説明

合成木材用の添加材及びその製造方法,前記添加材を含む合成木材用の成形材並びに合成木材

【課題】建築廃材として回収された廃棄プラスチックより,合成木材の強度を改善し得る添加材を得る。
【解決手段】建築廃材として回収され,少なくとも一部にPETによる構成部分を含むと共に,複数種類の成形品が混在した廃棄プラスチックを,破砕工程(工程1)で太さ8〜50μm,長さ1〜30mmの繊維状破砕物とし,これを湿式比重選別にかけて夾雑物を除去し(工程4),乾燥する(工程5)。乾燥後の繊維状破砕物は,必要に応じて更に衝撃摩砕力を付加して夾雑物を除去する乾式洗浄(工程6)を行う。これによりPETの含有量が15〜30wt%,好ましくは20wt%であり,且つ,灰分が10〜15wt%の添加材(繊維状破砕物)を得,これをPETの溶融温度未満の溶融温度の熱可塑性樹脂に,木粉と共に添加してPETの溶融温度未満の温度で合成木材を形成すると,強度の改善された合成木材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,合成木材用の添加材及びその製造方法,前記添加材を含む合成木材用の成形材並びに合成木材に関し,より詳細には,建築廃材として発生した廃棄プラスチックを原料とし,熱可塑性樹脂と木粉とを主材料とする合成木材の成形材中に添加することで,得られる合成木材の強度を改善することのできる添加材及びその製造方法,前記添加材が添加された合成木材用の成形材,並びに前記成形材を使用して製造された合成木材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と木粉を共に溶融混練して得た成形生地を所望の形状に成形して得られる合成木材は,木材の風合いを持ちつつも,腐敗し難い等といった樹脂成形体としての特性をも併せ持つことから,例えば屋外に設置されるウッドデッキ用の建築材料等として広く使用されている。
【0003】
その一方で,このような合成木材は,熱可塑性樹脂に対して木粉等の充填材が多量に添加されたものであるために脆くなり強度が不足する傾向にある。
【0004】
例えば天然の木材,一例として板材との比較において説明すると,この板材に図6(A)に示すようにその厚み方向に荷重をかけた場合に生じる破壊の性質は,図6(B)に示すように荷重の増加に対して板材が撓みながら徐々に破壊が生じる「延性破壊」であるのに対し,図7(A)に示すように合成木材である板材に同様に荷重をかけた場合には,図7(B)に示すように板材は殆ど撓むことなく一気に破壊が生じる「脆性破壊」が生じる。
【0005】
しかも,このような「脆性破壊」が生じた場合,板材は破壊点において完全に分断されてしまい,また,破壊により生じた合成木材の破片が飛散する等して危険でもある。
【0006】
そのため,このような合成木材の最大撓み量が大きくなるよう破壊特性を向上させて,合成木材の破壊特性を「脆性破壊」から「延性破壊」となるように改質することが要望される。
【0007】
このような樹脂成形品の強度を改善するために,成形材中にガラス繊維や炭素繊維等を所定の長さに切断したチョップストランドを添加したものは,所謂「強化プラスチック」として公知である。
【0008】
また,前述した合成木材の強度を向上するために,木粉とポリプロピレン(PP)及び/又はポリエチレン(PE),又はポリ塩化ビニル(PVC)から成る合成木材の成形材に,骨材として,掛け布団あるいは敷き布団,ベッドの詰め綿等として使用され,廃棄されたPET繊維を混入した合成木材用の成形材も提案されている(特許文献1の請求項1,「0001」欄参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−141656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
自然環境に対する人々の感覚が鋭敏化し,環境保全が盛んに叫ばれる今日にあっては,各種資源について積極的にリサイクルを行うことが企業活動を行う上でも強く求められている。
【0011】
このような要請は,廃棄プラスチックについても存在し,例えばペットボトルのように回収された廃棄プラスチックのうち材質毎に回収可能なものについては再度プラスチック製品としてリサイクルを繰り返す「マテリアルリサイクル」を行い,又は,化学的にモノマー化や燃料化してプラスチック製品の原料や燃料を得る「ケミカルリサイクル」を行うことができるよう,廃棄プラスチックの分別回収の徹底も浸透しつつある。
【0012】
更に,各種のプラスチックが混在するものや汚れがひどいもの等,前述した「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」によってプラスチックとしてのリサイクルができずに埋め立て処理等がされていた廃棄プラスチックについても,可能な限り資源として再利用することができるよう,例えば再生利用できない古紙等と共に固形燃料(RPF:Refuse Paper & Plastic Fuel)とする等して,熱エネルギーを得るための燃料として利用する「サーマルリサイクル」を行うことが求められている。
【0013】
このような社会的な要請は,建築業界においても例外ではなく,家屋やビル,その他の建築物の解体の際に回収されたプラスチック製品についても種々のリサイクルの途が検討されている。
【0014】
ここで,建築物の解体の際に回収されるプラスチック製品であっても,例えば給排水設備に使用された管材や排水枡,雨樋等の塩化ビニル製品,断熱材等として使用されているウレタンフォーム,その他の比較的取り外しが容易な内外装品等,分別回収を容易に行うことができるものについては現場作業において分別回収され,リサイクルに回される場合もある。
【0015】
しかし,建築物にはその他にも,例えばフロアカーペット,タイル,その他の床材,壁紙や天井クロスのように,床や壁等の構造体に直接接着される等して分離が困難な内外装品,壁体内に埋設された吸排気設備用のダクト,木造家屋等において外壁材の下地等として取り付けられている通気性防水シート,屋根材,基礎中に埋設された防水シート,その他至る所に多種多様なプラスチック製品が使用されており,これらのプラスチック製品の多くは,解体時に分別回収等されることなく構造体と共に破壊され,このような解体作業により,プラスチック,木材,金属,コンクリーや石膏ボード,紙類,及び解体の際に混ざり込んだ土砂や石,その他の汚れ等が混ざり合った,「建築廃材」として廃棄される。
【0016】
そして,このような建築廃材は,例えば産業廃棄物処理業者の再資源化施設等に受け入れられて,プラスチック類,紙類,金属,木屑,コンクリート等にある程度仕分けされた後,再利用可能なものについてはそれぞれの用途に応じた再資源化が行われる。
【0017】
このように建築廃材として発生した廃棄プラスチックは,多種多様な材質のプラスチック製品が混ざり合っているだけでなく,構造体に取り付けるために使用されていた接着剤や,木片,コンクリート,石膏ボード等が付着している等,汚れの激しいものが多い。
【0018】
しかも,産業廃棄物処理業者等によって建築廃材を構成する他の金属,木屑,コンクリート等とは仕分けされているといえども,その中には金属,石,砂,コンクリート,木片,石膏ボード,ガラス片等の夾雑物が未だに多く混在した状態にある。
【0019】
そのため,このような建築廃材として回収された廃棄プラスチックは,これを再度プラスチックとして再生する前述した「マテリアルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」を行うことができないだけでなく,夾雑物の多さ故,前述した固形燃料等として「サーマルリサイクル」にも適していない。
【0020】
そのために,建築廃材として発生した廃棄プラスチックは,例えばある程度の大きさに切断する等して減量処理が行われた後に,最終廃棄物として埋め立て処理等が行われる等,有効に再利用されていない。
【0021】
従って,このように建築廃材として発生した廃棄プラスチックに再利用の途を見出すことができれば,資源の有効利用という社会的な要請により積極的に応えることができるものとなる。
【0022】
ここで,特許文献1に記載の発明にあっては,合成木材の強度を向上させるために添加する前述のPET繊維を,掛け布団あるいは敷き布団,ベッドの詰め綿等として使用され,廃棄されたPET繊維を使用するものとしていることから,詰め綿として廃棄されたPET繊維に新たな用途を見出すと共にリサイクルすることで資源の再利用という社会的な要請にも一見合致するもののようである。
【0023】
しかし,廃棄プラスチックを如何にリサイクルするかは,単に廃棄物を二次利用するというだけでなく,新たな資源の投入がより抑制可能な方法であるか否か,環境に対する負荷がより少ない方法であるか否かについても考慮して決定されるべきであり,このような点を考慮すると,特許文献1に記載の発明は必ずしもこの要請を満足できるものとはなっていない。
【0024】
すなわち,特許文献1で骨材として添加している詰め綿等のPET繊維は,PETによって構成されたものであるために,分別回収によって再度PET製品としてマテリアルリサイクルを繰り返すことができる廃棄プラスチックである。
【0025】
そのため,前述したPET繊維をこのようなマテリアルリサイクルに付せば,PET製品を製造するための新たな資源,原料の投入抑制を果たすことができ,より環境に対する負荷が軽減されたリサイクルを行うことができる一方,一旦合成木材の骨材として添加してしまえば,PETとしては回収することができなくなり,PETとしての繰り返しの循環を断ち切ることになる。
【0026】
以上の点に鑑み,本発明の発明者は,合成木材の強度を改善するにあたり,建築廃材として発生した廃棄プラスチックを利用することができれば,新たな資源の投入抑制,環境に対する低負荷という観点においても理想的なリサイクルを行うことができるものと考えた。
【0027】
そして,上記発想の下に鋭意研究を重ねた結果,このような建築廃材として発生した廃棄プラスチックを適切に処理して所定の構造を備えた添加材を得,この添加材を適切な量添加すると共に,所定の温度条件等によって成形することで,種々の構成成分が混在した状態で,且つ,一定量の夾雑物が除去されることなく混在した状態であっても,合成木材に対してPET繊維を添加した場合に匹敵する強度の改善が得られることを見出した。
【0028】
そこで,本発明は,建築廃材等として回収された廃棄プラスチックより,従来技術として説明したPET繊維と同様に合成木材用の強度を改善することのできる添加材,前記添加材の添加された合成木材用の成形材,及び合成木材を得ることにより,合成木材の強度を改善し,安全性を向上させるのみならず,建築廃材として回収された廃棄プラスチックに新たな用途を見出すことにより,資源のより一層の有効利用を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために,本発明の合成木材用の添加材は,ポリエチレンテレフタレート(PET)の溶融温度未満の溶融温度を有する熱可塑性樹脂と木粉とを主成分とする合成木材の成形材中に添加して使用する添加材であって,
建築廃材として回収され,少なくとも一部にPETによる構成部分を含むと共に,複数種類の成形品が混在した廃棄プラスチックを原料とし,該廃棄プラスチックを破砕して得た太さ8〜50μm,長さ1〜30mmの繊維状破砕物の集合体であって,
前記集合体の全体中におけるPETの含有量が15〜30wt%,好ましくは20wt%であり,且つ,灰分が10〜15wt%であることを特徴とする(請求項1)。
【0030】
前記構成の添加材において,前記集合体の全体中におけるヘキサフルオロプロパノール可溶成分が15〜30wt%,テトラヒドロフラン又はアセトン可溶成分が3〜25wt%,キシレン可溶成分が30〜50wt%,残余の成分が35wt%以下の組成から成ることを特徴とする(請求項2)。
【0031】
また,本発明の添加材の製造方法は,建築廃材として回収され,少なくとも一部にポリエチレンテレフタレートによる構成部分を含むと共に,複数種類の成形品が混在した廃棄プラスチックを処理対象とし,
前記処理対象を太さ8〜50μm,長さ1〜30mmに切断乃至は破砕して繊維状破砕物を得る破砕工程と,
前記繊維状破砕物を所定比重の媒体液中で攪拌し,比重差により前記繊維状破砕物中に混在する夾雑物を除去すると共に前記繊維状破砕物を回収する比重選別工程と,
前記回収された繊維状破砕物を乾燥する乾燥工程から成り,
該乾燥後の繊維状破砕物を合成木材用の添加材として回収することを特徴とする(請求項3)。
【0032】
上記添加材の製造方法において,前記乾燥工程後の前記繊維状破砕物に対して更に衝撃摩砕力を付加し,前記繊維状破砕物に付着する夾雑物を除去する乾式洗浄工程を更に設け,該乾式洗浄工程後の前記繊維状破砕物を合成木材用の添加材として回収するものとすることができる(請求項4)。
【0033】
また,前記破砕工程後,前記比重選別工程前に,前記繊維状破砕物中に混在する磁性体を磁力により除去する磁力選別工程を設けるものとしても良い(請求項5)。
【0034】
更に,本発明の合成木材用の成形材は,前述したいずれかの添加材,PETの溶融温度未満の溶融温度の熱可塑性樹脂,及び木粉を含み,前記添加材中の前記PET分が,全構成成分100wt%中,0.3〜5.0wt%の範囲となるよう前記添加材を添加したことを特徴とする(請求項6)。
【0035】
上記合成木材用の成形材は,前記熱可塑性樹脂と前記木粉の合計量100wt%中,前記熱可塑性樹脂が60〜40wt%,前記木粉が40〜60wt%の割合で配合することができる(請求項7)。
【0036】
更に,前記熱可塑性樹脂の成分を,ポリプロピレン100〜50wt%に対しポリエチレン0〜50wt%とすることができる(請求項8)。
【0037】
また,上記合成木材用の成形材は,前記熱可塑性樹脂を前記木粉及び添加材と共に前記PETの溶融温度未満の温度で溶融すると共に混練して得た混練材料を所定粒径のペレットに造粒した状態で提供するものとしても良い(請求項9)。
【0038】
更に,本発明の合成木材は,前述したいずれかの合成木材用の成形材を前記ポリエチレンテレフタレートの溶融温度未満の温度で溶融すると共に成形して得た合成木材である(請求項10)。
【発明の効果】
【0039】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の添加材を添加した合成木材用の成形材を使用し,該成形材を添加材に含まれるポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という。)の溶融温度未満の温度で溶融すると共に成形すると,添加材中のPET成分は繊維状の状態を維持したまま合成木材中に残り,この繊維状のPETが,グラスファイバーやカーボンファイバー等を添加した場合と同様に合成木材の強度向上に寄与する。
【0040】
特に,繊維状破砕物の集合体によって形成された添加材が,ヘキサフルオロプロパノール可溶成分〔ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリアミド(PA)〕,テトラヒドロフラン又はアセトン可溶成分〔ポリスチレン(PS),ポリ塩化ビニル(PVA)〕,キシレン可溶成分〔ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)〕と残余の成分とにより構成されていることから,PETに対して低溶融温度である添加材のPET以外の樹脂成分は成形時の加熱によって溶融して成形材の主成分である熱可塑性樹脂中に溶融乃至は分散して,合成木材の強度低下等をもたらすことなく,しかも残余の成分が比較的少ないものとなっているためこのような成分による合成木材の性能低下もない。
【0041】
また,本発明の添加材の製造方法によれば,上記添加材を建築廃材である廃棄プラスチックより容易に得ることができた。
【0042】
熱可塑性樹脂及び木粉を含み,前記添加材の前記PETが全体量に対して0.3〜5.0wt%となるよう添加材を配合した合成木材用の成形材にあっては,この成形材を使用して得た合成木材の強度を好適に向上させることができると共に,添加材を構成する各繊維状破砕物乃至はこのうちのPET成分によって構成された繊維状破砕物が解綿状に固まることにより生じる混練や成形の困難性や,繊維状の物質が合成木材の表面に露出する等の成形不良の発生を好適に防止できた。
【0043】
更に,添加材の添加によっても,比較的多量の木粉を添加することができ,前記熱可塑性樹脂60〜40wt%に対して前記木粉40〜60wt%の割合で配合することができた。その結果,木質感が高く軽量である合成木材を得ることができた。
【0044】
前記熱可塑性樹脂の成分を,ポリプロピレン100〜50wt%に対しポリエチレン0〜50wt%とした構成にあっては,熱可塑性樹脂と添加材中のPET成分との接着性が良好で強度の改善が得易く,更に添加材中に最も多く含まれるキシレン可溶成分であるポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)を,合成木材の成形時に熱可塑性樹脂中に溶融させることができ,添加材に含まれるPET以外の成分が合成木材の強度低下等を引き起こすことを好適に防止することができた。
【0045】
前記熱可塑性樹脂を前記木粉及び添加材と共に前記PETの溶融温度未満の温度で溶融すると共に混練して得た混練材料を所定粒径のペレットに造粒して成る合成木材用成形材にあっては,予め各成分が均一に分散されていることにより,その後の合成木材の成形に際して成分の偏りが生じ難いだけでなく,ペレット状の成形材は取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の添加材の製造方法を模式的に示した工程図。
【図2】乾式洗浄工程で使用する装置(クリーニングセパレータ)の要部断面図。
【図3】乾式洗浄工程で使用する装置(クリーニングセパレータ)におけるピンの配置を模式的に示した説明図。
【図4】曲げ試験方法の説明図。
【図5】曲げ試験結果における曲げ応力−たわみ量の相関図。
【図6】曲げにより木材が破断する様子(延性破壊)の説明図であり,(A)は無荷重の状態から荷重の付加によって破断が生じる迄の状態を説明した説明図,(B)は,曲げ応力−たわみ量の相関図。
【図7】曲げにより合成木材が破断する様子(脆性破壊)の説明図であり,(A)は無荷重の状態から荷重の付加によって破断が生じる迄の状態を説明した説明図,(B)は,曲げ応力−たわみ量の相関図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に,本発明を実施するための形態について説明する。
【0048】
〔添加材の原料〕
本発明の添加材は,建築廃材として回収された廃棄プラスチックを原料として製造する。
【0049】
このような建築廃材である廃棄プラスチックは,家屋,住居・商業ビル等の各種建物の解体(なお,解体にはリフォーム等に際した部分的な解体等も含む)の際に,構造体等と共に破壊されて,その他の金属,コンクリート,木材,石膏ボード,紙類,ガラス等と共に,建築廃材として廃棄されたものより,プラスチック類を仕分けして得たものであり,この中には,透湿防水シート,タイルカーペット,塩ビクロス(壁紙),プラスチックバンド,建築用ラミネートフィルム,ウインドウフィルム,その他の各種のプラスチック製品乃至はその破片が混在した状態で含まれている。
【0050】
このような建築廃材として発生した廃棄プラスチックは,例えば建物の解体現場で発生した前述の廃棄プラスチックを直接原料として受け入れるものとしても良く,又は,前述したように,産業廃棄物処理業者等が解体現場より回収し,仕分け等した後のものを入手しても良い。
【0051】
このようにして建築廃材として回収された廃棄プラスチックは,解体現場の別によっても相違するものの,受け入れ時において重量比でおよそ40〜70%程度の金属,石,砂,コンクリート,木片,石膏ボードの破片,ガラス,その他の夾雑物が混在したものとなっている。
【0052】
以上のようにして得た建築廃材としての廃棄プラスチックは,排出した解体現場等によって廃棄プラスチック中に含まれる樹脂成分には若干の相違はあるものの,いずれの解体現場等より排出された廃棄プラスチックであっても,前述の夾雑物を除いた樹脂分中には,およそ15〜30wt%のPETによる構成部分が含まれている。
【0053】
上記PETによる構成部分は,例えばPET樹脂のみによって構成された廃棄物と,それ以外の樹脂によって構成された廃棄物とが混在して存在するものであっても良く,又は一部がPET樹脂によって構成された製品(例えば積層体の一部の層がPET樹脂によって形成されている等),単一の製品中にPET樹脂による構成部分が存在しても良い。
【0054】
〔添加材の製造方法〕
本発明の添加材は,建築廃材として回収された前述の廃棄プラスチックを原料として図1に示す各工程を経て製造される。
【0055】
工程1:粗砕工程
本発明の添加材の原料である前述の廃棄プラスチックは,原料としての受け入れ段階において未だ製品の形状を止める等した比較的サイズの大きなものが存在することから,以後の処理工程にかける前に本工程においてこれを所定のサイズ以下に粗砕して粗砕片を得,原料の減量を図ると共に,次工程での取り扱いを容易とする。
【0056】
また,このような粗砕を行う際に,廃棄物が混ざり合うことで,原料中における成分の偏りが緩和される。
【0057】
もっとも,原料となる廃棄プラスチック中に含まれる個々の廃棄物が,受け入れ段階において次工程で説明する破砕工程による処理を容易に行い得るサイズに粗砕されていると共に,粗砕片が均一に混ざり合う等している場合には,本工程はこれを省略するものとしても良い。
【0058】
このような粗砕は,受け入れた廃棄プラスチックを所定のサイズに粗砕し得るものであれば,モノカッタ,シュレッダ,クラッシャ,カッタミル等の既知の各種の粗砕手段を使用してこれを行うことができる。
【0059】
本実施形態にあっては,一例として図1に示すように内向きに回転する2軸を平行に設け,各軸に複数枚の回転刃を所定間隔に設けると共に,一方の軸に設けた回転刃と他方の軸に設けた回転刃とを噛み合った状態で回転するクラッシャを使用し,このクラッシャの二軸間に廃棄プラスチックを通過させて粗砕を行った後,目開90mmのスクリーンを通過したものを粗砕片として回収した。
【0060】
工程2:破砕工程
上記粗砕工程で得た粗砕片を,本破砕工程において切断,破砕乃至は粉砕し,太さ8〜50μm,長さ1〜30mmの繊維状破砕物を得る。
【0061】
本工程における破砕は,前述した粗砕工程で得た粗砕片を上記サイズに切断,粗砕乃至は破砕し得るものであれば既知の如何なる装置を使用して処理を行っても良く,一例として既知の破砕機,カッタミル等の破砕手段を用いることができる。
【0062】
本実施形態にあっては,破砕手段によって破砕後,スクリーンメッシュ等を通過させて前述のサイズに破砕された繊維状破砕物として回収して次工程の処理を行った。
【0063】
工程3:磁力選別工程
以上のようにして得られた繊維状破砕物は,その後,磁力選別工程にかけて,繊維状破砕物中に混在する鉄等の磁性体を除去する。
【0064】
もっとも,本工程における磁力選別は必ずしもこれを行う必要はなく,前工程によって得られた繊維状破砕物をそのまま後述する比重選別工程にかけ,これにより鉄等の磁性体も併せて除去するものとしても良い。
【0065】
本実施形態にあっては,この磁力選別を既知の磁選コンベアによって行った。この磁選コンベアとは,例えコンベアのベルトを回転させるプーリのうち,搬送方向前方端側のプーリの外周に磁石を取り付けたもので,この磁選コンベアのコンベアベルト上に前述の繊維状破砕物をなるべく広く,薄く拡げてコンベアにより搬送すると,非磁性体である繊維状破砕物はコンベア端より搬出されて例えば繊維状破砕物用に設けた回収容器等に回収される一方,鉄等の磁性体は,ベルトを介してプーリに付着し,コンベアの裏面側に搬送された後,ベルトがプーリの外周より剥がれた時点で,コンベアの底部に配置された回収容器等に回収することができるように構成したものである。
【0066】
以上の磁力選別により,原料とした廃棄プラスチックの重量を100%とした場合,重量比で約2%程度の磁性体が除去される。
【0067】
なお,磁力選別工程は,上記磁選コンベアのような装置に限定されるものではなく,例えば,磁選ドラム等,既知の各種の磁力選別装置を使用して行うものとしても良く,磁力選別を行うことができれば,使用する装置構成は,前述した例に限定されない。
【0068】
工程4:湿式比重分離工程
上述した磁力選別工程で磁性体が除去された後の繊維状破砕物に対しては,本工程において湿式比重分離が行われ,これにより繊維状破砕物中に混在する金属,コンクリート,石,砂,石膏,ガラス,その他の比較的比重の大きな夾雑物が除去される。
【0069】
本実施形態にあっては,この湿式比重選別において,繊維状破砕物の洗浄についても併せて行うことができるよう,湿式比重分離装置に設けた液槽に攪拌機能を設け,媒体液(水または比重調整した液体)が貯留された液槽内に前記磁選分離後の繊維状破砕物を投入して攪拌手段により攪拌して前記繊維状破砕物の洗浄を行うと共に,この洗浄によって繊維状破砕物の表面より脱落した夾雑物を剥離させ,金属,石,砂,コンクリート,石膏,ガラス,その他の比較的比重の大きな夾雑物を前記媒体液中で沈降させ,該媒体液中を浮遊する繊維状破砕物を回収することで,繊維状破砕物の洗浄と比重分離による夾雑物の除去とを行うことができるようにした。
【0070】
なお,前述した媒体液として水を使用する場合,繊維状破砕物を構成する樹脂中,PS,PVC,PET,PAは水よりも比重が僅かに大きいため,静置した状態で放置する場合,これらの樹脂材料によって形成された繊維状破砕物についても液槽内で沈降することとなるが,前述したように液槽内の媒体液を攪拌した状態することで,繊維状破砕物を媒体液中で浮遊させて金属,石,砂,コンクリート,石膏,ガラス等の等の夾雑物とは別に回収することができる。
【0071】
このようにして湿式比重分離工程を経ることにより,原料である廃棄プラスチックの重量100%に対し,重量比で48%程が夾雑物として本工程で除去される。
【0072】
なお,前述したように,上記湿式分離工程において液槽内に投入された繊維状破砕物は媒体液によって洗浄され得るものであるが,この湿式分離工程前に,又は湿式分離工程後に別途,前記繊維状破砕物を洗浄する工程を設けるものとしても良い。
【0073】
このような洗浄工程を採用する場合,ここで行う洗浄としては各種方法を採用することができ特に制限されるものではないが,例えば前記比重分離に使用する媒体液と同一組成の液体を洗浄液として,該洗浄液を貯留することができる容器に洗浄液を貯留し,その中に上述した比重分離装置によって比重分離する前,又は比重選別後の繊維状破砕物を投入し,投入した粗砕片を例えば振動,攪拌,その他の方法により洗浄することができる。
【0074】
このように2段階の洗浄を行うことで,洗浄を湿式比重分離前に行う場合には,洗浄の際に繊維状破砕物に再付着した汚れを比重分離の際に除去することができ,また,洗浄を湿式比重分離の後に行う場合には,比重分離の際に繊維状破砕物に再付着した汚れを洗浄によって除去することができ,より清浄な繊維状破砕物を回収することができる。
【0075】
工程5:乾燥工程
以上のようにして,湿式比重選別によって金属,石,砂,コンクリート,石膏,ガラス等の比較的比重の大きな夾雑物が除去された後の繊維状破砕物は,本乾燥工程において乾燥される。
【0076】
この乾燥は,自然乾燥,又は乾燥機による温風乾燥等の既知の各種の方法を用いて行うことができ,本実施形態にあっては,一例として回転するドラム内に湿式比重分離によって回収された繊維状破砕物を投入すると共に,ドラム内に温風を導入しながら乾燥した。
【0077】
このようにして繊維状破砕物を乾燥することにより,繊維状破砕物に付着していた汚れの一部が更にドラムの回転による衝撃で剥離して生じた微細な粉が,原料とした廃棄プラスチックの重量100%に対し5%程度生じ,乾燥後の繊維状破砕物は,原料である廃棄プラスチックに対して重量比で45%程度となった。
【0078】
なお,前記乾燥機としては,ドラムの内壁に攪拌翼が突出したもの,又は,ドラム内で回転してドラム内の繊維状破砕物を攪拌する攪拌翼を備えたものを使用するものとしても良い。このような攪拌翼を設けることで,乾燥工程において繊維状破砕物が撹拌される際により強い衝撃が加えられ,繊維状破砕物に付着していた付着物を一部剥離することができ,これにより後述する乾式洗浄工程おける処理時間の短縮を図ることもできる。
【0079】
工程6:乾式洗浄工程
以上のようにして乾燥された後の繊維状破砕物は,これを本発明の添加材として使用することができる。
【0080】
また,前述のようにして乾燥された繊維状破砕物は,更に本工程において乾式洗浄を行うことで,繊維状破砕物の表面に未だ付着する夾雑物の除去を行った後に本発明の添加材として使用するものとしても良い。
【0081】
本工程で行う乾式洗浄とは,前工程で乾燥された繊維状破砕物に対して衝撃力や摩擦力を繰り返し付加することで,繊維状破砕物を叩き,変形させ,繊維状破砕物の表面を他物質と擦過することにより,繊維状破砕物の表面未だ付着する汚れ,その他の夾雑物を微粉末状の物質として除去回収する工程である。
【0082】
この乾式洗浄工程は,前述したように夾雑物の分離回収を行い得るものであれば如何なる装置を使用して行うものとしても良いが,一例として本実施形態にあっては,図2,3 に示す装置(本明細書において「クリーニングセパレータ」という。)を使用して行った。
【0083】
このクリーニングセパレータ130は,図2に示すように固定円盤131の中心部に前述の繊維状破砕物82を投入する供給投入口132を連通開口させ,前記固定円盤131に固定端板133を,処理空間155を隔てて対向させ,前記固定円盤131に固定端板133のそれぞれの外周端縁を周側板135で固定した構造を備えており,前記処理空間155内には回転横軸142によって回転駆動される可動円盤141を設け,回転横軸142は各軸受143,143によって枢支されている。前記回転横軸142は,図示せざるモータ等の回転駆動手段により回転駆動される。
【0084】
そして,前記固定円盤131上には,複数の同心円上の(可動円盤141に対する相対的な)回転軌跡a(図3参照)上で各固定ピン134を順次に植設し,一方,前記可動円盤141上には,前記各固定ピン134とは異なる複数の回転軌跡b上で交互に入り込む可動ピン144を順次に植設して,これらの固定,可動の各ピン134,144の相互間で衝撃摩砕力により,繊維状破砕物に対し前述した衝撃力や摩擦力を付与することができるようにしている。
【0085】
さらに,可動円盤141の外周側で前記周側板135との間には,排出空間156を隔てて所望径の細孔をパンチング形成した所定メッシュのスクリーン151を周設させ,排出空間156の下方に排出口152を設けている。
【0086】
また,処理空間155のスクリーン151内の下部に取出口153を設け,取出口153に開閉制御のためのプラグバルブ154を配設する。なお,前記取出口153に図1に示すようにクリーニングセパレータ130内のエアーを吸引するブロワー158を連通し,このブロワー158を介して供給投入口132へ連通するようにしても良い。
【0087】
従って,上記のクリーニングセパレータ130では,図示せざる回転駆動手段により回転横軸142を回転して可動円盤141を回転し,繊維状破砕物82を供給投入口132に供給すると,各繊維状破砕物82は,処理空間155の中心部にあって,固定,可動の各ピン134,144との衝突,各ピン間における剪断力,ピンが擦過した際の摩擦力等によって,繊維状破砕物の表面に付着した夾雑物が剥離されると共に微粉末状に破砕され,一方,繊維状破砕物82は,前記ピン134,144との衝突によって僅かに破砕され,又は,ピン間を通過する際の剪断力によって引き延ばされる等して延伸されるとしても,夾雑物のようにその全体が微粉状に破砕されることがなく太さ8〜50μm,長さ1〜30mmの繊維状を維持し,夾雑物が破砕されて発生した微粉末と共に遠心作用を受けることにより処理空間155内を外周側に移動する。
【0088】
粉砕された夾雑物及び繊維状破砕物の一部は,各可動ピン144の遠心作用によりスクリーン151を通過して,排出空間156内に分級された後,排出口152からブロワー158を経て外部へ吸引,排出される。
【0089】
一方,乾式洗浄が完了した繊維状破砕物,及びスクリーン151を通過できない夾雑物は,スクリーン151内に留まるが,プラグバルブ154を開放した状態で取出口153と供給投入口132とをブロアー158を介して連通することにより,取出口153から取出される繊維状破砕物とスクリーン151を通過しない大きさの夾雑物は,再度供給投入口132に還流され,夾雑物がスクリーン151を通過可能に微粉砕され,前述したように排出口152から外部へ排出される。しかし,繊維状破砕物はこのようにして還流されるとはいえ,スクリーン151を通過するほどの細かな微粉状には破砕されず,大部分がスクリーン151内に残る。
【0090】
このようにして繊維状破砕物は,プラグバルブ154を開けて取出口153から取り出され,本発明の添加材となる。
【0091】
このような取り出しは,取出口153から繊維状破砕物,すなわち本発明の添加材を掻き出すことによって行っても良く,あるいは前記ブロワー158と供給投入口132への連通管を分岐して取出口を有する分岐管を設け,この分岐管の取出口を開閉する電磁弁と前記連通管の下流側を開閉する電磁弁を設け,これらの二つの電磁弁を交互に開閉するように構成することで,あるいは,両分岐管に三方電磁弁を設け,前記連通管の下流側を電磁弁で閉塞し且つ前記分岐管の取出口を開放し,さらには前記排出口152も閉塞し,ブロワー158によりスクリーン151内に残された添加材を吸引し分岐管の取出口から回収することもできる。この場合,微粉状にされた夾雑物やこれと同程度に微粉砕された一部の繊維状破砕物の微粉末を外部へ排出した後に行なう。
【0092】
以上で説明した乾式洗浄工程により,原料とした廃棄プラスチックの重量を100%に対して,更に15%程が夾雑物等の微粉末として分離除去され,原料とした廃棄プラスチックの重量を100%に対して30%程が本発明の添加材として回収される。
【0093】
〔添加材〕
以上の工程を経ることにより,乾式洗浄工程を行う前に回収した場合,乾式洗浄工程後に回収した場合のいずれの場合においても,太さ8〜50μm,長さ1〜30mmの繊維状物の集合体であり,前記集合体の全体中におけるPET含有量が15〜30wt%,好ましくは20wt%であり,且つ,灰分が10〜15wt%の添加材が得られた。
【0094】
この添加材は,ヘキサフルオロプロパノール可溶成分が15〜30wt%,テトラヒドロフラン又はアセトン可溶成分が3〜25wt%,キシレン可溶成分が30〜50wt%,残余の成分が35wt%以下の組成から成る。
【0095】
このようにして得られた添加材を構成する各繊維は,例えばPET,PA,PS,PVC,PE,PP等の単独の樹脂成分によって構成されたものとして存在するものもあれば,例えば廃棄プラスチック中に積層フィルム等が含まれていた場合には,例えば1本の繊維状物が複数種類の樹脂成分によって構成されたものとなっているものもある。
【0096】
また,原料とした廃棄プラスチック中に延伸,未延伸フィルム等が含まれていた場合には,各繊維状物においても延伸,未延伸といった性質が引き継いだものも存在する。
【0097】
なお,合成木材の強度の改善に貢献するPET樹脂から成る繊維状物については,未延伸のものに比較して延伸されたものの方がより高い強度を発揮することから,原料である廃棄プラスチック中に,延伸されたPETの廃棄物が多く含まれるよう調整等しても良い。
【0098】
〔合成木材用の成形材〕
以上のようにして得られた本発明の添加材は,これを熱可塑性樹脂に木粉と共に添加して,合成木材用の成形材を得ることができる。
【0099】
この合成木材用の成形材を構成する前述の樹脂としては,PETの溶融温度未満の溶融温度を有する熱可塑性樹脂を使用し,一例として,PP,PE,PVC,ABSより選択したいずれか一種又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
好ましくは,この熱可塑性樹脂としては,PP,又はPPとPEとを混合した樹脂を使用することができ,この場合には,PP100〜50wt%に対してPE0〜50wt%,好ましくは,PP100〜70wt%に対してPE0〜30wt%を混合したものを使用する。
【0101】
本発明の添加材は,前述したようにその構成中のPET(繊維状のPET)を含むものであるところ,前述した熱可塑性樹脂としてPP又はPPとPEの混合物を使用することで,PET繊維との熱可塑性樹脂との付着強度を向上させることができる。
【0102】
また,前述したように,本発明で使用する添加材は,その組成中,キシレン可溶成分,即ち,PP,PE等が最も多くなっていることから,合成木材の主材料である熱可塑性樹脂を前述したPP,又はPPとPEの混合物とすることで,添加材中に最も多く存在するキシレン可溶成分(PP,PE等)を熱可塑性樹脂中に溶融し易くすることで,例えば熱可塑性樹脂としてキシレン可溶成分(PP,PE等)との間に相溶性の無い材質を選択することにより生じ得るキシレン可溶成分(PP,PE等)の析出やこの部分を起点とした破壊の発生等を防止でき,添加材にPET以外の成分が含まれることにより生じ得る,合成木材の強度低下の発生等を好適に防止することができるものとなっている。
【0103】
木粉としては,既知の合成木材において使用されていると同様の木粉を使用することができ,一例として好ましい木粉の粒径は,粒径50〜200μmの範囲である。また,木粉は,熱可塑性樹脂に対する添加前に乾燥されているものを使用することが好ましく,一例として含有水分量1wt%以下に乾燥する。
【0104】
前述の熱可塑性樹脂と木粉との配合比は,熱可塑性樹脂60〜40wt%に対して,木粉40〜60wt%,好ましくは,熱可塑性樹脂55〜45wt%に対して木粉45〜55wt%の範囲である。
【0105】
また,前述した添加材の配合は,得られた合成木材用の成形材100wt%中におけるPET成分の配合比が0.3〜5.0wt%となるように配合する。従って,得られた添加材中におけるPET部分の量によって,添加材自体の配合の量は異なるが,一例としてPET成分を20wt%含む添加材を使用する場合,添加材の配合比は,成形材全体100wt%に対し1.5〜25.0wt%であり,PET成分を15wt%含む添加材を使用する場合,添加材の配合比は,成形材全体100wt%に対し約2.0〜33.3wt%となる。
【0106】
上記の範囲に対して添加材の添加量が少ないと,得られた合成木材に必要な強度の改善が得られず,一方,上記の範囲を越えて添加材を添加すると,添加材が解綿状となって後述するペレット化のための混練作業や合成木材の成形が困難となると共に,このような成形材を使用して合成木材の成形を行う場合,繊維状のPETが合成木材の表面に露出する形成不良を発生する。
【0107】
なお,合成木材用の成形材には,前述した熱可塑性樹脂,木粉,及び添加材の他,成形材100wt%中に,強化剤0.3〜1.0wt%,タルク5〜15wt%,顔料3〜5wt%等を配合しても良い。
【0108】
このうちの強化剤は,例えば熱可塑性樹脂としてPP乃至はPPとPEの混合物を使用する場合,疎水性の熱可塑性樹脂と木粉等の親水性のフィラーとの相溶性を向上させるために添加するものであり,一例として無水マレイン酸変成PP等によって構成される強化剤を使用することができる。
【0109】
また,上記のうちタルクは,合成木材の強度,特に曲げ強度の向上に寄与すると共に,増量等の目的で添加するもので,一例として粒径5〜30μmのものを添加する。
【0110】
更に,顔料は,得られる合成木材に所望の着色を行うために添加する。
【0111】
以上の組成から成る合成木材用の成形材は,各種の形態で提供することが可能であるが,好ましくは,前記組成成分を加熱,混練することにより得たペレットとして提供することが好ましく,このようなペレットは,前記熱可塑性樹脂を前記木粉及び添加材と共に前記PETの溶融温度未満の温度で混練して得た混練材料を所定粒径に造粒することにより得ることができる。
【0112】
このようなペレット化は,例えば既知の各種のペレット製造装置(ペレタイザー)を使用して製造することができるが,一例として本実施形態にあっては,攪拌衝撃翼を備えたミキサ(ヘンシェルミキサ)を使用して得ており,前記熱可塑性樹脂を木粉及び添加材,必要に応じて前述の相溶化剤,タルク,顔料等と共に前述のミキサ内に投入し,攪拌衝撃翼によって攪拌し,この攪拌の際の摩擦熱によってPETの溶融温度未満の温度で各成分が均一な分散となるよう溶融混練すると共に,混練により得られた混練材料を冷却した後,カッタ等で破砕して,所定の粒径,例えば粒径3〜10mmの範囲に整粒することによりペレット状の成形材を得た。
【0113】
〔合成木材〕
以上のようにして得られた合成木材用の成形材は,これを既知の各種の成形方法,例えばプレス成形,射出成形,押出成形等によって,所定の形状の合成木材として成形することができる。
【0114】
成形は,PETの溶融温度未満において行い,好ましくは,PETの溶融温度未満の温度であって,成形材の主原料である熱可塑性樹脂の溶融温度以上で行う。より好ましくは,前記温度で成形材を溶融混練した後に行うものとすることが好ましく,例えば前述した成形方法の例では,押出機のバレル内でスクリュの回転によって成形材の溶融混練が行われる押出成形によって成形することが好ましい。
【0115】
一例として,本実施形態にあっては,前述のようにして得た合成木材用の成形材のペレット(粒径約8mm)を,押出機に投入して押出機のバレル内で加熱しながら溶融混練すると共に,押出機のバレル出口に取り付けた,合成木材(板材)の断面形状に対応する断面形状の成形室を備えた成形ダイ内に押し出すことにより,板状の合成木材を得た。
【0116】
このようにして得られた合成木材は,前述した添加材を添加することなく成形して得た合成木材に対して強度,特に曲げ強度が大幅に向上していると共に,破断試験において延性破壊を示すものであった。
【0117】
また,得られた合成木材を切断した断面には,太さ及び長さが不均一であるが,白色状のPET繊維が溶融することなく残っており,前述した添加材の添加によって得られた合成木材は,このPET繊維の存在によって強化されているものと考えられる。
【実施例】
【0118】
以下に,本発明の添加材,該添加材を添加した合成木材用の成形材,及び前記合成木材用の成形材を使用して製造した合成木材の製造実施例について説明すると共に,得られた合成木材に対して強度試験を行った結果をそれぞれ示す。
【0119】
〔添加材の製造実施例〕
原料
株式会社日成ストマック・トーキョー(産業廃棄物処理業者)受入れの建築廃材中,同社にてプラスチック類として仕分けされた後の廃棄プラスチックを入手し,これを原料とした。
【0120】
添加材の製造
上記原料である廃棄プラスチックを,前述した添加材の製造方法に従い,それぞれ粗砕工程(工程1),破砕工程(工程2),磁力選別工程(工程3),湿式比重選別工程(工程4),乾燥工程(工程5)及び乾式洗浄工程(工程6)にかけ,前述した乾燥工程(工程5)を経て得た繊維状破砕物(添加材1),及び乾式洗浄工程(工程6)を経て得た繊維状破砕物(添加材2)をそれぞれ本発明の「添加材」として回収した。
【0121】
上記2種類の添加材につき,乾式灰化法による灰分測定,及び溶媒抽出による成分測定結果を下記の表1に示す。
【0122】
なお,灰化法による灰分測定は,前述の添加材1,添加材2それぞれ約2gを試料とし,これを約500℃の温度で灰化して重量法によって灰分を求めた。
【0123】
また,溶媒抽出による測定として,前記添加材1,添加材2それぞれ約2gを試料とし,それぞれテトラヒドロフラン(THF)/アセトンで5時間ソックスレー抽出を行った後,抽出残を真空乾燥して重量を求めた。次いで抽出残にヘキサフルオロプロパノール(HFIP)を加え13時間置いた後,液を濾別し,HFIP不溶部を真空乾燥して重量を求めた。更に,HFIP不溶部をキシレンで8時間ソックスレー抽出し,抽出残を真空乾燥しキシレン不溶部の重量を求めた。それぞれで求めた重量に基づいて,THF/アセトン可溶分(THF (50vol%)+アセトン(50vol%)混合溶媒),HFIP可溶分,キシレン可溶分及び残渣をそれぞれ元の試料に対する重量比として求めた。
【0124】
【表1】

【0125】
上記灰化法による測定結果より,添加材中に含まれる灰分(鉱物質成分:夾雑物と思われる)が,添加材1では14.9%,添加材2では10.7%と,比較的少ない範囲のものとなっていることが確認された。
【0126】
〔合成木材用の成形材の製造実施例〕
配合
上記添加材を含む合成木材用の成形材として,下記の配合の成形材を得た。各成形材における原料の配合を下記の表2に示す。
【0127】
なお,実施例1〜3及び比較例3において使用した添加材は,いずれも前掲の添加材1(乾式洗浄工程未処理品)である。
【表2】

【0128】
ペレット化
750リットルのヘンシェルミキサ内に,上記表2に示した各配合で構成材料を投入して,回転数900min−1にて攪拌し,剪断発熱により185℃で溶融混合したものをクーラミキサによって冷却し,1軸粉砕機によって粒径約8mm程度に粉砕してペレット化した。
【0129】
以上のようにして得た成形材のペレットを確認した結果,白色の繊維状物に紺色繊維状物及び木粉が絡み合った状態となっていることが確認された。この白色繊維状物の太さは不均一である。
【0130】
このうち,白色繊維状物を採取して試料とし,成分分析を行った。成分分析は,フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により,試料をKBr錠剤整形し,顕微透過法にて測定した。
【0131】
白色繊維状物の赤外吸収スペクトルは,ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート)の赤外線吸収スペクトルに類似したものであり,白色繊維状物を数種採取して測定したが,いずれも同一の結果であった。
【0132】
以上の結果から,成形材のペレットには,ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート)である白色繊維状物が含まれていることが確認された。
【0133】
〔合成木材の製造実施例〕
上記方法により得たペレットを,バレル内径65mmの一軸押出機(池貝製FS65)を使用し,押出機内温度175〜180℃で溶融混練した後,バレル出口より押出して押出成形した。成形室の断面における幅145mm,高さ12mmの金型を使用し,断面における幅145mm,厚さ12mmのムクの合成木材(板材)を製造した。
【0134】
上記成形材中,PET成分の含有量が本願の範囲を超えている比較例3については,これを使用して合成木材を押出成形することはできなかった。
【0135】
また,実施例1〜3の配合で得られた成形材を使用した例では,合成木材の成形を好適に行うことができたと共に,得られた合成木材を幅方向に切断して断面を観察した結果,成形材のペレット中に含まれていた白色の繊維状物が溶融せずにそのまま存在していることが確認された。
【0136】
一方,ペレットにおいて確認された紺色の繊維状物は,合成木材の断面においては確認できず,添加材の構成成分中,PET以外の成分については,成形時に溶融して合成木材の主成分である熱可塑性樹脂中に溶融乃至は分散したものと考えられる。
【0137】
〔強度試験〕
以上のようにして得た,実施例1〜3及び比較例1〜3の合成木材それぞれに対し,曲げ試験を行った。
【0138】
曲げ試験は,図4に示すように長さ500mmでカットした合成木材の板材を400mmの間隔で配置された載置台上に載置し,載置台の中間位置において板材の表面側より100mm/分で破断するまで押し下げた。
【0139】
破断時における曲げ応力とたわみ量とを測定した結果を表3に,曲げ応力−撓み量の相関図を図5にそれぞれ示す。
【0140】
【表3】

【0141】
以上の結果から,本発明の添加材を添加して製造された実施例1〜3に記載の合成木材にあっては,添加材としてPET繊維(帝人製)を添加した比較例2の測定結果との比較では僅かに劣るものの,添加材を添加していない比較例1の合成木材に比較して,曲げ強度で1.1〜1.25倍,たわみ量において1.9〜2.08倍の向上が確認された。
【0142】
このことから,発明の添加材の添加が合成木材の強度の改善に寄与するものであると共に,添加材を添加していない合成木材に見られる破壊の性質である「脆性破壊」を「延性破壊」に改善するものであることが確認された。
【0143】
以上の結果から,本発明の添加材の添加が,合成木材の強度改善,特に,破壊の性質を脆性破壊から延性破壊に改質する作用があることが確認できた。
【符号の説明】
【0144】
82 繊維状破砕物
130 クリーニングセパレータ
131 固定円盤
132 供給投入口
133 固定端板
134 固定ピン
135 周側板
141 可動円盤
142 回転横軸
143 軸受
144 可動ピン
151 スクリーン
152 排出口
153 取出口
154 プラグバルブ
155 処理空間
156 排出空間
158 ブロワー
a 回転軌跡
b 回転軌跡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレートの溶融温度未満の溶融温度を有する熱可塑性樹脂と木粉とを主成分とする合成木材の成形材中に添加して使用する添加材であって,
建築廃材として回収され,少なくとも一部にポリエチレンテレフタレートによる構成部分を含むと共に,複数種類の成形品が混在した廃棄プラスチックを原料とし,該廃棄プラスチックを破砕して得た太さ8〜50μm,長さ1〜30mmの繊維状破砕物の集合体であって,
前記集合体の全体中におけるポリエチレンテレフタレートの含有量が15〜30wt%,且つ,灰分が10〜15wt%であることを特徴とする合成木材用の添加材。
【請求項2】
前記集合体の全体中におけるヘキサフルオロプロパノール可溶成分が15〜30wt%,テトラヒドロフラン又はアセトン可溶成分が3〜25wt%,キシレン可溶成分が30〜50wt%,残余の成分が35wt%以下の組成から成ることを特徴とする請求項1記載の添加材。
【請求項3】
建築廃材として回収され,少なくとも一部にポリエチレンテレフタレートによる構成部分を含むと共に,複数種類の成形品が混在した廃棄プラスチックを処理対象とし,
前記処理対象を太さ8〜50μm,長さ1〜30mmに切断乃至は破砕して繊維状破砕物を得る破砕工程と,
前記繊維状破砕物を所定比重の媒体液中で攪拌し,比重差により前記繊維状破砕物中に混在する夾雑物を除去すると共に前記繊維状破砕物を回収する比重選別工程と,
前記回収された繊維状破砕物を乾燥する乾燥工程から成り,
該乾燥後の繊維状破砕物を合成木材用の添加材として回収することを特徴とする合成木材用添加材の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程後の前記繊維状破砕物に対して更に衝撃摩砕力を付加し,前記繊維状破砕物に付着する夾雑物を除去する乾式洗浄工程を更に設け,該乾式洗浄工程後の前記繊維状破砕物を合成木材用の添加材として回収することを特徴とする請求項3記載の合成木材用添加材の製造方法。
【請求項5】
前記破砕工程後,前記比重選別工程前に,前記繊維状破砕物中に混在する磁性体を磁力により除去する磁力選別工程を設けたことを特徴とする請求項3又は4記載の合成木材用添加材の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2記載の添加材,ポリエチレンテレフタレートの溶融温度未満の溶融温度の熱可塑性樹脂,及び木粉を含み,前記添加材中の前記ポリエチレンテレフタレート分が,全構成成分100wt%中,0.3〜5.0wt%の範囲となるよう前記添加材を添加したことを特徴とする合成木材用の成形材。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂と前記木粉の合計量100wt%中,前記熱可塑性樹脂が60〜40wt%,前記木粉が40〜60wt%の割合で配合したことを特徴とする請求項6記載の合成木材用の成形材。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂の成分がポリプロピレン100〜50wt%に対しポリエチレン0〜50wt%であることを特徴とする請求項6又は7記載の合成木材用の成形材。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂を前記木粉及び添加材と共に前記ポリエチレンテレフタレートの溶融温度未満の温度で溶融すると共に混練して得た混練材料を所定粒径のペレットに造粒した請求項6〜8いずれか1項記載の合成木材用の成形材。
【請求項10】
請求項3〜6いずれか1項記載の合成木材用の成形材を前記ポリエチレンテレフタレートの溶融温度未満の温度で溶融すると共に成形して得た合成木材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−104948(P2011−104948A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265185(P2009−265185)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(506007046)WPCコーポレーション株式会社 (8)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】