吊足場
【課題】 工事時間を短縮することが可能な吊足場を提供する。
【解決手段】 吊足場1は、車輪機構30、フレーム部20、および足場板10を備えている。車輪機構30の車輪は、H型鋼の下側のフランジ52上を転がる。したがって、吊足場1は、たとえば、橋梁の下側の桁に沿って移動することが可能である。その結果、橋梁の下側での工事時間を短縮することが可能になる。また、吊足場1は、車輪機構30が左右に3つずつ設けられている場合には、車輪機構30を別個に内側に退避させることによって、桁に設けられた補強部材を回避して移動することが可能である。また、吊足場1は、足場板10が車輪機構30に接近する程度まで、フレーム部20を折り畳むことによって、橋脚を回避して移動することが可能である。
【解決手段】 吊足場1は、車輪機構30、フレーム部20、および足場板10を備えている。車輪機構30の車輪は、H型鋼の下側のフランジ52上を転がる。したがって、吊足場1は、たとえば、橋梁の下側の桁に沿って移動することが可能である。その結果、橋梁の下側での工事時間を短縮することが可能になる。また、吊足場1は、車輪機構30が左右に3つずつ設けられている場合には、車輪機構30を別個に内側に退避させることによって、桁に設けられた補強部材を回避して移動することが可能である。また、吊足場1は、足場板10が車輪機構30に接近する程度まで、フレーム部20を折り畳むことによって、橋脚を回避して移動することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架構造物または橋梁等を支持するH型鋼製の桁に吊り下げられる吊足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図19および図20に示すように、橋脚200の上側であってかつ橋梁100等のような構造物の下側で工事を行う場合には、吊足場が用いられている。たとえば、送電線管1000が橋梁100等の下面に沿って設置される工事または送電線管1000の修繕工事において、吊足場が用いられる。吊足場は、橋梁100を支持する2本のH型鋼製の桁50から吊り下げられる。
【0003】
従来の吊足場は、図20に示すように、H型鋼の上側のフランジにクランプ700で固定された縦方向の単管500と、縦方向の単管500の下端部にクランプ700で固定された横方向の単管500と、横方向の単管500上に載置された足場板800とを有している。また、縦方向の単管500の代わりにチェーン等がH型鋼のフックに引っ掛けられ、チェーン等で足場板をH型鋼から吊下げる吊足場もある。なお、工事のときには、作業員の転落事故を防止するために、吊足場の周囲に安全ネット600が設けられる。
【特許文献1】特開2001−73551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のような吊足場を用いた工事においては、H型鋼製の桁50の全てに吊足場が設置された後でなければ、桁50の下側に電気配線のための送電線管1000を敷設することができない。また、工事が終わった後には、吊足場の全てを解体する作業が行われる。つまり、従来の吊足場によれば、工事が完了するまでに長時間を要してしまう。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、工事時間を短縮することが可能な吊足場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吊足場は、箱体状のフレーム部と、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられた第1左車輪、第2左車輪、第2右車輪、および第2右車輪と、フレーム部の下部に取り付けられ、作業員が搭乗することが可能な足場板とを備えている。また、第1左車輪、第2左車輪、第2右車輪、および第2右車輪は、回転軸が互いに平行に延びかつフレーム部から外方に突出するように、所定の平面内の仮想の四角形の4つの角部のそれぞれに設けられている。
【0007】
上記の構成によれば、第1および第2左車輪が2本のH型鋼製の桁の一方の下側のフランジ上を転がり、かつ、第1および第2右車輪が2本のH型鋼製の桁の他方の下側のフランジ上を転がれば、吊足場は桁方向に沿って移動することができる。そのため、従来の吊足場を桁の全体にわたって敷設する必要がなくなる。したがって、構造物の下側での工事時間を大幅に短縮することができる。
【0008】
また、前述の吊足場は、第1および第2左車輪ならびに第1および第2右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えていることが望ましい。これによれば、2本の桁の間隔に合わせて、4つの車輪の位置を調整することができる。
【0009】
さらに、前述の吊足場は、上記の構成に加えて、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、所定の平面内において、第1左車輪と第2左車輪との間に位置し、第1左車輪および第2左車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3左車輪と、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、所定の平面内において、第1右車輪と第2右車輪との間に位置し、第1右車輪および第2右車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3右車輪とを備えており、第1〜第3左車輪ならびに第1〜第3右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構とをさらに備えていることが望ましい。
【0010】
上記のような構成によれば、H型鋼にスティフナー等の補強部材が設けられている場合に、補強部材が設けられている位置を通過するタイミングにおいてのみ、車輪を内側へ待避させ、それ以外のタイミングでは、車輪を下側のフランジの上に載せておくことができる。そのため、吊足場は、補強部材が設けられているH型鋼が用いられている場合においても、H型鋼からなる桁同士の間を桁方向に沿って移動することが可能になる。
【0011】
また、フレーム部は、その上部まで足場板が移動するように折り畳み可能に構成されていれば、2本のH型鋼を支持する支持台がある場合にも、吊足場を折り畳むことによって支持台を回避して移動することが可能になる。
【0012】
また、上記の吊足場は、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の左車輪と、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の右車輪とをさらに備えていることが望ましい。
【0013】
上記の構成によれば、他の左車輪および他の右車輪がウェブに接触しながら転がるように、他の左車輪および他の右車輪の位置を設定すれば、下側のフランジ上において、第1〜第3左車輪ならびに第1〜第3右車輪の左右方向にずれることが防止される。そのため、2本の桁から吊足場が脱落してしまうような事故の発生が防止される。
【0014】
前述の場合、前述の吊足場は、他の左車輪および他の右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えていれば、2本の桁の間隔に合わせて、他の左車輪および他の右車輪のそれぞれをウェブに接触させるような調整を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図18を用いて、本発明の実施の形態の吊足場を説明する。本実施の形態で用いられる吊足場1は、図1および図2に示すように、橋梁100を支持する2本のH型鋼製の桁50から吊り下げられるものである。なお、2本のH型鋼の桁50は、通常、横断面において、縦方向に延びるウェブ51と横方向に延びるフランジ52とを有している。なお、フランジ52は、ウェブ51の上端に取り付けられた上側のフランジと、ウェブ51の下端に取り付けられた下側のフランジとからなる。
【0016】
本実施の形態の吊足場1は、複数の車輪機構30を有している。複数の車輪機構30は、同一平面内において、桁50が延びる方向の軸に対して、左右対称に設けられている。本実施の形態の吊足場は、自走式であるが、作業員が手で下側のフランジを押しながら進むものである。しかしながら、本発明の吊足場は、複数の車輪機構30がモータ等の駆動手段によって回転させられて進むような吊足場であってもよい。
【0017】
なお、複数の車輪機構30は、同一平面内において、左右対称に、かつ、少なくとも4つ以上設けられていれば、本実施の形態の自走式の吊足場を実現することは可能である。ただし、図1においては、水平面内の仮想の四角形の4つの角部のそれぞれに1つずつ車輪機構30が設けられている吊足場1が示されている。
【0018】
使用時には、複数の車輪機構30のそれぞれが2本のH型鋼製の桁50の下側のフランジ52のそれぞれ上に載せられる。また、吊足場1は、車輪機構30を支持するフレーム部20を有している。フレーム部20は、箱体状の構造からなっている。複数の車輪機構30のそれぞれは、フレーム部20の上部に設けられており、その下部に足場板10が取り付けられている。ただし、複数の車輪機構30および足場板10は、吊足場1が2本の桁50同士の間を移動でき、かつ、足場板10上での作業員の動作に支障がなければ、フレーム部20のいかなる位置に設けられていてもよい。
【0019】
図2に示すように、吊足場1は、橋梁100の下で用いられる場合には、矢印Aで示す方向に沿って移動可能である。したがって、電線等が内挿された送電線管1000を橋梁100の一方端側の橋脚200から他方端側の橋脚まで掛け渡す作業が行なわれるときに、従来のように、橋梁100の下側の全てに吊足場を設置し解体する作業を行う必要がない。その結果、橋梁100の下側での工事時間の短縮を図ることが可能となる。
【0020】
なお、図3および図4に示すように、H型鋼製の桁50には、スティフナーと呼ばれる補強部材54が設けられている。スティフナーは、ウェブ51に対して垂直でありかつフランジ52に対しても垂直である。また、2本のH型鋼製の桁50同士を接続するトラスからなる補強部材55も設けられている。ただし、補強部材54は、複数の車輪機構30が通過する経路を塞ぐ障害物となっているため、複数の車輪機構300は、そのままの状態では、下側のフランジ52上を移動することができない場合がある。
【0021】
そこで、本実施の形態の吊足場1は、図5および図6に示すように、補強部材54等の下側のフランジ52上の障害物を回避するために、その状態を変化させることが可能である。以下、吊足場1の状態の変化を具体的に説明する。
【0022】
なお、図1および図2においては、複数の車輪機構30は、4つの車輪機構からなっているが、図5および図6においては、複数の車輪機構30は、フレーム部20の進行方向の左側に位置する左車輪機構30a,30b,30c,30dおよびフレーム部20の進行方向の右側に位置する右車輪機構30a,30b,30c,30dの8つの車輪機構からなる。また、複数の車輪機構30は、左車輪機構30a,30b,30c,30dと右車輪機構30a,30b,30c,30dとは、左右対称に配置されている。また、左車輪機構30a,30b,30c,30dおよび右車輪機構30a,30b,30c,30dの回転軸は、水平面内において、互いに同一平行に延びており、それぞれの車輪は、同一方向に回転可能である。
【0023】
まず、吊足場1は、通常走行時においては、図5に示すように、左および右車輪機構30a,30b,30c,30dの全てがフランジ52の上面に接触している。一方、補強部材54を避けるときには、図6に示すように、左および右車輪機構30aを、車輪を支持する軸受が固定されているシャフトの周りに180°回転させて、フランジ52上から離れさせた後、内側に待避させる。それにより、吊足場1は、補強部材54に阻害されることなく進行することができる。
【0024】
このようにして、本実施の形態の吊足場1は、左および右車輪機構30a,30b,30c,30dのそれぞれを独立して補強部材54の近傍に位置するタイミングにおいてのみフレーム部20側に待避させることができる。そのため、H型鋼製の桁50に補強部材54が設けられていても、吊足場1は2本の桁50に吊り下げられたままの状態で2本の桁方向に沿って移動することが可能である。
【0025】
また、図7および図8に示すように、H型鋼製の桁50が一方端と他方端との間の位置で橋脚200によって支持されており、下側のフランジ52の上面と橋脚200の上面との距離Dが小さい場合がある。このような場合において、本実施の形態の吊足場1は、図9に矢印Cで示すように、複数の車輪機構30の近傍に至るまで持上げられるように、フレーム部20を折り畳むことが可能である。したがって、吊足場1は、下側のフランジ52の上面と橋脚200の上面との間の距離Dで規定される空間(図8参照)を通過することが可能である。
【0026】
次に、図10〜図18を用いて、本実施の形態の吊足場1をより詳細に説明する。以下、図10〜図18においては、吊足場1は、フレーム部20、足場板10、および4つの台車300からなっている。4つの台車300は、右車輪機構30a,30b,40a,40bが設けられた右前台車、左車輪機構30a,30b,40a,40bが設けられた左前台車、右車輪機構30c,30d,40c,40dが設けられた右後台車、左車輪機構30c,30d,40c,40dが設けられた左後台車からなっている。足場板10および4つの台車300以外は、図1のフレーム部20に相当する部分であるものとする。また、車輪機構30a,30b,30c,30dのそれぞれの車輪は、水平方向に延びる回転軸を有し、それらの回転軸同士は互いに平行である。一方、車輪機構40a,40b,40c,40dのそれぞれの車輪は、鉛直方向に延びる回転軸を有し、それらの回転軸同士も互いに平行である。また、本実施の形態においては、左および右車輪機構30a,30b,30c,30dの8つの車輪機構が設けられているが、車輪機構は、左右および前後対称に6つ設けられていれば、後述する補強部材54の回避を行うことは可能である。
【0027】
図10に示すように、本実施の形態の吊足場1においては、足場板10が足場板10aと足場板10bとを含んでいる。足場板10aは、その中央側の端部に4つの支持部12aを有し、足場板10bは、その中央側の端部に4つの支持部12bを有している。支持部12aおよび12bのそれぞれに円柱状の横方向棒状部材11が回転可能に挿入されている。また、足場板10aの外側端には、4つの支持部12cが設けられており、それらの支持部12cを横方向棒状部材13が回転可能に貫通している。また、足場板10bの外側端にも、4つの支持部12dが設けられており、それらの支持部12dを横方向棒状部材14が貫通している。横方向棒状部材11、13、および14は、それぞれ、円柱状部材である。
【0028】
また、横方向棒状部材11は、縦方向棒状部材87の下端部に回転可能に挿入されている。また、横方向棒状部材13は、縦方向棒状部材88の下端部に回転可能に挿入されている。また、横方向棒状部材14は、縦方向棒状部材86の下端部に回転可能に挿入されている。縦方向棒状部材86、87、および88のそれぞれは、その上端部がボックス型パイプの横架材80に対して回転可能に取り付けられている。
【0029】
また、ガイド部85は、作業員の転落防止用の部材であって、C型鋼からなっており、ボルト等によって、縦方向棒状部材86、87、および88のそれぞれに対して、回転可能に取り付けられている。また、横架材80の両側端部のそれぞれは、角筒部材89に挿入され、角筒部材89の上面には、接続部材70が取り付けられている。接続部材70は、プレート90aまたはプレート90bの下面に取り付けられている横方向棒状部材である。また、接続部材70は、左前台車のプレート90aと右前台車のプレート90aまたは左後台車のプレート90bと右後台車のプレート90bとの位置関係を固定している。
【0030】
プレート90aには、車輪機構40a,30a,30b,40bが取り付けられている。また、プレート90bには、車輪機構40c,30c,30d,40dのそれぞれが取り付けられている。また、車輪機構40a,40b,40c,40dは、桁50のウェブ51に接触する車輪を有し、吊足場1が移動している間に、吊足場1が2本の桁50の間から脱落することを防止している。一方、車輪機構30a,30b,30c,30dは、足場板10、フレーム部20、作業員、および資材の荷重を支持し、下側のフランジ52の上面に当接しながら転がることによって、吊足場1を移動させるものである。
【0031】
また、吊足場1は、ウインチ63が取付部材64を介して接続部材70に取り付けられており、ウインチ63にはワイヤ60が巻き付けられている。また、ワイヤ60は、滑車62および61を介して横方向棒状部材11に取り付けられている。ウインチ63がワイヤ60を引っ張っていない状態では、図11および図13に示すように、縦方向棒状部材86、87、および88は、鉛直方向に延びた状態となり、足場板10aおよび10bは最も低い位置まで下がる。
【0032】
一方、前述のウインチ63がワイヤ60を巻取ると、図12および図14に示すように、横方向棒状部材11が持上げられ、台車300と同じ高さ位置にある滑車61に近づく。このとき、縦方向部材86、87、および88は、それぞれ、横架材80、ガイド部材85、ならびに、横方向棒状部材11、13、および14に対して、それぞれの取付位置を中心にして回転する。それに伴って、足場板10aおよび10bが台車30の高さ位置に近い位置まで持ち上げられる。つまり、吊足場1のフレーム部20は折り畳まれた状態になる。
【0033】
次に、図15および図16を用いて、台車300の構造を詳細に説明する。本実施の形態においては、台車300は、4つ設けられており、4つの台車300は左右対称に配置されている。したがって、以下、1つの台車300について説明するが、他の台車300は、以下に説明される台車300と同一の構造ある。ただし、台車300の数は、4つに限定されず、左右に同数ずつ設けられていれば、6つでも、8つでもよい。なお、以下に説明する台車300は、車輪機構40a,40b,30a,30bを有している。また、台車300のプレート90a(90b)は、ボルト900aによって接続部材70に固定されている。
【0034】
車輪機構40aは、車輪41aを有している。車輪41aは、その回転中心軸が軸受42aに挿入されている。車輪41aは軸受42aに対して回転可能である。また、軸受42aは、角材43aに取り付けられている。角材43aは、角筒型の軸受44aに挿入され、その軸周りの回転は拘束されている。ただし、角材43aは軸受44aに対してその軸方向にスライドすることが可能である。
【0035】
また、角材43aの先端には、レバー45aが取り付けられている。レバー45aはボルト46aの軸周りに回転可能である。したがって、作業員は、レバー45aを、ボルト46aの軸周りに90度回転させ後、ガイドレール400aが延びる方向に沿って動かすことにより、車輪41aを、ウェブ40aに当接させたり、内側へ退避させたりすることができる。なお、レバー45aは、走行時には、L型のアングル47aに設けられた係止部(溝)47aによって係止され、その移動が拘束されている。
【0036】
また、軸受44aは、L型のアングル48aに取り付けられている。また、L型のアングル48aは、貫通孔を有し、貫通孔にはスライド部材49aが挿入されている。スライド部材49aは、プレート90aに設けられた溝状のガイドレール400aに挿入されている。スライド部材49aは、ガイドレール400aから外れることなく、ガイドレール400aに沿って移動することが可能であり、L型のアンクル48aをガイドレール400aの所定の位置に固定することも可能である。つまり、スライド部材49aはL型アングル48aとともにプレート90aに設けられたガイドレール400aに沿って往復移動し得るように設置されている。したがって、2本の桁50同士の間の距離に応じて車輪41aの位置を調節することが可能である。
【0037】
一方、車輪機構30aは、2つの車輪31aを有している。2つの車輪31aは、それらの回転軸のそれぞれが軸受31aを回転可能に貫通しており、互いに同じ高さに設けられており、その回転軸同士が互いに平行に延びている。また、軸受31aは、円柱状のシャフト33aに固定されている。円柱状のシャフト33aは、その軸周りに回転可能に軸受36aに挿入されている。また、軸受36aは、プレート35aに取付けられている。プレート35aは、ボルト34aによって、プレート90aに取り付けられている。また、シャフト33aの先端には、レバー37aが設けられている。したがって、作業員は、レバー37aを用いて、車輪30aおよびシャフト33aを内側に退避させることができる。
【0038】
なお、シャフト33aは、軸受36aと摺動しながら、その軸方向に移動してしまうおそれがある。しかしながら、車輪30aが下側のフランジ52上に載置されているときには、車輪30aに大きな荷重がかかっているため、吊足場1の移動中にシャフト33aが内側に移動してしまうことはないと考えられる。そのため、シャフト33aが内側に移動することを防止する係止部材は必須ではない。ただし、安全性を高めるためには、シャフト33aが内側に移動することを防止するために、レバー37aの内側への移動を拘束する係止部材が設けられていることが望ましい。
【0039】
また、前述の車輪機構40aの構造は、車輪機構40b、40c、および40dのそれぞれの構造と同一の構造または鏡面対称の構造であり、図においてはその符号のみが異なっている。また、前述の車輪機構30aの構造も、車輪機構30b、30c、および30dのそれぞれの構造と同一の構造または鏡面対称の構造であり、図においてはその符号のみが異なっている。また、図中の参照符号の数字が同じで数字に付されたアルファベット文字が異なる部分同士は、同一の部位ではないが、同じ機能を有する対応部位である。
【0040】
図15および図16には、車輪41aおよび41bのそれぞれがウェブ52に接し、車輪31aおよび31bのそれぞれが下側のフランジ52上に載置され、台車300が移動しているときの状態が示されており、一方、図17および図18には、車輪31bおよび41bのそれぞれが補強部材54を回避するときの状態が示されている。車輪31bおよび41bが補強部材54を回避するときには、図17および図18に示すように、車輪31bおよび41bがフランジ部20側に引っ込められる。つまり、車輪31bおよび41bは、補強部材54を避けるために内側に待避している。この後、車輪31bおよび41bは、再び、外方に押し出され、車輪41bはウェブ51に当接し、2つの車輪31bのそれぞれはフランジ52の上に載置される。
【0041】
また、作業員は、図17に示すように、車輪41a,41b,31a,31bのそれぞれを独立して桁50から遠ざけることができ、また、図18に示すように、車輪41a,41b,31a,31bのそれぞれを独立して桁50に近づけることができる。
【0042】
たとえば、作業員は、車輪31bを桁50から遠ざけるときには、レバー37bをほぼ180°シャフト33b周りに回転させて、2つの車輪31bを下側のフランジ52から離れさせてから、レバー37bを内側に引く。一方、作業員は、2つの車輪31bを桁50に近づけるときには、レバー37bをほぼ−180°シャフト33b周りに回転させて、車輪31bを下側のフランジ52に接触させてから、レバー37bを外側に押す。
【0043】
一方、作業員は、車輪41bを桁50から遠ざけるときには、レバーを係止部47bから外して内側に引く。一方、作業員は、車輪41bを桁50に近づけるときには、レバー46bを外側に押し出した後、係止部47bにレバー46bを係止され、レバー46bの位置を固定する。
【0044】
上記のように、本実施の形態の吊足場1によれば、図10に示すように、複数の車輪31a,31b,31c,31dがH型鋼の下側のフランジ52の上に載置された状態で転がる。その結果、作業員は、足場板10aおよび10bの上に乗ったままで、吊足場1とともに桁50が延びる方向に沿って移動することができる。
【0045】
また、図12および図14に示すように、吊足場1においては、フレーム部(台車30および足場板10以外)20が折り畳み可能な構造である。吊足場1が折り畳まれる時には、ウインチ63が滑車61および62を介してワイヤ60を巻き取ることによって、足場板10aおよび10bが車輪機構30にほぼ接近する程度にまで持上げられる。その結果、上下間の幅が非常に狭い部分、たとえば、図8に示すような橋脚200の上面と下側のフランジ52との間との距離Dが50cm程度であっても、吊足場1は、作業員が搭乗しかつ資材等が積載され、かつ、折り畳まれた状態で、H型鋼製の桁50が延びる方向に沿って移動することが可能である。
【0046】
さらに、図17および図18に示すように、車輪31a,31b,31c,31dのそれぞれの位置を独立して内側に向かって退避させる機構(車輪機構のうち車輪およびその軸受以外の部分)を有している。そのため、H型鋼の補強部材54を回避するタイミングにおいてのみ車輪機構30を内側に向かって退避させ、補強部材54を回避する必要がないタイミングにおいては車輪機構30を下側のフランジ52上に載せることができる。その結果、補強部材54が設けられている桁50に用いられる場合であっても、吊足場1は、補強部材54を回避して移動することが可能である。
【0047】
さらに、2本の桁50が完全に平行でない場合であっても、常に、車輪41a,41b,41c,41dがウェブ51に接触しながら転がるように、車輪41a,41b,41c,41dの位置のそれぞれの位置を独立して変更することができるため、吊足場1が桁50から脱落することが防止されている。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態の吊足場が移動する状態を説明するための概念図である。
【図2】実施の形態の吊足場を用いて送電線管を橋梁の下側に敷設する工事を説明するための概念図である。
【図3】橋梁の下側に設置されたH型鋼製の桁を説明するための図である。
【図4】H型鋼製の桁を補強するために用いられる補強部材を説明するための図である。
【図5】通常走行時の車輪機構の状態を説明するための図である。
【図6】補強部材を避けるために車輪機構が内側に退避した状態を説明するための図である。
【図7】橋梁の下方に敷設されている橋脚を説明するための図である。
【図8】橋梁の下方に敷設されている橋脚の上面と下側フランジの上面との間の距離を示す図である。
【図9】本実施の形態の吊足場が、橋脚の上面と下側フランジの上面との間の狭い空間を通過するときの状態を説明するための図である。
【図10】本実施の形態の吊足場の平面図である。
【図11】実施の形態の吊足場の移動時の側面図である。
【図12】実施の形態の吊足場の折り畳まれたときの側面図である。
【図13】実施の形態の吊足場の移動時の正面図である。
【図14】実施の形態の吊足場の折り畳まれたときの正面図である。
【図15】実施の形態の台車を説明するための詳細上面図である。
【図16】実施の形態の台車を説明するための詳細側面図である。
【図17】実施の形態の台車の車輪が補強部材を退避している状態を説明するための上面図である。
【図18】実施の形態の台車の車輪が補強部材を退避している状態を説明するための側面図である。
【図19】従来の吊足場を説明するための図である。
【図20】従来の吊足場を説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1 吊足場、10,10a,10b 足場板、20 フレーム部、30,30a,30b,30c,30d 車輪機構、40,40a,40b,40c,40d 車輪機構、50 桁、51 ウェブ、52 フランジ、54 補強部材、63 ウインチ、60 ワイヤ、61,62 滑車、100 橋梁、200 橋脚、300 台車、1000 送電線管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高架構造物または橋梁等を支持するH型鋼製の桁に吊り下げられる吊足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図19および図20に示すように、橋脚200の上側であってかつ橋梁100等のような構造物の下側で工事を行う場合には、吊足場が用いられている。たとえば、送電線管1000が橋梁100等の下面に沿って設置される工事または送電線管1000の修繕工事において、吊足場が用いられる。吊足場は、橋梁100を支持する2本のH型鋼製の桁50から吊り下げられる。
【0003】
従来の吊足場は、図20に示すように、H型鋼の上側のフランジにクランプ700で固定された縦方向の単管500と、縦方向の単管500の下端部にクランプ700で固定された横方向の単管500と、横方向の単管500上に載置された足場板800とを有している。また、縦方向の単管500の代わりにチェーン等がH型鋼のフックに引っ掛けられ、チェーン等で足場板をH型鋼から吊下げる吊足場もある。なお、工事のときには、作業員の転落事故を防止するために、吊足場の周囲に安全ネット600が設けられる。
【特許文献1】特開2001−73551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のような吊足場を用いた工事においては、H型鋼製の桁50の全てに吊足場が設置された後でなければ、桁50の下側に電気配線のための送電線管1000を敷設することができない。また、工事が終わった後には、吊足場の全てを解体する作業が行われる。つまり、従来の吊足場によれば、工事が完了するまでに長時間を要してしまう。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、工事時間を短縮することが可能な吊足場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吊足場は、箱体状のフレーム部と、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられた第1左車輪、第2左車輪、第2右車輪、および第2右車輪と、フレーム部の下部に取り付けられ、作業員が搭乗することが可能な足場板とを備えている。また、第1左車輪、第2左車輪、第2右車輪、および第2右車輪は、回転軸が互いに平行に延びかつフレーム部から外方に突出するように、所定の平面内の仮想の四角形の4つの角部のそれぞれに設けられている。
【0007】
上記の構成によれば、第1および第2左車輪が2本のH型鋼製の桁の一方の下側のフランジ上を転がり、かつ、第1および第2右車輪が2本のH型鋼製の桁の他方の下側のフランジ上を転がれば、吊足場は桁方向に沿って移動することができる。そのため、従来の吊足場を桁の全体にわたって敷設する必要がなくなる。したがって、構造物の下側での工事時間を大幅に短縮することができる。
【0008】
また、前述の吊足場は、第1および第2左車輪ならびに第1および第2右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えていることが望ましい。これによれば、2本の桁の間隔に合わせて、4つの車輪の位置を調整することができる。
【0009】
さらに、前述の吊足場は、上記の構成に加えて、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、所定の平面内において、第1左車輪と第2左車輪との間に位置し、第1左車輪および第2左車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3左車輪と、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、所定の平面内において、第1右車輪と第2右車輪との間に位置し、第1右車輪および第2右車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3右車輪とを備えており、第1〜第3左車輪ならびに第1〜第3右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構とをさらに備えていることが望ましい。
【0010】
上記のような構成によれば、H型鋼にスティフナー等の補強部材が設けられている場合に、補強部材が設けられている位置を通過するタイミングにおいてのみ、車輪を内側へ待避させ、それ以外のタイミングでは、車輪を下側のフランジの上に載せておくことができる。そのため、吊足場は、補強部材が設けられているH型鋼が用いられている場合においても、H型鋼からなる桁同士の間を桁方向に沿って移動することが可能になる。
【0011】
また、フレーム部は、その上部まで足場板が移動するように折り畳み可能に構成されていれば、2本のH型鋼を支持する支持台がある場合にも、吊足場を折り畳むことによって支持台を回避して移動することが可能になる。
【0012】
また、上記の吊足場は、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の左車輪と、フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の右車輪とをさらに備えていることが望ましい。
【0013】
上記の構成によれば、他の左車輪および他の右車輪がウェブに接触しながら転がるように、他の左車輪および他の右車輪の位置を設定すれば、下側のフランジ上において、第1〜第3左車輪ならびに第1〜第3右車輪の左右方向にずれることが防止される。そのため、2本の桁から吊足場が脱落してしまうような事故の発生が防止される。
【0014】
前述の場合、前述の吊足場は、他の左車輪および他の右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えていれば、2本の桁の間隔に合わせて、他の左車輪および他の右車輪のそれぞれをウェブに接触させるような調整を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図18を用いて、本発明の実施の形態の吊足場を説明する。本実施の形態で用いられる吊足場1は、図1および図2に示すように、橋梁100を支持する2本のH型鋼製の桁50から吊り下げられるものである。なお、2本のH型鋼の桁50は、通常、横断面において、縦方向に延びるウェブ51と横方向に延びるフランジ52とを有している。なお、フランジ52は、ウェブ51の上端に取り付けられた上側のフランジと、ウェブ51の下端に取り付けられた下側のフランジとからなる。
【0016】
本実施の形態の吊足場1は、複数の車輪機構30を有している。複数の車輪機構30は、同一平面内において、桁50が延びる方向の軸に対して、左右対称に設けられている。本実施の形態の吊足場は、自走式であるが、作業員が手で下側のフランジを押しながら進むものである。しかしながら、本発明の吊足場は、複数の車輪機構30がモータ等の駆動手段によって回転させられて進むような吊足場であってもよい。
【0017】
なお、複数の車輪機構30は、同一平面内において、左右対称に、かつ、少なくとも4つ以上設けられていれば、本実施の形態の自走式の吊足場を実現することは可能である。ただし、図1においては、水平面内の仮想の四角形の4つの角部のそれぞれに1つずつ車輪機構30が設けられている吊足場1が示されている。
【0018】
使用時には、複数の車輪機構30のそれぞれが2本のH型鋼製の桁50の下側のフランジ52のそれぞれ上に載せられる。また、吊足場1は、車輪機構30を支持するフレーム部20を有している。フレーム部20は、箱体状の構造からなっている。複数の車輪機構30のそれぞれは、フレーム部20の上部に設けられており、その下部に足場板10が取り付けられている。ただし、複数の車輪機構30および足場板10は、吊足場1が2本の桁50同士の間を移動でき、かつ、足場板10上での作業員の動作に支障がなければ、フレーム部20のいかなる位置に設けられていてもよい。
【0019】
図2に示すように、吊足場1は、橋梁100の下で用いられる場合には、矢印Aで示す方向に沿って移動可能である。したがって、電線等が内挿された送電線管1000を橋梁100の一方端側の橋脚200から他方端側の橋脚まで掛け渡す作業が行なわれるときに、従来のように、橋梁100の下側の全てに吊足場を設置し解体する作業を行う必要がない。その結果、橋梁100の下側での工事時間の短縮を図ることが可能となる。
【0020】
なお、図3および図4に示すように、H型鋼製の桁50には、スティフナーと呼ばれる補強部材54が設けられている。スティフナーは、ウェブ51に対して垂直でありかつフランジ52に対しても垂直である。また、2本のH型鋼製の桁50同士を接続するトラスからなる補強部材55も設けられている。ただし、補強部材54は、複数の車輪機構30が通過する経路を塞ぐ障害物となっているため、複数の車輪機構300は、そのままの状態では、下側のフランジ52上を移動することができない場合がある。
【0021】
そこで、本実施の形態の吊足場1は、図5および図6に示すように、補強部材54等の下側のフランジ52上の障害物を回避するために、その状態を変化させることが可能である。以下、吊足場1の状態の変化を具体的に説明する。
【0022】
なお、図1および図2においては、複数の車輪機構30は、4つの車輪機構からなっているが、図5および図6においては、複数の車輪機構30は、フレーム部20の進行方向の左側に位置する左車輪機構30a,30b,30c,30dおよびフレーム部20の進行方向の右側に位置する右車輪機構30a,30b,30c,30dの8つの車輪機構からなる。また、複数の車輪機構30は、左車輪機構30a,30b,30c,30dと右車輪機構30a,30b,30c,30dとは、左右対称に配置されている。また、左車輪機構30a,30b,30c,30dおよび右車輪機構30a,30b,30c,30dの回転軸は、水平面内において、互いに同一平行に延びており、それぞれの車輪は、同一方向に回転可能である。
【0023】
まず、吊足場1は、通常走行時においては、図5に示すように、左および右車輪機構30a,30b,30c,30dの全てがフランジ52の上面に接触している。一方、補強部材54を避けるときには、図6に示すように、左および右車輪機構30aを、車輪を支持する軸受が固定されているシャフトの周りに180°回転させて、フランジ52上から離れさせた後、内側に待避させる。それにより、吊足場1は、補強部材54に阻害されることなく進行することができる。
【0024】
このようにして、本実施の形態の吊足場1は、左および右車輪機構30a,30b,30c,30dのそれぞれを独立して補強部材54の近傍に位置するタイミングにおいてのみフレーム部20側に待避させることができる。そのため、H型鋼製の桁50に補強部材54が設けられていても、吊足場1は2本の桁50に吊り下げられたままの状態で2本の桁方向に沿って移動することが可能である。
【0025】
また、図7および図8に示すように、H型鋼製の桁50が一方端と他方端との間の位置で橋脚200によって支持されており、下側のフランジ52の上面と橋脚200の上面との距離Dが小さい場合がある。このような場合において、本実施の形態の吊足場1は、図9に矢印Cで示すように、複数の車輪機構30の近傍に至るまで持上げられるように、フレーム部20を折り畳むことが可能である。したがって、吊足場1は、下側のフランジ52の上面と橋脚200の上面との間の距離Dで規定される空間(図8参照)を通過することが可能である。
【0026】
次に、図10〜図18を用いて、本実施の形態の吊足場1をより詳細に説明する。以下、図10〜図18においては、吊足場1は、フレーム部20、足場板10、および4つの台車300からなっている。4つの台車300は、右車輪機構30a,30b,40a,40bが設けられた右前台車、左車輪機構30a,30b,40a,40bが設けられた左前台車、右車輪機構30c,30d,40c,40dが設けられた右後台車、左車輪機構30c,30d,40c,40dが設けられた左後台車からなっている。足場板10および4つの台車300以外は、図1のフレーム部20に相当する部分であるものとする。また、車輪機構30a,30b,30c,30dのそれぞれの車輪は、水平方向に延びる回転軸を有し、それらの回転軸同士は互いに平行である。一方、車輪機構40a,40b,40c,40dのそれぞれの車輪は、鉛直方向に延びる回転軸を有し、それらの回転軸同士も互いに平行である。また、本実施の形態においては、左および右車輪機構30a,30b,30c,30dの8つの車輪機構が設けられているが、車輪機構は、左右および前後対称に6つ設けられていれば、後述する補強部材54の回避を行うことは可能である。
【0027】
図10に示すように、本実施の形態の吊足場1においては、足場板10が足場板10aと足場板10bとを含んでいる。足場板10aは、その中央側の端部に4つの支持部12aを有し、足場板10bは、その中央側の端部に4つの支持部12bを有している。支持部12aおよび12bのそれぞれに円柱状の横方向棒状部材11が回転可能に挿入されている。また、足場板10aの外側端には、4つの支持部12cが設けられており、それらの支持部12cを横方向棒状部材13が回転可能に貫通している。また、足場板10bの外側端にも、4つの支持部12dが設けられており、それらの支持部12dを横方向棒状部材14が貫通している。横方向棒状部材11、13、および14は、それぞれ、円柱状部材である。
【0028】
また、横方向棒状部材11は、縦方向棒状部材87の下端部に回転可能に挿入されている。また、横方向棒状部材13は、縦方向棒状部材88の下端部に回転可能に挿入されている。また、横方向棒状部材14は、縦方向棒状部材86の下端部に回転可能に挿入されている。縦方向棒状部材86、87、および88のそれぞれは、その上端部がボックス型パイプの横架材80に対して回転可能に取り付けられている。
【0029】
また、ガイド部85は、作業員の転落防止用の部材であって、C型鋼からなっており、ボルト等によって、縦方向棒状部材86、87、および88のそれぞれに対して、回転可能に取り付けられている。また、横架材80の両側端部のそれぞれは、角筒部材89に挿入され、角筒部材89の上面には、接続部材70が取り付けられている。接続部材70は、プレート90aまたはプレート90bの下面に取り付けられている横方向棒状部材である。また、接続部材70は、左前台車のプレート90aと右前台車のプレート90aまたは左後台車のプレート90bと右後台車のプレート90bとの位置関係を固定している。
【0030】
プレート90aには、車輪機構40a,30a,30b,40bが取り付けられている。また、プレート90bには、車輪機構40c,30c,30d,40dのそれぞれが取り付けられている。また、車輪機構40a,40b,40c,40dは、桁50のウェブ51に接触する車輪を有し、吊足場1が移動している間に、吊足場1が2本の桁50の間から脱落することを防止している。一方、車輪機構30a,30b,30c,30dは、足場板10、フレーム部20、作業員、および資材の荷重を支持し、下側のフランジ52の上面に当接しながら転がることによって、吊足場1を移動させるものである。
【0031】
また、吊足場1は、ウインチ63が取付部材64を介して接続部材70に取り付けられており、ウインチ63にはワイヤ60が巻き付けられている。また、ワイヤ60は、滑車62および61を介して横方向棒状部材11に取り付けられている。ウインチ63がワイヤ60を引っ張っていない状態では、図11および図13に示すように、縦方向棒状部材86、87、および88は、鉛直方向に延びた状態となり、足場板10aおよび10bは最も低い位置まで下がる。
【0032】
一方、前述のウインチ63がワイヤ60を巻取ると、図12および図14に示すように、横方向棒状部材11が持上げられ、台車300と同じ高さ位置にある滑車61に近づく。このとき、縦方向部材86、87、および88は、それぞれ、横架材80、ガイド部材85、ならびに、横方向棒状部材11、13、および14に対して、それぞれの取付位置を中心にして回転する。それに伴って、足場板10aおよび10bが台車30の高さ位置に近い位置まで持ち上げられる。つまり、吊足場1のフレーム部20は折り畳まれた状態になる。
【0033】
次に、図15および図16を用いて、台車300の構造を詳細に説明する。本実施の形態においては、台車300は、4つ設けられており、4つの台車300は左右対称に配置されている。したがって、以下、1つの台車300について説明するが、他の台車300は、以下に説明される台車300と同一の構造ある。ただし、台車300の数は、4つに限定されず、左右に同数ずつ設けられていれば、6つでも、8つでもよい。なお、以下に説明する台車300は、車輪機構40a,40b,30a,30bを有している。また、台車300のプレート90a(90b)は、ボルト900aによって接続部材70に固定されている。
【0034】
車輪機構40aは、車輪41aを有している。車輪41aは、その回転中心軸が軸受42aに挿入されている。車輪41aは軸受42aに対して回転可能である。また、軸受42aは、角材43aに取り付けられている。角材43aは、角筒型の軸受44aに挿入され、その軸周りの回転は拘束されている。ただし、角材43aは軸受44aに対してその軸方向にスライドすることが可能である。
【0035】
また、角材43aの先端には、レバー45aが取り付けられている。レバー45aはボルト46aの軸周りに回転可能である。したがって、作業員は、レバー45aを、ボルト46aの軸周りに90度回転させ後、ガイドレール400aが延びる方向に沿って動かすことにより、車輪41aを、ウェブ40aに当接させたり、内側へ退避させたりすることができる。なお、レバー45aは、走行時には、L型のアングル47aに設けられた係止部(溝)47aによって係止され、その移動が拘束されている。
【0036】
また、軸受44aは、L型のアングル48aに取り付けられている。また、L型のアングル48aは、貫通孔を有し、貫通孔にはスライド部材49aが挿入されている。スライド部材49aは、プレート90aに設けられた溝状のガイドレール400aに挿入されている。スライド部材49aは、ガイドレール400aから外れることなく、ガイドレール400aに沿って移動することが可能であり、L型のアンクル48aをガイドレール400aの所定の位置に固定することも可能である。つまり、スライド部材49aはL型アングル48aとともにプレート90aに設けられたガイドレール400aに沿って往復移動し得るように設置されている。したがって、2本の桁50同士の間の距離に応じて車輪41aの位置を調節することが可能である。
【0037】
一方、車輪機構30aは、2つの車輪31aを有している。2つの車輪31aは、それらの回転軸のそれぞれが軸受31aを回転可能に貫通しており、互いに同じ高さに設けられており、その回転軸同士が互いに平行に延びている。また、軸受31aは、円柱状のシャフト33aに固定されている。円柱状のシャフト33aは、その軸周りに回転可能に軸受36aに挿入されている。また、軸受36aは、プレート35aに取付けられている。プレート35aは、ボルト34aによって、プレート90aに取り付けられている。また、シャフト33aの先端には、レバー37aが設けられている。したがって、作業員は、レバー37aを用いて、車輪30aおよびシャフト33aを内側に退避させることができる。
【0038】
なお、シャフト33aは、軸受36aと摺動しながら、その軸方向に移動してしまうおそれがある。しかしながら、車輪30aが下側のフランジ52上に載置されているときには、車輪30aに大きな荷重がかかっているため、吊足場1の移動中にシャフト33aが内側に移動してしまうことはないと考えられる。そのため、シャフト33aが内側に移動することを防止する係止部材は必須ではない。ただし、安全性を高めるためには、シャフト33aが内側に移動することを防止するために、レバー37aの内側への移動を拘束する係止部材が設けられていることが望ましい。
【0039】
また、前述の車輪機構40aの構造は、車輪機構40b、40c、および40dのそれぞれの構造と同一の構造または鏡面対称の構造であり、図においてはその符号のみが異なっている。また、前述の車輪機構30aの構造も、車輪機構30b、30c、および30dのそれぞれの構造と同一の構造または鏡面対称の構造であり、図においてはその符号のみが異なっている。また、図中の参照符号の数字が同じで数字に付されたアルファベット文字が異なる部分同士は、同一の部位ではないが、同じ機能を有する対応部位である。
【0040】
図15および図16には、車輪41aおよび41bのそれぞれがウェブ52に接し、車輪31aおよび31bのそれぞれが下側のフランジ52上に載置され、台車300が移動しているときの状態が示されており、一方、図17および図18には、車輪31bおよび41bのそれぞれが補強部材54を回避するときの状態が示されている。車輪31bおよび41bが補強部材54を回避するときには、図17および図18に示すように、車輪31bおよび41bがフランジ部20側に引っ込められる。つまり、車輪31bおよび41bは、補強部材54を避けるために内側に待避している。この後、車輪31bおよび41bは、再び、外方に押し出され、車輪41bはウェブ51に当接し、2つの車輪31bのそれぞれはフランジ52の上に載置される。
【0041】
また、作業員は、図17に示すように、車輪41a,41b,31a,31bのそれぞれを独立して桁50から遠ざけることができ、また、図18に示すように、車輪41a,41b,31a,31bのそれぞれを独立して桁50に近づけることができる。
【0042】
たとえば、作業員は、車輪31bを桁50から遠ざけるときには、レバー37bをほぼ180°シャフト33b周りに回転させて、2つの車輪31bを下側のフランジ52から離れさせてから、レバー37bを内側に引く。一方、作業員は、2つの車輪31bを桁50に近づけるときには、レバー37bをほぼ−180°シャフト33b周りに回転させて、車輪31bを下側のフランジ52に接触させてから、レバー37bを外側に押す。
【0043】
一方、作業員は、車輪41bを桁50から遠ざけるときには、レバーを係止部47bから外して内側に引く。一方、作業員は、車輪41bを桁50に近づけるときには、レバー46bを外側に押し出した後、係止部47bにレバー46bを係止され、レバー46bの位置を固定する。
【0044】
上記のように、本実施の形態の吊足場1によれば、図10に示すように、複数の車輪31a,31b,31c,31dがH型鋼の下側のフランジ52の上に載置された状態で転がる。その結果、作業員は、足場板10aおよび10bの上に乗ったままで、吊足場1とともに桁50が延びる方向に沿って移動することができる。
【0045】
また、図12および図14に示すように、吊足場1においては、フレーム部(台車30および足場板10以外)20が折り畳み可能な構造である。吊足場1が折り畳まれる時には、ウインチ63が滑車61および62を介してワイヤ60を巻き取ることによって、足場板10aおよび10bが車輪機構30にほぼ接近する程度にまで持上げられる。その結果、上下間の幅が非常に狭い部分、たとえば、図8に示すような橋脚200の上面と下側のフランジ52との間との距離Dが50cm程度であっても、吊足場1は、作業員が搭乗しかつ資材等が積載され、かつ、折り畳まれた状態で、H型鋼製の桁50が延びる方向に沿って移動することが可能である。
【0046】
さらに、図17および図18に示すように、車輪31a,31b,31c,31dのそれぞれの位置を独立して内側に向かって退避させる機構(車輪機構のうち車輪およびその軸受以外の部分)を有している。そのため、H型鋼の補強部材54を回避するタイミングにおいてのみ車輪機構30を内側に向かって退避させ、補強部材54を回避する必要がないタイミングにおいては車輪機構30を下側のフランジ52上に載せることができる。その結果、補強部材54が設けられている桁50に用いられる場合であっても、吊足場1は、補強部材54を回避して移動することが可能である。
【0047】
さらに、2本の桁50が完全に平行でない場合であっても、常に、車輪41a,41b,41c,41dがウェブ51に接触しながら転がるように、車輪41a,41b,41c,41dの位置のそれぞれの位置を独立して変更することができるため、吊足場1が桁50から脱落することが防止されている。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態の吊足場が移動する状態を説明するための概念図である。
【図2】実施の形態の吊足場を用いて送電線管を橋梁の下側に敷設する工事を説明するための概念図である。
【図3】橋梁の下側に設置されたH型鋼製の桁を説明するための図である。
【図4】H型鋼製の桁を補強するために用いられる補強部材を説明するための図である。
【図5】通常走行時の車輪機構の状態を説明するための図である。
【図6】補強部材を避けるために車輪機構が内側に退避した状態を説明するための図である。
【図7】橋梁の下方に敷設されている橋脚を説明するための図である。
【図8】橋梁の下方に敷設されている橋脚の上面と下側フランジの上面との間の距離を示す図である。
【図9】本実施の形態の吊足場が、橋脚の上面と下側フランジの上面との間の狭い空間を通過するときの状態を説明するための図である。
【図10】本実施の形態の吊足場の平面図である。
【図11】実施の形態の吊足場の移動時の側面図である。
【図12】実施の形態の吊足場の折り畳まれたときの側面図である。
【図13】実施の形態の吊足場の移動時の正面図である。
【図14】実施の形態の吊足場の折り畳まれたときの正面図である。
【図15】実施の形態の台車を説明するための詳細上面図である。
【図16】実施の形態の台車を説明するための詳細側面図である。
【図17】実施の形態の台車の車輪が補強部材を退避している状態を説明するための上面図である。
【図18】実施の形態の台車の車輪が補強部材を退避している状態を説明するための側面図である。
【図19】従来の吊足場を説明するための図である。
【図20】従来の吊足場を説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1 吊足場、10,10a,10b 足場板、20 フレーム部、30,30a,30b,30c,30d 車輪機構、40,40a,40b,40c,40d 車輪機構、50 桁、51 ウェブ、52 フランジ、54 補強部材、63 ウインチ、60 ワイヤ、61,62 滑車、100 橋梁、200 橋脚、300 台車、1000 送電線管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体状のフレーム部と、
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられた第1左車輪、第2左車輪、第2右車輪、および第2右車輪と、
前記フレーム部の下部に取り付けられ、作業員が搭乗することが可能な足場板とを備え、
前記第1左車輪、前記第2左車輪、前記第2右車輪、および前記第2右車輪は、回転軸が互いに平行に延びかつ前記フレーム部から外方に突出するように、所定の平面内の仮想の四角形の4つの角部のそれぞれに設けられた、吊足場。
【請求項2】
前記第1および第2左車輪ならびに前記第1および第2右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えた、請求項1に記載の吊足場。
【請求項3】
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、前記所定の平面内において、前記第1左車輪と前記第2左車輪との間に位置し、前記第1左車輪および前記第2左車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3左車輪と、
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、前記所定の平面内において、前記第1右車輪と前記第2右車輪との間に位置し、前記第1右車輪および前記第2右車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3右車輪と、
前記第1〜第3左車輪ならびに前記第1〜第3右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構とをさらに備えた、請求項2に記載の吊足場。
【請求項4】
前記フレーム部は、その上部まで前記足場板が移動するように折り畳み可能に構成されている、請求項1に記載の吊足場。
【請求項5】
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の左車輪と、
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の右車輪とをさらに備えた、請求項1に記載の吊足場。
【請求項6】
前記他の左車輪および前記他の右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えた、請求項5に記載の吊足場。
【請求項1】
箱体状のフレーム部と、
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられた第1左車輪、第2左車輪、第2右車輪、および第2右車輪と、
前記フレーム部の下部に取り付けられ、作業員が搭乗することが可能な足場板とを備え、
前記第1左車輪、前記第2左車輪、前記第2右車輪、および前記第2右車輪は、回転軸が互いに平行に延びかつ前記フレーム部から外方に突出するように、所定の平面内の仮想の四角形の4つの角部のそれぞれに設けられた、吊足場。
【請求項2】
前記第1および第2左車輪ならびに前記第1および第2右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えた、請求項1に記載の吊足場。
【請求項3】
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、前記所定の平面内において、前記第1左車輪と前記第2左車輪との間に位置し、前記第1左車輪および前記第2左車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3左車輪と、
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、前記所定の平面内において、前記第1右車輪と前記第2右車輪との間に位置し、前記第1右車輪および前記第2右車輪のそれぞれの回転軸と平行な回転軸を有する第3右車輪と、
前記第1〜第3左車輪ならびに前記第1〜第3右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構とをさらに備えた、請求項2に記載の吊足場。
【請求項4】
前記フレーム部は、その上部まで前記足場板が移動するように折り畳み可能に構成されている、請求項1に記載の吊足場。
【請求項5】
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の左車輪と、
前記フレーム部の上部に回転可能に取り付けられ、回転軸が鉛直方向に延びる他の右車輪とをさらに備えた、請求項1に記載の吊足場。
【請求項6】
前記他の左車輪および前記他の右車輪のそれぞれの位置を独立して変更し得る機構をさらに備えた、請求項5に記載の吊足場。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−2472(P2007−2472A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182257(P2005−182257)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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