説明

同軸配線構造及びその製造方法

【課題】 高速信号伝送時のクロストークを軽減できる同軸配線構造を提供する。
【解決手段】 導電性材料からなる支持基板(10)上に第1の絶縁層(20)が形成され、この第1の絶縁層上に回路配線(30)が形成される。この回路配線の周囲は第2の絶縁層(40)によって覆われ、更に第1および第2の絶縁層の周囲はシールド層(50)によって覆われる。このことにより、回路配線(30)を中心導体とし、また支持基板(10)とシールド層(50)を外部導体とした同軸構造が実現される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高速伝送時のクロストークを軽減できる同軸配線構造及びその製造方法に関し、特にハードディスク・ドライブ(HDD)の磁気ヘッド用サスペンション等に適用される同軸配線構造及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】HDDの磁気ヘッド用サスペンションでは、従来、図4(A)の平面図に示すように、導電性の支持基板10上に回路配線30を形成して、先端の磁気ヘッド用接続端子100と後端の外部回路用接続端子110との間を接続している。端子100は、磁気ディスク(図示せず)に対し情報をリード/ライトする磁気ヘッド(図示せず)に接続される。端子110は外部のリード/ライト用駆動増幅器(図示せず)に接続される。
【0003】支持基板10はステンレスのようなバネ性を有する導電性材料で平板状に形成され、その表面には、図3(B)の部分拡大断面図に示すように、例えばポリイミドからなる第1の絶縁層20が形成されている。回路配線30は、この絶縁層20上に形成される。回路配線30の周囲(上面および側面)は、第2の絶縁層40で覆われる。この絶縁層40も、第1の絶縁層20と同様、例えばポリイミドからなり、回路配配線30の表面保護層となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図4に示した従来の構造では、回路配線30に対する保護層は、第2の絶縁層40のみであるため、回路配線30を伝送される信号の周波数が高くなるにつれ、クロストークの影響が大きくなる。本発明は、かかる点を改善し、高速伝送時のクロストークを軽減できる同軸配線構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の同軸配線構造は、導電性材料からなる支持基板と、この支持基板上に形成された第1の絶縁層と、この第1の絶縁層上に形成された回路配線と、この回路配線の周囲を覆うように形成された第2の絶縁層と、前記第1および第2の絶縁層の周囲を覆うように形成されたシールド層とを備えることを特徴とする。
【0006】本発明の実施の形態では、前記支持基板は、磁気ヘッドのサスペンションであるが、これは一般的なプリント配線板の支持基板であってもよい。また、本発明の好ましい実施の態様では、前記回路配線の一部が外部接続のために露出するように、前記シールド層及び前記第1の絶縁層の一部に窓開け加工が施される。
【0007】また、本発明に係る同軸配線構造の製造方法は、導電性材料からなる支持基板上に第1の絶縁層を形成する工程と、前記第1の絶縁層上に回路配線を形成する工程と、この回路配線の周囲を覆うように第2の絶縁層を形成する工程と、前記第2の絶縁層の一部に前記回路配線まで達する窓を形成する工程と、前記第1及び第2の絶縁層を覆うようにシールド層を形成する工程と、前記窓を形成した部分のシールド層を選択的に除去する工程とを有することを特徴とする。
【0008】本発明によれば、回路配線を保護する第1及び第2の絶縁層の周囲を覆うようにシールド層が形成されているので、回路配線を導電性の支持基板とシールド層とで取り囲むことができる。これにより、回路配線を伝送される信号の周波数が高くなっても、隣接する回路配線間のクロストークを抑制することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るHDDの磁気ヘッド用サスペンションの同軸配線構造を示す図である。同図(A)において、ステンレスなどが形成された導電性の支持基板10の上には、回路配線30が形成され、この回路配線30を介して磁気ヘッド用接続端子100と外部回路用接続端子110との間を接続している。
【0010】同図(B)は、同図(A)の回路配線30のaで示した途中部分の拡大断面図である。この図において、導電性材料からなる支持基板10の上には第1の絶縁層20が形成され、更にその上に回路配線30が形成されている。また、その上には、第2の保護層40が回路配線30の周囲を覆うように形成されている。回路配線30の周囲を覆う第1及び第2の絶縁層20,40の更に周囲(上面及び側面)は、50は第1および第2の絶縁層20,40の周囲を覆うように形成されたシールド層である。
【0011】この断面構造は、回路配線30を中心導体とし、また絶縁層20,40を誘電体とし、更に支持基板10およびシールド層50を外部導体とする同軸構造である。従って、回路配線30を伝達される高速信号のクロストークは、外部導体(支持基板10及びシールド層50)によって完全にシールドされる。
【0012】一例として、支持基板10は、ステンレス材料で形成されている。回路配線30は、Cu/Ni材料(2層構造)で形成されている。絶縁層20,40はいずれもポリイミドで形成されている。シールド層50は、導電性のある材料、例えばCu又はCr/Cu材料(2層構造)で形成されている。
【0013】同図(C)は、同図(A)の部分cの拡大断面図であり、端子100(又は110)部分の構造を示している。即ち、端子部分では、シールド層50に窓開け51が施されると共に、絶縁層40に窓開け42が施され、この窓開け42,51の部分の回路配線30が外部に露出している。この露出部で外部回路や磁気ヘッドとの電気的な接続を行うようにしている。
【0014】図2は、図1に示した同軸配線構造の製造方法の一例を示す工程図である。先ず、工程(1)に示すように、支持基板10となるステンレス箔を準備し、その表面に感光性ポリイミドで第1の絶縁層20を形成する。この絶縁層20はパターニングされ、基板10の表面を露出させるための分離部21が、以後に形成される回路配線30,30間に形成される。
【0015】次に、工程(2)に示すように、絶縁層20の表面にCu/Ni材料の回路配線30を形成する。その後、工程(3)に示すように、回路配線30の周囲(上面および側面)に第2の絶縁層40を形成する。第2の絶縁層40も第1の絶縁層20と同様にパターンニングされ、基板10の表面を露出させるための分離部41が形成される。工程(4)では、第1および第2の絶縁層20,40の周囲を覆うように、スパッタ法又は蒸着法によって導電性のシールド層50を形成する。
【0016】なお、実際には端子100,110の部分の窓開けが必要であるので、その工程を追加すると、図3のようになる。工程(1)〜(3)までは図2と同様である。工程(4)では、第2の絶縁層40に端子部の窓開け42を行い、回路配線30を露出させる。次に、工程(5)において、第1および第2の絶縁層20,40の周囲を覆うように、スパッタ法又は蒸着法によって導電性のシールド層50を形成する。このシールド層50は同時に回路配線30の表面も覆ってしまうので、次の工程(6)において、エッチングによってシールド層50に窓開け51を行い、回路配線30の表面を露出させ、完成する。
【0017】工程(6)に示すように、シールド層50は、その下側平坦部52によって支持基板10に電気的に確実に接続されている。また、シールド層50は、回路配線30,30間の分離部53においても支持基板10と接触する構造である。従って、シールド層50と支持基板10は、個々の回路配線30(中心導体)に対して個別の同軸構造を実現するための外部導体をそれぞれ形成する。
【0018】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、磁気ヘッド用サスペンションで使用される回路配線を同軸構造としたので、高速信号伝送時のクロストークを軽減できる。本発明の同軸配線構造はまた、一般的なプリント配線基板にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る同軸配線構造を示す(A)平面図及び(B),(C)断面図である。
【図2】 図1の同軸配線構造のbの部分の製造方法を示す工程図である。
【図3】 図1の同軸配線構造のcの部分の製造方法を示す工程図である。
【図4】 従来の磁気ヘッド用サスペンションの一例を示す(A)平面図および(B)断面図である。
【符号の説明】
10・・・支持基板、20・・・第1の絶縁層、30・・・回路配線、40・・・第2の絶縁層、50・・・シールド層、100,110・・・接続端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 導電性材料からなる支持基板と、この支持基板上に形成された第1の絶縁層と、この第1の絶縁層上に形成された回路配線と、この回路配線の周囲を覆うように形成された第2の絶縁層と、前記第1および第2の絶縁層の周囲を覆うように形成されたシールド層とを備えたことを特徴とする同軸配線構造。
【請求項2】 前記支持基板は、磁気ヘッドのサスペンションである請求項1記載の同軸配線構造。
【請求項3】 前記支持基板は、プリント配線板の支持基板である請求項1記載の同軸配線構造。
【請求項4】 前記回路配線の一部が外部接続のために露出するように、前記シールド層及び前記第1の絶縁層の一部に窓開け加工が施されていることを特徴とする請求項1記載の同軸配線構造。
【請求項5】 導電性材料からなる支持基板上に第1の絶縁層を形成する工程と、前記第1の絶縁層上に回路配線を形成する工程と、この回路配線の周囲を覆うように第2の絶縁層を形成する工程と、前記第2の絶縁層の一部に前記回路配線まで達する窓を形成する工程と、前記第1及び第2の絶縁層を覆うようにシールド層を形成する工程と、前記窓を形成した部分のシールド層を選択的に除去する工程とを有することを特徴とする同軸配線構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−93248(P2001−93248A)
【公開日】平成13年4月6日(2001.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−265885
【出願日】平成11年9月20日(1999.9.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】