説明

吐出容器

【課題】 押しボタンによる一回の吐出操作の手加減で所望量の内容物が吐出できるとともに、内容物の収容効率の高い、簡便にして安価な容器にする。
【解決手段】 内容物Nを収納する有底筒状の容器本体1と、中心に前記内容物Nが通過する通路15が穿設された軸管14を立設し前記容器本体1の内周壁2に摺動するピストン部材10と、前記ピストン部材10の上部に一体的に嵌着され前記通路15と連通する吐出口26を有する押しボタン25と、前記ピストン部材10を前記容器本体1から抜け出し不能に前記容器本体1の口部3に嵌着する肩カバー40と、を有して成り、前記ピストン部材10の下降に伴って前記吐出口26から内容物Nを吐出するようにした。また、 ピストン部材10を、容器本体1の内周壁2に摺動する第1摺動筒20と、前記第1摺動筒20の内周壁2に摺動可能して且つ抜け出し不能に組み込まれた第2摺動筒22とで伸縮可能に構成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームや整髪料、液体ファンデーション、軟膏のような流動性の物質を液密に収納し、押し釦を押し下げることにより内容物を適量取り出すようにした吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、消費者が使い易いことから、吐出口を有する押し釦を押し下げることによりピストンを作動させ、容器に充填された流動性の内容物をピストンの圧力により吐出させるタイプの吐出容器が多数提案されている。
【0003】
このような押し釦付きの吐出容器として、例えば、実開平8−1175号公報には、流動性物質を収納した容器本体の上部に押し釦により作動するポンプ機構を備えてものが開示されている。
【0004】
この吐出容器は、その押し釦を押し下げると、押し釦の吐出口に連通するバルブ孔が開通すると共に、ピストンの圧力によりポンプ機構のシリンダ内にある一定量の内容物が押し釦の吐出口から吐出する。押し釦の押圧をやめることにより、スプリングの力で押し釦が上昇すると、バルブ孔が閉鎖すると共にピストンの上昇に伴い発生する負圧によりポンプ機構のシリンダ内に充填物が吸引され、同時に容器本体の摺動底壁も、内容物が吐出された容量の分上昇する。
【0005】
上記の操作を繰り返すことにより、1ストローク毎に一定量の内容物を吐出させるものである。
【特許文献1】実開平8−1175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この吐出容器は、押し釦を押すだけで内容物を取り出せるので極めて使い勝手のよい吐出容器であるが、ポンプ機構や摺動底壁を備えているので、機構が複雑で組立工数も多く、このため高価な容器になってしまう欠点を有している。
【0007】
また、この吐出容器は、押し釦の1ストロークの作動で吐出される内容物の量がポンプ機構のシリンダの容量で規制されていることから、吐出操作の手加減で内容物を適当量だけ吐出させることができず、従って、小形に設計された容器では、押し釦の1ストロークの吐出量が少ないものになり、所望の吐出量を得る為には、押し釦の操作を何度も繰り返さなければならない不便さがある。
【0008】
また、この吐出容器は、使用すると内部の栓が上昇する機構であるので、内容量の使用した具合が判らないうえに、ポンプ機構を容器本体の内部に装備した構成であるので、その分容器本体内のスペースが取られる為、容器本体に充填する内容物の収容スペースの効率が低く、容器の見かけの大きさの割には収納内容物の少ない商品となり、化粧品のように携帯性が求められる小形の商品には不利である。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、一回の吐出操作の手加減で所望量の内容物が吐出できるとともに、内容物の収容効率の高い、簡便にして安価な容器にすることを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決する為に、内容物を収納する有底筒状の容器本体と、前記内容物が通過する通路が穿設された軸管を立設し前記容器本体の内周壁に摺動するピストン部材と、前記ピストン部材の上部に一体的に嵌着され前記通路と連通する吐出口を有する押しボタンと、前記ピストン部材を前記容器本体から抜け出し不能に前記容器本体の口部に嵌着する肩カバーと、を有して成り、前記ピストン部材の下降に伴って前記吐出口から内容物を吐出するようにした。
【0011】
ピストン部材を、容器本体の内周壁に摺動する第1摺動筒と、中心に押しボタンの吐出口に連通する通路を穿設した軸管が立設され前記第1摺動筒の内周壁に摺動可能して且つ抜け出し不能に組み込まれた第2摺動筒とで伸縮可能に構成することが好ましい。
【0012】
押しボタンの内部に、押しボタンの操作で吐出口の開閉を吐出口の口元で自動的に行うバルブ機構を設けるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吐出容器によれば、従来の吐出容器のように、容器本体の内部に、押しボタンを操作することによって作動するポンプ機構や、内容物の通路の開閉弁が装備されてないので、その分、容器本体内の収容スペースが大きくなり、容器本体に充填される内容物の収容スペースの効率を高くすることができる。また、この種の容器としては、部品点数も少なく組み立ても容易であるので、安価に提供することができる。
【0014】
また、ピストン部材を、第1摺動筒と、この第1摺動筒の内周壁に摺動可能に組み込まれた第1摺動筒とで伸縮可能に構成することにより、充填する内容物の収容スペースの効率が更に高くなり、化粧品容器のように携帯性や小形化が希求される商品には極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の吐出容器の好適な実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1乃至図3は、本発明の吐出容器の第1の実施の形態を示しており、図1に
示すように、この実施の形態の吐出容器は、内容物Nを収納する有底筒状の容器本体1と、内容物Nを押し出す為に容器本体1の内壁2に摺動するピストン部材10と、このピストン部材10の上部に一体的に嵌着され内容物Nの吐出口26を有する押しボタン25と、ピストン部材10を容器本体1から抜け出し不能に容器本体1の口部3に嵌着する肩カバー40と、吐出口26を閉塞する口蓋50と、ピストン部材10を被覆する蓋体53とから構成されている。
【0017】
容器本体1は、クリームや整髪料、液体ファンデーション、軟膏のような流動性の内容物を液密に収納する広口のジャーであり、その口部3の内周壁には、肩カバー40が係合するアンダーカット係合用の周溝4が形成されている。この容器本体1は、SAN、PS、PP、ABS、PET等、汎用合成樹脂を用いて成形されている。
【0018】
容器本体1に摺動可能に組み込まれるピストン部材10は、下端部の外周に容器本体1の内周壁2と摺動するフランジ状の摺動部12を設けた筒状部11と、この筒状部11の下端の面板部13と、この面板部13の中心に立設された軸管14とから成る。
【0019】
筒状部11の上端部内周面には、押しボタン25と掛止する為の突起11aが形成され、摺動部12には、ピストンリング16が装着されている。また、軸管14には、押しボタン25の吐出口26に連通する内容物Nの通路15が穿設されており、軸管14の上端は、押しボタン25の縦通路27と嵌合する小径部14aとなっている。
【0020】
押しボタン25は、その周壁28の上部に、縦通路27に連通する横通路29が穿設されたノズル30が突設されており、ノズル30の先端には吐出口26が開設されている。また、周壁28の下端部には、押しボタン25が嵌着してピストン部材10の上端を閉塞するフランジ31が形成されており、フランジ31の下面には、ピストン部材10に嵌挿する環状部32が垂設され、環状部32には筒状部11の突起11aと掛合する周溝32aが設けられている。
【0021】
肩カバー40は、その内周面の直径がピストン部材10の筒状部11の直径と同寸の略輪状に形成されており、容器本体1の口部3に嵌挿され容器本体1の周溝4と掛合する突起41aが突設された嵌挿部41と、容器本体1の口端に接するフランジ部42と、フランジ部42の上面に立設され蓋体53が嵌合する口筒部43とから成り、容器本体1からピストン部材10が抜け出すのを阻止している。また、口筒部43の外周面には、図3に示すように、内容物Nの充填作業の際に、押さえ治具の爪Gを受け入れる周溝44が刻設されている。
【0022】
この吐出容器を組み立てるには、図2に示すように、予め、押しボタン25を嵌着したピストン部材10を容器本体1の底5に至る迄挿入し、肩カバー40を容器本体1の口部3に押し込むことにより、ピストン部材10を抜け出し不能に組み付ける。
【0023】
内容物Nを充填するときは、図3に示すように、肩カバー40の周溝44に押さえ治具の爪Gを掛けて容器を押さえ、充填機のノズルKと押しボタン25のノズル30を合わせて、内容物Nを押しボタン25の吐出口26から圧入する。
【0024】
内容物Nを圧入する直前に、バキュームにより容器内を不圧に保つことが望ましく、内容物Nの圧入により、内容物Nは押しボタン25の通路29,27から軸管14の通路15を通ってピストン部材10を上昇させながら容器本体1に充填され、更に押しボタン25の吐出口26まで充填される。
【0025】
したがって、押しボタン25を押せば、直ちに内容物Nが吐出するとともに、ピストン部材10を下降させる一回の吐出操作の手加減で、所望量の内容物を吐出させることができる。
【0026】
尚、内容物Nの充填方法は上記の方法に限るものではなく、容器を組み立てる前に容器本体1に内容物Nを充填し、次にピストン部材10を組み付けてもよい。
【0027】
図4以下は、別の実施の形態を示しており、容器の基本的形態は先の実施の形態と同様であるので、共通する部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0028】
図4乃至図10は、本発明の吐出容器の第2の実施の形態を示しており、押し釦25aの内部にバルブ機構35を設け、押しボタン25aの操作に伴って吐出口26aの口元でバルブ機構35の開閉を行うことで、吐出口26aを閉塞する為の口蓋を不要としたものである。
【0029】
本実施の形態において使用される押し釦25aは、図7に示すように、バルブ機構35を内装し、ピストン部材10の軸管14に嵌着し軸管14の通路15に連通する通孔33aが穿設された基台33と、この基台33に上下方向へ摺動可能に被嵌し、内部に前記バルブ機構35に作用するカム板34aを設けたカバ体ー34とで構成されている。
【0030】
バルブ機構は35は、吐出口26aが穿孔され先端部を押し釦25aの切欠溝34bから突出して装着されたノズル36と、ノズル36の内側に前後方向へ移動可能に配置され吐出口26aをノズル36の内側から開閉する弁部材37と、弁部材37を吐出口26aの閉方向へ付勢すると共に、カム板34aが接する弁部材37後端の傾斜面37aを介してカバー体34を基台33の上方位置に保持するスプリング38とで構成されている。
【0031】
また、本実施の形態にあっては、押しボタン25aをピストン部材10の筒状部11aの内側に位置させる構成としたので、図5に示すように、筒状部11aの上端部にはノズル36が突出する切欠溝17が設けられ、組み付けられた押しボタン25aの頂部が筒状部11aの上端から僅かに突出している。
【0032】
この容器は、押しボタン25aを下方に押して、そのカバー体34をスプリング38の力に抗して押し下げると、カバー体34のカム板34aが弁部材37の傾斜面37aに摺動して下降し、弁部材37を後退させることにより、ノズル36の吐出口26aが開通してバルブ機構35が開放状態となる。また、カバー体34を手放すと、スプリング38の復帰力により弁部材37が前進移動して吐出口26aが閉鎖されると共に、カバー体34が元の位置に上昇する。
【0033】
したがって、使用者が押し釦25aのカバー体34を押すと、バルブ機構35のノズル36の吐出口26aが口元で開通し、更に押し釦25aを押すと、ピストン部材10が下降して容器本体1内の内容物Nを圧迫し、内容物Nは軸管14の通路15から押し釦25aの通孔33aを通って吐出口26aから吐出される。
【0034】
この容器にあっては、バルブ機構35により吐出口26aの口元で開閉を行うようにしたので、ノズル30の口蓋をしなくても、外気による内容物Nの乾燥や腐敗を防止することができる。
【0035】
尚、この実施の形態では、図9に示すように、肩カバー40を、篏挿部41と、フランジ部42と、口筒部43とから成る第1の実施の形態で用いた肩カバー40を用いてもよい。
【0036】
また、内容物Nを充填するときは、図10に示すように、軸管14に押しボタン25aを取付ける前に、充填機のノズルKをピストン部材10の軸管14に合わせて、軸管14の通路15から直接充填することが好ましい。
【0037】
図11乃至図13は、本発明の吐出容器の第3の実施の形態を示しており、この容器に使用するピストン部材10aは、容器本体1の内周壁2に摺動する第1摺動筒20と、前記第1摺動筒20の内周壁20aに摺動可能に第1摺動筒20にして且つ抜け出し不能に組み込まれた第2摺動筒22とで、縦方向へ伸縮可能に構成されており、第2摺動筒22の中心には、押しボタン25の吐出口26に連通する通路15を穿設した軸管14が立設されている。
【0038】
第1摺動筒20の下端には、ピストンリング16を装着した摺動部12が形成され、上端には第2摺動筒22の抜け出しを阻止する為の内向突起21が形成されている。また、第2摺動筒22の下端にもピストンリング16aが装着され、外周面には第1摺動筒20の内向突起21に当接する上向段部23が形成されている。
【0039】
この吐出容器を組み立てるには、図12に示すように、第1摺動筒20の下方から第2摺動筒22を挿入して伸縮性のピストン部材10aを組み立ててから、第2摺動筒22の上端に押しボタン25を嵌着させ、予め、押しボタン25を嵌着したピストン部材10aを容器本体1の底5に至る迄挿入し、肩カバー40aを容器本体1の口部3に外嵌することにより、収縮した状態のピストン部材10aを抜け出し不能に組み付ける。
【0040】
この吐出容器に内容物Nを充填するときは、図13に示すように、肩カバー40aの上面45に押さえ治具の爪Gを掛けて容器を押さえ、充填機のノズルKと押しボタン25のノズル30を合わせて、バキュームにより容器内を不圧にし、内容物Nを押しボタン25の吐出口26から圧入する。
【0041】
充填される内容物Nの圧力を受けて、ピストン部材10a全体が第1摺動筒20の上死点まで上昇し、更に内容物Nを圧入することにより、第2摺動筒22がその上死点まで上昇し、内容物Nは、容器本体1のみならず、第1摺動筒20から押しボタン25の吐出口26まで充填される。
【0042】
したがって、充填する内容物Nの収容スペースの効率が高く、容器が小形化される。また、押しボタン25を押すと、ピストン部材10aが収縮して、直ちに内容物Nが吐出するので、使い易いうえに携帯性に優れている。
【0043】
図14は、本発明の吐出容器の第4の実施の形態を示しており、この容器は、上述した伸縮可能なピストン部材10aに、既述した吐出口26aの口元で開閉するバルブ機構を内装した押し釦35aを嵌着して構成したものである。
【0044】
したがって、この容器は、内容物Nを容器本体1のみならず、第1摺動筒20の内部にまで充填できるので、内容物Nの収容スペースの効率が高いうえに、ノズル36を閉塞する為の口蓋が不要となり、使い勝手が向上する。また、使い切るとピストン部材が10aが容器本体1内に押し込まれるので、小さくして廃棄できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の吐出容器における第1の実施の形態を示す断面図。
【図2】図1の容器の内容物を充填する以前の状態を示す断面図。
【図3】図1の容器の内容物を充填している作業中の状態を示す断面図。
【図4】本発明の吐出容器における第2の実施の形態を、一部を断面として示す正面図。
【図5】図4の容器を示す斜視図。
【図6】図4の容器に使用される押しボタンを示す斜視図。
【図7】図6の押しボタンを拡大して示す従断面図。
【図8】図7に示す押しボタンの作動中の状態を示す縦断面図。
【図9】別の肩カバーを使用した例の説明図。
【図10】充填方法の説明図。
【図11】本発明の吐出容器における第3の実施の形態を示す断面図。
【図12】図11の容器の内容物を充填する以前の状態を示す断面図。
【図13】図11の容器の内容物を充填している作業中の状態を示す断面図。
【図14】本発明の吐出容器における第4の実施の形態を、一部を断面として示す正面図。
【符号の説明】
【0046】
1 容器本体,2 内周壁,3 口部,10、10a ピストン部材,14 軸管,15 通路,20 第1摺動筒,20a 内周壁,22 第2摺動筒,25、25a 押しボタン,26、26a 吐出口,35 バルブ機構,40 肩カバー,N 内容物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収納する有底筒状の容器本体と、中心に前記内容物が通過する通路が穿設された軸管を立設し前記容器本体の内周壁に摺動するピストン部材と、前記ピストン部材の上部に一体的に嵌着され前記通路と連通する吐出口を有する押しボタンと、前記ピストン部材を前記容器本体から抜け出し不能に前記容器本体の口部に嵌着する肩カバーと、を有して成り、前記ピストン部材の下降に伴って前記吐出口から内容物を吐出するようにしたことを特徴とする吐出容器。
【請求項2】
ピストン部材を、容器本体の内周壁に摺動する第1摺動筒と、中心に押しボタンの吐出口に連通する通路を穿設した軸管が立設され前記第1摺動筒の内周壁に摺動可能して且つ抜け出し不能に組み込まれた第2摺動筒とで伸縮可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の吐出容器。
【請求項3】
押しボタンの内部に、押しボタンの操作で吐出口の開閉を吐出口の口元で自動的に行うバルブ機構を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の吐出容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−112478(P2007−112478A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305913(P2005−305913)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000156341)釜屋化学工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】