説明

合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造

【課題】プラグチューブガスケットを合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して容易に取外し得る状態で、確実に取り付けることが出来る構造を提供する。
【解決手段】プラグチューブ挿通孔24の内周面に第一係合突起26を一体形成する一方、プラグチューブ22内に収容されたプラグ装置58の該プラグチューブ22内からの突出部位に第二係合突起60を一体形成し、それら各係合突起26,60に対して、プラグチューブ挿通孔24内に位置するプラグチューブガスケット36を接触、係合せしめる。その上で、プラグ装置58をシリンダヘッドカバー10に着脱可能に締結せしめることにより、その締結力に基づいて、プラグチューブガスケット36を第一係合突起26と第二係合突起60との間で挟圧保持せしめるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製シリンダヘッドカバーとそれに設けられたプラグチューブ挿通孔に挿通されるプラグチューブとの間をシールするプラグチューブガスケットを、かかるシリンダヘッドカバーに対して有利に取り付け得るように改良された、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、火花点火式内燃機関、例えば自動車のガソリンエンジン等においては、シリンダヘッドカバーに対して、それを貫通するプラグチューブ挿通孔が設けられ、このプラグチューブ挿通孔内に、例えば下端部においてシリンダヘッドに固定されたプラグチューブの上端部が挿通位置せしめられている。そして、かかるプラグチューブ内に、火花を発生せしめる点火プラグとそれに通電するプラグコイル等を備えたプラグ装置が、着脱可能に収容されている。
【0003】
また、そのような自動車のガソリンエンジン等における従来のシリンダヘッドカバーでは、プラグチューブ挿通孔内に、環状乃至は筒状の弾性部材からなるプラグチューブガスケットが、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部を、プラグチューブ挿通孔の内周面とプラグチューブの外周面とに接触位置せしめた状態で、取り付けられている(例えば、下記特許文献1参照)。これにより、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間がシールされて、エンジン内部のブローバイガスやオイルミストの外部への漏出が防止され得るようになっているのである。
【0004】
ところで、よく知られているように、シリンダヘッドカバーには、大別して、アルミダイキャスト等からなる金属製のものと、繊維強化樹脂材料等を用いた金型成形品等からなる合成樹脂製のものの2種類のものがあるが、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して、上記のようなプラグチューブガスケットを取り付ける場合には、例えば、下記特許文献2に記載される如き取付構造が、採用されている。
【0005】
すなわち、かかる従来構造では、シリンダヘッドカバーに対して、プラグチューブが挿通可能な貫通孔が設けられると共に、この貫通孔を取り囲む筒状部が、シリンダヘッドカバーの内側面に対して、貫通孔と同軸上に一体形成されて、それら貫通孔と筒状部の内孔とにて、プラグチューブ挿通孔が構成される。そして、そのようなプラグチューブ挿通孔内に筒状のプラグチューブガスケットが圧入乃至は挿入された状態下で、プラグチューブ挿通孔の内周面の上部に一体形成された段部と、かかる内周面の下部に一部分が位置するように、前記筒状部の下面に溶着されたバッフルプレートとの間で挟圧保持されることにより、プラグチューブガスケットが、シリンダヘッドカバーに取り付けられるようになっている。
【0006】
このようなプラグチューブガスケットの取付構造によれば、プラグチューブガスケットを、プラグチューブ挿通孔の内周面とプラグチューブの外周面との間に、単に圧入しただけでは、プラグチューブ挿通孔を構成する筒状部の変形によって不安定となりがちなプラグチューブ挿通孔内でのプラグチューブガスケットの保持力が、シリンダヘッドカバーに一体的に設けられた段部とシリンダヘッドカバーに溶着されたバッフルプレートとの間での挟持力によって補完され、以て、プラグチューブガスケットが、シリンダヘッドカバーに対して、より確実に且つ安定的に取り付けられる。そして、それにより、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、十分に確保され得るようになっているのである。
【0007】
ところが、かくの如き従来の合成樹脂製シリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造では、シリンダヘッドカバーに溶着されたバッフルプレートをシリンダヘッドカバーから剥がし取らない限り、プラグチューブガスケットをシリンダヘッドカバーから取り外すことが出来なかった。そのため、プラグチューブガスケットが何等かの原因で破損乃至は損傷した場合には、プラグチューブガスケットが取り付けられたシリンダヘッドカバーの全体を交換しなければならず、それ故、従来構造においては、プラグチューブガスケットのメンテナンスの実施に際して、極めて大きなコスト負担が強いられていった問題が内在していたのである。
【0008】
【特許文献1】特開平7−19019号公報
【特許文献2】特開2002−332914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、プラグチューブガスケットを、プラグチューブ挿通孔内において十分な保持力をもって保持させて、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して確実に且つ安定的に取り付けることが出来、しかも、かかるシリンダヘッドカバーから取り外すことが極めて容易とされて、プラグチューブガスケットのメンテナンスコストの低下が効果的に実現され得るように改良された、合成樹脂製シリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、環状乃至は筒状の弾性部材からなるガスケットであって、且つ合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに設けられたプラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通される、点火プラグを備えたプラグ装置を収容するためのプラグチューブの外周面とに対して、それぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該シリンダヘッドカバーとの間をシールするプラグチューブガスケットを、該シリンダヘッドカバーに取り付けるための構造において、前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記シリンダヘッドカバーの内側への開口側部位に、第一係合突起を一体的に設ける一方、前記プラグチューブ内に、上部部位を該シリンダヘッドカバーの外側に突出せしめた状態で収容された前記プラグ装置の該上部部位の外周面に、第二係合突起を一体的に設けて、それら第一係合突起と第二係合突起とを、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下面と上面とにそれぞれ接触させて、係合せしめると共に、該プラグ装置を、前記上部部位において、該シリンダヘッドカバーに対して着脱可能に締結することにより、かかるプラグ装置のシリンダヘッドカバーへの締結力に基づいて、該プラグチューブガスケットを、前記第一係合突起と前記第二係合突起との間で挟圧保持せしめて、該シリンダヘッドカバーに取り付けるようにしたことを特徴とする、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造にある。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明に従う、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造にあっては、プラグチューブ挿通孔内でのプラグチューブガスケットの保持力が、位置固定の第一の係合突起と、シリンダヘッドカバーに締結されたプラグ装置におけるシリンダヘッドカバーの外側への突出部位に一体形成される第二の係合突起との間で、プラグ装置のシリンダヘッドカバーに対する締結力に基づいて発揮されるプラグチューブガスケットに対する挟持力により、有利に且つ十分に高められ得る。
【0012】
そして、特に、本発明構造では、プラグ装置がシリンダヘッドカバーに対して着脱可能に締結せしめられるようになっているところから、プラグ装置のシリンダヘッドカバーに対する締結を解除することにより、プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられたプラグチューブガスケットにおける第一の係合突起と第二の係合突起との間での挟持状態も、容易に解消され得る。また、そのような状態から、プラグ装置を、プラグチューブ挿通孔におけるシリンダヘッドカバーの外側への開口部を通じて、プラグチューブ挿通孔内から離脱せしめれば、プラグチューブガスケットも、かかるプラグチューブ挿通孔の外側開口部を通じて、プラグチューブ挿通孔内から離脱せしめることが可能となる。そして、それにより、従来のプラグチューブガスケットの取付構造とは異なって、シリンダヘッドカバーをエンジンから取り外すこともなく、また、シリンダヘッドカバーに溶着されたバッフルプレートをシリンダヘッドカバーから剥がし取るようなことをせずとも、プラグチューブガスケットをシリンダヘッドカバーから極めて容易に取り外すことが出来るようになる。
【0013】
従って、かくの如き本発明に従う、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造によれば、プラグチューブガスケットを、プラグチューブ挿通孔内において十分な保持力をもって保持させて、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して確実に且つ安定的に取り付けることが出来、しかも、プラグチューブガスケットが何等かの理由で破損乃至は損傷した場合には、シリンダヘッドカバーをエンジンに取り付けたままで、プラグチューブガスケットのみを交換することが可能となる。そして、その結果として、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、より十分に確保され得ると共に、プラグチューブガスケットのメンテナンスが、極めて容易に実施され、その上、かかるメンテナンスに要されるコストが、効果的に低減せしめられ得ることとなるのである。
【発明の態様】
【0014】
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
【0015】
(1) 環状乃至は筒状の弾性部材からなるガスケットであって、且つ合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに設けられたプラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通される、点火プラグを備えたプラグ装置を収容するためのプラグチューブの外周面とに対して、それぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該シリンダヘッドカバーとの間をシールするプラグチューブガスケットを、該シリンダヘッドカバーに取り付けるための構造において、前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記シリンダヘッドカバーの内側への開口側部位に、第一係合突起を一体的に設ける一方、前記プラグチューブ内に、上部部位を該シリンダヘッドカバーの外側に突出せしめた状態で収容された前記プラグ装置の該上部部位の外周面に、第二係合突起を一体的に設けて、それら第一係合突起と第二係合突起とを、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下面と上面とにそれぞれ接触させて、係合せしめると共に、該プラグ装置を、前記上部部位において、該シリンダヘッドカバーに対して着脱可能に締結することにより、かかるプラグ装置のシリンダヘッドカバーへの締結力に基づいて、該プラグチューブガスケットを、前記第一係合突起と前記第二係合突起との間で挟圧保持せしめて、該シリンダヘッドカバーに取り付けるようにしたことを特徴とする、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【0016】
(2) 上記せる態様(1)において、前記第一係合突起が、前記プラグチューブ挿通孔の内周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された内フランジ形態をもって構成される一方、前記第二係合突起が、前記プラグ装置における前記上部部位の外周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された外フランジ形態をもって構成されて、それら第一係合突起と第二係合突起とが、それぞれの全周において、前記プラグチューブガスケットの下面と上面とにそれぞれ接触して、係合せしめられていること。
【0017】
このような本態様によれば、第一係合突起と第二係合突起との間でのプラグチューブガスケットの挟持力が、より十分に高められ得、それによって、プラグチューブガスケットが、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して、更に一層確実に且つ安定的に取り付けられ得る。その結果、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、より効果的に高められ得る。
【0018】
(3) 上記の態様(2)において、前記プラグチューブガスケットの上面における前記プラグ装置の前記第二係合突起との接触部位に、周方向に連続して延びる環状の上面側シール突起が、一体的に突出形成されていること。この本態様によれば、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間のシール性が、更に有利に向上され得る。
【0019】
(4) 上記せる態様(1)において、前記シリンダヘッドカバーに締結された前記プラグ装置の前記第二係合突起と、前記プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットとの間に、スペーサ部材が介在せしめられて、該第二係合突起が、該スペーサ部材を介して、該プラグチューブガスケットの上面に接触して、係合せしめられる一方、該スペーサ部材に対して、該シリンダヘッドカバーの側に向かって一体的に突出形成された圧入凸部が、該シリンダヘッドカバーにおける該プラグチューブ挿通孔の周辺部位に設けられた圧入凹部に圧入せしめられることにより、該スペーサ部材が、該シリンダヘッドカバーに対して着脱可能に取り付けられていること。
【0020】
このような本態様においては、プラグチューブガスケットをシリンダヘッドカバーに取り付ける際に、例えば、プラグチューブガスケットを、その下面において、第一係合突起に接触させて、プラグチューブ挿通孔内に位置せしめた状態で、スペーサ部材をプラグチューブガスケットの上面に接触させつつ、かかるスペーサ部材の圧入凸部をシリンダヘッドカバーの圧入凹部に圧入せしめるようにすれば、プラグチューブガスケットが、プラグチューブ挿通孔内に、位置決めされて、移動不能とされた状態で、存在せしめられるようになる。そして、それにより、プラグ装置をプラグチューブ内に挿通して、かかるプラグ装置の第二係合突起とプラグチューブ挿通孔の内周面に一体形成された第一係合突起との間で挟持せしめる際に、その操作が、よりスムーズに且つ容易に行われ得るようになる。
【0021】
従って、かくの如き本態様によれば、シリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付が、より容易に且つ更にスムーズに行われ得ることとなる。
【0022】
(5) 上記の態様(4)において、前記第一係合突起が、前記プラグチューブ挿通孔の内周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された内フランジ形態をもって構成される一方、前記第二係合突起が、前記プラグ装置における前記上部部位の外周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された外フランジ形態をもって構成され、更に、前記スペーサ部材が、環状乃至は筒状体にて構成されて、上面と下面のそれぞれの全周において、該第二係合突起の下面と該プラグチューブガスケットの上面とに各々接触した状態で、それら第二係合突起とプラグチューブガスケットとの間に介在せしめられていること。
【0023】
この本態様によれば、第一係合突起と第二係合突起との間で、挟持力が、スペーサ部材を介して、プラグチューブガスケットに対して、その全周に亘って効果的に作用せしめられ、それによって、プラグチューブガスケットが、シリンダヘッドカバーに対して、より安定的に且つ確実に取り付けられ得る。そして、その結果として、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、より効果的に高められ得る。
【0024】
(6) 上記の態様(5)において、前記プラグチューブガスケットの上面における前記スペーサ部材との接触部位に、周方向に連続して延びる環状の上面側シール突起が、一体的に突出形成されていること。この本態様によれば、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間のシール性が、より効果的に高められ得る。
【0025】
(7) 上記せる態様(5)又は態様(6)において、前記環状乃至は筒状体からなるスペーサ部材が、その下面において、該プラグチューブガスケットの上面の全面に接触した状態で、前記プラグ装置の前記第二係合突起と前記プラグチューブガスケットとの間に介在せしめられていること。この本態様によれば、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間のシール性が、更に有利に向上され得る。
【0026】
(8) 上記せる態様(1)乃至態様(7)のうちの何れか一つにおいて、前記プラグチューブガスケットの内部に、剛性部材からなる筒状の補強体が、同軸的に位置する状態で埋設されていること。このような本態様によれば、第一係合突起と第二係合突起との間で作用せしめられる挟持力によるプラグチューブガスケットのヘタリが効果的に防止され得て、プラグチューブガスケットが、それら第一係合突起と第二係合突起との間で、より長期に亘って安定的に挟持され得る。また、プラグチューブガスケットの外周部及び内周部とプラグチューブ挿通孔の内周面及びプラグチューブの外周面との間のそれぞれの密接状態が、より効果的に確保され得て、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間のシール性能の更なる向上が有利に実現され得る。
【0027】
(9) 上記せる態様(1)乃至態様(8)のうちの何れか一つにおいて、前記プラグチューブガスケットの外周面に、周方向に連続して延びる外周面側シール突起が一体的に突出形成される一方、その内周面に対して、周方向に連続して延びる内周面側シール突起が一体的に突出形成されていること。この本態様によれば、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間の良好なシール性能が、更に有利に高められ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0029】
先ず、図1には、本発明に係るプラグチューブガスケットの取付構造に従って、プラグチューブガスケットが取り付けられた自動車エンジンの合成樹脂製シリンダヘッドカバーの一例が、その縦断面形態において、概略的に示されている。かかる図1において、10は、シリンダヘッドカバーであって、例えば、ポリアミド樹脂をマトリックスとするガラス繊維強化樹脂材料等を用いた射出成形品にて、構成されている。また、このシリンダヘッドカバー10は、天板部12と、天板部12の外周縁部に全周に亘って一体形成された側壁部14とを有している。そして、図1に明示されてはいないものの、従来と同様に、天板部12にて、シリンダヘッドの上部を覆って位置せしめられた状態で、側壁部14の下端部において、シリンダヘッドに対して、ボルト固定等により、取り付けられている。
【0030】
また、そのようなシリンダヘッドカバー10の天板部12には、それを板厚方向(上下方向)に貫通する、比較的に径が大きな円形の貫通孔16が、設けられている。更に、かかる天板部12の内側面(下面)には、貫通孔16と同一径の内孔18を有する厚肉の筒状部20が、貫通孔16との同軸上に、所定の高さをもって一体的に立設されている。これにより、それら貫通孔16と筒状部20の内孔18とにて、天板部12の内側と外側とを連通せしめる連通孔が形成されている。そして、そのような貫通孔16と内孔18とからなる連通孔に対して、図示しないシリンダヘッドに下端部が固定されたプラグチューブ22が、その上端部において、同軸的に挿通せしめられている。
【0031】
かくして、ここでは、シリンダヘッドカバー10の天板部12に設けられた貫通孔16と内孔18とからなる連通孔が、シリンダヘッドカバー10の天板部12を貫通し、所定高さの内周面をもって上下方向に延びるように形成されて、プラグチューブ22が挿通されるプラグチューブ挿通孔24として、構成されている。換言すれば、シリンダヘッドカバー10の天板部12に対して、貫通孔16と内孔18とからなるプラグチューブ挿通孔24が、形成されているのである。
【0032】
そして、そのようなプラグチューブ挿通孔24においては、その内周面におけるシリンダヘッドカバー10の内側への開口側部位、つまり、内周面の下端部に、径方向内方に所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる、円環板形状を呈する第一の係合突起としての内フランジ部26が、一体的に設けられている。
【0033】
また、かかるプラグチューブ挿通孔24が設けられたシリンダヘッドカバー10には、天板部12における筒状部20の形成部位に、天板部12の外側面(上面)において開口し、筒状部20の周方向に連続して延びる、圧入凹部としての環状溝28が、プラグチューブ挿通孔24を取り囲むようにして、形成されている。なお、この環状溝28は、細長い矩形の縦断面形状と、筒状部20の底部側部位にまで達する十分に深い深さとを有している。
【0034】
さらに、天板部12における筒状部20形成部位の側方には、かかる形成部位よりも一段高くされた段部30が設けられている。そして、この段部30に対して、上下方向に延びる円筒状のボス部32が、一体的に立設され、また、かかるボス部32の内孔内に、ナット部材34が、その中心部に設けられた雌ねじ孔を上方に開口せしめた状態で、同軸的に固着されている。
【0035】
而して、本実施形態においては、このような構造とされたシリンダヘッドカバー10に対して、プラグチューブガスケット36が、プラグチューブ挿通孔24内に挿入位置せしめられた状態で、従来には見られない特別な構造をもって取り付けられているのである。
【0036】
より詳細には、図1及び図2に示されるように、ここでは、プラグチューブガスケット36が、ゴム製の円筒体からなるガスケット本体38を有している。また、このガスケット本体38は、十分に厚い肉厚と、プラグチューブ挿通孔24の内周面における内フランジ部26の形成部位を除く部位の高さと略同じ高さと、プラグチューブ挿通孔24の内径よりも僅かに小さな外径とを備えている。そして、かかるガスケット本体38の内部には、それよりも所定寸法小さな高さを有する金属製の円筒状補強体40が、同軸的に位置する状態で、埋設されている。これにより、ガスケット本体38における円筒状補強体40よりも内周側の部分と外周側の部分のそれぞれの径方向のばね特性が、有利に硬くされていると共に、軸方向に作用せしめられる荷重に対するガスケット本体38の耐ヘタリ性が、効果的に高められている。
【0037】
また、かかるプラグチューブガスケット36においては、ガスケット本体38の内周面の下端部と外周面の軸方向中間部と上面の径方向中間部とに、内周面側シール突起42と外周面側シール突起44と上面側シール突起46とが、それぞれ、一体形成されている。
【0038】
それら各シール突起42,44,46のうち、内周面側シール突起42は、環状スプリング48が埋設されて、ガスケット本体38の内孔内に同軸的に位置せしめられた内側ゴムリング50と、この内側ゴムリング50とガスケット本体38の内周面の下端部とを一体的に連結する、厚肉円環板状の連結ゴム膜52とにて、構成されている。そして、かかる内周面側シール突起42の内側ゴムリング50と環状スプリング48は、それぞれ、前記プラグチューブ22の外径よりも所定寸法だけ小さな内径を有して、拡径可能とされている。また、連結ゴム膜52は、その内周部と外周部とが互いに近接するよう撓まされてなる形態を有して、構成されている。かくして、内周面側シール突起42においては、内側ゴムリング50と環状スプリング48とを拡径しつつ、連結ゴム膜52の内周部を外周部に更に接近せしめるような作用力が加えられたときに、かかる作用力に抗する付勢力が、それら内側ゴムリング50と環状スプリング48と連結ゴム膜52とにおいて発揮されるようになっている。
【0039】
また、外周面側シール突起44は、ガスケット本体38の外周面上において所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる突条形態をもって、構成されている。一方、上面側シール突起46も、ガスケット本体38の上面上において所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる環状の突条形態をもって、構成されている。そして、それら外周面側及び上面側シール突起44,46は、圧縮変形せしめられたときに、かかる圧縮変形状態から復元せしめられるように、付勢力が発揮されるようになっている。
【0040】
而して、かくの如き構造とされたプラグチューブガスケット36にあっては、内周面側シール突起42の内側リング50にプラグチューブ22を内挿せしめつつ、ガスケット本体38が、その下面において、前記内フランジ部26に接触せしめられて、係合される位置まで、プラグチューブ挿通孔24内に、同軸的に挿入されている。また、そのようなプラグチューブ挿通孔24内への挿入下において、外周面側シール突起44が、プラグチューブ挿通孔24の内周面に押圧されて、圧縮変形せしめられた状態で、プラグチューブ挿通孔24の内周面に圧接(密接)せしめられる一方、内周面側シール突起42の内側リング50と環状スプリング48とが、プラグチューブ22にて拡径されて、連結ゴム膜52が、その内周部を外周部に接近せしめるように撓み変形せしめられた状態で、内側リング50の内周部において、プラグチューブ22の外周面に圧接せしめられている。
【0041】
これにより、プラグチューブガスケット36が、内周面側シール突起42と外周面側シール突起44とにおいて発揮される付勢力に基づいて、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間を液密にシールしつつ、プラグチューブ挿通孔24内において、下方への移動が不能とされた状態で、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間に圧入されているのである。
【0042】
また、ここでは、プラグチューブガスケット36が圧入されたプラグチューブ挿通孔24の外周部を覆蓋するように、スペーサ部材54が、シリンダヘッドカバー10の天板部12の外側面上に、位置せしめられている。
【0043】
このスペーサ部材54は、全体として、略厚肉円環板形状を呈する金属板からなり、シリンダヘッドカバー10の天板部12の内側面に設けられた前記筒状部20の外径と略同一の外径と、プラグチューブ挿通孔24の内径よりも十分に小さく且つプラグチューブ22の外径よりも所定寸法大きな内径とを有している。また、かかるスペーサ部材54の外周部の下面には、天板部12の筒状部20形成部位に設けられた環状溝28内に圧入可能な、圧入凸部としての円筒状突起56が、環状溝28の深さと略同じ高さをもって、一体的に立設されている。
【0044】
そして、このような円環板状のスペーサ部材54が、プラグチューブ挿通孔24と同軸上において、内孔内にプラグチューブ22を内挿せしめつつ、シリンダヘッドカバー10の天板部12の外側面上に載置されている。また、そのような載置下において、スペーサ部材54の内周部分が、プラグチューブ挿通孔24の外周部分を覆うように位置せしめられて、かかるプラグチューブ挿通孔24内に圧入されたプラグチューブガスケット36のガスケット本体38の上面側シール突起46に対して、それを圧縮変形せしめつつ、接触せしめられている一方、外周部分が、円筒状突起56を環状溝28内に圧入せしめつつ、天板部12の筒状部20形成部位上に位置せしめられている。
【0045】
かくして、スペーサ部材54が、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間を液密にシールして、プラグチューブ挿通孔24内に圧入されたプラグチューブガスケット36を、内周部分と前記内フランジ部26との間で挟持しつつ、天板部12の外側面上に、移動不能に且つ取り外し可能に配置されている。また、それにより、プラグチューブガスケット36のガスケット本体38の上面側シール突起46において発揮される付勢力に基づいて、スペーサ部材54とガスケット本体38との間が液密にシールされた状態で、プラグチューブガスケット36のプラグチューブ挿通孔24内での軸方向の移動が阻止されるようになっている。
【0046】
そして、本実施形態では、上記の如くして、プラグチューブガスケット36が、スペーサ部材54により、プラグチューブ挿通孔24内に軸方向移動不能に配置せしめられた状態下で、下部部位に点火プラグ(図示せず)が装着されたプラグ装置58が、プラグチューブ22内に挿通されて、固定されることにより、プラグチューブガスケット36が、シリンダヘッドカバー10に取り付けられるようになっているのである。
【0047】
すなわち、ここでは、プラグ装置58が、その上部部位をシリンダヘッドカバー10の天板部12の外側面上において上方に突出させた状態で、プラグチューブ22内に挿通されている。そして、そのようなプラグ装置58におけるプラグチューブ22内から突出せしめられた上部部位には、その上端から所定寸法下方側の位置に、径方向外方に所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる円環板状の外フランジ部60が、一体形成されている。また、この外フランジ部60にあっては、その外径が、プラグチューブ挿通孔24の内径と同程度の大きさとされると共に、外周縁部の下面に対して、所定高さをもって一体的に突設された円筒状の押圧リブ62を有して、構成されている。
【0048】
また、プラグ装置58の上部部位における外フランジ部60の形成部位の上側には、厚肉板状のアーム部64が、固定されている。このアーム部64は、プラグ装置58の外周面から、水平方向(軸直角方向)に向かって、外フランジ部60の突出高さよりも大きな長さ寸法をもって延出せしめられており、その先端部には、それを上下方向に貫通するボルト挿通孔66が、設けられている。
【0049】
そして、かかるプラグ装置58にあっては、外フランジ部60の押圧リブ62の下面を、シリンダヘッドカバー10の天板12部の外側面上に移動不能に配置されたスペーサ部材54の内周部分の上面に接触させて、係合させつつ、プラグチューブ22内に挿通せしめられている。また、そのようなプラグチューブ22内への挿通下で、アーム部64のボルト挿通孔66内に挿通された固定ボルト68が、シリンダヘッドカバー10の天板部12におけるボス部32に固着されたナット部材34に螺合されている。
【0050】
かくして、プラグ装置58が、プラグチューブ22内に挿通せしめられた状態下で、プラグチューブ22内から突出する上部部位において、シリンダヘッドカバー10の天板部12に対して着脱可能に締結されている。また、それにより、かかるプラグ装置58のシリンダヘッドカバー10に対する締結力に基づいて、プラグ装置58における外フランジ部60の押圧リブ62から、スペーサ部材54に対して、それを下方に押圧する押圧力が作用せしめられ、以て、プラグチューブ挿通孔24内に挿通位置せしめられたプラグチューブガスケット36が、スペーサ部材54を介して、プラグ装置58の外フランジ部60と、プラグチューブ挿通孔24の内周面の下端部に設けられた内フランジ部26との間で挟圧保持されて、シリンダヘッドカバー10の天板部12に取り付けられているのである。このことから明らかなように、ここでは、プラグ装置58に設けられた押圧リブ62を含む外フランジ部60にて、第二係合突起が構成されている。
【0051】
このように、本実施形態においては、プラグチューブガスケット36が、プラグチューブ挿通孔24内において、その内周面とプラグチューブ22の外周面との間を液密にシールしつつ、それらの間に、単に圧入されるだけでなく、スペーサ部材54を介して、プラグチューブ挿通孔24の内フランジ部26とプラグ装置58の外フランジ部60との間で、プラグ装置58のシリンダヘッドカバー10に対する締結力に基づいて、挟圧保持せしめられていることにより、更に一層十分な保持力をもって保持せしめられ、以て、シリンダヘッドカバー10に対して確実に且つ安定的に取り付けられ得るようになっているのである。
【0052】
そして、ここでは、特に、プラグ装置58が、シリンダヘッドカバー10に固着されたナット部材34に対する固定ボルト68の螺合により、シリンダヘッドカバー10に締結されるようになっているところから、図2に示されるように、かかる固定ボルト68のナット部材34に対する螺合の解消により、プラグ装置58のシリンダヘッドカバー10への締結を解除して、プラグ装置58をプラグチューブ22内から上方に引き抜けば、プラグチューブ挿通孔24の内フランジ部26とプラグ装置58の外フランジ部60との間でのプラグチューブガスケット36の挟圧保持状態が、解消されるようになる。また、その状態において、スペーサ部材54の円筒状突起56を天板部12の環状溝28内から離脱せしめて、スペーサ部材54を天板部12の外側面上から取り除けば、プラグチューブガスケット36が、プラグチューブ挿通孔24の上部開口部(シリンダヘッドカバー10の外側への開口部)を通じて、プラグチューブ挿通孔24内から容易に離脱せしめられ得るようになっている。
【0053】
それ故、本実施形態においては、シリンダヘッドカバー10をエンジンから取り外すこともなく、プラグチューブガスケット36のみをシリンダヘッドカバー10から極めて容易に取り外すことが出来るようになっているのである。
【0054】
従って、かくの如き本実施形態によれば、プラグチューブガスケット36が、シリンダヘッドカバー10に対して確実に且つ安定的に取り付けられ得るようになっていることによって、プラグチューブ挿通孔24の内周面とプラグチューブ22の外周面との間が、より確実にシールされ得る。しかも、プラグチューブガスケット36が何等かの理由で破損乃至は損傷した場合には、シリンダヘッドカバー10をエンジンに取り付けたままで、プラグチューブガスケット36のみを交換することが出来、それによって、プラグチューブガスケット36のメンテナンスが、極めて容易に且つ十分に低いコストで実施され得ることとなるのである。
【0055】
また、本実施形態においては、スペーサ部材54の円筒状突起56が天板部12の環状溝28内に圧入されて、スペーサ部材54が、天板部12の外側面上に、移動不能に配置せしめられることで、プラグチューブガスケット36がプラグチューブ挿通孔24内に軸方向に移動不能に位置せしめられるようになっているところから、プラグ装置10をプラグチューブ22内に挿通して、プラグ装置10の外フランジ部60とプラグチューブ挿通孔24の内周面に設けられた内フランジ部26との間で、プラグチューブガスケット36を挟持せしめる際に、その操作が、プラグチューブガスケット36が位置決めされた状態において実施されるようになり、それによって、プラグチューブガスケット36のシリンダヘッドカバー10に対する取付作業が、よりスムーズに且つ容易に行われ得るといった利点が得られる。
【0056】
さらに、本実施形態では、プラグチューブ挿通孔24内に位置せしめられたプラグチューブガスケット36が、円環板形状を有するスペーサ部材54を介して、円環板状や円筒形状を有する、プラグチューブ挿通孔24の内周面における内フランジ部26とプラグ装置58の外フランジ部60及び押圧リブ62との間で挟持されるようになっているところから、それら内フランジ部26と外フランジ部60との間で、挟持力が、スペーサ部材54を介して、プラグチューブガスケット36に対して、その全周に亘って効果的に作用せしめられ、それによって、プラグチューブガスケット36が、シリンダヘッドカバー10に対して、より安定的に且つ確実取り付けられ得る。そして、その結果、シリンダヘッドカバー10とプラグチューブ22との間の良好なシール性能が、より効果的に高められ得ることとなる。
【0057】
また、本実施形態においては、スペーサ部材54の下面に接触せしめられるプラグチューブガスケット36(ガスケット本体38)の上面に、上面側シール突起46が設けられて、それらスペーサ部材54の下面とプラグチューブガスケット36の上面との間のシール性が安定的に確保され得るようになっているため、例えば、それらの間から、内周面側シール突起42の連結ゴム膜52上に、異物が進入し、そのような異物によって、連結ゴム膜52の撓み変形が阻害されるようなことが未然に防止され得る。そして、その結果、プラグチューブ22がプラグチューブガスケット36の内孔内に挿入された際に、かかる連結ゴム膜52の撓み変形に抗して、連結ゴム膜52、ひいては内周面側シール突起42において生ずる付勢力に基づいて発揮される、プラグチューブガスケット36の内周面とプラグチューブ22の外周面との間のシール性能が、より安定的に確保され得る。
【0058】
さらに、本実施形態では、プラグチューブガスケット36におけるガスケット本体38の内部に金属製の円筒状補強体40が埋設されて、かかるガスケット本体38の円筒状補強体40よりも外周側の部分における径方向のばね特性が硬くされていることにより、プラグチューブガスケット36の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間のシール性能も、より十分に高められ得る。
【0059】
更にまた、ガスケット本体38の内部への円筒状補強体40の埋設により、上下方向(軸方向)に作用せしめられる荷重に対するガスケット本体38の耐ヘタリ性が高められているため、プラグチューブ挿通孔24の内周面における内フランジ部26とプラグ装置58の外フランジ部60との間でのガスケット本体38の挟持状態、ひいてはプラグチューブガスケット36のシリンダヘッドカバー10に対する取付状態が、より長期に亘って安定的に維持され得る。そして、その結果として、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間のプラグチューブガスケット38による良好なシール性能が、より有利に確保され得ることとなる。
【0060】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0061】
例えば、シリンダヘッドカバー10のカバー本体12の形成材料は、合成樹脂材料であれば、例示のものに、特に限定されるものではなく、シリンダヘッドカバーの形成材料として従来から用いられるものが、何れも採用され得る。
【0062】
また、前記実施形態では、シリンダヘッドカバー10、圧入凹部としての環状溝28が設けられる一方、スペーサ部材54に、圧入凸部としての円筒状突起56が一体形成されていたが、それら圧入凹部と圧入凸部は、後者の前者への圧入により、スペーサ部材54が、シリンダヘッドカバー10に対して着脱可能に取り付けられ得るようになっておれば良い。従って、例えば、スペーサ部材54に、互いに独立した一個又は複数の各種の突起からなる圧入凸部を設ける一方、シリンダヘッドカバー10に対して、そのような一個又は複数の突起からなる圧入凸部が圧入可能な一個又は複数の圧入凹部を設けるようにしても、何等差し支えない。
【0063】
さらに、スペーサ部材54の全体形状も、例示のものに、特に限定されるものではなく、プラグチューブ挿通孔24内に位置せしめられるプラグチューブガスケット36とプラグ装置58の第二係合突起としての外フランジ部60の間に介在せしめられ、プラグ装置58のシリンダヘッドカバー10に対する締結力に基づいて、プラグチューブガスケット36に対して、それをシリンダヘッドカバー10の内側方向に押圧する押圧力を作用せしめ得るような構造を有しておれば、如何なる形状であっても良いのである。
【0064】
また、そのような各種の形状を有するスペーサ部材の複数個のものが、プラグチューブ挿通孔24内に位置せしめられるプラグチューブガスケット36とプラグ装置58の第二係合突起としての外フランジ部60の間に介在せしめられるように為しても、何等差し支えない。
【0065】
なお、プラグ装置58に設けられる第二係合突起が、プラグチューブ挿通孔24内に位置せしめられるプラグチューブガスケット36に対して、直接に接触して、係合せしめられ得るように構成されるのであれば、上記の如きスペーサ部材54を省略することも出来る。
【0066】
また、プラグチューブガスケット36は、環状乃至は筒状の弾性部材からなり、プラグチューブ挿通孔24内に位置して、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間をシールし得るものであれば、その構造や全体形状、更には構成材料も、例示のものに、決して限定されるものではなく、例えば、従来より公知の構造のものや、単純なOリング等にて構成されていても良い。
【0067】
さらに、前記実施形態では、プラグチューブ挿通孔24の内周面の下端部に一体形成された円環板状の内フランジ部26にて第一係合突起が構成されていたが、プラグチューブ挿通孔24の内周面の下端部に、互いに独立した一個又は複数の各種の突起を設け、それらの突起にて、第一係合突起を構成しても良い。
【0068】
更にまた、プラグ装置58の上部部位に設けられる第二係合突起も、例示の外フランジ部60に代えて、プラグ装置58の上部部位に一体形成された一個又は複数の各種の突起にて構成することも出来る。
【0069】
また、プラグ装置58のシリンダヘッドカバー10に対する着脱可能な締結構造も、例示の固定ボルト68のナット部材34に対する螺合によるものの他、公知の着脱可能な締結構造が、適宜に採用され得る。
【0070】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車エンジンに取り付けられる合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造に適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、自動車エンジン以外の火花発火式内燃機関に取り付けられる合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造の何れに対しても適用可能であることは、勿論である。
【0071】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に従って、プラグチューブガスケットが取り付けられたシリンダヘッドカバーの一実施形態を示す断面説明図である。
【図2】図1における分解説明図である。
【符号の説明】
【0073】
10 シリンダヘッドカバー 12 天板部
22 プラグチューブ 24 プラグチューブ挿通孔
26 内フランジ部 28 環状溝
36 プラグチューブガスケット 42 内周面側シール突起
44 外周面側シール突起 46 上面側シール突起
54 スペーサ部材 56 円筒状突起
58 プラグ装置 60 外フランジ部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状乃至は筒状の弾性部材からなるガスケットであって、且つ合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに設けられたプラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通される、点火プラグを備えたプラグ装置を収容するためのプラグチューブの外周面とに対して、それぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該シリンダヘッドカバーとの間をシールするプラグチューブガスケットを、該シリンダヘッドカバーに取り付けるための構造にして、
前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記シリンダヘッドカバーの内側への開口側部位に、第一係合突起を一体的に設ける一方、前記プラグチューブ内に、上部部位を該シリンダヘッドカバーの外側に突出せしめた状態で収容された前記プラグ装置の該上部部位の外周面に、第二係合突起を一体的に設けて、それら第一係合突起と第二係合突起とを、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下面と上面とにそれぞれ接触させて、係合せしめると共に、該プラグ装置を、前記上部部位において、該シリンダヘッドカバーに対して着脱可能に締結することにより、かかるプラグ装置のシリンダヘッドカバーへの締結力に基づいて、該プラグチューブガスケットを、前記第一係合突起と前記第二係合突起との間で挟圧保持せしめて、該シリンダヘッドカバーに取り付けるようにしたことを特徴とする、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項2】
前記第一係合突起が、前記プラグチューブ挿通孔の内周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された内フランジ形態をもって構成される一方、前記第二係合突起が、前記プラグ装置における前記上部部位の外周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された外フランジ形態をもって構成されて、それら第一係合突起と第二係合突起とが、それぞれの全周において、前記プラグチューブガスケットの下面と上面とにそれぞれ接触して、係合せしめられている請求項1に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項3】
前記プラグチューブガスケットの上面における前記プラグ装置の前記第二係合突起との接触部位に、周方向に連続して延びる環状の上面側シール突起が、一体的に突出形成されている請求項2に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項4】
前記シリンダヘッドカバーに締結された前記プラグ装置の前記第二係合突起と、前記プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットとの間に、スペーサ部材が介在せしめられて、該第二係合突起が、該スペーサ部材を介して、該プラグチューブガスケットの上面に接触して、係合せしめられる一方、該スペーサ部材に対して、該シリンダヘッドカバーの側に向かって一体的に突出形成された圧入凸部が、該シリンダヘッドカバーにおける該プラグチューブ挿通孔の周辺部位に設けられた圧入凹部に圧入せしめられることにより、該スペーサ部材が、該シリンダヘッドカバーに対して着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項5】
前記第一係合突起が、前記プラグチューブ挿通孔の内周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された内フランジ形態をもって構成される一方、前記第二係合突起が、前記プラグ装置における前記上部部位の外周面に対して、その全周に亘って、周方向に連続して延びるように一体形成された外フランジ形態をもって構成され、更に、前記スペーサ部材が、環状乃至は筒状体にて構成されて、上面と下面のそれぞれの全周において、該第二係合突起の下面と該プラグチューブガスケットの上面とに各々接触した状態で、それら第二係合突起とプラグチューブガスケットとの間に介在せしめられている請求項4に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項6】
前記プラグチューブガスケットの上面における前記スペーサ部材との接触部位に、周方向に連続して延びる環状の上面側シール突起が、一体的に突出形成されている請求項5に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項7】
前記環状乃至は筒状体からなるスペーサ部材が、その下面において、該プラグチューブガスケットの上面の全面に接触した状態で、前記プラグ装置の前記第二係合突起と前記プラグチューブガスケットとの間に介在せしめられている請求項5又は請求項6に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項8】
前記プラグチューブガスケットの内部に、剛性部材からなる筒状の補強体が、同軸的に位置する状態で埋設されている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項9】
前記プラグチューブガスケットの外周面に、周方向に連続して延びる外周面側シール突起が一体的に突出形成される一方、その内周面に対して、周方向に連続して延びる内周面側シール突起が一体的に突出形成されている請求項1乃至請求項8のうちの何れか1項に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−120440(P2007−120440A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315317(P2005−315317)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】