説明

吐出器

【課題】部品点数を抑えつつ、吐出口から内容物が液垂れすることを防止でき、液切れ性を向上できる吐出器を提供する。
【解決手段】容器の口部に配設され、容器の内容物を吸い上げる吸上げ筒と、吸上げ筒が連結されたシリンダと、吸上げ筒とシリンダとの連通および遮断を切り替える吸上げ弁と、シリンダ内に上方付勢状態で下方移動自在に配設されたピストンと、シリンダに直結されて側方に向けて延びる吐出筒6と、吐出筒6に配設され、内容物を吐出する吐出口27aを有する吐出口部材7と、を備え、吐出口部材7は、スリット状の吐出口27aが形成された弾性変形可能な吐出膜27と、吐出膜27を吐出筒6の内側から支持して吐出口27aを閉塞する台座28と、を備え、シリンダの内圧変動に伴う吐出膜27の弾性変形により、吐出口27aとシリンダとの連通および遮断が切り替えられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出器として、例えば下記特許文献1に示されるような、容器の口部に配設され、容器の内容物を吸い上げる吸上げ筒と、吸上げ筒に連結されたシリンダと、吸上げ筒とシリンダとの連通および遮断を切り替える吸上げ弁と、シリンダ内に配設されて上下移動するピストンと、シリンダに直結されて側方に向けて延び、内容物が吐出される吐出口が形成された吐出筒と、シリンダの内圧変動により吐出口とシリンダとの連通および遮断を切り替える逆止弁と、を備える構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−28452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の吐出器では、内容物を吐出した後などに、吐出筒内に残る内容物が吐出口から液垂れすることがあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、部品点数を抑えつつ、吐出口から内容物が液垂れすることを防止でき、液切れ性を向上できる吐出器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る吐出器は、容器の口部に配設され、前記容器の内容物を吸い上げる吸上げ筒と、前記吸上げ筒が連結されたシリンダと、前記吸上げ筒と前記シリンダとの連通および遮断を切り替える吸上げ弁と、前記シリンダ内に上方付勢状態で下方移動自在に配設されたピストンと、前記シリンダに直結されて側方に向けて延びる吐出筒と、前記吐出筒に配設され、前記内容物を吐出する吐出口を有する吐出口部材と、を備え、前記吐出口部材は、スリット状の前記吐出口が形成された弾性変形可能な吐出膜と、前記吐出膜を前記吐出筒の内側から支持して前記吐出口を閉塞する台座と、を備え、前記シリンダの内圧変動に伴う前記吐出膜の弾性変形により、前記吐出口と該シリンダとの連通および遮断が切り替えられることを特徴とする。
【0007】
この発明においては、ピストンが上方付勢力によりシリンダ内を下方から上方に移動する際には、シリンダ内にピストンのストローク量に対応した負圧が発生する。このとき、吐出膜がシリンダ内の負圧により台座上に吸着され、吐出口は遮断状態とされる。一方、吸上げ弁はシリンダ側へ吸引されるとともに連通状態とされ、吸上げ筒からシリンダ内へ容器の内容物が吸い上げられる。
このように、吐出口部材の吐出口が確実に閉塞されて、該吐出口からエアーがシリンダ内へ流入することが防止されているので、内容物の計量が精度よく行われる。
【0008】
また、シリンダ内をピストンが下方移動する際には、シリンダ内に正圧が発生する。このとき、吸上げ弁は容器側へ押されて遮断状態とされる。一方、吐出口部材の吐出膜は、台座とは反対側の吐出筒の外側へ向けて弾性変形させられるとともに該台座から離間されて、吐出口は連通状態とされる。これにより、吐出口が開放された状態となり、シリンダ内の内容物は該吐出口から吐出される。
【0009】
そして、シリンダの内圧が低下すると、吐出膜は弾性復元力により再び台座に当接させられる。この際、吐出口がスリット状に復元変形することにより、該吐出口から内容物が液垂れすることが抑制される。
このように吐出膜が台座に当接した状態で、前述のようにピストンがシリンダ内を上方移動することで、シリンダ内が再び負圧となり、吐出膜はより強く台座に押し当てられて、吐出口を確実に閉塞する。
【0010】
従って、たとえ吐出後の吐出筒内に内容物が残っていたとしても、吐出口から液垂れすることが確実に防止されるとともに、液切れ性が向上する。
そして、このような作用効果を奏しつつも、吐出口部材は吐出膜と台座とを備えた簡単な構成とされているので、部品点数の増加が抑えられる。
【0011】
また、本発明に係る吐出器において、前記台座のうち前記吐出筒の外側を向く面は、前記吐出筒の内側へ向けて窪む凹曲面状に形成され、前記吐出膜のうち前記吐出筒の内側を向く面は、前記吐出筒の内側へ向けて突出する凸曲面状に形成されていることとしてもよい。
【0012】
この場合、内容物の吐出後に、吐出膜が吐出筒の内側(台座側)へ向けてより復元変形しやすくなるとともに、台座に隙間なく当接しやすくなる。よって、吐出口からの内容物の液垂れがより確実に防止される。
【0013】
また、本発明に係る吐出器において、前記吐出膜の前記吐出筒の内側を向く面には、前記吐出口を囲繞するように環状をなすとともに、前記台座の外周に着脱自在に嵌合する環状突起が突設されていることとしてもよい。
【0014】
この場合、内容物の吐出後に、吐出膜が吐出筒の内側(台座側)へ向けて復元変形したときに、環状突起が台座の外周に嵌合されることから、吐出口のシール性がより高められる。また、環状突起は台座の外周に嵌合しつつ、吐出膜を該台座の所定位置に案内するので、該吐出膜の吐出口が台座に対して精度よく位置決めされる。従って、吐出口はより確実に閉塞されることとなり、内容物の液垂れが防止される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る吐出器によれば、部品点数を抑えつつ、吐出口から内容物が液垂れすることを防止でき、液切れ性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る吐出器を示す側断面図である。
【図2】図1の吐出器の要部を示す部分側断面図であり、吐出口部材の遮断状態を説明する図である。
【図3】図1の吐出器における吐出口の形状を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る吐出器を示す側断面図である。
【図5】図4の吐出器の要部を示す部分側断面図であり、吐出口部材の連通状態を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る吐出器の吐出口部材の変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る吐出器について説明する。
図1に示すように、吐出器1は、例えば、水や酒類等の液状の内容物が充填される容器100の口部101に装着されるものである。吐出器1は、容器100の口部101に配設され、容器100の内容物を吸い上げる吸上げ筒2と、吸上げ筒2が連結されたシリンダ3と、吸上げ筒2とシリンダ3との連通および遮断を切り替える吸上げ弁4と、シリンダ3内に上方付勢状態で下方移動自在に配設されたピストン5と、シリンダ3に直結されて側方に向けて延びる吐出筒6と、吐出筒6に配設され、内容物を吐出する吐出口27aを有する吐出口部材7と、を備えている。
【0018】
ここで、容器100の口部101、吸上げ筒2、吸上げ弁4、シリンダ3、及び、ピストン5は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置された状態で配設されている。以下、この共通軸をシリンダ軸O1といい、この吐出器1において、シリンダ軸O1に沿ったピストン5側を上側、容器100の口部101側を下側といい、シリンダ軸O1に直交する方向をシリンダ径方向といい、シリンダ軸O1を中心に周回する方向をシリンダ周方向という。
【0019】
容器100の口部101は筒状をなしており、該口部101の外周面には雄ネジ部101aが形成されている。
また、口部101には、シリンダ3を支持する支持筒8が内挿されている。支持筒8には、シリンダ径方向の外方に向けて突設されるとともにシリンダ周方向に沿って延びる環状のフランジ8aが形成されている。フランジ8aは、口部101の上端開口縁に上側から当接している。
【0020】
シリンダ3は、内容物を収容(計量)する有底筒状のシリンダ本体9と、シリンダ本体9の底壁部9aから下側へ向けて突設され該シリンダ本体9内に連通する多段筒状の吸上げガイド筒10と、シリンダ本体9の底壁部9aから垂設され支持筒8に外挿されるシリンダ脚筒11と、を備えている。
【0021】
吸上げガイド筒10の上端部は下端部及び中央部よりも大径とされており、該上端部内には、吸上げ弁4が配設されている。
吸上げ弁4は、有底筒状をなしており、吸上げガイド筒10の上端部に内嵌される外筒4aと、該外筒4aの下端部に弾性変形可能な複数の腕部を介して連結される円板状の弁部4bと、を備えている。前記複数の腕部は、弁部4bの外周においてシリンダ周方向に間隔をあけて配置されている。隣り合う前記腕部同士の間には隙間が形成されており、該隙間には容器100の内容物が流通するようになっている。
また、前記腕部は1つだけとしてもよく、この場合は前記隙間を設けなくてもよい。
【0022】
また、吸上げガイド筒10の上端部には、シリンダ径方向内方へ向けて突設されるとともにシリンダ周方向に沿って延びる環状のフランジ10aが形成されており、吸上げ弁4の弁部4bは、フランジ10aに上側から当接している。
【0023】
吸上げガイド筒10のフランジ10aの下側部分には、吸上げ筒2が内嵌されている。吸上げ筒2の上端開口縁は、フランジ10aに下側から当接している。また図示しないが、吸上げ筒2の下端開口縁は、容器100の下端部に配置されている。また、吸上げガイド筒10の下端部及び中央部は、支持筒8に内嵌されている。吸上げガイド筒10は、支持筒8に対するシリンダ周方向への回転が規制されている。
【0024】
シリンダ脚筒11の下端部は、支持筒8の上端部に外嵌されている。また、シリンダ脚筒11の下端部には、シリンダ径方向外方へ向けて突設されるとともにシリンダ周方向に沿って延びる環状のフランジ11aが形成されており、フランジ11aは、支持筒8のフランジ8aに上側から当接している。
【0025】
また、容器100の口部101には、装着筒12が装着されている。装着筒12の内周面には、雌ネジ部12aが形成されており、該雌ネジ部12aと口部101の雄ネジ部101aとが螺合している。また、装着筒12の上端部には、シリンダ径方向内方へ向けて突設されるとともにシリンダ周方向に沿って延びる環状の押さえフランジ12bが形成されている。押さえフランジ12bは、シリンダ脚筒11のフランジ11aに上側から当接している。装着筒12が口部101に装着されることにより、該口部101に支持筒8及びシリンダ3が固定状態で装着されている。
【0026】
また、シリンダ本体9の上端部には、ピストンガイド筒13が配設されている。ピストンガイド筒13は、シリンダ本体9の上端部に外嵌される外筒14と、シリンダ本体9の上端部に内挿される内筒15と、内筒15よりも小径のガイド筒16と、を備えている。また、外筒14の上端部と内筒15の上端部とは、環状の天壁板17により互いに連結されている。また、内筒15の下端部とガイド筒16の下端部とは、環状の底壁板18により互いに連結されている。
【0027】
また、ピストン5は、シリンダ本体9に上下摺動可能に内嵌されたシール筒5aと、有頂筒状をなしシール筒5aよりも小径とされた内筒5bと、シール筒5aの内周面における上下方向の中央部と内筒5bの下端部とを連結する環状の底壁板5cと、を備えている。
【0028】
ピストン5は、シリンダ3に対して上下移動可能とされ、操作者が押し下げ操作を行うように露出された操作筒19に一体に連結されている。操作筒19は、ピストンガイド筒13の外筒14に外挿される操作外筒20と、ピストンガイド筒13のガイド筒16に内挿される操作内筒21と、操作内筒21及びピストン5を連結する有頂筒状の連結筒22と、を備えている。また、操作外筒20の上端部と操作内筒21の上端部とは、環状の天壁板23により互いに連結されている。尚、特に図示しないが、操作内筒21の外周面及びガイド筒16の内周面に、シリンダ軸O1方向に沿って延びるリブ及び溝を形成して、操作内筒21とガイド筒16とのシリンダ周方向への相対回転を規制する構成としてもよい。
【0029】
連結筒22は、操作内筒21に内嵌されている。連結筒22の下端部は、ピストン5の内筒5bに外嵌されている。また、連結筒22の下端部には、シリンダ径方向外方へ向けて突設されるとともにシリンダ周方向に沿って延びる環状のフランジ22aが形成されている。フランジ22aは、ピストン5の底壁板5cに上側から当接している。また、図1において、フランジ22aは、ピストンガイド筒13の底壁板18に下側から当接している。
【0030】
また、操作筒19の天壁板23とピストンガイド筒13の底壁板18との間には、弾性体の圧縮コイルばね24が配設されている。圧縮コイルばね24は、ピストンガイド筒13に対して操作筒19を上方へ向けて付勢しているとともに、該操作筒19に一体とされたピストン5をシリンダ3に対して上方へ向けて付勢している。
【0031】
吐出筒6は、シリンダ本体9の底壁部9aに垂設されるとともに該シリンダ本体9内に連通し、シリンダ径方向外方へ向かうに従い漸次下側へ向かって傾斜する第1吐出筒25と、第1吐出筒25の先端部25aに連結されるL字筒状の第2吐出筒26と、第2吐出筒26の先端部26aに配設される吐出口部材7と、を備えている。
【0032】
第2吐出筒26のシリンダ径方向内方を向く基端部26bは、第1吐出筒25のシリンダ径方向外方を向く先端部25aに外嵌されている。第2吐出筒26の先端部26aにおけるシリンダ径方向(水平方向)に対する傾斜は、基端部26bにおける前記傾斜よりも大きく設定されている。第2吐出筒26の先端部26aは、シリンダ軸O1方向(鉛直方向)に対して僅かに傾斜するように、下側へ向けて延びている。第2吐出筒26の先端部26aのシリンダ径方向に沿う単位長さあたりの上下方向の変位量は、第2吐出筒26の基端部26bにおける前記変位量よりも大きく設定されている。
【0033】
図2に示すように、吐出口部材7は、スリット状の吐出口27aが形成された弾性変形可能な吐出膜27と、吐出膜27を吐出筒6の内側から支持して吐出口27aを閉塞する台座28と、吐出膜27及び台座28を第2吐出筒26の先端部26aに固定状態で装着する吐出口装着筒29と、を備えている。第2吐出筒26の先端部26a、吐出膜27、台座28及び吐出口装着筒29は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置された状態で配設されている。以下、この共通軸を吐出軸O2といい、吐出軸O2方向に沿った先端部26a側(図2における上方側)を吐出筒6の内側、吐出膜27側(図2における下方側)を吐出筒6の外側といい、吐出軸O2に直交する方向を吐出軸径方向といい、吐出軸O2回りに沿った方向を吐出軸周方向という。
【0034】
第2吐出筒26の先端部26aには、吐出筒6の外側へ向けて突設されるとともに吐出軸周方向に沿って延びる環状の突起筒30が形成されている。突起筒30の外周面は、吐出筒6の外側を向く先端開口縁から吐出筒6の内側へ向かうに従い漸次拡径するテーパ状とされている。また、突起筒30の外周面において最も大径とされた部位の吐出軸径方向内方に位置して、吐出筒6の内側を向くとともに吐出軸周方向に沿って延びる環状の係止部30aが形成されている。
【0035】
また、台座28は、突起筒30に内嵌される台座支持筒31と、吐出膜27に吐出筒6の内側から当接するとともに吐出口27aを閉塞する円板状の閉塞部32と、閉塞部32の外縁部に吐出軸周方向に互いに間隔をあけて複数配設されるとともに台座支持筒31における吐出筒6の内側の端部に連結される支持脚33と、を備えている。
【0036】
台座支持筒31における吐出筒6の外側の端部には、吐出軸径方向外方へ向けて突設されるとともに吐出軸周方向に沿って延びる環状のフランジ31aが形成されている。フランジ31aは、突起筒30の前記先端開口縁に吐出筒6の外側から当接している。
閉塞部32は、フランジ31aの吐出軸径方向内方に位置している。閉塞部32において吐出筒6の外側(吐出膜27側)を向く面は、吐出筒6の内側へ向けて窪む凹曲面状に形成されている。
【0037】
支持脚33は、L字軸状をなしており、閉塞部32における吐出筒6の内側を向く面の外縁部と、台座支持筒31における吐出筒6の内側の端部とを連結している。隣り合う支持脚33同士の間には隙間が形成されており、該隙間には容器100の内容物が流通するようになっている。
【0038】
また、吐出膜27は、吐出口27aが形成された膜部34と、台座支持筒31に内嵌された筒部35と、膜部34及び筒部35の連結部分から吐出軸径方向外方へ向けて突設されるとともに吐出軸周方向に沿って延びる環状のフランジ36と、を備えている。
【0039】
膜部34の外縁部は、吐出軸径方向外方から内方へ向かうに従い漸次吐出筒6の外側へ向かって傾斜して形成されている。また、膜部34において前記外縁部よりも吐出軸径方向内方に位置する中央部は、吐出軸径方向外方から内方へ向かうに従い漸次吐出筒6の内側へ向かって傾斜して形成されている。膜部34の前記中央部において吐出筒6の内側(台座28側)を向く面は、吐出筒6の内側へ向けて突出する凸曲面状に形成されている。
【0040】
図3に示すように、吐出口27aは、膜部34の前記中央部に形成されており、吐出筒6の外側(先端側)から見て、吐出軸O2を中心に複数のスリットが放射状に延びて形成されている。図示の例では、4つのスリットが吐出軸O2を中心に放射状に延びているとともに吐出軸周方向に等間隔に配置されて、吐出口27aは十字状に形成されている。図2において、吐出口27aの内径(内径のうち最も大きい部分の寸法)は、閉塞部32の外径よりも小さく設定されている。
【0041】
筒部35における吐出筒6の外側の端部は、膜部34の外縁部における吐出筒6の内側の端部に連結されている。
また、フランジ36は、台座支持筒31のフランジ31aに吐出筒6の外側から当接している。
【0042】
また、吐出口装着筒29における吐出筒6の内側の端部には、吐出軸径方向内方へ向けて突設されるとともに吐出軸周方向に沿って延びる環状の被係止部29aが形成されている。吐出口装着筒29の被係止部29aが突起筒30の係止部30aに吐出筒6の内側から当接するとともに、被係止部29aと係止部30aとが互いに係合することにより、吐出口装着筒29の第2吐出筒26に対する吐出筒6の外側への移動が規制されている。
【0043】
吐出口装着筒29における吐出筒6の外側の端部には、吐出軸径方向内方へ向けて突設されるとともに吐出軸周方向に沿って延びる環状のフランジ29bが形成されている。フランジ29bは、吐出膜27のフランジ36に吐出筒6の外側から当接している。
このように構成される吐出口部材7は、シリンダ3の内圧変動に伴う吐出膜27の弾性変形により、吐出口27aとシリンダ3との連通及び遮断(吐出口27aの開閉)を切り替える構成とされている。
【0044】
次に、吐出器1の吐出口27aから、容器100の内容物を吐出する手順について説明する。
【0045】
図1において、ピストン5は、圧縮コイルばね24の付勢力により、シリンダ3内において上方付勢された状態とされている。尚、この初期状態では、シリンダ3内にはエアーが充填されている。
また、ピストン5に一体とされた連結筒22のフランジ22aは、ピストンガイド筒13の底壁板18に下側から当接しており、これにより、シリンダ3に対するピストン5の上側への移動が規制されている。
【0046】
この状態から、操作者が圧縮コイルばね24の付勢力に抗い操作筒19を容器100側へ向けて押し下げると、図4に示すように、操作筒19に一体とされたピストン5がシリンダ3内を下側へ向けて移動し、シリンダ3内にはピストン5のストローク量に対応した正圧が発生する。
【0047】
このとき、吸上げ弁4の弁部4bは前記正圧により容器100側へ押されてフランジ10aに当接した状態とされ、吸上げ弁4は遮断状態とされている。一方、図5に示すように、吐出口部材7における吐出膜27の膜部34は、前記正圧により台座28とは反対側の吐出筒6の外側へ向けて弾性変形させられるとともに該台座28の閉塞部32から離間され、吐出口27aは連通状態とされる。これにより、吐出口27aが開放され、シリンダ3内のエアーは該吐出口27aから吐出される。
【0048】
尚、前述のように操作筒19を押し下げていくと、ピストン5がシリンダ3の底壁部9aに上側から当接することにより、該操作筒19及びピストン5の容器100側への移動が規制される。
そして、シリンダ3の内圧が低下すると、吐出膜27の膜部34は弾性復元力により復元変形して、再び台座28の閉塞部32に当接される。
【0049】
次いで、操作者が操作筒19を解放すると、ピストン5は圧縮コイルばね24の付勢力によりシリンダ3内を上側へ向けて移動し、シリンダ3内にはピストン5のストローク量に対応した負圧が発生する。
【0050】
このとき、図2に示すように、吐出膜27の膜部34はシリンダ3内の負圧により台座28の閉塞部32上に吸着され、吐出口27aは閉塞され遮断状態とされている。一方、前記負圧により、吸上げ弁4の弁部4bはシリンダ3側へ吸引されるとともに前記腕部が弾性変形して、弁部4bはフランジ10aから離間され、吸上げ弁4は連通状態とされる。これにより、容器100の内容物が吸上げ筒2、吸上げ弁4を通ってシリンダ3内へ吸い上げられる。
【0051】
シリンダ3内に内容物が吸い上げられる際、ピストン5の所定のストローク量に応じて計量が行われる。
また、シリンダ3内に内容物が定量吸い上げられて該シリンダ3の内圧が増加すると、吸上げ弁4の弁部4bは前記腕部が弾性復元力で復元変形することにより、再びフランジ10aに当接される。これにより、吸上げ弁4が遮断状態とされる。
【0052】
この状態から、操作者が操作筒19を再び容器100側へ向けて押し下げることにより、前述したエアーの代わりに、吐出口27aから内容物が定量吐出される。
このとき、吸上げ弁4の弁部4bは、より強い力でフランジ10aに当接(圧接)される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る吐出器1によれば、ピストン5が上方付勢力によりシリンダ3内を下方から上方に移動する際には、シリンダ3内にピストン5のストローク量に対応した負圧が発生する。このとき、吐出膜27がシリンダ3内の負圧により台座28上に吸着され、吐出口27aは遮断状態とされる。一方、吸上げ弁4はシリンダ3側へ吸引されるとともに連通状態とされ、吸上げ筒2からシリンダ3内へ容器100の内容物が吸い上げられる。
このように、吐出口部材7の吐出口27aが確実に閉塞されて、該吐出口27aからエアーがシリンダ3内へ流入することが防止されているので、内容物の計量が精度よく行われる。
【0054】
また、シリンダ3内をピストン5が下方移動する際には、シリンダ3内に正圧が発生する。このとき、吸上げ弁4は容器100側へ押されて遮断状態とされる。一方、吐出口部材7の吐出膜27は、台座28とは反対側の吐出筒6の外側へ向けて弾性変形させられるとともに該台座28から離間されて、吐出口27aは連通状態とされる。これにより、吐出口27aが開放された状態となり、シリンダ3内の内容物は該吐出口27aから吐出される。
【0055】
そして、シリンダ3の内圧が低下すると、吐出膜27は弾性復元力により再び台座28に当接させられる。この際、吐出口27aがスリット状に復元変形することにより、該吐出口27aから内容物が液垂れすることが抑制される。
このように吐出膜27が台座28に当接した状態で、前述のようにピストン5がシリンダ3内を上方移動することで、シリンダ3内が再び負圧となり、吐出膜27はより強く台座28に押し当てられて、吐出口27aを確実に閉塞する。
【0056】
従って、たとえ吐出後の吐出筒6内に内容物が残っていたとしても、吐出口27aから液垂れすることが確実に防止されるとともに、液切れ性が向上する。
そして、このような作用効果を奏しつつも、吐出口部材7は吐出膜27と台座28とを備えた簡単な構成とされているので、部品点数が抑えられる。
【0057】
また、台座28の閉塞部32において吐出筒6の外側(吐出膜27の膜部34側)を向く面は、吐出筒6の内側へ向けて窪む凹曲面状に形成され、膜部34において吐出筒6の内側(閉塞部32側)を向く面は、吐出筒6の内側へ向けて突出する凸曲面状に形成されている。これにより、内容物の吐出後に、膜部34が吐出筒6の内側(閉塞部32側)へ向けてより復元変形しやすくなるとともに、閉塞部32に隙間なく当接しやすくなる。よって、吐出口27aからの内容物の液垂れがより確実に防止される。
【0058】
尚、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0059】
例えば、前述の実施形態では、吐出膜27の膜部34が台座28の閉塞部32に吐出筒6の外側から当接することにより、吐出口27aが閉塞されることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図6に示される吐出口部材37のように、吐出膜27の膜部34において吐出筒6の内側(台座28の閉塞部32側)を向く面には、吐出口27aを囲繞するように環状をなすとともに、台座28の閉塞部32の外周に着脱自在に嵌合する環状突起38が突設されていることとしてもよい。
【0060】
この場合、内容物の吐出後に、吐出膜27の膜部34が吐出筒6の内側(台座28の閉塞部32側)へ向けて復元変形したときに、環状突起38が閉塞部32の外周に嵌合されることから、吐出口27aのシール性がより高められる。また、環状突起38は閉塞部32の外周に嵌合しつつ、膜部34を該閉塞部32の所定位置に案内するので、該膜部34の吐出口27aが閉塞部32に対して精度よく位置決めされる。従って、吐出口27aはより確実に閉塞されることとなり、内容物の液垂れが防止される。
【0061】
また、前述の実施形態では、吐出筒6の外側から見て、吐出口27aが十字状に形成されていることとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、吐出口27aは、複数のスリットが吐出軸O2を中心に放射状に延びて形成された前述の十字状以外のY字状やI字状等であってもよい。
【0062】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 吐出器
2 吸上げ筒
3 シリンダ
4 吸上げ弁
5 ピストン
6 吐出筒
7 吐出口部材
27 吐出膜
27a 吐出口
28 台座
32 閉塞部(台座)
34 膜部(吐出膜)
38 環状突起
100 容器
101 口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に配設され、前記容器の内容物を吸い上げる吸上げ筒と、
前記吸上げ筒が連結されたシリンダと、
前記吸上げ筒と前記シリンダとの連通および遮断を切り替える吸上げ弁と、
前記シリンダ内に上方付勢状態で下方移動自在に配設されたピストンと、
前記シリンダに直結されて側方に向けて延びる吐出筒と、
前記吐出筒に配設され、前記内容物を吐出する吐出口を有する吐出口部材と、を備え、
前記吐出口部材は、
スリット状の前記吐出口が形成された弾性変形可能な吐出膜と、
前記吐出膜を前記吐出筒の内側から支持して前記吐出口を閉塞する台座と、を備え、
前記シリンダの内圧変動に伴う前記吐出膜の弾性変形により、前記吐出口と該シリンダとの連通および遮断が切り替えられることを特徴とする吐出器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出器であって、
前記台座のうち前記吐出筒の外側を向く面は、前記吐出筒の内側へ向けて窪む凹曲面状に形成され、
前記吐出膜のうち前記吐出筒の内側を向く面は、前記吐出筒の内側へ向けて突出する凸曲面状に形成されていることを特徴とする吐出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吐出器であって、
前記吐出膜の前記吐出筒の内側を向く面には、前記吐出口を囲繞するように環状をなすとともに、前記台座の外周に着脱自在に嵌合する環状突起が突設されていることを特徴とする吐出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95440(P2013−95440A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237811(P2011−237811)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】