説明

合成樹脂製スパウト

【課題】厚紙製容器(32)に好適に適用される合成樹脂スパウト(2)において、スパウトの円筒壁(4)内には放射状に延びる複数個のスポーク(26)が配設されているにも拘らず、スポークによる内容物の流動阻害を可及的に回避して、内容物を円筒壁内を通して注出する際の内容物飛散の問題を解決する。
【解決手段】スポークの各々の主部を下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭になる下側面とを有する形態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂フィルム及び/又は金属箔が積層された厚紙から形成された容器に好適に適用することができる合成樹脂製スパウト(注口栓体)に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂フィルム及び/又は金属箔が積層された厚紙から形成された容器に好適に適用することができるスパウトとして、下記特許文献1には、ポリエチレン或いはポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から形成されたスパウトが開示されている。このスパウトは円筒壁とこの円筒壁の下部から半径方向外方に延出する係止フランジとを具備する。円筒壁にはその軸線方向に見て上方から下方に向かって順次に位置する雄螺条部、突条部、薄肉介在部及び厚肉下部を含んでいる。雄螺条部の外周面には雄螺条が形成され、突条部の外周面には環状突条(周方向に完全に連続して延在する形態と共に周方向に見て局部的に切欠部が存在するが全体として略環状である突条を含む)が形成されている。厚肉下部の内周面には円筒壁の中心から180度の角度間隔をおいて放射状に延びる2個のスポークの外端が接続されている。かようなスパウトは、その係止フランジが容器に係止され、その円筒壁が容器に形成されている排出口に対応して位置せしめられて注口を構成する。円筒壁には外蓋が装着される。外蓋は円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを有する。スカート壁の内周面には雌螺条が形成されており、かかる雌螺条を円筒壁の雄螺条部に形成されている雄螺条に螺合することによって円筒壁に外蓋が装着される。天面壁の内面には下方に垂下する環状シール片が形成されており、円筒壁に外蓋が所要とおりに装着されると、シール片が円筒壁の内周面上部に密接され、これによって円筒壁が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4048610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したとおりの従来のスパウトには次のとおりの解決すべき問題がある。円筒壁内には円筒壁の中心から放射状に延びるスポークが存在するが、かかるスポークの存在に起因して円筒壁内を通して注出される容器内容物、例えば清涼飲料或いはアルコール飲料、の流動が阻害され、内容物が周囲に飛散してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、スポークによる内容物の流動阻害を可及的に回避して、内容物を円筒壁内を通して注出する際の内容物飛散の問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、スポークの各々の主部を下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭になる下側面とを有する形態にすることによって、スポークの存在に起因する内容物の流動阻害を可及的に回避し、かくして上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するスパウトとして、円筒壁と、該円筒壁の下部から半径方向外方に延出する係止フランジとを具備し、該円筒壁の内周面には、該円筒壁の中心から等角度間隔をおいて放射状に延びる複数個のスポークの外端が接続されている合成樹脂製スパウトにおいて、
該スポークの各々の主部は下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭になる下側面とを有する、ことを特徴とする合成樹脂製スパウトが提供される。
【0008】
好ましくは、該スポークの各々の主部の横断面形状は円形乃至楕円形或いは軸線方向に細長く且つ上端及び下端は鋭い縁をなす変形楕円である。該スポークは3乃至6個配設されているのが好適である。該スポークの外端は半径方向外側に向かって周方向両側に延出されると共に軸線方向両側に延出されているのが好都合である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスパウトにおいては、スポークの各々の主部が下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭になる下側面とを有する故に、スポークによる内容物の流動阻害が可及的に回避され、内容物を円筒壁内を通して注出する際の内容物の飛散が充分に防止乃至抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成されたスパウトの斜面図。
【図2】図1に示すスパウトの正面図。
【図3】図1に示すスパウトの平面図。
【図4】図1に示すスパウトの底面図。
【図5】図1に示すスパウトの縦断面図。
【図6】図1に示すスパウトにおけるスポークの横断面図。
【図7】スポークの変形例の横断面図。
【図8】スポークの他の変形例の横断面図。
【図9】図1のスパウトと共にスパウトが装着された容器の一部及びスパウトに装着された外蓋を、一部を縦断面で示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図5を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示すスパウトは、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することができる。かかるスパウト2は円筒壁4とこの円筒壁4の下端外周面から半径方向に延出した円環形状のフランジ6とを具備している。
【0012】
図示のスパウト2における円筒壁4は軸線方向に見て上方から下方に順次に位置する上端部8、雄螺条部10、突条部12、薄肉介在部14及び厚肉下部16を有する。上端部8は円筒形状であり、その外周面及び内周面には螺条乃至突条等が形成されていない。雄螺条部10の外周面には雄螺条18が形成されている。突条部12の外周面には周方向に連続して延在している突条20が形成されている。図示の実施形態における突条20はカブラ部と称されているものであり、円錐台形状の上面と実質上水平に延在する下面とを有する。薄肉介在部14には、周方向に間隔をおいて複数個、図示の実施形態においては6個のラチェット爪22が形成されている。ラチェット爪22の各々は、図3において時計方向前側に位置する切り立った前面と時計方向後側に位置する緩やか後面とを有する。厚肉下部16は比較的厚い肉厚を有し、その内径は上端部8、雄螺条部10、突条部12及び薄肉介在部14の内径と実質上同一であるが、その外径は上端部8、雄螺条部10、突条部12及び薄肉介在部14の外径よりも大きい。厚肉下部16の外周面上端部は縦断面図において若干の円弧形状であって下方に向かって外径が漸次増大している。係る外周面上端部には周方向に間隔をおいて4個の係止突片24が形成されている。
【0013】
図3乃至図5を参照することによって明確に理解される如く、円筒壁4内には円筒壁4の中心から周方向に間隔をおいて放射状に伸びる複数個のスポーク26が配設されている。図示の実施形態においては、円筒壁4の中心においてスポーク26の内端が相互に接続されていて中心交点部28が規定されている。スポーク26の外端は、円筒壁4における薄肉介在部14の内周面に接続されていることが重要である。スポーク26は周方向に等角度間隔をおいて3個乃至6個配設されているのが好適である。図示の実施形態においては、周方向に120度の角度間隔をおいて3個のスポーク26が配設されており、スポーク26の各々は実質上水平に延在せしめられている。スポーク26の各々の外端部30は、半径方向外方に向かって周方向両側に延出されると共に軸線方向両側(即ち上方及び下方)に延出されて、円筒壁4の薄肉介在部14の内周面に接続されているのが好都合である。スポーク26の各々の主部、図示の実施形態においては上記中心交点部28と外端部30との間の部分は、円筒壁4内を通して注出される容器内容物の流動阻害を可及的に回避するために、下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭に成る下側面とを有することが重要である。スポーク26の各々の主部の横断面形状の好適例としては、図6に図示する円形又は図7に図示する縦長(即ち軸線方向に長い)楕円形状、或いは図8に図示する如く、縦長で上端及び下端は鋭い縁である変形楕円形状を挙げることができる。
【0014】
図示のスパウト2においては、図5を参照することによって理解される如く、スポーク26の各々の外端が円筒壁4の薄肉介在部14の内周面に接続されており、スポーク26によって薄肉介在部14の剛性が増強されていることが留意されるべきである。薄肉介在部14の剛性が増大せしめられている故に、円筒壁4が変形乃至傾斜して外蓋による円筒壁4の密封が毀損されることが充分に防止乃至抑制され、そしてまた薄肉介在部14の外周面に形成されているラチェット爪22が半径方向内側に変位されてその機能が毀損されてしまうことが充分に防止乃至抑制される。ラチェット爪22の半径方向内側への変位防止乃至抑制の点から、ラチェット爪22は、軸線方向に見てスポーク26の上記主部に少なくとも部分的に重なり合うように配置されているのが好都合である。
【0015】
図1乃至図8を参照して説明したとおりのスパウト2は、スポーク26の中心交点部28の上面から成形型(図示していない)内に溶融合成樹脂を射出することによって好都合に成形することができる。そして、図9に図示す如く、ポリエステルフィルム如き適宜の合成樹脂フィルム及び/又はアルミニウム箔の如き適宜の金属箔が積層された厚紙製容器32(その一部のみを図9に図示している)に適用される。図9を参照して説明を続けると、図示の実施形態においては、容器32の上面壁34には円形開口36が形成されている。スパウト2のフランジ6はその上面が容器32の上面壁34の内面に密接せしめられ、超音波溶着の如き適宜の様式によって上面壁34の内面に固定される。スパウト2の円筒壁4は上面壁34の円形開口36を通って上方に突出する。円筒壁4の厚肉下部16の下部の外径は上面壁34の円形開口36の内径と実質上同一でよい。円筒壁4の厚肉下部16の外周面上端部に形成されている係止突片24は、スパウト2のフランジ6を上面壁34の内面に固定する前に、容器32の円形開口36からスパウト2が離脱してしまうことを一時的に阻止する。
【0016】
容器32に所要とおりに固定されたスパウト2の円筒壁4には、全体を番号38で示す外蓋が装着される。ポリプロピレン或いはポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形或いは圧縮成形することができる外蓋38は、円形天面壁40とこの天面壁40の周縁から垂下するスカート壁42を具備している。天面壁40の内面には下方に突出する環状シール片44が形成されている。図示の実施形態においてはスカート壁42の上端部外周面は下方に向かって外径が漸次増大する円錐台形状であり、上端部以外の外周面は略円筒形状である。スカート壁42の下部には周方向に延在する破断可能ライン46が形成されており、スカート壁42は破断可能ライン46よりも上方の主部48と破断可能ライン46よりも下方のタンパーエビデント裾部50に区画されている。破断可能ライン46自体は周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット52とスリット52間に位置する複数個の橋絡部54とから構成されている。スカート壁42の主部48の内周面には雌螺条56が形成されており、タンパーエビデント裾部50の内周面には周方向に間隔をおいて複数個のラチェット爪58が形成されている。ラチェット爪58は図9において上方から見て時計方向前側に位置する緩やかな前面と時計方向後側に位置する切り立った後面とを有する。スカート壁42の主部48の外周面には、凹凸が繰り返す所謂ナール60が形成されている。
【0017】
スパウト2の円筒壁4に外蓋38を装着してスパウト2を密封する際には、円筒壁4に外蓋38を被嵌し、図9において上方から見て時計方向に回転せしめる。かくすると、円筒壁4の雄螺条部10に形成されている雄螺条18に外蓋38の雌螺条56が螺合され、外蓋38は回転と共に下降せしめられる。外蓋38が図9に図示する所要位置まで下降せしめられると、外蓋38の天面壁40の内面に形成されている環状シール片44がスパウト2の円筒壁4内に進入し、円筒壁4の内周面上部に密接せしめられ、これによってスパウト2が密封される。外蓋38のタンパーエビデント裾部50の内周面に形成されているラチェット爪58はその緩やかな前面がスパウト2の円筒壁4の薄肉介在部14の外周面に形成されているラチェット爪22の緩やかな後面に作用してこれを通過する。
【0018】
容器32の内容物を消費する際には、外蓋38を図9において上方から見て反時計方向に回転せしめる。かくすると、スパウト2の雄螺条18と外蓋38の雌螺条56との協働によって外蓋38は回転と共に上昇せんとする。一方、外蓋38のスカート壁42のタンパーエビデント裾部50は、ラチェット爪58の切り立った後面とラチェット爪22の切り立った前面との協働によって回転が阻止され、従って破断可能ライン46における橋絡部54に応力が生成され、橋絡部54が破断されてタンパーエビデント裾部50がスカート壁42の主部48から分離される。しかる後においては、タンパーエビデント裾部50を残して外蓋38は回転と共に上昇せしめられてスパウト2の円筒壁4から離脱され、スパウト2が開封される。次いで、容器32を傾動せしめてスパウト2の円筒壁4内を通して容器32の内容物を排出することができる。本発明に従って構成されたスパウト2においては、スパウト2の円筒壁4内に配設されているスポーク26は、図6乃至図8に図示する如く、下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭に成る下側面とを有する故に、スポーク26による内容物の流動阻害が可及的に回避され、内容物を円筒壁4内を通して注出する際の内容物の飛散が充分に防止乃至抑制される。
【符号の説明】
【0019】
2:スパウト
4:円筒壁
6:フランジ
10:螺条部
12:突条部
14:薄肉介在部
16:厚肉下部
18:雄螺条
20:突条
22:ラチェット爪
26:スポーク
32:容器
38:外蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒壁と、該円筒壁の下部から半径方向外方に延出する係止フランジとを具備し、該円筒壁の内周面には、該円筒壁の中心から等角度間隔をおいて放射状に延びる複数個のスポークの外端が接続されている合成樹脂製スパウトにおいて、
該スポークの各々の主部は下方に向かって漸次幅広になる上側面と下方に向かって漸次幅狭になる下側面とを有する、ことを特徴とする合成樹脂製スパウト。
【請求項2】
該スポークの各々の主部の横断面形状は円形乃至楕円形である、請求項1記載の合成樹脂製スパウト。
【請求項3】
該スポークの各々の主部の横断面形状は軸線方向に細長く且つ上端及び下端は鋭い縁をなす変形楕円である、請求項1記載の合成樹脂製スパウト。
【請求項4】
該スポークは3乃至6個配設されている、請求項1から3までのいずれかに記載の合成樹脂製スパウト。
【請求項5】
該スポークの外端は半径方向外側に向かって周方向両側に延出されると共に軸線方向両側に延出されている、請求項1から4までのいずれかに記載の合成樹脂製スパウト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−152938(P2011−152938A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15631(P2010−15631)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】