説明

吐出ポンプ

【課題】未操作時に容器体内の内容物が吐出孔から漏出するのを抑制すること。
【解決手段】上下方向に延在し、外周面から径方向の外側に向けて、容器体の口部の開口端上に配置されるフランジ部11が突設されたシリンダ部12と、シリンダ部12内に上下摺動可能に嵌合されたピストン筒部13と、ピストン筒部13に接続されるとともにシリンダ部12内から上方に上方付勢状態で押込み可能に起立したステム部14と、ステム部14の上端に装着されるとともに、吐出孔が形成された押下ヘッド部15と、を備え、シリンダ部12において、ピストン筒部13よりも上側に位置し、かつフランジ部11よりも下側に位置する部分には、シリンダ部12内と容器体内とを連通する空気孔47が形成され、空気孔47は、ステム部14の外周面14a側に設けられ、フランジ部11よりも上方から外部に向けて開口する連通路51を通して外部に連通する吐出ポンプ10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示すような吐出ポンプが知られている。この吐出ポンプは、上下方向に延在し、外周面から径方向の外側に向けて、容器体の口部の開口端上に配置されるフランジ部が突設されたシリンダ部と、該シリンダ部内に上下摺動可能に嵌合されたピストン筒部と、該ピストン筒部に接続されるとともにシリンダ部内から上方に上方付勢状態で押込み可能に起立したステム部と、該ステム部の上端に装着されるとともに、吐出孔が形成された押下ヘッド部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3569343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出ポンプでは、該吐出ポンプが装着された容器体が、例えば高温環境下におかれた場合、吐出ポンプを操作しない未操作時に容器体内の圧力が不意に上昇し、吐出孔から内容物が漏出するおそれがあった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、未操作時に容器体内の内容物が吐出孔から漏出するのを抑制することができる吐出ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る吐出ポンプは、上下方向に延在し、外周面から径方向の外側に向けて、容器体の口部の開口端上に配置されるフランジ部が突設されたシリンダ部と、該シリンダ部内に上下摺動可能に嵌合されたピストン筒部と、該ピストン筒部に接続されるとともに前記シリンダ部内から上方に上方付勢状態で押込み可能に起立したステム部と、該ステム部の上端に装着されるとともに、吐出孔が形成された押下ヘッド部と、を備える吐出ポンプであって、前記シリンダ部において、前記ピストン筒部よりも上側に位置し、かつ前記フランジ部よりも下側に位置する部分には、該シリンダ部内と容器体内とを連通する空気孔が形成され、該空気孔は、前記ステム部の外周面側に設けられ、前記フランジ部よりも上方から外部に向けて開口する連通路を通して外部に連通していることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、空気孔が、前記連通路を通して外部に連通しているので、容器体内の圧力が上昇しようとしたときに、この圧力を、空気孔および連通路を通して容器体の外部に逃がすことが可能になり、未操作時に容器体内の内容物が吐出孔から漏出するのを抑制することができる。
【0008】
また、前記シリンダ部内における前記ピストン筒部上には、前記ステム部と前記シリンダ部との間に画成されるとともに前記空気孔が開口し、該空気孔と前記連通路とを連通する環状空間が設けられ、該環状空間は、前記シリンダ部において前記空気孔よりも上側に位置する部分内に嵌合された弁筒部により上方から閉塞され、前記押下ヘッド部が押下された状態で該押下ヘッド部の上下方向に沿った移動を規制する規制部が設けられ、前記弁筒部は、前記規制部により前記押下ヘッド部が上下方向に沿った移動を規制された状態で、前記空気孔を閉塞するとともに、前記規制部による前記押下ヘッド部の移動の規制が解除されたときに、前記ステム部に伴って上昇して前記空気孔を開放してもよい。
【0009】
この場合、規制部により押下ヘッド部が上下方向に沿った移動を規制された状態で、弁筒部が空気孔を閉塞するので、吐出ポンプの使用を開始する前の流通段階では、容器体内の内容物が、空気孔を通して環状空間内に流入することで不意に外部に漏出するのを抑制することができる。
また、規制部による押下ヘッド部の移動の規制が解除されたときに、弁筒部がステム部に伴って上昇して空気孔を開放するので、吐出ポンプを使用するときには、環状空間の拡縮に伴って、該環状空間内と容器体内とで空気を流通させることにより、スムーズな押下操作を実施できる。さらに、例えば容器体が高温環境下におかれた場合などであっても、容器体内と外部との連通を、空気孔、環状空間および連通路を通して良好に確保することが可能になり、前述の作用効果を確実に奏功させることができる。
【0010】
また、前記ステム部は、前記環状空間を画成する大径部と、該大径部の上方に連結段部を介して連設され、前記フランジ部から上方に向けて突出する小径部と、を備え、前記小径部には、前記弁筒部に接続された外ステム部が外挿され、前記連通路は、前記小径部の外周面に形成され、前記外ステムの上端よりも上側に位置する部分から当該小径部の下端まで上下方向に延在する主溝部と、前記連結段部に形成され、前記主溝部と前記環状空間とを連通する切欠き溝部と、により構成され、前記外ステム部には、前記規制部による前記押下ヘッド部の移動の規制が解除されたときに、前記連結段部が下方から係合することにより、当該外ステム部が押し上げられて前記空気孔が開放される被係合部が形成されていてもよい。
【0011】
この場合、外ステム部に前記被係合部が形成されているので、規制部により押下ヘッド部が上下方向に沿った移動を規制された状態から、規制部による押下ヘッド部の移動の規制が解除されたときに、外ステム部の被係合部に、ステム部の連結段部が下方から係合する。すると、当該外ステム部がステム部により押し上げられ、外ステム部に接続された弁筒部が上昇することとなり、空気孔を確実に開放することができる。
【0012】
また、連通路の切欠き溝部が、ステム部の連結段部に形成されて主溝部と環状空間とを連通しているので、連結段部が、外ステム部の被係合部に下方から係合していても、連通路による環状空間と外部との連通を良好に確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る吐出ポンプによれば、未操作時に容器体内の内容物が吐出孔から漏出するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る吐出ポンプの半断面図である。
【図2】図1に示す吐出ポンプを構成する弁部材の上面図である。
【図3】図1に示す吐出ポンプを構成する弁部材の半断面図である。
【図4】図1に示す吐出ポンプの要部の拡大断面図である。
【図5】図1に示す吐出ポンプの流通段階での状態を示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出ポンプを説明する。
図1に示すように、吐出ポンプ10は、上下方向に延在し、外周面から径方向の外側に向けて、図示しない容器体の口部の開口端上に配置される環状のフランジ部11が突設されたシリンダ部12と、該シリンダ部12内に上下摺動可能に嵌合されたピストン筒部13と、該ピストン筒部13に接続されるとともにシリンダ部12内から上方に上方付勢状態で押込み可能に起立したステム部14と、該ステム部14の上端に装着されるとともに、図示しない吐出孔が形成された押下ヘッド部15と、を備えている。
【0016】
この吐出ポンプ10では、押下ヘッド部15を押下してステム部14を下方に押し込み、ピストン筒部13をシリンダ部12の内周面に沿って下方に向けて摺動させることにより、前記容器体内の内容物が前記吐出孔から吐出される。
ここで吐出ポンプ10は、後述する規制部54による押下ヘッド部15の上下方向に沿った移動の規制が解除された後、未操作時に押下ヘッド15が最上昇位置にある構成となっている。以下では、押下ヘッド15が最上昇位置にある状態での吐出ポンプ10について説明する。
【0017】
なお本実施形態では、フランジ部11、シリンダ部12、ピストン筒部13およびステム部14の各中心軸線は、共通軸上に位置している。以下、この共通軸を軸線Oといい、軸線Oに沿う方向を上下方向といい、上下方向に沿った押下ヘッド部15側を上側といい、シリンダ部12側を下側という。また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
シリンダ部12は、上端に前記フランジ部11が配設された直筒部16と、直筒部16の下端に連設された吸込み筒部17と、直筒部16の上端に立設されフランジ部11から上方に突出する突出筒部18と、を備えている。
なおフランジ部11は、直筒部16に外嵌され該フランジ部11に下方から当接する環状のパッキン19を介して前記容器体の口部上に配置される。
【0019】
吸込み筒部17の外周面には、上下方向に沿って延在し上端が直筒部16の下端に連結された縦リブ20が、周方向に間隔をあけて複数配設されている。
吸込み筒部17内には、下端部が前記容器体内に配置されるチューブ体21の上端部が嵌合されている。該チューブ体21の上端は、直筒部16の下端から径方向の内側に向けて突設された環状の下弁座部22に、下方から当接している。
【0020】
ここで図1、図2および図3に示すように、直筒部16の下端部内には、下弁座部22を開閉する下弁体部23を有する弁部材24が配設されている。
弁部材24は、前記下弁体部23と、内部に該下弁体部23が配置されるとともに直筒部16の下端部内に嵌合された下環部25と、該下環部25と上下方向に間隔をあけて配設された有底筒状の上筒部26と、下環部25と上筒部26とを連結する連結部27と、を備えている。下環部25および上筒部26は、軸線Oと同軸に配設されている。
【0021】
下弁体部23は、前記下弁座部22に離反可能に着座しており、下弁座部22を閉塞している。該下弁体部23は、軸線Oと同軸に配置された円盤状に形成され、下弁体部23の外周面と下環部25の内周面とは、周方向に複数設けられた弾性連結片28により連結されている。
上筒部26は、下環部25よりも小径とされ、上筒部26の底壁部には、軸線O上に配置された軸部29が立設されている。軸部29の上端は、上筒部26の上端よりも下方に位置している。
【0022】
図2および図3に示すように、連結部27は、軸線Oを径方向に挟むように一対配設されている。各連結部27は、下環部25に立設された下縦壁部30と、下縦壁部30の上端から径方向の内側に向けて突設された横壁部31と、横壁部31の径方向の内端から立設され上端が上筒部26の下端に連結された上縦壁部32と、を備えている。図2に示すように、下縦壁部30および上縦壁部32は、周方向に沿って湾曲している。
【0023】
また図3に示すように、一対の連結部27のうち、両上縦壁部32同士の間には、上下方向に延在する仕切り壁部33が配設されている。該仕切り壁部33は軸線O上に配置されるとともに、該仕切り壁部33の表裏面は上下方向および径方向の両方向に沿って延在している。仕切り壁部33の上端は、上筒部26の下面に連結され、仕切り壁部33の両側端は、両上縦壁部32において径方向の内側を向く内面に各別に連結されている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態では、ピストン筒部13およびステム部14は一体に形成されている。これらのうち、ピストン筒部13は、シリンダ部12の直筒部16内に上下摺動可能に配設されている。ピストン筒部13の上端部は、上方に向かうに従い漸次、拡径するとともに、ピストン筒部13の下端部は、下方に向かうに従い漸次、拡径しており、これらのピストン筒部13の上下両端部が、シリンダ部12の直筒部16の内周面に周方向の全周にわたって液密に摺接している。
【0025】
またステム部14は、下端がピストン筒部13に連結された大径部34と、該大径部34の上方に連結段部35を介して連設され、フランジ部11から上方に向けて突出する小径部36と、小径部36から立設された立上がり筒部37と、を備えている。
大径部34の外径は、ピストン筒部13の内径よりも小さく、大径部34の下端は、ピストン筒部13において上端部と下端部との間に位置する中間部に径方向の内側から連結されている。
【0026】
また大径部34の下端と、弁部材24の前記横壁部31と、の間には、上下方向に延在しステム部14を上方に付勢する付勢手段38が設けられている。
小径部36の外径は、大径部34の外径よりも小さく、かつ立上がり筒部37の外径よりも大きく、小径部36の内径は、大径部34の内径と同等となっている。また小径部36は、突出筒部18から上方に向けて突出している。
【0027】
また小径部36の上端内には、立上がり筒部37内に配設された上弁体部39が離反可能に着座する上弁座部40が設けられている。上弁座部40は、径方向の内側に向かうに従い漸次、下方に向けて傾斜する環状に形成されている。上弁体部39は球状に形成され、上弁座部40の上面に着座して上弁座部40を閉塞している。
【0028】
そして、この上弁座部40と前記下弁座部22との間には、ステム部14の小径部36および大径部34、ピストン筒部13、並びにシリンダ部12の直筒部16の各内部にわたって延在し、内容物が収容される収容室41が設けられている。
【0029】
押下ヘッド部15は、有頂筒状の本体筒部42と、本体筒部42の頂壁部42aから下方に向けて延設され、ステム部14に装着される装着筒部43と、本体筒部42から径方向の外側に突出するとともに内部が装着筒部43内に連通し、先端に前記吐出孔が形成されたノズル部44と、を備えている。本体筒部42および装着筒部43は軸線Oと同軸に配設されている。
【0030】
本体筒部42の下端は、ステム部14の立上がり筒部37の上下両端の間に位置し、本体筒部42の周壁部42bにおける下部の内周面には、雌ねじ部45が形成されている。
装着筒部43は、本体筒部42の下端から下方に向けて突出しており、ステム部14の立上がり筒部37に外嵌している。また、装着筒部43と本体筒部42の周壁部42bとの間には、上下方向および径方向の両側に沿って延在する補強壁部46が、周方向に間隔をあけて複数配設されている。補強壁部46の上端は、本体筒部42の頂壁部42aに連結されるとともに、補強壁部46の両側端は、本体筒部42の周壁部42bにおける上部、および装着筒部43に各別に連結されている。
【0031】
ここでシリンダ部12において、ピストン筒部13よりも上側に位置し、かつ前記フランジ部11よりも下側に位置する部分には、シリンダ部12内と前記容器体内とを連通する空気孔47が形成されている。図示の例では、空気孔47は、シリンダ部12の直筒部16において、内部にステム部14の大径部34が配設された直筒部16の上端部16aに形成されている。
【0032】
また、シリンダ部12内におけるピストン筒部13上には、ステム部14とシリンダ部12との間に画成されるとともに空気孔47が開口する環状空間48が設けられている。該環状空間48は、ステム部14の大径部34と、シリンダ部12の直筒部16の上端部16aと、の間に画成されており、直筒部16の上端部16aにおいて空気孔47よりも上側に位置する部分内に嵌合された弁筒部49により、上方から閉塞されている。
【0033】
弁筒部49は、軸線Oと同軸に、かつシリンダ部12の直筒部16の上端部16a内に上下摺動可能に配設されている。弁筒部49の上端部は、上方に向かうに従い漸次、拡径するとともに、弁筒部49の下端部は、下方に向かうに従い漸次、拡径しており、これらの弁筒部49の上下両端部が、シリンダ部12の直筒部16の内周面に周方向の全周にわたって液密に摺接している。
【0034】
また小径部36には、弁筒部49に接続された外ステム部50が外挿されている。外ステム部50は、軸線Oと同軸であるとともに、シリンダ部12の直筒部16の上端部16aおよび突出筒部18、並びに弁筒部49よりも小径とされており、外ステム部50の下端(被係合部)50aは、弁筒部49において上端部と下端部との間に位置する中間部に径方向の内側から連結されている。
【0035】
また、外ステム部50の下端50aは、小径部36の下端と上下方向の位置が同等とされており、該外ステム部50の下端50aには、ステム部14の連結段部35が下方から係合している。
外ステム部50の上端は、ステム部14の小径部36の上端よりも下側に位置しているとともに、押下ヘッド部15の前記頂壁部42aの下面と上下方向に対向している。
【0036】
そして本実施形態では、空気孔47は、ステム部14の外周面14a側に設けられ、フランジ部11よりも上方から外部に向けて開口する連通路51を通して外部に連通している。図1および図4に示すように、連通路51は、環状空間48を介して空気孔47に連通している。
【0037】
該連通路51は、ステム部14の小径部36の外周面に形成され、外ステム部50の上端よりも上側に位置する部分から当該小径部36の下端まで上下方向に延在する主溝部52と、ステム部14の連結段部35に形成され、主溝部52と環状空間48とを連通する切欠き溝部53と、により構成されている。なお図示の例では、主溝部52は、上下方向に沿って延在するとともに、ステム部14の小径部36の上下方向の全長にわたって形成されている。
【0038】
なお図1に示すように、本実施形態では、吐出ポンプ10には更に、押下ヘッド部15が押下された状態で該押下ヘッド部15の上下方向に沿った移動を規制する規制部54と、前記容器体の口部に装着される装着キャップ59と、が備えられている。
【0039】
規制部54は、シリンダ部12の突出筒部18内に嵌合された内筒部55と、上端が該内筒部55の上端に連結されるとともに突出筒部18に外嵌された外筒部56と、上端が該外筒部56の上端に連結されるとともに外筒部56を径方向の外側から囲繞し、外周面に雄ねじ部57が形成されたねじ筒部58と、を備えている。これらの内筒部55、外筒部56およびねじ筒部58は、軸線Oと同軸に配設されている。
内筒部55は、外ステム部50における上下方向の中央部に外挿され、内筒部55の下端には弁筒部49の上端が下方から当接している。
【0040】
装着キャップ59は、軸線Oと同軸に配設されており、前記容器体の口部の外周面に装着される。該装着キャップ59は、フランジ部11上に配設された環状の頂壁部59aと、頂壁部59aの外周縁から下方に向けて延設された周壁部59bと、を備えている。
周壁部59bは、シリンダ部12の直筒部16の上端部16aを径方向の外側から囲繞しており、前記空気孔47は、装着キャップ59内に開口している。なお周壁部59bの内周面には、前記容器体の口部に螺着される雌ねじ部が形成されている。
【0041】
次に、以上のように構成された吐出ポンプ10を用いて前記容器体内の内容物を吐出する方法について説明する。
この場合、まず押下ヘッド部15を押し下げると、ステム部14およびピストン筒部13が、付勢手段38の付勢力に抗しながら押し込められ、ピストン筒部13がシリンダ部12の直筒部16の内周面に沿って下方に向けて摺動する。すると、収容室41内の圧力が上昇し、上弁体部39が上弁座部40から離反して上弁座部40が解放される。これにより、収容室41内の内容物が、ステム部14の立上がり筒部37、押下ヘッド部15の装着筒部43およびノズル部44の各内部を流通し、前記吐出孔から外部に吐出される。
【0042】
その後、押下ヘッド部15の押し下げを解除すると、上弁体部39が上弁座部40に着座して上弁座部40が閉塞されるとともに、付勢手段38の復元力によりステム部14およびピストン筒部13が押し上げられ、ピストン筒部13がシリンダ部12の直筒部16の内周面に沿って上方に向けて摺動する。すると、収容室41内の圧力が低下し、下弁体部23に連結された前記弾性連結片28が弾性変形する。これにより、下弁体部23が下弁座部22から離反して下弁座部22が解放され、前記容器体内の内容物が、チューブ体21および下弁座部22の各内部を流通し、収容室41内に流入される。
そして、ステム部14およびピストン筒部13が上昇限位置まで上昇させられ、ピストン筒部13のシリンダ部12に対する上方に向けた摺動が停止すると、下弁体部23が下弁座部22に着座して、下弁座部22が閉塞される。
【0043】
次に図5に示すように、例えば前記吐出ポンプ10を備える前記容器体の搬送時や店舗における陳列時など、使用を開始する前の流通段階での吐出ポンプ10について説明する。
流通段階では、押下ヘッド部15が最上昇位置よりも下方に位置して押下された状態となっている。そして、押下ヘッド部15の前記雌ねじ部45と、規制部54の前記雄ねじ部57と、が螺合することにより、押下ヘッド部15の上下方向に沿った移動が規制部54により規制されている。これにより、押下ヘッド部15が不用意に操作されることが抑制されている。
【0044】
ここで、規制部54により押下ヘッド部15が上下方向に沿った移動を規制された状態で、弁筒部49は、空気孔47を閉塞するとともに、外ステム部50は、ステム部14の連結段部35と上下方向に離間して対向している。図示の例では、ステム部14の大径部34の下部内には、弁部材24の上筒部26の上部が嵌合するとともに、ステム部14の立上がり筒部37の上端は、フランジ部11よりも上側で、かつシリンダ部12の突出筒部18の上端よりも下側に位置している。また、外ステム部50の上端は、ステム部14の小径部36および立上がり筒部37よりも上方に位置するとともに、押下ヘッド部15の補強壁部46の下端に当接もしくは近接している。
【0045】
前記流通段階の吐出ポンプ10を使用する際には、押下ヘッド部15の前記雌ねじ部45と、規制部54の前記雄ねじ部57と、の螺合を解除し、押下ヘッド部15の上下方向に沿った移動の規制を解除する。すると、付勢手段38の付勢力により、ステム部14およびピストン筒部13が押し上げられ、ステム部14の連結段部35が、外ステム部50の下端50aに下方から接近して係合する。これにより、外ステム部50がステム部14により押し上げられ、外ステム部50に接続された弁筒部49も、ステム部14および外ステム部50に伴って上昇し、該弁筒部49により閉塞されていた空気孔47が開放され、図1に示すような状態となる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出ポンプ10によれば、空気孔47が、前記連通路51を通して外部に連通しているので、前記容器体内の圧力が上昇しようとしたときに、この圧力を、空気孔47および連通路51を通して前記容器体の外部に逃がすことが可能になり、未操作時に前記容器体内の内容物が前記吐出孔から漏出するのを抑制することができる。
【0047】
また、規制部54により押下ヘッド部15が上下方向に沿った移動を規制された状態で、弁筒部49が空気孔47を閉塞するので、吐出ポンプ10の使用を開始する前の流通段階では、前記容器体内の内容物が、空気孔47を通して環状空間48内に流入することで不意に外部に漏出するのを抑制することができる。
【0048】
また、規制部54による押下ヘッド部15の移動の規制が解除されたときに、弁筒部49がステム部14に伴って上昇して空気孔47を開放するので、吐出ポンプ10を使用するときには、環状空間48の拡縮に伴って、該環状空間48内と前記容器体内とで空気を流通させることにより、スムーズな押下操作を実施できる。さらに、例えば前記容器体が高温環境下におかれた場合などであっても、前記容器体内と外部との連通を、空気孔47、環状空間48および連通路51を通して良好に確保することが可能になり、前述の作用効果を奏功させることができる。
【0049】
さらに本実施形態では、規制部54による押下ヘッド部15の移動の規制が解除されたときに、該外ステム部50の下端50aにステム部14の連結段部35が下方から係合し、外ステム部50をステム部14により押し上げることで弁筒部49を上昇させるので、弁筒部49を円滑に上昇させることが可能になり、空気孔47を確実に開放することができる。
【0050】
そして、連通路51の切欠き溝部53が、ステム部14の連結段部35に形成されて主溝部52と環状空間48とを連通しているので、連結段部35が、外ステム部50の下端50aに下方から係合していても、連通路51による環状空間48と外部との連通を良好に確保することができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、装着キャップ59およびチューブ体21はなくてもよい。
また前記実施形態では、ピストン筒部13およびステム部14は一体に形成されているものとしたが、ピストン筒部13およびステム部14は別体であってもよい。
【0052】
また前記実施形態では、連通路51が、主溝部52と切欠き溝部53とにより構成され、ステム部14の外周面14aに溝状に形成されたものとしたが、ステム部14の外周面14a側に設けられていればこれに限られない。例えば連通路51が、外ステム部50の内周面に溝状に形成されていてもよい。また連通路51が、ステム部14の外周面14aと、外ステム部50の内周面と、の間に設けられた隙間であってもよい。
また連通路51は、1つであっても、複数であってもよく、例えば周方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
さらに、前記実施形態において、ステム部14の外周面14aに前記連通路51を設けず、外ステム部50の内周面にのみ形成したり、ステム部14の外周面14aと外ステム部50の内周面の両方に連通路51を形成したりしてもよい。
【0053】
また前記実施形態では、規制部54による押下ヘッド部15の移動の規制が解除されたときに、外ステム部50の下端50aにステム部14の連結段部35が係合し、外ステム部50をステム部14により押し上げることで弁筒部49を上昇させるものとしたが、弁筒部49が、ステム部14に伴って上昇して空気孔47を開放すれば、適宜構成を変更することが可能である。例えば、外ステム部50の下端50aよりも上側に形成された被係合部に、連結段部35が係合してもよい。さらに例えば、外ステム部50がなくてもよい。
さらにまた、規制部54および弁筒部49はなくてもよい。
【0054】
また、吐出ポンプ10は、前記実施形態に示したものに限られない。本発明は、上下方向に延在し、外周面から径方向の外側に向けて、容器体の口部上に配置されるフランジ部が突設されたシリンダ部と、該シリンダ部内に上下摺動可能に嵌合されたピストン筒部と、該ピストン筒部に接続されるとともにシリンダ部内から上方に上方付勢状態で押込み可能に起立したステム部と、該ステム部の上端に装着されるとともに、吐出孔が形成された押下ヘッド部と、を備える吐出ポンプに、適用可能である。
例えば、下弁座部22、下弁体部23、上弁座部40および上弁体部39は、前記実施形態に示したものに限られない。
【0055】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 吐出ポンプ
11 フランジ部
12 シリンダ部
13 ピストン筒部
14 ステム部
14a 外周面
15 押下ヘッド部
34 大径部
35 連結段部
36 小径部
47 空気孔
48 環状空間
49 弁筒部
50 外ステム部
50a 下端(被係合部)
51 連通路
52 主溝部
53 切欠き溝部
54 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延在し、外周面から径方向の外側に向けて、容器体の口部の開口端上に配置されるフランジ部が突設されたシリンダ部と、
該シリンダ部内に上下摺動可能に嵌合されたピストン筒部と、
該ピストン筒部に接続されるとともに前記シリンダ部内から上方に上方付勢状態で押込み可能に起立したステム部と、
該ステム部の上端に装着されるとともに、吐出孔が形成された押下ヘッド部と、を備える吐出ポンプであって、
前記シリンダ部において、前記ピストン筒部よりも上側に位置し、かつ前記フランジ部よりも下側に位置する部分には、該シリンダ部内と容器体内とを連通する空気孔が形成され、
該空気孔は、前記ステム部の外周面側に設けられ、前記フランジ部よりも上方から外部に向けて開口する連通路を通して外部に連通していることを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の吐出ポンプであって、
前記シリンダ部内における前記ピストン筒部上には、前記ステム部と前記シリンダ部との間に画成されるとともに前記空気孔が開口し、該空気孔と前記連通路とを連通する環状空間が設けられ、
該環状空間は、前記シリンダ部において前記空気孔よりも上側に位置する部分内に嵌合された弁筒部により上方から閉塞され、
前記押下ヘッド部が押下された状態で該押下ヘッド部の上下方向に沿った移動を規制する規制部が設けられ、
前記弁筒部は、前記規制部により前記押下ヘッド部が上下方向に沿った移動を規制された状態で、前記空気孔を閉塞するとともに、前記規制部による前記押下ヘッド部の移動の規制が解除されたときに、前記ステム部に伴って上昇して前記空気孔を開放することを特徴とする吐出ポンプ。
【請求項3】
請求項2記載の吐出ポンプであって、
前記ステム部は、前記環状空間を画成する大径部と、該大径部の上方に連結段部を介して連設され、前記フランジ部から上方に向けて突出する小径部と、を備え、
前記小径部には、前記弁筒部に接続された外ステム部が外挿され、
前記連通路は、前記小径部の外周面に形成され、前記外ステムの上端よりも上側に位置する部分から当該小径部の下端まで上下方向に延在する主溝部と、前記連結段部に形成され、前記主溝部と前記環状空間とを連通する切欠き溝部と、により構成され、
前記外ステム部には、前記規制部による前記押下ヘッド部の移動の規制が解除されたときに、前記連結段部が下方から係合することにより、当該外ステム部が押し上げられて前記空気孔が開放される被係合部が形成されていることを特徴とする吐出ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−180095(P2012−180095A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42316(P2011−42316)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】