説明

吊下器具およびその取付器具

【課題】吊下器具を簡便に建物の天井下面に取り付ける手段を提供する。
【解決手段】吊下器具1は、全ネジである支持棒11と、ネジ孔を有し支持棒11に連結される枠体12と、枠体12に連結された被吊下物13とを備える。取付器具2は、操作棒21と、操作棒21の先端に取り付けられた板状体22と、板状体22から側方に各々突起する第1の突起部23および2個の第2の突起部24とを備える。作業者は、支持棒11を枠体12にねじ込み、第1の突起部23をそれらの間に挟持する。その状態で作業者が支持棒11の先端を天井下面のインサートナットに押し当てながら操作棒21を回転させると、支持棒11がインサートナットにねじ込まれ固定される。その後、作業者が操作棒21を逆回転させると、支持棒11に対し枠体12が回転し、第1の突起部23に対する挟持が解放され、取付器具2の吊下器具1からの取り外しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管やケーブルなどを支持する吊りバンドなどの吊下器具と、当該吊下器具を建物の天井下面に取り付けるための取付器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、管やケーブルなどを支持する吊下器具を建物の天井下面に取り付けるためには、足場を組み、作業者が当該足場の上に乗って行う、という方法が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、予め天井のアンカーに螺着した全ネジに対し螺合されるナットを備えた配管吊下器具が開示されている。このような配管吊下器具を全ネジに取り付けるためには、一般的に、作業者が足場に上って直接、配管吊下器具のナットを全ネジにねじ込む、という作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−269657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
足場を組み、作業者がその足場に上って吊下器具の取り付けを行う、という作業は、作業者の足場からの落下という危険を伴うとともに、異なる天井の位置に多数の吊下器具を取り付ける必要がある場合、その各々に関し、いったん作業者が足場から降り、足場を移動した後に再度足場に上る、という動作を要するため、多大な時間と労力を要する。そのため、より簡便な吊下器具の取り付け方法に対するニーズがある。
【0006】
そこで、本発明は、吊下器具を簡便に建物の天井下面に取り付ける手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的に鑑みて想到されたものであり、
円柱形状の棒であって、一方の先端から長手方向に所定の長さの領域における外側面上と、前記一方の先端とは異なる他方の先端から長手方向に所定の長さの領域における外側面上との各々に同一方向に螺旋状にネジ山の設けられた棒状体である支持棒と、
ネジ孔を有する枠体であって、前記ネジ孔に前記支持棒の前記他方の先端側に設けられた前記ネジ山が螺合することにより、前記支持棒の長手方向に垂直な方向の両側に開口した状態で前記支持棒に連結される枠体と、
前記枠体に連結された被吊下物と
を備え、
前記支持棒の前記他方の先端側の端面は、前記ネジ孔に対する前記支持棒の長手方向を軸とする回転に伴い、前記枠体の壁部内側面に接触または近接するように移動する
吊下器具を提供する(第1の実施態様)。
【0008】
また、上記の第1の実施態様において、
前記枠体のうち前記支持棒の前記他方の先端側の端面と対向する領域の壁部内側面は、互いに所定の角度をなして交わる2以上の平面を形成する
構成を採用してもよい(第2の実施態様)。
【0009】
また、上記の第1または2の実施態様において、
前記被吊下物は、管もしくはケーブルを支持する環状体もしくは鈎状体を有する
構成を採用してもよい(第3の実施態様)。
【0010】
また、本発明は、
上記の第1乃至3のいずれかの実施態様にかかる吊下器具を建物の天井下面に取り付けるための取付器具であって、
前記建物の床面上のユーザが前記建物の天井に前記吊下器具を到達させるための棒状体である操作棒と、
前記操作棒の前記ユーザにより保持される側とは異なる側の端部に設けられ、前記操作棒の長手方向に沿った平面上に配置された板状体と、
前記板状体を含む平面上の前記操作棒の長手方向に垂直な方向を左右方向とし、前記板状体の左右方向における中心点を結んだラインを中央線とするとき、前記中央線上のいずれかの位置において、前記板状体から前記板状体を含む平面に垂直な方向に突起する第1の突起部と、
前記板状体の前記第1の突起部が突起する位置より先端側の位置であって前記板状体の前記中央線を対称軸とする互いに対称な2つの位置において、前記第1の突起部と同じ方向に突起する2個の第2の突起部と
を備え、
前記枠体の開口を貫くように前記第1の突起部を前記枠体に挿入し、かつ、前記2個の第2の突起部の間に前記支持棒を挿入した状態で、前記枠体に対し前記支持棒が長手方向を軸とする軸周りに所定の方向に回転されると、当該回転に伴う前記支持棒の移動により、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と前記枠体の壁部内側面とで前記第1の突起部が挟持される
取付器具を提供する(第4の実施態様)。
【0011】
また、上記の第4の実施態様において、
前記第1の突起部は、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と前記枠体の壁部内側面とで狭持された状態において、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と点または線で接する形状を有する
構成を採用してもよい(第5の実施態様)。
【0012】
また、上記の第4または5の実施態様において、
前記第1の突起部は、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と前記枠体の壁部内側面とで狭持された状態において、前記枠体の壁部内側面と互いに所定の角度をなして交わる2以上の平面で接する形状を有する
構成を採用してもよい(第6の実施態様)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の実施態様にかかる吊下器具および第4の実施態様にかかる取付器具によれば、当該取付器具に当該吊下器具をセットし、当該取付器具の支持棒の端部を天井下面に予め配置されたインサートナットに押し当てながら、取付器具の操作棒を回転させることにより、作業者が足場に上り下りすることなく建物の天井下面に吊下器具の取り付けを行うことができる。
【0014】
その際、インサートナットにしっかりと支持棒の端部がねじ込まれた後、取付器具の操作棒を逆方向に回転させることにより、吊下器具による取付器具の挟持が解放され、取付器具を天井下面に固定された吊下器具から容易に取り外すことができる。
【0015】
本発明の第2の実施態様にかかる吊下器具および本発明の第6の実施態様にかかる取付器具によれば、当該取付器具を用いて当該吊下器具を天井下面に取り付ける際、吊下器具と取付器具が所定の角度をなして交わる2平面で接するため、取付器具の操作棒を回転する際、吊下器具が取付器具からずれにくい。
【0016】
本発明の第3の実施態様にかかる吊下器具によれば、管もしくはケーブルを支持するための吊りバンド等を簡易に天井下面に取り付けることができる。
【0017】
本発明の第5の実施態様にかかる取付器具によれば、本発明の第1の実施態様にかかる吊下器具を天井下面に取り付ける際、当該吊下器具が当該取付器具を点または線で挟持するため、取り付けが完了した後に操作棒を逆方向に回転させることで当該挟持を解放する際、その解放がスムーズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明にかかる吊下器具の外観を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明にかかる取付器具の外観を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明にかかる吊下器具および取付器具をセットした状態の外観を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例)
以下、本発明の一具体例である実施例を、図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本実施例にかかる吊下器具1の外観を示した概略図である。
【0021】
吊下器具1は、全ネジである支持棒11と、ネジ孔を有し支持棒11に螺合される枠体12と、枠体12に連結された被吊下物13とを備えている。
【0022】
支持棒11は、例えばスチール製の円柱形状の棒状体である。支持棒11の長手方向の長さは、使用したい用途によって変化するため任意であるが、本実施例においては例えば1メートルとする。支持棒11は、長手方向の全領域における外側面上に図1の下から見て時計回りに螺旋状にネジ山が設けられている。また、支持棒11を長手方向に垂直な平面で切った断面の直径は、例えば3/8インチである。
【0023】
後述するように、下から見て時計回りにネジ山が設けられている場合(右ネジ)、支持棒11を建物の天井下面にネジ込むためには、支持棒11を支持棒11の長手方向を軸とする軸周りに下から上へ押圧しながら時計回りに回転させてやる必要がある。
【0024】
枠体12は、上部に六角の雌ネジ121(上述のネジ孔)を水平に配置した状態で有するとともに、雌ネジ121の下部に連結するように設けられた枠部122を有している。雌ネジ121および枠部122は、例えばともにスチール製である。
【0025】
枠部122は、例えば細長い板状部材が長手方向の所定の部分において折れ曲がったような形状を有している。また、当該板状部材における長手方向と垂直な方向の幅は、例えば2.5センチメートルである。
【0026】
より具体的には、枠部122は、雌ネジ121の下部に溶接され雌ネジ121から見て水平方向の両外側に所定の長さだけ延伸し、その後に各々垂直に折れ曲がるように真下に所定の長さだけ延伸し、さらにその後に各々60度で内側に折れ曲がるように斜め下方に所定の長さだけ延伸し、両側から延伸してきた枠部122が合わさった所で各々120度で折れ曲がるように真下に所定の長さだけ延伸している。
【0027】
枠部122において両側から合わさって各々120度で折れ曲がるように真下に所定の長さだけ延伸している部分には、両板状部材を垂直に貫くように孔が設けられている。被吊下物13の所定の部位が有する孔が当該両板状部材の孔に連通するように、被吊下物13が配置された状態で、それらの互いに連通した孔にボルト14が挿入され、ナット15による締め付けが行われている。その結果、枠体12の下方に被吊下物13が固定されている。
【0028】
被吊下物13は、配管もしくは配電等のケーブルを支持するためのスチール製の環状体である。当該環状体の環の直径は例えば15センチメートルである。また、環状体の枠を構成する部分の幅は、例えば2.5センチメートルである。
【0029】
使用に際し、支持棒11は、雌ネジ121にねじ込まれる。すなわち、支持棒11の有するネジ山は、雌ネジ121のネジ谷と螺合する。そして、雌ネジ121に対する支持棒11の長手方向を軸とする軸周りの回転に伴い、支持棒11の先端部分である一端面は枠体12の壁部内側面(枠部122の構成する枠の内側の側面)に接触するまたは近接するように移動する。なお、支持棒11と雌ネジ121との間の摩擦力が小さくなるように、雌ネジ121のネジ谷は支持棒11のネジ山の深さに対し、通常のネジ谷よりもやや深めに切られている。
【0030】
図1に示されるように、支持棒11が枠体12と螺合した状態においては、支持棒11の枠体12側の端部は、支持棒11の長手方向を含む一平面上において全方向から枠部122により囲われる形となる。一方、支持棒11は当該一平面の垂直方向においては枠部122により囲われず、作業者は枠体12の開口から支持棒11を視認することができる。
【0031】
なお、枠体12のうち支持棒11の枠体12にねじ込まれた側の端面と対向する領域の壁部内側面は、120度の角度をなして交わる2つの平面を形成している。これは、後述するように、取付器具2に対し吊下器具1をセットする際に、それらの係合をより確かなものにする役割を果たす。
【0032】
以下、吊下器具1を建物の天井下面に取り付けるための取付器具2について説明する。
【0033】
図2は、本実施例にかかる取付器具2の外観を示した概略図である。
【0034】
取付器具2は、操作棒21と、操作棒21における長手方向に沿った平面上に配置された板状体22と、第1の突起部23と、2個の第2の突起部24とを備える。
【0035】
操作棒21は、例えばスチール製の細長い棒状体である。操作棒21は円筒形状を有しており、操作棒21を長手方向と垂直な平面で切った断面の直径は例えば4.5センチメートルである。なお、操作棒21の長手方向の長さは、使用したい用途によって任意であるが、本実施例においては例えば2.5メートルである。
【0036】
板状体22は、例えばスチール製である。板状体22は、長さ25センチメートル、幅5センチメートル、厚さ0.5センチメートルの細長い板状体を、その一方の端部から5センチメートルの部分を長手方向に対し垂直に折り曲げた形状をしている。
【0037】
図2に示されるように、板状体22は、上記の折り曲げられた部分において、例えば溶接により、操作棒21の作業者に保持される側とは異なる側の端部上に取り付けられている。
【0038】
その結果、板状体22は操作棒21の一方の端部からさらに延伸することになり、操作棒21と板状体22とを合わせた取付器具2の長手方向の長さは、例えば2.7メートルになる。
【0039】
第1の突起部23は、例えばスチール製である。第1の突起部23は、長手方向の長さが例えば4センチメートルの棒状体である。第1の突起部23を長手方向に垂直な平面で切った断面は、正六角形である。
【0040】
第1の突起部23は、板状体22を含む平面上において操作棒21の長手方向に垂直な方向を左右方向とするとき、当該左右方向における中央位置から板状体22に対し垂直に突起している。
【0041】
第2の突起部24は、例えばスチール製である。第2の突起部24は、長手方向の長さが例えば4センチメートルの板状の部材である。
【0042】
第2の突起部24は、板状体22の操作棒21側と異なる側の端縁部の左右方向における中央線を対称軸とする互いに対称な2つの位置から、第1の突起部23と同じ方向に突起している。また、それら2個の第2の突起部24は、それらの間に支持棒11を縦に挿入することが可能な間隔を有している。
【0043】
また、第2の突起部24と第1の突起部23との間の長さは、使用の用途に応じて変化するので任意であるが、本実施例においては6センチメートルとする。
【0044】
以上のような構成を有する吊下器具1および取付器具2の使用方法の一例について、図面を用いて以下に説明する。
【0045】
図3は、吊下器具1を取付器具2にセットした状態の外観を示す概略図である。
【0046】
先ず、作業者は、枠体12の上述の開口を貫くように第1の突起部23を枠体12に挿入する。これと同時に、作業員は、支持棒11を2個の第2の突起部24の間に挿入する。その状態で作業員が支持棒11を長手方向を軸とする軸周りに所定の方向(上から見て時計回り)に回転させると、当該回転に伴い支持棒11が枠体12に対して相対的に下がってきて、支持棒11の下側の端面と枠体12の壁部内側面との間に第1の突起部23が挟持される。これにより、取付器具2に対する吊下器具1のセットが完了する。
【0047】
ところで、建物の天井下面には予め、支持棒11の枠体12に螺合されている側とは反対側の端部が挿入されるべきインサートナットが取り付けられている。作業者は、上記のように吊下器具1をセットした状態の取付器具2を持ち上げ、吊下器具1の支持棒11の先端部を天井下面のインサートナットに挿入するように押し当てる。
【0048】
その状態で、作業者が操作棒21を所定の方向(下から見て時計回り)に回転させると、その力により板状体22および第1の突起部23が枠体12を同方向に回転させる。それに伴い、枠体12に下端で螺合され、第1の突起部23にその位置が固定されている支持棒11もまた、同方向に回転される。その結果、支持棒11の上端がインサートナットにねじ込まれてゆく。
【0049】
作業者は上記のように操作棒21を回転させながら、支持棒11をしっかりとインサートナットにねじ込むと、支持棒11を先の所定の方向と逆の方向(下から見て反時計回り)に回転させる。その力により板状体22および第1の突起部23が枠体12を同方向(下から見て反時計回り)に回転させる。
【0050】
その際、支持棒11の上端におけるインサートナットに対するねじ込みは硬く、支持棒11の下端における雌ネジ121に対するねじ込みはそれと比べ緩い。そのため、支持棒11はインサートナットに固定された状態を保ち回転せず、枠体12のみが回転する。その結果、枠体12が支持棒11に対し下から見て反時計回りに回転しつつ下方に移動し、支持棒11と枠体12との間に挟持されていた第1の突起部23がその挟持から解放される。
【0051】
なお、第1の突起部23は上述のように六角柱であり、支持棒11の下端面は第1の突起部23と線で接触しているため、支持棒11と第1の突起部23との間の摩擦力は、支持棒11に対する枠体12の回転を阻害する程大きくはない。
【0052】
ところで、作業者は、操作棒21を下から見て反時計回りに回転させる際、回転させ過ぎて支持棒11の下端部と枠部122との螺合が解かれ、枠体12が支持棒11から脱落してしまわないように注意する必要がある。
【0053】
上記のように第1の突起部23が支持棒11と枠体12との間の挟持から解放されると、取付器具2と吊下器具1との連結はなくなる。そこで、作業者は操作棒21を操作し、取付器具2の板状体22を吊下器具1から側方に引き剥がすように取り外す。これにて、吊下器具1の天井下面に対する取り付け作業が終了する。
【0054】
なお、本実施例においては、支持棒11の下側の端面と枠体12の壁部内側面との間に挟持される第1の突起部23が、当該壁部内側面との間において面で接する。両側の壁部内側面は120度で交差しており、第1の突起部23は正六角柱なので断面における6隅の各々の角度が同じく120度であるためである。このように、第1の突起部23と枠体12の壁部内側面とが2面により接することにより、それらが互いにずれることがなく、作業者による操作棒21の回転動作によって、第1の突起部23が壁部内側面から外れてしまうことがなく好適である。
【0055】
(変形例)
上述した実施例は、本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形が可能である。
【0056】
例えば、上述した実施例における各要素の形状、大きさ、個数などを示す数値はあくまでも例示であって、特に問題がなければ他の数値が採用されてもよい。例えば、第2の突起部24と第1の突起部23との間の長さは6センチメートルとしたが、本発明はこれに限定されることなく、6センチメートルより短くしてもよいし長くしてもよい。
【0057】
ただし、第2の突起部24と第1の突起部23との間の長さを支持棒11と同じ長さ(例えば、1メートル)程度まで長くしてしまうと、第2の突起部24と支持棒11とが干渉してしまい、支持棒11の建物の天井下部に対するねじ込みに支障をきたすので注意が必要である。このように、本実施例にかかる各要素の大きさは、使用の用途に応じて適宜、望ましい大きさに変化させてやる必要がある。
【0058】
また、上述した実施例における各要素の素材は、特に問題がなければ、上述したものに限られず他の素材が採用されてもよい。例えば、支持棒11等はスチール製としたがステンレスやアルミ製等の他の金属や、十分な強度が確保できるのであればプラスチック製等であってもよい。
【0059】
また、支持棒11は、その長手方向の全領域において外側面上に時計回りに螺旋状にネジ山が設けられているものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、支持棒11は、一方の先端から長手方向に所定の長さの領域における外側面上(例えば、枠部122と螺合する部分)と、当該一方の先端とは異なる他方の先端から長手方向に所定の長さの領域における外側面上(例えば、インサートナットと螺合する部分)との各々に、同一方向に螺旋状にネジ山が設けられていれば足りる。ただし、螺旋状にネジ山が設けられている領域(長手方向の長さ)が小さ過ぎると支障をきたすので注意する必要がある。
【0060】
また、第1の突起部23は断面形状が六角形であるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、特に問題がなければ他のいかなる形状が採用されてもよい。ただし、第1の突起部23が上述の壁部内側面と面で接触する形状を有していることが力の伝達や安定性の観点から望ましい。さもなければ、ユーザが操作棒11を回転させる際に第1の突起部23が壁部内側面から外れてしまう、すなわちずれてしまう可能性があるからである。
【0061】
また、第1の突起部23は、支持棒11の下側の端面と線で接触しているものとしたが、第1の突起部23もしくは支持棒11の形状を工夫することによって、両者が点で接するような構成を採用してもよい。例えば、第1の突起部23の上面を球形状にすることにより、両者の点による接触が可能となる。さらに、特に問題がなければ、第1の突起部23および支持棒11の下側の端面はいかなる形状を有していてもよい。ただし、第1の突起部23および支持棒11の下側の端面が面で接触するような形状が採用される場合には、両者の相対的な移動に対する摩擦力が大きくなってしまうため、例えばそれらの接触面に潤滑油を塗るなど、別途手当が行われることが望ましい。
【0062】
また、被吊下物13は、配管もしくは配電等のケーブルを支持するための環状体であるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、被吊下物13は鈎形状(フック形状)などの環状体以外の形状の器具であってもよいし、電球など、他のものを吊り下げるためのものでない対象物であってもよい。
【0063】
また、左右両側の壁部内側面が交差する角度は120度であるものとしたが、本発明はこれに限られることなく、特に問題がなければ、他のいかなる角度が採用されてもよい。ただし、第1の突起部23が当該壁部内側面と面で接触するように、壁部内側面が交差する角度は第1の突起部23の側面がなす角度と一致することが望ましい。
【0064】
また、第1の突起部23を板状体22に対し着脱可能としてもよい。枠体12の下側の壁部内側面の形状は吊下器具によって異なる場合がある。そのため、それら複数の形状の各々に対応する形状の第1の突起部23を準備しておき、取り付けたい吊下器具に応じた第1の突起部23を板状体22に取り付けることで、枠体12の形状が異なる様々な吊下器具に対し、1つの取付器具で対応可能となる。
【0065】
なお、突起部23を板状体22に着脱可能とする方法としては既知の様々なものが採用可能である。例えば、突起部23にネジ孔を設け、板状体22に貫通孔を設け、板状体22の背面側からボルトを板状体22の貫通孔に挿入し、さらに突起部23のネジ孔にそのボルトを挿入してねじ込む方法や、突起部23側にネジを溶接等で取り付け、板状体22側に設けたネジ孔に突起部23のネジ部をねじ込む方法などが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本考案の吊下器具および取付器具は、工事の現場などにおいて重宝されるため、多く製造・販売され得る。従って、いわゆる製造業や小売業などのサービス業において利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…吊下器具、11…支持棒、12…枠体、121…雌ネジ、122…枠部、13…被吊下物、14…ボルト、15…ナット、2…取付器具、21…操作棒、22…板状体、23…第1の突起部、24…第2の突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の棒であって、一方の先端から長手方向に所定の長さの領域における外側面上と、前記一方の先端とは異なる他方の先端から長手方向に所定の長さの領域における外側面上との各々に同一方向に螺旋状にネジ山の設けられた棒状体である支持棒と、
ネジ孔を有する枠体であって、前記ネジ孔に前記支持棒の前記他方の先端側に設けられた前記ネジ山が螺合することにより、前記支持棒の長手方向に垂直な方向の両側に開口した状態で前記支持棒に連結される枠体と、
前記枠体に連結された被吊下物と
を備え、
前記支持棒の前記他方の先端側の端面は、前記ネジ孔に対する前記支持棒の長手方向を軸とする回転に伴い、前記枠体の壁部内側面に接触または近接するように移動する
吊下器具。
【請求項2】
前記枠体のうち前記支持棒の前記他方の先端側の端面と対向する領域の壁部内側面は、互いに所定の角度をなして交わる2以上の平面を形成する
請求項1に記載の吊下器具。
【請求項3】
前記被吊下物は、管もしくはケーブルを支持する環状体もしくは鈎状体を有する
請求項1または2に記載の吊下器具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の吊下器具を建物の天井下面に取り付けるための取付器具であって、
前記建物の床面上のユーザが前記建物の天井に前記吊下器具を到達させるための棒状体である操作棒と、
前記操作棒の前記ユーザにより保持される側とは異なる側の端部に設けられ、前記操作棒の長手方向に沿った平面上に配置された板状体と、
前記板状体を含む平面上の前記操作棒の長手方向に垂直な方向を左右方向とし、前記板状体の左右方向における中心点を結んだラインを中央線とするとき、前記中央線上のいずれかの位置において、前記板状体から前記板状体を含む平面に垂直な方向に突起する第1の突起部と、
前記板状体の前記第1の突起部が突起する位置より先端側の位置であって前記板状体の前記中央線を対称軸とする互いに対称な2つの位置において、前記第1の突起部と同じ方向に突起する2個の第2の突起部と
を備え、
前記枠体の開口を貫くように前記第1の突起部を前記枠体に挿入し、かつ、前記2個の第2の突起部の間に前記支持棒を挿入した状態で、前記枠体に対し前記支持棒が長手方向を軸とする軸周りに所定の方向に回転されると、当該回転に伴う前記支持棒の移動により、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と前記枠体の壁部内側面とで前記第1の突起部が挟持される
取付器具。
【請求項5】
前記第1の突起部は、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と前記枠体の壁部内側面とで狭持された状態において、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と点または線で接する形状を有する
請求項4に記載の取付器具。
【請求項6】
前記第1の突起部は、前記支持棒の前記他方の先端側の端面と前記枠体の壁部内側面とで狭持された状態において、前記枠体の壁部内側面と互いに所定の角度をなして交わる2以上の平面で接する形状を有する
請求項4または5に記載の取付器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−251600(P2012−251600A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124403(P2011−124403)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(511134908)オキゲン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】