説明

合成油の水素化処理方法

【課題】 FT合成法により得られる合成油の中間留分を処理する場合であっても、中間留分の収率を十分維持しつつ中間留分の低温流動性を十分改善できる、合成油の水素化処理方法を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する合成油の水素化処理方法は、水素存在下、フィッシャー・トロプシュ合成法によって得られ、炭素数9〜21の炭化水素の含有率が90質量%以上である合成油と、水素化分解触媒とを接触させ、接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように合成油を水素化分解することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成油の水素化処理方法に関し、より詳しくはフィッシャー・トロプシュ合成法によって得られる合成油の水素化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、硫黄分及び芳香族炭化水素の含有量が低く、環境にやさしいクリーンな液体燃料が求められている。そこで、石油業界においては、クリーン燃料の製造方法として、一酸化炭素と水素を原料としたフィッシャー・トロプシュ合成法(以下、「FT合成法」と略す。)が検討されている。FT合成法によれば、パラフィン含有量に富み、かつ硫黄分を含まない液体燃料基材を製造することができるため、その期待は非常に大きい。
【0003】
しかし、FT合成法により得られる合成油(以下、「FT合成油」という場合もある。)はノルマルパラフィン含有量が高く、アルコールなどの含酸素化合物を含んでいるため、当該合成油をそのまま燃料として使用することは困難である。より具体的には、当該合成油は、自動車用ガソリンとして用いるためにはオクタン価が不十分であり、また、ディーゼル燃料として用いるためには低温流動性が不十分である。また、アルコールなどの含酸素化合物は燃料の酸化安定性に悪影響を及ぼす。そのため、FT合成油は、合成油中のノルマルパラフィンをイソパラフィンへ変換したり含酸素化合物を他の物質へ変換したりするための水素化処理が施された後、燃料基材として使用されるのが一般的である。
【0004】
具体的には、例えば、ディーゼル燃料基材、灯油基材、航空燃料基材などを製造する場合、FT合成油の重質なワックス分を水素化分解して得られるイソパラフィンに富む中間留分や、FT合成油の中間留分を水素化異性化して得られるパラフィン異性化度が高められた中間留分などを適宜混合することにより燃料基材の低温流動性を向上させることが行われる(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/020535号パンフレット
【特許文献2】フランス国特許公開第2826971号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近のディーゼル燃料製造の分野では従来にも増して製造コストに対する要求が厳しくなっており、その要求はFT合成法による燃料製造においても例外ではない。そのため、FT合成油からのディーゼル燃料基材の製造可能量をできるだけ高めることが重要となっている。
【0007】
FT合成油におけるディーゼル燃料基材源は、上述のように、重質なワックス分(特には、沸点360℃以上の留分)や中間留分(特には、沸点150〜360℃の留分)であるが、ワックス分を水素化分解して得られる燃料基材は流動性に優れるもののFT合成油におけるその製造可能量は限られており、また潤滑油などの用途に用いられることもあって、必ずしも十分な量の燃料基材を確保できるわけではない。また、上記特許文献2に記載の技術を利用しても、FT合成油の中間留分を水素化異性化するだけではディーゼル燃料基材に要求される低温流動性を達成することは困難であり、軽質化処理を伴う場合には中間留分の収率が大きく損なわれてしまう。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、FT合成法により得られる合成油の中間留分を処理する場合であっても、中間留分の収率を十分維持しつつ中間留分の低温流動性を十分改善できる、合成油の水素化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、特定留分を特定量含むFT合成油と、水素化分解触媒とを接触させてFT合成油の水素化分解を行う場合に、特定の炭化水素の含有率を指標として反応条件を設定することにより、中間留分の損失は十分抑制されているにもかかわらず得られる中間留分の曇り点が大きく低下することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の合成油の水素化処理方法は、水素存在下、フィッシャー・トロプシュ合成法によって得られ、炭素数9〜21の炭化水素の含有率が90質量%以上である合成油と、水素化分解触媒とを接触させ、接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように合成油を水素化分解することを特徴とする。
【0011】
本発明の合成油の水素化処理方法によれば、合成油から得られる中間留分の収率を十分維持しつつ中間留分の低温流動性を十分改善させることができる。更に、本発明の合成油の水素化処理方法によれば、アルコールなどの含酸素化合物も十分低減させることができる。また、本発明によれば、FT合成油の中間留分を水素化処理することのみによりディーゼル燃料基材として有用なものに改質することができるので、環境対応型ディーゼル燃料を経済性よく製造することが可能となる。
【0012】
本発明の合成油の水素化処理方法により上記効果が奏される理由については必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、上記組成を有するFT合成油を、炭素数8以下の炭化水素の含有率の増加量が上記範囲内となるように水素化分解した場合、中間留分収率の悪化原因である分解ナフサの生成は十分抑制されつつ、低温流動性の悪化原因である炭素数の大きいn−パラフィンは十分に分解・異性化されたためと考えられる。
【0013】
本発明の合成油の水素化処理方法においては、接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように合成油と水素化分解触媒とを接触させるときの反応温度を調節し合成油を水素化分解することが好ましい。
【0014】
本発明の合成油の水素化処理方法においては、合成油は、炭素数9〜14の炭化水素の含有率が70質量%以下のものであり、接触後の合成油における炭素数9〜14の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも2質量%以上大きく、且つ、接触後の合成油における炭素数15〜21の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも2質量%以上小さくなるように合成油を水素化分解することが好ましい。
【0015】
これにより、中間留分の収率は十分維持しつつ低温流動性を更に向上させることが可能となる。かかる効果が奏される理由としては、上記の条件を満たすように合成油を水素化分解することで、中間留分の水素化異性化が進行するとともに、炭素数15以上のノルマルパラフィンが分解されて炭素数9〜14の灯油留分に転換され、その結果中間留分の低温流動性が飛躍的に向上したためと推察される。
【0016】
また、本発明の合成油の水素化処理方法において、上記水素化分解触媒が、超安定化Y型ゼオライトと、シリカアルミナ、アルミナボリアおよびシリカジルコニアからなる群より選択される1種類以上と、を含有する担体、および、該担体上に担持された周期律表第VIII族に属する金属からなる群より選択される1種類以上の金属を含むものであることが好ましい。
【0017】
更に、本発明の合成油の水素化処理方法において、合成油と水素化分解触媒とを接触させるときの反応温度が200〜370℃、かつ、水素分圧が1.0〜5.0MPa、かつ、液空間速度が0.3〜3.5h−1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明よれば、FT合成法により得られる合成油の中間留分を処理する場合であっても、中間留分の収率を十分維持しつつ中間留分の低温流動性を十分改善できる、合成油の水素化処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の合成油の水素化処理方法は、水素存在下、フィッシャー・トロプシュ合成法によって得られ、炭素数9〜21の炭化水素の含有率が90質量%以上である合成油と、水素化分解触媒とを接触させ、接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように合成油を水素化分解することを特徴とする。
【0020】
本発明の合成油の水素化処理方法に供される合成油としては、フィッシャー・トロプシュ合成法からの生成油を分留して得られる、炭素数9〜21の炭化水素の含有率が90質量%以上である中間留分(例えば、沸点150〜360℃の留分)を用いることができる。本発明においては、炭素数9〜14の炭化水素の含有率が70質量%以下となるように分留された中間留分を用いることが好ましい。
【0021】
水素化分解触媒としては、例えば、固体酸を含んで構成される担体に、活性金属として周期律表第VIII族に属する金属を担持したものが挙げられる。
【0022】
好適な担体としては、超安定化Y型(USY)ゼオライト、シリカアルミナ、シリカジルコニア及びアルミナボリアの中から選ばれる1種類以上の固体酸を含んで構成されるものが挙げられる。更に、担体は、USYゼオライトと、シリカアルミナ、アルミナボリア及びシリカジルコニアの中から選ばれる1種類以上の固体酸とを含んで構成されるものであることがより好ましく、USYゼオライトとアルミナボリア、又は、USYゼオライトとアルミナボリアとを含んで構成されるものであることが更に好ましい。
【0023】
USYゼオライトは、Y型のゼオライトを水熱処理及び/又は酸処理により超安定化したものであり、Y型ゼオライトが本来有する20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる微細細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成されている。水素化分解触媒の担体としてUSYゼオライトを使用する場合、その平均粒子径に特に制限は無いが、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。また、USYゼオライトにおいて、シリカ/アルミナのモル比率(アルミナに対するシリカのモル比率;以下、「シリカ/アルミナ比」という。)は10〜200であると好ましく、15〜100であるとより好ましく、20〜60であるとさらにより好ましい。
【0024】
触媒担体は、上記固体酸とバインダーとを含む混合物を成形した後、焼成することにより製造することができる。固体酸の配合割合は、担体全量を基準として1〜70質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがより好ましい。また、担体がUSYゼオライトを含んで構成される場合、USYゼオライトの配合量は、担体全量を基準として0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。更に、担体がUSYゼオライト及びアルミナボリアを含んで構成される場合、USYゼオライトとアルミナボリアとの配合比(USYゼオライト/アルミナボリア)は、質量比で0.03〜1であることが好ましい。また、担体がUSYゼオライト及びシリカアルミナを含んで構成される場合、USYゼオライトとシリカアルミナとの配合比(USYゼオライト/シリカアルミナ)は、質量比で0.03〜1であることが好ましい。
【0025】
バインダーとしては、特に制限はないが、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシアが好ましく、アルミナがより好ましい。バインダーの配合量は、担体全量を基準として20〜98質量%であることが好ましく、30〜96質量%であることがより好ましい。
【0026】
混合物の焼成温度は、400〜550℃の範囲内であることが好ましく、470〜530℃の範囲内であることがより好ましく、490〜530℃の範囲内であることが更に好ましい。
【0027】
第VIII族の金属としては、具体的にはコバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらのうち、ニッケル、パラジウム及び白金の中から選ばれる金属を、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0028】
これらの金属は、含浸やイオン交換等の常法によって上述の担体に担持させることができる。担持する金属量は特に制限はないが、金属の合計量が担体に対して0.1〜3.0質量%であることが好ましい。
【0029】
本発明の合成油の水素化処理方法に用いる装置の構成は特に制限されず、1個の反応塔を備えるものであってもよく、あるいは、複数の反応塔が組み合わせられたものであってもよい。本発明においては、上述の触媒を充填した固定床流通式反応装置を用いて合成油の水素化分解を行うことが好ましい。
【0030】
合成油の水素化分解は、次のような反応条件下で行うことができる。水素分圧としては、0.5〜12MPaが挙げられるが、1.0〜5.0MPaが好ましい。合成油の液空間速度(LHSV)としては、0.1〜10.0h−1が挙げられるが、0.3〜3.5h−1が好ましい。水素/油比としては、特に制限はないが、50〜1000NL/Lが挙げられ、70〜800NL/Lが好ましい。
【0031】
なお、本明細書において、「LHSV(liquid hourly space velocity;液空間速度)」とは、触媒が充填されている触媒層の容量当たりの、標準状態(25℃、101325Pa)における原料油の体積流量のことをいい、単位「h−1」は時間(hour)の逆数を示す。また、水素/油比における水素容量の単位である「NL」は、正規状態(0℃、101325Pa)における水素容量(L)を示す。
【0032】
また、水素化分解における反応温度(触媒床重量平均温度)としては、180〜400℃が挙げられるが、200〜370℃が好ましく、250〜350℃がより好ましく、280〜350℃がさらにより好ましい。水素化分解における反応温度が370℃を越えると、中間留分の収率が極度に減少するだけでなく、生成物が着色し、燃料基材としての使用が制限されるため好ましくない。また、反応温度が200℃を下回ると、アルコール分が除去しきれずに残存するため好ましくない。
【0033】
また、本発明においては、接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように合成油と水素化分解触媒とを接触させるときの反応温度を調節し合成油を水素化分解することが好ましい。
【0034】
接触前の合成油及び接触後の合成油における、炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)、炭素数9〜21の炭化水素の含有率(質量%)、炭素数9〜14の炭化水素の含有率(質量%)、及び、炭素数14〜21の炭化水素の含有率(質量%)は、例えば、上記反応塔の入口及び出口でサンプリングしたものをガスクロマトグラフィー等、公知の方法により分析し、求めることができる。
【0035】
なお、本発明の合成油の水素化処理方法においては、上述の方法により接触前の合成油及び接触後の合成油における各炭素数の炭化水素の含有率を確認しながら、接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなる反応条件を予め決定し、この条件で水素化分解を行ってもよい。更に、上記の炭素数8以下の炭化水素の含有率条件に加えて、接触後の合成油における炭素数9〜14の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも2質量%以上大きく、且つ、接触後の合成油における炭素数15〜21の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも2質量%以上小さくなる反応条件を予め決定し、この条件で水素化分解を行ってもよい。
【0036】
上述の反応塔より流出した接触後の合成油(流体)は、例えば、気液分離槽で、未反応水素ガスや炭素数4以下の炭化水素からなる軽質炭化水素ガスと、炭素数5以上の炭化水素からなる液状の炭化水素組成油に分離される。
【0037】
分離された液状の炭化水素組成油は、更に分留されることにより、例えば、ガソリン基材、ディーゼル燃料基材、灯油基材、軽油基材、航空燃料基材などの燃料基材として利用される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
<触媒の調製>
(触媒1)
平均粒子径0.9μmのUSYゼオライト(シリカ/アルミナのモル比:37)、シリカアルミナ(シリカ/アルミナのモル比:14)及びアルミナバインダーを重量比3:57:40で混合混練し、これを直径約1.6mm、長さ約3mmの円柱状に成型した後、500℃で1時間焼成し担体を得た。この担体に、塩化白金酸水溶液を含浸し、白金を担持した。これを120℃で3時間乾燥し、次いで500℃で1時間焼成することで触媒1を得た。なお、白金の担持量は、担体に対して0.8質量%であった。
【0040】
(触媒2)
触媒1におけるシリカアルミナの代わりにアルミナボリアを用いたこと以外は、触媒1と同様にして、担体の成型・焼成、金属の担持、乾燥、焼成を行い、触媒2を調製した。
【0041】
(触媒3)
触媒1における塩化白金酸水溶液の代わりに、塩化白金酸水溶液及び塩化パラジウム水溶液を担体に含浸させ、白金及びパラジウムの担持量がそれぞれ担体に対して0.7質量%及び0.1質量%となるようにしたこと以外は、触媒1と同様にして、担体の成型・焼成、金属の担持、乾燥、焼成を行い、触媒3を調製した。
【0042】
<FT合成油の水素化処理>
(実施例1)
触媒1(150ml)を固定床の流通式反応器に充填し、原料として、FT合成法により得られた生成油を分留して得られた、炭素数9〜21(沸点150〜360℃)の炭化水素含有量が100質量%であり、炭素数9〜14(沸点150〜250℃)の炭化水素含有量が45質量%である合成油(炭素数9〜21のノルマルパラフィン含有量:90質量%、アルコール分含有量:5質量%、オレフィン分含有量:5質量%、(以上、原料全質量基準))(以下、「原料合成油」という場合もある。)を300ml/hの速度で供給して、水素気流下、下記の反応条件で水素化処理した。
【0043】
まず、原料である上記合成油に対して水素/油比340NL/Lで水素を塔頂より供給し、反応塔圧力が入口圧3.0MPaで一定となるように背圧弁を調節し、この条件にて接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が7質量%となるように反応温度(触媒床重量平均温度)を調節した。このときの反応温度は308℃であった。
【0044】
水素化処理後の合成油(反応生成物)のガスクロマトグラフィー測定を行い、かかる合成油中における、炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)、炭素数9〜21の炭化水素の含有率(質量%)、炭素数9〜14の炭化水素の含有率(質量%)及び炭素数15〜21の炭化水素の含有率(質量%)、並びに、アルコール分の含有率(質量%)を求めた。また、原料合成油についても同様の測定を行い、各成分の含有率(質量%)を求めた。
【0045】
更に、水素化処理後の合成油(反応生成物)を精密蒸留することにより、炭素数9〜21の炭化水素からなる留分(沸点150〜360℃の留分)を得、この曇り点を測定した。また、原料合成油を精密蒸留することにより、炭素数9〜21の炭化水素からなる留分(沸点150〜360℃の留分)を得、この曇り点も測定した。なお、曇り点の測定は自動流動点・曇り点試験器(田中科学機器製作株式会社製、MPC−101A)を用いて行った。
【0046】
上記の分析で得られた結果を表1に示す。なお、表中の各成分の含有率は合成油全量を基準とした値である。
【表1】



【0047】
(実施例2)
実施例1における反応温度308℃に代えて、接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が3質量%となるように反応温度を調整したこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、297℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
実施例1における反応温度308℃に代えて、接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素含有量が9質量%となるように反応温度を調整したこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、318℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
実施例1における触媒1の代わりに触媒2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、実施例1と同様に接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が7質量%となるように調整したところ308℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表1に示す。
【0050】
(実施例5)
実施例1における触媒1の代わりに触媒3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、実施例1と同様に得られた接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が7質量%となるように調整したところ308℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1における反応温度308℃に代えて、接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が1質量%となるように反応温度を調整したこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、270℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表2に示す。なお、表中の各成分の含有率は合成油全量を基準とした値である。
【0052】
【表2】



【0053】
(比較例2)
実施例1における反応温度308℃に代えて、接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が0質量%となるように反応温度を調整したこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、245℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表2に示す。
【0054】
(比較例3)
実施例1における反応温度308℃に代えて、接触後の合成油(反応生成物)中の炭素数8以下の炭化水素の含有率が12質量%となるように反応温度を調整したこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。なお、反応温度は、324℃であった。得られた接触後の合成油(反応生成物)について、実施例1と同様の分析を行った。得られた結果を表2に示す。
【0055】
表1に示されるように、実施例1〜5の水素化処理によれば、中間留分(C9〜C21)の収率を91%以上と高いレベルに維持しつつ中間留分(C9〜C21)の曇り点を15℃以上低下できることが確認された。このことから、本発明の合成油の水素化処理方法によれば、FT合成油から、曇り点が0℃以下の低温流動性に優れたディーゼル燃料基材を高収率で製造できることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素存在下、
フィッシャー・トロプシュ合成法によって得られ、炭素数9〜21の炭化水素の含有率が90質量%以上である合成油と、
水素化分解触媒と、を接触させ、
接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように前記合成油を水素化分解することを特徴とする合成油の水素化処理方法。
【請求項2】
接触後の合成油における炭素数8以下の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも3〜9質量%大きくなるように前記合成油と前記水素化分解触媒とを接触させるときの反応温度を調節し前記合成油を水素化分解することを特徴とする請求項1に記載の合成油の水素化処理方法。
【請求項3】
前記合成油は、炭素数9〜14の炭化水素の含有率が70質量%以下のものであり、
接触後の合成油における炭素数9〜14の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも2質量%以上大きく、且つ、接触後の合成油における炭素数15〜21の炭化水素の含有率(質量%)が接触前のものよりも2質量%以上小さくなるように前記合成油を水素化分解することを特徴とする請求項1又は2に記載の合成油の水素化処理方法。
【請求項4】
前記水素化分解触媒が、超安定化Y型ゼオライトと、シリカアルミナ、アルミナボリアおよびシリカジルコニアからなる群より選択される1種類以上と、を含有する担体、および、該担体上に担持された周期律表第VIII族に属する金属からなる群より選択される1種類以上の金属を含むものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の合成油の水素化処理方法。
【請求項5】
前記合成油と前記水素化分解触媒とを接触させるときの反応温度が200〜370℃、かつ、水素分圧が1.0〜5.0MPa、かつ、液空間速度が0.3〜3.5h−1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成油の水素化処理方法。


【公開番号】特開2007−211217(P2007−211217A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35638(P2006−35638)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】