説明

合成樹脂製可撓管とその製造方法

【課題】 内周面に補強材を螺旋状に設けているにもかかわらず、流体を円滑に流通させることができると共に適宜箇所を切断してもその切断端部を継手部として、その内周面を接着剤によって硬質塩化ビニル樹脂からなる配管等の端部に強固に固着することができる合成樹脂可撓管を提供する。
【解決手段】 軟質塩化ビニル樹脂よりなる可撓管主体1の内周面に全長に亘って硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材2を螺旋状に埋設して該帯状補強材2の内面を可撓管主体1の内周面に面一状に連続させることにより、可撓管主体1の内周面を全長に亘って流体を円滑に流動させることができる平滑な面に形成していると共に、その内周面から露出している帯状補強材2の内面によって可撓管主体1の端部内周面と硬質塩化ビニル樹脂からなる配管等の端部外周面との接着剤による接着を強固に行えるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内周面に全長に亘って硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状の補強材を埋設した状態で螺旋状に巻着してなる合成樹脂製可撓管とその製造方法関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流し台のトラップ排水口や洗面器の排水口等を排水管に接続させたり、空調機の排水口を排水管に接続させるための一定長さを有する継手用或いは接続用合成樹脂製可撓管としては、接続すべき排水口と排水管との対向する開口端部や、排水管同士の対向する開口端部が同一管軸上に対して互いにずれている場合や交差状に配設されている場合であっても確実に接続できるようにするために、適度な可撓性と両端部に継手部を備えた構造のものが要求される。
【0003】
このような要求を満たすことができる可撓性合成樹脂製ホースとしては、特許文献1に記載されているように、一定長さを有する軟質合成樹脂管の外周面に両端部を除いて断面矩形状の硬質合成樹脂製補強材を一体に設けていると共に、両端部の外周面に円筒形状の硬質合成樹脂製継手部を一体に設けてなる可撓性ホースや、特許文献2に記載されているように、一定長さを有する軟質合成樹脂製ホース主体の外周面に両端部を除いて硬質合成樹脂製線材を螺旋状に巻着することによって補強螺旋突条を設けていると共にこのホース主体の一端部外周面に短筒形状の軟質合成樹脂製継手部を、他端部外周面に短筒形状の硬質合成樹脂製継手部を一体に設けてなる軟質合成樹脂製ホースが開発されている。
【0004】
また、特許文献3には、両端部に継手部を設けていないが、軟質塩化ビニル樹脂よりなるホース壁の内周面に硬質塩化ビニル樹脂からなる断面円形状の硬質螺旋補強体を取付けてなる波形状の外観を呈したホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−214563号公報
【特許文献2】特開2008−256013号公報
【特許文献3】特開平11−82825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、硬質合成樹脂からなる排水口や硬質合成樹脂管の端部に上記可撓性ホースの継手部を接続する場合には、一般に硬質合成樹脂どうしの接着性が良好であるため、この可撓性ホースの継手部における硬質合成樹脂からなる外周面と上記硬質合成樹脂からなる排水口や硬質合成樹脂管の内周面との接着剤による接合が強固に行われるが、上記可撓性ホースの硬質合成樹脂製継手部は、軟質合成樹脂管の端部上に一体に設けてられているため、この継手部の内周面は軟質合成樹脂層からなり、従って、この継手部を上記硬質合成樹脂からなる排水口等に外嵌させて接着剤により接続する場合には硬質合成樹脂と軟質合成樹脂とは馴染み性が悪くて接着剤による接着が確実に行うことができない場合が生じる。このような問題点は、硬質合成樹脂と軟質合成樹脂とが塩化ビニル樹脂からなる場合には特に生じ易い。
【0007】
一方、上記特許文献3には軟質塩化ビニル樹脂からなるホース壁の内周面に硬質塩化ビニル樹脂からなる螺旋補強体を取付けてなる可撓性を有するホースが記載されているが、断面円形状の螺旋補強体の外周面両側部とこの螺旋突条を被覆しているホース壁の内面との間には空隙が形成されていて、この空隙が螺旋補強体の外周面両側部に沿って全長に亘って螺旋状の溝として存在しているため、流体の流動抵抗が増大して円滑な流通の妨げとなるばかりでなく、この溝に塵埃等の不純物が滞留して付着する虞れがあり、また、この硬質塩化ビニル樹脂からなる螺旋補強体が優れた接着性を発揮することから、ホースの端部を継手部として使用してその内周面に設けている螺旋補強体を硬質塩化ビニル樹脂からなる排水口や管体の外周面に接着剤によって接着しても、上記螺旋状の溝を通じて排水等が外部に漏出することになり、従って、継手部として採用することができないといった問題点がある。
【0008】
さらに、このようなホースの製造方法としては、成形回転軸上に上記硬質塩化ビニル樹脂よりなる断面円形の補強体を一定をピッチでもって螺旋状に巻装しながら、この補強体を被覆するようにして半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂製帯状材をその対向する側端部同士を接合させながら螺旋巻きすることにより、補強体の外周面に沿って波形状に湾曲した一定厚みのホース壁を形成するものであるから、上記のようにこの補強体の外周面両側部と補強体を被覆しているホース壁の内面との間に螺旋状の溝が形成されて内周面が全長に亘って平滑な面に形成されたホースを製造することができず、その上、ホース壁も断面円形状の螺旋補強体上に重なり合った状態でこの螺旋補強体の外周面に沿って波形状に湾曲した形状に形成されるので、この外周面も継手用として使用することができないといった問題点がある。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは内周面に硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強材を螺旋状に設けているにもかかわらず、流体を円滑に流通させることができると共に適宜箇所を切断してその切断端部を継手部に使用しても、その内周面を硬質塩化ビニル樹脂よりなる排水口や配管の端部外周面に接着剤によって全面的に固着することができる合成樹脂製可撓管とその製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の合成樹脂製可撓管は、請求項1に記載したように、軟質塩化ビニル樹脂よりなる可撓管主体の内周面に硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材を全長に亘って一定のピッチでもって螺旋状に巻着していると共に可撓管主体の内周壁内に該帯状補強材が埋設されていてこの帯状補強材の平滑な内面を可撓管主体の内周面に面一状に連続させた構造を有している。
【0011】
このように構成した合成樹脂製可撓管において、請求項2に係る発明は、上記可撓管主体の内周面に埋設している帯状補強材上に重なるようにして可撓管主体の外周面に帯状補強材と同一ピッチでもって硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強条材を螺旋状に巻着していると共に、可撓管主体の両端部外周面においてはこの補強条材を幅広くして対向する補強条材の側端面を突き合わせ状に接合、一体化させてなる筒状の硬質外層に形成してあり、この筒状の硬質外層を有する可撓管主体の両端部を硬質継手部に形成していることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に係る発明は、上記可撓管主体の両端部の硬質継手部における少なくとも一方を可撓管主体の内径よりもその内径を大径に形成して、接続すべき硬質塩化ビニル樹脂製排水口や排水管等の端部に外嵌させる拡径硬質継手部に形成していることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、上記合成樹脂製可撓管の製造方法であって、成形回転軸上に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材を一定のピッチでもって螺旋巻きすると共に、この帯状補強材に後続して該帯状補強材よりも幅広い半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂製帯状材をその対向する側端部同士を重なるように接合させながら連続的に螺旋巻きすることにより、上記隣接する帯状補強材部間の螺旋状間隔部にその一部を充填して上記帯状補強材を内周壁内に隙間なく埋設させると共に内周面を帯状補強材の内面に面一状に連続させ、且つ、外周面を全長に亘って平滑面に形成してなる長尺の可撓管主体を作製し、この可撓管主体を所望長さ毎に切断することを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、上記請求項2に記載の合成樹脂製可撓管の製造方法であって、成形回転軸上に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材を一定のピッチでもって螺旋巻きすると共に、この帯状補強材に後続して該帯状補強材よりも幅広い半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂製帯状材をその対向する側端部同士を重なるように接合させながら連続的に螺旋巻きすることにより、上記隣接する帯状補強材部間の螺旋状間隔部にその一部を充填して上記帯状補強材を内周壁内に隙間なく埋設させると共に内周面をこの帯状補強材の内面に面一状に連続させ、且つ、外周面を全長に亘って平滑面に形成してなる可撓管主体を作製し、さらに、この可撓管主体を形成しながら、この可撓管主体の所定長さ部分の外周面に、上記帯状補強材に対応させて半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる条材を螺旋状に巻着して補強条材を形成する工程と、この工程に引き続いて上記条材を幅広くしてその対向する側端面同士を接合、融着しながら可撓管主体上に螺旋巻きすることにより、所定長さの円筒状硬質外層を形成する工程とを交互に繰り返し行い、この円筒状硬質外層の長さ方向の中央部を順次切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、可撓管主体は、軟質塩化ビニル樹脂からなると共にその内周面に硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材を全長に亘って一定のピッチでもって螺旋状に巻着しているので、軟質塩化ビニル樹脂からなる管壁による可撓性と、硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材による優れた保形性及び耐圧性とを備えているのは勿論、この可撓管主体の内周面に螺旋巻きしている上記帯状補強材は、可撓管主体の内周壁内にその内面が面一状となるように埋設されているので、可撓管主体の内周面が全長に亘って隙間などが存在しない平滑な面に形成されて排水等の流体を円滑に流動させることができるばかりでなく、可撓管主体の端部を硬質塩化ビニル樹脂からなる排水口や配管に接続する場合、別に硬質塩化ビニル樹脂からなる継手用短管を使用することなく、この可撓管主体の端部を排水口や配管の端部に被嵌することにより、その管壁の内周壁内に埋設している上記硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材を接着剤によって排水口や配管の端部外周面に強固に一体化させることができる。
【0016】
この際、硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材は可撓管主体の内周面に螺旋状に巻着しているにもかかわらず、可撓管主体の内周壁内にその内面を面一にして隙間なく埋設しているので、可撓管主体の端部内周面を全面に亘って排水口や配管の端部外周面に密接させることができて流体が漏出する虞れのない接続が可能となる。さらに、この帯状補強材は可撓管主体の両端間に亘って同一形態でもって連続的に螺旋状に埋設しているので、どの部分から切断してもその切断部分を継手部として使用することができると共に、可撓管主体に弱体部が形成されることなくこの継手部を含めて全長に亘り均一な強度を有する可撓管を提供することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、上記可撓管主体の内周面に埋設している帯状補強材上に重なるようにして可撓管主体の外周面に帯状補強材と同一ピッチでもって硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強条材を螺旋状に巻着しているので、これらの硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材と補強条材とによって一層優れた保形性と耐圧性とを備えた可撓管を得ることができるのは勿論、補強条材は可撓管主体の外周面から突設しているので、軟質塩化ビニル樹脂からなる可撓管主体が他の物体と直接、摺接したり衝突するのを防止することができて長期の使用に供することができ、さらに、可撓管主体の両端部外周面においては上記補強条材を幅広くして対向する補強条材の側端面を突き合わせ状に接合、一体化させてなる筒状の硬質外層に形成しているので、可撓管主体の端部を硬質塩化ビニル樹脂よりなる排水口や排水管等の配管の端部に挿嵌してその筒状硬質外層を接着剤によりこれらの排水口や配管の端部内周面に強固に且つ確実に接続することができ、内周面に設けている上記帯状補強材と共に内外周面が接着剤によって配管等に接続可能な可撓管を提供することができる。
【0018】
また、上記可撓管主体の両端部の硬質継手部における少なくとも一方を可撓管主体の内径よりもその内径を大径に形成して、接続すべき硬質塩化ビニル樹脂製排水口や排水管等の端部に外嵌させる拡径硬質継手部に形成しているので、別に硬質塩化ビニル樹脂よりなる短管形状の継手部材を使用することなく、上記拡径硬質継手部を硬質塩化ビニル樹脂製の排水口や排水管等の端部に外嵌させて接着剤により確実且つ能率よく接続することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、上記合成樹脂製可撓管の製造方法であって、成形回転軸上に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状の補強材を一定のピッチでもって螺旋巻きすると共に、この補強材に後続して補強材よりも幅広い半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂製帯状材をその対向する側端部同士を接合させながら連続的に螺旋巻きすることにより、上記隣接する補強材部間の螺旋状間隔部にその一部を充填して上記帯状補強材を内周壁内に隙間なく埋設させるので、隣接する補強材部間の螺旋状間隔部に充填した半溶融状態の帯状材部分の内面が帯状補強材の内面と面一状に連続して内周面が全長に亘って平滑な可撓管主体を製造することができると共に、可撓管主体の内周壁内に埋設している帯状補強材によって配管等と直接、接着剤によって接続可能な可撓管を製造することができる。
【0020】
この際、製造される長尺の可撓管主体のどの部分を切断しても、上記のようにその端部の内周面に帯状補強材が螺旋状に埋設している可撓管を得ることができ、全長に亘って均一な強度と可撓性を有する塩化ビニル樹脂製の可撓管を能率よく製造することができ、製造コストや製品コストの低減を図ることができる。
【0021】
また、請求項5に係る発明によれば、内周面に硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材を螺旋状に埋設してなる可撓管主体を形成しながら、この可撓管主体の所定長さ部分の外周面に、上記帯状補強材に対応させて半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる条材を螺旋状に巻着して補強条材を形成する工程と、この工程に引き続いて上記条材を幅広くしてその対向する側端面同士を接合、融着しながら可撓管主体上に螺旋巻きすることにより、所定長さの円筒状硬質外層を形成する工程とを交互に繰り返し行い、この円筒状硬質外層の長さ方向の中央部を順次切断するので、可撓管主体の端部をその内外周面が接着剤によって硬質塩化ビニル樹脂製の排水口や配管の端部に接続可能な短筒形状の硬質継手部に形成することができる。
【0022】
この際、上記円筒状硬質外層のみをその長さ方向の中央部から順次、切断することによって一定長さの可撓管主体の両端部に上記硬質外層を有する硬質継手部を備えた可撓管を製造することができる一方、上記全ての円筒状硬質外層をその長さ方向の中央部から切断すると共に長さ方向に隣接する円筒状硬質外層間の可撓管主体における長さ方向の中央部も切断することによって一端に上記硬質外層を有する硬質継手部を備え、他端にこの硬質継手部が存在しない継手部を備えた可撓管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明合成樹脂製可撓管の一部を省略した簡略縦断側面図。
【図2】その製造方法を示す簡略縦断側面図。
【図3】所定長さ毎に切断する切断部の簡略縦断側面図。
【図4】端部を拡径継手部に形成した可撓管の一部の簡略縦断側面図。
【図5】本発明の別な実施例を示す一部を省略した簡略縦断側面図。
【図6】その製造方法を示す簡略縦断側面図。
【図7】所定長さ毎に切断する切断部の簡略縦断側面図。
【図8】端部を拡径硬質継手部に形成した可撓管の一部の管簡略縦断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は一定長さを有する合成樹脂製可撓管Aの一部を省略した縦断側面図で、この合成樹脂製可撓管Aは、塩化ビニル樹脂からなる可撓管主体1の内周面に硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状の補強材2を一定のピッチでもって全長に亘って螺旋状に巻着していると共にこの帯状補強材2をその厚み分だけ可撓管主体1の内周壁内に埋設してこの帯状補強材2の内面を可撓管主体1の内周面に面一状に連続させた構造を有していると共に、全長に亘って内径及び外径が同一径で一定の厚みを有する断面円環形状に形成されている。
【0025】
具体的には帯状補強材2は断面横長長方形状の一定厚みと一定幅を有する平帯状に形成されてあり、製造時において、この帯状補強材2を一定厚みを有する上記可撓管主体1の内周面に押し込んで可撓管主体1の内壁部に帯状補強材2の断面形状と同一断面の凹部3を形成しながら、この凹部3内に帯状補強材2を埋設してなるものであり、従って、帯状補強材2の外面が凹部3の内底面に全面的に密着していると共に両側端面が凹部3の平行に対向する側面に全面的に密着し、内面が可撓管主体1内に向かって露出して、可撓管主体1の内周面に隙間なく面一状に連続している。
【0026】
なお、帯状補強材2の厚みは、可撓管主体1の内壁部内にこの帯状補強材2を埋設してなる合成樹脂製可撓管Aの管壁の厚みの1/2〜1/5程度に形成しておくことが望ましい。帯状補強材2の厚みが合成樹脂製可撓管A(可撓管主体1)の管壁の厚みの1/2以上になると、帯状補強材2を埋設している可撓管主体1の管壁部分の厚みが薄くなって合成樹脂製可撓管Aを曲げたり捩ったりした場合にはその管壁部分が破損する虞れがあり、1/5以下の厚みにすると、合成樹脂製可撓管Aの圧潰強度が低下することになるからである。
【0027】
また、帯状補強材2の断面形状は上記のように全幅に亘って一定厚みを有する平帯状に形成しておく必要はなく、可撓管主体1の凹部3の内底面に密着する外面を凸円弧状、即ち、断面三日月形状、或いは凹凸状に形成しておいてもよいものであり、要するに、可撓管主体1内に向かって露呈する内面を平滑な平坦面に形成して可撓管主体1の内周面と面一状に連続するように形成しておけばよい。
【0028】
このように構成した合成樹脂製可撓管Aは、軟質塩化ビニル樹脂からなる可撓管主体1によって適度な可撓性を有しているばかりでなく、可撓管主体1の内周面に全長に亘って螺旋状に巻着してしている硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材2によって優れた保形性と、耐圧強度を有しており、さらに、上記帯状補強材2は可撓管主体1の内周壁内にその内面を可撓管主体1の内周面に面一状に連続させた状態にして埋設されているので、この合成樹脂製可撓管Aの端部を硬質塩化ビニル樹脂製の排水口や配管の端部に接着剤を介して被嵌させることにより、硬質塩化ビニル樹脂同士の優れた接着性によって簡単且つ強固に接続させることができる。また、この合成樹脂可撓管Aは全長に亘ってその内径及び外径がそれぞれ同一径の一定厚みを有する管壁に形成されているので、どの部分を切断してもその内周面に埋設している上記硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材2を有する継手部を設けた可撓管を得ることができる。
【0029】
次に、上記のように構成した合成樹脂製可撓管の製造方法を図2、図3に基づいて説明すると、まず、図2に示すように、第1成形ノズル11から半溶融状態の一定幅を有する硬質塩化ビニル樹脂よりなる偏平な細幅帯状の補強材2'を押し出しながら周知のように金属製の成形回転軸10の基端部上に、一定のピッチ間隔毎に螺旋状に巻回して帯状補強材2を形成していくと共に、この帯状補強材2を被覆するようにして成形回転軸10上に、第2成形ノズル12から上記補強材2'よりも幅広い半溶融状態の一定幅と一定厚みを有する偏平な矩形断面に形成された軟質塩化ビニル樹脂からなる帯状材1'を先に螺旋方向に一巻き状に巻回した帯状材部と次に一巻き状に巻回した帯状材部との対向側部を重ね合わせて一体に接合、融着させながら一定の螺旋ピッチでもって螺旋巻きすると共に螺旋巻きしたその外周面をローラ(図示せず)によって押圧することにより、成形回転軸10の長さ方向に隣接する上記帯状補強材部間の螺旋状間隔部に該帯状材1'の一部1aを押し込むようにして充填して内周壁に帯状補強材2を隙間なく埋設させた螺旋状の凹部3を形成し、且つ、内外周面が平滑で全長に亘ってその内径及び外径が同一径に形成された長尺の可撓管主体1を製造していく。
【0030】
こうして製造される可撓管主体1は成形回転軸10上を移動し、その移動途上で冷却されると共に成形回転軸10の先端側において、図3に示すように、カッタ14によって所望長さ毎に切断することにより、両端部を、その内周面に露呈している硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材2が硬質塩化ビニル樹脂からなる排水口や配管との接着剤による強固な接続が可能な継手部a1、a1とした所定長さの可撓管主体1を順次、連続的に得ることができる。
【0031】
なお、以上の実施例においては、全長に亘って内外径がそれぞれ同一径の可撓管主体1について説明したが、図4に示すように、可撓管主体1の少なくとも一端部をこの可撓管主体1の内径よりもその内径を大径に形成して、接続すべき硬質塩化ビニル樹脂製排水口や排水管等の端部に外嵌させる拡径継手部a1' 形成しておいてもよい。
【0032】
また、上記合成樹脂製可撓管Aにおける可撓管主体1にはその外周面に何らの加工等も施していないが、その外周面に付加的構成を設けた合成樹脂製可撓管であってもよい。図5はその実施例を示すもので、塩化ビニル樹脂からなる可撓管主体1の内周面に硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材2を一定のピッチでもって全長に亘って螺旋状に巻着していると共にこの帯状補強材2をその厚み分だけ可撓管主体1の内周壁内に埋設してこの帯状補強材2の内面を可撓管主体1の内周面に面一状に連続させた構造を有する上記合成樹脂製可撓管Aにおいて、この合成樹脂製可撓管A' は可撓管主体1の平滑な外周面に、この可撓管主体1の内周面に埋設している上記帯状補強材2上に可撓管主体1の管壁を介して重なるように硬質塩化ビニル樹脂からなる補強条材4を上記帯状補強材2と同一ピッチで螺旋状に巻着していると共に、可撓管主体1の両端部外周面においてはこの補強条材4を幅広くして対向する補強条材4、4の側端面を突き合わせ状に接合、一体化させることによって一定厚みを有する外周面が平滑な筒状の硬質外層4a、4aに形成してあり、この筒状の硬質外層4a、4aを有する可撓管主体の両端部を硬質継手部a2に形成している。その他の構造については上記実施例と同じである。
【0033】
可撓管主体1の外周面上に螺旋状に巻着している帯状の上記補強条材4の断面形状は半円形状、矩形状、三角形状等、特に限定されなく、また、中空形状であってもよいが、その幅は上記帯状補強材2の幅と同一幅ないしは僅かに幅広くして、可撓管主体1が円滑に湾曲可能となるように構成している。
【0034】
このように構成した合成樹脂製可撓管A’は、軟質塩化ビニル樹脂からなる可撓管主体1によって適度な可撓性を有しているばかりでなく、この可撓管主体1の管壁を介して互いに重なるようにして可撓管主体1の内外周面に一定のピッチでもって螺旋巻きしている硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材2と補強条材4とによって優れた保形性と、耐圧強度を有しており、また、可撓管主体1の両端に設けている硬質継手部a2は、可撓管主体1の端部内周面に埋設している上記硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状補強材2と、外周面上に設けている上記硬質塩化ビニル樹脂からなる硬質外層4a、4aとによって硬質塩化ビニル樹脂製の排水口や配管の端部における外周面や内周面に接着剤によって強固に接続させることができる。
【0035】
この合成樹脂製可撓管A’の製造方法を述べると、図6に示すように、まず、成形回転軸10上に上記実施例と同様にして可撓管主体1を形成しながら、この可撓管主体1の外周面に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂からなる帯状条材4'を螺旋状に巻着する。
【0036】
具体的には、第1成形ノズル11から半溶融状態の一定幅を有する硬質塩化ビニル樹脂よりなる偏平な細幅帯状の補強材2'を押し出しながら成形回転軸10の基端部上に、一定のピッチ間隔毎に螺旋状に巻回して帯状補強材2を形成していくと共に、この帯状補強材2を被覆するようにして成形回転軸10上に、第2成形ノズル12から上記補強材2'よりも幅広い半溶融状態の一定幅と一定厚みを有する偏平な矩形断面に形成された軟質塩化ビニル樹脂からなる帯状材1'を先に螺旋方向に一巻き状に巻回した帯状材部と次に一巻き状に巻回した帯状材部との対向側部を重ね合わせて一体に接合、融着させながら一定の螺旋ピッチでもって螺旋巻きすると共に螺旋巻きしたその外周面をローラ(図示せず)によっ押圧することにより、成形回転軸10の長さ方向に隣接する上記帯状補強材部間の螺旋状間隔部に該帯状材1'の一部1aを押し込むようにして充填して内周壁に帯状補強材2を隙間なく埋設させた螺旋状の凹部3を形成し、且つ、内外周面が平滑で全長に亘ってその内径及び外径が同一径に形成された長尺の可撓管主体1を製造していく。
【0037】
さらに、この可撓管主体1を形成しながら、第3成形ノズル13から半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状条材4'を押し出しながらこの帯状条材4'を可撓管主体1の外周面上に、この可撓管主体1の管壁を介して上記帯状補強材2上に重なるようにして帯状補強材2と同一ピッチでもって螺旋状に巻着することにより補強条材4を形成し、この補強条材4を可撓管主体1の所望長さ部分の外周面上に形成したのち、第3成形ノズル13から押し出す帯状条材4'を幅広くしてその対向する側端面同士を接合、融着させながら可撓管主体1上に螺旋巻きすることにより、外周面が平滑な所定長さの円筒状硬質外層4Aを形成する。
【0038】
このように、内周面に帯状補強材2を螺旋状に埋設している可撓管主体1を形成しながら、この可撓管主体1の所定長さ部分の外周面に、半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状条材4'を螺旋状に巻着して補強条材4を形成する工程と、この工程に引き続いて上記帯状条材4'を幅広くしてその対向する側端面同士を接合、融着しながら可撓管主体1上に螺旋巻きすることにより、所定長さの円筒状硬質外層4Aを形成する工程とを交互に繰り返し行いながら、成形回転軸10上を移動させ、その移動途上で冷却されると共に成形回転軸10の先端側において、図7に示すように、カッタ14によって円筒状硬質外層4Aの長さ方向の中央部を順次切断することにより、内周面に全長に亘って帯状補強材2を螺旋状に埋設し、且つ、両端部を除く外周面上に補強条材4を巻着している可撓管主体1の両端部に、外周面に短筒形状の硬質外層4a、4aを有する硬質継手部a2、a2を備えた合成樹脂製可撓管A’を連続的に製造することができる。
【0039】
なお、以上の実施例においては、可撓管主体1の両端部に形成している硬質継手部a2、a2の内径を可撓管主体1の内径と同一径に形成しているが、その少なくとも一方の硬質継手部a2を図8に示すように、可撓管主体1の内径よりもその内径を大径に形成して、接続すべき硬質塩化ビニル樹脂製排水口や排水管等の端部に外嵌させる拡径継手部a2' 形成しておいてもよい。その他の構造については上記実施例と同じであるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0040】
A 合成樹脂製可撓管
1 可撓管主体
2 帯状補強材
3 凹部
4 補強条材
4a 硬質外層
10 成形回転軸
11 第1成形ノズル
12 第2成形ノズル
13 第3成形ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質塩化ビニル樹脂よりなる可撓管主体の内周面に硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材を全長に亘って一定のピッチでもって螺旋状に巻着していると共に可撓管主体の内周壁内に該帯状補強材が埋設されていてこの帯状補強材の平滑な内面を可撓管主体の内周面に面一状に連続させていることを特徴とする合成樹脂製可撓管。
【請求項2】
可撓管主体の内周面に埋設している帯状補強材上に重なるようにして可撓管主体の外周面に帯状補強材と同一ピッチでもって硬質塩化ビニル樹脂よりなる補強条材を螺旋状に巻着していると共に、可撓管主体の両端部外周面においてはこの補強条材を幅広くして対向する補強条材の側端面を突き合わせ状に接合、一体化させてなる筒状の硬質外層に形成してあり、この筒状の硬質外層を有する可撓管主体の両端部を硬質継手部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂製可撓管。
【請求項3】
可撓管主体の両端部の硬質継手部における少なくとも一方を可撓管主体の内径よりもその内径を大径に形成して、接続すべき硬質塩化ビニル樹脂製排水口や排水管等の端部に外嵌させる拡径硬質継手部に形成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製可撓管。
【請求項4】
成形回転軸上に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材を一定のピッチでもって螺旋巻きすると共に、この帯状補強材に後続して該帯状補強材よりも幅広い半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂製帯状材をその対向する側端部同士を接合させながら連続的に螺旋巻きすることにより、上記隣接する補強材部間の螺旋状間隔部にその一部を充填して上記帯状補強材を内周壁内に隙間なく埋設させると共に内周面を帯状補強材の内面に面一状に連続させ、且つ、外周面を全長に亘って平滑面に形成してなる長尺の可撓管主体を作製し、この可撓管主体を所望長さ毎に切断することを特徴とする合成樹脂製可撓管の製造方法。
【請求項5】
成形回転軸上に半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる帯状補強材を一定のピッチでもって螺旋巻きすると共に、この帯状補強材に後続して該帯状補強材よりも幅広い半溶融状態の軟質塩化ビニル樹脂製帯状材をその対向する側端部同士を重なるように接合させながら連続的に螺旋巻きすることにより、上記隣接する帯状補強材部間の螺旋状間隔部にその一部を充填して上記帯状補強材を内周壁内に隙間なく埋設させると共に内周面をこの帯状補強材の内面に面一状に連続させ、且つ、外周面を全長に亘って平滑面に形成してなる可撓管主体を作製し、さらに、この可撓管主体を形成しながら、この可撓管主体の所定長さ部分の外周面に、上記帯状補強材に対応させて半溶融状態の硬質塩化ビニル樹脂よりなる条材を螺旋状に巻着して補強条材を形成する工程と、この工程に引き続いて上記条材を幅広くしてその対向する側端面同士を接合、融着しながら可撓管主体上に螺旋巻きすることにより、所定長さの円筒状硬質外層を形成する工程とを交互に繰り返し行い、この円筒状硬質外層の長さ方向の中央部を順次切断することを特徴とする合成樹脂製可撓管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−127484(P2012−127484A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282052(P2010−282052)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000114994)エバック株式会社 (41)
【Fターム(参考)】