説明

同軸ケーブル

【課題】伝送損失が少なく、外部ノイズへの耐性およびシールド効果の高い同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】信号線10の周囲に絶縁層12が設けられ、絶縁材テープ22の少なくとも一方の面に金属を蒸着した金属蒸着テープ21を、絶縁層12の周囲に螺旋状に巻きつけてシールドグランド層20が形成される同軸ケーブルであって、金属面23a、23bを外側に向けた金属蒸着テープ21a、21bからなる複数の螺旋ループに対して、金属面23cを内側に向けた金属蒸着テープ21cを重ねて、隣接する螺旋ループを巻軸方向に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、一般的な同軸ケーブルの構成図である。同軸ケーブルは、信号を伝送する信号線10の周囲に絶縁層12を設け、絶縁層12の周囲にシールドグランド層20を設け、シールドグランド層20の周囲をシース14にて被覆する構造となっている。絶縁体は、信号線10とシールドグランド層20との間を電気的に絶縁する機能を有している。また、シールドグランド層20は信号線10にて伝送される信号を外部に漏らさないアース(グランド)機能と、当該信号を外部ノイズから防護するシールド機能を有している。さらに、シース14はケーブル全体を保護する機能とケーブルの形状を維持する機能を有している。
【0003】
同軸ケーブルのシールドグランド層20の形成方法としては、編組シールドやテープシールド等が知られている。さらに、テープシールドにおいてはテープの巻き方によって分類され、シガレット巻きや横巻き等の巻き方がある。これらの手法や巻き方を組み合わせて用いて、シールドグランド層が形成される。
【0004】
図6は、編組シールド、テープシールド(シガレット巻き)およびテープシールド(横巻き)、各々の構成図である。図6(a)が編組シールド、図6(b)がテープシールド(シガレット巻き)、図6(c)がテープシールド(横巻き)を示している。
【0005】
編組シールドは、絶縁層12の周りに銅線をクロスして編み上げるようにシールドグランド層20aを形成する手法である。適度な柔軟性と強度を持つことが特徴である。
【0006】
テープシールドは、絶縁層12の周りにアルミニウムや銅等を蒸着した金属蒸着テープを巻きつけてシールドグランド層20b、20cを形成する手法である。金属蒸着テープを絶縁層12に対して縦添えに巻きつける場合をシガレット巻き、金属蒸着テープを絶縁層12に対して横添えにして螺旋状に巻きつける場合を横巻きという。テープシールドは比較的構造が簡単であることが特徴である。
【0007】
この種の技術として、特許文献1には超伝導体の直上にクレープカーボン紙の巻層を設け、その上に金属紙の金属面を外側にし、かつ間隔をあけて巻回した金属蒸着カーボン紙の巻層を設け、さらに、その上に金属紙の金属面を内側にして、かつ上記金属蒸着カーボン紙巻層の間隔を覆って巻回した金属蒸着の巻層を設けて成る内部半導電層を備えている超伝導ケーブルについて記載されている。
【特許文献1】特開平9−106714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
【0009】
編組シールドは、絶縁層の周りに銅線を編み上げて同軸ケーブルを作るため、製造ラインが複雑になり、ケーブル製造スピードも限られるため、製造ラインだけでなくケーブル自体も安価にできなかった。さらには、シールドグランド層を導線で編み上げて作るため、この導線にも強度および太さが必要であり、高密度実装に適した細線化ができなかった。
【0010】
テープシールドのシガレット巻きにおいては、金属蒸着テープを絶縁層に沿わせるときにある程度大きいテープ張力を維持する必要がある。この張力制御が難しく、張力が強いと金属蒸着テープ上に形成した金属蒸着部にひび割れが発生し、ケーブルの電気特性不良、信号伝送特性不良となり、シールド効果も低下する。また、大きいテープ張力が必要であるため、金属蒸着テープが一定幅以上必要であり、細線には適さない。
【0011】
テープシールドの横巻きにおいては、金属蒸着テープを巻きつける際に張力をあまり必要としないため、製造しやすく細線化にも向いているが、金属蒸着テープを少しオーバーラップして巻くので、導通のとれない隙間が生じる。信号のリターン電流がシールドグランド層を流れた場合に、導通のとれない隙間がスロットアンテナとして機能するため、同軸ケーブルとしては伝送損失が悪化し、外部からのノイズへの耐性およびシールド効果が低下する。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高いシールド効果と細線化を両立する同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、信号線の周囲に絶縁層が設けられ、絶縁材テープの少なくとも一方の面に金属を蒸着した金属蒸着テープを、前記絶縁層の周囲に螺旋状に巻きつけてシールドグランド層が形成される同軸ケーブルであって、金属面を外側に向けた前記金属蒸着テープからなる複数の螺旋ループに対して、金属面を内側に向けた前記金属蒸着テープを重ねて、隣接する前記螺旋ループを巻軸方向に接合することを特徴とする同軸ケーブルが提供される。
【0014】
この発明によれば、テープシールドの横巻きによってシールドグランド層が形成される際に生じてしまう導通のとれない隙間が、分断する金属面を巻軸方向に接合するので、伝送損失を防止し、外部ノイズへの耐性およびシールド効果を向上することができる。さらに、テープシールドの横巻きは細線に適しているため、上述の効果と細線化を両立することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、伝送損失が少なく、外部ノイズへの耐性およびシールド効果の高い同軸ケーブルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図面においてシース(被覆)は便宜上図示していないが、シールドグランド層の周囲に存在するものとする。
(第1実施形態)
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る同軸ケーブルの断面図である。ここで、金属蒸着テープを総体的に意味する場合は金属蒸着テープ21を用いて、個々の部位を意味する場合は金属蒸着テープ21a〜21cを用いる。また、絶縁材テープ22および金属面23についても同様とする。
【0018】
信号線10の周囲に絶縁層12が設けられ、絶縁材テープ22の少なくとも一方の面に金属を蒸着した金属蒸着テープ21を、絶縁層12の周囲に螺旋状に巻きつけてシールドグランド層20が形成される同軸ケーブルであって、金属面23a、23bを外側に向けた金属蒸着テープ21a、21bからなる複数の螺旋ループに対して、金属面23cを内側に向けた金属蒸着テープ21cを重ねて、隣接する螺旋ループを巻軸方向に接合することができる。
【0019】
さらに、本実施形態において、金属蒸着テープ21は、片面を金属蒸着としてもよい。両面を金属蒸着した場合でも、導通のとれない隙間24は生じるので、本発明の効果が失われるものではない。しかし、金属蒸着が両面である場合と、片面である場合を比較すると、後者の方が薄く、柔軟性がある。よって、同軸ケーブルの細線化および可とう性を考慮すると、後者の方が適している。
(第2実施形態)
【0020】
図2は、本発明の第2実施形態に係る同軸ケーブルの断面図である。ここでも図1と同様に、金属蒸着テープを総体的に意味する場合は金属蒸着テープ21を用いて、個々の部位を意味する場合は金属蒸着テープ21d、21eを用いる。また、絶縁材テープ22および金属面23についても同様とする。
【0021】
金属面23dを外側に向けた前記金属蒸着テープ21dからなる複数の螺旋ループは、巻軸方向に間隔を設け、金属面23eを内側に向けた金属蒸着テープ21eは、当該間隔を覆う構成としてもよい。ここで、「当該間隔を覆う」とは、当該間隔を完全に覆う必要はなく、伝送損失の増加やシールド効果の低下といった悪影響がないのであれば、一部隙間が空いていたり、金属蒸着テープ21の一部に穴が開いていたりしてもよい。
【0022】
図1と図2を比較してわかるとおり、第1実施形態においてはシールドグランド層20が最大3層で形成されるのに対し、本実施形態においてはシールドグランド層20が2層で形成される。よって、本実施形態の方が同軸ケーブルをより細くすることができる。
【0023】
本実施形態は、図2に図示したように、金属面23dを外側に向けた金属蒸着テープ21dおよび金属面23eを内側に向けた金属蒸着テープ21eが交互に並び、金属面23がテープ幅方向両端を互いに重ねて接合される構成としている。
【0024】
図示していないが、金属蒸着テープ21eを一つの部材とする構成、すなわち一つの金属蒸着テープ21が複数の間隔を覆う構成とすることができる。ただし、互いの金属面23が重なる幅は、ケーブルを曲げた影響等で離れない程度の幅以上あれば小さいほど使用する金属蒸着テープ21が少なくなり、ケーブルの可とう性が向上し、製造コストも低下できる。比較すれば、前者の構成がより適した構成である。
【0025】
図3は、本発明の第2実施形態に係る同軸ケーブルの外形図である。金属面23を外側に向けた第1金属蒸着テープ25を絶縁層12の周囲に螺旋状に巻きつけ、その上から金属面23を内側に向けた第2金属蒸着テープ26を螺旋状に巻きつけ、隣接する螺旋ループを巻軸方向に接合してもよい。本実施形態では、2本の金属蒸着テープ21を用いているが、4本や6本といった偶数本の金属蒸着テープ21を用いた構成でも良い。
【0026】
なお、第1金属蒸着テープ25および第2金属蒸着テープ26は、同種類の金属を蒸着していることが好ましい。異種金属としてた場合、接合部にて接触腐食を起こす可能性がある。また、同種金属の方が製造には簡易である。同様に、偶数本の金属蒸着テープ21を用いた構成でも、使用する金属蒸着テープの金属面に同種類の金属を蒸着していることが好ましいのは、当然である。
(第3実施形態)
【0027】
図4は、本発明の第3実施形態に係る同軸ケーブルの外形図である。一つの金属蒸着テープ21の金属面23を外側に向けて絶縁層12の周囲に螺旋状に巻きつけ、当該金属蒸着テープ21を折り返し、その上から当該金属蒸着テープ21の金属面23を内側に向けて螺旋状に巻きつけ、隣接する螺旋ループを巻軸方向に接合することができる。第2実施形態においては偶数本の金属蒸着テープ21が必要とされたが、本実施形態においては1本の金属蒸着テープを用いた構成も可能である。
【0028】
また、第2実施形態と本実施形態を組み合わせれば奇数本の金属蒸着テープを用いた構成も可能である。ただし、この場合も使用する金属蒸着テープの金属面に同種類の金属を蒸着していることが好ましいのは、当然である。
【0029】
図7は、本発明を用いないテープシールドの横巻きにおいて、金属蒸着テープが重なる部分の断面図である。ここで、金属蒸着テープを総体的に意味する場合は金属蒸着テープ21を用いて、個々の部位を意味する場合は金属蒸着テープ21f、21gを用いる。また、絶縁材テープ22および金属面23についても同様とする。
【0030】
金属蒸着テープ21fおよび金属蒸着テープ21gが重なる部分において、金属面23fおよび金属面23gの間には、絶縁材テープ22gの一部が挟まれ、導通のとれない隙間24が生じる。金属蒸着テープ21fおよび金属蒸着テープ21gが異なるテープの場合においては、金属面23fおよび金属面23gは導通が取れないため、信号のリターン電流が流れると金属面23fおよび金属面23gに電位差が生じる。また、金属蒸着テープ21fおよび金属蒸着テープ21gが同一のテープの場合においては、金属面23fおよび金属面23gは、同一金属面23上にあるためテープの巻き方向に導通がとれている。しかし絶縁層12の周囲を一巻き分の距離において電圧降下するため、やはり信号のリターン電流が流れると微小ながら電位差が生じる。よって、導通のとれない隙間24はスロットアンテナとして機能するため、同軸ケーブルとしては伝送損失が悪化し、外部からのノイズへの耐性およびシールド効果が低下する。
【0031】
これに対して、本発明の作用効果について図1を用いて説明する。図7と同様に、金属面23aおよび金属面23bは、導通のとれない隙間24によって分断されているが、金属面23cによって金属面23aと金属面23bが接合されるため、巻軸方向に導通される。これにより、信号のリターン電流が流れた場合でも、金属面23a、金属面23bおよび金属面23cは等電位となり、導通のとれない隙間24はスロットアンテナとして機能しないので、同軸ケーブルとしては伝送損失を防止し、外部ノイズへの耐性およびシールド効果を向上することができる。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、単芯同軸ケーブルとして説明したが、芯数は一つに限る必要はなく、複数の芯数を有する同軸ケーブルである芯数2芯並行同軸ケーブルあるいは多芯同軸ケーブルへ展開することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る同軸ケーブルの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る同軸ケーブルの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る同軸ケーブルの外形図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る同軸ケーブルの外形図である。
【図5】一般的な同軸ケーブルの構成図である。
【図6】編組シールド、テープシールドのシガレット巻きおよびテープシールドの横巻き、各々の構成図である。
【図7】テープシールドの横巻きにおいて、金属蒸着テープが重なる部分の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 信号線
12 絶縁層
14 シース
20 シールドグランド層
21 金属蒸着テープ
22 絶縁材テープ
23 金属面
24 導通の取れない隙間
25 第1金属蒸着テープ
26 第2金属蒸着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線の周囲に絶縁層が設けられ、絶縁材テープの少なくとも一方の面に金属を蒸着した金属蒸着テープを、前記絶縁層の周囲に螺旋状に巻きつけてシールドグランド層が形成される同軸ケーブルであって、
金属面を外側に向けた前記金属蒸着テープからなる複数の螺旋ループに対して、金属面を内側に向けた前記金属蒸着テープを重ねて、隣接する前記螺旋ループを巻軸方向に接合することを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の同軸ケーブルにおいて、
前記金属蒸着テープは、片面を金属蒸着されることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の同軸ケーブルにおいて、
金属面を外側に向けた前記金属蒸着テープからなる複数の前記螺旋ループは、巻軸方向に間隔を設け、
金属面を内側に向けた前記金属蒸着テープは、該間隔を覆うことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項4】
請求項3に記載の同軸ケーブルにおいて、
金属面を外側に向けた前記金属蒸着テープおよび金属面を内側に向けた前記金属蒸着テープが交互に並び、前記金属面がテープ幅方向両端を互いに重ねて接合されることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の同軸ケーブルにおいて、
金属面を外側に向けた第1金属蒸着テープを前記絶縁層の周囲に螺旋状に巻きつけ、その上から金属面を内側に向けた第2金属蒸着テープを螺旋状に巻きつけ、隣接する前記螺旋ループを巻軸方向に接合することを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項6】
請求項5に記載の同軸ケーブルにおいて、
前記第1金属蒸着テープおよび前記第2金属蒸着テープは、同種類の金属を蒸着していることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれかに記載の同軸ケーブルにおいて、
一つの前記金属蒸着テープの金属面を外側に向けて前記絶縁層の周囲に螺旋状に巻きつけ、該金属蒸着テープを折り返し、その上から該金属蒸着テープの金属面を内側に向けて螺旋状に巻きつけ、隣接する前記螺旋ループを巻軸方向に接合することを特徴とする同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−33928(P2010−33928A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195893(P2008−195893)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】