説明

吐出不良検査方法、吐出不良検査装置およびこれを備えたインクジェット記録装置

【課題】インクやターゲットの性状に係らず、吐出不良のノズルを精度良く検出することができる吐出不良検査方法、吐出不良検査装置およびこれを備えたインクジェット記録装置を提供することである。
【解決手段】超音波の送信素子45と受信素子46とを有する超音波検出装置42を用い、インクジェットヘッド9の吐出不良を検査する吐出不良検査方法であって、所定の検査パターンに基づいて、インクジェットヘッド9から記録媒体Wに検査吐出を行う検査吐出工程と、検査吐出工程の前に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する基準測定工程と、検査吐出工程の後に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する実測定工程と、基準測定工程による受信強度と、実測定工程による受信強度との強度差に基づいて、インクジェットヘッド9の吐出不良を検出する検出工程と、を備えた方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不吐出や飛行曲がり等のインクジェットヘッドの吐出不良を検査する吐出不良検査方法、吐出不良検査装置およびこれを備えたインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の吐出不良検査方法として、所定の検査パターンに基づいて、機能液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)から描画シート(ターゲット)に検査吐出を行う工程と、検査カメラにより描画シートに着弾した着弾ドットを撮像する工程と、着弾ドットの撮像結果に基づいて、吐出ノズルの吐出不良を検出(検査)する工程と、を行うものが知られている(特許文献1参照)。
この場合、検査パターンに基づいて、描画シート上に吐出着弾した着弾ドットを、検査カメラにより撮像して、その撮像結果に基づいて、各ノズルがインクを適切に吐出しているか否かを判断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−274068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような吐出不良検査方法では、検査吐出するインクが透明な場合には、検査パターンに基づいて撮像を行っても、十分なコントラストが得られず、インクを画像認識することができない問題がある。特に、描画シートが透明な場合には、照明を工夫しても、正確に吐出不良のノズルを検出することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、インクやターゲットの性状に係らず、吐出不良のノズルを精度良く検出することができる吐出不良検査方法、吐出不良検査装置およびこれを備えたインクジェット記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吐出不良検査方法は、超音波の送信部と受信部とを有する超音波検出手段を用い、インクジェットヘッドの吐出不良を検査する吐出不良検査方法であって、所定の検査パターンに基づいて、インクジェットヘッドからターゲットに検査吐出を行う検査吐出工程と、検査吐出工程の前に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する基準測定工程と、検査吐出工程の後に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する実測定工程と、基準測定工程による受信強度と、実測定工程による受信強度との強度差に基づいて、インクジェットヘッドの吐出不良を検出する検出工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の吐出不良検査装置は、インクジェットヘッドの吐出不良を検査する吐出不良検査装置であって、インクジェットヘッドから検査吐出を受けるターゲットと、ターゲットが位置決め状態でセットされるテーブルと、超音波の送信部と受信部とを有し、ターゲットに臨むように設けられた超音波検出手段と、インクジェットヘッドおよび超音波検出手段に対し、テーブルを相対的に移動させるテーブル移動手段と、インクジェットヘッド、超音波検出手段およびテーブル移動手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、所定の検査パターンに基づいて、インクジェットヘッドからターゲットに検査吐出を行う検査吐出動作と、検査吐出動作の前に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する基準測定動作と、検査吐出工程の後に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する実測定動作と、基準測定動作による受信強度と、実測定動作による受信強度との強度差に基づいて、インクジェットヘッドの吐出不良を検出する検出動作と、を実施することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、検査吐出の前後で超音波を送受信して、検査吐出前に受信した受信強度から検査吐出後に受信した受信強度を差し引いた強度差に基づいて、インクジェットヘッドの吐出不良を検査する。検査パターンに基づいて、適切な位置に適切な量の着弾ドットがターゲット上に存在すれば、送信した超音波は、着弾ドットにより所定の値、減衰して受信される。このため、実測定値(受信強度)と基準測定値(受信強度)とを比較すれば、インクの吐出が所望の着弾位置に適切に行われたか否かを正確に検出することができる。したがって、例えば、吐出したインクが透明な場合であっても、またターゲットが透明であっても、ノズルの飛行曲がりやドット抜け(不吐出)等の吐出不良を精度良く検出することができる。
なお、本方法は、色付きのインクを用いた場合にも同様に検査することができることは、いうまでもない。また、着弾インクの状態が、硬化前および硬化後のいずれであっても、適切な検査が可能である。
【0009】
この場合、各工程が、インクジェットヘッドの全ノズルに対し実施されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、インクジェットヘッドの全ノズルの吐出不良を精度良く検査することができる。
【0011】
この場合、基準測定工程では、ターゲットに反射した超音波を受信し、実測定工程では、ターゲットに着弾した着弾ドットを透過しターゲットに反射した超音波を受信することが好ましい。
【0012】
また、超音波検出手段は、基準測定動作において、ターゲットに反射した超音波を受信し、実測定工程において、ターゲットに着弾した着弾ドットを透過しターゲットに反射した超音波を受信することが好ましい。
【0013】
さらに、基準測定工程では、ターゲットを透過した超音波を受信し、実測定工程では、ターゲットに着弾した着弾ドットおよびターゲットを透過した超音波を受信することが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、いわゆる反射式或いは透過式の受信形態により、ノズルの吐出不良を精度良く検査することができる。なお、構造の単純化および検出精度を考慮すると、反射式とすることがより好ましい。
【0015】
この場合、ターゲットは、インクジェットヘッドにより印刷に供される記録媒体であり、検査吐出工程では、記録媒体の余白に検査吐出を行なうことが好ましい。
【0016】
また、記録媒体が、ターゲットを兼ねており、制御手段は、検査吐出動作において、記録媒体の余白に検査吐出を行なうことが好ましい。
【0017】
これらの構成によれば、記録媒体の余白に検査吐出を行うようにしているため、検査専用のターゲットを必要とせず、装置構成を単純化にすることができる。
【0018】
この場合、超音波検出手段が、空中超音波センサーであることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、装置構成を簡単にすることができると共に、市販品を用いることでコストダウンを達成することができる。
【0020】
本発明のインクジェット記録装置は、上記の吐出不良検査装置と、インクジェットヘッドと、を備え、記録媒体に印刷を行うことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、いわゆるオンマシンでインクジェットヘッドの吐出不良検査を精度良く実施することができるため、検査結果を直ぐに印刷動作に反映させることができ、タクトタイムを短縮することができる(生産性の向上)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る描画装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】第1実施形態に係るブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る吐出不良検査方法を模式的に示した説明図である。
【図4】第2実施形態に係る描画装置の(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図5】第2実施形態に係る吐出不良検査方法を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の吐出不良検査方法を実施する吐出不良検査装置を搭載したインクジェット記録装置について説明する。このインクジェット記録装置は、いわゆるリール・ツー・リール形式で除給材される薄いフィルム状の記録媒体に対して、紫外線硬化インクをインクジェットヘッドにより吐出することで、所望の画像等を印刷すると共に、吐出ノズルの吐出不良を検査するものである。なお、以下の説明では、記録媒体の搬送方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する方向をY軸方向と規定する。
【0024】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、機台2と、ロール状に巻回された長尺の記録媒体W(ターゲット)を繰り出す繰出装置3と、印刷済みの記録媒体Wを巻き取る巻取装置4と、機台2上に配設され、給材された記録媒体Wを吸着セットするワークステージ5(テーブル)と、X軸方向に延在し、ワークステージ5を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送りするX軸テーブル6と、X軸テーブル6を跨ぐようにY軸方向に架け渡されたY軸テーブル7(テーブル移動手段)と、Y軸テーブル7に移動自在に搭載されたキャリッジ8と、キャリッジ8に搭載され、紫外線硬化インクを吐出して記録媒体Wに描画を行うインクジェットヘッド9と、キャリッジ8に搭載され、描画後の記録媒体Wに紫外線を照射して紫外線硬化インクを硬化させる紫外線照射装置10と、を備えている。
【0025】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド9に紫外線硬化インクを供給するインク供給装置(図示省略)と、インクジェットヘッド9の機能の保守および回復を図る保守装置(図示省略)と、インクジェットヘッド9の吐出ノズル31の吐出不良を検査する吐出不良検査装置11と、インクジェット記録装置1を統括制御する制御装置12(制御手段)と、を備えている。
【0026】
このインクジェット記録装置1では、繰出装置3により繰り出された記録媒体Wをワークステージ5で吸着セットした後、X軸テーブル6によりワークステージ5を介して記録媒体WをX軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、吸着セットされた記録媒体Wの描画可能領域に対し、キャリッジ8を往復動作(主走査)させながらインクジェットヘッド9から紫外線硬化インクを吐出して描画を行う。
記録媒体Wは、連続的に供給可能なロール状のものに限定されるものではなく、枚葉の記録媒体Wを用いてもよい。
【0027】
繰出装置3および巻取装置4は、機台2やワークステージ5を挟むようにしてX軸方向上流側および下流側にそれぞれ配設されている。記録媒体Wは、軽いテンションを付与された状態で繰出装置3から繰り出され、巻取装置4に巻き取られる。
【0028】
ワークステージ5は、その表面に複数形成された孔(図示省略)を介して、繰出装置3から送られてきた記録媒体Wを吸着セットする。ワークステージ5の搬送(X軸)方向上流端部および下流端部には、送込ローラー21と送出ローラー22とが、それぞれ添設されている。なお、詳細な説明は省略するが、ワークステージ5に形成された複数の孔は、図外の真空吸引設備および圧縮エアー供給設備にそれぞれ連通している。
【0029】
送込ローラー21および送出ローラー22は、それぞれ昇降可能に設けられた自由回転するニップローラーであり、X軸方向に並んで配設され、記録媒体Wを挟み込んで、ワークステージ5の上面に記録媒体Wを臨ませる。そして、ワークステージ5は、記録媒体Wを吸着セットした状態で、X軸テーブル6によりX軸方向(上流側から下流側)に間欠送りされる。
【0030】
X軸テーブル6は、機台2上に配設され、X軸方向に延在する一対のX軸ガイドレール23と、ワークステージ5をX軸ガイドレール23に沿ってスライド自在に移動させるX軸移動機構24と、を有している。X軸テーブル6は、往動(または復動)時には停止したキャリッジ8を、次の復動(または往動)までに、描画幅(改行距離)分、記録媒体WをX軸方向(副走査方向)の下流側に送る(改行送り)。
【0031】
Y軸テーブル7は、機台2をY軸方向に跨ぐように架け渡されたY軸ガイドレール25と、キャリッジ8をY軸ガイドレール25に沿ってスライド自在に移動させるY軸移動機構26と、を有している。Y軸テーブル7は、キャリッジ8を介してインクジェットヘッド9および紫外線照射装置10をY軸方向(主走査方向)に往復動させる。
【0032】
キャリッジ8は、インクジェットヘッド9および紫外線照射装置10を搭載し、X軸方向上流側においてY軸ガイドレール25にスライド自在に係合している。
【0033】
インクジェットヘッド9は、複数の吐出ノズル31が開口したノズル面32を有し、ノズル面32には、複数の吐出ノズル31が等間隔で並んで構成された複数本のノズル列33が、相互に平行に列設されている。このインクジェットヘッド9では、ノズル列33ごとに、異なる種類(色)の紫外線硬化インクを、それぞれ吐出するようになっている。
【0034】
本実施形態では、いわゆる紫外線硬化型のインクを用いており、ノズル面32には、クリアー(CL)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、クリアー(CL)から成る複数本のノズル列33が主走査方向(Y軸方向)に順に配設されている。なお、紫外線硬化インクの色、色数および各色の配列は、その用途により任意に設定してよい。また、インクは、紫外線硬化型のものに限られず、赤外線硬化型や可視光硬化型等のインクであってもよい。
【0035】
紫外線照射装置10は、インクジェットヘッド9を挟むようにしてキャリッジ8に搭載された一対の光照射ランプ34,34を有している。各光照射ランプ34は、複数の発光ダイオード(LED)がX軸方向に等間隔に並んだLEDアレイで構成され、その照射面は、インクジェットヘッド9のノズル面32より高い位置に配設されている。紫外線照射装置10は、描画直後の記録媒体Wに臨み紫外線を照射させて紫外線硬化インクを硬化させる。なお、照射光量が十分にとれる場合には、紫外線照射装置10を片側の光照射ランプ34のみで構成してもよい。
【0036】
吐出不良検査装置11は、X軸テーブル6を跨ぐようにY軸方向に架け渡され、Y軸テーブル7より記録媒体Wの搬送方向下流側に設けられた検査用Y軸テーブル41と、検査用Y軸テーブル41に移動自在に搭載された超音波検出装置42(超音波検出手段)と、を有している。なお、検査用Y軸テーブル41を省略し、超音波検出装置42をキャリッジ8に搭載するようにしてもよい(Y軸テーブル7を活用する)。
【0037】
検査用Y軸テーブル41は、機台2をY軸方向に跨ぐように架け渡された検査用ガイドレール43と、超音波検出装置42を検査用ガイドレール43に沿ってスライド自在に移動させる検査用移動機構44と、を有している。検査用Y軸テーブル41は、超音波検出装置42をY軸方向(主走査方向)に往復動させて吐出不良検査を実施する。
【0038】
超音波検出装置42は、いわゆる反射型の空中超音波センサーであり、超音波を送信する送信素子45(送信部)と、送信した超音波を受信する受信素子46(受信部)と、を有している。また、送信素子45および受信素子46は、記録媒体Wに対して上方から臨み、記録媒体Wから反射した超音波を受信できるように、傾けて配設されている。なお、実施形態の超音波検出装置42は、単一の空中超音波センサーで構成されているが、Y軸方向に等間隔に配置した複数の空中超音波センサーで構成してもよい(例えばノズル列33の数に対応)。
【0039】
図2に示すように、制御装置12は、制御用のプログラムや検査吐出の検査パターン等が記憶されたメモリー部51と、所定の描画データが記憶された画像メモリー部52と、メモリー部51および画像メモリー部52を制御するコントローラー部53と、コントローラー部53からの指令によりインクジェット記録装置1を構成する各装置を駆動するドライバー部54と、を有している。コントローラー部53のシステムコントローラー55には、超音波検出装置42の送信素子45および受信素子46が、インターフェースを介して接続されている。そして、システムコントローラー55は、送信素子45から所定の波長を有する超音波を送信し、受信素子46で受信する超音波の受信強度から強度差を算出する。そして、強度差が一定の閾値を境に吐出ノズル31が正常に紫外線硬化インクを吐出しているか否かを判断する。
【0040】
次に、図3を参照して、超音波検出装置42を用いた吐出不良検査方法について説明する。この吐出不良検査方法は、所定の検査パターンに基づいて、インクジェットヘッド9から記録媒体Wに検査吐出を行う検査吐出工程(検査吐出動作)と、検査吐出工程の前に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する基準測定工程(基準測定動作)と、検査吐出工程の後に、検査パターンに基づいて、超音波を送信し、その受信強度を測定する実測定工程(実測定動作)と、基準測定工程による受信強度と、実測定工程による受信強度との強度差に基づいて、インクジェットヘッド9の吐出不良を検出する検出工程(検出動作)と、を実行する。
【0041】
検査吐出工程では、記録媒体Wを主走査させると共に、インクジェットヘッド9を駆動して、全インクジェットヘッド9から記録媒体Wの非描画領域に、所定の検査パターンに基づいて、紫外線硬化インクを検査吐出する。本実施形態では、記録媒体Wに、余白を存して同一の画像を連続して描画するようになっており、この余白、或いは描画開始時の描画領域の上流側に生ずる余白である非描画領域に検査吐出を実施するようになっている。なお、検査吐出は、記録媒体Wの送り方向両側の余白である非描画領域に実施してもよい。すなわち、本実施形態では、記録媒体Wが検査吐出するターゲットを兼ねている。
また、検査パターンは、例えばインクジェットヘッド9のインク色別のノズル列の配置に倣ったパターンとしている。なお、検査吐出の際に紫外線照射を行えば、硬化した着弾ドット(着弾インク)を検査することになるが、紫外線照射を行わず、未硬化の着弾ドットを検査するようにしてもよい。
【0042】
基準測定工程では、検査吐出工程の前に、検査パターンをスキャンするように、紫外線硬化インクが着弾する位置に対して、超音波検出装置42の送信素子45から超音波を送信して、その受信強度を測定する(図3(a))。すなわち、記録媒体Wの表面で反射した超音波を受信し、電気信号に変換してその受信強度を測定する。この場合、記録媒体Wを透過し、ワークステージ5で反射した超音波(減衰しているが)もノイズとして受信することになるが、実測定工程でも同一条件で測定を行なうため、強度差を求めたときに相殺される。
【0043】
実測定工程では、検査吐出工程の後に、検査パターンをスキャンするように、紫外線硬化インクが着弾すべき位置に対して、超音波検出装置42の送信素子45から超音波を送信して、その受信強度を測定する(図3(b)および(c))。すなわち、着弾インク(着弾ドット)を透過し、記録媒体Wの表面で反射し、更に着弾インク(着弾ドット)を透過した超音波を受信し、電気信号に変換してその受信強度を測定する。この場合には、基準測定工程と異なり、着弾インクを2回透過して減衰した超音波を受信することになる。
【0044】
検出工程では、制御装置12が、基準測定工程において受信した超音波の基準受信強度A0と、実測定工程において受信した超音波の実測受信強度A1と、の強度差B1を算出し、その強度差B1が所定の閾値以上であった場合には、吐出不良が生じていないものと判断する(図3(b))。逆に、強度差B2が所定の閾値以下であった場合には、検査対象の吐出ノズル31に飛行曲がりやドット抜けが生じていると判断する(図3(c))。上述のように、基準測定工程および実測定工程においても、所定の検査パターンに基づいて全吐出ノズル31に対して検査が行われるため、この検査パターンに基づく位置に、着弾ドットが存在しなければ、不吐出(ドット抜け)か極端な飛行曲がりが想定される。また、着弾ドットが小さかったり、小さな飛行曲がりの場合には、許容できるか否かを閾値で判断することになる。
【0045】
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分を主として説明する。このインクジェット記録装置1の吐出不良検査装置11は、上記の検査用Y軸テーブル41と、超音波検出装置42(超音波検出手段)と、X軸テーブル6を潜るようにY軸方向に延在する検査用第2Y軸テーブル61と、を有している。検査用第2Y軸テーブル61は、検査用第2ガイドレール62と、検査用第2移動機構63と、を含んでいる。なお、ワークステージ5には、検査用第2Y軸テーブル61が下側から臨むようにY軸方向に延在するスリット開口64が形成されている。
【0046】
超音波検出装置42は、いわゆる透過型の空中超音波センサーであり、超音波を送信する送信素子45と、送信した超音波を受信する受信素子46と、を対向させて構成されている。送信素子45は、検査用移動機構44により、検査用ガイドレール43にスライド自在に配設されている。一方、受信素子46は、検査用第2移動機構63により検査用第2ガイドレール62にスライド自在に配設されている。すなわち、本実施形態の超音波検出装置42は、記録媒体Wを上下方向から送信素子45および受信素子46で挟むように配設されており、送信素子45および受信素子46が同期して主走査方向に移動するようになっている。
【0047】
図5に示すように、この場合における吐出不良検出方法は、上記の検査吐出工程と、基準測定工程と、実測定工程と、検出工程と、により実行される。
【0048】
検査基準工程では、検査吐出工程の前に、検査パターンをスキャンするように、紫外線硬化インクが着弾する位置に対して超音波を送信し、受信強度を測定する(図5(a))。すなわち、送信素子45および受信素子46を同時に主走査方向に走査させながら、記録媒体Wを透過した超音波を受信素子46で受信し、電気信号に変換してその受信強度を測定する。
【0049】
実測定工程では、検査吐出工程の後に、検査パターンをスキャンするように、紫外線硬化インクが着弾すべき位置に対して超音波を送信し、その受信強度を測定する(図5(b)および(c))。すなわち、記録媒体Wに着弾した着弾インク(着弾ドット)および記録媒体Wを透過した超音波を受信し、電気信号に変換してその受信強度を測定する。
【0050】
検出工程は、基準測定工程において、送信した超音波が記録媒体Wを透過した後の基準受信強度A0と、実測定工程において、送信した超音波が着弾ドットおよび記録媒体Wを透過した後の実測受信強度A1と、の強度差B1が所定の閾値以上であった場合には、吐出不良が生じていないものと判断する(図5(b))。逆に、強度差B2が所定の閾値以下であった場合には、対象吐出ノズル31に飛行曲がりやドット抜けが生じていると判断する(図5(c))。
【0051】
以上の構成によれば、送信した超音波は、着弾ドットにより所定の値、減衰して受信されるため、検査吐出の前後で送受信した超音波の受信強度の強度差に基づいて、インクジェットヘッド9の吐出不良を精度良く検出することができる。特に、超音波を用いることで、色インクは元より、クリアーインクであっても吐出不良を精度良く検出することができる。さらに、記録媒体Wが透明な場合であっても、吐出不良を精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0052】
5…ワークステージ 7…Y軸テーブル 9…インクジェットヘッド 11…吐出不良検査装置 12…制御装置 31…吐出ノズル 42…超音波検出装置 45…送信素子 46…受信素子 W…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送信部と受信部とを有する超音波検出手段を用い、インクジェットヘッドの吐出不良を検査する吐出不良検査方法であって、
所定の検査パターンに基づいて、前記インクジェットヘッドからターゲットに検査吐出を行う検査吐出工程と、
前記検査吐出工程の前に、前記検査パターンに基づいて、前記超音波を送信し、その受信強度を測定する基準測定工程と、
前記検査吐出工程の後に、前記検査パターンに基づいて、前記超音波を送信し、その受信強度を測定する実測定工程と、
前記基準測定工程による前記受信強度と、前記実測定工程による前記受信強度との強度差に基づいて、前記インクジェットヘッドの吐出不良を検出する検出工程と、
を備えたことを特徴とする吐出不良検査方法。
【請求項2】
前記各工程が、前記インクジェットヘッドの全ノズルに対し実施されることを特徴とする請求項1に記載の吐出不良検査方法。
【請求項3】
前記基準測定工程では、前記ターゲットに反射した前記超音波を受信し、
前記実測定工程では、前記ターゲットに着弾した着弾ドットを透過し前記ターゲットに反射した前記超音波を受信することを特徴とする請求項1または2に記載の吐出不良検査方法。
【請求項4】
前記基準測定工程では、前記ターゲットを透過した前記超音波を受信し、
前記実測定工程では、前記ターゲットに着弾した着弾ドットおよび前記ターゲットを透過した前記超音波を受信することを特徴とする請求項1または2に記載の吐出不良検査方法。
【請求項5】
前記ターゲットは、前記インクジェットヘッドにより印刷に供される記録媒体であり、
前記検査吐出工程では、前記記録媒体の余白に検査吐出を行なうことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の吐出不良検査方法。
【請求項6】
前記超音波検出手段が、空中超音波センサーであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の吐出不良検査方法。
【請求項7】
インクジェットヘッドの吐出不良を検査する吐出不良検査装置であって、
前記インクジェットヘッドから検査吐出を受けるターゲットと、
前記ターゲットが位置決め状態でセットされるテーブルと、
超音波の送信部と受信部とを有し、前記ターゲットに臨むように設けられた超音波検出手段と、
前記インクジェットヘッドおよび超音波検出手段に対し、テーブルを相対的に移動させるテーブル移動手段と、
前記インクジェットヘッド、前記超音波検出手段および前記テーブル移動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、所定の検査パターンに基づいて、前記インクジェットヘッドからターゲットに検査吐出を行う検査吐出動作と、
前記検査吐出動作の前に、前記検査パターンに基づいて、前記超音波を送信し、その受信強度を測定する基準測定動作と、
前記検査吐出工程の後に、前記検査パターンに基づいて、前記超音波を送信し、その受信強度を測定する実測定動作と、
前記基準測定動作による前記受信強度と、前記実測定動作による前記受信強度との強度差に基づいて、前記インクジェットヘッドの吐出不良を検出する検出動作と、を実施することを特徴とする吐出不良検査装置。
【請求項8】
前記超音波検出手段は、
前記基準測定動作において、前記ターゲットに反射した前記超音波を受信し、
前記実測定工程において、前記ターゲットに着弾した着弾ドットを透過し前記ターゲットに反射した前記超音波を受信することを特徴とする請求項7に記載の吐出不良検査装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の吐出不良検査装置と、
前記インクジェットヘッドと、を備え、
記録媒体に印刷を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記記録媒体が、前記ターゲットを兼ねており、
前記制御手段は、前記検査吐出動作において、前記記録媒体の余白に検査吐出を行なうことを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166411(P2012−166411A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28281(P2011−28281)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】