説明

同軸ケーブル

【課題】1つの実施形態は、例えば、効率的に高周波電力を伝送できる同軸ケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】1つの実施形態によれば、高周波電力を伝送する同軸ケーブルであって、内管と外管と絶縁性支持材とを有する同軸ケーブルが提供される。内管は、導体で形成されている。外管は、内管の外側に内管と同軸に配されている。外管は、導体で形成されている。絶縁性支持材は、内管と外管との間に配されている。内管の内側の第1の空間と内管及び外管の間の第2の空間との少なくとも一方には、冷却ガスが流される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の製造方法では、QTAT(Quick Turnaround Time)化のために多層膜を一括処理するケースが増えている。特に、RIE(Reactive Ion Etching)加工のようにプラズマを用いたエッチング加工では、多層膜を連続処理で一括加工するケースが増えている。多層膜の一括加工では、プラズマ放電を継続しながら、各層ごとに適切なガス流量、圧力、温度、電力といった処理条件を順次連続的に切り替えることで連続処理が行われる。
【0003】
この連続処理では、半導体基板を処理する際に処理室内の電極へ高周波電力を同軸ケーブルで伝送している。この連続処理の処理レートを向上するために、高周波電力の周波数を高くする必要がある。高周波電力の周波数が高くなると、同軸ケーブルにおける表皮効果による高周波損失により熱が発生し、その熱に起因した温度上昇により同軸ケーブルの内部導体の抵抗率が上昇し、高周波電力の熱損失の割合が増える可能性がある。これにより、効率的に高周波電力を伝送することが困難になる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−53143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの実施形態は、例えば、効率的に高周波電力を伝送できる同軸ケーブル及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態によれば、高周波電力を伝送する同軸ケーブルであって、内管と外管と絶縁性支持材とを備えた同軸ケーブルが提供される。内管は、導体で形成されている。外管は、内管の外側に内管と同軸に配されている。外管は、導体で形成されている。絶縁性支持材は、内管と外管との間に配されている。内管の内側の第1の空間と内管及び外管の間の第2の空間との少なくとも一方には、冷却ガスが流される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態にかかる同軸ケーブルが適用された基板処理装置の構成を示す図。
【図2】実施形態にかかる同軸ケーブルの構成を示す図。
【図3】実施形態における冷却ガスの流れ方を示す図。
【図4】実施形態における内管の穴の構成を示す図。
【図5】実施形態の変形例における絶縁支持材の構成を示す図。
【図6】比較例にかかる同軸ケーブルの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる同軸ケーブルを詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
実施形態にかかる同軸ケーブル10を適用した基板処理装置1について図1を用いて説明する。図1は、同軸ケーブル10を適用した基板処理装置1の構成を示す図である。
【0010】
基板処理装置1は、処理室90で被処理基板を処理する装置であり、例えばRIE装置などのプラズマ処理装置であってもよいし、例えばCVD装置などの成膜装置であってもよい。以下では、基板処理装置1がプラズマ処理装置である場合について例示的に説明する。
【0011】
基板処理装置1は、処理室90、下部電極20、電源制御部30、同軸ケーブル10、上部電極40、冷却ガス供給管50、排気制御部60、及び温度制御部70を備える。
【0012】
処理室90は、その内部でプラズマが発生されるための室であり、処理容器2により形成されている。処理容器2は、ガス供給制御部(図示せず)から処理室90へ処理ガスが供給可能なように構成されているとともに、処理室90から排気制御部60へ処理済の処理ガスが排気可能なように構成されている。
【0013】
下部電極20は、絶縁材23を介して処理容器2から絶縁されるように、処理室90内の底面側に配されている。下部電極20には、シリコンウエーハ等の被処理基板WFが載置される。下部電極20は、温調ステージ21及び電極22を有する。温調ステージ21は、電極22を覆っている。温調ステージ21は、温度制御部70により温度が制御される。これにより、温度制御部70は、温調ステージ21を介して被処理基板WFの温度を制御する。電極22は、電源制御部30から同軸ケーブル10を介して電力が供給され、温調ステージ21を介して電力を被処理基板WFまで供給する。温調ステージ21は、例えばステンレス、アルミ等の金属またはアルミナ、イットリア等のセラミック、電極22は、例えばステンレス、アルミ等の金属で形成されている。
【0014】
電源制御部30では、整合回路32が高周波電源31側のインピーダンスと下部電極20側のインピーダンスとの整合をとる。整合回路32により整合をとった状態で、高周波電源31から同軸ケーブル10を介して下部電極20に高周波電力を供給する。上部電極40は接地されており、下部電極20に高周波電圧が供給されると、プラズマ生成用の上部電極40及び下部電極20は、処理室90内にプラズマを発生させる。すなわち、上部電極40と下部電極20の間の空間91にプラズマが発生する。この際、プラズマ領域と下部電極20の間に電位勾配があるシース領域も形成され、プラズマ中にラジカルとともに生成されたイオン(例えば、F、CF3など)が被処理基板WF表面(下部電極20側)へ加速されることで異方性エッチング加工が行われる。
【0015】
また、高周波電源31は、処理室90の下方に配されている。整合回路32は、処理室90の下方であって、高周波電源31と下部電極20との間に配されている。例えば、整合回路32は、高周波電源31と下部電極20とを結ぶ直線上に配されている。
【0016】
同軸ケーブル10は、高周波電源31から下部電極20へ直線状に延びている。これにより、同軸ケーブル10は、高周波電源31から下部電極20へ高周波電力を伝送する。同軸ケーブル10は、同軸ケーブル10a及び同軸ケーブル10bを含む。同軸ケーブル10aは、高周波電源31及び整合回路32を接続するように、高周波電源31から整合回路32へ直線状に延びている。同軸ケーブル10bは、整合回路32及び下部電極20を接続するように、整合回路32から下部電極20へ直線状に延びている。同軸ケーブル10b及び同軸ケーブル10aは、後述する同様な内部構造を有する。
【0017】
冷却ガス供給管50は、冷却ガスを下部電極20へ供給するように処理室90の下方から下部電極20へ延びている。また、冷却ガス供給管50は、冷却ガスを、同軸ケーブル10内における後述する第1の空間SP1及び第2の空間SP2(図2(a)参照)に供給する。具体的には、冷却ガス供給管50は、主供給管51、電極用供給管54、ケーブル用供給管55、開閉弁52、及び開閉弁53を有する。開閉弁52及び開閉弁53は、後述する温度コントローラ72により制御される。開閉弁52は、所定のタイミングで開状態になることにより、主供給管51で供給された冷却ガスを電極用供給管54経由で下部電極20へ供給する。これにより、非処理基板WFを冷却する。開閉弁53は、所定のタイミングで開状態になることにより、主供給管51で供給された冷却ガスをケーブル用供給管55経由で同軸ケーブル10内における後述する第1の空間SP1及び第2の空間SP2へ供給する。これにより、同軸ケーブル10内における所定の部分を冷却する。
【0018】
排気制御部60は、処理室90の圧力および処理ガスの排気量を制御する。また、排気制御部60は、同軸ケーブル10内における後述する第1の空間SP1及び第2の空間SP2からの冷却ガスの排気を制御する。具体的には、排気制御部60は、圧力センサ(図示せず)、排気管62a〜62c、ゲートバルブ61、ターボポンプ63、ロータリーポンプ64、排気管65、排気管66、開閉弁67、開閉弁68、及び圧力コントローラ69を有する。圧力センサは、処理室90内の圧力を検知し、その圧力の値の情報を圧力コントローラ69へ供給する。圧力コントローラ69は、圧力センサから供給された圧力の値に応じて、処理室90内の圧力が目標値になるように、ゲートバルブ61の開度を制御する。これにより、処理室90の圧力および処理ガスの排気量が制御される。
【0019】
また、開閉弁67及び開閉弁68は、後述する温度コントローラ72により制御される。開閉弁67は、所定のタイミングで開状態になることにより、同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2の冷却ガスを排気管65経由で排気管62bへ排気する。開閉弁68は、所定のタイミングで開状態になることにより、同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2の冷却ガスを排気管66経由で排気管62cへ排気する。なお、排気管62cは、ロータリーポンプ64により真空状態に保たれ、排気管62a、62bは、ターボポンプ63により排気管62cより高い真空状態に保たれる。
【0020】
温度制御部70は、温調ステージ21を介して被処理基板WFの温度を制御する。具体的には、温度制御部70は、温度コントローラ72と、温調ステージ21内に配された温度センサ71及び温度調整器(ヒータまたは冷却器)73を有する。温度センサ71は、温調ステージ21上にある被処理基板WFの温度を検知する。温度センサ71は、検知した温度情報を温度コントローラ72へ供給する。温度コントローラ72は、被処理基板WFの温度が所定の目標温度になるように、温度調整器73を制御する。例えば、温度コントローラ72は、被処理基板WFを所定の目標温度まで冷却すべき場合、温調ステージ21内に配された温度調整器(冷却器)73で温度を設定し、開閉弁52を開状態にして温調ステージ21と被処理基板WFとの間に供給された冷却ガスを介して被処理基板WFを冷却する。これにより、被処理基板WFの温度が制御される。
【0021】
また、温度制御部70は、同軸ケーブル10の温度を制御する。具体的には、温度制御部70の温度コントローラ72は、高周波電源31が電力を供給すべき状態になったことの通知を例えば高周波電源31から受けて、開閉弁53を開状態にして同軸ケーブル10内の第1の空間SP1及び第2の空間SP2に冷却ガスを供給するとともに、開閉弁67または68を開状態にして同軸ケーブル10内の第1の空間SP1及び第2の空間SP2から冷却ガスを排気する。これにより、同軸ケーブル10内の所定の部分が冷却される。
【0022】
また、温度制御部70の温度コントローラ72は、高周波電源31が電力の供給を終了したことの通知を例えば高周波電源31から受けて、開閉弁53を閉状態にして同軸ケーブル10内の第1の空間SP1及び第2の空間SP2への冷却ガスの供給を終了するとともに、開閉弁67または68を閉状態にして同軸ケーブル10内の第1の空間SP1及び第2の空間SP2からの冷却ガスの排気を終了する。これにより、同軸ケーブル10内の所定の部分の冷却が終了する。
【0023】
次に、同軸ケーブル10の構成について図2を用いて説明する。図2(a)は、同軸ケーブル10の構成を示す斜視図であり、図2(b)は、同軸ケーブル10の構成を示す断面図である。
【0024】
同軸ケーブル10は、内管11、外管12、絶縁性支持材13、及び保護被覆14を有する。すなわち、同軸ケーブル10b及び同軸ケーブル10aは、それぞれ、内管11、外管12、絶縁性支持材13、及び保護被覆14を有する。
【0025】
内管11は、同軸ケーブル10における内部導体として機能するものであり、高周波電力が伝達される部分である。内管11は、所定の導体で形成されている。具体的には、内管11の本体11aは、例えば、SUS304などのステンレス、銅などで形成されている。また、本体11aの外側表面には、メッキ、スパッタリング、蒸着等により、銀、銅、金、及び白金の少なくとも1つを主成分とする材料(金属又は金属間化合物)で低抵抗層11bが形成されている。本体11aの内側表面にも、メッキ、スパッタリング、蒸着等により、銅、金、及び白金の少なくとも1つを主成分とする材料(金属又は金属間化合物)で低抵抗層11cが形成されている。
【0026】
外管12は、内管11の外側に配されている。また、外管12は、内管11と同軸になるように配されている。すなわち、本実施形態の同軸ケーブル10は、概ね、内管11及び外管12が同軸で延びた二重配管構造を有している。外管12は、同軸ケーブル10における外部導体として機能するものであり、接地電位が供給されている部分である。外管12は、所定の導体で形成されている。外管12は、例えば、SUS304などのステンレスで形成されていても良いし、銅、アルミ等で形成されていても良い。
【0027】
ここで、内管11の内側の第1の空間SP1と、内管11及び外管12の間の第2の空間SP2とには、冷却ガスが流される(図3(a)参照)。すなわち、外管12は、ケーブル用供給管55が接続される箇所に穴12dを有する(図4(a)、(b)参照)。内管11は、外管12の穴12dに対応した穴11dを有する(図4(a)、(b)参照)。内管11の穴11dは、第1の空間SP1と第2の空間SP2とを連通する。冷却ガスは、穴11dを介して、第1の空間SP1及び第2の空間SP2の両方に流される。また、外管12は、排気管65、66が接続される箇所にも第2の穴(図示せず)を有する。内管11は、外管12の第2の穴に対応した第2の穴を有する。内管11の第2の穴も、第1の空間SP1と第2の空間SP2とを連通する。冷却ガスは、第2の穴を介して、第1の空間SP1及び第2の空間SP2の両方から排気される。
【0028】
なお、同軸ケーブル10bの第1の空間SP1と同軸ケーブル10aの第1の空間SP1とは、整合回路32内を貫通する第1の連通路を介して連通されている。同軸ケーブル10bの第2の空間SP2と同軸ケーブル10aの第2の空間SP2とは、整合回路32内を貫通する第2の連通路を介して連通されている。
【0029】
第1の空間SP1及び第2の空間SP2に流される冷却ガスは、例えば熱伝導性を有した非酸化性のガスである。冷却ガスは、例えば、ヘリウムガス又は窒素ガスを含む。ヘリウムガスは、窒素ガスよりも熱伝導性が高く熱を奪う性質が高いので、冷却ガスとして窒素ガスより好ましい。
【0030】
絶縁性支持材13は、内管11と外管12との間に配されている。具体的には、絶縁性支持材13は、冷却ガスが通過するように内管11と外管12とを支持している。すなわち、絶縁性支持材13は、複数の絶縁性支持部材13a〜13cを有する。各絶縁性支持部材13a〜13cは、断面視において、内管11の外側表面の一部を覆うとともに、内管11の外側表面の一部から外管12の内側表面の一部へ延びている。これにより、断面視において内管11の外側表面の絶縁性支持部材13a〜13cにより覆われていない部分に対応した第2の空間SP2を冷却ガスが通過可能になっている。絶縁性支持材13は、内管11と外管12とを支持しながら内管11と外管12とを絶縁するように、絶縁物で形成されている。絶縁性支持材13は、例えば、ポリエチレン、セラミック、テフロン(登録商標)、ベークライトなどで形成されている。
【0031】
なお、絶縁性支持材13は、内管11の長手方向の一部において内管11と外管12との間に配されていてもよいし(図5(d)参照)、あるいは、内管11の長手方向に沿って延びるように内管11と外管12との間に配されていてもよい(図5(e)参照)。
【0032】
保護被覆14は、外管12の外側表面を覆う。これにより、保護被覆14は、外管12を絶縁被覆するとともに、外管12を外気等から保護する。保護被覆14は、例えば、ポリ塩化ビニルやポリエチレンなどの難燃性を有する絶縁物で形成されている。
【0033】
ここで、仮に、図6に示すように、同軸ケーブル910において、内部導体911が内側の第1の空間SP1(図2(a)参照)を有さず、内部導体911と外部導体912との間に誘電体913が充填されている場合について考える。この場合、内部導体911を冷却することが困難であるので、内部導体911により伝送する高周波電力の周波数が高く(例えば、100MHz程度に)なると、内部導体911における表皮効果による高周波損失により熱が発生し、その熱に起因した温度上昇により内部導体911の抵抗率が上昇し、高周波電力の熱損失の割合が増える可能性がある。これにより、効率的に高周波電力を伝送することが困難になる傾向にある。
【0034】
それに対して、実施形態では、同軸ケーブル10において、内管11の内側の第1の空間SP1と、内管11及び外管12の間の第2の空間SP2とに、冷却ガスが流される(図3(a)参照)。これにより、同軸ケーブル10における内部導体として機能する内管11を内側と外側との両側から冷却することができるので、内管11における表皮効果による高周波損失により熱が発生した際に、内管11の温度上昇を抑制できる。これにより、高周波電力の熱損失の割合の増加を抑制できるので、効率的に高周波電力を伝送することができる。
【0035】
したがって、低損失で効率的に高周波電力を伝送することができるので、同軸ケーブル10を適用した基板処理装置1における所定の処理レートを実現するために必要な電力使用量を低減できる。
【0036】
また、図6に示す同軸ケーブル910では、内部導体911と外部導体912との間に誘電体913が充填されており、外部導体912の外側が保護被覆14で覆われているので、外部導体912を冷却することが困難である。このため、内部導体911で伝送する高周波電力の周波数が高く(例えば、100MHz程度に)なると、誘電体913における誘電損失による高周波損失により熱が発生し、その熱が内部導体911へ伝達される可能性がある。そして、伝達された熱に起因した温度上昇により内部導体911の抵抗率が上昇し、高周波電力の熱損失の割合が増える可能性がある。これにより、効率的に高周波電力を伝送することが困難になる傾向にある。
【0037】
それに対して、実施形態では、同軸ケーブル10において、内管11及び外管12の間の第2の空間SP2に、冷却ガスが流される(図3(a)参照)。これにより、同軸ケーブル10における内部導体として機能する内管11を内側及び外側から冷却することができるので、内管11における表皮効果による高周波損失により熱が発生した際に、内管11の温度上昇を抑制できる。これによっても、高周波電力の熱損失の割合の増加を抑制できるので、効率的に高周波電力を伝送することができる。
【0038】
また、図6に示す同軸ケーブル910では、誘電体913が例えば発泡ポリエチレンなどで形成されており、内部導体911が大気中の酸素にさらされているので、内部導体911の表面が酸化しやすい。内部導体911の表面が酸化すると、内部導体911の抵抗率が上昇し、高周波電力の熱損失の割合が増える可能性がある。これにより、効率的に高周波電力を伝送することが困難になる傾向にある。
【0039】
それに対して、実施形態では、内管11の内側の第1の空間SP1と内管11及び外管12の間の第2の空間SP2とに流される冷却ガスが非酸化性のガスである。これにより、内管11の内外表面が酸素にさらされることを低減でき、内管11の内外表面が酸化しにくいので、内管11の抵抗率の上昇を抑制できる。これによっても、高周波電力の熱損失の割合の増加を抑制できるので、効率的に高周波電力を伝送することができる。
【0040】
また、内管11の内側の第1の空間SP1と内管11及び外管12の間の第2の空間SP2とを真空状態にした後、冷却ガスを流しても良い。この場合、内管11および外管12の表面に吸着した酸素が除去されるため、冷却ガスを流すだけの場合よりも更に酸化を抑制することができる。また、この場合、基板処理装置1において、ターボポンプ63が、排気管62bを排気するとともに、排気管62b及び排気管65を介して同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2を排気し、高真空状態にする。冷却ガスを流す場合は、ロータリーポンプ64が、排気管62cを排気するとともに、排気管62c及び排気管66を介して同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2内にある冷却ガスを排気する。
【0041】
また、図6に示す同軸ケーブル910では、内部導体911の表面が酸化しやすいので、内部導体911が容易に劣化し、内管11を含む同軸ケーブル10の寿命が短い傾向にある。
【0042】
それに対して、実施形態では、内管11の内外表面が酸化しにくいので、内管11の耐久性を向上でき、内管11を含む同軸ケーブル10の寿命を長くすることができる。
【0043】
また、実施形態では、内管11は、第1の空間SP1と第2の空間SP2とを連通する穴を有する。すなわち、内管11は、外管12におけるケーブル用供給管55が接続される箇所の穴12dに対応した穴11dと、外管12における排気管65、66が接続される箇所の第2の穴に対応した第2の穴とを有する(図4(a)、(b)参照)。内管11の穴11d及び第2の穴は、いずれも、第1の空間SP1と第2の空間SP2とを連通する。これにより、第1の空間SP1と第2の空間SP2との両方に冷却ガスを流すことができるとともに、第1の空間SP1と第2の空間SP2との両方から冷却ガスを排気できる。これにより、内管11及び外管12を効率的に冷却することができる。
【0044】
また、実施形態では、内管11の内外表面にメッキ、スパッタリング、蒸着等により、銀、銅、金、及び白金の少なくとも1つを主成分とする材料(金属又は金属間化合物)で低抵抗層が形成されている。すなわち、内管11は、本体11aの外側表面にメッキ、スパッタリング、蒸着等により、銀、銅、金、及び白金の少なくとも1つを主成分とする材料(金属又は金属間化合物)で低抵抗層11bが形成されており、本体11aの内側表面にメッキ、スパッタリング、蒸着等により、銀、銅、金、及び白金の少なくとも1つを主成分とする材料(金属又は金属間化合物)で低抵抗層11cが形成されている。これにより、内管11における表皮効果が発生した場合に高周波電力が伝送される箇所の抵抗率を低減しながら、内管11の大部分である本体11aを安価な導体材料(例えば、SUS304などのステンレス)で形成することができる。また、外管12、絶縁性支持材13、保護被覆14も安価な材料で形成することができる。これにより、同軸ケーブル10を低コストで形成することができる。
【0045】
さらに、実施形態では、温度制御部70の温度コントローラ72が、高周波電源31から下部電極20へ電力の供給が行われている期間に、同軸ケーブル10内の第1の空間SP1及び第2の空間SP2の冷却を行い、高周波電源31から下部電極20へ電力の供給が行われていない期間に、同軸ケーブル10内の第1の空間SP1及び第2の空間SP2の冷却を行わない。これにより、冷却ガスのランニングコストを低減できる。また、冷却ガスを循環させるようにすれば、冷却ガスのランニングコストをさらに低減できる。
【0046】
また、実施形態では、基板処理装置1において、冷却ガス供給管50が、冷却ガスを、温調ステージ21と被処理基板WFとの間へ供給するとともに、同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2に供給する。すなわち、冷却ガスを温調ステージ21と被処理基板WFとの間へ供給する冷却ガス供給管50を、同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2に冷却ガスを供給するための供給管として兼用できるので、同軸ケーブル10を低コストで基板処理装置1に適用できる。
【0047】
さらに、実施形態では、基板処理装置1において、ターボポンプ63が、排気管62bを排気するとともに、排気管62b及び排気管65を介して同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2を排気する。また、ロータリーポンプ64が、排気管62cを排気するとともに、排気管62c及び排気管66を介して同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2を排気する。すなわち、排気管62bを排気するためのターボポンプ63を同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2を排気するためのターボポンプとして兼用でき、排気管62cを排気するためのロータリーポンプ64を同軸ケーブル10内における第1の空間SP1及び第2の空間SP2を排気するためのロータリーポンプとして兼用できる。この観点からも、同軸ケーブル10を低コストで基板処理装置1に適用できる。
【0048】
なお、冷却ガスは、図3(b)、図3(c)に示すように同軸ケーブル10内における第1の空間SP1と第2の空間SP2との少なくとも一方に流されても良い。
【0049】
例えば、図3(b)に示すように、冷却ガスは第1の空間SP1に流され、第2の空間SP2は真空状態になっていても良い。この場合、内管11の外側が真空状態になっているので、内管11と外管12との間で生じる放電を抑制することができる。また、外側表面が酸素にさらされることを低減でき、内管11の外側表面が酸化しにくいので、内管11の抵抗率の上昇を抑制できるとともに、内管11及び外管12の耐久性を向上できる。
【0050】
あるいは、例えば、図3(c)に示すように、冷却ガスは第2の空間SP2に流され、第1の空間SP1は真空状態になっていても良い。この場合、内管11の外側から内管11を冷却するとともに、外管12の内側から外管12を冷却するので、内管11の温度上昇を抑制できる。また、内管11の内側が真空状態になっているので、内管11の内側表面が酸素にさらされることを低減でき、内管11の内側表面が酸化しにくいので、内管11の抵抗率の上昇を抑制できるとともに、内管11の耐久性を向上できる。
【0051】
また、冷却ガスを少なくとも第2の空間SP2に流す場合(図3(a)又は(c)の場合)、絶縁性支持材13は、図5(a)〜(c)に示すように、冷却ガスを通過させる複数の穴をさらに有していても良い。
【0052】
例えば、図5(a)に示すように、絶縁性支持材13iが3点支持でなく全体を支持し、蓮根のように穴が配されていても良い。これにより、冷却ガスを、均等に流すことができ、内管11や外管12を均一に冷却することができる。
【0053】
あるいは、例えば、図5(b)に示すように、絶縁性支持材13jの各絶縁性支持部材では、各穴の内管11側の幅が外管12側の幅よりも広くなっていてもよい。これにより、冷却ガスを、第2の空間SP2における外管12側よりも内管11側に優先的に流すことができる。
【0054】
あるいは、例えば、図5(c)に示すように、絶縁性支持材13kの各絶縁性支持部材では、内管11側に配されている穴の数(例えば、16)が外管12側に配されている穴の数(例えば、8)よりも多くなっていてもよい。これにより、冷却ガスを、第2の空間SP2における外管12側よりも内管11側に優先的に流すことができる。
【0055】
また、絶縁性支持材は、内管11の長手方向の一部において内管11と外管12との間に配されていてもよいし、あるいは、内管11の長手方向に沿って延びるように内管11と外管12との間に配されていてもよい。
【0056】
例えば、図5(c)のA−A断面である図5(d)に示すように、絶縁性支持材13kが内管11の長手方向の一部において内管11と外管12との間に配されている場合、第2の空間SP2における内管11側をすすんできた冷却ガスだけでなく外管12側をすすんできた冷却ガスを、第2の空間SP2における内管11側をすすむように導くことができる。
【0057】
あるいは、例えば、図5(c)のA−A断面である図5(e)に示すように、絶縁性支持材13kが内管11の長手方向に沿って延びるように内管11と外管12との間に配されている場合、絶縁性支持材13k内をすすむ冷却ガスを、第2の空間SP2における内管11側をすすむように導くことができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
1 基板処理装置、2 処理容器、10、910 同軸ケーブル、11 内管、11a 本体、11b 低抵抗層、11c 低抵抗層、11d 穴、12 外管、12d 穴、13、13i、13j、13k 絶縁性支持材、13a〜13c、13i〜13k 絶縁性支持部材、14 保護被覆、20 下部電極、21 温調ステージ、22 電極、30 電源制御部、31 高周波電源、32 整合回路、40 上部電極、50 冷却ガス供給管、51 主供給管、52 開閉弁、53 開閉弁、54 電極用供給管、55 ケーブル用供給管、60 排気制御部、61 ゲートバルブ、62a〜62c 排気管、63 ターボポンプ、64 ロータリーポンプ、65 排気管、66 排気管、67 開閉弁、68 開閉弁、69 圧力コントローラ、70 温度制御部、71 温度センサ、72 温度コントローラ、73 温度調整器、90 処理室、91 空間、911 内部導体、912 外部導体、913 誘電体、 SP1 第1の空間、SP2 第2の空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力を伝送する同軸ケーブルであって、
導体で形成された内管と、
前記内管の外側に前記内管と同軸に配され、導体で形成された外管と、
前記内管と前記外管との間に配された絶縁性支持材と、
を備え、
前記内管の内側の第1の空間と前記内管及び前記外管の間の第2の空間との少なくとも一方には、冷却ガスが流される
ことを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項2】
前記冷却ガスは、少なくとも前記第2の空間に流され、
前記絶縁性支持材は、前記冷却ガスが通過するように前記内管と前記外管とを支持している
ことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項3】
前記冷却ガスは、前記第1の空間及び前記第2の空間の一方に流され、
前記第1の空間及び前記第2の空間の他方は、真空状態になっている
ことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項4】
前記内管は、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する穴を有する
前記冷却ガスは、前記穴を介して、前記第1の空間及び前記第2の空間の両方に流され、
ことを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
【請求項5】
前記内管の内外表面には、メッキ、スパッタリング、及び蒸着のいずれかにより、銀、銅、金、及び白金の少なくとも1つを主成分とする材料で低抵抗層が形成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の同軸ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21382(P2013−21382A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150613(P2011−150613)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】