説明

吊り金具

【課題】少なくとも金具本体を一枚の金属板により形成でき、しかもスポット溶接を要しないで折り曲げ重合による係止構造によって十分な強度を有する係止固定が可能となり、簡易な改良によってプレス順送り工程で製造ができ、製作が容易となり量産性に優れ一層のコストダウンが可能となる画期的な吊り金具を提供すること。
【解決手段】金具本体6を一枚の金属板を折曲して形成した構成とし、前記天板部3は、前記金属板の一端部と反対端部とが上下に重合した構成とし、この天板部3を構成する一方の重合板部に係止孔10を設け、他方の重合板部に切り出し若しくは押し出し形成した重合時に前記係止孔10に係止する係止突部11を設けた吊り金具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊りボルトを垂下するための吊り金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吊り金具は一般にコ字状金具であって、このコ字状切欠部にH鋼や板状部などの被取付板部を挿入し、天板部に設けた締付ボルトで締め付けてこの被取付板部に金具本体を固定し、この下部に設けた吊りボルト螺着部に直接又は吊りボルト若しくは吊りボルト螺着部を設けた吊りボルト取付部を介して吊りボルトを取り付けて、被取付板部にこの金具本体を締め付け固定して吊りボルトを垂下させるものである。
【0003】
このような吊り金具には様々な構成のものがあるが、穴や切り欠きやリブなど必要な加工を行った一枚の金属板を折曲してこの金具本体を形成するものが好評である。
【0004】
例えば、底部を折り返し側にしてU字状に折り返し、左右の立ち上がり片部の上端部を互いに内側に水平に折り返してこれを上下n重合止めして天板部を形成すると共に、左右に対向した切欠部の下側を外側に開くように水平折曲して挿入切欠部を形成し被取付板部を受当接する当接部を設け、この挿入切欠部に被取付板部を挿入してこの当接部に受当て、天板部に設けた螺子孔から締付ボルトを垂下して当接部と締付ボルトとで被取付板部を挟持し締め付けて固定する構成とし、この折り返し形成した金具本体の下部に、例えばこの底部に設けた通孔にナットを抜け止め状態にして回り止め固定した吊りボルト螺着部を設ける構成とすれば、一枚の金属板で少なくとも金具本体を一体形成できるが、左右の折り返し片部の折り曲げ端部を重合した後、この天板部の重合部をスポット溶接などによって固着しなければならないため、プレス機によるプレス作業だけで金具本体を形成できない。
【0005】
即ち、従来は一枚の金属板を打ち抜き加工したり、穴明け加工したり、更に折曲加工するだけでは足りず、溶接作業も必要とし、プレス順送り工程で製品化できないので、量産性に劣りコストダウンを図れない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、少なくとも金具本体を一枚の金属板により形成でき、しかもスポット溶接を要しないで折り曲げ重合による係止構造によって十分な強度を有する係止固定が可能となり、簡易な改良によってプレス順送り工程で製造ができ、製作が容易となり量産性が極めて向上し一層のコストダウンが可能となる画期的な吊り金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
被取付板部1に受当接する当接部2と対向する天板部3に螺着部4を設け、この螺着部4に締付ボルト5を螺着垂下し、この締付ボルト5と前記当接部2とで前記被取付板部1を締め付け挟持して被取付板部1に締め付け固定する吊り金具本体6に、吊りボルト7を螺着する吊りボルト螺着部8又は前記吊りボルト7若しくは前記吊りボルト螺着部8を設けた吊りボルト取付部9を設けた吊り金具であって、前記天板部3と、前記当接部2と、前記吊りボルト螺着部8若しくは前記吊りボルト取付部9を設ける吊りボルト取付用下部とから成る前記金具本体6を一枚の金属板を折曲して形成した構成とし、前記天板部3は、前記金属板の一端部と反対端部とが上下に重合した構成とし、この天板部3を構成する一方の重合板部に係止孔10を設け、他方の重合板部に切り出し若しくは押し出し形成した重合時に前記係止孔10に係止する係止突部11を設けたことを特徴とする吊り金具に係るものである。
【0009】
また、前記被取付板部1が相対挿入される挿入切欠部12の下側に水平板部を折曲形成した構成とした前記当接部2を設け、この当接部2と対向する前記挿入切欠部12の上側には前記天板部3を設け、この天板部3に設けた連通孔を螺子孔として前記螺着部4を設け、この螺着部4に螺着した前記締付ボルト5の下端と前記当接部2の上面とで前記被取付板部1を挟持して締め付け固定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の吊り金具に係るものである。
【0010】
また、一枚の金属板を下側を折り返し部として左右に対向状態に折り上げ、この左右の折り上げ片部の上端部の一方の端部と他方の端部を夫々内側に水平折曲して上下に重合することで、前記天板部3は、前記水平折曲端部を前記重合板部としてこれが上下に重合して形成した構成とし、前記下方の折り返し部に前記吊りボルト螺着部8若しくは前記吊りボルト取付部9を設け、この折り返しによって切欠部が左右に対向状態に設けられて前記被取付板部1が相対挿入される前記挿入切欠部12を構成し、この挿入切欠部12を形成する左右の切欠部と連設した折曲部を夫々左右外側へ水平折曲して前記水平板部を形成し前記当接部2を構成し、前記折り返し片部の左右上端部を夫々内側に折曲してこれを前記重合板部として上下に重合すると共に、この重合板部に設けた前記係止孔10と前記係止突部11を重合時に係止固定して前記天板部3を構成したことを特徴とする請求項2記載の吊り金具に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、少なくとも金具本体を一枚の金属板により形成でき、しかもスポット溶接を要しないで折り曲げ重合による係止構造によって十分な強度を有する係止固定が可能となり、簡易な改良によってプレス順送り工程で製造ができ、製作が容易となり量産性が極めて向上し一層のコストダウンが可能となる画期的な吊り金具となる。
【0012】
また、請求項2,3記載の発明においては、一層本発明を容易に実現でき、一層実用化に優れた画期的な吊り金具となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例の説明斜視図である。
【図2】本実施例の説明平面図である。
【図3】本実施例の説明正面図である。
【図4】本実施例の説明正断面図である。
【図5】本実施例の重合途中の要部の説明正断面図である。
【図6】本実施例の重合係止固定した要部の説明正断面図である。
【図7】本実施例の説明展開平面図とその正面図である。
【図8】本実施例の使用状態を示す説明斜視図である。
【図9】本実施例の吊りボルト螺着部を設けた吊りボルト取付部を下部に軸着した別例を示す説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0015】
例えば、予め穴明け加工やバーリング加工や所定形状に形成する打ち抜き加工などをプレス加工機により施した金属板を、更に次いで折曲加工し、U状に折り返した左右の折り返し片部の上端部を互いに内側に水平折曲すると共に、底部が所定のU状形状となるように折り曲げて前記水平折曲した重合板部を上下に重合すると、前記プレス加工によって形成した一方の重合板部の係止孔10に他方の重合板部の係止突部11がはめ込まれるように係止して重合状態が係止固定され、この天板部3などから成る金具本体6が一枚の金属板で形成される。
【0016】
例えば、この金具本体6に吊りボルト取付部9を付設することで吊りボルト7を設けても良いし、金具本体6の底面に通孔13を設け、これに連通するようにしてナット14を金具本体6下部の左右の折曲形状によって抜け止め状態にして回り止め係止し、この通孔13と連通したナット14の螺着孔15により吊りボルト螺着部8を構成し、この吊りボルト螺着部8に吊りボルト7を螺着垂下しても良い。
【0017】
このように本発明は、プレス機による順送り工程で少なくとも金具本体6を一体形成でき、この天板部3の重合止めについてもスポット溶接を要さずに、プレス形成した係止孔10と係止突部11とのはめ合いによって強固に係止固定できることとなる。
【0018】
特に例えば、予め左右の折り返し片部の上端部を直角に夫々内側に折り曲げつつこの折り曲げ片部を立直状態に立ち起こすことで、この折り曲げた左右上端部の重合板部同志が上下に圧接しつつ重合するように構成し、この重合時に係止孔10に係止突部11を押圧状態にはめ込み係止することで一層強固に係止固定できることとなる。
【0019】
従って、溶接作業を要しないため一連の順送りプレス工程によって製品化でき、簡易な改良によって量産化が極めて向上し、高いコストダウンが図れることとなる。
【実施例】
【0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
被取付板部1に受当接する当接部2と、これに対向する螺着部4を設けた天板部3と、吊りボルト7を螺着する吊りボルト螺着部8又は前記吊りボルト7若しくは前記吊りボルト螺着部8を設けた吊りボルト取付部9を取り付ける吊りボルト取付用下部とから成る金具本体6であって、前記天板部3の螺着部4に締付ボルト5を螺着垂下し、この締付ボルト5と前記当接部2とで前記被取付板部1を締め付け挟持して被取付板部1に締め付け固定する吊り金具本体6を一枚の金属板を折曲して形成した構成とし、前記天板部3は、前記金属板の一端部と反対端部とが上下に重合した構成とし、この天板部3を構成する一方の重合板部に係止孔10を設け、他方の重合板部に切り出し若しくは押し出し形成した重合時に前記係止孔10に係止する係止突部11を設けている。
【0022】
具体的には、例えばH鋼の水平板部を被取付板部1としてこれに取り付け固定する場合、この被取付板部1が相対挿入される挿入切欠部12の下側に水平板部を折曲形成した構成とした前記当接部2を設け、この当接部2と対向する前記挿入切欠部12の上側には前記天板部3を設け、この天板部3に設けた連通孔の一方を螺子孔として前記螺着部4を設け、この螺着部4に螺着した前記締付ボルト5の下端と前記左右の水平板部から成る当接部2の上面とで前記被取付板部1を挟持して締め付け固定するように構成している。
【0023】
更に説明すると、本実施例では、前記金具本体6を予め行う穴明け・打ち抜き加工によって、所定形状に打ち抜きつつ所定位置に穴明け加工を行い、これと同時あるいはその前加工あるいは後加工として前記係止孔10の打ち抜きと、前記係止突部11の切り出しあるいは押し出し加工を行う。また、必要に報じて補強リブなどを更に形成しても良い。
【0024】
このようにして形成した一枚の金属板を更に下側を折り返し部として左右に対向状態に折り上げ、この左右の折り上げ片部の上端部の一方の端部と他方の端部を夫々内側に水平折曲して重合することで、前記下方の折り返し部にナット14を抜け止め状態にして前後片部を折曲して収納することで形成される前記吊りボルト螺着部8を設けると共に、この折り返しによって切欠部が左右に対向状態に設けられて前記被取付板部1が相対挿入される前記挿入切欠部12を構成し、この挿入切欠部12を形成する左右の切欠部と連設した折曲部を夫々左右外側へ水平折曲して前記水平板部を形成し前記当接部2を構成し、前記折り返し片部の左右上端部を夫々内側に折曲してこれを前記重合板部として上下に重合すると共に、この重合板部に設けた前記係止孔10と前記係止突部11を係止固定して前記天板部3を構成している。
【0025】
即ち、予め左右の折り返し片部の上端部を直角に夫々内側に折り曲げつつこの折り曲げ片部を立直状態に立ち起こすことで、この折り曲げた左右上端部の重合板部同志が上下に圧接しつつ重合するように構成し、この重合時に係止孔10に係止突部11を押圧状態にはめ込み係止することで、スポット溶接を要さずに、プレス形成した係止孔10と係止突部11とのはめ合いによって強固に係止固定できる。
【0026】
従って、溶接作業を要しないため一連の順送りプレス工程によって製品化でき、簡易な改良によって量産化が極めて向上し、高いコストダウンが図れることとなる。
【0027】
この係止孔10と係止突部11もプレス加工で形成できるからプレス順送り工程で形成でき、また係止突部11を切り出しても良いし、押し出しても良いが、例えば本実施例のように切り出しの場合は、U字状に折り上げつつ左右の折り返し片部の上端部を直角に折曲することでこの係止突部11が係止孔10に向かってこの係止孔10が形成されている重合板部面に圧接しつつもスムーズに滑って行けるように、切り出し先端が外側で切り出し基端が内側となるように形成し、そして互いに重合したときにこの切り出し片状の係止突部11が係止孔10に落ち込み弾圧係合するように構成している。
【0028】
この係止突部11と係止孔10とは複数設けているが、天板部3の長さ方向両端部に夫々設けている。
【0029】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0030】
1 被取付板部
2 当接部
3 天板部
4 螺着部
5 締付ボルト
6 金具本体
7 吊りボルト
8 吊りボルト螺着部
9 吊りボルト取付部
10 係止孔
11 係止突部
12 挿入切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付板部に受当接する当接部と対向する天板部に螺着部を設け、この螺着部に締付ボルトを螺着垂下し、この締付ボルトと前記当接部とで前記被取付板部を締め付け挟持して被取付板部に締め付け固定する吊り金具本体に、吊りボルトを螺着する吊りボルト螺着部又は前記吊りボルト若しくは前記吊りボルト螺着部を設けた吊りボルト取付部を設けた吊り金具であって、前記天板部と、前記当接部と、前記吊りボルト螺着部若しくは前記吊りボルト取付部を設ける吊りボルト取付用下部とから成る前記金具本体を一枚の金属板を折曲して形成した構成とし、前記天板部は、前記金属板の一端部と反対端部とが上下に重合した構成とし、この天板部を構成する一方の重合板部に係止孔を設け、他方の重合板部に切り出し若しくは押し出し形成した重合時に前記係止孔に係止する係止突部を設けたことを特徴とする吊り金具。
【請求項2】
前記被取付板部が相対挿入される挿入切欠部の下側に水平板部を折曲形成した構成とした前記当接部を設け、この当接部と対向する前記挿入切欠部の上側には前記天板部を設け、この天板部に設けた連通孔を螺子孔として前記螺着部を設け、この螺着部に螺着した前記締付ボルトの下端と前記当接部の上面とで前記被取付板部を挟持して締め付け固定するように構成したことを特徴とする請求項1記載の吊り金具。
【請求項3】
一枚の金属板を下側を折り返し部として左右に対向状態に折り上げ、この左右の折り上げ片部の上端部の一方の端部と他方の端部を夫々内側に水平折曲して上下に重合することで、前記天板部は、前記水平折曲端部を前記重合板部としてこれが上下に重合して形成した構成とし、前記下方の折り返し部に前記吊りボルト螺着部若しくは前記吊りボルト取付部を設け、この折り返しによって切欠部が左右に対向状態に設けられて前記被取付板部が相対挿入される前記挿入切欠部を構成し、この挿入切欠部を形成する左右の切欠部と連設した折曲部を夫々左右外側へ水平折曲して前記水平板部を形成し前記当接部を構成し、前記折り返し片部の左右上端部を夫々内側に折曲してこれを前記重合板部として上下に重合すると共に、この重合板部に設けた前記係止孔と前記係止突部を重合時に係止固定して前記天板部を構成したことを特徴とする請求項2記載の吊り金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−281389(P2010−281389A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135296(P2009−135296)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(591109061)株式会社野島角清製作所 (25)
【Fターム(参考)】