間および極性の組織と同様の相補的な状態として定義される。特定の結合ペアの要素は、配位子および受容体(アンチ配位子)、または被分析物およびプローブとして言及される。それゆえに、プローブは被分析物に特異的に結合している分子である。これらは通常、抗原−抗体のような免疫学的なペアの要素であり、他の特定の結合ペア、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモン受容体、核酸の二重構造、IgG−たんぱく質A、DNA−DNA、DNA−RNAのようなポリヌクレオチドのペア、および同様のものは免疫学的なペアではないがsbp要素の本発明および定義に含まれるような要素でもある。
【0066】
他の分子の実質的により少ない認識と比べて、特異的な結合はもう片方のための2つの異なった分子の1つの特異的な認識である。一般的に、複数の分子はその表面に、2つの分子間で特定の認識を生じさせる領域、あるいは、空洞を有する。特異的な結合の典型例は、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション相互作用などである。非特異的な結合は、特異的な表面構造に比較的依存する複数の分子間での非共有結合的な結合である。非特異的な結合は、複数の分子間での疎水性相互作用を含むいくつかの要因に起因する。
【0067】
本発明の複数のナノクラスターは、例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、たんぱく質、酵素、抗体、または抗原のような、特定目標の被分析物の存在を検出するために用いられる。また、複数のナノクラスターは、例えば、複数の薬剤候補などの、生物活性物質の選別に用いられ、特定の目標と結合するため、あるいは、汚染物質のような物質を検出するために用いられる。上記説明のように、ペプチド、たんぱく質、オリゴヌクレオチド、あるいはアプタマーのようなプローブ部分が設計されている、いかなる被分析物も、開示された複数のナノクラスターと組み合わせて使用されてよい。
【0068】
配位子の被分析物は、例えば、ポリペプチドおよびたんぱく質、多糖類、ホルモン、核酸、並びにこれらの複数の組み合わせのような、ポリ(アミノ酸)を含む。そのような複数の組み合わせは、バクテリア、ウイルス、プリオン、細胞、染色体、遺伝子、ミトコンドリア、細胞核、細胞膜、および同様なものの複数の要素を含む。さらに、可能性のある複数の被分析物は、複数の薬物、複数の代謝物、複数の殺虫剤、複数の汚染物質、および同種の物を含む。興味のある複数の薬物の中に含まれているものは複数のアルカロイドである。複数のアルカロイドの中には、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、デキストロメトルファン、それらの複数の誘導体、および複数の代謝物を含む複数のモルヒネアルカロイド類、コカインおよびベンジルエクゴニン、それらの複数の誘導体、並びに複数の代謝物を含む複数のコカインアルカロイド類、リセルグ酸のジエチルアミドを含む、麦角アルカロイド類、ステロイドアルカロイド類、イミナゾールアルカロイド類、キニーネおよびキニジンを含むキナゾリンアルカロイド類、ジテルペンアルカロイド類、それらの複数の誘導体および複数の代謝物が含まれる。
【0069】
被分析物という用語は、以下に定義する複数のポリヌクレオチドのような、複数のポリヌクレオチド被分析物をさらに含む。これらは、例えば、m−RNA、r−RNA、t−RNA、DNA、DNA−RNA二重構造を含む。また、被分析物という用語は、例えば、複数のペプチド核酸(PNA)、複数の制限酵素、複数の活性化因子、複数の抑制体、複数のヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、複数のヒストン、複数の回復酵素、複数の化学療法薬、および同種の物質のような、ポリヌクレオチドが結合した物質である複数の受容体を含む。
【0070】
被分析物は、ホストから体液のような試料中で直接検出された分子であってもよい。試料は直接試験されてよく、あるいは、より容易に検出できるようにするために前処理が施されてよい。さらに、興味のある被分析物は、興味のある被分析物が試料中に存在しているときにだけ、その存在が検出される、興味のある被分析物に相補的である特異的な結合ペアの要素のような、興味のある被分析物の証明となる試薬を検出することにより決定されてよい。それゆえに、被分析物の証拠となる試薬は、測定において検出される被分析物となる。体液は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、排泄物、痰、脳脊髄液、涙、鼻汁、および同種のものであってよい。
【0071】
一般的に、複数のプローブは、COIN表面上へのプローブの吸着を通して複数のCOINに結合される。もう一つの方法としては、複数のCOINは、ビオチン−アビジン結合を介して複数のプローブと連結されてよい。例えば、アビジンあるいはストレプトアビジン(あるいは、それらの類似物質)は、COINの表面、およびアビジンあるいはビオチン−アビジン(あるいはビオチン−ストレプトアビジン)結合を形成したストレプトアビジンで修飾された表面に接触しているビオチンで修飾されたプローブに吸着される。状況に応じて、アビジンあるいはストレプトアビジンは、BSAのような他のたんぱく質と結合して、および状況に応じて架橋して吸着される。さらに、カルボン酸あるいはアミン官能基を含む官能基層を有する複数のCOIN、対応するアミンあるいはカルボン酸の官能基を有する複数のプローブに関して、カルボン酸の複数の官能基と複数のアミン基とを結合させるEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)のような、水溶性の複数のカルボジイミドカップリング試薬を介して結合される。
【0072】
様々な複数の官能基に結合している複数のヌクレオチドは、商業的に入手でき(例えば、Molecular Probes、Eugene、OR;Quiagen(Operon)、Valencia、CA;およびIDT(Integrated DNA Technologies)、Coralville、IAから入手できる)、複数のオリゴヌクレオチドあるいは複数のポリヌクレオチドに組み込まれる。複数のビオチンで修飾されたヌクレオチドは、商業的に入手でき(例えば、Pierce Biotechnology、Rockford、ILまたはPanomics Inc.Redwood City、CAから入手できる)、複数の修飾されたヌクレオチドは、従来の増幅法の間に複数の核酸中に組み込まれる。複数のオリゴヌクレオチドは、商業的に利用可能なオリゴヌクレオチドの複数のシンセサイザー(例えば、Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いて合成できる。さらに、修飾された複数のヌクレオチドは、例えば、Nelson,P.Sherman−Gold,R,およびLeon,R "A New and Versatile Reagent for Incorporating Multiple Primary Aliphatic Amines into Synthetic Oligonuceotides"、Nucleic Acids Res.17:7179−7186(1989)、およびConnolly, B. Rider, P."Chemical Synthesis of Oligonucleotides Containing a FreeSulfhydryl Group and Subsequent Attachment of Thiol Specific Probes" Nucleic Acids Res. 13:4485−4502 (1985)に開示されているような、既知の複数の反応を用いて合成される。もう1つの方法としては、ビオチン、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミノ基、あるいは、カルボキシル基のような、様々な反応性基を含む複数のヌクレオチド前駆体が購入される。オリゴヌクレオチドの合成の後に、複数のCOINが、標準的な複数の化学反応を用いて結合される。COIN結合のための複数の反応性基がある、またはない、いかなる所望の配列の複数のオリゴヌクレオチドもまた、様々な広い出所(例えば、Midland Certified Reagents、Miland、TX)から購入できる。
【0073】
また、多糖類のような複数のプローブが、例えば、 Aslam, M. and Dent, A. Bioconjugation:Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences, Grove’s Dictionaries, Inc. 229,254 (1998)に開示されている複数の方法を介して、複数のCOINに結合される。そのような複数の方法は、以下のものに限られないが、過ヨウ素酸エステル酸化カップリング反応、およびビススクシンイミドエステルカップリング反応を含む。
【0074】
以下の複数のパラグラフは、複数のCOINプローブ(結合プローブを有する複数の合成有機−無機ナノクラスター(COIN))の実験的な応用に関するさらなる詳細を含む。複数のCOINプローブを利用する複数の応用の多数のさらなる具体的な例が、本明細書の複数の教示を用いて特定されうることが理解されるであろう。複数のポリペプチドとそれらの複数の目標分子との間の多くの相互作用が、複数のポリペプチドで標識化されたCOINを用いて検出されうることを当業者は理解するであろう。複数の実験の応用の1つのグループにおいて、複数の抗体で標識化されたCOIN(すなわち、COINに複数の抗体が結合している)は、溶液中、または固定化支持材上のいずれかに複数の抗原を有する、複数の抗体で標識化されたCOINの相互作用を検出するために用いられる。例えば、ELISA検定、ウエスタンブロット法、あるいは、たんぱく質配列、COIN標識化抗体の利用、または酵素または放射性化合物で標識化された第1あるいは第2の抗体の代わりに第2抗体が標識化されたCOINのような既知の複数の手法を用いてそのような免疫学的検定が実行されることが理解されるであろう。
【0075】
複数の実験手法の他のグループは、目標核酸を検出するために複数のCOINプローブを用いる。そのような手法は、例えば、臨床試料中の複数の病原菌の検出、ゲノムのDNAまたはRNAまたはメッセンジャーRNAから誘導された増幅産物の検出、あるいはクローン中に挿入された遺伝子(cDNA)の検出に有益である。目標ポリヌクレオチドの検出を目的とする複数のある手法に関しては、オリゴヌクレオチドプローブが当該技術分野において周知の複数の手法を用いて合成される。続いて、オリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドプローブで標識化されたCOINを生成するためにCOIN粒子を修飾するために用いられる。オリゴヌクレオチドプローブで標識化されたCOINは、オリゴヌクレオチドプローブが目標ポリヌクレオチドで標識化されたCOINの特異的な結合を検出するために、ハイブリダイゼーション反応に用いられる。例えば、オリゴヌクレオチドプローブが標識化されたCOINは、ノーザンブロット、あるいは、サザンブロット反応に用いられる。もう1つの例としては、オリゴヌクレオチドプローブで標識化されたCOINが、オリゴヌクレオチドプローブで標識化されたCOINを捕捉するための固体支持材に結合された目標ポリヌクレオチドを含む反応混合物に適用される。続いて、固体支持材からはじめに放出されたことの有無にかかわらず、捕捉されたオリゴヌクレオチドプローブで標識化されたCOINは、ラマン分光法を用いて検出される。オリゴヌクレオチドプローブで標識化された、捕捉されたCOIN上の特徴的なラマン標識の検出が、順に目標のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に関する情報を提供して、オリゴヌクレオチドプローブのヌクレオチド配列を特定する。
【0076】
特定の応用の他の実験グループにおいては、ヌクレオチドで標識化されたCOINは、目標ポリヌクレオチドの単一塩基変異におけるヌクレオチドの存在を決定するために利用される。これらの複数の応用は、複数の"ホットスポット"点変異の検出、および複数の単一ヌクレオチド高次構造(SNP)サイトでの塩基の同定を含む。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、多形性サイトの近傍において即座にハイブリダイズして生成される。プライマー、単一塩基変異のサイトを含む目標ポリヌクレオチド、およびポリメラーゼは、拡張反応混合物に含まれる。反応混合物は、各々に特有のCOIN標識が結合されている、三リン酸塩の4つの鎖の末端を含む。続いて、拡張反応がさらに進行して、ホモ接合型SNPの場合においては、4つの鎖の末端のヌクレオチドのただ1つが、プライマー末端に加えられ、それゆえ、延長されたプライマーで標識化されたCOINが生成される。続いて、延長されたプライマー上のCOIN標識は、ラマン分光法を用いて検出される。標識の独自性は、単一塩基変異のサイトに加えられたヌクレオチドを特定するので、目標ポリヌクレオチドの単一塩基変異でのヌクレオチドの発生を特定する。
【0077】
本発明の複数の手法においては、試料は、本願で開示した複数のナノクラスターを用いて分析される広範囲の被分析物を含む。例えば、試料は、環境試料であり、大気、周辺空気、水、汚泥、土壌、および同様のものを含む。さらに、試料は、生体試料であってよく、例えば、被験者の息、唾液、血液、尿、排泄物、様々な組織、および同様のものを含む。
【0078】
本発明の複数の方法の商業的な応用は、環境毒性学および修復、生体臨床医学、材料品質管理、複数の病原体の存在の検出のための食物および農産物の監視、麻酔薬の検出、自動車オイルまたはラジエータ液の監視、呼気中アルコール濃度分析器、有害物の流出の検出、爆発物の検出、一時的放出の同定、医療診断、魚の新鮮さ、生物学的使用および医療診断での使用のために対外および体内の双方のバクテリアおよび微生物の検出および分類、重い産業装置の監視、外気の監視、作業者保護、排ガス規制、製品品質検査、リーク検出および同定、オイル/ガス石油化学の複数の応用、可燃性ガスの検出、HSの監視、有害物質のリーク検出および同定、緊急応答および法執行の複数の応用、非合法物質の検出および同定、放火捜査、囲んだ空間の監視、ユーティリティおよび電源の応用、排出監視、トランスフォーマの障害検出、食物/飲料/農産物の応用、新鮮さの検出、果実の熟成の制御、発酵過程の監視および制御の応用、香気成分および同定、製品品質および同定、冷媒および燻蒸剤の検出、化粧品/香水/香料の形成、製品品質の検査、個人の識別、試薬/プラスチック/薬品の応用、リーク検出、溶媒回収効果、周囲の監視、製品品質の検査、有害廃棄物処理場の応用、一時的放出の検出および同定、リーク検出および同定、周囲の監視、輸送、有害物質の流出の監視、燃料補給の操作、運送用コンテナの検査、ディーゼル/ガソリン/航空燃料の同定、建築物/住居用天然ガスの検出、ホルムアルデヒドの検出、煙の検出、火災探知、自動換気制御の応用(料理、いぶし等)、吸気監視、病院/医療の麻酔および滅菌ガスの検出、感染症の検出および呼気の応用、体液の分析、調合薬の応用、薬物の発見、遠隔手術、および同様のものを含む本願で開示した複数のナノクラスターが用いられる。
【0079】
複数のエンジン流体のセンサーベースの流体検出のための他の応用は、オイル/不凍液モニタ、空気/燃料比の最適化のためのエンジン診断、ディーゼルエンジン用燃料の品質、揮発性有機炭素測定(VOC)、製油所の一時的な気体、食物の品質、口臭、土壌および水質汚染物質、空気の品質の監視、火災安全、化学兵器の特定、危険物質の複数のグループによる使用、爆薬検出、ブレサライザー、エチレンオキサイドまたは麻酔薬の検出である。
【0080】
他の実施形態においては、試料中の被分析物を検出するための複数のシステムが提供される。そのような複数のシステムは、1つ以上のナノクラスターを有するアレイ、少なくとも1つの被分析物を有する試料、ラマン分光器、および試料の分析に用いるアルゴリズムを有するコンピュータを備える。
【0081】
様々な分析手法が、本願で開示した複数のCOIN粒子の分析に用いられ得る。そのような複数の手法は、例えば、核磁気共鳴分光法(NMR)、光子相関分光法(PCS)、IR、表面プラズマ共鳴(SPR)、走査型プローブ顕微鏡法(SPM)、SEM、TEM、原子吸光分光法、元素分析、紫外可視分光法、蛍光分光法、および同様の方法を含む。
【0082】
本発明の実施例においては、ラマン分光計は、本発明の複数のナノクラスターをラマン分光法により検出し、定量するために設計された検出ユニットの一部でありうる。ラマン分光法を用いて、ラマン標識化された、例えば、複数のヌクレオチドのような、複数の被分析物を検出するための複数の手法は、当該技術分野において公知である(例えば、米国特許第5306403号、6002471号、6174677号参照。)。表面増感ラマン分光法(SERS)、表面増感共鳴ラマン分光法(SERRS)、およびコヒーレント反ストークスラマン分光法(CARS)の複数のバリエーションが開示されている。
【0083】
ラマン検出ユニットの限定的ではない例は、米国特許第6002471号に開示されている。励起ビームは、波長が532nmの周波数二重Nd:YAGレーザ、または波長が365nmの周波数二重チタン:サファイアレーザのいずれかによって生成される。複数のパルスレーザビーム、または連続ビームが用いられる。励起ビームは、複数の共焦点光学素子および顕微鏡対物を通過して、フローパスおよび/またはフロースルーセル上に集中される。複数の標識化されたナノクラスターからのラマン放出光は、顕微鏡対物および複数の共焦点光学素子によって集められ、スペクトル分離のためにモノクロメータに結合される。複数の共焦点光学素子は、複数のダイクロイックフィルター、複数のバリアフィルター、複数の共焦点ピンホール、複数のレンズ、およびバックグラウンドの信号を減衰させるための複数のミラーの組み合わせを含む。標準的な全分野に及ぶ複数の光学素子が、複数の共焦点光学素子と同様に用いられる。ラマン放出信号は、ラマン検出器によって検出され、ラマン検出器は、信号のカウントおよびデジタル処理のためのコンピュータに接続されているアバランシェフォトダイオードを含む。
【0084】
ラマン検出器の他の例が、米国特許第5306403号に開示されており、シングル−フォトンカウントモードで操作される、Spex Model 1403 ガリウム砒素光電子増倍管(RCA Model C31034またはBurle Industries Model C3103402)を有するダブルグレーティング分光測光器を含む。励起源は、SpctraPhysics Model 166の514.5nmのラインアルゴンイオンレーザ、および647.1nmのラインクリプトンイオンレーザ(Innova 70、Coherent)を含む。
【0085】
他の複数の励起源は、337nmの窒素レーザ(Laser Science Inc.)、および325nmのヘリウム−カドミウムレーザ(米国特許第6174677号)、発光ダイオード、Nd:YLFレーザ、および/または、複数の様々なイオンレーザ、および/または、複数の色素レーザを含む。励起ビームは、バンドパスフィルタ(Corion)によってスペクトル的に純化され、複数の6X対物レンズ(Newport、Model L6X)を用いて、フローパス、および/またはフロースルーセル上に集中される。複数の対物レンズが、複数のナノクラスターのラマン活性な複数の有機化合物を励起するため、および励起ビームおよび放出ラマン信号の直角の配置を生成するためにホログラフィックビームスプリッタ(Kaiser Optical Systems Inc. Model HB 647−26N18)を用いてラマン信号を集めるための両方のために使用される。ホログラフィックノッチフィルター(Kaiser Optical System Inc.)が、レイリー散乱放出を減少させるために用いられ得る。他の複数のラマン検出器は、赤色増強増感型電荷結合素子(RE−ICCD)検出システム(Princeton Ins(登録商標)truments)を備えたISA HR−320分光器を含む。フーリエ変換分光器(Michaelson interferometersに基づく)のような、複数の検出器の他の複数のタイプには、複数の電荷注入デバイス、複数のフォトダイオードアレイ、複数のInGaAs検出器、電子マルチプライドCCD、増倍型CCD、および/または、複数のフォトトランジスタアレイが用いられる。
【0086】
ラマン分光法、または本発明の複数のナノクラスターの検出に用いられる、当該技術分野において周知の複数の関連技術のいかなる適切な型または構成は、以下のものに限られないが、通常のラマン散乱、共鳴ラマン散乱、表面増感ラマン散乱、コヒーレント反ストークスラマン分光法、誘導ラマン散乱、逆ラマン分光法、誘導ゲインラマン分光法、ハイパーラマン散乱、分子光学レーザエグザミナー(MOLE)、あるいは、ラマンマイクロプローブ、または、ラマン顕微鏡、若しくは、共焦点ラマンマイクロ分光分析、3次元または走査型ラマン、ラマン飽和分光分析、時分割共鳴ラマン、ラマンデカップリング分光法、あるいは、UV−ラマン顕微鏡を含む。
【0087】
本発明のある面においては、本発明の複数のナノクラスターの検出のためのシステムは、情報処理システムを有する。典型的な情報処理システムは、情報の伝達を行うバスおよび情報処理をするプロセッサを含むコンピュータを組み込む。情報処理および制御システムは、メモリ、ディスプレイ、キーボード、および/またはその他の複数のデバイスのように、当該技術分野において周知の複数の周辺機器デバイスをさらに備えてよい。
【0088】
特定の例においては、検出ユニットは、情報処理システムに操作可能に接続される。検出ユニットからのデータは、プロセッサによって処理され、メモリにデータが格納される。様々な複数のラマン標識の放出プロファイルのデータがまた、メモリに格納される。プロセッサは、放出されたスペクトルを、フローパス、および/またはフロースルーセル中の複数の合成有機−無機ナノクラスターと、ラマン活性な有機化合物の特定のために比較する。プロセッサは、検出ユニットからのデータを、例えば、本発明の複数のナノクラスターのプローブによって結合されているポリヌクレオチドの配列を決定するために分析する。また、情報処理システムは、複数のバックグラウンド信号の減算のような標準的な複数の手順を実行する。
【0089】
本発明の複数のある方法がプログラムプロセッサの制御下で実行されるが、本発明の他の実施形態においては、複数の手法は完全にまたは部分的に、複数のフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、TTLロジック、あるいは、複数の特定用途向け集積回路(ASIC)のような、いかなるプログラマブルまたはハードコードされたロジックによって実施される。さらに、開示された複数の方法は、プログラムされた一般的な目的のコンピュータの複数の構成要素、および/または、複数のカスタムハードウエア構成要素のいかなる組み合わせによっても実施され得る。
【0090】
データ収集操作に続いて、データは典型的には、データ分析操作に報告される。分析操作を容易にするために、検出ユニットによって取得されたデータは、典型的にはデジタルコンピュータを用いて分析される。典型的には、集められたデータの分析および報告のためと同様に、受信および検出ユニットからのデータの格納のために、コンピュータは適切にプログラムされる。
【0091】
本発明のある実施形態によれば、カスタムデザインされたソフトウエアが、検出ユニットから取得されたデータの分析に用いられる。本発明の他の実施形態によれば、データ分析が、情報処理システムおよび公に利用可能な複数のソフトウエアパッケージを用いて実行される。
【0092】
本発明の他の実施形態によれば、ポリマービーズ中に埋め込まれて、結合された多数のCOINを含む複数のマイクロ球を供給する。そのような複数のマイクロ球は、個々のCOINよりも強い、そしてよりしっかりした複数のSERS信号を生み出す。また、大きなマイクロ球の高分子コーティングは、複数のプローブのような複数の生体分子の結合のための表面積を提供する。構造的な特徴は、a)重合した複数の有機化合物によって形成された構造骨格、b)角マイクロサイズの粒子に埋め込まれた多数のCOIN、c)複数のリンカー、複数のプローブ、および同種のもののような所望の複数の官能基の結合のための、適切な複数の官能基を有する表面である(図12参照)。本実施形態による複数のマイクロ球を生成するためのいくつかの方法は、以下に説明する。
【0093】
包接法(図13)。当該方法は、複数のCOINが重合反応の開始前に複数のミセル中に導入されることを除いては、均一なラテックスの複数のマイクロ球を作成する既知の乳化重合法を使用する。図13のフローチャートに示したように、本発明の方法の当該態様は、以下の複数の段階を含む。1)複数の所望の大きさの複数のミセルが、複数の界面活性剤(例えば、オクタノール)を加えた水の均質化法によって最初に生成される。2)複数のCOIN粒子が、疎水性物質(例えば、SDS)とともに導入される。後者は、複数のCOINの複数のミセルの内部への輸送を容易にする。3)複数のミセルは、安定化剤(例えば、カゼイン)によって凝集から保護される。4)複数のモノマー(例えば、スチレン、またはメチルメタクリレート)が導入される。5)最後に、フリーラジカル開始剤(例えば、過酸化物または過硫酸塩)が、COINが埋め込まれた複数のラテックスビーズの生成のための重合の開始のために用いられる。
【0094】
さらに、固体有機高分子ビーズ内に埋め込まれている複数のCOINは、マイクロ球の形成に用いられる。ビーズの高分子は、複数のミセル内の複数のCOINと最終生産物(マイクロ球)との間の直接的な接触を阻害する。さらに、各ビーズ内のCOINの数は、ビーズの隙間の高分子の厚さを変更することによって調整され得る。ビーズの高分子物質は、信号の生成には必要とされず、高分子の機能は、構造上のものである。
【0095】
複数のマイクロ球は最大でミクロンサイズで、ビーズの構造的な高分子によって保持されている多数の個別のCOIN粒子を含む構造を有する、機能的ユニットとして各々動作する。それゆえに、単一のマイクロ球の中に、ビーズの主な内側および外側の構造の材料である構造的な高分子に、いくつかの埋め込まれたCOINが存在する。また、構造的な高分子は、複数の表面結合リンカー、複数の誘導体として、または複数のプローブの結合により機能化されて機能する。各COINは、複数の金属粒子上に吸着している少なくとも1つのラマン活性な有機化合物を有する複数の第1の金属粒子のクラスターを備えるので、ビーズの高分子はその大部分において、COIN構造の複数の第1の金属粒子の複数の接点にコロイド形成の間に吸着されて捕捉された、ラマン活性な複数の有機化合物と接触することはなく、それゆえ、ラマン活性を減衰させない。マイクロ球の構造的な高分子と接触するCOINの周辺上のそれらラマン活性な複数の有機化合物は、複数のラマン活性な分子としての効果を減少する。
【0096】
ソークイン法(図14)。はじめに、複数のマイクロ球が合成され、別に合成された複数のCOINと接触可能とされる。有機溶媒中のような、ある条件下において、複数のビーズの複数のポアが、その内側に複数のCOINが拡散することを可能とするのに十分に拡大される。液相が水性溶媒に変更された後に、ビーズの複数のポアは閉じて、複数の高分子ビーズの中に複数のCOINを埋め込む。例えば、1)複数のスチレンモノマーが、乳化重合を通して均一の大きさの複数のビーズを形成するために、ジビニルスチレンとアクリル酸とともに共重合される。2)複数のビーズは、クロロホルム/ブタノールのような有機溶媒によって膨張され、膨張したビーズ内に複数のCOINが拡散するように複数のCOINのセットがある割合で導入される。3)そして、複数のCOINが、安定な状態で均一なCOINが封入された複数のビーズの形成のために、内部に捕捉されるように、複数のビーズが、複数のビーズを縮小させるために非溶媒中に置かれる。
【0097】
ビルドイン法(図15)。当該方法においては、複数のマイクロビーズが最初に取得され、複数のラマン標識および複数の銀粒子と接触させるべく有機溶媒中に置かれる。当該状態下においては、複数のビーズの複数のポアが、複数の標識および複数の銀粒子が内部に拡散することを可能とするのに十分な大きさに拡大される。そして、複数のCOINクラスターが、複数の有機ラマン標識の存在下で複数の銀コロイドがお互いに出会った場合に、複数のマイクロ球ビーズの中で形成される。熱および光が、複数の銀粒子の会合および融合を促進するために使用され得る。最後に、液相が水性の層に変更され、複数のCOINが封入される。例えば、1)複数のスチレンモノマーが、乳化重合を通して均一の大きさの複数のビーズを形成するために、ジビニルスチレンとアクリル酸とともに共重合される。2)続いて、複数のビーズは、クロロホルム/ブタノールのような有機溶媒によって膨張され、膨張したビーズ中に複数の分子が拡散するように、所定の割合でラマン活性な複数の分子(例えば、8−アザアデニン、およびN−ベンゾイルアデニン)のセットが導入される。そして、同一溶媒中に銀コロイドの懸濁液が、Ag粒子が封入された複数のビーズを形成するために、複数のビーズとともに混合される。3)溶媒が、複数のラマン標識および複数のAg粒子が内部に捕捉されるように、複数のビーズを縮小させる溶媒に変更される。複数のAg粒子がお互いに複数のラマン分子と接点において接触し、複数のビーズの中で複数のCOINが形成されるように、工程は制御される。例えば、60nmの大きさの複数のコロイドのような、中程度の大きさの複数の銀コロイドが用いられ、コロイドの会合(複数のCOINの形成)を複数のビーズ中で生じさせるために、複数のラマン標識が別々に添加される(銀の添加の前後に)。1から10nmの複数のコロイドが用いられた場合、複数の標識がともに添加される。そして、光あるいは熱が、複数のビーズ内での複数の活性なCOINの形成を生じさせるために用いられる。
【0098】
ビルドアウト法(図16)。当該方法においては、固体のコアが始めに、COINの結合の支持材として用いられる。コアは金属(金および銀)、無機物(アルミナ、ヘマタイト、およびシリカ)、あるいは有機物(ポリスチレン、ラテックス)の複数の粒子であってよい。コア粒子への複数のCOINの結合は、静電引力、ファンデルワールス力、および/または共有結合によって生じる。結合の後に、会合体は、構造の安定化のために高分子でコーティングされ、これは同時に、複数の官能基を表面に提供する。複数のCOINの多重の層は、上記工程に基づいて形成される。複数のCOINビーズの大きさは、コアサイズおよびCOIN層の数によって制御される。例えば、1)正に帯電した0.5μmの複数のラテックス粒子を、負に帯電した複数のCOINと混合する。2)ラテックス−COIN錯体が、ポリアクリル酸のような、架橋可能な高分子でコーティングされる。3)高分子コーティングは、不溶性の殻を形成するリシンのような複数のリンカー分子と架橋する。残りの(未反応の)複数のカルボキシル基は、第2のCOIN結合、あるいはプローブ結合の層のための複数の官能基として働く。また、追加の複数の官能基は、共重合反応、または架橋工程の間に導入される。
【実施例1】
【0099】
(概論)化学試薬:アンチ−IL−2およびアンチ−IL−8抗体を含む複数の生物製剤は、BD Biosciences Inc.から購入した。複数の捕捉抗体は、マウスから生成された複数のモノクローナル抗体であり、複数の検出抗体は、マウスから生成された複数のポリクローナル抗体であり、ビオチンと共役していた。5M NaCl、10X PBS(1x PBS 137mM NaCl、2.7mM KCl、8mM Na2HPO4、および2mM KH2PO4、pH7.4)を含む複数の液体援用液および緩衝剤は、Ambion Inc.(Austin、TX、USA)から購入した。その他に指摘していないが、他の全ての化学薬品は、最高の可能な品質で、Sigma Aldrich Chemical Company(St. Louis、MO、USA)から購入した。浄水ユニット(Nanopure Infinity、Barnstead、USA)により得られた複数の実験に使用する脱イオン水は、18.2×10Ω−cmの抵抗を有していた。
【0100】
銀の種粒子の合成:硝酸銀(AgNO)の原液(0.50M)およびクエン酸ナトリウム(NaCitrate)が、使用前に十分にすすいだ0.2ミクロンのポリアミド膜フィルター(Schleicher and Schuell、NH、USA)を2回通してろ過された。ホウ酸ナトリウム水和物水溶液(50mM)があらためて作られ、生成後2時間以内に使用された。複数の銀の種粒子は、十分に攪拌している状態の50mLの溶液B(4.00mMの硝酸銀を含む)に、50mLの溶液A(8.00mMのクエン酸ナトリウム、0.60mMのホウ酸ナトリウム水和物、および2.00mMの水酸化ナトリウムを含む)を短時間に添加することにより生成された。溶液Aへの溶液Bの添加は、より多分散した懸濁液をもたらした。銀の種の懸濁液は、暗所に保管され、生成後1週間以内に使用された。使用前に、懸濁液は、多分散性インデックスが0.25以下であり、強度−平均直径(z−平均)が10から12nmの間であることを確認するために、光子相関分光法(PCS、Zetasizer 3000HS、Malvern)によって分析された。
【0101】
金の種の合成:家庭用電子レンジ(1350W、Panasonic)が、複数の金のナノ粒子の精製に使用された。典型的には、ガラス製の瓶(100mL)に0.5mMのHAuClおよび2.0mMのクエン酸ナトリウムを含む水性溶液40mLを入れ、電子レンジ中において最大出力で沸騰させるために加熱された。続いて、溶液を緩やかに沸騰させ、十分に沸騰させるために2.0グラムのPTFE沸騰石が加えられ、より低い出力で、溶液を緩やかに沸騰させた状態を5分間維持した。得られた溶液は、バラの赤色を有していた。PCSによる測定は、金の溶液が、典型的には、多分散性インデックスが0.04未満であり、13nmのz平均を有することを示した。
【0102】
COIN合成:他の複数の手法が用いられうる。
【0103】
還流法:複数の銀の種を有する複数のCOIN粒子の生成のために、典型的には、50mLの銀の種の懸濁液(2.0mMのAgと当量である)が、複数のラマン標識が導入される前に、還流システムにおいて沸騰させるために加熱された。続いて、硝酸銀の原液(0.50M)が、複数の銀の種粒子の成長および会合を誘起させるために、滴下または小さなアリコート(50から100μL)で加えられた。最大で全量2.5mMの硝酸銀が加えられた。溶液は、懸濁液が、暗褐色を有し、非常に不透明になるまで沸騰状態が維持された。この時点で、ガラス製のビンにコロイド溶液をすばやく移送させることにより、すばやく温度が下げられ、そして、室温において貯蔵された。最適な加熱時間は、複数のラマン標識および加えられる硝酸銀の量に依存した。加熱が止められる前に、PCSまたはUV−Vis分光光度計によって、複数の粒子が所望の大きさの範囲(例えば、平均80から100nm)に達したことを確かめることが有用であることが分かった。通常は、暗褐色が、クラスター形成、およびラマン活性に関連していることを示す。
【0104】
複数の金の種を有する複数のCOIN粒子の生成するために、複数の金の種が、始めに、ラマン標識(例えば、20μMの8−アザアデニン)の存在下で0.25mMのHAuClから生成された。金の種の溶液を沸騰まで過熱した後に、最終的な金の懸濁液が、1.0mMのAgNOおよび1.0mMのクエン酸ナトリウムを含むように、硝酸銀およびクエン酸ナトリウム原液(0.50M)が別々に添加された。硝酸銀の添加の後に塩化銀の沈殿がすぐに形成されるが、加熱によりすぐに消滅する。沸騰の後に、橙褐色の色がついて安定し、硝酸銀およびクエン酸ナトリウム原液(それぞれ0.50M)の追加のアリコート(50から100μL)が、クラスターの形成を示し、ラマン活性に関係する色である緑色の発達を誘起するために加えられた。
【0105】
主として、クラスター形成の前の最初の複数の粒子の大きさの違いのために、異なる複数の色を有する複数のCOINを、複数の手順が生成した。
【0106】
オーブン法:また、対流式オーブンを用いることによって、複数のCOINが便利に生成される。銀の種の懸濁液が、20mLのガラス瓶中でクエン酸ナトリウムおよび硝酸銀溶液と混合された。混合物の最終的な体積は、通常10mLで、その混合物は、複数の銀の粒子(0.5mMの銀イオンと当量である)、1.0mMの硝酸銀、および2.0mMのクエン酸ナトリウム(種の懸濁液からの一部を含む)を含んでいた。室温において貯蔵される前に、95℃に設定されたオーブン内で60分間、ガラス瓶は培養された。複数の標識の濃度の範囲は、同一の時間で検査された。不透明で褐色を示す複数のバッチが、ラマン活性およびコロイドの安定性を検査された。顕著に沈殿(標識の濃度が高すぎる場合に発生する)を有する複数のバッチは、廃棄された。ときどき、十分に不透明を示さなかった複数のバッチは、クラスター形成を可能とするために、連続した期間(最大3日間)、室温で維持された。多くの件において、複数の懸濁液は、時間とともに会合に起因して、より不透明となり、24時間以内に強いラマン活性が発現した。ウシ血清アルブミン(BSA)のような安定化剤が、会合を停止させ、複数のCOIN粒子を安定化させるために用いられた。
【0107】
金のコアを有する複数のCOINの生成に同様の方法が用いられた。簡潔にいえば、20mLのガラス瓶の中で、複数のラマン標識の存在下で生成された3mLの金の懸濁液(0.50mM Au3+)が、7mLの銀のクエン酸塩溶液(混合前は、5.0mMの硝酸銀、および5.0mMのクエン酸ナトリウムを含んでいた)と混合された。ガラス瓶は、対流式オーブン内に設置され、1時間の間95℃で加熱された。標識化された複数の金の種の異なる複数の濃度は、十分なラマン活性を有する複数のバッチを生成するために同時に用いられた。COIN試料は、大きさおよびラマン活性の点で不均一であり得る点に留意すべきである。われわれは、通常、50から100nmの範囲内の複数の粒子を濃縮するために、遠心分離(5から10分間、200から2000xg)、あるいは、ろ過(300kDa、1000kDa、あるいは0.2ミクロンのフィルター、VWRを通してPall Life Sciencesから)を用いた。複数のCOIN粒子は、濃縮前に、例えば、BSAあるいは抗体によりコーティングされる。われわれが生成した多くの複数のCOIN(合成後にさらに処理は施していない)が、室温において3ヶ月以上、物理および化学的特性において目立った変化もなく安定であった。
【0108】
コールド法:100mLの複数の銀の粒子(1mMの銀原子)が、1mLのラマン標識溶液(典型的には1mM)と混合された。続いて、5から10mLの0.5MのLiCl溶液が銀の会合を誘起するために添加された。懸濁液が明白に黒ずむ(会合に起因する)とすぐに、0.5%のBSAが会合工程を阻害するために添加された。その後、懸濁液は15分間、4500gで遠心分離された。上澄み(ほとんどが複数の単一の粒子)を取り除いた後に、沈殿物が、1mMのクエン酸ナトリウム溶液中で再懸濁された。洗浄工程が全部で3回繰り返された。最後の洗浄の後に、再懸濁された沈殿物が、複数の大きな会合体を取り除くために0.2μMの膜フィルターを通してろ過された。ろ液がCOIN懸濁液として集められた。SERSのために1mMの銀コロイドを用いて、400nmでの吸収を比較することにより、複数のCOINの濃度は、1mMのクエン酸ナトリウムで1.0または1.5mMに調整された。
【0109】
COIN試料は、大きさおよびラマン活性に関して不均一であり得ることに留意すべきである。われわれは、通常、50から100nmの範囲内の複数の粒子を濃縮するために、遠心分離(5から10分間、200から2000xg)、あるいは、ろ過(300kDa、1000kDa、あるいは0.2ミクロンのフィルター、VWRを通してPall Life Sciencesから)を用いた。複数のCOIN粒子は、濃縮前に保護試薬(例えば、BSA、抗体)によりコーティングされた。われわれが生成した多くの複数のCOIN(合成後にさらに処理は施していない)が、室温において3ヶ月以上、物理および化学的特性において目立った変化もなく安定であった。
【0110】
粒子サイズ測定:複数のCOINと同様に複数の銀および金の種粒子の大きさは、格子相関分光法(PCS、Zetasizer3 3000 HSあるいはNano−ZS、Malven)を用いて決定された。全ての測定は、633nmのHe−Neレーザを用いて、25℃で実施された。複数の試料が、必要なときに脱イオン水を用いて希釈された。TEM分析:透過型電子顕微鏡(TEM)分析のために、カーボンでコーティングされた銅製の複数のグリッドが、試料の準備に用いられた。試料の懸濁液が、全てガラス製のネブライザー(Ted Pella)を用いてグリッド上に吹き付けられた。他の方法では、試料の懸濁液の滴(20μL)がグリッド上に堆積された。5分後、滴はろ紙辺によりふき取られた。続いて、グリッドは、空気中で乾燥させる前に塩を除去するために、数秒間、脱イオン水の滴の表面に接触することを可能にされた。TEM観察は、UHRポールを用いたJEM2010または2010F(Japan Electron Optics Laboratories)のいずれかを用いてなされた。SEM分析:走査型電子顕微鏡分析のために、複数のCOIN粒子が、走査型電子顕微鏡(S−4500、日立)下で調べられた。試料の前処理工程は、以下の通りであった。まず、シリコンウエハ基板の小片(1×1cm)が、ポリ−L−リシン(0.1%)の滴(20μL)によって濡らされた。5分後、基板は脱イオン水(DI−水)で洗浄され、窒素流で乾燥された。そして、ポリ−L−リシンでコーティングされた基板上に、20μLのコロイド試料が堆積された。最後に、基板は、DI−水により洗浄され、SEM観察の前に空気中で乾燥された。ラマンスペクトル分析:溶液中の全てのSERSおよびCOIN試料のために、514nmのアルゴンイオンレーザ(25mW)が備えられたラマン顕微鏡(Renishaw、UK)が用いられた。典型的には、試料の滴(50から200μL)が、アルミニウムの表面に置かれた。試料メニスカスの上面にレーザビームが集束され、10から20秒間、フォトンが集められた。ラマンシステムは、通常、10秒の収集時間の間、1040cm−1において、メタノールから約600カウントを生成する。表面に固定された被分析物のラマン分光法での検出のために、会社内で作られたラマン顕微鏡を用いて、ラマンスペクトルが記録された。当該ラマン顕微鏡は、連続波モードで動作する水冷アルゴンイオンレーザ、ダイクロイック反射板、ホログラフィックノッチフィルター、Czerny−Turner 分光計、液体窒素で冷却されるCCD(電荷結合素子)カメラを備える。分光計の複数の構成要素は、顕微鏡対物がレーザビームを試料上に集束させ、後方散乱ラマン放出を集めるために顕微鏡と接続された。試料におけるレーザ出力は、およそ60mWであった。全てのラマンスペクトルは、514nmの励起波長で集められた。
【0111】
吸収スペクトル分析:複数のラマン標識およびコロイド懸濁液の消滅スペクトルは、UV−Vis分光測光器(Model8453、Agilent Technologies)によって記録された。
【0112】
複数の抗体と複数のCOIN粒子の共役:2ngのビオチン化アンチヒューマンIL−2、あるいはIL−8抗体(アンチ−IL−2あるいはアンチ−IL−8)を含む500μLの溶液が、1mMのクエン酸ナトリウム(pH9)に、500μLのCOIN溶液(8−アザ−アデニンまたはN−ベンゾイル−アデニンを用いて作られた)とともに混合された。その結果として得られた溶液は、1時間室温でインキュベートされ、その後に、100μLのPEG−400(ポリエチレングリコール400)が加えられた。溶液は、また30分間、室温でインキュベートされ、続いて、200μLの1%Tween−20(登録商標)が溶液に添加された。溶液は、2000xgで10分間、遠心分離された。上澄みが除去された後に、沈殿物が、0.5%のBSA、0.1%のTween−20および1mMのクエン酸ナトリウム(BSAT)を含む1mLの溶液中で再懸濁された。続いて、溶液は1000xgで10分間、遠心分離された。BSAT洗浄工程は、全部で3回繰り返された。最終的な沈殿物が、700μLの希釈溶液(0.5%のBSA、1X PBS、0.05%のTween−20(登録商標))に再懸濁された。メタノールから10秒の収集時間の間に、1040cm−1で約600カウントを生成するラマン顕微鏡を用いて、COINのラマン活性が測定され、10秒あたり、1μLあたり約500フォトンカウントの比活性度に調整された。
【0113】
抗体−COIN結合の確認:検量線を得るために、ELISA(酵素免疫測定法)実験が、製造業者の説明(BD BioSciences)に従って、固定化捕捉抗体を用い、被分析物の濃度(5ng/mL、IL−2たんぱく質)を固定し、および連続的に検出抗体(0、0.01、0.1、1および10μg/mL)を希釈して実施された。抗体の結合を検出した後に、ストレプトアビジン−HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)が、ビオチン化された複数の検出抗体と反応し、TMB(テトラメチルベンジジン)基板が適用され、続いて、UV吸収測定された。検量線が、抗体の濃度に対して吸収量をプロットすることにより作成された。COIN粒子に結合し得る抗体分子の量を推定するために、同様なELISA実験が検出抗体と結合しているCOINについて実施された。ELISAデータが収集され、COIN−抗体結合の結合活性が、COIN−抗体結合中の抗体の当量を推定するために検量線と比較された。COIN粒子に共役している複数の抗体分子のただ1つが、固定化被分析物に結合している、そして、全てのビオチンのCOIN粒子に結合している複数の部分が、ストレプトアビジン−HRPによって結合されていると仮定される。最後に、1つのCOINあたりの抗体分子の数が、COIN粒子の見積もり量によってCOIN抗体中の抗体の当量を割ることによって見積もられた。われわれは、1つのCOIN粒子状に、50個の抗体分子と同数の数が存在すると推定した。
【0114】
免疫サンドイッチ検定:(1)検定支持材の準備:複数のゼノバインド(登録商標)アルデヒドスライド(Polysciences Inc. PA、USA)が、免疫検定のための複数の基板として用いられた。使用前に、スライド上に複数のウエルが、1mm厚の硬化PDMS辺をかぶせることによって作成された(D.Duffy、J.McDonald、O.SchuellerおよびG.Whitesides、Rapid Prototyping of Microfluidic Systems in Poly(dimethylsiloxane)、Anal.Chem.1998、70(23):p.4974-4984参照。)。PDMSは、直径5mmの複数の孔を有していた。(2)捕捉抗体の結合:アンチ−ヒューマンIL−2抗体(9μg/mL)が0.33XPBS中で生成された。抗体の50μLのアリコートがスライド上の複数のウエルに添加され、スライドは、37℃、2時間の間、湿度室内でインキュベートされた。(3)表面ブロッキング:抗体溶液を除去した後に、10mMのグリシン溶液中の50μLの1%BSAが、アルデヒド基をクエンチするために各ウエルに添加された。スライドは、さらに1時間、37℃においてインキュベートされ、続いて、各ウエルは4回、50μLのPBST洗浄溶液(0.05%のTween−20(登録商標)が添加された1XPBS)で洗浄された。(4)たんぱく質の結合:様々な濃度(実験に応じて0から50μg/mL)のIL−2およびIL−8たんぱく質溶液が、希釈バッファ(1XPBS、0.5%BSA、0.05%Tween−20)中で生成された。40μLの抗体溶液を含む試料がウエルに添加され、結合が、37℃、数時間(完全な結合を保証するために朝までが好ましい)で達成された。試料を含む複数のウエルは、合計で4回、50μLのPBST溶液で洗浄された。(5)抗体の結合の検出:アンチIL−2検出抗体およびアンチIL−8検出抗体がそれぞれに共役している同量のCOIN試料が合成され、そして、各PDMSウエルに添加された。続いて、溶液が、37℃、1時間、インキュベートされた。共役溶液を取り除いた後に、複数のウエルが、それぞれ、50μLの希釈バッファ溶液で洗浄し、続いて、50μLの脱イオン水で1回洗浄する工程を4回行って洗浄された。最後に、30μLの脱イオン水が、ラマン信号検出の前に各ウエルに添加された。
【実施例2】
【0115】
(COIN合成および分析)2mMのAgNO、0.3mMのNaBH、および添加された4mMのNaCitrateから、平均粒子直径が12nmの銀コロイド溶液(50mL)が生成された。8−アザアデニン(AA)が最後の20μMに加えられる前に、溶液は沸騰のために加熱された。5分の沸騰の後で、0.5mMのAgNOがさらに加えられた。続いて、温度が下げられ、95+1℃に保たれた。溶液のアリコート(1mLずつ)が、mMのクエン酸ナトリウムで1:30に希釈された後に、スペクトル測定のために、示された複数の時間間隔で取り出された。図2(A)に示したように、取り出された試料の各アリコートの吸収スペクトルは、ピークシフトを示し、より長波長(450nmよりも長い波長)において吸収が増加したことを示した。複数の時間間隔において(複数の小さな矢印は、複数の吸収の変化がさらに分析された複数の位置を示す)取り出された複数の試料のアリコート(各々50μl、白色光ボックス上のシャーレに置かれた)が撮影され、反応加熱時間に依存した色変化が示された。吸収およびラマン活性を、反応(加熱)時間の関数として図2(B)に示す。65分後の700nmにおける吸収の減少は、溶液中にすばやく沈殿する大きな複数の会合体の形成に起因している。
【実施例3】
【0116】
(金属粒子の会合を誘起する有機化合物):本願で開示された方法で生成された複数の金属粒子(Abs520nm=0.37の15nmの金、Abs420nm=0.3の60nmの銀)を、1mMのNa3Citrate中で使用して、各有機化合物(表1の略語のキーを参照)は、金属コロイド溶液の試料に、スペクトル測定の前に10分間の間示された濃度で混合された。各試料において、主要ピークの吸収をピーク1の値として用い、長波長(600nmから700nm)での増加した吸収をピーク2の値として用いた。ピーク2/ピーク一の比率が、有機化合物の濃度に対してプロットされた。比率の大きな値は、高次の金属粒子の会合を示す。図6(A)は、複数の有機化合物によって誘起された複数の金粒子の会合を示す。比較的低い濃度の複数の有機化合物で、複数の金粒子の会合を引き起こすには十分であった。図6(B)に示すように、比較的高い濃度の複数の有機化合物が、複数の銀粒子の会合を引き起こすのに必要とされた。
【実施例4】
【0117】
(8−アザアデニンの機能としての複数の銀粒子のゼータ電位):複数の銀粒子が、クエン酸ナトリウムを添加した硝酸銀を95℃から100℃で還元することにより生成された。PCS(Zetasizer Nano−ZS、Malvern)によって決定された複数の粒子のZ平均サイズは、47nmであった。トータルの銀濃度は、ゼータ電位測定のために、1.00mMのクエン酸ナトリウムの媒体を懸濁させることによって、0.10mMに固定された。同一の銀濃度および懸濁媒体を用いて、20μMの8−アザアデニンの存在下における会合サイズ(z−平均)の発展が測定された。図7(A)および(B)はそれぞれ、絶対ゼータ電位および会合の反応速度を示す。より高い銀濃度(1から4.5mM)およびより小さい粒子(20nm未満)が用いられるCOIN合成の条件下において、より高い絶対ゼータ電位、およびより遅い会合速度が期待された。
【実施例5】
【0118】
複数の銀粒子のTEM分析が、4つの生成条件において実施された。銀コロイドは本願で開示された複数の手法によって合成された。1.透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析される前に、試料は、1週間室温で保持され、ほとんどの粒子が10nm未満であることが示された。2.同一ソースからの銀の試料が40分間沸騰させられ、続いて、TEM分析前に室温まで冷却された。粒子計に顕著な変化は認められなかった。3.同一ソースからの銀の試料が、TEM分析前に室温で2週間、8−アザアデニン(20μMの最終濃度)とともにインキュベートされた。いくつかの粒子が会合および融合をはじめたことが示された。4.20μMの8−アザアデニンの存在下で、19分間沸騰させた後に、複数の銀粒子をTEMによって分析した。複数の小さな粒子(10nm未満)および複数の大きな粒子(10nmよりも大きい)の存在が示された。これらの結果により(図2も参照)、沸騰を延ばすことがクラスター形成の原因であると導かれた。
【実施例6】
【0119】
(BSAでコーティングされた複数のCOINの合成)BSAでコーティングされた複数の粒子:所望のCOINサイズが得られたときに0.2%のBSAをCOIN合成溶液に加えることにより、複数のCOIN粒子は、BSAの吸収層でコーティングされた。BSAの添加は、さらなる会合を抑制した。
【0120】
(BSAコーティングの架橋):BSA吸収層が、グルタルアルデヒトにより架橋され、続いてNaBHにより還元された。架橋は、12mLのBSAがコーティングされたCOIN(約1.5mMのトータルの銀濃度を有する)を、15mLの遠心分離管に移送し、0.36gの70%グルタルアルデヒド、および213μLの1mMのクエン酸ナトリウムを添加することにより達成された。溶液は十分混合され、4℃の冷蔵庫に置かれる前に、約10分間室温に置かれた。溶液は少なくとも4時間の間4℃に保たれ、続いて、275μLのあらためて生成したNaBH(1M)が添加された。溶液は混合され、30分間、室温で放置された。続いて溶液は、5000rpmで60分間、遠心分離された。上澄みがピペットにより取り除かれ、約1.2mLの液体および遠心分離管内に沈殿物が残された。複数のCOINが、1mMのクエン酸ナトリウムを0.8mL加えることにより再懸濁されて、最終的に2.0mLの体積となった。
【0121】
(封入された複数のCOINのFPLC精製):コーティングされた複数のCOINが、架橋アガロースサイズ排除カラム上のFPLC(高速たんぱく質液体クロマトグラフィー)によって精製された。濃縮されたCOIN反応混合物の懸濁液(2.0mL)が、AKTA Purifier上のSuperose 6 FPLC カラムを用いて精製された。COIN混合物が、0.5mlのバッチに注入され、1ml/分で1mMのクエン酸ナトリウムのアイソクラチックフローがカラムに適用された。215nm、280nm、および500nmでの吸収が、ピーク収集のためにモニタされた。BSA/架橋BSAの一部が約9から11分で溶出した一方で、封入された複数のCOINは、約7から9分で溶出した。グルタルアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、および複数のラマン標識は、約20分後に溶出した。多重FPLCランからの複数の部分が、統合された。
【0122】
(実施例6)(電子顕微鏡写真が、複数のCOINの複数のラマン信号のクラスター形成の効果を示す)1.出発物質としての複数の銀の種の透過型電子顕微鏡(TEM)分析は、ほとんどの粒子が10nm未満の大きさであることを示した。SERS効果は検出されなかった。
【0123】
2.複数の有機ラマン標識(当該特定の試料において、複数のラマン標識は、2.5μMの8−アザアデニン、5.0μMのメチレンブルー、および2.5μMの9−アミノアクリジンである)の存在下で複数の銀の種粒子を加熱することによって形成された、拡大した複数の銀粒子のTEMは、ほとんどの粒子が、ほとんどクラスターがない状態で、10nmよりも大きいことを示した。複数のラマン信号は弱かった。
【0124】
3.より高いラマン標識の濃度(5.0μMの8−アザアデニン、5.0μMのメチレンブルー、および7.5μMの9−アミノアクリジン)であることを除けば、ラマン活性なクラスター化した複数のナノ粒子のTEM分析は、2と同様の条件下でなされ、大量のクラスターの形成を示し、複数のクラスターが形成される前は、試料は弱いラマン信号を与えていたけれども、強いラマン信号が当該試料から検出された。
【0125】
4.同様の大きさおよびモフォロジーを有した複数の金の種粒子が、複数のラマン標識(例えば、10μMのアデニン、あるいは20μMの8−アザアデニン)の存在下で生成された。
【0126】
5.金の核(0.25mMのAuHClおよび1.25mMのAgNOを含む溶液から生成された)を有した複数の銀粒子:複数の金の核は、10μMのアデニンの存在下の複数の金イオンから生成され、会合を誘起するための塩(すなわち、100mMのLiCl)が用いられた場合だけに検出可能なラマン信号を与えた。
【0127】
6.走査電子顕微鏡写真は、クラスター形成をさせるためにさらにAgNO(0.75mM)を添加した点を除いて、5と同様の条件下で5μMのN−ベンゾイルアデニンから生成された、複数のラマン活性な銀クラスターを示した。
【実施例7】
【0128】
(SERSおよびCOINの複数のラマン信号の比較)SERS検査のために、8−アザアデニン(AA、最終4μM)を含む100μLの銀コロイドが、100μLの以下から選択された試薬と混合された。水(control)、N−ベンゾイルアデニン(BA、10μM)、BSA(1%)、Tween−20(登録商標)(Twn、1%)、エタノール(eth、100%)。続いて、得られた200μLの混合物は、ラマン顕微鏡によってラマン散乱信号が観測される前に、100μLの水(−Li)、または100μLの0.34M LiCl(+Li)のいずれかと混合された。複数のラマン信号は任意の単位であり、対応する最大値によって規格化された。8−アザアデニンのさらなる追加がないことを除いて、同一の工程が、(20μMの8−アザアデニンを用いて生成された)COINの検定に用いられた。図9(A)は、試薬としてN−ベンゾイルアデニン(BA)がある、8−アザアデニン(AA)のSERSスペクトルを表し、SERS信号のためには塩が必要とされ、AA信号は、BA信号によって抑制されていることを示す。図9(B)は、試薬としてBAを用いたCOINからのラマンスペクトルを表し、COIN信号の形成には塩が必要とされず、塩はAA信号を減少させることを示す。強度の弱いBA信号だけが、塩が添加されたときに検出された。図9(C)は、試薬としてウシ血清アルブミン(BSA)がある8−アザアデニン(AA)のSERSスペクトルを表し、SERS信号がBSAによって抑制されていることを示す。図9(D)は、試薬としてBSAを用いたCOINからのラマンスペクトルを表し、BSAはCOINにほとんど負の効果を有さず、実質的にCOINを安定化させていることを示す。図9(E)は、試薬としてTween−20(登録商標)(Twn)を用いた8−アザアデニン(AA)のSERSスペクトルを表し、塩がない状態で比較的強度の強いSERS信号が検出されたことを示す。図9(F)は、試薬としてTween−20(登録商標)を用いたCOINからのラマンスペクトルを表し、Tween−20がCOIN信号の一部を抑制するが、一方で、塩の負の効果を部分的に補償することを示す。図9(G)は、試薬としてエタノール(Eth)を用いた8−アザアデニン(AA)のSERSスペクトルを表し、塩がSERAS信号に必要とされ、3つのピーク(複数の矢印によって表されている)がエタノールによって強められたことを示す。図9(H)は、試薬としてエタノールを用いてCOINからのラマンスペクトルを表し、塩がCOIN信号に対して負の効果を有し、複数のピークの強化が認められなかったことを示す。
【実施例8】
【0129】
複数の被分析物の検出の複数のタグとしての複数のCOINの使用。図5(A)に示したような、抗体共役COINが除去されることによって被分析物が結合した後の増強反応の段階がある検出スキームを使用して、50個のスペクトルのセットが、タグ(図5(B)では、主要ピークは1340cm−1の位置である)として8−アザアデニンCOINを使用したIL−2のための免疫サンドイッチ検定から収集された。1pg/mLのIL−2の40μLが、固定化されたIL−2捕捉抗体で覆われた5mmのウエルに添加された。50個のスペクトルが、モーター駆動ステージを連続的に動かして1つの試料から収集された。各スペクトルは、100ミリ秒を超える期間で収集された情報を表す。レーザビームの大きさは、約4ミクロンの直径であった。バックグラウンドの複数の信号は、差し引かれた。複数のスペクトルは、各スペクトルを表すために、XおよびY軸の双方においてオフセットされた。図5(C)は、複数の被分析物の信号の棒グラフである。複数の実験が、IL2およびIL8(双方ともに約20kDaの分子量を有する)の異なる複数の比率(5:0、4:1、1:1、1:4、および0:5)の1または2の被分析物を含む複数の試料を用いて実施された。複数の試料は分離されたガラス瓶中で検査され、合わされた被分析物の濃度は、各試料では50pg/mLだった。IL−2検出抗体は、8−アザアデニン(AA)を用いて生成されたCOINに共役され、IL−8検出抗体は、1:1の比率でN−ベンゾイルアデニン(BA)を用いて生成されたCOINに共役される。各試料についてトータル400データポイントからデータは収集された。予想されたラマンシフトの複数の位置において正の信号を示す複数のスペクトルは、測定信号ポイントとしてカウントされ(図5(C)、複数の幅広の棒)、対応する複数の試料の双方の被分析物に関して、トータルの正の複数の信号の百分率として表した。予想値(2つの標識に関して合計100%)は複数の幅が狭い棒で表した(図5(C))。
【0130】
上記例を参照して本発明が開示されたが、様々な変更および変化が本発明の精神と範囲に包含されることが理解されるであろう。さらに、本発明は、特許請求の範囲によって専ら決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属粒子の会合体
を備え、
前記複数の金属粒子の会合体は、前記複数の金属粒子の会合体の中に吸着している複数のラマン活性な有機化合物を有する
合成有機無機ナノクラスター。
【請求項2】
少なくとも1つのラマン活性な有機化合物が、2つ以上の金属粒子が近接することにより形成された接点内にある
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項3】
前記会合体が、2つの異なるラマン活性な有機化合物を有する
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項4】
複数の前記金属粒子が、金、銀、白金、光、またはアルミニウムを含む
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項5】
複数の前記金属粒子が、金または銀を含む
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項6】
前記第1の金属とは異なる第2の金属
をさらに備え、
前記第2の金属は、前記ナノクラスターを覆う表面層を形成する
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項7】
前記第1および第2の金属が、金、銀、白金、銅、またはアルミニウムから選択される
請求項6に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項8】
有機層
をさらに備える請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項9】
既知の被分析物に特異的に結合するプローブ
をさらに備える請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項10】
前記プローブが、複数の抗体、複数の抗原、複数のポリヌクレオチド、複数のオリゴヌクレオチド、複数の受容体、複数のペプチド核酸、複数の炭水化物、および複数の配位子を含むグループから選択される
請求項9に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項11】
前記ラマン活性な複数の有機化合物が、アデニン、4−アミノ−ピラゾロ(3,4−d)ピリミジン、2−フルオロアデニン、N6−ベンゾイルアデニン、キネチン、ジメチル−アリル−アミノ−アデニン、ゼアチン、ブロモアデニン、8−アザアデニン、8−アザグアニン、6−メルカプトプリン、4−アミノ−6−メルカプトピラゾロ(3,4−d)ピリミジン、8−メルカプトアデニン、および9−アミノアクリジンを含むグループから選択される
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項12】
前記ラマン活性な複数の化合物が、蛍光標識を有する
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項13】
前記ナノクラスターが、約50nmから約200nmの平均直径を有する
請求項1に記載の合成有機無機ナノクラスター。
【請求項14】
複数の合成有機無機ナノクラスターを生成する方法であって、
ラマン活性な有機化合物、複数の金属イオンのソース、還元剤、および金属の複数の種粒子を含む液組成を、前記ラマン活性な有機化合物がその上に吸着することにより拡大する金属の複数の粒子を生成し、前記液組成の中で前記拡大した金属の複数の粒子の複数のナノクラスターが形成するために十分な時間加熱する段階
を備える方法。
【請求項15】
有機層で、得られた前記複数のナノクラスターをコーティングする段階
をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ウシ血清アルブミンで前記複数のナノクラスターをコーティングする段階
をさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱する段階が、前記液組成の主要な吸収ピークにシフトが生ずるほど十分な時間保持される
請求項14に記載の方法。
【請求項18】
得られた前記複数のナノクラスターが、約50nmから約200nmの平均直径を有する
請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記金属が、金、銀、白金、銅、アルミニウム、およびこれらの複数の組み合わせを含むグループから選択される
請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記金属が銀または金である
請求項14に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの前記ラマン活性な有機化合物が蛍光性である
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が、各繰り返しにおいて複数のナノクラスターのセットを生成するために、異なるラマン活性な有機化合物を用いて多数回繰り返され、
前記セットの各要素が特異なラマン信号を有する
請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記液組成が、少なくとも2つの異なるラマン活性な有機化合物を含む
請求項14に記載の方法。
【請求項24】
金属の複数のナノクラスター内に組み込まれた少なくとも1つのラマン活性な有機化合物によって生成された、セットに特有のラマン信号を有する前記セットの各要素が、約50nmから約200nmの平均直径を有する
ラマン活性な金属の複数のナノクラスターのセット。
【請求項25】
前記セットの少なくとも1つの要素が、複数のナノクラスターの前記セットの少なくとも1つの要素のそれぞれの中に組み込まれた、異なる種類のラマン活性な複数の有機化合物によって生成された、前記セットに特有のラマン信号を有する
請求項24に記載のラマン活性な金属の複数のナノクラスターのセット。
【請求項26】
前記異なる複数の組み合わせが、前記ラマン活性な複数の有機化合物の異なるモル比である
請求項24に記載のラマン活性な金属の複数のナノクラスターのセット。
【請求項27】
前記セットの各要素が、
既知の生物製剤の被分析物に特異的に結合するプローブ
をさらに有する請求項24に記載のラマン活性な金属の複数のナノクラスターのセット。
【請求項28】
試料中の被分析物を検出する方法であって、
被分析物を含む試料を、多数のラマン活性な有機化合物を含み、多数の金属粒子の会合体を有するナノクラスターと接触させる段階であって、前記多数のラマン活性な有機化合物は、多数の金属粒子の前記会合体の内に吸着されており、前記被分析物と特異的に結合するプローブを有する段階と、
前記ナノクラスターから放出される複数のSERS信号を検出する段階と
を備え、
前記複数の信号は、被分析物の存在を示す
方法。
【請求項29】
前記試料は、気体状の試料であって、
前記接触させる段階が、
前記気体状の試料を前記複数のナノクラスターを含む溶液に接触させる段階
を含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記試料が液体試料である
請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が生物製剤試料である
請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記複数のナノクラスターが、高分子ビーズ内に埋め込まれており、前記ビーズは、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリレート、および、ポリ(メタ)アクリレートから選択される高分子で構成される
請求項28に記載の方法。
【請求項33】
多数の生物製剤の被分析物を有する試料を、複数の金属ナノクラスターのセットに結合している複数のプローブが、複数の複合体を形成するために前記試料の中に存在している複数の被分析物への特異な結合が可能となるべく、適した条件化でラマン活性な有機化合物中に組み込まれた、約50nmから約200nmの平均直径を有する複数のラマン活性な金属のナノクラスターのセットであって、前記セットの各要素が少なくとも1つのラマン活性な有機化合物から生成され、当該セットに特有のラマン信号を有する前記セットと接触させる段階と、
前記複数の結合複合体を分離する段階と、
前記結合複合体の中の、前記有機ラマン活性な複数の化合物から放出される複数種類のラマン信号を検出する段階と
を備え、
各ラマン信号はそれぞれ、前記試料の中に既知の生物製剤の被分析物の前記存在を示す
試料中の生物製剤の複数の被分析物を識別する方法。
【請求項34】
前記生物製剤の複数の被分析物が複数のたんぱく質であり、前記セットの中の複数の前記プローブが複数の抗体であり、各抗体が、異なる種類の既知のたんぱく質に特異的に結合する
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記分析が、信号増幅を用いないサンドイッチ免疫検定である
請求項33に記載の方法。
【請求項36】
重合ビーズと、
多数のナノクラスターと
を備えるマイクロ球であって、
前記多数のナノクラスターは、
複数の金属粒子の会合体と、
少なくとも1つのラマン活性な有機化合物と
を有し、
前記ラマン活性な有機化合物は、複数の金属粒子の前記会合体の内に吸着され、前記多数のナノクラスターは、前記重合ビーズの内に組み込まれている
マイクロ球。
【請求項37】
前記重合ビーズが、ポリオレフィンを含む
請求項36に記載のマイクロ球。
【請求項38】
前記重合ビーズが、ポリスチレンを含む
請求項36に記載のマイクロ球。
【請求項39】
前記重合ビーズが、ポリアクリレートを含む
請求項36に記載のマイクロ球。
【請求項40】
前記重合ビーズが、ポリ(メタ)アクリレートを含む
請求項36に記載のマイクロ球。
【請求項41】
埋め込まれた複数のナノクラスターを有する複数の重合マイクロ球の作成方法であって、
a)少なくとも1つの界面活性剤を含む水のホモジナイズ法によって、複数のミセルを生成する段階と、
b)請求項1または請求項13に記載の前記複数のナノクラスターを前記複数のミセルに疎水性物質とともに導入する段階と、
c)アンチ会合安定化剤を添加する段階と、
d)極性および非極性の複数の有機モノマーのペアを導入する段階と、
e)重合反応を開始する遊離基開始剤を導入して、内部に複数の前記ナノクラスターを組み込んだ複数の重合マイクロ球を生成する段階と
を備える重合マイクロ球の作成方法。
【請求項42】
複数のラマン活性なナノクラスターが組み込まれた複数のマイクロ球の作成方法であって、
a)乳化重合を通して均一な大きさの複数の重合マイクロ球を形成するために有機溶媒中のアクリル酸の存在下で、複数のミセル形成有機極性、および非極性有機モノマーのペアを共重合する段階と、
b)複数の前記マイクロ球に前記複数の分子を導入するために、非溶媒の液体中の少なくとも1つのラマン活性な分子と前記複数のマイクロ吸とを接触させる段階と、
c)内部に請求項1または請求項13の前記複数のナノクラスターを埋め込んだ、複数の重合マイクロ球を形成するために、b)で得られた混合物へ金属コロイド懸濁液を導入する段階と
を備えるマイクロ球の作成方法。
【請求項43】
複数のナノクラスターが埋め込まれた複数の重合マイクロ球を作成する方法であって、
a)重合ナノクラスター複合体の形成のために、正に帯電した複数の重合粒子を、負に帯電した請求項1または請求項13に記載の複数のナノクラスターと接触させる段階と、
b)架橋可能な高分子で前記複合体をコーティングする段階と、
c)内部に前記複数のナノクラスターが埋め込まれた不溶性高分子マイクロ球を形成するために、前記架橋可能な高分子を複数のリンカー分子で架橋する段階と
を備えるマイクロ球の作成方法。
【請求項44】
複数のナノクラスターが埋め込まれた複数の重合マイクロ球を作成する方法であって、
a)乳化重合を通して均一な大きさの複数のマイクロ球を形成するために、複数のミセル形成極性および非極性有機モノマーのペアをアクリル酸の存在下で共重合する段階と、
b)少なくとも1つの有機溶媒中の前記複数のマイクロ球、および少なくとも1つのラマン活性な分子を接触させて、前記複数のマイクロ球内に前記複数の分子を拡散させる段階と、
c)内部に請求項1または請求項13に記載の前記複数のナノクラスターを封入するために、金属コロイドを前記有機溶媒に添加する段階と
を備える重合マイクロ球を作成する方法。
【請求項45】
生物製剤の被分析物を検出するためのキットであって、
固体支持材上の請求項1または請求項13に記載の多数のナノクラスター、および
生物製剤
を備えるキット。
【請求項46】
前記生物製剤が、ペプチド、ポリペプチド、たんぱく質、抗体、またはポリヌクレオチドである
請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記固体支持材が、複数の前記粒子のアレイである
請求項45に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−514169(P2007−514169A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544147(P2006−544147)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/043878
【国際公開番号】WO2005/090948
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】