同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法と装置
【課題】放電を受けた酸素ガスを接触させてオゾン生成を促進する同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法と装置を提供する。
【解決手段】円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14外周面に対して所定間隔の隙間Sを有するように外側に配置した円筒状の電極15と、を用いて、前記隙間Sに酸素を供給し、前記電極15を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生方法であって、前記円筒状の電極15における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属を被膜した。
【解決手段】円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14外周面に対して所定間隔の隙間Sを有するように外側に配置した円筒状の電極15と、を用いて、前記隙間Sに酸素を供給し、前記電極15を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生方法であって、前記円筒状の電極15における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属を被膜した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンの発生効率を高めることができる同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道のオゾン処理は広く行われるようになり、下水処理水においても高度処理の要望がたかまっている。オゾン処理において、オゾンはエネルギー多消費型の原材料物質であり、1kgのオゾンを製造するために13kWhもの電力を要している。この製造コストの高さがオゾン処理の普及を阻害している。オゾン発生の原理としては、空気または酸素ガス中での電気放電および紫外線ランプを用いたものが大部分を占め、大規模・低コスト化が図れるのは電気放電を用いた方式である。電気放電方式では放電の制御方法や放電に用いられる電極が各種考案され数々のオゾン発生器が製造されてきた。
【0003】
例えば、同軸円筒型の電極は、小型から大型のオゾン発生器に使われ、用途としては、上水道、下水処理場等である。また、同軸円筒型の電極を備え、酸素もしくは空気からオゾンを発生させるオゾン発生器としては、円筒形の高電圧電極をチューブ状の接地電極(ステンレス製)に挿通し、当該接地電極の反りや曲がりに順応するように構成してオゾン発生効率を向上させるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のオゾン生成技術が有する問題を解消することを目的として、本発明者等は、先に非特許文献1を提案した。具体的には、オゾン生成の際、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回ると、オゾンが不安的な励起状態となって分解されやすく、オゾン生成効率が低下するおそれがあるが、非特許文献1に記載の技術では、電極の表面に第三体(触媒作用物質)を配置していると、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回った場合でも、余分なエネルギーを第三体に直ちに伝達させることができるので、生成されたオゾンが不安定な励起状態に留まることを確実に防ぐことができる。これにより、生成されたオゾンを安定化させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。
【0005】
また、特許文献2に記載されているオゾン発生器では、小型の平行平板でエキスパンドメタルを挟むように構成されており、このエキスパンドメタルの表面に第三体となるアンチモンを蒸着して触媒電極であるアンチモン電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−146622号公報
【特許文献2】特開2007−217229号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】金属触媒によるオゾン生成法の考察(平成17年電気学会全国大会、平成17年3月17日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オゾン発生の技術においては、放電部分のメカニズムとオゾン生成のメカニズムについて個別に考慮して、検討が十分なされて来なかった。特に、空気を原料として放電を行う場合には、窒素ガスにも放電が行われるため、NOxなどの副産物が生成するとともに、電力をオゾンの生成に効率的に使用できない。また、酸素ガス(純酸素)を用いるオゾン発生器においても、酸素ガスのみを用いてオゾンを生成し続けた場合、一時的にはオゾン生成効率が上がりオゾン濃度が上昇するが、その後オゾン濃度が低下し、一定時間が過ぎるとついにはオゾンを生成できなくなる。このような現象は、窒素がオゾン生成を促進する触媒として作用していることによるものである。そのため、オゾン生成を停止しないように、原料ガスである純酸素に予め窒素を2%程度添加し、効率を下げかつNOxなどの副産物を生成しながら運転している。
すなわち、窒素等の第三物質の作用を十分に認識していないまま、窒素の存在下においてオゾン生成を行い、オゾン生成効率を低下させてしまっているのである。
【0009】
そのため、前述した非特許文献1に記載の技術を前述した同軸円筒型の電極に対しても適用することが考えられる。特許文献2に記載したようにエキスパンドメタルの表面に第三体となるアンチモンを蒸着した場合は、電極の周囲をアンチモンで覆って囲いこんでしまうため被膜が安定して形成され、電極が放電した際においてアンチモンが剥がれることはないが、特に大型の同軸円筒型の電極における内壁面においてアンチモンを蒸着した場合は、放電で容易に剥がれてしまう。
【0010】
また、前述した特許文献1に記載された同軸円筒型の電極形態では、オゾン発生効率の向上が十分になし得ない。
【0011】
つまり、同軸円筒型の電極に触媒金属を採用する際においては、放電で容易に剥がれず、かつオゾン生成効率が従来よりもさらに良くなる電極の形態が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、放電を受けた酸素ガスを接触させてオゾン生成を促進する同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1の同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法は、
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を用いて、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生方法であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したものである。
【0015】
請求項2の同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生装置は、
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を備え、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生装置であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、前記電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜することで、触媒金属被膜が剥がれることを防止するとともに放電箇所が突起に特定されることでオゾン発生効率を向上させることができる。
【0018】
請求項2においては、前記電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜することで、触媒金属被膜が剥がれることを防止するとともに放電箇所が突起に特定されることでオゾン発生効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る試験装置の全体構成を示す模式図。
【図2】触媒電極式反応器を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図3】図2(a)におけるA−A矢視断面図。
【図4】突起を有する電極を示す斜視図。
【図5】突起を有する電極を示す正面図。
【図6】図5におけるB部分の拡大図。
【図7】突起を有する電極を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は側面図。
【図8】比較用反応器の内部構造を示す一部破断側面図。
【図9】図8におけるA部分の拡大図。
【図10】触媒電極と誘電体との隙間を示す側面断面図。
【図11】比較用電極と誘電体との隙間を示す側面断面図。
【図12】比較用電極適用時における投入電力に対するオゾン濃度変化を示す図。
【図13】比較用電極適用時における投入電力に対するオゾン製造効率を示す図。
【図14】本実施形態に係る電極適用時における投入電力に対するオゾン濃度変化を示す図。
【図15】本実施形態に係る電極適用時における投入電力に対するオゾン製造効率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1を用いてオゾン発生装置の一例である触媒電極式オゾン発生試験装置の全体構成を説明する。
なお、同一の形状及び機能を有する部材・装置等においては、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
触媒電極式オゾン発生試験装置1(以下、試験装置1という)は、図1に示すように、酸素供給手段2と、オゾン発生器3、冷却手段4、オゾン濃度計5、電源6等により構成される。
【0023】
酸素供給手段2は、オゾン発生器3にオゾン生成のための原料ガスとなる酸素を供給する手段であり、酸素ガスボンベ(図示せず)、ストップバルブ7、ガス流量制御装置8、により主に構成される。酸素ガスボンベは配管及びストップバルブ7を介してガス流量制御装置8に接続される。当該ガス流量制御装置8は、酸素ガス供給管9を介してオゾン発生器3に接続されている。酸素ガス供給管9は、当該酸素ガス供給管9の中途部において二方に分岐する分岐管であり、この分岐管が分岐する部分には切換バルブ9aが設けられており、当該切換バルブ9aを切り換えることによって二方の配管のうち、どちらか一方に酸素を供給することが可能となる。こうして、ストップバルブ7、ガス流量制御装置8及び切換バルブ9aを操作することで酸素ガスボンベより所定量の酸素をオゾン発生器3に供給することが可能となる。
【0024】
オゾン発生器3は、酸素供給手段2により供給された酸素に対して放電を行うことでオゾンを発生させる手段であり、触媒電極式反応器10と、比較用反応器11と、を主に備える。
【0025】
触媒電極式反応器10(図2参照)は、触媒金属が被膜された電極(放電体)である触媒電極15(以下、電極15という)を備えたオゾン発生手段であり、図3に示すように、円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14外周面に対して突起16先端(図5参照)を接触するように配置した円筒状の電極15と、を備える。また、突起16先端を誘電体14に接触するように配置した状態においては、図10に示すように隙間Sを有する。電極15の両端は、前述した酸素ガス供給管9と連通している。
誘電体14は、鉄製の中空円筒体であり、その外周面に所定のセラミック被膜を形成したものである。また、誘電体14の外周面の所定位置には、誘電体14を電極15内に挿通配置した際に誘電体14と電極15との軸心を同一にするように電極15を保持するための所定高さの凸状保持部(図示せず)を備える。
電極15は、真鍮製の円筒体であり、図4に示すように、当該円筒状の電極15における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属であるアンチモンを被膜(本実施形態においては真空蒸着による被膜)したものである。すなわち、円筒状の電極15には、図7(a)に示すように電極15の内壁面がスパイラル状にネジ切りされた形状を有しており、当該ネジ切りされた形状におけるネジ谷部に沿って複数の突起16が連続的に設けられている。突起16は、図5、図6に示すように、正面視凹凸状(鋸刃状)に形成されている。円筒状の電極15の内径(突起16先端に沿った内径)は、誘電体14の直径よりも少し大径となっている。
なお、触媒金属としては、特にアンチモンに限定するものではなく、オゾン発生を促進する触媒作用を有する金属であればよく、例えばビスマス等でもよく、これらを含む触媒金属のいずれか1種もしくは複数種類の混合物であってもかまわない。
【0026】
こうして、前記円筒状の電極15を同軸(同心)かつ前記誘電体14の外周面に対して接するように配置することで、放電を行うための空間を制御することができる。酸素供給手段2は、隙間Sに連通する前記酸素ガス供給管9を介して所定流量の酸素を鋸刃状部分の隙間Sに対して供給することができる。
【0027】
また、触媒電極式反応器10の下流側には、当該触媒電極式反応器10で生成されたオゾンガス等を排出するため二方の分岐管であるオゾンガス排出管13の一方が接続されており、この分岐管が分岐する部分には切換バルブ13aが設けられており、オゾンガス排出管13の他端はオゾン濃度計5に接続されている。
【0028】
比較用反応器11は、触媒電極式反応器10が有する電極15とは異なり突起を有さず触媒金属が被膜されていない電極(放電体)である比較用電極25を備えたオゾン発生手段であり、触媒電極式反応器10と比較用反応器11のそれぞれが有する電極の特性を比較するために用いられる反応器である。比較用反応器11は、図8、9に示すように、触媒電極式反応器10と同じく円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14の外周面に対して所定間隔の隙間S´(図11参照)を有するように外側に配置した円筒状の比較用電極25と、を備える。
比較用反応器11が有する円筒状の比較用電極25は、触媒電極式反応器10が有する電極15とは異なり、図9に示すように、当該円筒状の比較用電極25における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起及び触媒金属を有さない従来型のステンレス製電極である。すなわち、比較用電極25における前記誘電体14外周面に対向する面は、起伏を有さない滑らかな内壁面となっている。円筒状の比較用電極25の内径は、誘電体14の直径よりも大径となっている。
なお、比較用反応器11において比較用電極25以外の他の構成部分は、触媒電極式反応器10と同様であり、説明は省略する。
【0029】
こうして、前記円筒状の電極25を同軸(同心)かつ前記誘電体14の外周面に対して所定間隔の隙間S´を有するように配置することで、放電を行うための円筒状の空間(放電ギャップ)である隙間S´を形成することができる。酸素供給手段2は、当該隙間S´に連通する前記酸素ガス供給管9を介して所定流量の酸素を隙間S´に対して供給することができる。
【0030】
また、比較用反応器11の下流側には、当該比較用反応器11で生成されたオゾンガス等を排出するため二方の分岐管であるオゾンガス排出管13の他方が接続されており、この分岐管が分岐する部分には切換バルブ13aが設けられており、オゾンガス排出管13の他端はオゾン濃度計5に接続されている。つまり、この切換バルブ13aを操作することで、オゾンガス排出管13を介して前記触媒電極式反応器10もしくは前記比較用反応器11のどちらか一方とオゾン濃度計5とを接続することが可能であり、接続されたどちらか一方の反応器から送られてくる排出ガスをオゾン濃度計5の計測部5aに導入してオゾン濃度を測定し、当該計測部5aにて計測されたオゾン濃度をオゾン濃度計5の表示部5bにて表示することが可能である。
【0031】
つまり、オゾン発生器3においては、触媒電極式反応器10か比較用反応器11のどちらかを選択して、触媒電極式反応器10が有する電極15と誘電体14とにより形成される隙間S、もしくは比較用反応器11が有する比較用電極25と誘電体14とにより形成される隙間S´に対して酸素が供給され、酸素に対して放電を行うことでオゾンを生成することが可能となる。また、生成したオゾンガスは、前記オゾンガス排出管13を介してオゾン濃度計5に送られ、オゾン濃度の測定が行われる。
【0032】
また、オゾン発生器3は、図1に示すように触媒電極式反応器10及び比較用反応器11を冷却するための冷却手段4を具備する。
【0033】
冷却手段4は、冷却水供給装置(図示せず)、冷却水導入管4a、循環配管4b及び冷却水排出管4cを備える。これにより、冷却水は、冷却水供給装置により冷却水入口(ストップバルブ)から供給され、冷却水導入管4aを介して触媒電極式反応器10内を通過し、触媒電極式反応器10下流側から循環配管4bを介して比較用反応器11上流側へと循環し、当該比較用反応器11内を通過し、比較用反応器11下流側に接続された冷却水排出管4cを介して冷却水出口(ストップバルブ)から排出され、排出された冷却水は冷却供給装置に回収されるようになっており、オゾン発生器3(触媒電極式反応器10、比較用反応器11)の温度を調節することが可能となっている。また、オゾン発生器3には、該オゾン発生器3内の電極15、25に電圧を印加するための電源6がインバータ17を介して接続されている。電源6は、触媒電極式反応器10、比較用反応器11の各電極15、25に対して所定の電力を投入可能であり、投入電力を適宜所定値に設定可能である。
【0034】
このように試験装置1を構成することにより、オゾン発生器3内の触媒電極式反応器10によりオゾンを発生させる場合は、触媒電極式反応器10に酸素を供給して生成後のオゾンを排出するために切換バルブ9a・13aを触媒電極式反応器10に連通する側に操作して、酸素ガスボンベから高純度の酸素ガスを、ガス流量制御装置8により酸素ガス供給管9に流し、触媒電極式反応器10の隙間Sへと導入する。そして、該触媒電極式反応器10の隙間Sに導入された酸素ガスに対して、所定の投入電力に応じて電極15により放電が行われて所定量のオゾンガスが生成する。該オゾンガスは、オゾンガス排出管13からオゾン濃度計5に導入されて、オゾン濃度の測定が行われる。
【0035】
一方、オゾン発生器3内の比較用反応器11によりオゾンを発生させる場合は、比較用反応器11に酸素を供給して生成後のオゾンを排出するために切換バルブ9a・13aを比較用反応器11に連通する側に操作して、酸素ガスボンベから高純度の酸素ガスを、ガス流量制御装置8により酸素ガス供給管9に流し、比較用反応器11の円筒状空間である隙間S´へと導入する。そして、該比較用反応器11の隙間S´に導入された酸素ガスに対して、所定の投入電力に応じて比較用電極25により放電が行われて所定量のオゾンガスが生成する。該オゾンガスは、オゾンガス排出管13からオゾン濃度計5に導入されて、オゾン濃度の測定が行われる。
【0036】
つまり、本実施形態に係る試験装置1では、電極形態の違いによるオゾン発生効率を比較するために異なる電極を有する反応器を併設した構成となっている。そして、試験装置1は、切換バルブ9a・13aの操作を行うことで、ひとつの酸素供給手段2、ひとつのオゾン濃度計5により、電極の違いによるオゾン濃度の比較を行うことが可能であり、触媒電極式反応器10(電極15)と比較用反応器11(電極25)とを同一の試験条件にてオゾン発生効率の比較のための試験測定が行えるように構成されている。
なお、本実施形態に係る試験装置1は、電極形態の違いによるオゾン発生効率の比較試験を行うために異なる電極を有する反応器を併設して構成したものであり、当然ながら、効率的にオゾンを発生させるためのオゾン発生装置の構成として、比較用反応器11を備える必要はない。
以下に、触媒電極式反応器10(電極15)もしくは比較用反応器11(電極25)を適用してオゾンを発生させ、各オゾン濃度を測定した試験結果を実施例として示す。
【実施例】
【0037】
次に、本実施形態の試験装置1における触媒電極式反応器10と比較用反応器11の各反応器によりオゾン発生を行い、各反応器における投入電力に対するオゾン濃度及びオゾン製造効率を測定した。
【0038】
まずは、オゾン発生器3の比較用反応器11に供給した酸素に対して放電を行って、オゾンを発生させた。こうして、比較用反応器11適用時における投入電力に対するオゾン濃度を測定した(図12参照)。
図12は、比較用反応器11への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜180W)におけるオゾン濃度(g/Nm3)を測定し、プロットしたものである(図12上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図12において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン濃度(g/Nm3)を示す。
また、図12に示すオゾン濃度変化に基づき、消費電力量あたりのオゾン発生量(製造量)であるオゾン製造効率変化を求めた(図13参照)。
図13は、比較用反応器11への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜180W)におけるオゾン製造効率(g/kWh)を取得し、プロットしたものである(図13上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図13において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン製造効率(g/kWh)を示す。
【0039】
次に、オゾン発生器3の触媒電極式反応器10に供給した酸素に対して放電を行って、オゾンを発生させた。こうして、触媒電極式反応器10への投入電力に対するオゾン濃度を測定した(図14参照)。
図14は、触媒電極式反応器10への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜160W)におけるオゾン濃度を測定し、プロットしたものである(図14上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、■:2.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図14において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン濃度(g/Nm3)を示す。
また、図14に示すオゾン濃度変化に基づき、消費電力量あたりのオゾン発生量であるオゾン製造効率変化を求めた(図15参照)。
図15は、触媒電極式反応器10への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜160W)におけるオゾン製造効率(g/kWh)を取得し、プロットしたものである(図15上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、■:2.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図15において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン製造効率(g/kWh)を示す。
以下に、触媒電極式反応器10(電極15)適用時のオゾン濃度変化及びオゾン製造効率変化と、比較用反応器11(電極25)適用時のオゾン濃度変化及びオゾン製造効率変化とを比較した結果について説明する。
【0040】
結果としては、触媒電極式反応器10と比較用反応器11、すなわち電極15と比較用電極25をそれぞれオゾンを発生させる際に適用した場合の投入電力毎のオゾン濃度及びオゾン製造効率をそれぞれ比較すると、オゾン濃度変化(図12、図14参照)において投入電力が100Wの時では、比較用反応器11(電極25)に比べて触媒電極式反応器10(電極15)の方が各酸素供給量におけるオゾン濃度が上昇しており、これは電極15の方が高効率にオゾンを発生させているといえる。また、オゾン製造効率(図13、図15参照)を比較すると各投入電力において比較用反応器11(電極25)の場合よりも触媒電極式反応器10(電極15)の方がオゾン製造効率が明らかに向上していることがわかる(投入電力100W時においては、およそ2倍程度)。これは、円筒状電極の内壁面に複数の突起16を形成するとともにアンチモンを被膜した電極15を適用したことで、同じ投入電力において多くのオゾンが発生したものと考えられる。この結果から電極15を適用することにより、同軸円筒型オゾン発生器の基本設計は変えることなく、電極形態を変更するだけで容易にオゾン発生効率を向上させることができるオゾン発生方法及びオゾン発生装置を提供することが可能となる。
【0041】
つまり、本実施形態に係る試験装置1(触媒電極式反応器10)は、円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14の外周面に対して突起16が接触するように外側に配置した円筒状の電極15と、を備え、前記誘電体14に前記電極15を挿通して配置することで形成される前記隙間Sに酸素を供給し、前記電極15を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生装置であって、前記円筒状の電極15内の前記誘電体14と対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属であるアンチモンを被膜したものである。このように、前記電極15における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属であるアンチモンを被膜することで、触媒金属であるアンチモン被膜が剥がれることを防止するとともに放電箇所が突起16に特定されることでオゾン発生効率を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る触媒電極式反応器10が有する電極15は、その内壁面に突起16を有することにより、電極15における誘電体14に対する対向面(放電面)上において、放電点を限定した範囲に収めることが可能となる。すなわち、電極15における放電点は誘電体14側により近接する部分である突起16の頂点付近の範囲に限定される。これにより放電箇所は突起16近傍となり、この放電箇所の放電により酸素分子から酸素原子を生成し、当該酸素原子は供給される酸素分子と結合してオゾンが生成されるのである。つまり、従来から用いられている円筒状電極である比較用電極25は、放電箇所とオゾン発生箇所が混在化するのに対し、電極15では、当該電極15の放電面上(誘電体14の対向面上)に突起16を設ける電極形態としたことで放電箇所を特定し、放電箇所とオゾン発生箇所とを混在化せず分離したことがオゾン発生効率の向上に寄与したものと考えられる。
【0043】
また、本実施形態に係る触媒電極式反応器10が有する電極15は、当該電極15の放電面上(誘電体14の対向面上)に突起16を設けることで、電極ベース金属に対する触媒金属の密着性を向上させることができるため(突起16を設けることで、表面積を増やすことによる密着性の向上、いわゆる、アンカー効果が得られるため)、真空蒸着により被膜した触媒金属であるアンチモンが剥がれることを防止できる。
【0044】
本実施形態に係る電極15は、その内壁面に複数の突起16を有するとともに、内壁面上にオゾン生成を促進する触媒金属の一例であるアンチモンを蒸着薄膜として有しており、当該アンチモン蒸着膜に放電を行った酸素ガスを接触させることにより、オゾンの生成を促進するものである。酸素原料によるオゾンの生成において、電極を本実施形態に係るアンチモン被膜を有する電極15に変更するだけで触媒として窒素を純酸素に添加する必要がなくなり、窒素ガスや供給ガスに窒素を混合するための窒素混合装置を省略できるとともにオゾン発生効率を高めることができ、かつ窒素酸化物(NOx)を含まないオゾンを高効率で生産できる。
【符号の説明】
【0045】
1 触媒電極式オゾン発生試験装置
14 誘電体
15 触媒電極
16 突起
S 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンの発生効率を高めることができる同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道のオゾン処理は広く行われるようになり、下水処理水においても高度処理の要望がたかまっている。オゾン処理において、オゾンはエネルギー多消費型の原材料物質であり、1kgのオゾンを製造するために13kWhもの電力を要している。この製造コストの高さがオゾン処理の普及を阻害している。オゾン発生の原理としては、空気または酸素ガス中での電気放電および紫外線ランプを用いたものが大部分を占め、大規模・低コスト化が図れるのは電気放電を用いた方式である。電気放電方式では放電の制御方法や放電に用いられる電極が各種考案され数々のオゾン発生器が製造されてきた。
【0003】
例えば、同軸円筒型の電極は、小型から大型のオゾン発生器に使われ、用途としては、上水道、下水処理場等である。また、同軸円筒型の電極を備え、酸素もしくは空気からオゾンを発生させるオゾン発生器としては、円筒形の高電圧電極をチューブ状の接地電極(ステンレス製)に挿通し、当該接地電極の反りや曲がりに順応するように構成してオゾン発生効率を向上させるものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、従来のオゾン生成技術が有する問題を解消することを目的として、本発明者等は、先に非特許文献1を提案した。具体的には、オゾン生成の際、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回ると、オゾンが不安的な励起状態となって分解されやすく、オゾン生成効率が低下するおそれがあるが、非特許文献1に記載の技術では、電極の表面に第三体(触媒作用物質)を配置していると、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回った場合でも、余分なエネルギーを第三体に直ちに伝達させることができるので、生成されたオゾンが不安定な励起状態に留まることを確実に防ぐことができる。これにより、生成されたオゾンを安定化させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。
【0005】
また、特許文献2に記載されているオゾン発生器では、小型の平行平板でエキスパンドメタルを挟むように構成されており、このエキスパンドメタルの表面に第三体となるアンチモンを蒸着して触媒電極であるアンチモン電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−146622号公報
【特許文献2】特開2007−217229号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】金属触媒によるオゾン生成法の考察(平成17年電気学会全国大会、平成17年3月17日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オゾン発生の技術においては、放電部分のメカニズムとオゾン生成のメカニズムについて個別に考慮して、検討が十分なされて来なかった。特に、空気を原料として放電を行う場合には、窒素ガスにも放電が行われるため、NOxなどの副産物が生成するとともに、電力をオゾンの生成に効率的に使用できない。また、酸素ガス(純酸素)を用いるオゾン発生器においても、酸素ガスのみを用いてオゾンを生成し続けた場合、一時的にはオゾン生成効率が上がりオゾン濃度が上昇するが、その後オゾン濃度が低下し、一定時間が過ぎるとついにはオゾンを生成できなくなる。このような現象は、窒素がオゾン生成を促進する触媒として作用していることによるものである。そのため、オゾン生成を停止しないように、原料ガスである純酸素に予め窒素を2%程度添加し、効率を下げかつNOxなどの副産物を生成しながら運転している。
すなわち、窒素等の第三物質の作用を十分に認識していないまま、窒素の存在下においてオゾン生成を行い、オゾン生成効率を低下させてしまっているのである。
【0009】
そのため、前述した非特許文献1に記載の技術を前述した同軸円筒型の電極に対しても適用することが考えられる。特許文献2に記載したようにエキスパンドメタルの表面に第三体となるアンチモンを蒸着した場合は、電極の周囲をアンチモンで覆って囲いこんでしまうため被膜が安定して形成され、電極が放電した際においてアンチモンが剥がれることはないが、特に大型の同軸円筒型の電極における内壁面においてアンチモンを蒸着した場合は、放電で容易に剥がれてしまう。
【0010】
また、前述した特許文献1に記載された同軸円筒型の電極形態では、オゾン発生効率の向上が十分になし得ない。
【0011】
つまり、同軸円筒型の電極に触媒金属を採用する際においては、放電で容易に剥がれず、かつオゾン生成効率が従来よりもさらに良くなる電極の形態が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、放電を受けた酸素ガスを接触させてオゾン生成を促進する同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0014】
即ち、請求項1の同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法は、
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を用いて、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生方法であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したものである。
【0015】
請求項2の同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生装置は、
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を備え、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生装置であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、前記電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜することで、触媒金属被膜が剥がれることを防止するとともに放電箇所が突起に特定されることでオゾン発生効率を向上させることができる。
【0018】
請求項2においては、前記電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜することで、触媒金属被膜が剥がれることを防止するとともに放電箇所が突起に特定されることでオゾン発生効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る試験装置の全体構成を示す模式図。
【図2】触媒電極式反応器を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図。
【図3】図2(a)におけるA−A矢視断面図。
【図4】突起を有する電極を示す斜視図。
【図5】突起を有する電極を示す正面図。
【図6】図5におけるB部分の拡大図。
【図7】突起を有する電極を示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は側面図。
【図8】比較用反応器の内部構造を示す一部破断側面図。
【図9】図8におけるA部分の拡大図。
【図10】触媒電極と誘電体との隙間を示す側面断面図。
【図11】比較用電極と誘電体との隙間を示す側面断面図。
【図12】比較用電極適用時における投入電力に対するオゾン濃度変化を示す図。
【図13】比較用電極適用時における投入電力に対するオゾン製造効率を示す図。
【図14】本実施形態に係る電極適用時における投入電力に対するオゾン濃度変化を示す図。
【図15】本実施形態に係る電極適用時における投入電力に対するオゾン製造効率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1を用いてオゾン発生装置の一例である触媒電極式オゾン発生試験装置の全体構成を説明する。
なお、同一の形状及び機能を有する部材・装置等においては、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
触媒電極式オゾン発生試験装置1(以下、試験装置1という)は、図1に示すように、酸素供給手段2と、オゾン発生器3、冷却手段4、オゾン濃度計5、電源6等により構成される。
【0023】
酸素供給手段2は、オゾン発生器3にオゾン生成のための原料ガスとなる酸素を供給する手段であり、酸素ガスボンベ(図示せず)、ストップバルブ7、ガス流量制御装置8、により主に構成される。酸素ガスボンベは配管及びストップバルブ7を介してガス流量制御装置8に接続される。当該ガス流量制御装置8は、酸素ガス供給管9を介してオゾン発生器3に接続されている。酸素ガス供給管9は、当該酸素ガス供給管9の中途部において二方に分岐する分岐管であり、この分岐管が分岐する部分には切換バルブ9aが設けられており、当該切換バルブ9aを切り換えることによって二方の配管のうち、どちらか一方に酸素を供給することが可能となる。こうして、ストップバルブ7、ガス流量制御装置8及び切換バルブ9aを操作することで酸素ガスボンベより所定量の酸素をオゾン発生器3に供給することが可能となる。
【0024】
オゾン発生器3は、酸素供給手段2により供給された酸素に対して放電を行うことでオゾンを発生させる手段であり、触媒電極式反応器10と、比較用反応器11と、を主に備える。
【0025】
触媒電極式反応器10(図2参照)は、触媒金属が被膜された電極(放電体)である触媒電極15(以下、電極15という)を備えたオゾン発生手段であり、図3に示すように、円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14外周面に対して突起16先端(図5参照)を接触するように配置した円筒状の電極15と、を備える。また、突起16先端を誘電体14に接触するように配置した状態においては、図10に示すように隙間Sを有する。電極15の両端は、前述した酸素ガス供給管9と連通している。
誘電体14は、鉄製の中空円筒体であり、その外周面に所定のセラミック被膜を形成したものである。また、誘電体14の外周面の所定位置には、誘電体14を電極15内に挿通配置した際に誘電体14と電極15との軸心を同一にするように電極15を保持するための所定高さの凸状保持部(図示せず)を備える。
電極15は、真鍮製の円筒体であり、図4に示すように、当該円筒状の電極15における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属であるアンチモンを被膜(本実施形態においては真空蒸着による被膜)したものである。すなわち、円筒状の電極15には、図7(a)に示すように電極15の内壁面がスパイラル状にネジ切りされた形状を有しており、当該ネジ切りされた形状におけるネジ谷部に沿って複数の突起16が連続的に設けられている。突起16は、図5、図6に示すように、正面視凹凸状(鋸刃状)に形成されている。円筒状の電極15の内径(突起16先端に沿った内径)は、誘電体14の直径よりも少し大径となっている。
なお、触媒金属としては、特にアンチモンに限定するものではなく、オゾン発生を促進する触媒作用を有する金属であればよく、例えばビスマス等でもよく、これらを含む触媒金属のいずれか1種もしくは複数種類の混合物であってもかまわない。
【0026】
こうして、前記円筒状の電極15を同軸(同心)かつ前記誘電体14の外周面に対して接するように配置することで、放電を行うための空間を制御することができる。酸素供給手段2は、隙間Sに連通する前記酸素ガス供給管9を介して所定流量の酸素を鋸刃状部分の隙間Sに対して供給することができる。
【0027】
また、触媒電極式反応器10の下流側には、当該触媒電極式反応器10で生成されたオゾンガス等を排出するため二方の分岐管であるオゾンガス排出管13の一方が接続されており、この分岐管が分岐する部分には切換バルブ13aが設けられており、オゾンガス排出管13の他端はオゾン濃度計5に接続されている。
【0028】
比較用反応器11は、触媒電極式反応器10が有する電極15とは異なり突起を有さず触媒金属が被膜されていない電極(放電体)である比較用電極25を備えたオゾン発生手段であり、触媒電極式反応器10と比較用反応器11のそれぞれが有する電極の特性を比較するために用いられる反応器である。比較用反応器11は、図8、9に示すように、触媒電極式反応器10と同じく円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14の外周面に対して所定間隔の隙間S´(図11参照)を有するように外側に配置した円筒状の比較用電極25と、を備える。
比較用反応器11が有する円筒状の比較用電極25は、触媒電極式反応器10が有する電極15とは異なり、図9に示すように、当該円筒状の比較用電極25における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起及び触媒金属を有さない従来型のステンレス製電極である。すなわち、比較用電極25における前記誘電体14外周面に対向する面は、起伏を有さない滑らかな内壁面となっている。円筒状の比較用電極25の内径は、誘電体14の直径よりも大径となっている。
なお、比較用反応器11において比較用電極25以外の他の構成部分は、触媒電極式反応器10と同様であり、説明は省略する。
【0029】
こうして、前記円筒状の電極25を同軸(同心)かつ前記誘電体14の外周面に対して所定間隔の隙間S´を有するように配置することで、放電を行うための円筒状の空間(放電ギャップ)である隙間S´を形成することができる。酸素供給手段2は、当該隙間S´に連通する前記酸素ガス供給管9を介して所定流量の酸素を隙間S´に対して供給することができる。
【0030】
また、比較用反応器11の下流側には、当該比較用反応器11で生成されたオゾンガス等を排出するため二方の分岐管であるオゾンガス排出管13の他方が接続されており、この分岐管が分岐する部分には切換バルブ13aが設けられており、オゾンガス排出管13の他端はオゾン濃度計5に接続されている。つまり、この切換バルブ13aを操作することで、オゾンガス排出管13を介して前記触媒電極式反応器10もしくは前記比較用反応器11のどちらか一方とオゾン濃度計5とを接続することが可能であり、接続されたどちらか一方の反応器から送られてくる排出ガスをオゾン濃度計5の計測部5aに導入してオゾン濃度を測定し、当該計測部5aにて計測されたオゾン濃度をオゾン濃度計5の表示部5bにて表示することが可能である。
【0031】
つまり、オゾン発生器3においては、触媒電極式反応器10か比較用反応器11のどちらかを選択して、触媒電極式反応器10が有する電極15と誘電体14とにより形成される隙間S、もしくは比較用反応器11が有する比較用電極25と誘電体14とにより形成される隙間S´に対して酸素が供給され、酸素に対して放電を行うことでオゾンを生成することが可能となる。また、生成したオゾンガスは、前記オゾンガス排出管13を介してオゾン濃度計5に送られ、オゾン濃度の測定が行われる。
【0032】
また、オゾン発生器3は、図1に示すように触媒電極式反応器10及び比較用反応器11を冷却するための冷却手段4を具備する。
【0033】
冷却手段4は、冷却水供給装置(図示せず)、冷却水導入管4a、循環配管4b及び冷却水排出管4cを備える。これにより、冷却水は、冷却水供給装置により冷却水入口(ストップバルブ)から供給され、冷却水導入管4aを介して触媒電極式反応器10内を通過し、触媒電極式反応器10下流側から循環配管4bを介して比較用反応器11上流側へと循環し、当該比較用反応器11内を通過し、比較用反応器11下流側に接続された冷却水排出管4cを介して冷却水出口(ストップバルブ)から排出され、排出された冷却水は冷却供給装置に回収されるようになっており、オゾン発生器3(触媒電極式反応器10、比較用反応器11)の温度を調節することが可能となっている。また、オゾン発生器3には、該オゾン発生器3内の電極15、25に電圧を印加するための電源6がインバータ17を介して接続されている。電源6は、触媒電極式反応器10、比較用反応器11の各電極15、25に対して所定の電力を投入可能であり、投入電力を適宜所定値に設定可能である。
【0034】
このように試験装置1を構成することにより、オゾン発生器3内の触媒電極式反応器10によりオゾンを発生させる場合は、触媒電極式反応器10に酸素を供給して生成後のオゾンを排出するために切換バルブ9a・13aを触媒電極式反応器10に連通する側に操作して、酸素ガスボンベから高純度の酸素ガスを、ガス流量制御装置8により酸素ガス供給管9に流し、触媒電極式反応器10の隙間Sへと導入する。そして、該触媒電極式反応器10の隙間Sに導入された酸素ガスに対して、所定の投入電力に応じて電極15により放電が行われて所定量のオゾンガスが生成する。該オゾンガスは、オゾンガス排出管13からオゾン濃度計5に導入されて、オゾン濃度の測定が行われる。
【0035】
一方、オゾン発生器3内の比較用反応器11によりオゾンを発生させる場合は、比較用反応器11に酸素を供給して生成後のオゾンを排出するために切換バルブ9a・13aを比較用反応器11に連通する側に操作して、酸素ガスボンベから高純度の酸素ガスを、ガス流量制御装置8により酸素ガス供給管9に流し、比較用反応器11の円筒状空間である隙間S´へと導入する。そして、該比較用反応器11の隙間S´に導入された酸素ガスに対して、所定の投入電力に応じて比較用電極25により放電が行われて所定量のオゾンガスが生成する。該オゾンガスは、オゾンガス排出管13からオゾン濃度計5に導入されて、オゾン濃度の測定が行われる。
【0036】
つまり、本実施形態に係る試験装置1では、電極形態の違いによるオゾン発生効率を比較するために異なる電極を有する反応器を併設した構成となっている。そして、試験装置1は、切換バルブ9a・13aの操作を行うことで、ひとつの酸素供給手段2、ひとつのオゾン濃度計5により、電極の違いによるオゾン濃度の比較を行うことが可能であり、触媒電極式反応器10(電極15)と比較用反応器11(電極25)とを同一の試験条件にてオゾン発生効率の比較のための試験測定が行えるように構成されている。
なお、本実施形態に係る試験装置1は、電極形態の違いによるオゾン発生効率の比較試験を行うために異なる電極を有する反応器を併設して構成したものであり、当然ながら、効率的にオゾンを発生させるためのオゾン発生装置の構成として、比較用反応器11を備える必要はない。
以下に、触媒電極式反応器10(電極15)もしくは比較用反応器11(電極25)を適用してオゾンを発生させ、各オゾン濃度を測定した試験結果を実施例として示す。
【実施例】
【0037】
次に、本実施形態の試験装置1における触媒電極式反応器10と比較用反応器11の各反応器によりオゾン発生を行い、各反応器における投入電力に対するオゾン濃度及びオゾン製造効率を測定した。
【0038】
まずは、オゾン発生器3の比較用反応器11に供給した酸素に対して放電を行って、オゾンを発生させた。こうして、比較用反応器11適用時における投入電力に対するオゾン濃度を測定した(図12参照)。
図12は、比較用反応器11への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜180W)におけるオゾン濃度(g/Nm3)を測定し、プロットしたものである(図12上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図12において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン濃度(g/Nm3)を示す。
また、図12に示すオゾン濃度変化に基づき、消費電力量あたりのオゾン発生量(製造量)であるオゾン製造効率変化を求めた(図13参照)。
図13は、比較用反応器11への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜180W)におけるオゾン製造効率(g/kWh)を取得し、プロットしたものである(図13上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図13において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン製造効率(g/kWh)を示す。
【0039】
次に、オゾン発生器3の触媒電極式反応器10に供給した酸素に対して放電を行って、オゾンを発生させた。こうして、触媒電極式反応器10への投入電力に対するオゾン濃度を測定した(図14参照)。
図14は、触媒電極式反応器10への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜160W)におけるオゾン濃度を測定し、プロットしたものである(図14上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、■:2.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図14において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン濃度(g/Nm3)を示す。
また、図14に示すオゾン濃度変化に基づき、消費電力量あたりのオゾン発生量であるオゾン製造効率変化を求めた(図15参照)。
図15は、触媒電極式反応器10への酸素供給量を変えて各投入電力(100〜160W)におけるオゾン製造効率(g/kWh)を取得し、プロットしたものである(図15上に示す酸素供給量は、◇:0.5l/min、□:1.0l/min、■:2.0l/min、△:2.5l/min、○:5.0l/minである。)。
図15において、横軸は投入電力(W)であり、縦軸はオゾン製造効率(g/kWh)を示す。
以下に、触媒電極式反応器10(電極15)適用時のオゾン濃度変化及びオゾン製造効率変化と、比較用反応器11(電極25)適用時のオゾン濃度変化及びオゾン製造効率変化とを比較した結果について説明する。
【0040】
結果としては、触媒電極式反応器10と比較用反応器11、すなわち電極15と比較用電極25をそれぞれオゾンを発生させる際に適用した場合の投入電力毎のオゾン濃度及びオゾン製造効率をそれぞれ比較すると、オゾン濃度変化(図12、図14参照)において投入電力が100Wの時では、比較用反応器11(電極25)に比べて触媒電極式反応器10(電極15)の方が各酸素供給量におけるオゾン濃度が上昇しており、これは電極15の方が高効率にオゾンを発生させているといえる。また、オゾン製造効率(図13、図15参照)を比較すると各投入電力において比較用反応器11(電極25)の場合よりも触媒電極式反応器10(電極15)の方がオゾン製造効率が明らかに向上していることがわかる(投入電力100W時においては、およそ2倍程度)。これは、円筒状電極の内壁面に複数の突起16を形成するとともにアンチモンを被膜した電極15を適用したことで、同じ投入電力において多くのオゾンが発生したものと考えられる。この結果から電極15を適用することにより、同軸円筒型オゾン発生器の基本設計は変えることなく、電極形態を変更するだけで容易にオゾン発生効率を向上させることができるオゾン発生方法及びオゾン発生装置を提供することが可能となる。
【0041】
つまり、本実施形態に係る試験装置1(触媒電極式反応器10)は、円筒状の誘電体14と、当該円筒状の誘電体14に対して同軸かつ前記誘電体14の外周面に対して突起16が接触するように外側に配置した円筒状の電極15と、を備え、前記誘電体14に前記電極15を挿通して配置することで形成される前記隙間Sに酸素を供給し、前記電極15を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生装置であって、前記円筒状の電極15内の前記誘電体14と対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属であるアンチモンを被膜したものである。このように、前記電極15における前記誘電体14外周面に対向する面に複数の突起16を形成するとともに触媒金属であるアンチモンを被膜することで、触媒金属であるアンチモン被膜が剥がれることを防止するとともに放電箇所が突起16に特定されることでオゾン発生効率を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る触媒電極式反応器10が有する電極15は、その内壁面に突起16を有することにより、電極15における誘電体14に対する対向面(放電面)上において、放電点を限定した範囲に収めることが可能となる。すなわち、電極15における放電点は誘電体14側により近接する部分である突起16の頂点付近の範囲に限定される。これにより放電箇所は突起16近傍となり、この放電箇所の放電により酸素分子から酸素原子を生成し、当該酸素原子は供給される酸素分子と結合してオゾンが生成されるのである。つまり、従来から用いられている円筒状電極である比較用電極25は、放電箇所とオゾン発生箇所が混在化するのに対し、電極15では、当該電極15の放電面上(誘電体14の対向面上)に突起16を設ける電極形態としたことで放電箇所を特定し、放電箇所とオゾン発生箇所とを混在化せず分離したことがオゾン発生効率の向上に寄与したものと考えられる。
【0043】
また、本実施形態に係る触媒電極式反応器10が有する電極15は、当該電極15の放電面上(誘電体14の対向面上)に突起16を設けることで、電極ベース金属に対する触媒金属の密着性を向上させることができるため(突起16を設けることで、表面積を増やすことによる密着性の向上、いわゆる、アンカー効果が得られるため)、真空蒸着により被膜した触媒金属であるアンチモンが剥がれることを防止できる。
【0044】
本実施形態に係る電極15は、その内壁面に複数の突起16を有するとともに、内壁面上にオゾン生成を促進する触媒金属の一例であるアンチモンを蒸着薄膜として有しており、当該アンチモン蒸着膜に放電を行った酸素ガスを接触させることにより、オゾンの生成を促進するものである。酸素原料によるオゾンの生成において、電極を本実施形態に係るアンチモン被膜を有する電極15に変更するだけで触媒として窒素を純酸素に添加する必要がなくなり、窒素ガスや供給ガスに窒素を混合するための窒素混合装置を省略できるとともにオゾン発生効率を高めることができ、かつ窒素酸化物(NOx)を含まないオゾンを高効率で生産できる。
【符号の説明】
【0045】
1 触媒電極式オゾン発生試験装置
14 誘電体
15 触媒電極
16 突起
S 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を用いて、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生方法であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したことを特徴とする同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法。
【請求項2】
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を備え、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生装置であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したことを特徴とする同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生装置。
【請求項1】
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を用いて、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生方法であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したことを特徴とする同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生方法。
【請求項2】
円筒状の誘電体と、
当該円筒状の誘電体に対して同軸かつ前記誘電体外周面に対して所定間隔の隙間を有するように外側に配置した円筒状の電極と、を備え、
前記隙間に酸素を供給し、前記電極を放電させることによってオゾンを発生させるオゾン発生装置であって、
前記円筒状の電極における前記誘電体外周面に対向する面に複数の突起を形成するとともに触媒金属を被膜したことを特徴とする同軸円筒型触媒電極によるオゾン発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−105577(P2011−105577A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265596(P2009−265596)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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