説明

吊下げ治具

【課題】設置や撤収が簡便であり、且つ、下階から上階への荷揚げ作業を効率よく行うことができる治具を提供すること。
【解決手段】本発明の吊下げ治具は、下階3と上階4とを仕切る床スラブ1に設けた開口部2を介して下階と上階との間で搬送物の受け渡しを行う際に適用する治具であり、開口部2の周縁に設置されるフレーム部材40と、一端がフレーム部材40に取り付けられる一方、他端が開口部2を通じて下階に吊下げられる吊下げ部材30と、吊下げ部材30を介して下階の所定高さ位置に吊下げ支持される台座20とを備え、上階と下階との間で受け渡される搬送物を、台座に一時的に載置させるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築中の構造物において、上階と下階とを仕切る床スラブに設けた開口部を介して、上階と下階との間で型枠材料等の搬送物の受け渡し作業を行う際に適用される治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の型枠工事においては、任意階のコンクリートを打設した後、所定の日数や強度を確認した上で、堰板やパイプサポート等の型枠材料を解体する。そして、解体した型枠材料を上階に荷揚げして転用する。この型枠材料の荷揚げ作業は、予め床面に駄目穴と称される開口部を設けておき、この開口部を利用して下階から上階へ荷揚げすることが多い。この開口部を利用した荷揚げの方法としては、図9に示すように、下階の作業者が上階の作業者へ型枠材料を一つずつ手渡す方法、あるいは、特許文献1に示されているように、上階にホイスト等の揚重装置を設置し、この揚重装置に取付けた搬送装置に型枠部材を収容して上階に揚重する方法等がある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−50665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、下階と上階との間で型枠材料をひとつずつ手渡しする場合、下階の作業者は解体場所から開口位置まで、また、上階の作業者は開口位置から仮置き場所まで、それぞれ型枠材料を運ぶ必要がある。このため、下階の運搬作業が上階の運搬作業よりも時間が掛かる場合には、上階の作業者が開口部位置で手待ちとなる一方、上階の運搬作業が下階の運搬作業よりも時間が掛かる場合には、下階の作業者が型枠材料を持ったままで手待ちとなり、作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
また、特許文献1のように揚重装置を用いて型枠部材を揚重する場合、揚重装置を取付ける設備や搬送装置の設置・撤収に手間が掛かるため、小規模な構造物の型枠工事には適さないといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、設置や撤収が簡便であり、且つ、下階から上階への荷揚げ作業を効率よく行うことができる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吊下げ治具は、下階と上階とを仕切る床スラブに設けた開口部を介して前記下階と上階との間で搬送物の受け渡しを行う際に適用する治具であって、前記開口部の周縁に設置されるフレーム部材と、一端が前記フレーム部材に取り付けられる一方、他端が前記開口部を通じて前記下階に吊下げられる吊下げ部材と、前記吊下げ部材を介して前記下階の所定高さ位置に吊下げ支持される台座とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記台座に第1の係合部材を設けるとともに、前記吊下げ部材に第2の係合部材を設け、前記第1の係合部材を前記第2の係合部材に係脱させることによって、前記台座を前記吊下げ部材に対して着脱可能に吊下げ支持させたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3の吊下げ治具は、上記請求項2において、前記第2の係合部材を、前記吊下げ部材における高さの異なる複数箇所に設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記台座の上面にピン部材を突設したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記台座の上面における周縁部に爪部材を突設したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記フレーム部材を長辺部材と短辺部材とで構成し、前記開口部の大きさに応じて、前記長辺部材及び短辺部材とで画定される矩形の辺の長さを調節可能としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記フレーム部材に、前記開口部の内周面における複数箇所に当接するガイド部材を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項8の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記フレーム部材の内周面にピン部材を突設したことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項9の吊下げ治具は、上記請求項1において、前記台座上に着脱可能に設置される籠部材と、この籠部材を上階に引揚げる吊部材をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吊下げ治具によれば、下階と上階とを仕切る床スラブに設けた開口部の周縁に設置されるフレーム部材と、一端がフレーム部材に取り付けられる一方、他端が開口部を通じて下階に吊下げられる吊下げ部材と、この吊下げ部材を介して下階の所定高さ位置に吊下げ支持される台座とを備えた構成としたことで、台座に搬送物を一時的に載置させることができる。その結果、各階の作業者の手待ちが低減され、作業効率を向上させることができる。また、フレーム部材、吊り下げ部材及び台座という簡易な構成であるため、開口部への設置及び撤収を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、添付図面を参照して、本発明の吊下げ治具における好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、建築中の建物の床スラブ1に設けられた矩形状の開口部(駄目穴)2に、本実施の形態である吊下げ治具10を取付けた状態を示す正面図である。なお、以下では、下階3のコンクリートを打設してから所定の日数が経過した後、型枠材料を解体し、これらの型枠材料を開口部2から上階4に荷揚げして転用する場合について説明する。
【0019】
荷揚げされる型枠材料は、機能によって堰板、支保工及び付属品に区分される。堰板は、打設したコンクリートに直接接して、コンクリートが硬化するまでコンクリートを支える木製の板状材料であり、その寸法は1800mm×600mm程度である。支保工は、堰板を固定するパイプサポートや単管等の長尺の部材である。パイプサポートの長さは階高よりも若干短いものが多用される。付属品は、型枠締付用ボルトのフォームタイやセパレータ等であり、上記の堰板や支保工よりも小さい寸法を有するものである。
【0020】
本実施の形態である吊下げ治具10は、図1に示すように、台座20、吊下げ部材30及びフレーム部材40とを備えて構成してある。
【0021】
台座20は、図1に示すように、後述する吊下げ部材30及びフレーム部材40を介して床スラブ1から吊下げられた状態で、形状や寸法が様々な型枠材料を一時的に載置・保持するためのものである。図2−1は、台座20の平面図、図2−2は、図2−1のA−A断面図、図2−3は、図2−1のB−B断面図である。この台座20は、所定の間隔をあけて配設された複数の縦フレーム21と、縦フレーム21間の中央部分に配設された複数の横フレーム22と、爪部材23と、ピン部材24及びフック25とから構成されるものである。
【0022】
本実施の形態では、図2−1に示すように、台座20を4本の縦フレーム21と3本の横フレーム22とで構成し、これらを適宜な手段により一体化させてある。この縦フレーム21と横フレーム22の材料としては鋼材等を適用することができる。
【0023】
図2−1〜図2−3に示すように、複数の縦フレーム21の上面の両端(周縁)部分には、上方に向けて突出した平板上の爪部材23が設けてある。この爪部材23は、台座20に堰板等の板状部材を載置した場合に、堰板が水平方向に移動するのを規制し、堰板が台座20から脱落するのを防止するものである。
【0024】
一方、複数の横フレーム22の上面中央部分には、上方に向けて突出したピン部材24が設けてある。このピン部材24は、台座20上にパイプサポートや単管等の管状部材を載置する場合に、パイプサポート等の下端部に差し込むことによって、パイプサポート等が水平方向にずれるのを規制するものである。
【0025】
また、台座20の4角、すなわち、台座20の両端に位置する2本の縦フレーム21の両端4箇所には、図2−2に示すようにフック25が設けてある。これらのフック25は、後述する吊下げ部材30に設けた第1係合リング33又は第2係合リング34に係合することによって、台座20を吊下げ部材30に取り付けるものである。
【0026】
吊下げ部材30は、図1に示すように上記の台座20を吊下げ支持するものである。図3−1は吊下げ部材30の正面図、図3−2は吊下げ部材30の側面図である。図3−1に示すように、この吊下げ部材30は、ナイロン、ポリエステル等から構成される長尺のベルト部材31と、フック32と、第1係合リング33及び第2係合リング34とから構成されるものである。本実施の形態では、この吊下げ部材30を4本1組で用いる。フック32は、ベルト部材31の上端部に止金具35を介して取り付けられ、後述するフレーム部材40のベルト結合用リング43に係合することによって、吊下げ部材30をフレーム部材40に取り付けるものである。
【0027】
第1係合リング33及び第2係合リング34は、ベルト部材31の高さの異なる位置にそれぞれ止金具36を介して取り付けられたもので、いずれも上述した台座20のフック25と係合するものである。台座20のフック25を吊下げ部材30に取り付ける場合、台座20に載置する型枠材料の種類に応じて、第1係合リング33と第2係合リング34のどちらか一方を選択することで、台座20の吊下げ高さ位置(すなわち、下階の床スラブ5から台座20までの距離)を調節することができる。例えば、台座20にパイプサポート等の長尺部材を載置する場合には、第2係合リング34に台座20のフック25を取り付ける。一方、パイプサポートよりも寸法の短い堰板や付属品等を台座20に載置する場合には、第1係合リング33に台座20のフック25を取り付けることで、台座20の吊下げ位置をパイプサポートの場合よりも高くすることができる。以下の説明では、第1係合リング33にフック25を係合させた場合の台座20の位置を第1位置、第2係合リング34にフック25を係合させた場合の台座20の位置を第2位置という。
【0028】
なお、台座20の吊下げ高さ位置は、台座20にパイプサポートや堰板を載置した場合にこれらの上端部分が開口部から突出する程度に設定する。
【0029】
フレーム部材40は、開口部2の周縁部に設置される矩形状の枠部材であり、図1に示すように、開口部2を通じて上述した吊下げ部材30及び台座40を吊下げ支持するものである。図4−1は、フレーム部材40の平面図、図4−2は、図4−1のC−C断面図である。このフレーム部材40は、図4−1に示すように、長辺部材41及び短辺部材42と、ベルト結合用リング43と、ガイド部材44及びピン部材45とを備えて構成してある。
【0030】
長辺部材41及び短辺部材42は、それぞれ単管から構成されるものであり、互いの端部同士がクランプ(緊結金具)46によって締結されることによって、矩形状の枠体を構成している。この長辺部材41及び短辺部材42とクランプ46との締結を緩めることで、長辺部材41及び短辺部材42とクランプ46とで画定される長方形の辺の長さを変えることができる。上記構成とすることにより、開口部2の大きさに応じて、フレーム部材40の大きさを調節することが可能である。また、本実施の形態では、堰板やパイプサポート等の長さ寸法の大きい型枠材料を台座20に載置する場合に、これら型枠部材の上端部分を長辺部材41及び短辺部材42に立て掛けて保持するようにしている。
【0031】
ベルト結合用リング43は、図4−1に示すように、短辺部材42の両端に止金具47を介して取り付けられており、上述した吊下げ部材30のフック32を係合させるものである。
【0032】
ガイド部材44は、フレーム部材40の枠内の4角に設置された4本の棒状部材から構成されるものである。図4−2に示すように、4本の棒状部材は、開口部2の内周面に当接している。すなわち、フレーム部材40を開口部2に設置した場合に、向かい合う棒状部材の配置間隔が、開口部2の向かい合う2辺の間隔とほぼ等しくなるように配置してある。上記構成とすることにより、フレーム部材40が開口部2に対して水平方向に移動するのを規制し、フレーム部材44が開口部2からずれることを防止している。
【0033】
ピン部材44は、長辺部材41の内周面に突設されたものである。このピン部材44は、パイプサポート等の長さ寸法の大きい型枠部材を台座20上に載置し、その上端部を長辺部材41に立て掛けた際に、パイプサポートの上端部が水平方向に移動するのを規制するものである。
【0034】
また、フォームタイやセパレータ等の付属品を荷揚げする際には、別途、荷揚げ用籠50を利用する。図5−1は荷揚げ用籠50の平面図、図5−2は図5−1のD−D断面図、図5−3は図5−1のE−E断面図である。図5−1に示すように、荷揚げ用籠50は、フレーム部51と金網52とから構成される籠部53と、籠部53に取り付けられた引揚げ用金具54及び引揚げ用リング55とから構成されるものである。
【0035】
次に、上記構成を有する吊下げ治具10を用いて、型枠部材を下階から上階へ荷揚げする作業について説明する。図6−1は、パイプサポート61を吊下げ治具10の台座20上に載置した状態を示す正面図であり、図6−2は、図6−1を側方から見た図である。なお、図6−2ではフレーム部材40の手前側の短辺部材42を省略している。
【0036】
型枠材料を荷揚げするにあたり、まず、上階の床スラブ1の開口部2の大きさに応じて、フレーム部材40の枠(長辺部材41及び短辺部材42)の大きさを調節し、フレーム部材40を開口部2に設置する。フレーム部材40は、ガイド部材44によって水平方向への移動が規制されるため、開口部2からずれることはない。次いで、フレーム部材40のベルト結合用リング43に、吊下げ部材30のフック32を係合させることにより、吊下げ部材30を吊下げる。
【0037】
パイプサポートのように長さ寸法の大きい型枠材料を台座20上に載置する場合、台座20のフック25を、吊下げ部材30の第2係合リング34に係合させ、台座20を第2位置に配置しておく。作業者は、下階3の解体箇所から吊下げ治具10の設置位置までパイプサポート61を搬送し、このパイプサポート61の下端部を台座20のピン部材24に差込み、上端部をフレーム部材40に設けた複数のピン部材45の間に立て掛ける。図6−1及び図6−2に示すように、台座20上に載置された複数本のパイプサポート61は、それぞれの下端部が台座20のピン部材24によって保持され、上端部がフレーム部材40のピン部材45によって水平方向の移動が規制される。従って、複数本のパイプサポート61は、台座20から脱落するといったことがなく、吊下げ治具10によって保持されることになる。吊下げ治具10に一時的に載置されたパイプサポート61は、上階にいる作業者によって順次引揚げられ、仮置き場所まで搬送される。
【0038】
次に、図7−1は、堰板62を吊下げ治具10の台座20上に載置した状態を示す正面図、図7−2は図7−1を側方から見た図である。なお、図7−2ではフレーム部材40の手前側の短辺部材42を省略している。
【0039】
堰板62を台座20上に載置する場合、台座20のフック25を、吊下げ部材30の第1係合リング33に係合させ、台座20を第1位置に配置しておく。作業者は、下階3の解体箇所から吊下げ治具10まで堰板62を搬送し、この堰板62を台座20上に載置し、堰板62の上端部をフレーム部材40に立て掛ける。図7−1及び図7−2に示すように、台座20上に載置された複数枚の堰板62は、台座20の爪部材23により水平方向の移動が規制されるため、台座20から脱落することがなく、吊下げ治具10によって保持される。吊下げ治具10に一時的に載置された堰板62は、上階にいる作業者によって順次引揚げられ、仮置き場所まで搬送される。
【0040】
次に、図8−1は、付属品(図示せず)を収納した荷揚げ用籠50を吊下げ治具10の台座20上に載置した状態を示す正面図、図8−2は図8−1を側方から見た図である。なお、図8−2ではフレーム部材40の手前側の短辺部材42を省略している。
【0041】
荷揚げ用籠50を台座20上に載置する場合、上述した堰板62の場合と同様に、台座20のフック25を、吊下げ部材30の第1係合リング33に係合させ、台座20を第1位置に配置しておく。作業者は、下階3の解体箇所から吊下げ治具10まで付属品を搬送し、付属品を荷揚げ用籠50に収納し、この荷揚げ用籠50を台座20上に載置する。台座20上に載置された荷揚げ用籠50は、台座20の爪部材23により水平方向の移動が規制されるため、台座20から脱落することがなく、吊下げ治具10によって保持される。次いで、図8−1に示すように、吊上げロープの先端部分のフック(図示を省略)を荷揚げ用籠50の引揚げ用リング55に掛けた後、上階の作業員がこの吊上げロープを引揚げ、引揚げ用籠50を上階に引き揚げる。
【0042】
なお、上記の説明では、荷揚げ作業を下階と上階の作業者2人で行うようにしたが、作業者ひとりで荷揚げ作業を行うことも可能である。この場合、作業者は、まず下階の解体場所から複数の型枠材料を吊下げ治具10の設置位置まで搬送し、これらを吊下げ治具10に載置した後、上階に移動して、吊下げ治具10に載置された型枠材料を引揚げ、これらを仮置き場所まで搬送する。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の吊下げ治具10は、上階と下階とを仕切る床スラブ1に設けた開口部2の周縁に設置されるフレーム部材40と、一端がフレーム部材40に取付けられることにより、開口部2を通じて床スラブ1から吊下げられる吊下げ部材30と、この吊下げ部材30を介して、下階の所定高さの位置に吊下げ支持される台座20とを備えた構成とし、台座20に型枠材料を一時的に載置させるようにした。その結果、各階の作業者の手待ちが低減され、作業効率を向上させることができる。また、フレーム部材、吊り下げ部材及び台座という簡易な構成であるため、開口部への設置及び撤収が簡便であるとともに、上階への持ち運びも容易である。また、開口部から吊下げる構成としたことで、例えば開口部の直下の床スラブ上に他の建築材料が積まれているような場合であっても、荷揚げ作業を行うことが可能である。
【0044】
また、本実施の形態の吊下げ治具によれば、下階の作業者から上階の作業者へ型枠材料を手渡ししていた従来の荷揚げ作業と比べ、各階の作業者が型枠材料を保持する時間が短縮されるため、作業者の疲労を軽減することができる。また、従来の荷揚げ作業では、下階と上階にそれぞれ作業者が必要であったが、本実施の形態の吊下げ治具を用いた場合、作業者ひとりで下階から上階への荷揚げ作業を行うことが可能となる。
【0045】
さらに、本実施の形態の吊下げ治具によれば、台座20にフック25を設けるとともに、吊下げ部材30にフック25と係合する係合リング33,34を設け、フック25を係合リング33,34のいずれかに係脱させることによって、台座20を吊下げ部材30に対して着脱可能に吊下げ支持させた構成としたことで、吊下げ部材30への台座20の連結・取り外しを容易に行うことができる。また、係合リング33,34を、吊下げ部材30の高さの異なる位置に設けたことで、型枠材料の寸法や形状に応じて、台座20の吊下げ高さ位置を調節することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態の吊下げ治具によれば、台座20上面及びフレーム部材40内周面に、型枠材料の水平方向の移動を規制するピン部材24,45をそれぞれ設けたことで、パイプサポートや単管等の長さ寸法の大きい型枠材料を台座20上に安定させて載置することができる。また、台座20の上面における周縁部に、型枠材料の水平方向の移動を規制する爪部材23を設けたことで、堰板等の平板状の型枠材料を台座20上に安定させて載置することができる。
【0047】
加えて、本実施の形態の吊下げ治具によれば、フレーム部材40を長辺部材と短辺部材とで構成し、開口部の大きさに応じて、長辺部材及び短辺部材とで画定される矩形の辺の長さを調節可能としたことで、開口部の大きさによってフレーム部材40を別途用意する必要がない。また、フレーム部材40に、開口部の内周面の複数箇所に当接するガイド部材44を設けたので、フレーム部材40が開口部からずれるのを防止することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、台座20にフック25を設け、吊下用ベルト30に係合リング33,34を設けた構成としたが、台座20に係合リングを設け、吊下用ベルト30にフックを設けてもよい。同様に、上記実施の形態では、吊下用ベルト30にフック32を、支持フレーム40にベルト連結用リング43を設けた構成としたが、吊下用ベルト30に連結用リングを設け、支持フレーム40にフックを設けてもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、下階から上階への型枠材料の荷揚げを想定しているが、上階から下階への型枠材料の移動(例えば地下階への搬入)にも、適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】床スラブに設けられた開口部に、本実施の形態である吊下げ治具を取付けた状態を示す正面図である。
【図2−1】本実施の形態である吊下げ治具における台座の平面図である。
【図2−2】図2−1のA−A断面図である。
【図2−3】図2−1のB−B断面図である。
【図3−1】本実施の形態である吊下げ治具における吊下げ部材の正面図である。
【図3−2】図3−1の側面図である。
【図4−1】本実施の形態である吊下げ治具におけるフレーム部材の平面図である。
【図4−2】図4−1のC−C断面図である。
【図5−1】本実施の形態である吊下げ治具における荷揚げ用籠の平面図である。
【図5−2】図5−1のD−D断面図である。
【図5−3】図5−1のE−E断面図である。
【図6−1】本実施の形態である吊下げ治具にパイプサポートが載置された状態を説明する図である。
【図6−2】図6−1を側方から見た図である。
【図7−1】本実施の形態である吊下げ治具に堰板が載置された状態を説明する図である。
【図7−2】図7−1を側方から見た図である。
【図8−1】本実施の形態である吊下げ治具に荷揚げ用籠が載置された状態を説明する図である。
【図8−2】図8−1を側方から見た図である。
【図9】従来の型枠材料の荷揚げ作業を説明する図である。
【符号の説明】
【0051】
1 上階の床スラブ
2 開口部
3 下階
4 上階
5 下階の床スラブ
10 吊下げ治具
20 台座
21 縦フレーム
22 横フレーム
23 爪部材
24 ピン部材
25 フック
30 吊下げ部材
31 ベルト部材
32 フック(第1係合部材)
33 第1係合リング(第2係合部材)
34 第2係合リング(第2係合部材)
35,36 止金具
40 フレーム部材
41 長辺部材
42 短辺部材
43 ベルト結合用リング
44 ガイド部材
45 ピン部材
46 クランプ
47 止金具
50 荷揚げ用籠(籠部材)
51 フレーム部
52 金網
53 籠部
54 引揚げ用金具
55 引揚げ用リング
61 パイプサポート
62 堰板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階と上階とを仕切る床スラブに設けた開口部を介して前記下階と上階との間で搬送物の受け渡しを行う際に適用する治具であって、
前記開口部の周縁に設置されるフレーム部材と、
一端が前記フレーム部材に取り付けられる一方、他端が前記開口部を通じて前記下階に吊下げられる吊下げ部材と、
前記吊下げ部材を介して前記下階の所定高さ位置に吊下げ支持される台座とを備えたことを特徴とする吊下げ治具。
【請求項2】
前記台座に第1の係合部材を設けるとともに、前記吊下げ部材に第2の係合部材を設け、前記第1の係合部材を前記第2の係合部材に係脱させることによって、前記台座を前記吊下げ部材に対して着脱可能に吊下げ支持させたことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。
【請求項3】
前記第2の係合部材を、前記吊下げ部材における高さの異なる複数箇所に設けたことを特徴とする請求項2に記載の吊下げ治具。
【請求項4】
前記台座の上面にピン部材を突設したことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。
【請求項5】
前記台座の上面における周縁部に爪部材を突設したことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。
【請求項6】
前記フレーム部材を長辺部材と短辺部材とで構成し、前記開口部の大きさに応じて、前記長辺部材及び短辺部材とで画定される矩形の辺の長さを調節可能としたことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。
【請求項7】
前記フレーム部材に、前記開口部の内周面における複数箇所に当接するガイド部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。
【請求項8】
前記フレーム部材の内周面にピン部材を突設したことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。
【請求項9】
前記台座上に着脱可能に設置される籠部材と、この籠部材を上階に引揚げる吊部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の吊下げ治具。

【図1】
image rotate

【図2−1】
image rotate

【図2−2】
image rotate

【図2−3】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5−1】
image rotate

【図5−2】
image rotate

【図5−3】
image rotate

【図6−1】
image rotate

【図6−2】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図9】
image rotate