説明

合成皮革製造用離型紙

【課題】製造が容易で、漆黒性を有する合成皮革製造用離型紙を提供する。
【解決手段】紙基材層と、前記紙基材層の上に設けられた電離放射線硬化樹脂層と、前記電離放射線硬化樹脂層の上に形成された剥離層とからなる合成皮革製造用離型紙であって、前記電離放射線硬化樹脂層は、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、平均粒子径1〜30μmのフェノール系粒子を10〜80質量%の範囲で含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革製造用離型紙に関し、より詳細にはマット調であり、製造が容易な合成皮革製造用離型紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成皮革として塩化ビニル系樹脂やポリウレタン樹脂を主原料としたものが広く使用されている。このような合成皮革は、離型紙を用いて製造されることが多い。例えば、ポリウレタンレザーを製造するには、離型紙上にペースト状のポリウレタン樹脂を塗布し、乾燥・固化した後に基布を貼合して離型紙から剥離する。離型紙に天然皮革と同様の絞り模様や他の凹凸を形成しておけば、得られる合成皮革の表面に良好な模様を付与することができる。同様の原理により、離型紙上にペースト状のポリウレタン樹脂を塗布して乾燥・固化した後、塩化ビニル発泡層を形成して基布と貼合し、離型紙から剥離してもよい。また、塩化ビニルレザーを製造する方法として、離型紙上に塩化ビニルゾルを塗布し、加熱・ゲル化した後、塩化ビニル発泡層を形成して基布と貼合し、離型紙から剥離する方法もある。
【0003】
このような離型紙として、合成皮革用離型紙の支持体としてJIS P−3001に基づく吸油度で200〜1000秒の顔料塗被紙を使用し、この顔料塗被紙にスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスのトルエンに対するゲル重量分率が80%以上のバインダーを塗工し、剥離剤層が、平均粒子径0.5〜40μmの範囲にある無機顔料を艶消し剤として含有し、かつ離型紙表面の王研式平滑度が100〜500秒の範囲にあることを特徴とする、合成皮革用離型紙がある(特許文献1)。艶消しタイプの合成皮革の表面形成に供される離型紙として、支持体にシリカなどの無機顔料を添加して剥離層を形成させたものは光沢度や平滑性が高く、得られる合成皮革の色調が淡く漆黒性が低い。しかしながら、上記構成によれば、合成皮革に高い漆黒性と均一性を付与することができるという。
【0004】
また、裏面に布を基材として貼り合わせたポリウレタン系合成皮革を製造するには、離型紙にポリウレタン樹脂を塗布および乾燥し、次いで前記布基材を貼り合わせるためにポリウレタン層上にイソシアネート基を官能基とする成分を含有する第1液とポリオールからなる第2液とからなるポリウレタン系2液型接着剤が使用される。この2液型接着剤は接着力が強く、ソファーなどの家具類や靴などの使用期間が長いものや使用の激しいものに多用されているが、上記工程において高い反応性を有するイソシアネート基が離型紙に移行し、工程用離型紙の剥離性が害され、生産性が低下する場合がある。このようなポリウレタン系2液型接着剤に対しても剥離が容易でかつ耐熱性に優れる離型紙として、紙と電離放射線硬化膜とからなるエンボス付き剥離紙がある(特許文献2)。該特許文献2では、前記硬化膜として、イソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイル基を有していて且つイソシアネート化合物と反応し得る(メタ)アクリル化合物と、(メタ)アクリロイル基を有しておらず且つイソシアネート基と反応し得る化合物との反応生成物であって、軟化点が40℃以上の電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものを使用している。実施例では、目止め層を設けた紙基材層に、上記電離放射線硬化性組成物を2度コーティングして電離放射線硬化膜を形成し、エンボス賦型性、耐熱性および繰り返し剥離性に優れるエンボス付き剥離紙を製造している。
【0005】
また、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とがこの順に積層され、かつエンボスを有するエンボス付き剥離紙もある(特許文献3)。特定の電離放射線硬化樹脂層を使用することで耐熱性、耐溶剤性、機械的強度に優れ、再使用が可能な離型紙を提供するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−328464号公報
【特許文献2】特開2005−186516号公報
【特許文献3】特開2009−101685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
合成皮革は、需要者の要求により、光沢のあるグロスタイプや光沢のないマットタイプなどが開発され、各種のエンボス柄も開発されている。例えば、黒色の合成皮革を製造する場合には、深みのある、いわゆる「漆黒」という色合いが要求される場合がある。特許文献1記載の合成皮革用工程剥離は、漆黒性と均一性を付与するため、特定の吸油度を有する支持体を使用し、剥離剤に特定の平均粒子径の艶消し剤を配合したものである。しかしながら、エンボス加工のためには、エンボスに対する賦形性が必須であるが、特許文献1記載の合成皮革用工程剥離には、エンボス加工に関する記載は存在しない。
【0008】
一方、表面にエンボス加工がなされた離型紙を作製する場合、離型紙の凹部を精度良く形成することは容易であるが、加工圧力が比較的小さくなりやすいために凸部を精度良く形成することは困難であり、このため離型紙を用いて作製された合成皮革のコントラスト(明暗の差)が十分でない場合がある。特に、特許文献2で示すように、紙基材層への剥離剤の浸透を防止するため予めシリカ入りアクリル樹脂などで目止め処理を行った紙基材層を使用すると、目止め処理に使用したシリカ等によってエンボスのコントラストが低減する場合がある。
【0009】
一方、特許文献3記載の離型紙は、紙基材層の上に電離放射線硬化樹脂層と剥離層として熱硬化シリコーンとを積層したものであり、シリカなどの粒子を配合した目止め層を使用せずに耐溶剤性を確保できるというものである。このため、マット調の剥離紙とするにはマット感のある紙基材層を使用する必要があるが、この離型紙は合成皮革に接触する側から順に、熱硬化シリコーン層からなる剥離層、電離放射線硬化樹脂層、および紙基材層とからなるため、たとえマット感のある紙基材層を使用しても「漆黒性」の確保には十分でない。
【0010】
また、特許文献1は、剥離層に特定の平均粒子径の艶消し剤を配合して漆黒性を確保するものであるが、特許文献3記載の剥離層にガラスなどの無機粒子を配合する場合には分散剤の配合が必要であり、かつ均一な分散には熟練を要するため安価かつ簡便な製造が困難な状況となっている。
【0011】
このような状況の下、本発明は、マット調であり、エンボス加工が可能であって、漆黒性を有し、かつその製造が容易な合成皮革製造用離型紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、合成皮革製造用離型紙について詳細に検討した結果、特定の粒子径のフェノール系粒子は、分散剤を使用せずに電離放射線硬化樹脂層に配合することができるため、合成皮革製造用離型紙を安価に製造でき、かつ製造工程を簡略化できること、また、電離放射線硬化樹脂層の調製には、紫外線などの電離放射線の照射が必要であるが、前記フェノール系粒子は紫外線を透過するために電離放射線硬化樹脂層を調製しうること、フェノール系粒子の配合量が電離放射線硬化性組成物100質量部に対して10〜80質量%含有させるとマット調の剥離紙となり、合成皮革の表面に漆黒性を表出しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明は、紙基材層と、前記紙基材層の上に設けられた電離放射線硬化樹脂層と、前記電離放射線硬化樹脂層の上に形成された剥離層とからなる合成皮革製造用離型紙であって、前記電離放射線硬化樹脂層は、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、平均粒子径1〜30μmのフェノール系粒子を10〜80質量%の範囲で含有することを特徴とする、合成皮革製造用離型紙を提供するものである。
【0014】
また本発明は、前記電離放射線硬化樹脂層は、前記フェノール系粒子を配合した電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである、請求項1または2記載の合成皮革製造用離型紙を提供するものである。
【0015】
また本発明は、上記合成皮革製造用離型紙であって、前記剥離層側にエンボスが形成されることを特徴とする、エンボス付き離型紙を提供するものである。
更に本発明は、上記合成皮革製造用離型紙、またはエンボス付き離型紙を使用して製造された合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の合成皮革製造用離型紙は、フェノール系粒子を含有する電離放射線硬化樹脂層を使用することで漆黒性を表出することができる。しかも、フェノール系粒子は、分散剤を使用することなく均一に分散できるため、電離放射線硬化樹脂層、ひいては合成皮革製造用離型紙の製造工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、紙基材層と、電離放射線硬化樹脂層と、熱硬化シリコーン層とが積層された、本発明の合成皮革製造用離型紙を説明する図である。
【図2】図2は、実施例1で製造した合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(720倍)である。
【図3】図3は、実施例4で製造した合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(290倍)である。
【図4】図4は、実施例4で製造した合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(720倍)である。
【図5】図5は、実施例4で製造した合成皮革製造用離型紙を使用して製造した合成皮革の表面の拡大図(290倍)である。
【図6】図6は、実施例4で製造した合成皮革製造用離型紙を使用して製造した合成皮革の表面の拡大図(720倍)である。
【図7】図7は、比較例2で製造した合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(720倍)である。
【図8】図8は、比較例4で製造した合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(290倍)である。
【図9】図9は、比較例4で製造した合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(720倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一は、紙基材層と、前記紙基材層の上に設けられた電離放射線硬化樹脂層と、前記電離放射線硬化樹脂層の上に形成された剥離層とからなる合成皮革製造用離型紙であって、前記電離放射線硬化樹脂層は、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、平均粒子径1〜30μmのフェノール系粒子を10〜80質量%の範囲で含有することを特徴とする、合成皮革製造用離型紙である。
【0019】
また、本発明の第二は、上記合成皮革製造用離型紙であって、前記剥離層側にエンボスが形成されることを特徴とする、エンボス付き離型紙である。
また、本発明の第三は、上記合成皮革製造用離型紙、またはエンボス付き離型紙を使用して製造された合成皮革である。本発明の好適な態様の一例を示す図1を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0020】
(1)合成皮革製造用離型紙およびエンボス付き剥離紙
本発明の合成皮革製造用離型紙は、図1に示すように、製造される合成皮革側から順に、熱硬化シリコーン層(10)と、電離放射線硬化樹脂層(20)と紙基材層(30)とが積層されたものであり、本発明のエンボス付き剥離紙は、熱硬化シリコーン層(10)側からエンボスが形成されたものである。なお、紙基材層(30)と電離放射線硬化樹脂層(20)との間に熱可塑性樹脂からなる中間層を積層するものであってもよい。このような中間層によって紙基材層(10)と電離放射線硬化樹脂層(20)との接着性が向上する場合がある。
【0021】
前記電離放射線硬化樹脂層(20)は、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、平均粒子径1〜30μmのフェノール系粒子を10〜80質量%の範囲で配合されたものであり、前記電離放射線硬化樹脂層のフェノール系粒子の凹凸が剥離層(10)の表面に表出し、マット調となる。
【0022】
(2)紙基材層
本発明の合成皮革製造用離型紙やエンボス付き剥離紙で使用する紙基材層は、電離放射線硬化樹脂層(20)および熱硬化シリコーン層(10)を積層する工程に耐える強度を有し、合成皮革の塗工・形成時の表面にマット調や凹凸模様を賦型する際の耐熱性、耐薬品性などの性質を有するものである。クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。合成皮革の加工適性のためには、耐久性、耐熱性に優れる点で天然パルプからなる紙を使用することが好ましい。
【0023】
本発明において、基材層として使用する紙としては、秤量15〜300g/m2、好ましくは100〜180g/m2である。
なお、本発明で使用する紙基材層としては、例えば一般的な、クレーコート紙、微塗工印刷用紙、塗工印刷用紙、樹脂コート紙、加工原紙、剥離原紙、両面コート剥離原紙など、予め目止め層などが形成された市販品を使用してもよい。
【0024】
(3)フェノール系粒子
本発明では、電離放射線硬化樹脂層にフェノール系粒子が配合される点に特徴がある。配合されるフェノール系粒子は、平均粒子径1〜30μm、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜15μm、特に好ましくは5〜12μmである。
【0025】
電離放射線硬化樹脂層は、電離放射線硬化性組成物に上記フェノール系粒子を分散させた後に紫外線などの電離放射線を照射して硬化させるため、電離放射線硬化性組成物に含まれるフェノール系粒子が電離放射線を透過する必要がある。本発明で使用するフェノール系粒子は、電離放射線を透過性に優れ、電離放射線硬化性組成物を硬化させて電離放射線硬化樹脂層を形成することができる。なお、このような電離放射線に対する透過性の条件を満たす粒子としてはガラスなどの無機粒子も存在する。しかしながら、ガラス粒子は電離放射線硬化性組成物への分散が困難であり、分散剤を配合する必要がある。しかも均一分散には熟練を要し、粒子を電離放射線硬化性組成物へ混練する特別の工程が必要であった。しかしながら本発明で使用するフェノール系粒子は、分散剤を使用することなく電離放射線硬化性組成物中に粒子を分散させることができるため、製造工程を簡略化することができ、かつマット調の表出にきわめて優れる事が判明した。
【0026】
本発明で使用するフェノール系粒子の平均粒子径は、前記したように1〜30μmであることが好ましい。この範囲で電離放射線硬化性組成物に対する分散性に優れ、かつ漆黒のマット調の離型紙を形成することができるからである。なお、本願明細書において、「平均粒子径」とは、フェノール粒子を走査型電子顕微鏡で任意の倍率で観察・写真撮影し、その写真から、無作為に500個の粒子を選び、デジタルノギスを用いて各粒子の長径を測長し、その数平均値を平均粒子径とする。また、使用するフェノール系粒子の形状は、フェノール系粒子の真球度(短径/長径)が1である真円である場合に限定されないが、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.9以上である。なお、上記真球度は、フェノール系粒子の平均真球度である。
【0027】
更に、フェノール系粒子の粒度分布も、単分散に限定されるものでもない。粒度分布の変動係数は、0.65以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下である。この範囲で、電離放射線硬化性組成物における分散性に優れるからである。なお、粒度分布の変動係数は、粒子径の標準偏差σを平均値で割り、百分率で表した数値である。
【0028】
本発明で使用するフェノール系粒子は、電離放射線硬化樹脂層に配合されて合成皮革にマット調を形成するにたる耐熱性を有する必要がある。本発明で使用するフェノール系粒子の融点は130以上、より好ましくは150〜300℃である。このような耐熱性を担保するため、フェノール系粒子の重量平均分子量は、5,000〜20,000である事が好ましく、より好ましくは7,000〜15,000である。なお、内部架橋を形成するものであってもよい。
【0029】
このようなフェノール系粒子としては、例えば以下の方法で調製されたものを好適に使用することができる。
本発明で使用するフェノール系粒子としては、フェノール類とアルデヒド類とを付加縮合反応させて得ることができる。
【0030】
フェノール類としては、芳香族環に1または2以上のフェノール性水酸基を有するものであればよく、さらには水酸基以外の置換基を有していてもよい。例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール、混合クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1価フェノール置換体、ヒドロキシ基と共にメチロール基が付加されたヒドロキシメチルフェノール、ヒドロキシメチルハイドロキノン、ヒドロキシメチルレゾルシン、ヒドロキシメチルキシレノール、ヒドロキシメチルピロガロール、および1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類が挙げられる。好ましくは、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシンである。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。フェノール類は1種であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、アルデヒド類としては、特に制限されるものではないが、たとえばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、テレフタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、フルフラール、トリオキサン、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテル等が挙げられる。好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ポリオキシメチレン、アセトアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテルなどを挙げることができる。アルデヒド類は1種であってもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
フェノール類とアルデヒド類との仕込み量は、理論的には1:1であるが、使用する触媒や反応効率を考慮して、配合量を適宜変更することができる。なお、アルデヒド類量を多くするとフェノール類に更にアルデヒド類が付加された化合物が生成するため、この付加された官能基により内部架橋などを形成することができる。
【0033】
本発明では、塩酸、リン酸、硫酸等の酸性触媒を使用し、またはアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアなどの塩基性触媒を使用し、付加縮合反応を行い、フェノール系粒子を製造することができる。必要に応じて、乳化剤を配合して乳化重合を行ってもよい。反応温度は、使用する触媒は原料の仕込み量に応じて適宜選択することができ、10〜200℃である。更に、反応液に、他の成分を配合してもよい。例えば、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩などを配合すると、平均粒子径が20μm以下のフェノール系粒子を得ることができる。
【0034】
本発明では、アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比を、0.9以下となるように選択し、水性媒体中で2.0mol/L以上の濃度の塩酸、リン酸、硫酸等の酸性触媒、および水溶性の多糖類誘導体などの保護コロイド剤の存在下に行なうことが好ましい。反応液には、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アラビアゴム、アカシア、グアーガム、ローカストビーンガム等の水溶性多糖類誘導体を主成分とする天然糊料などのコロイド剤を、固形分重量でフェノール類の使用量の0.01〜5重量%の範囲で添加すると、フェノール系粒子の平均粒径を20μm以下とすることができる。なお、水性媒体としては、水または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を挙げることができ、水溶媒を好ましく使用することができる。なお、この場合の反応温度は、10〜60℃である。反応が進行するにつれ、反応液は次第に白濁化(懸濁化)し、粒状フェノール樹脂が形成され、フェノール系粒子が析出するため、得られたフェノール系粒子を濾過や圧搾などにより単離し、水などで洗浄すれば、残存モノマーの少ない、平均粒子径が20μm以下のフェノール系粒子を得ることができる。
【0035】
また、フェノール類とアルデヒド類との反応として、アミノ水素を少なくとも2個以上含有するアルキルアミン化合物触媒、および乳化剤を使用する場合は、アルデヒド類の使用量をフェノール類1モルに対して、0.6〜3.0モル、好ましくは1.1〜1.8モルの範囲とする。前記アミノ水素を少なくとも2個以上含有するアルキルアミン化合物触媒としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−(2−アミノエチル)プロパノールアミンの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。また、乳化剤としてヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース−2−ハイドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドエーテルを使用し温度100〜200℃で反応させると、粒子径が2〜20μmのフェノール系粒子を得ることができる。
【0036】
さらに、本発明で使用するフェノール系粒子としては、上記した条件を満たすものであれば、フェノール系化合物とアルデヒド類との反応生成物からなる、熱溶融性および熱硬化性を有する粒状のフェノール樹脂のほか、このようなフェノール樹脂を80質量%以上含有することを条件に、フェノール樹脂を他の化合物や樹脂などで変性してなる変性フェノール樹脂粒子であってもよい。このような変性フェノール樹脂粒子として、特開2004−149696号のロジン変性フェノール樹脂などがある。
【0037】
本発明では、フェノール系粒子として市販品を使用してもよい。このようなフェノール系粒子として、エア・ウォーター・ベルパール株式会社の「ベルパール マクロ−スフェア シリーズ」のR100、R200、R800や、住友ベークライト株式会社製のロジン変性フェノール樹脂などを使用することができる。
【0038】
(4)電離放射線硬化樹脂層
本発明で使用する電離放射線硬化樹脂層は、電離放射線硬化樹脂層(乾燥)に前記フェノール系粒子を10〜80質量%、好ましくは15〜70質量%、より好ましくは20〜65質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で配合したものである。電離放射線硬化性組成物に上記範囲でフェノール系粒子を配合し、熱硬化および電離放射線で硬化させると電離放射線硬化樹脂層となる。フェノール系粒子の配合量が10質量%を下回るとマット調が弱く、一方、80質量%を超えると、電離放射線硬化性組成物への分散が容易でなく、かつ電離放射線硬化樹脂層の機械的強度が低下する場合がある。
【0039】
合成皮革製造用離型紙による合成皮革の製造は温度40〜150℃で行われ、エンボス付き離型紙として使用される場合には、上記度範囲でエンボス形状が維持される耐熱性や、電離放射線硬化樹脂層形成時に原反の巻き取りが容易であるようにタックフリー性や、フェノール系粒子を均一に分散しうる分散性も要求される。本発明では、電離放射線硬化樹脂層を構成する電離放射線硬化性組成物として、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)からなる電離放射線硬化性組成物、または(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)からなる電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものであり、当該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。また、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の分散比(Mw/Mn)は1.0〜5.0、より好ましくは1.5〜4.0、特に好ましくは1.9〜3.5であり、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。なお、本発明において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算で求めた値である。
【0040】
このような(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)としては、例えば(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)とを含むエポキシ基含有共重合体(C)に、(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【0041】
本発明において(メタ)アクリレート系単量体単位(A)としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンタニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(アクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチル−2'−(メタクリロイルオキシ)エチルエーテル、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(アクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、2−{2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルオキシ}−1−{2'−(メタクリロイルオキシ)エチルオキシ}エタン、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどがある。これらの中でも、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレートなどを好適に使用することができる。
【0042】
また、エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)としては、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレートなどがある。
【0043】
上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)とエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)との配合比は、単量体単位の合計質量中に上記エポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)を5〜95質量%となるように配合することである。5質量%を下回ると、十分な二重結合当量を確保することができず、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の硬化後の耐溶剤性、耐擦過性が損なわれる場合がある。一方、95質量%を超えるとTgが低くなりすぎることによる未硬化膜のタック感が生じ、賦型性が損なわれる場合がある。
【0044】
また、本発明で使用する電離放射線硬化性組成物は、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルおよび他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)に該当し、グリシジル(メタ)アクリル酸エステルはエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に該当する。したがって、他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記(メタ)アクリレート系単量体単位(A)の中から適宜選択することができる。
【0045】
反応は、上記単量体単位をラジカル開始剤の存在下で共重合して得られる。ラジカル開始剤としては特に制限されるものではないが、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾビスメチルブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル等のアゾ化合物;過酸化水素;ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、m−トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチル−ジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのパーオキサイド;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、塩素酸ソーダ等の過酸化物、あるいはこれら過酸化物と還元剤との組合せによるレドツクス系開始剤等一般的なラジカル開始剤を重合方法に合わせて適宜採択し得る。上記重合開始剤の使用量は、その種類や重合条件で異なるが、上記単量体100質量部に対して通常、0.1〜10質量部である。
【0046】
重合温度は、重合開始剤の種類によるが、通常40〜180℃、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。また、反応圧は、大気圧でもよく、加圧条件でもよく、通常0.15〜0.5MPである。なお、重合時間は、3〜15時間である。
【0047】
上記のような単量体単位(A)、単量体単位(B)を溶液重合により重合する。溶液重合に使用しうる溶媒としては、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素化合物;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、ジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル化合物などの有機溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル等の公知の溶剤が使用できる。中でも、メチルエチルケトン、メタノール、トルエン、エチルベンゼン、酢酸ブチル等を用いることが好ましい。このような溶媒は1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
反応溶媒中の単量体濃度は10〜80質量%が好ましい。単量体濃度が10重量%より小さいと十分な反応速度が得られないことがあり、80質量%より高いと反応中にゲル化物が生じる恐れがある。
【0049】
十分な反応速度を得るために、本反応は触媒を用いて行うのが好ましい。触媒としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができるが、反応速度の面からホスフィン類が好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0050】
これらの触媒の量はエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に対して、通常、0.1〜10質量%である。触媒量がエポキシ基含有(メタ)アクリレート系単量体単位(B)に対して0.1重量%より少ない場合には十分な反応速度が得られないことがあり、10質量%より多く加えると生成した樹脂の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0051】
反応中のゲル化物の生成を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルなどのN−オキシラジカル系化合物;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−N,N−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルカテコール、4,4'−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物;フェノチアジン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン化合物;1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒドロキシルアミン系化合物;ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノンなどのキノン系化合物;塩化第一鉄、ジメチルジチオカルバミン酸銅などの銅化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの重合禁止剤の量は反応液全体に対して1〜10000ppmであるのが好ましい。
【0052】
次いで、得られた共重合体(C)に(メタ)アクリル酸を反応させると(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)、(II)を得ることができる。(メタ)アクリル酸、より好ましくはアクリル酸で変性することで(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体に二重結合を導入することができる。本発明で使用する(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)は電離放射線硬化膜をなすものであり、硬化によって耐溶媒性、耐熱性などを確保するため、二重結合当量が0.5〜4.5meq/gであることが好ましく、より好ましくは0.5〜4.0meq/g、特に好ましくは0.7〜3.6meq/gである。したがって、(メタ)アクリル酸は、二重結合当量が上記範囲となるように共重合体(C)と反応させるとよい。
【0053】
共重合体(C)と(メタ)アクリル酸との反応は、溶液中で3級アミン触媒、4級アンモニウム塩触媒、3級ホスフィン触媒、4級ホフフィン塩触媒、有機錫化合物触媒の存在下で行うことが好ましい。具体的には、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン類、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンなどのアミン類、ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどのスルフィド類などを用いることができる。
【0054】
上記反応時間、反応温度は、選択した溶媒や反応圧力などによって異なるが、圧力が大気圧〜0.2MPaで、通常、温度50〜160℃、反応時間は3〜50時間である。
本発明の電離放射線硬化性組成物は、重量平均分子量(Mw)が5,000〜200,000であり、分散比(Mw/Mn)が1.0〜5.0であり、ガラス転移点温度(Tg)が40〜150℃の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)を含む。(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)のTgが40℃より低いと、エンボス加工時に溶融しエンボス賦型性が不良となり、または未硬化の膜にタックが発生し、シートの巻き取りが損なわれる場合がある。一方、150℃を超えると、エンボス押し込み時に極端な高温をかける必要があり、また硬化後の可撓性が損なわれる場合がある。なお、本発明に規定するTgの測定は、後記する実施例に記載する方法で測定するものとする。また、150℃を超えると賦型が困難となる場合がある。なお、(メタ)アクリル酸エステル35〜80質量部、グリシジル(メタ)アクリル酸エステル20〜60質量部、他の(メタ)アクリル酸エステル0〜30質量部からなる共重合体に、(メタ)アクリル酸を10〜30質量部反応させてなる(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)は、重量平均分子量(Mw)やTgの制限はないが、エンボス付き離型紙として成型するには、ガラス転移温度が40〜150℃であることが好ましく、より好ましくは65〜120℃である。Tgは重量平均分子量(Mw)や二重結合当量と相関するため、上記ガラス転移温度を満たすように二重結合を含め、かつ重量平均分子量(Mw)を調製すればよい。好ましくは5,000〜200,000、より好ましくは15,000〜100,000、特に好ましくは15,000〜70,000である。5,000を下回ると、耐溶剤性や強靭性に劣る場合があり、一方、200,000を超えると樹脂粘度が高くなり、取り扱いが困難となる場合がある。また、ガラス転移点温度(Tg)は40〜150℃、より好ましくは65〜120℃、特に好ましくは65〜90℃である。この範囲であれば、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(II)を硬化させた後に、耐溶剤性、耐擦過性に優れ、かつ未硬化膜のタック感がなく、賦型性に優れるからである。
【0055】
本発明で用いられる電離放射線硬化性組成物は、上記(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)、(II)のみからなるものであってもよい。組成物とは2種以上の物質が配合されたものであるが、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体(I)の分散比から明らかなように、異なる分子量の(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体が含まれているため、本願では(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体のみからなる場合も電離放射線硬化性組成物と称する。一方、本発明で使用する電離放射線硬化性組成物には、更に光重合開始剤、その他を配合してもよい。
【0056】
電離放射線硬化性組成物に配合しうる光重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンなどがある。光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して、1〜10質量部である。
【0057】
更に、該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体の硬化特性を改質するために、電離放射線硬化性組成物に任意成分として他の樹脂、シリコーン化合物、反応性モノマー、他の光硬化性重合体などをその特性を害しない範囲で含有させてもよい。
【0058】
他の樹脂としては、メタクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどがあり、反応性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどがある。
【0059】
光硬化性重合体としては、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーがある。配合量は、該(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとは、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するもので、例えば、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸のエチレンオキサイド変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド変性トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ウレタンアクリレートなどがある。これらは、2種以上を組み合わせて配合することもできる。
【0060】
なお、電離放射線硬化性組成物としては、市販品を使用することもできる。このような市販品としては、東亞合成株式会社製、商品名「LP−09」などがある。
本発明で使用する電離放射線硬化樹脂層は、上記電離放射線硬化性組成物に前記したフェノール系粒子を分散してフェノール系粒子含有電離放射線硬化性組成物を調製し、これを紙基材層に塗工することができ、乾燥および加熱して乾燥炉で溶剤を蒸発させてフェノール系粒子含有電離放射線硬化性組成物を熱硬化させることができる。なお、紫外線や電子線などの電離放射線を照射することで電離放射線硬化性組成物を硬化させることができる。
【0061】
電離放射線硬化樹脂層の厚さは、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは3〜20μmである。1μmより薄いと微細な賦型性の転写が悪くなり、一方、50μmを超えると樹脂の硬化性が悪くなる場合がある。
【0062】
(5)熱硬化シリコーン層
本発明では、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンおよび白金系硬化触媒からなる熱硬化性シリコーン組成物を熱硬化して形成した熱硬化シリコーン層を好適に使用することができる。なお、このような熱硬化性シリコーン組成物としては、市販品を使用してもよく、例えば、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの混合物からなる付加重合型シリコーン材料の主剤(信越化学工業株式会社製、KS−3603)に白金系硬化触媒からなる硬化剤(信越化学工業株式会社製、CAT−PL−50T)を混合して調製することができる。また、信越化学工業株式会社製、商品名「X−62−9214」も好適に使用することができる。
【0063】
上記熱硬化性シリコーン組成物は、常温では固体状態であるが、加工時には加熱により液体状態に変化する材料である。本発明で使用する熱硬化性シリコーン組成物は、エンボス加工により形成した微細凹凸パターンを固定すると共に、強度等の充分な皮膜物性を得るために硬化性を有する。
【0064】
上記熱硬化性シリコーン層は、前記熱硬化性シリコーン組成物の塗布、乾燥加熱によって調製でき、形成される前記熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜20μmの範囲が好ましい。
【0065】
(6)合成皮革製造用離型紙の製造方法
本発明の合成皮革製造用離型紙は、紙基材層上にフェノール系粒子含有電離放射線硬化性組成物を塗工し、この組成物を乾燥および熱硬化させ、次いで、熱硬化した電離放射線硬化性組成物上に熱硬化性シリコーン組成物を塗工し、加熱乾燥して熱硬化シリコーン膜を形成し、前記熱硬化シリコーン膜側から電離放射線処理して前記した熱硬化電離放射線性組成物を硬化して製造することができる。
【0066】
フェノール系粒子含有電離放射線硬化性組成物は、予め光重合開始剤が配合された電離放射線硬化性組成物を溶媒で希釈し、これにフェノール系粒子を撹拌しつつ添加して調製することができる。
【0067】
溶媒で希釈する場合は、(メタ)アクリロイル基含有アクリル系共重合体100質量部に対して10〜1000質量部、より好ましくは100〜700質量部の溶剤で希釈することができる。この範囲で、フェノール系粒子を沈降することなく分散でき、かつ塗工に適正な粘度、例えば、25℃において10〜3000mPa・秒の粘度を付与するとともに、これを乾燥する工程においてシリコーン化合物の適正な表面への移行を可能にする。
【0068】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒などが用いられる。本発明で使用するフェノール系粒子は、上記電離放射線硬化性組成物に対する親和性に優れ、沈降することなく組成物中に分散される。
【0069】
フェノール系粒子含有電離放射線硬化性組成物は、ダイレクトグラビアコート、リバースグラビアコート、グラビアオフセットコート、マイクログラビアコート、ダイレクトロールコート、リバースロールコート、カーテンコート、ナイフコート、エアナイフコート、バーコート、ダイコート、スプレーコートなどの公知の方法で紙基材層上に塗工することができる。これを紙基材層上に塗工し、温度90〜130℃で乾燥および加熱して、乾燥炉で溶剤を蒸発させて電離放射線硬化性組成物を熱硬化させる。この温度は、電離放射線硬化性組成物の軟化点より高く、かつ電離放射線硬化性組成物が溶融する温度より低い範囲である。
【0070】
ついで、この熱硬化電離放射線硬化性組成物の上に熱硬化シリコーンを塗工し、温度90〜130℃で加熱乾燥し、乾燥炉内で硬化し熱硬化シリコーン膜を形成させる。
ついで、熱硬化シリコーン膜の側から紫外線あるいは電子線を照射し、前記熱硬化電離放射線硬化性組成物を硬化させ電離放射線硬化樹脂層とする。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプなどが用いられる。電子線の照射方式としては、スキャンニング方式、カーテンビーム方式、ブロードビーム方式などが用いられ、電子線の加速電圧は、50〜300kVが適当である。
【0071】
本発明の合成皮革製造用離型紙において電離放射線硬化樹脂層の厚さは、1〜50μmであり、熱硬化シリコーン層の厚みは0.01〜20μmである。電離放射線硬化樹脂層にフェノール系粒子を配合すると、フェノール系粒子による凹凸が剥離層の表面に表出され、合成皮革製造用離型紙をマット調にすることができる。
【0072】
また、エンボス付き離型紙を調製する場合には、電離放射線硬化処理の前にエンボス加工を行い、ついで電離放射線硬化処理を行えばよい。エンボス加工は、搬送速度1〜20m/min、版温度:100〜160℃、線圧:5〜400kgf/cmでエンボスを上記熱硬化シリコーン層側に形成する。エンボス加工前に、電離放射線硬化性組成物を熱硬化させることで、熱硬化性シリコーン組成物の塗工性を改良でき、かつエンボス加工後に電離放射線硬化させることでエンボス加工の賦型性を確保できる。これにより、マット調かつエンボスを有する離型紙を調製することができる。
【0073】
なお、本発明のエンボス付き剥離紙を調製するには、エンボス前の厚さは、30〜300μmである。厚さが30μmを下回ると賦型性が低下したり、製造工程で巻き取りの際に切断しやすくなるなどのライン適性が低下する場合がある。一方、300μmを超えると、エンボス付き剥離紙の幅カールが大きくなり、加工性が低下する場合がある。
【0074】
(7)合成皮革の製造方法
本発明の合成皮革製造用離型紙やエンボス付き剥離紙を用いて、従来の離型紙を使用すると同様にして合成皮革を製造することができる。
【0075】
まず、合成皮革製造用離型紙やエンボス付き剥離紙の熱硬化シリコーン層上に合成皮革用の樹脂組成物を塗布する。熱硬化シリコーン層上に塗布された樹脂層には、熱硬化シリコーン層の表面のマット調やエンボス柄が形成されている。これに基布(例えば、織布、不織布等)を貼り合わせ、樹脂層を乾燥し冷却した後、離型紙を剥離すれば合成皮革を得ることができる。上記の合成皮革用の樹脂組成物には、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等の樹脂を用いることができる。この樹脂組成物の塗布方法としては、ナイフコート、ロールコート、グラビアコート等の従来公知の塗布方法を挙げることができる。このような本発明の合成皮革製造用離型紙やエンボス付き剥離紙を用いた合成皮革の製造では、高温下で行なわれる塩化ビニル系レザー製造の場合においても、紙基材層と電離放射線硬化樹脂層との間における剥離が防止され、耐熱性に優れ、かつ機械的強度の高い電離放射線硬化樹脂層の存在および剥離性に優れる熱硬化シリコーン層の存在により繰り返し安定生産が可能となる。
【実施例】
【0076】
次に、具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
坪量が157g/m2の紙基材層(王子製紙株式会社製、商品名「OK工程紙」)に、電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部とフェノール系粒子(エア・ウォーター・ベルパール株式会社製、商品名「ベルパール R200」、平均粒子径約6.8μm)40質量部に、全量が200質量部となるように溶剤を加えて混合してなる含フェノール系粒子紫外線硬化組成溶液をメイヤーバー番手:#14を用いて塗工し、130℃で30秒の条件で加熱乾燥させ、この層を熱硬化させ、熱硬化組成物膜を得た。
【0077】
得られた熱硬化組成物膜上に熱硬化シリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「X−62−9214」)をメイヤーバー番手:#8を用いて塗膜厚さが乾燥後0.4g/m2となるように塗工し、同じく130℃で30秒の条件で加熱乾燥させ、シリコーン層を熱硬化させた。この合成皮革製造用離型紙の層構成は、OK工程紙/R200+LP−09/X−62−9214となる。
【0078】
ついで出力120W/cmの高圧水銀灯を用い、600mJ/cm2の紫外線照射を行い、前記熱硬化組成物膜を硬化させ、合成皮革製造用離型紙を得た。この合成皮革製造用離型紙の剥離層の拡大図(倍率720倍)を図2に示す。フェノール粒子は一部凝集して海島構造を形成するが、沈降することなく分散していた。なお、本明細書における表面拡大図は、全て株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡VK−9510を用いて観察したものである。
【0079】
また、上記乾燥塗膜作製後、搬送速度:1m/min、版温度:130℃、線圧:161kgf/cmで幾何学的なエンボス模様を有するエンボス版(大日本印刷株式会社製、柄名:1213)でエンボス加工を行い、その後、出力120W/cmの高圧水銀灯を用い、600mJ/cm2の紫外線照射を行い、前記熱硬化組成物膜を硬化させ、合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。
【0080】
更に、R200の配合量をそれぞれ10質量部、17質量部、27質量部、32質量部、60質量部、86質量部、107質量部に変更して、上記と同様にして合成皮革製造用エンボス離型紙を作製した。
【0081】
得られた合成皮革製造用エンボス離型紙につき、下記方法でグロス値、剥離性、フェノール粒子の混和性を評価した。なお、グロス値は、剥離性試験の際に得られた合成皮革の表面でも同様に評価した。結果を表2に示す。
【0082】
(測定方法)
(i)グロス値
株式会社堀場製作所製光沢度計IG−320によって、グロス値(60°反射)を評価した。
【0083】
(ii)剥離性
剥離性は、表1に示す組成の無黄変型カーボネート系ポリウレタン樹脂組成物を調製し、実験例で得た離型紙に乾燥厚み坪量約36g/cm2になるようにメイヤーバー番手:#18を用いて塗工し、60℃で300秒の条件で加熱乾燥させ、この層を熱硬化させ、熱硬化組成物膜を得た。そして、この熱硬化組成物膜上に同上のポリウレタン樹脂組成物を上と同じく塗布し、この層を接着層とし、基布を貼り付け、ポリウレタン表皮層を有する基布を形成した。その後、70℃で600秒の条件でこれを加熱乾燥させた後に、離型紙からポリウレタン表皮層を有する基布を剥離させ、合成皮革とした。そして、その表面を観察した。
なお、剥離性は、○は粒子の転移が全く見られなかったもの、△はウレタン皮膜が剥がれるが、一部に粒子の転移が観察されたもの、×はウレタン皮膜が剥がれなかったものを意味する。
【0084】
(iii)混和性
含フェノール系粒子紫外線硬化組成溶液を調製する際の、フェノール系粒子の混和性を評価した。○は、分散剤を使用せずに溶液中で均一に混和できた場合、×は、分散剤を使用せずに均一に混和できず、塗工中に大部分の粒子が沈降してしまった場合を示す。
【0085】
(実施例2)
電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部に対しフェノール系粒子(エア・ウォーター・ベルパール株式会社製、商品名「ベルパール R800」、平均粒子径約23μm)を使用し、その配合量をそれぞれ10質量部、17質量部、27質量部、40質量部、60質量部、74質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作して合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。この合成皮革製造用エンボス離型紙の層構成は、OK工程紙/R800+LP−09/X−62−9214となる。
【0086】
この合成皮革製造用エンボス離型紙について、実施例1と同様にしてグロス値、剥離性、混和性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例3)
電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部に対しフェノール系粒子(エア・ウォーター・ベルパール株式会社製、商品名「ベルパール R100」、平均粒子径約1.4μm)を使用し、その配合量をそれぞれ10質量部、17質量部、27質量部、40質量部、60質量部、74質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作して合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。この合成皮革製造用エンボス離型紙の層構成は、OK工程紙/R100+LP−09/X−62−9214となる。
【0087】
この合成皮革製造用エンボス離型紙について、実施例1と同様にしてグロス値、剥離性、混和性を評価した。結果を表4に示す。
(実施例4)
坪量が157g/m2の紙基材層(王子製紙株式会社製、商品名「OK工程紙」)に、電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部とフェノール系粒子(エア・ウォーター・ベルパール株式会社製、商品名「ベルパール R200」、平均粒子径約6.8μm)40質量部に、全量が200質量部となるように溶剤を加えて混合してなる含フェノール系粒子紫外線硬化組成溶液をグラビアコーターを用いて塗工し、90〜130℃の条件で加熱乾燥させ、この層を熱硬化させ、熱硬化組成物膜を得た。電離放射線硬化性組成物の乾燥塗工量は、約4.5g/m2であった。
【0088】
得られた熱硬化組成物膜上に熱硬化シリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「X−62−9214」)を同じくグラビアコーターを用いて塗工し、90〜130℃の条件で加熱乾燥させ、シリコーン層を熱硬化させた。この合成皮革製造用離型紙の層構成は、OK工程紙/R200+LP−09/X−62−9214となる。
【0089】
この合成皮革製造用離型紙を幾何学的なエンボス模様を有するエンボス版(大日本印刷株式会社製、柄名:1213)でエンボス加工を行い、高圧水銀灯を用い、紫外線照射を行い、前記熱硬化組成物膜を硬化させ、合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。
【0090】
この合成皮革製造用エンボス離型紙の倍率290倍の剥離層の拡大図を図3に、倍率720倍の剥離層の拡大図を図4に示す。また、剥離性の評価の際に形成したポリウレタン表皮層の倍率290倍の拡大図を図5に、倍率720倍の拡大図を図6に示す。図3に示すように、合成皮革製造用離型紙にはエンボスが明瞭に形成され、図4に示すように、フェノール系樹脂は、エンボスの凹部および凸部に均一に分散されていた。また、図5に示すように製造された合成皮革(ポリウレタン表皮層)にもエンボス模様が明瞭に形成され、図6に示すように、合成皮革製造用離型紙側からのフェノール系粒子の剥離は観察されなかった。このため、フェノール系粒子は、電離放射線硬化樹脂層に安定に存在している事が判明した。
【0091】
また、エンボス版のシボ深さ、離型紙への転写率を測定し、その平均値を表7に示した。エンボス版は、約43.7μmのシボ深さであった。なお、本明細書における各種シボ深さは、株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡VK−9510を用いて測定した。
【0092】
(比較例1)
電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部に対しシリカ被覆メラミン系粒子(日産化学工業株式会社製、商品名「オプトビーズ 500S」、平均粒子径約0.5μm)を使用し、その配合量をそれぞれ4質量部、10質量部、17質量部、27質量部、40質量部、60質量部、74質量部に変更した以外は、実施例1と同様に操作して合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。この合成皮革製造用エンボス離型紙の層構成は、OK工程紙/500S+LP−09/X−62−9214となる。
【0093】
この合成皮革製造用エンボス離型紙について、実施例1と同様にしてグロス値、剥離性、混和性を評価した。結果を表5に示す。表5に示すように、粒子の大部分が沈降するため、40〜74質量部の配合域では、コート量がほとんど変化しなくなる。これは、同程度の平均粒子径である実施例3と比較すると、顕著な差であり、比重が約2.5の純粋なガラス粒子と比較して、比較的比重の小さい(真比重1.5g/cm3)シリカ被覆メラミン粒子であっても、混和性が低いといえる。したがって、シリカ粒子は有機溶液中においては凝集力が強く、混和性が低いことがわかる。
【0094】
(比較例2)
坪量が157g/m2の紙基材層(王子製紙株式会社製、商品名「OK工程紙」)に、電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部に、全量が160質量部となるように溶剤を加えて混合してなる紫外線硬化組成溶液をグラビアコーターを用いて塗工し、90〜130℃の条件で加熱乾燥させ、この層を熱硬化させ、熱硬化組成物膜を得た。電離放射線硬化性組成物の乾燥塗工量は、約4.5g/m2であった。
【0095】
得られた熱硬化組成物膜上に実施例4と同様に熱硬化シリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「X−62−9214」)を同じくグラビアコーターを用いて塗工し、90〜130℃の条件で加熱乾燥させ、シリコーン層を熱硬化させ、合成皮革製造用離型紙を作製した。この合成皮革製造用離型紙の層構成は、OK工程紙/LP−09/X−62−9214となる。
【0096】
ついで、この合成皮革製造用離型紙を幾何学的なエンボス模様を有するエンボス版(大日本印刷株式会社製、柄名:1213)でエンボス加工を行い、高圧水銀灯を用い、紫外線照射を行い、前記熱硬化組成物膜を硬化させ、合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。
【0097】
得られた離型紙につき、実施例1と同様にグロス値、剥離性および混和性を評価した。結果を表6に示す。
また、これについても離型紙への転写率を測定し、その平均値を表7に示した。実施例4は、フェノール粒子を含有していない比較例2と比較して、同程度の転写率を示すことがわかる。したがって、実施例4と比較例2のグロス値の差は、フェノール粒子によってもたらされるシボよりも細かい表面の凹凸によることがわかる。
【0098】
また、剥離層の拡大図(720倍)を図7に示す。エンボス柄が形成されているが、粒子が配合されていないため、表面が滑らかであった。
(比較例3)
坪量が157g/m2の紙基材層(王子製紙株式会社製、商品名「OK工程紙」)に、電離放射線硬化性組成物(東亞合成株式会社製、商品名「アロンLP−09」、固形分40質量%)100質量部とシリコーンパウダー(信越化学工業株式会社製、商品名「KMP−600」、平均粒子径約5μm)32質量部に、全量が192質量部となるように溶剤を加えて混合してなる含シリコーンパウダー紫外線硬化組成溶液をメイヤーバー番手:#14を用いて塗膜厚さが乾燥後約8.8g/m2となるように塗工し、130℃で30秒の条件で加熱乾燥させ、この層を熱硬化させ、熱硬化組成物膜を得た。
【0099】
得られた熱硬化組成物膜上に熱硬化シリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「X−62−9214」)をメイヤーバー番手:#8を用いて塗布し、塗膜厚さが乾燥後約0.4g/m2となるように塗工し、同じく130℃で30秒の条件で加熱乾燥させ、シリコーン層を熱硬化させた。この合成皮革製造用離型紙の層構成は、OK工程紙/KMP−600+LP−09/X−62−9214となる。
【0100】
ついで出力120W/cmの高圧水銀灯を用い、600mJ/cm2の紫外線照射を行い、前記熱硬化組成物膜を硬化させ、合成皮革製造用離型紙を得た。
得られた離型紙につき、実施例1と同様にグロス値、剥離性および混和性を評価した。結果を表6に示す。
【0101】
シリコーンパウダーを配合すると、合成皮革全面にシリコーンパウダーが転移してしまうことがわかった。
(比較例4)
平均粒子径が約6μmのガラス粒子配合UV樹脂(DICグラフィックス株式会社製、商品名「FM−80」)100質量部に全量が160質量部となるように溶剤を加えて混合し含ガラス粒子紫外線硬化組成溶液を調製した。
【0102】
坪量125g/m2の紙基材層(北越紀州製紙株式会社製、商品名「H230」紙)に、熱可塑性樹脂(三井化学株式会社製、商品名「TPX」)を厚さ37μmとなるように塗工し、この上に、上記の含ガラス粒子紫外線硬化組成溶液を、グラビアコーターを用いて塗工し、90〜130℃の条件で加熱乾燥させ、この層を熱硬化させ、熱硬化組成物膜を得た。電離放射線硬化性組成物の乾燥塗工量は、約5.0g/m2であった。
【0103】
得られた熱硬化組成物膜上に実施例5と同様に熱硬化シリコーン組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「X−62−9214」)を同じくグラビアコーターを用いて塗工し、90〜130℃の条件で加熱乾燥させ、シリコーン層を熱硬化させ、合成皮革用離型紙を作製した。この合成皮革製造用離型紙の層構成は、HR紙/TPX/FM−80/X−62−9214となる。
【0104】
ついで、この合成皮革製造用離型紙を幾何学的なエンボス模様を有するエンボス版(大日本印刷株式会社製、柄名:1213)でエンボス加工を行い、高圧水銀灯を用い、紫外線照射を行い、前記熱硬化組成物膜を硬化させ、合成皮革製造用エンボス離型紙を得た。
【0105】
得られた合成皮革製造用エンボス離型紙につき、実施例1と同様にグロス値、剥離性および混和性を評価した。結果を表6に示す。
この合成皮革製造用エンボス離型紙の倍率290倍の剥離層の拡大図を図8に、倍率720倍の剥離層の拡大図を図9に示す。ガラス粒子によって剥離層の表面に凹凸によるマット調が形成されているが、エンボス加工によってクラックが発生し、剥離層の表面から突出するガラス粒子が観察された。また、このガラス粒子配合UV樹脂「FM−80」は、電離放射線による硬化後に経時劣化が発生した。
【0106】
(比較例5)
平均粒子径が約6μmのガラス粒子を、実施例1と同種のUV樹脂(東亜合成株式会社製、商品名「アロンLP−07」、固形分45質量%)100質量部に45質量部配合させた後、全量が200質量部となるように溶剤を加えて混合し含ガラス粒子紫外線硬化組成溶液を調製した。しかし、含ガラス粒子紫外線硬化組成溶液中でガラス粒子が沈降し、含ガラス粒子紫外線硬化組成溶液は、紙基材層上に塗工することができず、このため合成皮革製造用離型紙ならびに合成皮革製造用エンボス離型紙を製造することができなかった。結果を表6に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

【0113】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の合成皮革製造用離型紙は、安価にマット調の合成皮革を製造することができ有用である。
【符号の説明】
【0115】
10・・・熱硬化シリコーン層、
20・・・電離放射線硬化樹脂層、
30・・・紙基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材層と、前記紙基材層の上に設けられた電離放射線硬化樹脂層と、前記電離放射線硬化樹脂層の上に形成された剥離層とからなる合成皮革製造用離型紙であって、
前記電離放射線硬化樹脂層は、乾燥電離放射線硬化樹脂層中に、平均粒子径1〜30μmのフェノール系粒子を10〜80質量%の範囲で含有することを特徴とする、合成皮革製造用離型紙。
【請求項2】
前記電離放射線硬化樹脂層は、
前記フェノール系粒子を配合した電離放射線硬化性組成物を電離放射線により硬化させたものである、請求項1記載の合成皮革製造用離型紙。
【請求項3】
請求項1または2記載の合成皮革製造用離型紙であって、前記剥離層側にエンボスが形成されることを特徴とする、エンボス付き離型紙。
【請求項4】
請求項1または2記載の合成皮革製造用離型紙、または請求項3記載のエンボス付き離型紙を使用して製造された合成皮革。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−172279(P2012−172279A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35737(P2011−35737)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】