説明

合紙付き板状部材移載システム及びその移載方法

【課題】 下にある合紙及び他の板状部材が連れられることなく最も上に位置する板状部材を搬送できる合紙付き板状部材移載システムを提供する。
【解決手段】 合紙付き板状部材移載システム1では、吸着装置12がガラス板2の表面を合紙3越しに吸着する複数の吸着パッド33,34を有している。エア吹付け装置14は、吸着されたガラス板2とその下に位置するガラス板2との間にエアを吹き付け、ロボット11は、吸着ユニット12を移動させるようになっている。クランプ装置15は、一対の押え部材66を有し、この一対の押え部材66は、ガラス板2の両側に配置され、互いが近づくように2板状部材に向かって夫々動くようになっている。制御装置17は、少なくとも吸着装置ユニット12によりガラス板2を持ち上げる前に一対の押え部材66を動かして各合紙2のガラス板2の側方からはみ出ている部分を押えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々の上面に合紙が載せられている状態で積層された複数の板状部材のうち最も上に位置する板状部材を移載するための合紙付き板状部材移載システム及びその移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板等の板状部材は、一枚ずつ並べて載置しておくと大きな収納スペースが必要であるので、複数の板状部材を上下方向に積層して置かれることがある。この際、積層される板状部材の間に合紙を挟んで板状部材同士が互いに傷つけ合わないようにしている。この合紙は、板状部材の積層時には必要であるが、板状部材に処理を施す際には不要である。そのため、この合紙を如何にして板状部材の上面から合紙を処理するかが課題であり、その課題を解決する装置として、例えば特許文献1に記載の吸着受渡装置がある。特許文献1に記載の吸着受渡装置は、主吸着盤及び副吸着板を板ガラスの表面の合紙に押し付け、合紙ごと板状ガラスを吸着して搬送するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−1546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の吸着受渡装置では、ガラス板を吸着して搬送する際、そのガラス板の下側にある合紙及びガラス板がガラス板の下面に付着して一緒に連れられてくることがある。この下側にある合紙及びガラス板は静電気によってガラス板の下面に付着しているため、搬送中にその自重により落ちる。これにより、付着していたガラス板が損傷したり、付着していた合紙が吸着受渡装置の周辺に散乱したりすることになる。合紙が散乱して吸着受渡装置に干渉すると、吸着受渡装置が正確に動かなくなるという問題もある。
【0005】
そこで本発明は、その下にある合紙及び他の板状部材が連れられることなく最も上に位置する板状部材を搬送することができる合紙付き板状部材移載システム及びその移載方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の合紙付き板状部材移載システムは、各々の上面に合紙が載せられている状態で積層された複数の板状部材のうち最も上に位置する板状部材を移載するための合紙付き板状部材移載システムにおいて、前記最も上に位置する板状部材の表面を前記合紙越しに吸着する複数の吸着パッドを有する吸着装置と、前記吸着された板状部材とその下に位置する前記板状部材との間にエアを吹き付けるエア吹付け装置と、前記吸着装置を移動させるロボットと、前記積層されている板状部材の側方に配置され、前記板状部材に向かって動いて合紙の板状部材からはみ出た部分を押える押え部材を有する押え装置と、前記押え装置、前記吸着装置、エア吹付け装置及びロボットの動作を制御する制御装置とを備え、前記複数の吸着パッドは、その吸着面が予め定められた仮想平面上に略位置するように整列され、最前列に配置された前記吸着パッドの吸着面は、前記仮想平面に対して上方に移動するように構成され、前記制御装置は、前記板状部材を前記複数の吸着パッドで吸着した後、前記最前列に配置された吸着パッドを上方に移動させて前記板状部材の外縁の一部を反らし、更に反らした部分とその下に位置する前記板状部材との間にエア吹付け装置によってエアを吹き付けてから前記吸着装置を上方に持ち上げるようになっており、少なくとも前記吸着装置を持ち上げる前に前記押え部材を動かして前記各合紙の板状部材の側方からはみ出ている部分を押えるように構成されているものである。
【0007】
本発明に従えば、複数の吸着パッドを合紙越しに板状部材に吸着させるので、合紙を板状部材の上に載せたまま板状部材を移載することができる。また、吸着後に、所定の吸着パッドの吸着面を上方に移動させることで、板状部材の外縁を反らせることができる。そして、反らした部分とその下にある合紙との間にエア吹付け装置によってエアを吹き付けることで、移載する際に積層された板状部材同士及び板状部材とその下にある合紙とを離れやすくしている。
【0008】
更に、本発明では、押え部材を動かすことによって、各合紙の板状部材からはみ出た部分を板状部材に向かって押えることができる。このように押えることによって、他の板状部材及びその上にある合紙が移載する板状部材にひっつくことを防ぐことができる。つまり、移載対象の板状部材及び合紙だけを移載することができ、その他の板状部材が連れられ、やがて自重により落ちて損傷したり、合紙が連れられて散乱することを防ぐことができる。
【0009】
上記発明において、前記吸着装置に設けられる把持装置を備え、前記把持装置は、前記板状部材の表面に沿うように互いに相対移動する一対の把持具と、前記一対の把持具を相対移動させる把持駆動部とを有し、前記制御装置は、前記把持駆動部により前記板状部材上で一対の把持具を相対移動させて前記板状部材上にある前記合紙を把持するように構成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成に従えば、板状部材の表面上で合紙を摘むように把持して板状部材の上から取り去ることができる。これにより、前記板状部材を移載した後に吸着装置を所定位置に一旦戻すことなく移載動作に続けて合紙を取り去る作業を行うことができ、板状部材1枚当りの移載作業の時間を短くすることができる。
【0011】
上記発明において、前記把持装置は、前記一対の把持具を前記板状部材の表面に対して進退させる進退機構を有し、前記一対の把持具は、前記進退機構に揺動可能に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
上記構成に従えば、進退機構により一対の把持具を板状部材の表面まで進行させて当てることで、板状部材の表面の傾きに合わせて一対の把持具を揺動させることができる。これにより、一対の把持具の姿勢を板状部材の表面の傾きに合わせることができ、一対の把持具を前記表面に沿わせて相対移動させることができる。これにより、一対の把持具により確実に合紙を把持させることができる。
【0013】
上記発明において、前記一対の把持具は、その先端部を前記合紙越しに前記板状部材の表面に当てるようになっており、前記一対の把持具の先端部分は、弾性部材によって構成されていることが好ましい。
【0014】
上記構成に従えば、一対の把持具が板状部材の表面に合紙越しに当たるので、一対の把持具による板状部材の表面の損傷を抑えることができる。また、一対の把持具の先端部分が弾性部材によって構成されているので、これによって更に板状部材の表面の損傷を抑えることができる。
【0015】
上記発明において、少なくとも1つの直線状の稜線を有するように上方に向かって突出している合紙置き具を備え、前記制御装置は、前記ロボットにより吸着装置を移動させて前記把持装置により把持した前記合紙の中心線が前記合紙置き具の前記稜線上に位置するように移動させ、その後一方の把持具を他方のクランプから離すように相対移動させて前記合紙を離すように構成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成に従えば、合紙が合紙置き具の稜線上に落ち、その後合紙が稜線を境に折れ曲って合紙置き具の表面上に着地する。合紙を離す際、その中心線と稜線とが略一致するように位置合わせがされているので、合紙が略2等分されて折れ曲る。それ故、合紙が合紙置き具からずり落ちることなくその位置に留めておくことができる。これにより板状部材の表面上から取り去った合紙が散乱することを防ぐことができる。また、合紙置き具が直線状の稜線を有しているので、合紙置き具上に合紙を皺なく載せることができる。それ故、合紙置き具の上に複数枚の合紙を重ねて置くことができ、合紙置き場の省スペース化を図ることができる。
【0017】
上記発明において、前記一対のクランプは、上方から下方に下降しながら互い近づくように構成されていることが好ましい。
【0018】
上記構成に従えば、合紙のはみ出した部分を下方に折り曲げて押えることができる。これにより、移載対象以外の板状部材や合紙が上方に連れられることを抑制することができ、前記はみ出した部分が板状部材の持ち上げ動作の際に邪魔することがない。
【0019】
上記発明の合紙付き板状部材移載システムの移載方法は、各々の上面に合紙が載せられている状態で積層された複数の板状部材のうち最も上に位置する板状部材を移載するための合紙付き板状部材移載システムであって、前記最も上に位置する板状部材の表面を前記合紙越しに吸着する複数の吸着パッドを有する吸着装置と、前記吸着された板状部材とその下に位置する前記板状部材との間にエアを吹き付けるエア吹付け装置と、前記吸着装置を移動させるロボットと、前記積層されている板状部材の側方に配置され、前記板状部材に向かって動く押え部材を有する押え装置と、前記押え装置、前記吸着装置、エア吹付け装置及びロボットの動作を制御する制御装置とを備え、前記複数の吸着パッドは、その吸着面が予め定められた仮想平面上に略位置するように整列され、最前列に配置された前記吸着パッドの吸着面は、前記仮想平面に対して上方に移動するように構成されている板状部材移載システムの移載方法であって、前記制御装置が前記合紙越しに前記板状部材を前記複数の吸着パッドで吸着させる吸着工程と、前記制御装置が前記最前列に配置された吸着パッドを上方に移動させて前記板状部材の外縁の一部を反らせる反らし工程と、前記制御装置が前記外縁の一部とその下に位置する前記板状部材との間にエア吹付け装置によってエアを吹付ける吹付け工程と、前記制御装置が前記押え部材を動かして前記各合紙の板状部材の側方からはみ出ている部分を押える押え工程と、前記制御装置が前記吹付け工程及び前記押え工程の後に前記ロボットにより前記吸着装置を上方に持ち上げる持ち上げ工程を有する方法である。
【0020】
本発明に従えば、複数の吸着パッドを合紙越しに板状部材に吸着させるので、合紙を板状部材の上に載せたまま板状部材を移載することができる。また、吸着後に、所定の吸着パッドの吸着面を上方に移動させることで、板状部材の外縁を反らせることができる。そして、反らした部分とその下にある合紙との間にエア吹付け装置によってエアを吹き付けることで、移載する際に積層された板状部材同士及び板状部材とその下にある合紙とを離れやすくしている。
【0021】
更に、本発明では、押え部材を動かすことによって、各合紙の板状部材からはみ出た部分を下方に曲げて板状部材に向かって押えることができる。このように押えることによって、他の板状部材及びその上にある合紙が移載する板状部材にひっつくことを防ぐことができる。つまり、移載対象の板状部材及び合紙だけを移載することができ、その他の板状部材が連れられ、やがて自重により落ちて損傷したり、合紙が連れられて散乱することを防ぐことができる。
【0022】
上記発明において、前記押え工程は、前記吹付け工程の前に行われることが好ましい。
【0023】
上記構成に従えば、エアを吹き付ける際に反らした板状部材とその下にある板状部材との間にある合紙が前記板状部材に連れられて持ち上げられることを防ぐことができる。これにより、吹き付けているエアにより前記合紙を下側の板状部材へ押し付けることができる。
【0024】
上記発明において、前記押え工程は、前記反らし工程の前に行われることが好ましい。
【0025】
上記構成に従えば、板状部材の外縁部の一部を反らす際に板状部材とその下にある板状部材との間にある合紙が前記板状部材に連れられて持ち上げられることを防ぐことができる。これにより、吹付け工程時に前記合紙を下側の板状部材の表面上に確実に位置させることができ、その後に吹き付けるエアにより前記合紙を下側の板状部材へ確実に押し付けることができる。
【0026】
上記発明において、前記板状部材移載システムは、前記吸着装置に設けられ、前記板状部材の表面上で前記合紙を把持する把持装置と、少なくとも1つの直線状の稜線を有するように上方に向かって突出している合紙置き具とを備え、前記制御装置が前記持ち上げ工程にて持ち上げた前記板状部材を前記ロボットにより所定位置へと移動させる移動工程と、前記制御装置が前記移動工程にて移動された前記板状部材に吸着している複数の吸着パッドに吸着破壊させて前記所定位置に載置する載置工程と、前記制御装置が前記所定位置にて前記把持装置に前記合紙を把持させる把持工程と、前記制御装置が前記合紙の中心線が前記合紙置き具の前記稜線上に位置するように前記合紙を移動させる合紙移動工程と、前記合紙置き具の上で前記把持装置の把持を解除して前記合紙を離す合紙置き工程とを有することが好ましい。
【0027】
上記構成に従えば、合紙置き工程にて合紙を離すと、合紙が合紙置き具の稜線上に落ち、その後合紙が稜線を境に折れ曲って合紙置き具の表面上に着地する。合紙置き工程においてその中心線と稜線とが略一致するように位置合わせがされているので、合紙が略2等分されるように折れ曲って合紙置き具に載置される。それ故、合紙が合紙置き具からズレ落ちることなくその位置に留めておくことができる。これにより板状部材の表面上から取り去った合紙が散乱することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、その下にある合紙及び他の板状部材が連れられることなく最も上に位置する板状部材を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本件発明の実施形態に係る合紙付き板状部材移載システムを示す平面図である。
【図2】図1の合紙付き板状部材移載システムが備えるロボットを示す斜視図である。
【図3】図2のロボットの先端部に取付けられている吸着ユニットを示す平面図である。
【図4】図3の吸着ユニットを側方から見た側面図である。
【図5】図1の合紙付き板状部材移載システムが備えるクランプ装置を示す平面図である。
【図6】図5のクランプ装置を正面から見た正面図である。
【図7】図6のクランプ機構付近を拡大して示す拡大正面図である。
【図8】図1の合紙付き板状部材移載システムが備える合紙置き具を正面から見た正面図である。
【図9】図1の合紙付き板状部材移載システムにおいて、合紙付きガラス板が移載される手順を示すフローチャートである。
【図10】図5のクランプ装置において、クランプ機構の押え部材を下降させた状態を示す正面図である。
【図11】図10のクランプ機構付近を拡大して示す拡大正面図である。
【図12】図4の吸着ユニットによりガラス板を吸着してそらした状態を示す側面図である。
【図13】(a)図7の合紙置き具の上まで合紙を移動させ、(b)その上から合紙を落とす際の動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る合紙付き板状部材移載システム1(以下、単に「移載システム1」ともいう)について説明する。以下の説明における上下、左右、及び前後等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、移載システム1に関してそれらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明する移載システム1は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0031】
<合紙付き板状部材移載システム>
移載システム1は、板状部材、本実施形態ではガラス板2を所定の位置に移載するための装置である。ガラス板2は、平面視で大略矩形状になっており、上下方向に積層されている(図6及び7参照)。各ガラス板2の上には、合紙3が載置されている(図7参照)。合紙3は、平面視で大略矩形状になっており、ガラス板2の外形よりも大きく形成されている。そのため、合紙3の外縁部は、ガラス板2から外側へとはみ出しており、下側へと垂れ下がっている。このように載置されている合紙3は、上下に隣接する2つのガラス板2の間に介在し、これら2つのガラス板2が擦れあって傷つくことを防いでいる。移載システム1は、このように上面に合紙3が載せられているガラス板2をその状態のまま吸着保持して所定の位置、具体的にはコンベア4まで移載するようになっている。移載システム1は、ロボット11と、吸着ユニット12と、把持装置13と、吹付け装置14、クランプ装置15と、合紙置き具16と、制御装置17とを備えている。
【0032】
<ロボット>
ロボット11は、図2に示すような6軸ロボットである。なお、本実施形態では、6軸のロボットを採用しているが、水平3軸や垂直3軸等の他の多関節ロボット等であってもよい。ロボット11は、床等に固定される基台21を備えている。基台21には、第1アーム22が設けられており、第1アーム22は、基台21に対して垂直軸であるR軸回りに旋回可能に構成されている。第1アーム22の上部には、第2アーム23の下端が設けられており、第2アーム23は、第1アーム22に対して水平軸であるL軸回りに回動可能に構成されている。第2アーム23の上端部には、第3アーム24の基端部が設けられており、第3アーム24は、第2アーム23に対して前記L軸に平行なU軸回りに回動可能に構成されている。第3アーム24は、U軸に直交するS軸に沿って延在している。第3アーム24の先端部には、手首部25が設けられており、手首部25は、第3アーム24に対してS軸回りに回動可能に構成されている。このように回動する手首部25は、第3アーム24側にある基端部に対して先端部26がS軸に直交するB軸回りに回動し、更に先端27が先端部26に対してB軸に直交するT軸回りに回動するように構成されている。そして、各軸には、電動モータ(図示せず)が設けられており、電動モータを動かすことで各軸回りに旋回又は回動するようになっている。このように構成される手首部25の先端27には、図3及び図4に示すように吸着ユニット12が取り付けられている。
【0033】
<吸着ユニット>
吸着ユニット12は、図3及び図4に示すように取付部31と、基体32と、複数の吸着装置33,34とを有している。取付部31は、手首部25の先端27に着脱可能に取付けられており、基体32に固定されている。基体32は、左右方向に延在する3つの取付部材32a〜32cを有しており、これら3つの取付部材32a〜32cは、前後方向に間隔をあけて並設されている。隣接する取付部材32a〜32c同士は、前後方向に夫々延在する一対の連結部材32d,32eにより連結されている。そして、3つの取付部材32a〜32cのうちロボット12側、つまり基端側にある2つの取付部材32a、32bの間に取付部31が架け渡すように取付けられている。また、3つの取付部材32a〜32cの左右両端部付近には、吸着装置33,34が夫々取付けられている。
【0034】
取付部材32a,32bに取付けられる第1吸着装置33は、取付板35と、吸着ノズル36と、吸着パッド37と、フレキシブルホース38とを有している。取付板35は、取付部材32b,32cの上面に夫々取付けられ、そこから前方又は後方へと延びる板状の部材である。取付板35には、取付部材32b,32cから突き出た部分に吸着ノズル36が取付けられている。吸着ノズル36は、上下方向に延在する大略円筒状の部材であり、取付板35を貫通している。吸着ノズル36の下端には、吸着パッド37が取付けられている。
【0035】
吸着パッド37は、合成ゴム等の弾性材料から成り、大略円板状に形成されている。吸着パッド37は、その下面に上方に凹む凹部(図示せず)を有しており、吸着パッド37の下面をガラス板2に押し付けることで吸着パッド37内の内空間37aが密閉されるようになっている。吸着パッド37内の内空間37aは、吸着ノズル36内に繋がっており、吸着ノズル36の上端部にはフレキシブルホース38が設けられている。フレキシブルホース38は、負圧供給機器39に繋がっており、吸着パッド37内の内空間37aは、フレキシブルホース38と吸着ノズル36とを介して負圧供給機器39とが繋がっている。
【0036】
負圧供給機器39は、全ての吸着装置33,34で共有されている構成であり、図示しない真空ポンプ及び電磁弁を有している。負圧供給機器39は、真空ポンプにより内空間37aの空気を間引きすることができるようになっており、吸着パッド37の下面をガラス板2に押し付けて間引きすることで合紙3ごとガラス板2を吸着できるようになっている。また、負圧供給機器39は、真空ポンプと内空間37aの間を電磁弁により遮断して内空間37a大気に開放することでガラス板2の吸着を解除することができるようになっている。なお、全ての第1吸着装置33は、その吸着パッド37の下面(吸着面)が所定の仮想平面P1上に略位置するように取付けられている。
【0037】
他方、第2吸着装置34は、取付部材32cに取付けられて吸着ユニット12の先端側に位置している。第2吸着装置34は、基本的に第1吸着装置33と同様の構成を有しているが、吸着ノズル36が第1吸着装置33のものに比べて短く、ベローズ付き吸着パッド40の形状が異なっている。ベローズ付き吸着パッド40は、伸縮可能な中空のベローズ形状になっており、その下面(吸着面)が前記所定の仮想平面P1上に略位置している。また、ベローズ付き吸着パッド40内の内空間40aは、吸着ノズル36及びフレキシブルホース38を介して負圧供給機器39に繋がっている。ベローズ付き吸着パッド40は、その下面をガラス板2に押し付けた状態で負圧供給機器39によりベローズ付き吸着パッド40内の内空間40aの空気を間引くことで合紙3ごとガラス板2を吸着すると共に収縮してベローズ付き吸着パッド40の下面が上方に持ち上がるようになっている。
【0038】
このように構成されている吸着ユニット12の基体32の基端側には、ガラス板2上の合紙3を取り除くべく一対の把持装置13が取付けられている。また、基体32の先端側には、吸着しているガラス板2の下側にエアを吹き付ける吹付け装置14が取付けられている。
【0039】
<把持装置>
把持装置13は、ガラス板2上の合紙3を摘むことができるようなっており、取付部材32a,32bを連結する一対の連結部材32dの各々に夫々取付けられている。把持装置13は、図4に示すように進退機構41と、ピストン機構42と、ハンド43と、付勢機構44とを有している。進退機構41は、連結部材32dの外側の側面に固定されており、連結部材32dに対してピストン機構42を昇降可能に構成されている。また進退機構41の中には、図示しない駆動回路が収容されており、駆動回路は、ピストン機構42を駆動するようになっている。把持駆動部であるピストン機構42は、シリンダ部42aとロッド部42bとを有しており、シリンダ部42aは、左右方向に延在する軸線L1回りに回動可能に進退機構41に取付けられている。また、ロッド部42bは、前後方向に進退可能にシリンダ部42aに挿入されており、駆動回路から供給される圧力に応じて進退するようになっている。そして、このピストン機構42には、ハンド43が取付けられている。
【0040】
ハンド43は、固定部43aと可動部43bとから成り、固定部43aがシリンダ部42aに固定され、可動部43bがロッド部42bの先端部に取り付けられている。これら固定部43a及び可動部43bは、その下端部に下方に突出する把持具45を夫々有している。この一対の把持具45は、合成ゴム等の弾性材料から成り、前後方向に対向するように位置している。可動部43bを固定部43aの方に後退させることで一対の把持具45がその間に合紙3の一部分を手繰り寄せ、そのまま当接させることで合紙3の一部分を把持するようになっている。また、一対の把持具45を逆方向に動かす(つまり、可動部43bを固定部43aから離すように前進させる)ことで、一対の把持具45が把持していた合紙3が放されるようになっている。
【0041】
このように構成される把持装置13では、ピストン機構42が進退機構41に対して回動可能に取付けられているので、進退機構41によりピストン機構42を下降させて(図4の2点鎖線参照)一対の把持具45をガラス板2に押し付けるとガラス板2の上面の傾きに合わせてピストン機構42が傾くようになっている。これにより、ガラス板2の傾きに関わらず両方の把持具45の先端がガラス板2に当たるようになり、可動部43b側の把持具45がガラス板2から浮き上がることなくその上を摺動するようになっている。このように回動するピストン機構42を元の姿勢に戻すべく、進退機構41には、付勢機構44が取付けられている。
【0042】
付勢機構44は、一対の押付ピン46,46を有している。2つの押付ピン46,46は、回転軸L1に対して前後反対側に夫々位置しており、上下方向に進退可能に構成されている。押付ピン46は、ロッド部42bが仮想平面P1に略平行に延在している状態でピストン機構42に当接しており、図示しないばねによりピストン機構42に押し付けられている。それ故、ピストン機構42が回転軸L1回りの一方向に回転すると一方の押付ピン46がピストン機構42を付勢して元の姿勢に戻し、ピストン機構42が回転軸L1回りの他方向に回転すると他方の押付ピン46がピストン機構42を付勢して元の姿勢に戻すようになっている。
【0043】
<吹付け装置>
吹付け装置14は、第2吸着装置34によりガラス板2の一部分を持ち上げたときに、持ち上げた部分の下側にエアを吹付けるための装置である。吹付け装置14は、エア供給部51と一対の圧縮エア用ホース52と一対の吹付けノズル53とを有している。エア供給部51は、図示しないコンプレッサ及び電磁弁を有している。エア供給部51は、コンプレッサから圧縮エアを供給できるようになっており、電磁弁を動作させることで圧縮エアの供給及び遮断を切換えできるように構成されている。このエア供給部51には、一対の圧縮エア用ホース52が繋がっており、この圧縮エア用ホース52の先端に吹付けノズル53が夫々繋がっている。吹付けノズル53は、その基端部が取付部材32cの左右両端部の上部に取付部材54を介して夫々取付けられている。また、吹付けノズル53は、取付部材54から前方に延在しており、その先端部が第2吸着装置34より前に位置している。また、吹付けノズル53の先端側は、下方に垂れ下がるように湾曲し、且つ先端部が下斜め後方に向いている。吹付けノズル53の先端部からは、エア供給部51から供給される圧縮エアが吹き付けられるようになっており、圧縮エアを吹き付けることで吸着しているガラス板2とその下の合紙3との間にエア層を形成するようになっている。また、その下合紙3は、クランプ装置15によって押えられている。
【0044】
<クランプ装置>
押え装置であるクランプ装置15は、合紙3において積層された複数のガラス板2の外縁から外側へとはみ出ている部分をガラス板2に向かってクランプするよう押えるようになっている。クランプ装置15は、図5及び図6に示すように載置台61と、複数のクランプ機構62を有している。載置台61は、基台63に固定されており、平面視でガラス板2と略同じ外形寸法を有している。載置台61の上には、ガラス板2が載置されて積層されており(図6では、合紙3を省略)、載置台61の周りには、複数のクランプ機構62、本実施形態では5つのクランプ機構62が配置されている。
【0045】
更に具体的に説明すると、クランプ機構62は、平面視で載置台61の左右両側に2つずつ配置されており、合紙3のはみ出た部分をガラス板2の左右両側面に向かって押えるように位置している。そして、残りのクランプ機構62は、平面視で載置台61の前方に配置されており、合紙3のはみ出た部分をガラス板2の前面に向かって押えるように位置している。このように配置された5つのクランプ機構62は、全て同じ構成を有しており、同一の構成については同一の符号を付す。
【0046】
クランプ機構62は、図7に示すように固定板64と、一対のリンク板65,65と、押え部材66と、ピストン67と、ばね部材68とを有している。固定板64は、上下方向に延在する板状部材であり、基台63に立設されている。固定板64は、載置台61から離れて位置しており、載置台61の方に幅広になっている。固定板64の表面には、一対のリンク板65,65が上下方向に揺動可能に取付けられている。一対のリンク板65,65は、固定板64から載置台61の方に延びる板状部材である。一対のリンク板65,65は、上下方向に所定の間隔をあけ、且つ互いに平行になるように位置している。一対のリンク板65,65の先端側には、押え部材66が取付けられている。押え部材66は、上下方向に延びる板状部材であり、載置台61に向いている押付面66aが弾性材料(例えば、合成ゴム)によって構成されている。このように構成される押え部材66は、一対のリンク板65,65と共に平行リンクを構成し、一対のリンク板65,65が揺動して押え部材66が載置台61の方へと近接するに従って下降するようになっている(図11参照)。押付面66aは、常に載置台61に積層されたガラス板2に対して略直交するように保たれるようになっている。
【0047】
このように動作する押え部材66には、ピストン67が取付けられており、このピストン67によって押え部材66を動かすようになっている。ピストン67は、シリンダ部67a及びロッド部67bを有しており、ロッド部67bがシリンダ部67aに対して進退可能に挿入されている。シリンダ部67aは、基台63に回動可能に取付けられ、ロッド部67bは、押え部材66に回動可能に取付られている。そのためロッド部67bを縮退させると、押え部材66は、下降し、それに伴って一対のリンク板65,65によって載置台61の方へと押し出される。このように構成されるピストン67には、空圧回路70(図1参照)が接続されており、ピストン67は、空圧回路70によって伸縮されるようになっている。
【0048】
押え部材66の下方には、ストッパ69が設けられている。ストッパ69は、押え部材66が最下位置まで下降すると押え部材66の下端に当接し、押え部材66が最下位置より下降することを止めている。この最下位置では、押え部材66の押付面66aが載置台61に最も接近するようになっている。最も接近する最下位置であっても、押え部材66の押付面66aは、積層されたガラス板2の側面から若干離れて(例えば、5mm〜30mm)位置し、押付面66aとガラス板2の側面との間に合紙3のはみ出た部分が押し付けられることなく介在できるように構成されている。
【0049】
また、押え部材66と固定板64との間には、ばね部材68が架け渡されている。ばね部材68は、引張コイルばねであり、押え部材66を上方、且つ載置台61から遠ざける方向に引張っており、ピストン67による押え部材66の持ち上げ動作をサポートしている。
【0050】
このように構成されるクランプ装置15では、左右両側に位置するクランプ機構62の押え部材66が互いに近づくようにガラス板2に向かって動き、各ガラス板2上にある合紙3のはみ出た部分を左右両側から押えるようになっている。また、前側に位置するクランプ機構62の押え部材66もまたガラス板2に向かって動き、各ガラス板2上にある合紙3のはみ出た部分を前方からガラス板2に押えるようになっている。合紙3のはみ出た部分を前方及び左右から押えることで、吸着ユニット12によりガラス板2を持ち上げる際にその下にある合紙3及びガラス板2が一緒に連れて持ち上げられることを防ぐことができる。また、はみ出た部分を押える際、押え面66aとガラス板2の側面との間に隙間tを形成することではみ出た部分が押え付けられることを抑制している。これにより、ガラス板2の下にある合紙3が連れられることを抑えつつガラス板2の持ち上げを容易にしている。このようにして持ち上げられたガラス板2は、ロボット11に隣接して配置されているコンベア4に移載された後、その吸着が解除される。吸着を解除した後、合紙3は、把持装置13によって把持されてそのまま合紙置き具16の上に捨てられる。
【0051】
<合紙置き具>
合紙置き具16は、合紙3をその上に貯めて置くためのものである。合紙置き具16は、少なくとも1つの直線上の稜線Eを有するように上方に向かって突出するように形成されており、本実施形態では図8に示すように垂直断面が大略三角形状に形成されている。合紙置き具16は、合紙置き具16の上から広げた状態で落ちた合紙3を稜線Eを境に折れ曲げて(図8の1点鎖線参照)逆V字状で合紙置き具16上に載せるようになっている(図8の2点鎖線参照)。載せられた合紙3の上には、更に別の合紙3を重ねて載せることができ、合紙置き具16の上には、複数枚の合紙3を重ねておくことができるようになっている。
【0052】
<制御装置>
このように構成されるロボット11、吸着ユニット12、把持装置13、吹付け装置14、及びクランプ装置15の各機器は、制御装置17に電気的に接続されており(図1参照)、それらの動作が制御装置17によって制御されている。以下では、制御装置17が各装置11〜15に備わる各機器の動作を制御し、各々の上面に合紙3が載せられている状態で積層された複数のガラス板2のうち最も上に位置するガラス板2を移載システム1によりコンベア4に移載する方法について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0053】
<合紙付き板状部材移載システムの移載方法について>
制御装置17は、図示しない入力手段からガラス板2を移載すべき旨の指令が送られてくると、ステップS1に移行する。クランプ工程であるステップS1では、制御装置17が空圧回路70を制御してピストン67を収縮させる。これにより、押え部材66が下降しながら載置台61の方へ寄っていき、この押え部材66によって各合紙3のガラス板2からはみ出た部分が下方に折り曲げなられながら積層された複数のガラス板2の方に押えられる(図10及び図11参照)。これは、全てのクランプ機構62に対して同時に行なわれるようになっており、合紙3においてガラス板2の左右両側及び前方からはみ出た部分が積層された複数のガラス板2の側面に向かって押えられる。
【0054】
合紙3の押え動作に平行して、制御装置17は、ロボット11の各電気モータの動作を制御して、吸着ユニット12をガラス板2の上に移動させる。この際、制御装置17は、ロボット11の各電気モータの動作を制御して、吸着ユニット12の仮想平面P1をガラス板2の上面と略一致させ、且つ取付部材32a〜32cをガラス板2の前面と平行になるように位置させている。このように合紙3を押え、吸着ユニット12を移動させると、ステップS2に移行する。
【0055】
吸着工程であるステップS2では、制御装置17がロボット11の各電気モータの動作を制御して、吸着パッド37,40を最も上に位置するガラス板2に軽く押し付ける。この際、ガラス板2の上には、合紙3があり、吸着パッド37,40は、合紙3越しにガラス板2に押し付けられる。押し付けた後、制御装置17は、負圧供給機器39の電磁弁を動作させて吸着パッド37,40にガラス板2を吸着させる。ガラス板2を吸着させると、ステップS3に移行する。
【0056】
反らし工程であるステップS3では、制御装置17が負圧供給機器39の電磁弁を動作させてベローズ付き吸着パッド40内の内空間40aにおける空気をさらに間引いて、ベローズ付き吸着パッド40を収縮させる。収縮することで、ガラス板2のベローズ付き吸着パッド40が吸着している部分付近、つまりガラス板2の前側の外縁部分が持ち上げられてガラス板2が反らされる(図12参照)。この際、反らされるガラス板2の下にある合紙3は、クランプ装置15によって押えられているのでガラス板2に連れられてくることが防がれている。ガラス板2が反らされると、ステップS4に移行する。
【0057】
エア吹付け工程であるステップS4では、制御装置17がエア供給部51の電磁弁の動作を制御して吹付けノズル53の先端部から圧縮エアを流出させる(図12参照)。これにより、反らされたガラス板2の前方から圧縮エアが吹き付けられ、前記ガラス板2とその下に位置する合紙3及びガラス板2との間にエア層が形成される。エア層を形成することで吸着しているガラス板2を持ち上げる際にクランプ装置15の押え機能と相まってガラス板2の下に位置する合紙3及びガラス板2から剥がしやすくなる。圧縮エアを吹き付けると、ステップS5に移行する。
【0058】
持ち上げ工程であるステップS5では、制御装置17がロボット11の各電気モータの動作を制御して吸着ユニット12を上昇させ、ガラス板2を持ち上げる。持ち上げる際、制御装置17は、押え部材66に当たらないようにガラス板2を略垂直に持ち上げる。持ち上げると、ステップS6に移行する。吹付け停止工程であるステップS6では、吸着しているガラス板2を持ち上げてその下に位置する合紙3及びガラス板2から剥がれたところで制御装置17がエア供給部51の電磁弁の動作を制御して圧縮エアの吹付けを止める。吹付けを止めると、ステップS7に移行する。
【0059】
クランプ解除工程であるステップS7では、制御装置17が空圧回路70を制御してピストン67を伸張させる。これにより、押え部材66が上昇しながら載置台61から離れていき、合紙3の押えが解除される。押えが解除されると、ステップS8に移行する。移送工程であるステップS8では、合紙3を載せたまま、吸着しているガラス板2をコンベア4の上方まで移動させる。コンベア4の上方まで移動させると、ステップS9に移行する。
【0060】
反らし解除工程であるステップS9では、制御装置17が負圧供給機器39の電磁弁を動作させて、ベローズ付き吸着パッド40の吸着を解除させる。これにより、ガラス板2の反りがなくなりガラス板2がフラットになる。ベローズ付き吸着パッド40の吸着を解除すると、ステップS10に移行する。載置工程であるステップS10では、制御装置17がロボット11の各電気モータの動作を制御して吸着しているガラス板2を降ろしてコンベア4上に載置する。載置すると、ステップS11に移行する。
【0061】
吸着解除工程であるステップS11では、制御装置17が負圧供給機器39の電磁弁を動作させて、吸着パッド37の吸着を解除させる。そして、制御装置17は、制御装置17がロボット11の各電気モータの動作を制御して吸着ユニット12を上昇させて、吸着ユニット12をガラス板2から少し離す。ガラス板2から吸着ユニット12が離れると、ステップS12に移行する。
【0062】
ハンド進出工程であるステップS12では、制御装置17が進退機構41の動作を制御して、一対の把持具45,45の下端が合紙3越しにガラス板2に当たるまでハンド43を進出、具体的には下降させる。この際、基体32がガラス板2に対して前後方向に傾いている場合、その傾きに合わせて進退機構41に対してピストン機構42が回動し、ピストン機構42の姿勢をガラス板2に略平行に保つ。これにより、基体32がガラス板2に対して傾いていても、一対の把持具45,45の両方をガラス板2に確実に当てることができ、且つこのガラス板2の上面に沿って相対移動させることができる。ハンド43を下降させて一対の把持具45,45をガラス板2に当てると、ステップS13に移行する。
【0063】
把持工程であるステップS13では、制御装置17が駆動回路の動作を制御してピストン機構42を縮退させる。縮退させることで、ハンド43の可動部43bが固定部43aの方に向かって移動する。これに伴い、可動部43bの把持具45がその下にある合紙3を引き摺りながらガラス板2の上面に沿って固定部43aの把持具45の方へと移動する。他方、固定部43aの把持具45は、合紙3を押えている。そのため、可動部43bの把持具45が固定部43aの把持具45の方へと移動することで合紙3の一部が一対の把持具45の間に手繰り寄せられ、把持具45同士を当接させることで一対の把持具45によりその手繰り寄せられた部分が摘まれて把持される。左右両側に設けられた2つの把持装置13で合紙3を摘むと、ステップS14に移行する。
【0064】
合紙移送工程であるステップS14では、制御装置17がロボット11の各電気モータの動作を制御して吸着ユニット12を動かし、摘んだ合紙3を合紙置き具16上に移動させる。この際、制御装置17は、コンベア4に対して把持装置13により摘んだ基端側へと引き付けるように合紙3を移動させる移動させる。これにより、摘んだ合紙3が丸まったり大きく波打ったりすることなく、広がった状態で合紙3を移動させることができる。そして、制御装置17が吸着ユニット12を動かして合紙3の中心線が合紙置き具16の稜線E上に位置すると(図13(a)参照)、ステップS15に移行する。
【0065】
合紙置き工程であるステップS15では、制御装置17が駆動回路の動作を制御してピストン機構41を前進させる。これにより、当接していた一対の把持具45,45が離れ、合紙3の把持が解除される。これにより合紙3が広がったまま合紙置き具16の上に落ちる。合紙3は、その中心線が合紙置き具16の稜線Eと略一致しているため、その中心線を境にして2等分されるように略逆V字状に折れ曲って合紙置き具16上に置かれる。合紙置き具16に置かれた合紙3は、広げた状態で落とされ、且つ2等分されるように折れ曲がっているため、丸まったり大きく波打ったり(つまり、皺になったり)することなく、合紙置き具16の上におくことができる。合紙置き具16に合紙3を置いた後も同様の方法でその上に合紙3を置くことができ、合紙置き具16の上には、複数枚の合紙3を置くことができる。これにより、合紙置き場の省スペース化を図ることができる。また合紙3は、広げられ、且つ稜線Eを境に折れ曲っている状態で合紙置き具16に置かれるので、合紙3が合紙置き具16から摺り落ちる等して床等に散乱することを防ぐことができる。合紙3を合紙置き具16上に置くと、ステップS16に移行する。
【0066】
ステップS16では、制御装置17がロボット11の各電気モータの動作を制御して、ロボット11をホームポジションに戻す。ホームポジションに戻り、連続してガラス板2をコンベア4に移載する場合はステップS1に戻る。
【0067】
このような方法で合紙3付きのガラス板2を移載する移載システム1では、ガラス板2を吸着して持ち上げる際、クランプ装置15により合紙3のはみ出た部分が押えられているので、吸着しているガラス板2の下にある合紙3及びガラス板2が連れられることを防ぐことができる。つまり、移送対象である最も上に位置するガラス板2及び合紙3だけを移載することができる。これにより、下側のガラス板2が連れられて自重により落ちて損傷したり、合紙3が連れられて落ちて床等に散乱したりすることを防ぐことができる。また、移載システム1では、吸着ユニット12によりコンベア4上にガラス板2を載置した後にロボット11(吸着ユニット12)をホームポジションに戻すことなく、続けて把持装置13によってガラス板2上にある合紙3を続けて取り除くことができる。これにより、一枚のガラス板2を移載し、その上にある合紙3の除去するためにかかる時間を短くすることができる。
【0068】
また、移載システム1では、ガラス板2の表面の傾きに合わせて一対の把持具45,45が揺動するので、一対の把持具45,45をガラス板2の表面に確実に当接させ、一対の把持具45,45により確実に合紙3を把持させることができる。また、吸着パッド37,40及び一対の把持具45,45の下端部をガラス板2に押し付けるようになっているが、これらは全て合紙3越しにガラス板2に押し付けられるので、ガラス板2が損傷することを防ぐことができる。また、吸着パッド37,40及び一対の把持具45,45下端部が弾性部材によって構成されている。これによっても、ガラス板2が損傷することを防ぐことができる。
【0069】
<その他の実施形態について>
本実施形態の移載システム1では、吹付け工程及び反らし工程の前に押え工程が実行されているが、必ずしもそのような順番に限られない。例えば、反らし工程の後に押え工程を実行してもよく、また吹付け工程の後に押え工程を実行してもよい。また、吸着工程と把持工程とは、別々に実行されているが同時に行なってもよい。即ち、吸着工程する際に予め進退機構41を駆動させてハンド43を下降させて合紙3を把持させ、その後吸着パッド37,40にガラス板2を吸着させる。これにより、コンベア4上にガラス板2を載置した後、吸着ユニット12を持ち上げるだけで合紙3をガラス板2の上から取り除くことができる。
【0070】
また、合紙3のはみ出し部分を押える際、必ずしも押え部材66が載置台61に向かって斜め下方に下降してくる必要はなく、載置台61に向かって水平方向に移動するような構成であってもよい。また、クランプ機構62の数も5つに限定されず、2〜4つ又は6つ以上であってもよい。さらに、設置位置も上述する位置に限定されない。また、合紙置き具16は、垂直断面が大略三角形状に形成されているものに限定されず、大略台形状であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 移載システム
2 ガラス板
3 合紙
11 ロボット
12 吸着ユニット
13 把持装置
14 吹付け装置
15 クランプ装置
16 合紙置き具
17 制御装置
33 第1吸着装置
34 第2吸着装置
37 吸着パッド
40 ベローズ付き吸着パッド
41 進退機構
42 ピストン機構
43 ハンド
45 把持具
62 クランプ機構
66 押え部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の上面に合紙が載せられている状態で積層された複数の板状部材のうち最も上に位置する板状部材を移載するための合紙付き板状部材移載システムにおいて、
前記最も上に位置する板状部材の表面を前記合紙越しに吸着する複数の吸着パッドを有する吸着装置と、
前記吸着された板状部材とその下に位置する前記板状部材との間にエアを吹き付けるエア吹付け装置と、
前記吸着装置を移動させるロボットと、
前記積層されている板状部材の側方に配置され、前記板状部材に向かって動く押え部材を有する押え装置と、
前記押え装置、前記吸着装置、エア吹付け装置及びロボットの動作を制御する制御装置とを備え、
前記複数の吸着パッドは、その吸着面が予め定められた仮想平面上に略位置するように整列され、
最前列に配置された前記吸着パッドの吸着面は、前記仮想平面に対して上方に移動するように構成され、
前記制御装置は、前記板状部材を前記複数の吸着パッドで吸着した後、前記最前列に配置された吸着パッドを上方に移動させて前記板状部材の外縁の一部を反らし、更に反らした部分とその下に位置する前記板状部材との間にエア吹付け装置によってエアを吹き付けてから前記吸着装置を上方に持ち上げるようになっており、少なくとも前記吸着装置を持ち上げる前に前記押え部材を動かして前記各合紙の板状部材の側方からはみ出ている部分を押えるように構成されている、合紙付き板状部材移載システム。
【請求項2】
前記吸着装置に設けられる把持装置を備え、
前記把持装置は、前記板状部材の表面に沿うように互いに相対移動する一対の把持具と、前記一対の把持具を相対移動させる把持駆動部とを有し、
前記制御装置は、前記把持駆動部により前記板状部材上で一対の把持具を相対移動させて前記板状部材上にある前記合紙を把持するように構成されている、合紙付き板状部材移載システム。
【請求項3】
前記把持装置は、前記一対の把持具を前記板状部材の表面に対して進退させる進退機構を有し、
前記一対の把持具は、前記進退機構に揺動可能に取り付けられている、請求項1又は2に記載の合紙付き板状部材移送システム。
【請求項4】
前記一対の把持具は、その先端部を前記合紙越しに前記板状部材の表面に当てるようになっており、
前記一対の把持具の先端部分は、弾性部材によって構成されている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の合紙付き板状部材移載システム。
【請求項5】
少なくとも1つの直線状の稜線を有するように上方に向かって突出している合紙置き具を備え、
前記制御装置は、前記ロボットにより吸着装置を移動させて前記把持装置により把持した前記合紙の中心線が前記合紙置き具の前記稜線上に位置するように移動させ、その後一方の把持具を他方のクランプから離すように相対移動させて前記合紙を離すように構成されている、請求項1乃至4の何れか1つに記載の合紙付き板状部材移載システム。
【請求項6】
前記一対のクランプは、上方から下方に下降しながら互い近づくように構成されている、請求項1乃至5の何れか1つに記載の合紙付き板状部材移載システム。
【請求項7】
各々の上面に合紙が載せられている状態で積層された複数の板状部材のうち最も上に位置する板状部材を移載するための合紙付き板状部材移載システムであって、前記最も上に位置する板状部材の表面を前記合紙越しに吸着する複数の吸着パッドを有する吸着装置と、前記吸着された板状部材とその下に位置する前記板状部材との間にエアを吹き付けるエア吹付け装置と、前記吸着装置を移動させるロボットと、前記積層されている板状部材の側方に配置され、前記板状部材に向かって動く押え部材を有する押え装置と、
前記押え装置、前記吸着装置、エア吹付け装置及びロボットの動作を制御する制御装置とを備え、前記複数の吸着パッドは、その吸着面が予め定められた仮想平面上に略位置するように整列され、最前列に配置された前記吸着パッドの吸着面は、前記仮想平面に対して上方に移動するように構成されている板状部材移載システムの移載方法であって、
前記制御装置が前記合紙越しに前記板状部材を前記複数の吸着パッドで吸着させる吸着工程と、
前記制御装置が前記最前列に配置された吸着パッドを上方に移動させて前記板状部材の外縁の一部を反らせる反らし工程と、
前記制御装置が前記外縁の一部とその下に位置する前記板状部材との間にエア吹付け装置によってエアを吹付ける吹付け工程と、
前記制御装置が前記押え部材を動かして前記各合紙の板状部材の側方からはみ出ている部分を押える押え工程と、
前記制御装置が前記吹付け工程及び前記押え工程の後に前記ロボットにより前記吸着装置を上方に持ち上げる持ち上げ工程を有する、合紙付き板状部材移載システムの移載方法。
【請求項8】
前記押え工程は、前記吹付け工程の前に行われる、請求項7に記載の合紙付き板状部材移載システムの移載方法。
【請求項9】
前記押え工程は、前記反らし工程の前に行われる、請求項8に記載の合紙付き板状部材移載システムの移載方法。
【請求項10】
前記板状部材移載システムは、前記吸着装置に設けられ、前記板状部材の表面上で前記合紙を把持する把持装置と、少なくとも1つの直線状の稜線を有するように上方に向かって突出している合紙置き具とを備え、
前記制御装置が前記持ち上げ工程にて持ち上げた前記板状部材を前記ロボットにより所定位置へと移動させる移動工程と、
前記制御装置が前記移動工程にて移動された前記板状部材に吸着している複数の吸着パッドに吸着破壊させて前記所定位置に載置する載置工程と、
前記制御装置が前記所定位置にて前記把持装置に前記合紙を把持させる把持工程と、
前記制御装置が前記合紙の中心線が前記合紙置き具の前記稜線上に位置するように前記合紙を移動させる合紙移動工程と、
前記合紙置き具の上で前記把持装置の把持を解除して前記合紙を離す合紙置き工程とを有する、請求項7乃至9の何れか1つに記載の合紙付き板状部材移載システムの移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−246114(P2012−246114A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120512(P2011−120512)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】