説明

同相信号伝達を用いた差動ペアを利用した独立リンク

本発明は、シングルエンド同相信号伝達を使用する方法および装置に関し、余分な線を追加することなく既存の差動ペア接続を利用して、追加データを、後方に、前方に、および/または両方向に転送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
この米国特許出願は、優先権を主張し、「同相信号伝達を用いた差動ペアを利用した独立リンク」という名称の2008年10月27日出願の対応する米国仮特許出願第61/108,757号明細書を参照として取り込む。
【背景技術】
【0002】
差動信号伝達を使用して、ケーブルでシリアルデータを送信することができる。データ転送速度を上げるために、2つ以上の差動ペアを高速シリアルリンクで使用することができる。図1は、2つの差動ペアを用いて仮想差動ペアを生成する一例のシステムを例示する。コンピュータシステムでは、プロセッサ101は、送信器106および受信器110を含む。プロセッサは、例えば遷移最小化差動信号伝達(TMDS)通信プロトコルを用いて、映像表示端末102にデジタル画素を送信する。従って、4つのツイスト線差動ペア105a−dを介してプロセッサ101を映像表示端末102に連結する。ツイスト線差動ペア105a−dは、1つのケーブル組立品内で実施可能である。
【0003】
代わりに、プロセッサ101は、プロセッサ101と映像表示端末102との間に連結されるツイスト線差動ペアの数が異なる場合に、任意の他の適当な通信プロトコル(例えば、低電圧差動信号伝達、即ちLVDS)を用いて映像表示端末102にデジタル画素データを転送してもよい。これらのツイスト線差動ペアは、データを同期させるクロック信号と一緒に映像表示端末102に赤、緑および青のデジタル画素データを送信するのに使用される。
【0004】
表示端末102は、受信器107、送信器115および直流オフセットモジュール125を含む。受信器107は、入力デジタル画素データを受信し、データを表示端末102内で行列ドライバ回路に経路設定する。表示端末102内の送信器115は、表示端末102に連結可能な周辺装置から入力デジタルデータを受信し、直流オフセットモジュール125を用いてこのデジタルデータをプロセッサ101に送信する。直流オフセットモジュール125は、ツイスト線差動ペア105a−dのうち2つに関して直流オフセットを操作するのに使用される。2つのツイスト線ペアの各々における直流オフセットを比較する場合、2つの直流オフセット間の差を使用して、デジタルデータを逆方向に送信する。
【0005】
第2のペアの両方の線における直流オフセットは変わらないままであるが、第1のペアにおける両方の線は、少量だけ調整されたそれらの直流オフセットを有することがある。デジタル情報を逆方向に通信するために、第1の直流オフセットを第2のオフセットと比較する。さらに、第1のペアの両方の線における直流オフセットは変わらないままであるが、第2のペアにおける両方の線は、少量だけ調整されたそれらの直流オフセットを有することがある。デジタル情報を逆方向に通信するために、第1の直流オフセットを第2のオフセットと比較する。これにより、デジタルデータの双方向転送が可能になる。また、デジタルデータを、ツイスト線差動ペア140および150のうち2つで逆方向に転送する。
【0006】
例として、限定の目的でなく、同じ参照符号が同様の要素を指す添付図面で本発明を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】双方向データ転送システムを組み込むシステムを例示する。
【図2】同相信号伝達を利用した双方向データ転送システムを組み込むシステムの一実施形態のブロック図である。
【図3】ここに記載の技法を用いて生成できる波形の例である。
【図4】同相信号伝達を利用して通信できるケーブルによって接続された送信器および受信器の一実施形態を例示する。
【図5】デュアルモード受信器で利用できる送信回路の一実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、多数の具体的詳細について述べる。しかし、これらの具体的詳細なしで、本発明の実施形態を実施することができる。他の場合、この説明の理解を分かりにくくしないために、周知の回路、構造および技法を示していない。
【0009】
図2に例示する同相信号伝達構成では、差動ペアの対を利用して仮想差動ペアを生成する。即ち、4本の線を利用して仮想差動ペアを設ける。さらに、仮想差動ペアを利用した伝送は一方向である。下記の構成では、同相電圧信号伝達を用いた差動ペアでデータを伝送することができる。即ち、差動ペアデータ転送信号に加えて、差動ペアの同相電圧によって別のデータ転送信号を供給することもできる。データを、一方向または双方向に送信することができる。
【0010】
図2は、同相信号伝達を利用した双方向データ転送システムを組み込むシステムの一実施形態のブロック図である。この方式では、反対方向に2つの差動ペアの同相を変調してビットを表現し、それらの2つのペア間の同相差を検出してそのビットを回復する。
【0011】
図2の例では、追加の仮想差動ペアを、プロセッサ201から表示装置202に送信するものとして例示する。別の実施形態では、表示装置202からプロセッサ201に送信することができ、または双方向通信が可能である。図3(より詳細に後述)の送信器は、差動ペア205a−dで追加のデータ送信容量を与えるのに利用できる。
【0012】
図2のコンピュータシステムでは、プロセッサ201は、送信器206および受信器210を含む。プロセッサ201は、例えば遷移最小化差動信号伝達(TMDS)通信プロトコルを用いて、表示端末202にデジタルデータ(例えば、デジタル画素データ)を送信する。少なくとも4つの差動ペア205a−dを含む有線インターフェースを介してプロセッサ201を表示端末202に連結する。差動ペア205a−dは、1つのケーブル組立品内で実施可能である。一実施形態において、4つの差動ペアは、赤画素データ、緑画素データ、青画素データおよびクロック信号を搬送する。差動ペアを用いて、他のデータを搬送することもできる。差動ペアは、ツイストペア線の形をとることができる。
【0013】
代わりに、プロセッサ201は、プロセッサ201と映像表示端末202との間の差動ペアの数が異なる場合に、任意の他の適当な通信プロトコル(例えば、LVDS)を用いて映像表示端末202にデジタル画素データを転送してもよい。これらの差動ペアは、データを同期させるクロック信号と一緒に表示端末202に赤、緑および青のデジタル画素データを送信するのに使用される。
【0014】
表示端末202は、受信器207、送信器215および直流オフセットモジュール225を含む。受信器207は、入力データを受信し、データを行列ドライバ回路230に経路設定する。表示装置202内の送信器215は、表示端末202に連結可能な周辺装置から入力データを受信することができ、直流オフセットモジュール225を用いてこのデータをプロセッサ201に送信することができる。直流オフセットモジュール225は、差動ペア105a−dのうち2つに関して直流オフセットを操作する働きをする。2つのツイスト線ペアの各々における直流オフセットを比較する場合、2つの直流オフセット間の差を使用して、デジタルデータを表示装置202からプロセッサ201に送信する。
【0015】
送信器215による直流オフセットの操作により、対の差動ペアでデータを送信して、仮想差動ペア280および290を生成することができる。表示装置202からプロセッサ201への送信が例示されているけれども、送信器をプロセッサ201に含み、受信器を表示装置202に含んでもよく、プロセッサ201から表示装置202に仮想差動ペアで送信することができる。さらに、双方向通信を仮想差動ペアでサポートすることもできる。
【0016】
第2のペアの両方の線における直流オフセットは変わらないままであるが、第1のペアにおける両方の線は、少量だけ調整されたそれらの直流オフセットを有することがある。デジタル情報を逆方向に通信するために、第1の直流オフセットを第2のオフセットと比較する。さらに、第1のペアの両方の線における直流オフセットは変わらないままであるが、第2のペアにおける両方の線は、少量だけ調整されたそれらの直流オフセットを有することがある。デジタル情報を逆方向に通信するために、第1の直流オフセットを第2のオフセットと比較する。これにより、デジタルデータの双方向転送が可能になる。また、デジタルデータを、ツイスト線差動ペア240および250のうち2つで逆方向に転送する。
【0017】
追加のデータを送信するために、送信器215は、第1のデータストリームからのデータと第2のデータストリームとを混合して、同相信号伝達を有する差動データを介して両方のデータストリームを表現する差動ペアで送信すべき信号を生成することができる。受信器210は、差動データおよび同相信号伝達を復号して、2つのデータストリームを回復する。図3および図4に記載の送信器を用いて、2つのデータストリームを1つの差動ペアで送信することができる。
【0018】
図3は、これらの技法を用いて生成できる波形の例である。ここに記載の信号伝達技法および装置は、任意の差動ペアデータ転送機構、例えばmicro−USB(ユニバーサル・シリアル・バス)ケーブルを利用したMHL(モバイル高解像度リンク)に適用できるので、上述のMHL信号と従来のHDMI信号の両方を受信するデュアルモード受信器またはUSBケーブルの1対の差動線を介して両方のクロックおよびデータ信号を送信することができる。
【0019】
図3において、実線で示すDPおよびDNは差動信号である。これらの2つの波形の差分Vdiff=(DP−DN)は、上記の例から10101010...として復号される1つのデータストリームD1を送出する。破線Cで描いた同相部分Vcommon=(DP+DN)/2は、000111110000011として復号される別のデータストリームD2を送出する。
【0020】
差動ペアのこの同相電圧の変動は、差動データ転送にあまり影響を及ぼさないので、差および同相は独立している。データを、一方向または双方向に送信することができる。異なる信号の振れを、差動信号および同相信号のために使用することができる。信号は、異なるデータ速度を有することができる。図3の例では、同相データ信号のデータ速度は、差動ペアデータ信号のデータ速度よりもはるかに遅い。
【0021】
図4は、例えば2つの一方向データストリームD1およびD2を送信することによって差動ペア線および同相信号伝達の両方を利用して通信できるケーブル400によって接続された送信器および受信器の一実施形態を例示する。一般に、図4は、データストリームD1およびD2を混合して同相信号伝達を有する差動データを生成する送信器と、差動ペアケーブルと、差動信号および同相信号を分離してデータストリームD1およびD2を回復する受信器との3つの部品からなる。図4の例において、D1は差動ペアデータ信号に対応し、D2は同相データ信号に対応する。
【0022】
D2+およびD2−によって駆動される電流スイッチ回路は、抵抗器R1およびR2を介して差動ペアの同相を変調する。また、R1およびR2は差動源終端としての機能を果たし、従って、理想値は、ケーブルの差動インピーダンスの半分である。抵抗器R3およびR4は同相信号用の終端としての機能を果たし、従って、理想値は、終端インピーダンス整合用のケーブルの同相インピーダンスの2倍である。
【0023】
抵抗器R5およびR6は、同相電圧を抽出する。また、それらの抵抗器は、R3、R4、R5およびR6からなる差動終端網の一部であり、従って、理想値は、ケーブルを用いた差動インピーダンス整合用のこの式を満たすべきである。
differential=(R3+R4)//(R5+R6)
差動増幅器AMP1はデータストリームD1を回復し、シングルエンド増幅器AMP2はデータストリームD2を回復する。
【0024】
図5は、デュアルモード受信器で利用できる送信回路の一実施形態を例示する。図5の例では、例えばMHL/HDMIデュアルモード受信器を使用することができる。図5の例の概念を、他のデュアルモード環境にも適用することができる。
【0025】
一実施形態では、HDMIモードの場合、CLKチャネルおよびデータチャネル0、1、2から4つの差動信号を得る従来のHDMI受信器として働くようにし、CLK、D0、D1、D2をシステムに送出するスイッチSを接続する。MHLモードの場合、追加の同相信号clkを有する差動データをデータチャネル0に利用し、すべての他の入力、Clkチャネル、データチャネル1および2はフローティングであり、またスイッチSを切断する。次に、構成は、上述と同じであり、CLKおよびD0を回復する。
【0026】
「一実施形態」または「1つの実施形態」の明細書での参照は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造または特性を本発明の少なくとも1つの実施形態に含むことを意味する。明細書中の各種箇所での「一実施形態において」という用語の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を参照するものではない。
【0027】
前述の明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を説明している。しかし、本発明のより広い精神と範囲から離れないで種々の修正および変更を行うことができることは明白である。従って、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味とみなすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペア線で差動電圧ペア信号を介して第1のデータストリームを通信する第1のデータ信号を生成する第1の信号生成回路と、
同相電圧信号を介して第2のデータストリームを通信する第2のデータ信号を生成する第2の信号生成回路であって、前記差動ペア信号と同時に前記同相電圧信号を前記ペア線に送信する第2の信号生成回路と、
を含む送信器。
【請求項2】
前記第1の信号生成回路は、前記差動電圧ペア信号を変調する少なくとも第1の電流スイッチ回路を含む、請求項1に記載の送信器。
【請求項3】
前記第2の信号生成回路は、前記同相電圧信号を変調する少なくとも第2の電流スイッチ回路を含む、請求項2に記載の送信器。
【請求項4】
前記ペア線間で直列に連結されている1対の抵抗構造体をさらに含み、前記1対の抵抗構造体のうち一方は前記第2の電流スイッチ回路の出力と前記ペア線内の第1の線との間に連結され、前記1対の抵抗構造体のうち他方は前記第2の電流素子の前記出力と前記ペア線内の第2の線との間に連結されている、請求項3に記載の送信器。
【請求項5】
前記ペア線はユニバーサル・シリアル・バス(USB)準拠ケーブルに含まれている、請求項1に記載の送信器。
【請求項6】
前記USB準拠ケーブルはMicro−USB準拠ケーブルを含む、請求項5に記載の送信器。
【請求項7】
前記ペア線はMicro−USBケーブルを利用したモバイル高解像度リンク(MHL)インターフェースに含まれている、請求項5に記載の送信器。
【請求項8】
差動電圧ペア信号はHDMI信号を含む、請求項5に記載の送信器。
【請求項9】
ペア線で差動電圧ペア信号を介して第1のデータストリームを通信する第1のデータ信号を生成する第1の信号生成回路と、
同相電圧信号を介して第2のデータストリームを通信する第2のデータ信号を生成する第2の信号生成回路であって、前記差動ペア信号と同時に前記同相電圧信号を前記ペア線に送信する第2の信号生成回路と、
前記ペア線に連結され、前記差動電圧ペア信号を抽出する第1の増幅器と、
前記ペア線に連結され、前記同相電圧信号を抽出する第2の増幅器と、
を含むシステム。
【請求項10】
前記第1の信号生成回路は、前記差動電圧ペア信号を変調する少なくとも第1の電流スイッチ回路を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第2の信号生成回路は、前記同相電圧信号を変調する少なくとも第2の電流スイッチ回路を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ペア線間で直列に連結されている1対の抵抗構造体をさらに含み、前記1対の抵抗構造体のうち一方は前記第2の電流スイッチ回路の出力と前記ペア線内の第1の線との間に連結され、前記1対の抵抗構造体のうち他方は前記第2の電流素子の前記出力と前記ペア線内の第2の線との間に連結されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の増幅器は前記ペア線の各々から信号を受信するのに連結されており、前記第2の増幅器は前記ペア線間に連結されている抵抗構造体を介して前記同相電圧信号を受信するのに連結されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記ペア線はユニバーサル・シリアル・バス(USB)準拠ケーブルに含まれている、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記USB準拠ケーブルはMicro−USB準拠ケーブルを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記ペア線はMicro−USBケーブルを利用したモバイル高解像度リンク(MHL)インターフェースに含まれている、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
差動電圧ペア信号はHDMI信号を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項18】
ペア線間に電圧差を生じさせて第1の信号のデータ値を示すことによって電圧差動信号伝達を用いてペア線で第1の信号を送信するステップと、
前記ペア線に対する共通電圧レベルを変えて第2の信号のデータ値を示すことによって同相電圧信号伝達を用いて前記ペア線で第2の信号を送信するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記ペア線はユニバーサル・シリアル・バス(USB)準拠ケーブルに含まれている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記USB準拠ケーブルはMicro−USB準拠ケーブルを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ペア線はMicro−USBケーブルを利用したモバイル高解像度リンク(MHL)インターフェースに含まれている、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
差動電圧ペア信号はHDMI信号を含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−507204(P2012−507204A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533382(P2011−533382)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/061923
【国際公開番号】WO2010/062531
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(504441048)シリコン イメージ,インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】