説明

合成樹脂管

【課題】合成樹脂管を、排水管として、床下等に略水平に配管した場合でも、ホース本体内に排水が滞留する惧れをなくすと共に、配管が直線状でない場合にも、好適に対応できるようにする。
【解決手段】A.軟質合成樹脂により形成されて、可撓性を有するホース本体1と、B.硬質合成樹脂により帯状に形成され、ホース本体1の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部の内周面がホース本体1の外周面に溶着され、幅方向他端部の内周面が隣接する捲回部の外周面に当接することで、ホース本体1を真っ直ぐな状態に保持する保持体2を有する。各捲回部の幅方向他端部の内周面が、隣接する捲回部の外周面に対し、合成樹脂管に作用する設定以上の屈曲力により破断する固着部7を介して、固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂管に関する。
【背景技術】
【0002】
排水に使用される合成樹脂管としては、可撓性を有する排水ホース(例えば、特許文献1参照)や、硬質合成樹脂により形成され且つ可撓性を有さない排水管(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−306892号公報
【特許文献2】特開2005−248588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来においては、可撓性を有する排水ホースの場合には、配管が直線状でないときでも、自由に屈曲させることができるので、他の配管と何ら問題なく良好に接続できる。然しながら、この排水ホースを床下等で略水平に配管した場合には、排水ホースが下方に垂れるので、排水ホース内部に排水が滞留する難点がある。
【0005】
これに対し、可撓性を有さない排水管の場合には、略水平に配管したときでも、排水ホースのように、下方に垂れることがないので、排水管内部に排水が滞留する難点はない。然しながら、配管が直線状でないときには、直管タイプの排水管だけでは対応できず、曲管タイプの排水管も用意する必要があり、配管作業を容易に行えないとの問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決できる合成樹脂管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の合成樹脂管の特徴とするところは、A.軟質合成樹脂により形成されて、可撓性を有するホース本体と、B.硬質合成樹脂により帯状に形成され、ホース本体の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部の内周面がホース本体の外周面に溶着され、幅方向他端部の内周面が隣接する捲回部の外周面に当接することで、ホース本体を真っ直ぐな状態に保持する保持体を有する合成樹脂管であって、各捲回部の幅方向他端部の内周面が、隣接する捲回部の外周面に対し、合成樹脂管に作用する設定以上の屈曲力により破断する固着部を介して、固着された点にある。
尚、保持体が、A.ホース本体の外周面に螺旋状に捲回されて、ホース本体に溶着された紐状材と、B.ホース本体の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部の内周面が紐状材の外周面に溶着され、幅方向他端部の内周面が隣接する捲回部の外周面に当接する帯状材を有することもある。
又、固着部が、捲回部に周方向等間隔に配設されることもある。
更に、固着部が、捲回部に周方向に連続して配設されることもある。
又、固着部が、溶着又は接着剤による接着により形成されることもある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保持体により、ホース本体が真っ直ぐな状態に保持されているので、合成樹脂管を、排水管として、床下等に略水平に配管した場合でも、ホース本体が下方に垂れることがなく、ホース本体内に排水が滞留する惧れはない。
又、合成樹脂管に設定以上の屈曲力を作用させれば、保持体の隣接する捲回部同士を固着している固着部が破断して、合成樹脂管を所望に湾曲させることができる。従って、配管が直線状でない場合にも、好適に対応できて、合成樹脂管を他の配管と何ら問題なく良好に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す側面図である。
【図2】図1の縦側断面図である。
【図3】図2の展開図である。
【図4】図2を屈曲させた縦側断面図である。
【図5】図1の合成樹脂管を製造する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面に基づき説明すると、図1〜図4に示すように、合成樹脂管は、ホース本体1と、保持体2を有する。
【0011】
ホース本体1は、軟質合成樹脂により形成されて、可撓性を有する。ホース本体1の内・外周面は滑らかな湾曲面とされ、内径及び外径が、軸心方向全長にわたって、(略)一定とされている。上記軟質合成樹脂としては、例えば、EVA樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系合成樹脂、又は、塩化ビニール樹脂等が使用される。本例では、例えば、軟質塩化ビニール樹脂が使用される。
【0012】
保持体2は、ホース本体1を、真っ直ぐな状態(直線状態、直管状態)に保持するもので、硬質合成樹脂により帯状に構成されている。保持体2はホース本体1の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部がホース本体1の外周面に溶着(融着)され、幅方向他端部の内周面が隣接する捲回部の外周面に面接触している。尚、各捲回部の面接触部分は、その幅の1/2以上とされている。硬質合成樹脂としては、例えば、塩化ビニール樹脂やポリエチレン樹脂が使用され、本例では、例えば、硬質塩化ビニール樹脂が使用される。尚、この硬質合成樹脂の「硬質」は、ホース本体1を構成する軟質合成樹脂の「軟質」との対比で使用されている。
【0013】
保持体2は、図例では、紐状材4と帯状材5から構成されている。紐状材4は、ホース本体1の外周面に螺旋状に捲回されて、ホース本体1に溶着(融着)されている。帯状材5は、ホース本体1の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部の内周面が紐状材4の外周面に溶着され、幅方向他端部が上記溶着部から軸心方向に突設されている。この突設部分は、先端に向かうに従って、径方向外方に移行する傾斜状とされて、その内周面が隣接する捲回部の外周面と面接触している。尚、各捲回部の面接触部分は、その幅の1/2以上とされている。
【0014】
図3に示すように、帯状材5の各捲回部の幅方向他端部の内周面は、隣接する捲回部の外周面に対して、固着部7を介して固着されている。固着部7は、合成樹脂管に作用する設定(所定)以上の屈曲力により破断するもので、図例では、捲回部に周方向等間隔に配設(形成)されている。尚、固着部7は捲回部に周方向に連続して配設される場合もある。固着部7は、本例では、電気溶接による溶着(融着)により形成されているが、接着剤による接着により形成されることもある。
【0015】
上記合成樹脂管を製造する場合には、図5に示すように、ホース本体1の帯状材用押出機の第1成形ノズル9から、半溶融状態の軟質塩化ビニール樹脂等から成る一定幅の帯状材10を連続状に押し出して、成形用回転軸11上に螺旋状に捲回し、隣接する捲回部において、幅方向の対応する端部を重ね合わて、一体に溶着(融着)することで、ホース本体1を形成する。
【0016】
又、保持体2の紐状材用押出機の第2成形ノズル13から、半溶融状態の硬質塩化ビニール樹脂等から成る紐状材4を連続状に押し出して、この紐状材4をホース本体1の外周面上に螺旋状に捲回し,溶着(融着)する。
【0017】
更に、保持体2の帯状材用押出機の第3成形ノズル15から、半溶融状態の硬質塩化ビニール樹脂等から成る帯状材5を連続状に押し出して、ホース本体1の外周面上に螺旋状に捲回し,各捲回部の幅方向一端部の内周面を紐状材4の外周面に溶着(融着)すると共に、他端部の内周面を隣接する捲回部の外周面に当接させる。
【0018】
その後、電気溶着機17により、帯状材5の各捲回部の幅方向他端部の内周面を、隣接する捲回部の外周面に対して、周方向等間隔に溶着(融着)して、固着部7を形成する。
【0019】
上記構成例によれば、ホース本体1は軟質合成樹脂から形成されて、可撓性を有する。しかし、図2に示すように、硬質合成樹脂により帯状に構成された保持体2が、ホース本体1の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部がホース本体1の外周面に溶着され、幅方向他端部の内周面が隣接する捲回部の外周面に面接触して、ホース本体1を真っ直ぐな状態に保持している。従って、合成樹脂管を、排水管として、床下等に略水平に配管した場合でも、ホース本体1が下方に垂れることがなく、ホース本体1内に排水が滞留する惧れはない。
【0020】
又、配管が直線状でない場合には、合成樹脂管を湾曲状に屈曲させる必要がある。この場合には、合成樹脂管に、設定以上の屈曲力を作用させれば、保持体2の帯状材5における、隣接する捲回部同士を固着している固着部7が破断する。この破断により、隣接する捲回部が相互に滑って、図4に示すように、合成樹脂管を所望に湾曲させることができる。従って、配管が直線状でない場合にも、好適に対応できて、合成樹脂管を他の配管と何ら問題なく良好に接続できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、排水用の合成樹脂管等に適用できる。
【符号の説明】
【0022】
1 ホース本体
2 保持体
4 紐状材
5 帯状材
7 固着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.軟質合成樹脂により形成されて、可撓性を有するホース本体と、
B.硬質合成樹脂により帯状に形成され、ホース本体の外周面に螺旋状に捲回されて、 各捲回部の幅方向一端部の内周面がホース本体の外周面に溶着され、幅方向他端部の 内周面が隣接する捲回部の外周面に当接することで、ホース本体を真っ直ぐな状態に 保持する保持体
を有する合成樹脂管であって、
各捲回部の幅方向他端部の内周面が、隣接する捲回部の外周面に対し、合成樹脂管に作用する設定以上の屈曲力により破断する固着部を介して、固着された合成樹脂管。
【請求項2】
保持体が、
A.ホース本体の外周面に螺旋状に捲回されて、ホース本体に溶着された紐状材と、
B.ホース本体の外周面に螺旋状に捲回されて、各捲回部の幅方向一端部の内周面が紐 状材の外周面に溶着され、幅方向他端部の内周面が隣接する捲回部の外周面に当接す る帯状材
を有する請求項1記載の合成樹脂管。
【請求項3】
固着部が、捲回部に周方向等間隔に配設された請求項1又は2記載の合成樹脂管。
【請求項4】
固着部が、捲回部に周方向に連続して配設された請求項1又は2記載の合成樹脂管。
【請求項5】
固着部が、溶着又は接着剤による接着により形成された請求項1〜4の何れかに記載の合成樹脂管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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