説明

吊具、及び、それを用いる上吊り引戸の構造

【課題】建具枠のねじれや、戸体のねじれ(傾きなど)が生じた状況であっても、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことを可能とする新規な上吊り引戸の形態と、吊具の構成を提案する。
【解決手段】レール部81に戸体2を吊下げるための吊具5であって、前記レール部81に対し移動可能に取付けられるための移動体52と、前記戸体2側に固定される固定体53と、前記移動体52と前記固定体53とを連結する連結体54と、を有し、前記固定体53は、前記移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、前記移動体52に対して相対移動可能に構成される、こととするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具の構造に関するものであり、詳しくは、吊具により吊られつつスライド移動可能に構成される上吊り引戸の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レール部に対し吊具を介して引戸をスライド移動可能に吊り下げる構成の上吊り引戸は周知であり、吊具に関連する技術について開示する文献も存在する(例えば、特許文献1参照。)。このような吊具を利用する上吊り引戸の形態は、戸車を利用するタイプの引戸と比較すると、戸車をガイドする床レールを設置する必用が無く、段差の少ないバリアフリーの形態を実現し易いというメリットがある。
【0003】
特許文献1は、吊具とともに設けられる外れ防止具について開示するものであるが、この外れ防止具の形態を吊具に採用することも考えられる。この場合において、吊具(外れ防止具)は、被支持体としての吊車(車輪)を設けた移動体(駆動体)と、戸体側に固定される固定体と、移動体と固定体とを連結する連結体(係止板)を有する構成となり、連結体が移動体に対して揺動可能に設けられることで、固定体の移動体に対する相対角度が変更可能に構成されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−37694号公報
【特許文献2】特開2009−275344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される形態を吊具に採用する場合に、例えば、建具枠のねじれや、戸体のねじれ(傾きなど)が生じた状況になると、一部の吊車に過剰に負荷がかかり、この負荷に比例して、吊車が回転する際の摩擦抵抗が増加することになる。このような状況では、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことができなくなってしまうことが懸念される。また、一部の吊車に過剰に負荷がかかることによって、吊車の回転の際に異音が生じることも懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、建具枠のねじれや、戸体のねじれ(傾きなど)が生じた状況であっても、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことを可能とする新規な上吊り引戸の形態と、吊具の構成を提案するものである。
【0007】
また、従来は固定体を戸体に固定するために、専用のケースを用いる構成とするものがあった。つまり、戸体に専用のケースを固定し、その専用のケースに対して固定体を固定する形態とするものである。
【0008】
しかし、このような専用のケースを用いる構成では、専用のケースの製作コストが必要となるとともに、組立て工数が増えることになる。
【0009】
そこで、本発明の他の課題は、戸体に対する固定体の固定に関し、専用のケースが不要な新規な構成の吊具を提案することにある。
【0010】
また、戸体に対する吊具の固定は、従来ビスを用いて行われるものであったが、そもそもビスが必要となることや、工具を利用した留付け作業も必要となるため、ビスを不要とする構成が望まれていた。
【0011】
そこで、本発明の他の課題は、ビスなどの固定具が不要であり、また、工具を利用した留付け作業も不要とすることで、戸体への吊具の固定を容易に行える新規な構成の吊具を提案することにある。
【0012】
また、特許文献2に開示される吊具は、吊具を介して戸体を吊下げた状態において、戸体の真横からのネジ操作によって吊具の調整を行い、戸体の建付け調整が可能なものとなっている。
【0013】
しかしながら、吊具は天井に近い高い位置にあるため、戸体の真横からのネジ操作をする場合には、高所において工具を水平にした状態での作業が強いられ、脚立などを準備する手間も生じることになり、作業性の改善が望まれるものである。また、吊具の構造が複雑であるため、簡易な構成とすることによる低コスト化が望まれるものとなる。
【0014】
そこで、本発明の他の課題は、吊具の調整作業が容易であり、かつ、簡易な構成を実現する新規な吊具の構成を提案することにある。
【0015】
また、レール部に対する吊具の取付について、ねじで固定されたレール部材のねじを外してレール部材を取り外し、外したレール部材の端部より吊り車の取り付け取り外しを行う形態が知られている。或いは、レール部に対する吊具の取付は、レール部の端部に設けられた切欠部から吊車を挿入し、レール部の支持片に吊車を載せた後、切欠部を別体のカバー部材にて閉じる形態が知られている。別体のカバー部材は、吊車を切欠部から落下させないようにするために必要となるものである。
【0016】
しかしながら、レール部材の取り外しを必要とする形態では、レール部材の取付作業も必要となるため、上枠と一体のレールとする構成が望まれていた。また、別体のカバー部材を設ける形態では、カバー部材の製作が必要となることや、カバー部材の取付作業も必要となるため、カバー部材を不要とする構成が望まれていた。
【0017】
そこで、本発明の他の課題は、レール部への吊具の取付に関し、レール部材の取付取り外し作業を不要とすることで、レール部の吊具の取付を容易に可能とする新規な構成の吊具を提案することにある。これに加え、さらに、レール部において別体のカバー部材が不要であり、また、カバー部材の取付作業も不要とすることで、レール部の吊具の取付を容易に可能とする新規な構成の吊具を提案することにある。
【0018】
また、上吊り引戸が設置される箇所は、居室の開口部のみならず、浴室やガレージ(倉庫)など、様々な場所が考えられる。ここで、特に浴室において使用する場合には、浴室側の水が脱衣室などの浴室外空間に漏れないようにするための止水性を確保する必要がある。そして、上吊り引戸の場合には、吊具を移動可能とするための移動用空間が必要とされるため、この移動用空間の部位には止水用の壁部を設けることができないものとなる。このため、建具の上部に形成されるレール部の箇所における止水性の十分な確保が課題となる。例えば、掃除の際においては、戸体の全面にシャワーが掛けられることも想定されるが、このように意図的に戸体に水がかけられるような状況においても、脱衣室側への水漏れを確実に防止する必要があるのである。
【0019】
そこで、本発明の他の課題は、上吊り引戸において、レール部の箇所における止水性を十分に確保するための新規な構成を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0021】
即ち、請求項1に記載のごとく、
レール部に戸体を吊下げるための吊具であって、
前記レール部に対し移動可能に取付けられるための移動体と、
前記戸体側に固定される固定体と、
前記移動体と前記固定体とを連結する連結体と、を有し、
前記固定体は、前記移動体の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、
前記移動体に対して相対移動可能に構成される、
こととするものである。
【0022】
また、請求項2に記載のごとく、
前記移動体、及び、前記固定体は、それぞれ、前記連結体に対し、前記戸体の厚み方向において移動可能に構成される、
又は、
前記連結体が変形することによって、前記移動体と前記固定体が、前記戸体の厚み方向において相対移動可能に構成される、
ことにより、
前記固定体は、前記移動体の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、
前記移動体に対して相対移動可能に構成される、
こととするものである。
【0023】
また、請求項3に記載のごとく、
前記吊具の固定体は、
前記戸体の縦框に直接的に固定される、
又は、
前記戸体の上桟に直接的に固定される、
こととするものである。
【0024】
また、請求項4に記載のごとく、
前記固定体は、
前記戸体の前記縦框、又は、前記上桟に対して挿入することで係合固定される、
こととするものである。
【0025】
また、請求項5に記載のごとく、
前記連結体は、前記移動体に対して上下移動可能に構成され、
前記連結体の上下位置を調整して戸体の建付けを調整するための吊具調整部材を有し、
前記吊具調整部材は、戸体の外部において、下方から操作可能に設けられる、
こととするものである。
【0026】
また、請求項6に記載のごとく、
前記吊具を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記移動体は、前記レール部に支持される被支持体を有し、
前記被支持体は、前記レール部に設けた挿入部から挿入することで、前記レール部に支持された状態とすることができ、
前記挿入部が設けられる位置は、前記吊具と前記戸体を組み付けた後に、前記戸体を移動させた場合において、前記被支持体が到達しない位置とする、
こととするものである。
【0027】
また、請求項7に記載のごとく、
前記吊具を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記戸体の上部における浴室側に水返部を設ける、
こととするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0029】
即ち、請求項1に記載の発明においては、
戸体のねじれ(傾きなど)が生じた場合であっても、レール部と移動体との間での摩擦抵抗の増加などが防止され、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことが可能となる。
【0030】
また、請求項2に記載の発明においては、
戸体のねじれ(傾きなど)が生じた場合であっても、レール部と移動体との間での摩擦抵抗の増加などが防止され、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことが可能となる。
【0031】
また、請求項3に記載の発明においては、
吊具の固定体が戸体の枠を構成する部材に対し固定される形態となり、専用のケースが不要となって、組立工数を減らすことが可能となる。また、構造が簡易なものとなるため、低コストでの製作が可能となるとともに、故障や欠陥に伴う不具合発生の低減が可能となる。
【0032】
また、請求項4に記載の発明においては、
戸体に対する吊具の固定において、ビスが不要な構成とすることができ、戸体への吊具の固定を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、請求項5に記載の発明においては、
戸体の建付け調整を下方からできることになり、脚立などの準備も不要とすることができ、調整作業の作業性に優れた構成を実現できることになる。
【0034】
また、請求項6に記載の発明においては、
レール部を構成するレール部材の取り付け取り外し作業が不要であり、また、挿入部を別体のカバー部材などを用いて閉じる必要がないため、カバー部材の製作が不要となって、低コスト化が実現されるとともに、施工作業の簡易化を図ることが可能となる。
【0035】
また、請求項7に記載の発明においては、
戸体と上枠の間の隙間を狭くすることができ、移動用空間内への水の浸入をより確実に防止することができ、レール部の箇所における止水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明が適用される建具の例である浴室出入口用建具の正面図。
【図2】本発明が適用される建具の例である浴室出入口用建具の縦断面図。
【図3】本発明が適用される建具の例である浴室出入口用建具の水平断面図。
【図4】建具枠の一部を構成する上枠、及び、上枠に形成されるレール部の部位についての拡大断面図。
【図5】吊具の側面図。
【図6】(a)は、吊具の内部構造について示す縦断面図、(b)は移動体と固定体の相対位置の変更について示す図。
【図7】(a)は、吊具を戸体の側方から取付ける構成について示す図、(b)は戸体の縦框に形設される穴部について示す図。
【図8】連結体が変形する吊具の実施形態について示す図。
【図9】吊具調整部材が下方から調整できることについて示す図。
【図10】吊具調整部材に関連した吊具の別実施形態について示す図。
【図11】戸体の上桟に吊具の固定体を固定する実施形態について示す図。
【図12】吊具のレール部への取付けについて説明する図。
【図13】吊具、及び、戸体の組み付けについて説明する図。
【図14】(a)は戸体の上桟に水返部を設ける例について示す図、(b)は戸体の上部にモヘアからなる水返部を設ける例について示す図、(c)は戸体の上部に弾性片からなる水返部を設ける例について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
なお、説明中において、図面を参照する際の便宜のため、紙面右側を「右」、紙面左側を「左」、紙面上側を「上」、紙面下側を「下」とするが、これらの位置を特定するための用語は、具体的な実施構造を限定するためのものではない。
【0038】
図1は、本発明の構成を有する上吊り引戸を使用した浴室出入口用建具1の正面図である。
この浴室出入口用建具1においては、片引戸形式でスライドする戸体2と、戸体2の戸袋部を構成する固定面材3を有する。また、上枠91、下枠92、及び、左右の縦枠93・94によって四方枠状の建具枠90が構成され、この建具枠90内に戸体2と固定面材3が納められる。また、上枠91、下枠92の長手方向中途部において、上下方向に縦枠95が立設され、この縦枠95と左側の縦枠93の間に固定面材3が納められる。また、縦枠95と右側の縦枠94の間に開口部4が形成され、この開口部4が戸体2によって開閉される構成としている。また、この構成により、上枠91、下枠92、縦枠94・95によって開口部枠4Aが構成されることとしている。
【0039】
図2は、本発明の構成を有する上吊り引戸を使用した浴室出入口用建具1の縦断面図である。
戸体2の上部は、吊具5を介して上枠91に対して吊下げられている。吊具5は、上枠91に対して相対移動可能に構成されている。また、戸体2の下部に設けた被ガイド部2aが、下枠92に形設されたガイド溝部92aによってガイドされる構成としている。このようにして、戸体2が、いわゆる上吊り引戸として構成されている。
【0040】
図3は、本発明の構成を有する上吊り引戸を使用した浴室出入口用建具1の水平断面図である。
縦枠94・95の間に形成される開口部4は、戸体2の開閉により開放、閉鎖される構成としている。この戸体2の開閉の際には、戸体2の両面に設けた引手21a・21bを利用できる構成となっている。
【0041】
図4は、建具枠の一部を構成する上枠91、及び、上枠91に形成されるレール部81についての拡大断面図である。
上枠91は、長尺の部材であって、垂直板部91aを有する支持部材91bと、支持部材91bの垂直板部91aに対して支持されるレール部材91cを有して構成される。また、レール部材91cは、下側か開放される断面視略門状の長尺部材であり、その下側開放部から戸体2が挿入される。また、レール部材91cの左右の縦壁部91d・91eの上下方向中途部には、それぞれレール片91f・91gが内側に向けて突設されており、このレール片91f・91gに、吊具5における被支持体としての吊車51a・51bが回転移動可能に載置される。また、レール片91f・91gの間には隙間が確保されており、この隙間に吊具5の移動体52が移動可能に挿入された状態となっている。このような上枠91の構成により、吊具5の被支持体としての吊車51a・51bを下側からレール片91f・91gによって支える構成とするレール部81が構成される。
【0042】
次に、吊具の構成について説明する。
図5は、吊具5の側面図である。図6(a)は、吊具5の内部構造について示す縦断面図、図6(b)は、移動体52と固定体53の相対位置の変更について示す図である。図7(a)は、吊具5を戸体2の側方から取付ける構成について示す図、図7(b)は、戸体2の縦框21に形設される穴部21fについて示す図である。
【0043】
図5に示すごとく、吊具5は、レール部81(図4参照)に対し移動可能に設けられる移動体52と、戸体2側に固定される固定体53と、移動体52と固定体53とを連結する連結体54と、を有して構成される。
移動体52は、本体部52aと、本体部52aの両側部に設けられる被支持体としての吊車51a(51b:図6(a))を有する。また、本体部52aには、連結体54の上部54aが挿入される空間部52bが形設される。また、空間部52bには、傾斜部52cが形成されており、この傾斜部52cからは、本体部52aの外部から螺挿される吊具調整部材52dが突出する構成としている。本実施形態では、吊具調整部材52dはボルトにて構成され、本体部52aに斜めに形設された穴部52fに対して、ボルトをねじ込む構成としている。また、本実施形態では、図4に示すごとく、レール部81によって支持される吊車51a・51bを被支持体としているが、被支持体としては、回転する吊車51a・51bを使用するほか、回転しない駒状の摺動部材などを使用することも考えられる。
【0044】
また、図5及び図6(a)に示すごとく、固定体53は、本体部53aを有する。また、本体部53aには、連結体54の下部54bが挿入される空間部53bが形設される。また、本体部53aには、空間部53bを跨ぐ連結軸53cが横設されており、この連結軸53cが連結体54の下部54bに形設された挿通穴54dに貫装される。
【0045】
また、図7(a)(b)に示すごとく、固定体53の先端部には、挿入凸部53dが設けられており、この挿入凸部53dが、戸体2の縦框21に形設された穴部21fに側方から挿入されることで、戸体2に対して固定体53が規定の位置に設けられるようになっている。
【0046】
また、図5及び図6(a)に示すごとく、固定体53の下部には、係合部53eが設けられ、固定体53が戸体2の縦框21に挿入された状態において、係合部53eが縦框21と係合することで、固定体53が縦框21に対して係合固定されるようになっている。また、係合部53eは、縦框21の外部からの操作によって、縦框21との係合が解除できる構成としており、これにより、固定体53を縦框21から取り外しできるようになっている。本実施形態では、係合部53eは、本体部53aの下部において略水平に伸びるアーム部53fと、アーム部53fに設けた下側突起部53gを有する構成としており、この下側突起部53gの縦框21の壁面端部21cに対する係合/係合解除が行える構成としている。また、アーム部53fの端部53kは縦框21の外部に延出されることにより、縦框21の外部における係合解除の操作が可能となっている。
【0047】
また、図7(b)に示すごとく、縦框21の側面21dには、上側が開放される切欠部21eが設けられており、この切欠部21eによって、固定体53が縦框21の側方から、縦框21内へと挿入できるようになっている。また、図5に示すごとく、固定体53には、縦框21の外部において、側面21dに当接するストッパー部53hが設けられており、固定体53が縦框21に挿入された際における固定体53の挿入代を規定できるようになっている。
【0048】
また、図7(b)に示すごとく、縦框21の切欠部21eには、固定体53の本体部53aの側面に設けた係合凸部53m・53mに乗り掛かるための係合凹部21m・21mが形成されている。これにより、固定体53が縦框21に対して挿入された際には、係合凸部53m・53mに係合凹部21m・21mが乗り掛かることにより、固定体53からの縦框21の脱落が規制されるようになっている。また、挿入凸部53dが穴部21fに挿入されることによっても、固定体53からの縦框21の脱落が規制される。なお、係合凸部53m・53mと係合凹部21m・21mの凹凸の関係や、挿入凸部53dと穴部21fの突起と穴の関係は、逆とするものであってもよい。
【0049】
以上の構成により、図7(a)に示すごとく、固定体53を縦框21の切欠部21eに挿入するだけで、固定体53が縦框21に対して係合固定されるとともに、その係合を維持させることができる。そして、この構成により、戸体2に対する吊具5の固定において、ビスが不要な構成とすることができ、戸体2への吊具5の固定を容易に行うことが可能となる。
【0050】
また、図5に示すごとく、連結体54は、その上部54aが移動体52の本体部52aに挿入され、その下部54bが固定体53の本体部53aに挿入される。連結体54の上部54aは、本体部52aに対して上下移動可能に挿入されるとともに、本体部52aに設けた傾斜部52cに対向する傾斜部54cを有しており、この傾斜部54cが傾斜部52cに乗り掛かることにより、連結体54の移動体52に対する下方への抜け止めが行われる。また、傾斜部54cには、吊具調整部材52dの挿入端部が当接し得るようになっており、吊具調整部材52dの挿入量を調整することで、連結体54の上下位置を調整することが可能となり、戸体2の建付けを調整できるようになっている。
【0051】
また、図5及び図6(a)に示すごとく、連結体54の下部54bには、挿通穴54dが設けられており、この挿通穴54dに対し、固定体53の本体部53aに横設される連結軸53cが貫装される。これにより、固定体53が連結軸53cを介して連結体54に吊り下げられる構成となっている。
【0052】
また、図6(a)に示すごとく、移動体52の空間部52bは、縦方向の溝状の空間を形成しており、上下方向の中途部52pにおいて幅が狭く、この中途部52pから上端部、及び、下端部に近いほど幅が広くなるように、傾斜面52w・52x・52y・52zを有する構成としている。また、固定体53の空間部53bは、上方が開放された溝状の空間を形成しており、下端部において幅が狭く、上端部に近いほど幅が広くなるように、傾斜面53y・53zを有する構成としている。また、連結体54の上部54aは、図5に示されるように、傾斜部54cが移動体52の傾斜部52cに乗り掛かるようにして、移動体52に支持されるため、移動体52に対する相対位置(相対角度)が変更可能に構成される。また、連結体54の下部54bは、その挿通穴54dが固定体53の連結軸53cと相対移動可能な大きさで構成されているため、固定体53に対する相対位置(相対角度)が変更可能に構成される。
【0053】
以上の構成により、図6(b)に示すごとく、移動体52と固定体53が見込み方向(戸体2の厚み方向)において、相対移動可能に構成される。つまり、見込み方向のセンター位置Cからずれる位置Aや位置Bに配置され得るように、固定体53が移動体52に対して相対移動可能に構成されるものである。また、移動体52の傾斜面52w・52x・52y・52z、固定体53の傾斜面53y・53zの存在により、固定体53は見込み方向において、平行移動することが可能となり、センター位置Cからずれた場合においても略垂直の姿勢(移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一の姿勢(センター位置Cにおける姿勢と略同一の姿勢))を保持できるようになっている。
【0054】
なお、図6(a)(b)に示すごとく、「移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一」の範囲には、「各傾斜面52w・52x・52y・52z・53y・53zの存在により固定体53の姿勢変化が許容される範囲」が含まれるものである。つまりは、略同一の範囲の広さは、移動体52、及び、固定体53の空間部52b・空間部52cによって定義づけられるものである。また、各傾斜面52w・52x・52y・52z・53y・53zを形成することによって、固定体53が移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一の姿勢を保持しつつ、移動体52に対して相対移動可能としたが、このほか、連結体54側に傾斜面を形成することで、移動体52と連結体54、固定体53と連結体54の間での相対位置の変更が許容される構成としてもよい。また、傾斜面とするほか、単純に移動体52と連結体54、固定体53と連結体54の間の隙間を広く確保する構成としてもよい。
【0055】
また、図6(b)に示すごとく、本実施形態のように傾斜面を採用することによれば、固定体53がセンター位置Cから大きく移動した際においては、傾斜面53zが連結体54の側面に接触した状態となり、この状態で、固定体53の略垂直の状態を維持することができる、換言すれば、連結体54によって固定体53が大きく傾くことを規制できることになる。
【0056】
そして、以上の構成により、図6(b)に示すごとく、戸体2のねじれ(傾きなど)が生じ、固定体53がセンター位置Cからずれた位置Aとなった状況において、通常時よりも大きな下向荷重Fが連結体54に作用した場合であっても、連結体54と吊車51a・51bは移動体52を介して連結されることから、下向荷重Fは略均等に分散されて、各吊車51a・51bから各レール片91f・91gに下向荷重Fa・Fbとして作用することになり、一方の吊車51a・51bに過剰な負荷がかかることが防止できる。つまりは、下向荷重Fが略均等に分散されて吊車51a・51bに伝達されることになり、これにより、吊車51a・51bが回転する際の摩擦抵抗の増加を防止することができる。なお、「通常時よりも大きな下向荷重F」については、図6(a)に示すごとく、通常時を「固定体53(戸体2)がセンター位置Cにある規定状態」であるときとし、この通常時の下向荷重を下向荷重Fcとした場合において、この下向荷重Fcよりも大きな下向荷重Fを、「通常時よりも大きな下向荷重F」とするものである。
【0057】
また、図6(b)に示すごとく、戸体2のねじれ(傾きなど)が生じ、固定体53がセンター位置Cからずれた位置Aとなった状況においても、固定体53は略垂直の姿勢(移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一の姿勢(センター位置Cにおける姿勢と略同一の姿勢))を姿勢できることから、戸体2についてもセンター位置Cにあるときと同様に、全体として略垂直に立てられた姿勢を保持することができる。これにより、図2に示すごとく、戸体2の下部に設けた被ガイド部2aが、下枠92に形設されたガイド溝部92aを略垂直に差し込まれた状況を姿勢することが可能となって、戸体2とガイド溝部92aが強く擦れ合う状況を防ぐことができ、摩擦抵抗の増加を防止することができる。
【0058】
以上の吊具の構成により、図1に示すごとく、戸体2と上枠91(レール部81(図4))の間の摩擦抵抗の増加、及び、戸体2と下枠92(ガイド溝部92a(図2))の間の摩擦抵抗の増加、がそれぞれ防止されることになり、戸体2を軽い力で開閉することが可能となる。
【0059】
また、以上に説明した吊具の構成とするほか、例えば、図8に示す吊具5Fの構成において、金属や樹脂の板状部材からなる連結体を用いる代わりに、金属製ワイヤー、樹脂繊維製紐部材、チェーンなどからなる変形可能な連結体54Fを用いる形態も考えられる。この場合、連結体54Fが変形することによって、固定体53について略垂直の姿勢(移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一の姿勢(センター位置Cにおける姿勢と略同一の姿勢))を姿勢することが可能となって、戸体2についてもセンター位置Cにあるときと同様に、全体として略垂直に立てられた姿勢を保持することが可能となる。また、このように、連結体54Fを変形させる構成とする場合には、金属製ワイヤーなどの変形する部材とともに、吊具調整部材52d(図5)によって調整がされ得る被調整部材54mを使用することになる。
【0060】
また、図5に示す吊具5の構成においては、吊具調整部材52dが、戸体2の外部において、下方から操作可能に設けられる構成としている。具体的には、吊具調整部材52dをボルトにて構成する本実施形態では、ボルト頭部が下方(斜め下方)に向けて現れるように構成され、下方(斜め下方)からボルト頭部に工具を差し込むことが可能となっている。
【0061】
このような構成により、図9に示すごとく、天井(上枠91)に近い位置にある吊具5・5について、下方(斜め下方)から工具6を用いることで、吊具調整部材52d(図5)を調整し、戸体2の建付けを調整することが可能となる。そして、このように、下方(斜め下方)からの作業となるため、脚立などの準備も不要とすることができ、調整作業の作業性に優れた構成を実現できることになる。また、ボルトにて吊具調整部材52dを構成することによれば、構造が簡易なものとなり、低コストでの製作が可能となるとともに、故障や欠陥に伴う不具合発生の低減が可能となる。
【0062】
なお、図5に示される吊具調整部材52dとするほか、図10に示すごとく、連結体54Aに延設部54kを設け、この延設部54kを下側から吊具調整部材52Ad(ボルト部材)にて押し上げる構成としてもよい。このような吊具5Aの構成によっても、戸体の建付けを下方(真下)から調整することが可能となり、図5の構成と同様に、作業性に優れた吊具の構成を実現することができる。
【0063】
また、図5及び図7(a)(b)に示すごとく、吊具5の固定体53は、戸体2の縦框21の上部の空間に対して収容されるとともに、縦框21に対して係合固定され得る構成としている。
【0064】
このように構成することで、戸体2側、或いは、吊具5側において、固定体53を戸体2に固定するための専用のケースが不要となって、組立工数を減らすことが可能となる。また、構造が簡易なものとなるため、低コストでの製作が可能となるとともに、故障や欠陥に伴う不具合発生の低減が可能となる。
【0065】
なお、図5及び図7(a)(b)に示す本実施形態の構成のように、吊具5の固定体53を戸体2の縦框21に固定する形態とするほか、図11に示すごとく、吊具5Bの固定体53Bを戸体2の上桟22に固定する形態も考えられる。つまりは、吊具の固定体を戸体の枠を構成する部材(上桟22や縦框21)に対し固定するものであり、この固定のための専用のケースを用いない構成とするものであれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の図面において現れる戸体は、浴室を想定した実施形態の例であるため、アルミなどの金属からなる枠を有して構成されるものであるが、居室での使用などにおいては、戸体が木製のものであってもよく、このような木製の戸体についても、本発明は使用することができる。
【0066】
次に、レール部への吊具の取り付けについて説明する。
図12は、レール部81への吊具5の取り付けについて説明する図、図13はレール部81に対する吊具5の取り付け手順について説明する図である。
【0067】
図12に示すごとく、レール部81には、略水平の長尺の片部分によって構成されるレール片91f・91g(図4も参照)が設けられており、このレール片91f・91gの間に、吊具5の移動体52を移動可能に差し込むためのレール隙間81aが形成される。また、レール隙間81aの上方の空間が、移動体52及び吊車51a・51bを移動可能とする移動用空間81bとして構成されている。
【0068】
また、図12に示すごとく、レール部81のレール片91f・91gには、それぞれ、略コ字状の挿入部91m・91nが対向して設けられており、この挿入部91m・91nの部位を通じて、レール片91f・91gの下側の外部空間から、移動用空間81b内へと吊車51a・51bが挿入可能となっている。そして、移動用空間81b内へと挿入された吊車51a・51bを、挿入部91m・91nの位置からずらすことで、図4に示されるように、吊車51a・51bがレール片91f・91gに載置された状態となって、移動用空間81b内を移動体52の上部が移動できるようになる。
【0069】
以上のようにして、図12に示すごとく、上枠91のレール片91f・91gに設けた挿入部91m・91nから吊車51a・51bを挿入することで、吊車51a・51b、及び、移動体52(の一部)を移動用空間81b内へと収めることができ、これにより、レール部81に対する吊具5が取付けられた状態となる。
【0070】
また、図12に示される構成とすることで、図13に示すごとくの吊具5、及び、戸体2の施工が可能となる。
図13を参照して上から順に説明すると、状態T1では、まず、吊具5Lを用意し、レール部81に形成される挿入部91m・91nを通じて吊具5Lの吊車を移動用空間81b内へと差し込むとともに、差し込んだ後に、挿入部91m・91nから離れた左方向の位置へと吊具5Lを移動させる。次に、状態T2のように、同様に、吊具5Rを用意して、吊具5Rを移動用空間81b内へと差し込み、被疑方向への位置へと吊具5Rを移動させる。
【0071】
次に、図13の状態T3に示すごとく、戸体2を用意するとともに、戸体2の両側に吊具5L・5Rを固定することで、状態T4のように、吊具5L・5Rによって戸体2が吊り下げられた状態とし、施工を完了することができる。
【0072】
ここで、図13の状態T5は、戸体2が全開とされた状況を示すものであり、この状況では、吊具5Lは挿入部91m・91nに到達しないため、吊具5Lの挿入部91m・91nからの脱落が規制される。また、同様に、状態T6は、戸体2が全閉とされた状況を示すものであり、この状況では、吊具5Rは挿入部91m・91nに到達しないため、吊具5Rの挿入部91m・91nからの脱落が規制される。このように、挿入部91m・91nは、戸体2が全開(状態T5)、或いは、全閉(状態T6)のいずれの状態においても、吊具5L・5Rが到達しない位置に構成されるものである。
【0073】
このように構成することで、図13の状態T4とすることで、吊具5の組み付けを完了することができる。これにより、挿入部91m・91nを別体のカバー部材などを用いて閉じる必要がないため、カバー部材の製作が不要となって、低コスト化が実現されるとともに、施工作業の簡易化を図ることが可能となる。
【0074】
なお、図13に示される挿入部91m・91nは、レール部81の長手方向の中途部に設けることとするほか、レール部81の長手方向の端部に設けることとしてもよい。つまり、挿入部91m・91nの位置については、吊具5L・5Rに戸体2を組み付けた状態において、吊具5L・5Rの吊車が到達しない位置であれば、特に限定されるものではない。
【0075】
次に、レール部についての止水性確保のための構成について説明する。
図14(a)は戸体2の上桟に水返部2Mを設ける例について示す図、図14(b)は戸体2の上部にモヘアからなる水返部97を設ける例について示す図、図14(c)は戸体2の上部に弾性片からなる水返部98を設ける例について示す図である。
【0076】
図4に示すごとく、建具枠の一部を構成する上枠91は、レール部材91cを垂直板部91aにて支持する支持部材91bを有している。この支持部材91bにおける浴室側の部位には垂片部91sが設けられ、また、レール部材91cの脱衣室側の部位には縦壁部91eが設けられる。そして、垂片部91sと縦壁部91eの間には挿入空間91uが形成され、この挿入空間91uに戸体2の上部が下側から挿入されるとともに、この挿入空間91u内において、戸体2の上部が移動可能となる構成としている。また、挿入空間91uには吊具5の移動体52の一部や、連結体54が移動可能に配置される構成となっている。
【0077】
また、図4に示すごとく、上枠91の垂片部91sには、脱衣室側に向けて水返部91vが突設されている。そして、この水返部91vは、戸体2の上端部よりも低い位置に配置されており、浴室側から戸体2の上部に向けて水がかけられる状況では、水返部91vに先に水が当てられることになる。これにより、挿入空間91u内への水の浸入を防ぐことが可能となる。
【0078】
そして、図4に示すごとく、この水返部91vの存在は、特に、上吊り引戸の構成を浴室の建具として用いる場合に有効となる。これは、仮に、戸体の下部に戸車を設けるタイプの引戸の場合では、上枠の部位に戸体の上部をガイドするためのガイド用垂片部が設けられることが想定され、このガイド用垂片部が浴室側から脱衣室側への水の移動を止水するための止水壁として機能することが可能となるが、図4に示すごとく、上吊り引戸の形態の場合には、移動体52を移動させる形態とするため、ガイド用垂片部を設けることができない。このような観点から、浴室側において水返部91vを設けることは、上吊り引戸の形態においては、止水性を確保する点で、特に有効なものとなる。
【0079】
また、図4の形態であれば、上枠91を構成する支持部材91bについて、水返部91vを一体成型することが可能であり、容易に実現することが可能となる。なお、水返部91vの部位を別体に構成し、支持部材91bについて着脱可能に設ける形態も考えられる。
【0080】
さらに、図14(a)に示すごとく、水返部91vの幅Wを広く確保することで、仮に水がかけられた際において水を留めることが可能な領域を広く確保することができ、移動用空間81b内への水の浸入をさらに効果的に抑制することができる。
【0081】
加えて、図14(a)に示すごとく、移動用空間81bの内側の部位において、浴室側(戸体2よりも浴室側)となる位置に、水返部91pを設けることとしてもよい。この例では、横方向に形成される水返部91vの上方の位置に、上下方向の水返部91pを設ける構成としており、この水返部91pの存在により、水返部91vで浸入を防ぎきることができなかった水を受け止めて、下方へと戻すことができる。
【0082】
さらに、図14(a)(b)(c)に示すごとく、戸体2において、移動用空間81b内に配置される部位に、浴室側に突出する水返部2M・97・98を設ける構成としてもよい。図14(a)の例では戸体2の上桟構の上部において、浴室側へと突出する水平片状の水返部2Mを設ける構成としている。この水返部2Mは、戸体2の上桟22(図11も参照)の成形の際に同時に形設することや、別体ものを上桟に取付けることで設けることができる。また、図14(b)の例では、モヘアからなる水返部97、図14(c)の例では、ゴムや樹脂などからなる弾性片からなる水返部98を設けることとしている。
【0083】
このように、戸体2の上部における浴室側に水返部2M・97・98を設けることによれば、浴室側における移動用空間81bの開口、つまりは、戸体2と上枠91の間の隙間を狭くすることで、移動用空間81b内への水の浸入をより確実に防止することができる。
【0084】
以上の構成により、本発明を実施することができる。
即ち、図4及び図6(b)に示すごとく、
レール部81に戸体2を吊下げるための吊具5であって、
前記レール部81に対し移動可能に取付けられるための移動体52と、
前記戸体2側に固定される固定体53と、
前記移動体52と前記固定体53とを連結する連結体54と、を有し、
前記固定体53は、前記移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、
前記移動体52に対して相対移動可能に構成される、
こととするものである。
【0085】
これにより、戸体2のねじれ(傾きなど)が生じた場合であっても、レール部81と移動体52との間での摩擦抵抗の増加などが防止され、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことが可能となる。
【0086】
また、図6(b)及び図8に示すごとく、
前記移動体52、及び、前記固定体53は、それぞれ、前記連結体54に対し、前記戸体2の厚み方向において移動可能に構成される、
又は、
前記連結体54Fが変形することによって、前記移動体52と前記固定体53が、前記戸体2の厚み方向において相対移動可能に構成される、
ことにより、
前記固定体53は、前記移動体52の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、
前記移動体52に対して相対移動可能に構成される、
こととするものである。
【0087】
これにより、戸体2のねじれ(傾きなど)が生じた場合であっても、レール部81と移動体52との間での摩擦抵抗の増加などが防止され、戸体の開閉操作を軽い力でスムーズに行うことが可能となる。
【0088】
また、図5、図7、及び、図11に示すごとく、
前記吊具5の固定体53は、
前記戸体2の縦框21に直接的に固定される、
又は、
前記戸体2の上桟22に直接的に固定される、
こととするものである。
【0089】
これにより、吊具の固定体が戸体の枠を構成する部材に対し固定される形態となり、専用のケースが不要となって、組立工数を減らすことが可能となる。また、構造が簡易なものとなるため、低コストでの製作が可能となるとともに、故障や欠陥に伴う不具合発生の低減が可能となる。なお、「直接的に固定」とは、固定のための専用のケースを用いないことを意味するものである。
【0090】
また、図5、図7、及び、図11に示すごとく、
前記固定体53は、
前記戸体2の前記縦框21、又は、前記上桟22に対して挿入することで係合固定される、
こととするものである。
【0091】
これにより、戸体2に対する吊具5の固定において、ビスが不要な構成とすることができ、戸体2への吊具5の固定を容易に行うことが可能となる。
【0092】
また、図5、及び、図9に示すごとく、
前記連結体54は、前記移動体52に対して上下移動可能に構成され、
前記連結体54の上下位置を調整して戸体2の建付けを調整するための吊具調整部材52dを有し、
前記吊具調整部材52dは、戸体2の外部において、下方から操作可能に設けられる、
こととするものである。
【0093】
これにより、戸体2の建付け調整を下方からできることになり、脚立などの準備も不要とすることができ、調整作業の作業性に優れた構成を実現できることになる。
【0094】
また、図12及び図13に示すごとく、
前記吊具5を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記移動体52は、前記レール部81に支持される被支持体としての吊車51a・51bを有し、
前記被支持体としての吊車51a・51bは、前記レール部81に設けた挿入部91m・91nから挿入することで、前記レール部81に支持された状態とすることができ、
前記挿入部91m・91nが設けられる位置は、前記吊具5と前記戸体2を組み付けた後に、前記戸体2を移動させた場合において、前記被支持体としての吊車51a・51bが到達しない位置とする、
こととするものである。
【0095】
これにより、レール部81を構成するレール部材91cの取り付け取り外し作業が不要であり、挿入部91m・91nを別体のカバー部材などを用いて閉じる必要がないため、カバー部材の製作が不要となって、低コスト化が実現されるとともに、施工作業の簡易化を図ることが可能となる。
【0096】
また、図4に示すごとく、
前記吊具5を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記レール部81が構成される上枠91において、
前記戸体2よりも浴室側であって、前記戸袋2の上端部よりも低い位置には、
水返部91vが設けられる、
こととするものである。
【0097】
これにより、浴室側から戸体2の上部に向けて水がかけられる状況においても、水返部91vに先に水が当てられることになり、レール部81の箇所における止水性を確保することができる。
【0098】
また、図9(a)(b)(c)に示すごとく、
前記吊具5を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記戸体2の上部における浴室側に水返部2M・97・98を設ける
こととするものである。
【0099】
これにより、戸体2と上枠91の間の隙間を狭くすることができ、移動用空間81b内への水の浸入をより確実に防止することができ、レール部の箇所における止水性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の構成は、実施の形態で説明した浴室出入口用建具の上吊り引戸について適用するほか、居室や、ガレージ(倉庫)など、様々な場所での実施が想定される。また、1枚の片引戸の形態のみならず、複数枚の戸体を有する上吊り引戸についての実施も可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 浴室出入口用建具
2 戸体
5 吊具
21 縦框
22 上桟
51a・51b 吊車
52 移動体
53 固定体
54 連結体
81 レール部
90 建具枠
91 上枠
91p 水返部
91v 水返部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール部に戸体を吊下げるための吊具であって、
前記レール部に対し移動可能に取付けられるための移動体と、
前記戸体側に固定される固定体と、
前記移動体と前記固定体とを連結する連結体と、を有し、
前記固定体は、前記移動体の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、
前記移動体に対して相対移動可能に構成される、吊具。
【請求項2】
前記移動体、及び、前記固定体は、それぞれ、前記連結体に対し、前記戸体の厚み方向において移動可能に構成される、
又は、
前記連結体が変形することによって、前記移動体と前記固定体が、前記戸体の厚み方向において相対移動可能に構成される、
ことにより、
前記固定体は、前記移動体の真下に配置される際の姿勢と略同一を保持した状態で、
前記移動体に対して相対移動可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊具。
【請求項3】
前記吊具の固定体は、
前記戸体の縦框に直接的に固定される、
又は、
前記戸体の上桟に直接的に固定される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の吊具。
【請求項4】
前記固定体は、
前記戸体の前記縦框、又は、前記上桟に対して挿入することで係合固定される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の吊具。
【請求項5】
前記連結体は、前記移動体に対して上下移動可能に構成され、
前記連結体の上下位置を調整して戸体の建付けを調整するための吊具調整部材を有し、
前記吊具調整部材は、戸体の外部において、下方から操作可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の吊具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の吊具を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記移動体は、前記レール部に支持される被支持体を有し、
前記被支持体は、前記レール部に設けた挿入部から挿入することで、前記レール部に支持された状態とすることができ、
前記挿入部が設けられる位置は、前記吊具と前記戸体を組み付けた後に、前記戸体を移動させた場合において、前記被支持体が到達しない位置とする、
ことを特徴とする、上吊り引戸の構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5に記載の吊具を用いる上吊り引戸の構造であって、
前記戸体の上部における浴室側に水返部を設ける、
ことを特徴とする、上吊り引戸の構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−92627(P2012−92627A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242871(P2010−242871)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】