説明

吐出液、吐出液セット、薄膜パターン形成方法、薄膜、発光素子、画像表示装置、および、電子機器

【課題】色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置を、環境への負荷を小さく提供すること、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子を環境への負荷を小さく提供すること、前記画像表示装置を備えた電子機器を提供すること、また、上記画像表示装置、発光素子等に好適に適用することができる吐出液、吐出液セット、薄膜パターン形成方法、薄膜を提供すること。
【解決手段】本発明の吐出液は、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に用いられるものであって、微粒子状の量子ドットと、量子ドットを分散させる分散媒とを含み、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出液、吐出液セット、薄膜パターン形成方法、薄膜、発光素子、画像表示装置、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に比べて、視野角特性等に優れるため、近年、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)のような、発光(自発光)材料を用いた表示装置が、注目を集めている。
しかしながら、無機エレクトロルミネッセンスでは、材料的な制約から、発光輝度、発光効率、色純度等に問題があり、十分に広い色再現域を確保するのが困難であるという問題がある。このような問題を解決する目的で、着色フィルターを付加したり、発光材料の探索が試みられている(例えば、特許文献1参照)が、着色フィルターを用いた場合には、製造工程が複雑になるばかりか、表示される画像の輝度が著しく低下する。また、各種文献で提案されている物質も、上記のような問題を十分に解決していなかったり、化学的安定性が乏しい等の問題点がある。例えば、特許文献1では、青色発光層をBaS:Eu材料とAlS材料の共蒸着により作製することを開示しているが、得られた膜に対してかなりの高温(800℃以上)で熱処理を施さないと十分な発光特性が得られず、また、共蒸着を行う上で、AlS材料の化学的な安定性が非常に乏しいことから、成膜プロセスでの生産性に問題がある。
【0003】
また、有機エレクトロルミネッセンスでは、発光材料に有機化合物を用いるため、耐久性等に問題がある。また、有機エレクトロルミネッセンスでは、無機エレクトロルミネッセンスに比べると色再現域を広くすることができるが、それでもなお、十分な色再現域を確保しているとは言えない。
また、発光素子を形成する方法としては、気相成膜法や、発光材料を含む液体を塗布する方法等が挙げられる。しかしながら、このような方法では、画像表示装置のように、多数個の微小な成膜領域を配置させるためには、成膜に先立ち、形成すべきパターンに対応するマスクで被覆する必要がある。このようなマスクは、最終的には、完全に除去されるものであり、また、発光材料やマスクの再利用も困難である。したがって、省資源の観点からも好ましくなく、環境への負荷も大きい。また、形成すべきパターン(薄膜パターン)が大型(大面積)のものである場合(表示領域の大きな画像表示装置に適用する場合)、マスクの位置精度を十分に高いものとするのが困難となるという問題点もある。
【0004】
また、発光材料を含む液体を塗布する方法を用いた場合には、以下のような問題点もある。すなわち、無機発光材料は、一般に、溶解性に劣るため、このような方法を適用する場合、均質に分散された分散液を用いる必要があるが、発光素子の形成に分散液を用いると、分散安定性の変動などにより各画素間や画素内の各部位での発光材料の濃度のばらつきを生じやすい。このような濃度のばらつきが発生すると、表示される画像に色むら等の問題が発生する。
【0005】
【特許文献1】特開2002−180038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置を、環境への負荷を小さく提供すること、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子を環境への負荷を小さく提供すること、前記画像表示装置を備えた電子機器を提供すること、また、上記画像表示装置、発光素子等に好適に適用することができる吐出液、吐出液セット、薄膜パターン形成方法、薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の吐出液は、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に用いられる吐出液であって、
微粒子状の量子ドットと、前記量子ドットを分散させる分散媒とを含み、
前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子等を環境への負荷を小さく作製するのに好適に適用することができる吐出液を提供することができる。また、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことを確実に防止することができる。
【0008】
本発明の吐出液では、吐出液中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、5.0ppm以下であることが好ましい。
これにより、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷をより小さいものとすることができる。また、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことをより確実に防止することができる。
【0009】
本発明の吐出液では、吐出液中における前記量子ドットの含有率が、0.005〜6.0wt%であることが好ましい。
これにより、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷をより小さいものとすることができる。また、吐出液中における量子ドットの分散性(分散の均一性)を十分に優れたものとすることできるとともに、吐出液の吐出時における吐出安定性、液切れを特に優れたものとすることができ、また、薄膜パターンの形成効率を特に優れたものとすることができる。また、例えば、発光素子、画像表示装置等に適用した場合、色むらの発生をより効果的に防止しつつ、画像濃度が特に高い画像を好適に表示することができる。
【0010】
本発明の吐出液では、前記分散媒が、デカリン、テトラリン、ブトキシエタノール、オクタン酸エチル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ドデカン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、および、1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであることが好ましい。
これにより、量子ドット中、吐出液中に、比較的高い濃度で、Cd、Pb、Crが含まれる場合(ただし、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量は100ppm以下)であっても、吐出液の吐出時に発生するミスト(目的とする受け面に付着せずに、雰囲気中に滞留する吐出液)の比率を、特に少ないものとすることができる。その結果、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷を特に小さいものとすることができるとともに、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことをより確実に防止することができる。また、吐出液中における量子ドットの分散性を非常に優れたものとすることができ、ノズル孔から吐出される各液滴中に含まれる量子ドットの含有率のばらつきを防止することができる。また、ノズル孔から吐出液を吐出する際に、微粒子としての量子ドットと分散媒との界面付近での分離が好適に起こり、ノズル孔からの液切れを特に優れたものとすることができるとともに、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、液滴の受け面への付着位置精度を特に優れたものとすることができる。このようなことから、例えば、吐出液を発光素子、画像表示装置に適用した場合に、各画素間や画素内の各部位での量子ドットの濃度の不本意なばらつきが防止され、表示される画像に色むら等の問題が発生するのをより効果的に防止することができる。また、上記のような優れた分散状態を長期間にわたって保持することができるため、工業用途(産業用)に求められる長期安定吐出性を、非常に優れたものとすることができ、上記のような優れた効果を長期間にわたって、安定的に発揮することができる。また、分散媒が上記のような材料で構成されたものであると、分散媒の揮発性(蒸気圧)を比較的低いものとすることができる。このため、液滴の吐出を長時間にわたって繰り返し行った場合等においても、ノズル孔付近に、吐出液の固形成分(量子ドット等)が付着してしまうのを効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の吐出液では、吐出液中における前記分散媒の含有率は、70〜98wt%であることが好ましい。
これにより、吐出液中における量子ドットの分散性(分散の均一性)を十分に優れたものとすることができるとともに、吐出液の吐出時における吐出安定性、液切れを特に優れたものとすることができ、また、薄膜パターンの形成効率を特に優れたものとすることができる。また、例えば、発光素子、画像表示装置等に適用した場合、色むらの発生をより効果的に防止しつつ、画像濃度が特に高い画像を表示することができる画像表示装置等を効率よく製造することができる。
【0012】
本発明の吐出液では、前記量子ドットは、Si、Ge、GaN、GaP、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、In、Agまたはこれらの混合物で構成されたものであることが好ましい。
これにより、環境に対する負荷を特に小さいものとすることができるとともに、作業者等の安全性を確保する上で、特に有利である。また、可視光領域で純粋なスペクトルを安定して得ることができるので、発光素子の形成に有利である。
【0013】
本発明の吐出液セットは、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に用いられる吐出液を複数種備えた吐出液セットであって、
前記吐出液は、微粒子状の量子ドットと、前記量子ドットを分散させる分散媒とを含むものであり、
前記量子ドットの粒径が、前記吐出液間で異なるものであり、かつ、
複数種の前記吐出液のそれぞれにおいて、前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子等を環境への負荷を小さく作製するのに好適に適用することができる吐出液セットを提供することができる。また、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことを確実に防止することができる。
【0014】
本発明の薄膜パターン形成方法は、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、分散媒と微粒子状の量子ドットとを含み、前記量子ドットが前記分散媒中に分散してなる吐出液を吐出し、受け面に所定パターンで付着させる吐出工程と、
前記受け面に付着した前記吐出液から前記分散媒の少なくとも一部を除去する分散媒除去工程とを有し、
前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子等を環境への負荷を小さく作製するのに好適に適用することができる薄膜パターン形成方法を提供することができる。また、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことを確実に防止することができる。
【0015】
また、ノズル孔から吐出液(分散液)の液滴を吐出する際に、低濃度で互いに干渉しあうことなく均一に分散した微粒子としての量子ドットの分散液は粘弾性を低く抑えることが可能であり、量子ドットと分散媒との界面付近での分離が好適に起こるため、ノズル孔からの液切れがよく、吐出される液滴量のばらつきを防止することができ、また、液滴の飛行曲がりを確実に防止することができ、ノズル孔から液切れした液滴が速やかに球形状となる。このため、受け面の所望の部位に、所望の量の吐出液を付着させることができる。その結果、形成される薄膜の各部位での量子ドットの付着量の不本意なばらつきを防止することができる。したがって、薄膜パターン形成方法を発光素子、画像表示装置に適用した場合に、発光時における各部位での不本意な輝度のばらつきが発生してしまうのを好適に防止することができる。
【0016】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、前記液滴吐出法は、インクジェット法であることが好ましい。
これにより、ノズル孔からの液切れを特に優れたものとすることができるとともに、飛行曲がりの発生をより確実に防止することができる。その結果、受け面への吐出液(分散液)の付着量、付着位置の制御をより精確に行うことができる。また、いわゆるバブルジェット法(「バブルジェット」は登録商標)等に比べて、吐出液の吐出時に発生するミスト(目的とする受け面に付着せずに、雰囲気中に滞留する吐出液)の比率を、特に少ないものとすることができる。その結果、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷を特に小さいものとすることができるとともに、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことをより確実に防止することができる。
【0017】
本発明の薄膜パターンの形成方法では、異なる粒径の前記量子ドットを含む複数種の前記吐出液を用いることが好ましい。
これにより、例えば、色再現域が特に広く、耐久性に優れる発光素子、画像表示装置を好適に製造することができる。
本発明の薄膜パターン形成方法では、前記吐出液を、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出することが好ましい。
このように、液滴吐出法により、液体を、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する場合、1滴あたりの吐出液の吐出量を十分に小さくする必要があり、ミストがより発生しやすくなるが、発明において、吐出液は、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が所定値以下のものであるため、液滴吐出時において不可避的に発生するミストによる悪影響が効果的に防止される。また、液滴吐出法により、液体を、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する場合、一般には、複数個の微小単位が結合し、比較的大きな液溜りを形成してしまったり、吐出した液滴が、目的とする微小単位を形成すべき部位ではなく、隣接する微小単位を形成すべき部位に付着してしまう等の問題を生じやすく、目的のパターンを形成するのが困難であるが、上述したような量子ドットを含む分散液では、このような問題を生じにくい。すなわち、分散液を複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する方法に、本発明を適用した場合、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0018】
本発明の薄膜は、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が100ppm以下の量子ドットと、当該量子ドットを分散させる分散媒とを含む分散液を吐出して、吐出された前記分散液から前記分散媒の少なくとも一部を除去して得られたことを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子等に好適に適用することができる吐出液を提供することができる。
【0019】
本発明の発光素子は、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が100ppm以下の量子ドットと、当該量子ドットを分散させる分散媒とを含む分散液を吐出して、吐出された前記分散液から前記分散媒の少なくとも一部を除去して得られた発光層を有することを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子を提供することができる。
【0020】
本発明の画像表示装置は、本発明の発光素子を備えたことを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を表示することができ、かつ、耐久性に優れる画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、色むらの発生が防止され、色再現域の広い、優れた画像を、長期間にわたって安定的に表示することができる電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《吐出液(分散液)》
まず、薄膜パターンの形成に用いられる吐出液(分散液)について説明する。
本発明において、吐出液(分散液)は、分散媒と微粒子状の量子ドットとを含み、量子ドットが分散媒中に分散してなるものであり、特に、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に供されるものである。
【0022】
<量子ドット(微粒子)>
量子ドットは、半導体材料の結晶で構成され、その粒径が数nm〜数十nm程度(より具体的には、2〜20nm)の微粒子である。
このような微粒子のエネルギー準位Eは、一般に、プランク定数をh、電子の有効質量をm、微粒子の半径をRとしたとき、下記式(I)で表現することができる。
【0023】
E∝h/mR・・・(I)
上記式で示されるように、微粒子のバンドギャップは、R−2に比例して大きくなる(いわゆる、量子ドット効果)。このように、微粒子(量子ドット)の粒径を制御、規定することによって、微粒子(量子ドット)のバンドギャップの値を制御することができる。すなわち、微粒子の粒径を制御、規定することにより、微粒子を擬似的な半導体原子(人工原子、デザイナー原子)として機能させることができるとともに、通常の原子には無い多様性を持たせることができる。このようなことから、量子ドット(微粒子)に対して、電気的なエネルギーを付与することにより所望の波長で発光させたり、入射した光(例えば、紫外線)を、所望の波長の光に変調して出射させたりすることができる。また、量子ドット(微粒子)に所定の波長の光を入射することにより、電気エネルギーを取り出すこともできる。したがって、量子ドットを含む吐出液(分散液)を用いて形成されるパターン(薄膜パターン)は、例えば、画像表示装置の発光素子や、太陽電池等の用途に好適に適用することができる。
【0024】
上記のように、量子ドットは、一般に、その粒径が数nm〜数十nm程度(より具体的には、2〜20nm)の微粒子であるが、本発明者は、このような微粒子を含む分散液(特に、後述するような分散媒に、量子ドットが分散した分散液)を、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に適用した場合に、低濃度で互いに干渉しあうことなく均一に分散した微粒子としての量子ドットの分散液は粘弾性を低く抑えることが可能であり、量子ドットと分散媒と界面付近での分離が好適に起こることを見出した。そして、さらに、液滴吐出時におけるノズル孔からの液切れがよくなり、吐出される液滴量のばらつきを防止することができ、また、液滴の飛行曲がりを確実に防止することができることができ、ノズル孔から液切れした液滴が速やかに球形状となるため、液滴が付着する受け面への付着位置精度が優れたものになることを見出した。このような効果は、上記のような量子ドットを含まない液体を用いた場合には得られない。すなわち、液滴吐出法に供される液体が、分散質を含まない溶液である場合には、ノズル孔から吐出される液滴の液切れが不均一になりやすいため、各液滴での重量のばらつきが大きくなりやすく、また、液滴の付着位置精度も低いものとなる。一方、液滴吐出法に供される液体(吐出液)が上記以上の大きさの分散質が分散した分散液である場合には、ノズル孔から吐出される各液滴での重量のばらつきが特に大きくなりやすい。
【0025】
量子ドットの粒径は、上述したように、数nm〜数十nm程度であるが、吐出液(分散液)を、後述するような発光素子、表示部を有する画像表示装置に用いる場合、目的とする表示色に対応する粒径とする。例えば、吐出液(分散液)を赤色表示を行う発光素子、表示部に適用する場合、量子ドットの粒径は、3〜20nmであるのが好ましく、吐出液(分散液)を緑色表示を行う発光素子、表示部に適用する場合、量子ドットの粒径は、1〜10nmであるのが好ましく、吐出液(分散液)を青色表示を行う発光素子、表示部に適用する場合、量子ドットの粒径は、1〜3nmであるのが好ましい。なお、量子ドットを、例えば、後述するような方法により製造した場合、得られる量子ドットの粒度分布を非常にシャープなものとすることができる。これにより、例えば、吐出液を、画像表示装置等に適用した場合、鮮明な画像を好適に表示することができる。
【0026】
上述したように、本発明において、吐出液(分散液)は、分散媒と微粒子状の量子ドットとを含み、量子ドットが分散媒中に分散してなるものであり、特に、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に供されるものである。このような液滴吐出法においては、吐出液のミスト(目的とする受け面に付着せずに、雰囲気中に滞留する吐出液)が不可避的に発生する。一方、従来、量子ドットとしては、発光の効率や粒子の安定性を考慮すると、構成成分として、Cd、Pb、Crを含むものが用いられてきたり、不純物として、Cd、Pb、Crが含まれるものが用いられてきた(従来の量子ドットでは、Cd、Pb、Crを実質的に完全に除去することが極めて困難(実質的に不可能)であった)。そして、Cd、Pb、Crが量子ドット中に含まれると、吐出液のミストが発生した際に、Cd、Pb、Crが雰囲気中に滞留、拡散してしまうことになる。Cd、Pb、Crは、環境に対して大きな負荷を与えるとともに、人体に対する悪影響(特に、Cd、Pb、Crを吸い込んだ際における呼吸器官等への悪影響)が懸念される元素である。
【0027】
そして、本発明者は、鋭意研究を行った結果、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が100ppm以下であると、液滴吐出に伴って発生するミスト中に含まれるCd、Pb、Crの総量は、十分低いものであるのに対し、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が100ppmを超えると、液滴吐出に伴って発生するミスト中に含まれるCd、Pb、Crの総量が、急激に増大することを見出した。すなわち、本発明者は、液滴吐出に伴って発生するミスト中に含まれるCd、Pb、Crの総量が急激に増大する際の、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量についての臨界性(臨界点)を見出した。したがって、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量を100ppm以下とすることにより、上記のような環境への負荷を小さいものとすることができ、また、人体等への悪影響の発生等を確実に防止することができる。
このような臨界性が認められるのは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0028】
すなわち、特殊な粒子径の量子ドットを含む分散液(吐出液)においては、一般的な分散液、溶液とは異なり、液滴吐出の際に、上述したような量子ドット(分散質)と分散媒と界面付近での分離が好適に起こるが、量子ドット中に含まれるCd、Pb、Crの含有率によって、分散媒中に溶出するCd、Pb、Crの量およびそれに起因する平均粒径バラツキや分散を安定化させるために添加する分散剤の量が異なり、これが、液滴吐出時における吐出液の液切れの挙動等にも影響を及ぼしているものと考えられる。そして、分散媒中に溶出するCd、Pb、Crの量や粒径のバラツキ、分散剤の量によって、液滴吐出時に不可避的に発生するミストの大きさ、総量、ミスト中に含まれる量子ドットの比率等が変化するものであると考えられる。すなわち、大型のミストは大気中で比較的早く沈降し大気を浮遊する時間が短いのに対して、あるサイズ以下のミストでは長時間浮遊することが可能となり、微少なミストが大量に発生する。
【0029】
このように、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が高いと、含有率が低い場合に比べて、分散媒中に溶出するCd、Pb、Crの量が増えるとともに、液滴吐出時に不可避的に発生するミストの大きさ、総量、ミスト中に含まれる量子ドットの比率等も変化するため、上記のような臨界性が発現するものと思われる。
上記のように、本発明においては、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量は、100ppm以下であればよいが、70ppm以下であるのが好ましく、50ppm以下であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果はより顕著に発揮される。
【0030】
量子ドットの構成材料としては、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO)、硫化錫(II,IV)(Sn(II)Sn(IV)S)、硫化錫(IV)(SnS)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al)、セレン化アルミニウム(AlSe)、硫化ガリウム(Ga)、セレン化ガリウム(GaSe)、テルル化ガリウム(GaTe)、酸化インジウム(In)、硫化インジウム(In)、セレン化インジウム(InSe)、テルル化インジウム(InTe)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII−VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As)、セレン化砒素(III)(AsSe)、テルル化砒素(III)(AsTe)、硫化アンチモン(III)(Sb)、セレン化アンチモン(III)(SbSe)、テルル化アンチモン(III)(SbTe)、硫化ビスマス(III)(Bi)、セレン化ビスマス(III)(BiSe)、テルル化ビスマス(III)(BiTe)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(CuO)、セレン化銅(I)(CuSe)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、硫化銀(AgS)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS)、酸化タングステン(IV)(WO)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO)、酸化タンタル(V)(Ta)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO、Ti、Ti、Ti等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、バリウムチタネート(BaTiO)等が挙げられるが、SnS、SnS、SnSe、SnTe等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb等のIII−V族化合物半導体、Ga、Ga、GaSe、GaTe、In、In、InSe、InTe等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe等のII−VI族化合物半導体、As、As、AsSe、AsTe、Sb、Sb、SbSe、SbTe、Bi、Bi、BiSe、BiTe等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物が好ましく、中でも、Si、Ge、GaN、GaP、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、In、Agがより好ましい。このような物質で構成された量子ドットを用いることにより、環境に対する負荷を特に小さいものとすることができるとともに、作業者等の安全性を確実により確保することができる。また、可視光領域で純粋なスペクトルを安定して得ることができるので、発光素子の形成に有利である。また、量子ドットが上記のような構成材料で構成されたものであると、後述するような方法で、量子ドットを製造した際におけるCd、Pb、Crの含有率を、容易かつ確実に低いものとすることができる。また、中でも、環境に対する負荷の小ささ、人体への安全性等の観点からは、InP、ZnO、ZnSがさらに好ましく、さらに、高屈折率、安全性、原料の経済性等の点で優れていることから、ZnSが最も好ましい。また、ZnSeは、発光の安定性の点で好ましい。また、上述した材料は、1種で用いるものであってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
吐出液(分散液)中における量子ドットの含有率は、特に限定されないが、0.005〜6.0wt%であるのが好ましく、0.05〜5.0wt%であるのがより好ましい。量子ドットの含有率が前記範囲内の値であると、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷をより小さいものとすることができる。また、吐出液中における量子ドットの分散性(分散の均一性)を十分に優れたものとすることできるとともに、吐出液(分散液)の吐出時における吐出安定性、液切れを特に優れたものとすることができ、また、薄膜パターンの形成効率を特に優れたものとすることができる。また、例えば、発光素子、画像表示装置等に適用した場合、色むらの発生をより効果的に防止しつつ、画像濃度が特に高い画像を好適に表示することができる。特に、量子ドットが上述したような材料で構成されたものである場合において、吐出液(分散液)中における量子ドットの含有率が前記範囲内の値であると、吐出液(分散液)中におけるCd、Pb、Crの含有率を特に低いものとすることができるため、上記のような環境への負荷をより小さいものとすることができ、また、人体等への悪影響の発生等をより確実に防止することができる。
【0032】
また、量子ドットは、粒子全体が均一な組成を有するものであってもよいし、各部位で組成の異なるものであってもよい。例えば、量子ドットは、コア領域と、当該コア領域の外周を被覆し、前記コア領域とは異なる組成のシェル領域とを有するもの(コア−シェル構造を有するもの)であってもよい。これにより、例えば、量子ドットの発光効率を優れたものとしつつ、吐出液中における量子ドットの分散安定性を特に優れたものとすることができたり、発光の安定性を向上させたりすることができる。
【0033】
<被膜>
吐出液(分散液)中において、量子ドットの表面は、不活性な無機物の被覆層または有機配位子で構成された被膜で被覆されたものであってもよい。これにより、吐出液(分散液)中における量子ドットの凝集を効果的に防止することができ、量子ドットの分散性を向上させることができるとともに、液滴吐出時における液切れが特に優れたものとなる。また、被覆層の存在により安定的に光吸収や発光特性が得られる。また、量子ドットが被膜で被覆されていることにより、量子ドットが比較的高い濃度で、Cd、Pb、Crを含むもの(ただし、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量は100ppm以下)であっても、量子ドットからのCd、Pb、Crの溶出、拡散等を防止することができる。これにより、例えば、量子ドットが人体内に取り込まれた場合であっても、Cd、Pb、Crによる人体への悪影響の発現をより確実に防止することができる。
【0034】
また、量子ドットの表面が被膜で被覆されていると、後述するような分散剤を量子ドットの表面付近に確実に担持させることができる。これに対し、量子ドットが被膜で被覆されていないと、分散剤を量子ドットの表面に確実に付着させるのが困難となる。
被膜の厚さは、特に限定されないが、0.1〜10nmであるのが好ましく、0.1〜5nmであるのがより好ましい。一般に、量子ドットのサイズにより発光色が制御でき、被膜の厚さが前記範囲内の値であると、被膜の厚みが量子ドット1個分程度であり、薄膜パターン形成時における欠陥(抜け等)を防ぎつつ十分な発光量が得られる。また、被膜の厚さが前記範囲内の値であると、量子ドットからのCd、Pb、Crの溶出、拡散等を防止することができ、上述したような問題の発生をより確実に防止することができる。また、被膜の存在によりお互いの粒子の粒子表面に存在するフリーの電子による非発光の電子エネルギーの転移を抑制でき、量子効率の低下を抑えることができる。
【0035】
<分散剤>
吐出液(分散液)中において、量子ドットの表面付近には、分散剤が付着しているのが好ましい。これにより、吐出液(分散液)中における量子ドットの分散性を特に優れたものとすることができるとともに、液滴吐出時における液切れが特に優れたものとなる。また、量子ドット(微粒子)の製造時において量子ドットの表面に分散剤を付着させることにより、形成される量子ドットの形状を真球度の高いものとし、また、量子ドットの粒度分布をシャープなものとすることができるため、例えば、吐出液(分散液)を画像表示装置の発光素子、表示素子の形成に適用した場合において、画像表示装置に表示される画像の画質を特に優れたものとすることができる。
分散剤は、量子ドットの表面に直接付着したものであってもよいし、被膜を介して付着したもの(分散剤が直接付着するのは被膜で、量子ドットには接触していないもの)であってもよい。
【0036】
分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;トリフェニルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン(TOP)等のトリアルキルホスフィン類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;トリ(n−ヘキシル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン、トリ(n−デシル)アミン等の第3級アミン類;トリプロピルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリデシルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルホスフィンオキシド等の有機リン化合物;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ピリジン、ルチジン、コリジン、キノリン類の含窒素芳香族化合物等の有機窒素化合物;ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等のアミノアルカン類;ジブチルスルフィド等のジアルキルスルフィド類;ジメチルスルホキシドやジブチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド類;チオフェン等の含硫黄芳香族化合物等の有機硫黄化合物;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;アルコール類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類等が挙げられるが、量子ドットが後述するような方法で調製されるものである場合、分散剤は、高温液相において微粒子に配位して安定化する物質であるのが好ましく、具体的には、トリアルキルホスフィン類、有機リン化合物、アミノアルカン類、第3級アミン類、有機窒素化合物、ジアルキルスルフィド類、ジアルキルスルホキシド類、有機硫黄化合物、高級脂肪酸、アルコール類が好ましい。このような分散剤を用いることにより、吐出液(分散液)中における量子ドットの分散性を特に優れたものとしたり、吐出液(分散液)の吐出安定性を特に優れたものとすることができたり、量子ドットの製造時において形成される量子ドットの形状をより真球度の高いものとし、量子ドットの粒度分布をよりシャープなものとすることができる。
【0037】
<分散媒>
上述したように、吐出液(分散液)中において、量子ドット(より好適には、分散剤が付着した量子ドット)は、分散媒中に分散している。
通常、分散媒は、後述するような薄膜を製造する過程において、その大部分が除去されるものである。
【0038】
分散媒としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、(1)多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)の縮合物としてのエーテル(多価アルコールエーテル)や、多価アルコールまたは多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、(2)多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、(3)分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、(4)多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステル、(5)炭素数が12以上の炭化水素が好ましい。分散媒として用いることのできる具体的な化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、メチルプロピレントリグリコール、ブトキシプロパノール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、ドデカン、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラデカン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン(デカヒドロナフタレン)、テトラリン、ブトキシエタノール等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、分散媒としては、テトラデカン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、テトラリン、ブトキシエタノール、オクタン酸エチル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ドデカン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、および、1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。分散媒がこのような材料で構成されたものであると、分散液(吐出液)中における量子ドット(特に、分散剤が付着した量子ドット)の分散性を非常に優れたものとすることができ、ノズル孔から吐出される各液滴中に含まれる量子ドットの含有率のばらつきを防止することができる。また、ノズル孔から吐出液(分散液)を吐出する際に、微粒子としての量子ドットと分散媒との界面付近での分離が好適に起こり、ノズル孔からの液切れを特に優れたものとすることができるとともに、液滴の飛行曲がりをより確実に防止することができ、液滴の受け面への付着位置精度を特に優れたものとすることができる。このようなことから、例えば、吐出液を発光素子、画像表示装置に適用した場合に、各画素間や画素内の各部位での量子ドットの濃度の不本意なばらつきが防止され、表示される画像に色むら等の問題が発生するのを効果的に防止することができる。また、上記のような優れた分散状態を長期間にわたって保持することができるため、工業用途(産業用)に求められる長期安定吐出性を、非常に優れたものとすることができ、上記のような優れた効果を長期間にわたって、安定的に発揮することができる。また、分散媒が上記のような材料で構成されたものであると、分散媒の揮発性(蒸気圧)を比較的低いもの(分散媒の沸点を比較的高いもの)のとすることができる。このため、液滴の吐出を長時間にわたって繰り返し行った場合等においても、ノズル孔付近に、吐出液の固形成分(量子ドット等)が付着してしまうのを効果的に防止することができる。また、分散媒が上記のような材料で構成されたものであると、液滴吐出時におけるミストの発生そのものが抑制され、また、ミストが発生した場合であっても、ミストの乾燥が緩やかに進行するため比較的速やかに落下し、雰囲気中に長時間滞留しにくい。このため、上記のような環境への負荷をより小さいものとすることができ、また、人体等への悪影響の発生等をより確実に防止することができる。また、量子ドットが、比較的高い濃度で、Cd、Pb、Crを含む場合(ただし、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量は100ppm以下)であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。
【0039】
分散媒の大気圧(1気圧)下における沸点は、150〜280℃であるのが好ましく、170〜270℃であるのがより好ましく、180〜260℃であるのがさらに好ましい。分散媒の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、吐出液(分散液)を吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、薄膜パターンの形成の効率を特に優れたものとすることができる。
また、分散媒の25℃における蒸気圧は、0.1mmHg以下であるのが好ましく、0.05mmHg以下であるのがより好ましい。分散媒の蒸気圧が前記範囲内と値であると、吐出液(分散液)を吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、薄膜パターンの形成の効率を特に優れたものとすることができる。
【0040】
吐出液(分散液)中における分散媒の含有率は、特に限定されないが、70〜98wt%であるのが好ましく、80〜95wt%であるのがより好ましい。分散媒の含有率が前記範囲内の値であると、吐出液中における量子ドットの分散性(分散の均一性)を十分に優れたものとすることできるとともに、吐出液の吐出時における吐出安定性、液切れを特に優れたものとすることができ、また、薄膜パターンの形成効率を特に優れたものとすることができる。また、例えば、発光素子、画像表示装置等に適用した場合、色むらの発生をより効果的に防止しつつ、画像濃度が特に高い画像を表示することができる画像表示装置等を効率よく製造することができる。また、分散媒が、上述したような材料で構成されたものである場合において、分散媒の含有率が前記範囲内の値であると、液滴吐出時において、ミストの発生をより効果的に抑制することができ、また、ミストが長時間にわたって雰囲気中に滞留するのを効果的に防止することができるため、上記のような環境への負荷をより小さいものとすることができ、また、人体等への悪影響の発生等をより確実に防止することができる。
【0041】
<酸化防止剤>
吐出液(分散液)は、非常に粒径が小さな量子ドットの酸化と、それによる分散性の崩壊・凝集を防ぐために酸化防止剤を成分として含むのが好ましい。これにより、吐出液(分散液)中における量子ドットの分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、液滴吐出時における液切れが安定する。酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン酸系、ヒンダードアミン化合物があげられ、単独または2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
フェノール系酸化防止剤としては、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、dl−α−トコフェロール、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス−(3,5,−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イシアヌレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、4,4’−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、2−(1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル)−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、6−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ)−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ(d,f)(1,3,2)ジオキサホスフェピン等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2以上を混合して用いても良い。
【0043】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(竈−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールの竈−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2以上を混合して用いても良い。
【0044】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2以上を混合して用いても良い。
【0045】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2以上を混合して用いても良い。
前記酸化防止剤の分散液100重量部に対する含有量は、10〜20000ppmであるのが好ましく、20〜15000ppmであるのがより好ましく、30〜10000ppmであるのがさらに好ましく、50〜6000ppmであるのがもっとも好ましい。
【0046】
<その他の成分>
吐出液(分散液)は、必要に応じて、種々の他の成分を含むものであってもよい。このような成分(他の添加剤)としては、例えば、各種架橋剤;各種重合開始剤;銅フタロシアニン誘導体等の青色顔料誘導体や黄色顔料誘導体等の分散助剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフロロアルキルアクリレート等の高分子化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤;メタノール、エタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、グリセリン等の吐出性能安定化剤;以下商品名で、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、新秋田化成(株)製)、メガファックF171、同F172、同F173、同F178K(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子(株)製)、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社油脂化学工業(株)製)等の界面活性剤等が挙げられる。
【0047】
上記のような吐出液(分散液)中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量は、5.0ppm以下であるのが好ましく、3.0ppmであるのがより好ましく、2.0ppm以下であるのがさらに好ましい。これにより、上述したような問題の発生をより確実に防止することができる。すなわち、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷をより小さいものとすることができ、また、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことをより確実に防止することができる。
【0048】
また、上記のような吐出液(分散液)の25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、3〜15mPa・sであるのが好ましく、5〜10mPa・sであるのがより好ましい。吐出液(分散液)の粘度が前記範囲内の値であると、後述するような液滴吐出において、吐出される吐出液(分散液)の液滴量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、吐出液(分散液)の粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0049】
上記のような吐出液(分散液)は、例えば、以下のようにして調製することができる。
上述したような本発明の吐出液(分散液)は、量子ドットが大気中の酸素や水分により劣化することを避けるために、酸素や水分を除去した環境で保存されるものであるのがこのましい。
すなわち、XY型の化合物(ただし、Xは金属原子、Yは非金属原子)で構成された量子ドットを含む吐出液(分散液)は、例えば、以下のようにして調製することができる。
【0050】
まず、酸素および水分が系内に混入するのが防止された条件で、金属原子Xを構成原子として含有する化合物(原料化合物)と、非金属原子Yを構成原子として含有する化合物(原料化合物)とを含む溶液(第1の液体)を用意するとともに、上述したような分散剤(表面修飾剤)を含む液体(第2の液体)を用意する。このように、金属原子Xを構成原子として含有する化合物(原料化合物)と、非金属原子Yを構成原子として含有する化合物(原料化合物)とを用いることにより、化合物XYの合成に先立って、原料化合物の精製を好適に行うことができ、調製される吐出液(分散液)にCd、Pb、Crが混入することが確実に防止される。
InPで構成された量子ドットを調製する場合(XがInであり、YがPである場合)、原料化合物としては、例えば、塩化インジウム(InCl)および、トリスジメチルアミノホスフィン(P(NMe)を好適に用いることができる。また、分散剤(表面修飾剤)としては、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリ−tert−ブチルホスフィン等を好適に用いることができる。特に、これらから選択される2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、量子ドットの粒径を容易かつ確実に所望の大きさに調整することができ、量子ドットからの出射光の波長を、容易かつ確実に、所望の値とすることができる。また、吐出液中における量子ドットの安定性を特に優れたものとすることができる。
【0051】
次に、第1の液体と第2の液体とを、加熱しつつ混合することにより、反応を進行させる。
このときの加熱温度は、特に限定されないが、100〜400℃であるのが好ましく、150〜350℃であるのがより好ましい。
次に、上記の反応液を冷却し、有機溶媒(有機溶剤)を添加することにより、化合物XYを不溶物(量子ドット)として析出させる。
【0052】
このときに用いる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒(溶剤)や、メタノール、エタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒(溶剤)等が挙げられるが、炭化水素系溶媒とアルコール系溶媒とを組み合わせて用いるのが好ましく、キシレンとメタノールと1−ブタノールとを組み合わせて用いるのが好ましい。これにより、粒度分布が非常にシャープな量子ドットを、容易かつ確実に得ることができる。
【0053】
次に、遠心分離し、デカンテーション、真空乾燥等を行うことにより、化合物XYで構成された量子ドットが得られる。
なお、必要に応じて、量子ドットの洗浄を行ってもよい。
その後、得られた量子ドットを分散媒中に分散させることにより、目的の吐出液(分散液)を得ることができる。
【0054】
また、量子ドットをコア−シェル構造を有するものとして調製する場合、上記のようにして得られた粒子(上記の説明では量子ドットとして説明している粒子)が核(芯部、コア領域)となるようにして、その表面に外殻(シェル領域)を形成すればよい。より具体的な例として、ZnSで構成されたシェル領域を形成する方法について以下に説明する。
まず、酸素および水分が系内に混入するのが防止された条件で、上記のようにして調製された粒子(コア領域となるべき粒子)と分散剤(表面修飾剤)とを含む液体(第3の液体)、および、ジエチル亜鉛とビス(トリメチルシリル)スルフィドと分散剤(表面修飾剤)とを含む液体(第4の液体)を、それぞれ用意する。
【0055】
次に、第3の液体と第4の液体とを加熱しつつ混合し、その後冷却し、さらに有機溶媒(有機溶剤)を添加する。このときの加熱温度は、特に限定されないが、80〜300℃であるのが好ましく、90〜220℃であるのがより好ましい。また、有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒(溶剤)や、メタノール、エタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒(溶剤)等が挙げられるが、メタノールを用いるのが好ましい。これにより、粒度分布が非常にシャープで、シェル領域の厚さのばらつきの小さい量子ドットを、容易かつ確実に得ることができる。
その後、遠心分離し、デカンテーション、真空乾燥等を行うことにより、コア−シェル構造を有する量子ドットが得られる。
なお、必要に応じて、コア−シェル構造の量子ドットの洗浄を行ってもよい。
【0056】
《吐出液セット》
次に、上述したような吐出液を、複数種備える吐出液セット(分散液セット)について説明する。吐出液セットを構成する各吐出液(分散液)に含まれる量子ドットは、互いに異なる粒径を有するものである。より具体的には、吐出液セットとしては、例えば、所定の粒径の第1の量子ドットを含む第1の吐出液(第1の分散液)と、第1の量子ドットよりも大きい粒径の第2の量子ドットを含む第2の吐出液(第2の分散液)と、第1の量子ドットよりも大きく、第2の量子ドットよりも小さい粒径の第3の量子ドットを含む第3の吐出液(第3の分散液)とを備えるものとすることができる。このような場合、例えば、第1の量子ドットは、電圧の印加(電子と正孔との結合)や紫外線の照射等により青色に発光するものであり、第2の量子ドットは、電圧の印加(電子と正孔との結合)や紫外線の照射等により赤色に発光するものであり、第3の量子ドットは、電圧の印加(電子と正孔との結合)や紫外線の照射等により緑色に発光するものである。
【0057】
このような吐出液セットを用いることにより、色再現域が特に広く、高輝度な画像を表示することができる画像表示装置等に好適に適用することができる。
なお、吐出液セットを構成する各吐出液(分散液)は、量子ドットの粒径以外の条件は、互いに、同一であってもよいし、異なるものであってもよい。より具体的には、吐出液セットを構成する各吐出液(分散液)は、量子ドットの含有率や、分散媒の含有率、組成等が同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0058】
《薄膜パターン形成方法》
次に、上述したような吐出液(吐出液セット)を用いた薄膜パターン形成方法について説明する。
本発明の薄膜パターン形成方法は、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、上記のような吐出液(分散液)を吐出し、受け面に所定パターンで付着させる工程(吐出工程)と、受け面に付着した吐出液(分散液)から分散媒の少なくとも一部を除去する工程(分散媒除去工程)とを有する。
【0059】
本発明の薄膜パターン形成方法は、量子ドットが大気中の酸素や水分により劣化することを避けるために、酸素や水分を除去した環境において行うことが望ましい。このとき、吐出液(分散液)が晒される雰囲気中における酸素濃度は500ppm以下であるのが好ましく、200ppm以下であるのがより好ましく、50ppm以下であるのがさらに好ましい。このように、雰囲気中の酸素濃度が十分に低いものであると、量子ドットの劣化をより効果的に防止することができる。
【0060】
<吐出工程>
本工程では、上述したような吐出液(分散液)を、液滴吐出法により吐出する。上記のように、本発明において、吐出液は、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が所定値以下のものである。このため、液滴吐出時において不可避的に発生するミストによる悪影響が効果的に防止される。
【0061】
液滴吐出法としては、ノズル孔から吐出液(分散液)の液滴を間欠的に吐出することができる方法であれば、特に限定されないが、例えば、「圧電パルスによりヘッド部のノズル孔から分散液を間欠的に吐出する方法(いわゆる「インクジェット法」)」や、「気体の体積変化によりヘッド部のノズル孔から分散液を間欠的に吐出する方法(いわゆる「バブルジェット法」)」等が挙げられる。中でも、液滴吐出法としては、インクジェット法が好ましい。液滴吐出法としてインクジェット法を用いることにより、吐出液が上述するような成分で構成された分散媒を含むものであることによる効果が顕著に発揮され、液滴吐出時におけるノズル孔からの吐出液(分散液)の液切れを特に優れたものとすることができるとともに、飛行曲がりの発生をより確実に防止することができる。その結果、受け面への分散液の付着量、付着位置の制御をより精確に行うことができる。また、いわゆるバブルジェット法等に比べて、吐出液の吐出時に発生するミスト(目的とする受け面に付着せずに、雰囲気中に滞留する吐出液)の比率を、特に少ないものとすることができる。その結果、発光素子、画像表示装置等を作製する際における、環境への負荷を特に小さいものとすることができるとともに、画像表示装置、発光素子等の作製時に、作業者等に対して、健康面での悪影響を与えてしまうことをより確実に防止することができる。
【0062】
吐出液(分散液)の液滴吐出は、シリコン材料で構成された液滴吐出ヘッドを用いて行うのが好ましい。これにより、量子ドットのヘッド内部への付着を低く抑えることが可能である。
また、本工程では、嫌気性環境下、より具体的には、乾燥した不活性ガス(例えば、N、He、Ne、Ar等)雰囲気下で、吐出液(分散液)の液滴吐出を行うのが好ましい。これにより、量子ドットが酸素や水分により劣化することが確実に防止され、形成される薄膜の信頼性を特に優れたものとすることができる。
本工程においては、吐出液(分散液)を、形成すべき薄膜に対応するパターンで吐出するが、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出するのが好ましい。
【0063】
このように、液滴吐出法により、液体を、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する場合、1滴あたりの吐出液の吐出量を十分に小さくする必要があり、ミストがより発生しやすくなるが、上記のように、本発明において、吐出液は、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が所定値以下のものであるため、液滴吐出時において不可避的に発生するミストによる悪影響が効果的に防止される。また、液滴吐出法により、液体を、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する場合、一般には、複数個の微小単位が結合し、比較的大きな液溜りを形成してしまったり、吐出した液滴が、目的とする微小単位を形成すべき部位ではなく、隣接する微小単位を形成すべき部位に付着してしまう等の問題を生じやすく、目的のパターンを形成するのが困難であるが、上述したような量子ドットを含む分散液では、このような問題を生じにくい。すなわち、分散液を複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する方法に、本発明を適用した場合、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0064】
<分散媒除去工程>
受け面に付着した吐出液(分散媒)から、分散媒の少なくとも一部を除去する方法は、特に限定されないが、例えば、吐出液(分散液)が付着したワークを加熱する方法、吐出液(分散液)が付着したワークを減圧雰囲気下に置く方法、これらを組み合わせた方法(例えば、第1の温度で、減圧雰囲気下に吐出液(分散液)が付着したワークを減圧雰囲気下に置いた後、雰囲気を大気圧に戻し、大気圧下で加熱する方法等)等が挙げられる。このとき、非常に粒径の小さな量子ドットが大気中の酸素や水分により劣化することを避けるために、酸素や水分を除去しながら減圧雰囲気下で分散媒を除去することがさらに効果的である。
【0065】
本工程での処理温度(加熱温度)は、分散媒の組成等にもよるが、50〜300℃であるのが好ましく、100〜200℃であるのがより好ましい。
本工程での雰囲気中における酸素濃度は、500ppm以下であるのが好ましく、200ppm以下であるのがより好ましく、50ppm以下であるのがさらに好ましい。このように、雰囲気中の酸素濃度が十分に低いものであると、量子ドットの劣化をより効果的に防止することができる。
分散媒除去工程を行うことにより、目的とする薄膜パターンが得られる。すなわち、本発明では、上記のように液滴吐出を行うため、分散媒除去工程後に、形成された薄膜に対するパターニング等の後処理を行う必要がない。
【0066】
《薄膜》
上記のような工程を経て、本発明の薄膜が得られる。このようにして得られる薄膜は、液滴の吐出パターンに対応する形状を有するものである。
本発明の薄膜は、その用途により異なるが、一般に、その厚さが、10〜700nmであるのが好ましく、20〜500nmであるのがより好ましい。
本発明の薄膜は、いかなる用途のものであってもよく、例えば、発光素子、画像表示装置を構成する発光層や、太陽電池、照明装置等に好適に適用することができる。
以下、本発明の薄膜、薄膜パターン形成方法を、発光素子、画像表示装置を構成する発光層に適用した場合の一例について、より詳細に説明する。
【0067】
《画像表示装置》
以下では、本発明の画像表示装置の一例として、アクティブマトリックス型表示装置について説明する。
図1は、本発明の画像表示装置としてのアクティブマトリックス型表示装置の一例を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図1、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0068】
図1に示すアクティブマトリックス型表示装置(以下、単に「表示装置」と言う。)10は、TFT回路基板(対向基板)20と、このTFT回路基板20上に設けられた発光素子1と、TFT回路基板20に対向する上基板9とを有している。
TFT回路基板20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
【0069】
基板21は、表示装置10を構成する各部の支持体となるものであり、上基板9は、例えば、発光素子1を保護する保護膜等として機能するものである。
また、本実施形態の表示装置10は、上基板9(後述する陽極8)側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であるため、上基板9は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされ、一方、基板21は、特に、透明性は要求されない。
このような基板21には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち比較的硬度の高いものが好適に用いられる。
【0070】
一方、上基板9には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち透明なものが選択され、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板を用いることができる。
【0071】
基板21の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30mm程度であるのが好ましく、5〜20mm程度であるのがより好ましい。一方、上基板9の平均厚さも、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
回路部22は、基板21上に形成された下地保護層23と、下地保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
【0072】
駆動用TFT24は、半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、各駆動用TFT24に対応して、それぞれ、発光素子1が設けられている。また、隣接する発光素子1同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により構成される隔壁部(バンク)35により区画されている。
【0073】
本実施形態では、各発光素子1の陰極3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7とは、各発光素子1に対して個別に形成されており、陽極8は、共通電極とされている。
表示装置10は、単色表示でも、カラー表示でもよい。表示装置10が、互いに異なる粒子径の量子ドットを含む複数種の発光素子1を有するものとすることにより、カラー表示を実現することができる。特に、粒径が制御された量子ドットを用いることにより、各発光素子1を、確実に所望の色調を呈するものとすることができるため、所望の画質の画像を表示することができ、また、色再現域を広いものとすることができる。
【0074】
以下、この発光素子1について詳述する。
図1に示すように、発光素子1は、陰極3と、陽極8とを有し、さらに、陰極3と陽極8との間に、陰極3側から順に、電子輸送層5と、発光層6と、正孔輸送層7とを有している。
陰極3は、電子輸送層5に電子を注入する電極である。
【0075】
陰極3の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
特に、陰極3の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極3の構成材料として用いることにより、陰極3の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
【0076】
このような陰極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜10000nm程度であるのが好ましく、50〜500nm程度であるのがより好ましい。陰極3の厚さが前記下限値未満であると、陰極3の機能が十分に発揮されなくなる可能性があり、一方、陰極3の厚さが前記上限値を超えると、発光素子1の発光効率等の特性が低下するおそれがある。
また、陰極3の表面抵抗は低い程好ましく、具体的には、50Ω/□以下であるのが好ましく、20Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
【0077】
一方、陽極8は、正孔輸送層7に正孔を注入する電極である。
この陽極8の構成材料(陽極材料)としては、表示装置10が陽極8側から光を取り出すトップエミッション構造であるため透光性を有する導電性材料が選択され、特に、仕事関数が大きく(陰極3の構成材料よりも仕事関数が大きく)、優れた導電性を有するものが好適に用いられる。
【0078】
このような陽極8の構成材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素含有インジウムティンオキサイド(FITO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、アルミニウムジンクオキサイド(AZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、フッ素含有インジウムオキサイド(FIO)、インジウムオキサイド(IO)、等の透明導電性材料が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0079】
陽極8の平均厚さは、特に限定されないが、10〜2000nm程度であるのが好ましく、50〜1000nm程度であるのがより好ましい。陽極8の厚さが前記下限値未満であると、陽極8としての機能が十分に発揮されなくなる可能性があり、一方、陽極8の厚さが前記上限値を超えると、陽極8の構成材料等によっては、光の透過率が低下して、トップエミッション型の構造を有する発光素子1として、実用に適さなくなるおそれがある。
【0080】
また、陽極8の表面抵抗も低い程好ましく、具体的には、100Ω/□以下であるのが好ましく、50Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗の下限値は、特に限定されないが、通常0.1Ω/□程度であるのが好ましい。
このような陽極8は、その光(可視光領域)の透過率が好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上となっている。これにより、光を効率よく陽極8側から取り出すことができる。
【0081】
電子輸送層5は、陰極3から注入された電子を、発光層6まで輸送する機能を有するものである。
電子輸送層5は、各種n型の無機半導体材料、各種n型の有機半導体材料で構成されたものとすることができるが、無機半導体材料を主材料として構成するのが好ましい。無機半導体材料は、化学的に安定であることから、電子輸送層5が無機半導体材料を主材料として構成されたものであることにより、発光素子1の耐久性をより向上させることができる。
【0082】
無機半導体材料としては、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化スズ(SnO)、ScVO、YVO、LaVO、NdVO、EuVO、GdVO、ScNbO、ScTaO、YNbO、YTaO、ScPO、ScAsO、ScSbO、ScBiO、YPO、YSbO、BVO、AlVO、GaVO、InVO、TlVO、InNbO、InTaOのような金属酸化物、ZnSのような金属硫化物、金属セレン化物、TiC、SiCのような金属または半導体炭化物、BN、BNのような半導体窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、無機半導体材料としては、金属酸化物、特に、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムのうちの少なくとも一方を主成分とするものが好ましい。金属酸化物(特に、酸化チタンや酸化ジルコニウム)は、電子輸送能に特に優れることから好ましい。
【0083】
なお、有機半導体材料としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、アクリジン系化合物、スチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエン系化合物、クマリン系化合物、キノリン系化合物、ビスチリル系化合物、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリン系化合物、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール系化合物、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロン系化合物、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子のような高分子系のものが挙げられる。
【0084】
このような電子輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、1〜200nmであるのが好ましく、5〜100nmであるのがより好ましい。これにより、電子輸送層5の機械的強度(膜強度)が低下するのを防止しつつ、発光素子1の薄型化を図ることができる。
なお、陰極3と電子輸送層5との間には、例えば、陰極3からの電子注入効率を向上させる電子注入層を設けるようにしてもよい。
【0085】
また、電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、オキサジアゾール、または、これらの誘導体(例えば、8−ヒドロキシキノリンを含む金属キレートオキシノイド化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
正孔輸送層7は、陽極8から注入された正孔を発光層6まで輸送する機能を有するものである。
【0086】
この正孔輸送層7の構成材料(正孔輸送材料)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
なお、正孔輸送材料としては、上述したような高分子材料や低分子材料のような有機系材料の他、例えば、MoO、V、TiO、Cu(II)O、Cu(I)O、NiO、CoOのような金属酸化物を用いることもできる。
【0088】
このような正孔輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、1〜200nmであるのが好ましく、5〜100nmであるのがより好ましい。これにより、発光素子1が大型化(特に、厚膜化)するのを防止しつつ、十分な発光効率が得られる。
なお、陽極8と正孔輸送層7との間には、例えば、陽極8からの正孔注入効率を向上させる正孔注入層を設けるようにしてもよい。
【0089】
この正孔注入層の構成材料(正孔注入材料)としては、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
発光層6は、前述したような吐出液(分散液)を用いて形成されたものであり、主として量子ドットで構成されたものである。
【0090】
陰極3と陽極8との間に通電(電圧を印加)すると、陽極8から正孔輸送層7を介して正孔が発光層6に注入され、また、陰極3から電子輸送層5を介して電子が発光層6に注入され、この発光層6において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層6ではエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギーを放出(発光)する。このようにして放出されるエネルギーは、発光層6を構成する量子ドットの種類に依存する、特定の波長を有する光である。
【0091】
発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、1〜150nm程度であるのが好ましく、2〜100nm程度であるのがより好ましい。
表示装置10を平面視した際の各発光層6の面積は、1000〜200000μmであるのが好ましく、10000〜100000μmであるのがより好ましい。
なお、上述したような表示装置10においては、電子輸送層5、正孔輸送層7のうち、一方または両方を省略してもよい。言い換えると、発光素子1は、電子輸送層5および/または正孔輸送層7を有していないものであってもよい。
上述したような表示装置10は、例えば、以下に述べるような製造方法(本発明の薄膜パターン形成方法を適用した方法)により製造することができる。
【0092】
《画像表示装置の製造方法(発光層の形成方法)》
図2は、図1に示すアクティブマトリックス型表示装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)、図3は、発光層(薄膜)の形成に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図5は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図6は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【0093】
[1]まず、TFT回路基板20を用意する。
[1−A]まず、基板21を用意し、基板21上に、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約200〜500nmの酸化シリコンを主材料として構成される下地保護層23を形成する。
【0094】
[1−B]次に、下地保護層23上に、駆動用TFT24を形成する。
[1−Ba]まず、基板21を約350℃に加熱した状態で、下地保護層23上に、例えばプラズマCVD法等により、平均厚さが約30〜70nmのアモルファスシリコンを主材料として構成される半導体膜を形成する。
[1−Bb]次いで、半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法等により結晶化処理を行い、アモルファスシリコンをポリシリコンに変化させる。
ここで、レーザアニール法では、例えば、エキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm程度に設定される。また、ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザー強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0095】
[1−Bc]次いで、半導体膜をパターニングして島状とし、各島状の半導体膜241を覆うように、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約60〜150nmの酸化シリコンまたは窒化シリコン等を主材料として構成されるゲート絶縁層242を形成する。
[1−Bd]次いで、ゲート絶縁層242上に、例えば、スパッタ法等により、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極243を形成する。
[1−Be]次いで、この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極243に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
【0096】
[1−C]次に、駆動用TFT24に電気的に接続されるソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
[1−Ca]まず、ゲート電極243を覆うように、第1層間絶縁層25を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Cb]次いで、コンタクトホール内にソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
【0097】
[1−D]次に、ドレイン電極245と陽極8とを電気的に接続する配線(中継電極)27を形成する。
[1−Da]まず、第1層間絶縁層25上に、第2層間絶縁層26を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Db]次いで、コンタクトホール内に配線27を形成する。
以上のようにして、TFT回路基板20が得られる。
【0098】
[2]次に、TFT回路基板20上に発光素子1を形成する
[2−A]まず、図2(a)に示すように、TFT回路基板20が備える第2層間絶縁層26上に、配線27に接触するように、陰極(画素電極)3を形成する。
この陰極3は、第2層間絶縁層26上に、例えば、真空蒸着法やスパッタ法のような気相成膜法等により、目的とする陰極3の構成材料からなる導電膜を形成した後、パターニングすることにより得ることができる。
【0099】
[2−B]次に、図2(b)に示すように、第2層間絶縁層26上に、各陰極3を区画するように、隔壁部(バンク)35を形成する。
隔壁部35は、第2層間絶縁膜26上に第1隔壁部31を形成した後、この第1隔壁部31上に、第2隔壁部32を形成することにより得ることができる。
なお、第1隔壁部31は、陰極3および第2層間絶縁膜26を覆うように絶縁膜を形成した後、フォトリソグラフィー法等を用いてパターニングすること等により形成することができる。
【0100】
また、第2隔壁部32は、陰極3および第1隔壁部31を覆うように絶縁膜を形成した後、第1隔壁部31を得たのと同様にして形成することができる。
ここで、第1隔壁部31および第2隔壁部32の構成材料は、耐熱性、撥液性、溶剤耐性、下地層との密着性等を考慮して選択される。
具体的には、第1隔壁部31の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂のような有機材料や、SiOのような無機材料が挙げられる。
【0101】
また、第2隔壁部32の構成材料としては、第1の隔壁部31で挙げたものの他、例えば、フッ素系樹脂等を用いることができる。フッ素系樹脂を用いることにより、第2隔壁部32の耐吸湿性の向上を図ることができる。
また、隔壁部35の開口の形状は、例えば、円形、楕円形、四角形、六角形等の多角形等、いかなるものであってもよい。
なお、隔壁部35の開口の形状を多角形とする場合には、角部は丸みを帯びているのが好ましい。これにより、電子輸送層5、発光層6、正孔輸送層7を形成する際に、電子輸送層5形成用の液状材料、前述した吐出液(分散液)、正孔輸送層7形成用の液状材料を、隔壁部35の内側の空間の隅々にまで確実に供給することができる。
【0102】
[2−C]次に、図2(c)に示すように、各陰極3上に、すなわち、各陰極3を覆うように、それぞれ、電子輸送層5、発光層6および正孔輸送層7をこの順で積層するように形成する(第2の工程)。
以下、電子輸送層5、発光層6および正孔輸送層7の形成方法について説明する。
[2−Ca]まず、各陰極3上に、それぞれ、電子輸送層5を形成する。
この電子輸送層5は、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、バブルジェット法等の液滴吐出法等を用いた液相プロセスにより形成することができるが、中でも、液滴吐出法が好ましく、インクジェット法がより好ましい。このような方法を用いることにより、電子輸送層5の薄膜化、画素サイズの微小化を図ることができる。また、電子輸送層形成用の液状材料を、隔壁部35の内側に選択的に供給することができるため、液状材料のムダを省くことができる。なお、液滴吐出法により電子輸送層5を形成する場合、液滴の吐出方法は、後述する発光層6の形成方法で、詳述するのと同様な方法を採用するのが好ましい。
【0103】
電子輸送層5の形成を液相プロセスにて行う場合、陰極3上に電子輸送層形成用の液状材料を付与した後、付与された電子輸送層形成用の液状材料に含まれる溶媒または分散媒を除去(脱溶媒または脱分散媒)する。
この脱溶媒または脱分散媒は、減圧雰囲気に放置する方法、熱処理による方法、窒素ガスのような不活性ガスのフローによる方法、これらを組み合わせた方法等が挙げられる。
用いる液状材料は、前述したような電子輸送材料を溶媒または分散媒に溶解または分散することにより調製される。
【0104】
また、液状材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の各種無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、陰極3上に供給された液状材料は、流動性が高く(粘性が低く)、水平方向(面方向)に広がろうとするが、陰極3が隔壁部35により囲まれているため、所定の領域以外に広がることが阻止され、電子輸送層5(発光素子1)の輪郭形状が正確に規定される。
【0105】
[2−Cb]次に、各電子輸送層5(受け面)上に、それぞれ、発光層6を形成する。
この発光層6は、前述した吐出液(分散液)を用いた液滴吐出法(ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法)により形成する。これにより、発光層6の薄膜化、画素サイズの微小化を図ることができる。また、吐出液(分散液)を、隔壁部35の内側に選択的に供給することができるため、吐出液(分散液)のムダを省くことができる。また、本発明において、吐出液は、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が所定値以下のものであるため、液滴吐出時において不可避的に発生するミストによる悪影響が効果的に防止される。
以下、液滴吐出法による吐出液(分散液)の付与方法について、より詳細に説明する。
吐出液(分散液)の吐出(吐出工程)は、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
【0106】
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、吐出液(分散液)2を保持するタンク101と、タンク101内の吐出液(分散液)2を送液するチューブ(送液チューブ)110と、チューブ110を介してタンク101から吐出液(分散液)2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、隔壁部35、陰極3、電子輸送層5が形成されたTFT回路基板20(以下、単に「TFT回路基板20」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ(送液チューブ)110で連結されており、チューブ(送液チューブ)110を介して、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれに吐出液(分散液)2が圧縮空気によって供給される。そして、チューブ(送液チューブ)110と液滴吐出手段103(液滴吐出ヘッド114)とは、図示しない接続部材で接続されている。チューブ(送液チューブ)110と液滴吐出手段103(液滴吐出ヘッド114)との接続部には、送液に伴う振動のエネルギーが加わりやすく、また、搬送される吐出液(分散液)2中に、空気等が混入する可能性の高い箇所である。このため、接続部材の構成材料としては、伸縮性に富み、ガス透過率が低く、防振特性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性等に優れるという特徴を有するブチルゴムが、一般に用いられている。接続部材を構成する材料として用いられるブチルゴムとしては、例えば、ブチル065,268,269,365(EXXON MOBILE社)、101−3,301,402(LANXESS社)、JSRブチル(JSR社)等が挙げられる。
【0107】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
【0108】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、吐出液(分散液)2を付与すべきTFT回路基板20をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる(ステージ106に保持されたTFT回路基板20と、液液滴吐出手段103とが相対的に移動する)。
制御手段112は、吐出液(分散液)2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0109】
図4に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0110】
図5に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル(ノズル孔)118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0111】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0112】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0113】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からは吐出液(分散液)2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118が吐出液(分散液)2を吐出するノズルとして機能する。
【0114】
図4に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、TFT回路基板20のX軸方向の寸法分の長さに渡り、吐出液(分散液)2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
【0115】
本実施形態の液滴吐出手段103では、TFT回路基板20のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、TFT回路基板20のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようなものでもよい。
ノズル(ノズル孔)118の孔径は、5〜100μmであるのが好ましく、10〜50μmであるのがより好ましい。
【0116】
図6(a)および(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給される吐出液(分散液)2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0117】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル(ノズル孔)118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から吐出液(分散液)2が供給される。
【0118】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から吐出液(分散液)2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向に吐出液(分散液)2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0119】
液滴吐出ヘッド114(特に、ノズルプレート128の近傍)においては、一般に、吐出液供給部(分散液供給部)とヘッド駆動部分とは、弾性材料としての接続材料で構成されている。吐出液(分散液)供給部とヘッド駆動部分との接続が不十分であると、吐出液(分散液)の液漏れが生じたり、キャビティ120内の吐出液(分散液)2に適正な圧力が加わらなくなったり、外部からキャビティ120内にガスが混入してしまうなどの問題が発生する可能性がある。このような問題の発生を防止するために、接続材料としては、通常、フロロシリコーンゴムが用いられる。このようなフロロシリコーンゴムとしては、例えば、Silastic LS(ダウコーニング社)、FE251-U,261-U,271-U,273-U,281-U(信越シリコーン社)、Fluorsilicone 614002(ERIKS社)等が挙げられる。
【0120】
制御手段112(図3参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出される吐出液(分散液)2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
【0121】
上記のような液滴吐出装置100を用いて、表示装置10が有する複数色の発光素子1の発光層6に対応する吐出液(分散液)2を、電子輸送層5上(隔壁部35で囲まれた領域(セル)内)に付与する。上記のような装置を用いることにより、電子輸送層5上(隔壁部35で囲まれた領域(セル)内)に、効率よくかつ選択的に吐出液(分散液)2を付与することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、吐出液(分散液)2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、表示装置10が有する複数色の発光素子1の発光層6に対応する複数種の吐出液(分散液)分有するものであってもよい。また、表示装置10の製造においては、複数色の吐出液(分散液)2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
【0122】
本工程においてノズル118から吐出される吐出液2の温度は、20〜40℃であるのが好ましく、25〜30℃であるのがより好ましい。
また、本工程においてノズル118から吐出される吐出液2の液滴量(1滴あたりの体積)は、0.5〜100pLであるのが好ましく、1〜20pLであるのがより好ましい。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して吐出液(分散液)を吐出する構成(バブルジェット法)であってもよい。
【0123】
電子輸送層5上(受け面)に吐出液(分散液)2を付与した後、付与された吐出液(分散液)2に含まれる分散媒の少なくとも一部を除去(脱分散媒)する(分散媒除去工程)。
この脱分散媒の方法は、特に限定されないが、例えば、吐出液(分散液)2が付着したTFT回路基板20を加熱する方法、吐出液(分散液)2が付着したTFT回路基板20を減圧雰囲気下に置く方法、これらを組み合わせた方法(例えば、第1の温度で、減圧雰囲気下に吐出液(分散液)2が付着したTFT回路基板20を減圧雰囲気下に置いた後、雰囲気を大気圧に戻し、大気圧下で加熱する方法等)等が挙げられる。
【0124】
本工程での処理温度(加熱温度)は、60〜280℃であるのが好ましく、110〜190℃であるのがより好ましい。
上記のように、本発明では、ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、量子ドットと上記のような分散媒とを含む分散液(吐出液)を所定パターンで吐出する点に特徴を有するものである。これにより、欠陥のない薄膜パターンを容易かつ確実に形成することができる。特に、発光素子においては、その厚さのばらつきが発光色(輝度等)に大きな影響を与えるため、均一な厚さの薄膜パターンを形成することが求められるが、本発明によれば、微細なパターン、特に、微細でかつ大面積に設けられたパターンであっても、精密に形成することができる。また、発光素子においては、均一な膜厚を有しておらず、例えば、いわゆる抜け等の欠陥が存在すると、電流や電圧の集中により発光素子の寿命が著しく低下するという問題が発生するが、本発明によれば、抜け等の欠陥も確実に防止することができる。上記のようなことから、本発明によれば、所望の色調の光を長期間にわたって安定的に発光することができる発光素子を提供すること、色再現域が広く、耐久性に優れる画像表示装置を提供することができる。
また、本発明では、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が所定値以下であるため、液滴吐出時におけるミストの発生による環境への負荷、人体等への悪影響等を確実に防止することができる。
【0125】
また、本発明によれば、成膜時にマスク等を用いたり、成膜後に膜の一部を除去することなく、目的とするパターンを、直接形成することができるため、薄膜の生産性に優れており、この点からも環境への負荷を小さくすることができる。また、薄膜パターンを形成すべきワーク(受け面)に対して、非接触で、パターンを形成することができるため、曲面状のワークに対しても、好適に薄膜パターンを形成することができる。また、ワーク(受け面)が凹凸を有する場合であっても、好適に薄膜パターンを形成することができる。また、複数種の液体(分散液)を用いた薄膜パターンの形成を好適に行うことができるため、カラー画像を表示に用いられる発光素子の形成に好適に適用することができる。また、薄膜パターンの形成に用いる液体(分散液)を、無駄なく利用することができる(成膜後にその一部を除去する必要がない)ため、高価な分散液を用いた場合であっても、薄膜パターンの生産コストの上昇を抑制することができる。また、分散媒除去工程における分散媒の除去速度の調整により、形成される膜の形状(厚さの分布)の制御が容易である。また、本発明においては、薄膜パターンを形成する際に、不純物が混入してしまうのを確実に防止することができる。
【0126】
また、本発明においては、分散媒除去工程において、受け面に付着させた分散液(吐出液)の頂部付近と底部(受け面との接触面)付近とで温度差を生じさせることにより、分散液中において、対流を生じさせることができる。これにより、形成される薄膜パターンの厚さの制御をより好適に行うことができる。また、本発明においては、例えば、所定量の前記分散液の液滴を受け面上に吐出し、その後、この液滴から分散媒を除去することにより、受け面上の液滴が付与された部位において、縁部付近の膜厚が中央部付近の膜厚よりも大きい薄膜を形成し、さらにその後、前記縁部で囲まれた領域(凹部)に、前記分散液の液滴を吐出し、その後、この液滴から分散媒を除去してもよい。これにより、形成される薄膜パターンの厚さの制御をさらに好適に行うことができる。
これに対し、量子ドットを含む分散液を用いたとしても液滴吐出法を適用しない場合や、従来の有機EL材料を液滴吐出法に適用した場合等には、本発明のような優れた効果は得られない。
【0127】
すなわち、量子ドットを含む分散液を用いたとしても液滴吐出法を適用しない場合には、一般に、所定のパターンを形成する際には、それに対応するマスクが必要となり、パターン形成の効率が著しく低下するとともに、省資源の観点からも好ましくない。また、形成すべきパターンが大型のものである場合、マスクの位置精度を十分に高いものとするのが困難となるという問題点もある。また、真空蒸着等の気相成膜法によりパターン形成を行う場合、大型のパターン形成には、大型の装置が必要となり、パターンの大型に伴う生産コストの上昇が著しく、近年の画像表示装置の大型化の流れに対応するのも困難である。また、一般的な印刷法を用いた場合、形成されるパターンの形状を精確に制御するのが困難である。特に、画像表示装置が有する発光素子等のように、多数の微小領域が、規則正しく配置し、さらに、各部位での厚さのばらつきが十分に小さいことが求められるようなパターンの形成においては、従来の印刷法を適用するのは極めて困難である。
【0128】
また、従来の有機EL材料を用いた場合には、形成される薄膜パターン(発光素子)の耐久性に問題がある。また、従来の有機EL材料等を液滴吐出法に適用した場合には、本発明で得られる、上述したような効果(例えば、優れた液切れ、液滴吐出量の安定性等)は得られない。
また、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が多すぎると、液滴吐出時に発生するミストにより、環境や人体等に悪影響を及ぼす危険性が高い。
【0129】
[2−Cc]次に、各発光層6上(発光層6の電子輸送層5に対向する側の面とは反対の面側)に、正孔輸送層7を形成する。
この正孔輸送層7も、上述したような電子輸送層5の形成方法で述べたような気相プロセスや液相プロセスにより形成することができるが、前述したのと同様の理由から、液滴吐出法が好ましく、インクジェット法がより好ましい。
このような方法により正孔輸送層7を形成する場合、液状材料の組成を変更する以外は、前述したような電子輸送層5、発光層6の形成と同様な条件とすることができる。
【0130】
[2−D]次に、図2(d)に示すように、各正孔輸送層7上および各隔壁部35上に、共通電極としての陽極8を形成する(第3の工程)。
この陽極8は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、バブルジェット法等の液滴吐出法等を用いた液相プロセス等で形成することができる。
【0131】
なお、これらの方法は、陽極8の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。
なお、本実施形態では、正孔輸送層7および隔壁部35の全面に、陽極8を形成することから、マスクを用いる必要がないため、これらの形成には、スパッタ法、真空蒸着法を用いた気相プロセス等が好適に用いられる。
このような工程を経て、発光素子1を製造することができる。
【0132】
[3] 次に、図2(e)に示すように、上基板9を用意し、この上基板9により陽極8を覆うようにして、陽極8と上基板9とを接合する。
この陽極8と上基板9との接合は、陽極8と上基板9との間に、エポキシ系の接着剤を介在させた状態で、この接着剤を乾燥させること等により行うことができる。
この上基板9は、発光素子1を保護する保護基板としての機能を有する。
以上のような工程を経て、表示装置10を製造することができる。
【0133】
<電子機器>
上記のような表示装置(本発明の画像表示装置)10は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図7は、本発明の画像表示装置を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータ(電子機器)の構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
【0134】
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述の表示装置10で構成されている。
図8は、本発明の画像表示装置を適用した携帯電話機(PHSも含む)(電子機器)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の表示装置10で構成されている。
【0135】
図9は、本発明の画像表示装置を適用したディジタルスチルカメラ(電子機器)の構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0136】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の表示装置10で構成されている。
【0137】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0138】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0139】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機(PHSも含む)、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。また、本発明の電子機器は、表示機能を有しない発光機能のみを有するものであってもよい。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であり、また、フルハイビジョン対応等の高解像度化も浸透しつつある。このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有するテレビでは、多数配置された画素間での特性のばらつきが目立ちやすく、また、このような特性のばらつきを十分に抑制するのが困難であった。また、テレビの高解像度化に伴い、上記のような問題はより顕著なものとなっていた。また、近年、カラーフィルターを用いた液晶テレビが普及しつつあるが、自発光型ではなくカラーフィルターを用いたテレビにおいては、十分な輝度を得るためには、消費電力が大きくなる傾向が顕著であり、また、十分な視野角を確保するのが困難である等の問題があった。また、有機ELや無機ELを採用した自発光型の表示素子を有するテレビ等においては、耐久性や、発光効率、色純度、発光輝度等に問題があった。これに対し、本発明をテレビに適用した場合、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有するテレビに適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。また、上記のような大型の表示部を有するテレビでは、発光素子を形成するのに用いる吐出液量が多く、また、微細なパターンで液滴吐出を行う必要があるため、ミストの発生量も多くなる傾向が顕著であるが、このような用途に適用する場合であっても、ミストによる環境や人体等への悪影響を確実に防止することができる。この点からも、上記のような大型の表示部を有するテレビに適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮されると言える。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
例えば、前述した実施形態では、トップエミッション型の発光素子について代表的に説明したが、本発明の発光素子は、ボトムエミッション構造を有するものであってもよい。
また、本発明の薄膜パターン形成方法は、任意の目的の工程が1または2以上追加されていてもよい。
また、本発明では、量子ドットによる発光は、前述したような電子と正孔との再結合(電圧の印加)によるものに限定されず、例えば、紫外線の照射によるものであってもよい。紫外線による発光を利用した発光素子、画像表示装置、電子機器としては、例えば、プラズマディスプレイパネルでの発光に用いられているような構成のもの等が挙げられる。
【0141】
また、本発明の吐出液セットは、互いに粒径の異なる量子ドットを含む吐出液を、少なくとも2種備えたものであればよく、例えば、量子ドットを含む複数種の吐出液に加え、量子ドットを含まない吐出液を備えたものであってもよい。
また、発光素子、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、本発明の吐出液、吐出液セット、薄膜パターン形成方法、薄膜を、発光素子、画像表示装置、および画像表示装置を備えた電子機器に適用する場合について、中心に説明したが、本発明は、太陽電池、照明装置等、いかなる用途に適用されるものであってもよい。
【実施例】
【0142】
[1]吐出液セットの作製
(実施例1)
<赤色発光層形成用吐出液(分散液)>
以下に述べるような方法により、InPで構成されたコア領域の外表面にZnSで構成されたシェル領域(厚さ:0.1nm)が設けられた構造の量子ドットが、分散媒としてのデカリン中に分散した赤色発光層形成用の吐出液(分散液)を調製した。吐出液(分散液)中において、量子ドットは、その表面に、分散剤としてのトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)およびトリオクチルホスフィン(TOP)が付着したものであった。また、量子ドットの粒径は、10.2nmであった。また、吐出液(分散液)中における量子ドットの含有率は4.7wt%、吐出液(分散液)中における分散媒の含有率は94.9wt%であった。また、量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量は、30ppmであった。
【0143】
まず、空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための熱電対とを装着した透明の3口フラスコに5gのTOPO/TOP(体積比にして1:1.5の混合物)を入れ、真空に20分間引いた後、Arで3回パージを行い、三口フラスコ内の酸素等の不純物を除いた。次に、この液体(第2の液体)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら乾燥アルゴンガス雰囲気で345℃に加熱した。
一方、別途、0.8gのInClと、0.5gのP(NMeと5gのTOPO/TOP(体積比にして1:1の混合物)とを、アルミニウム箔ですき間なく包んで遮光したガラス瓶中で混合することにより、第1の液体を調製した。
【0144】
次に、この第1の液体(2.0mL)を、上記の第2の液体の入ったフラスコに注射器で一気に注入し、その後、温度を300℃で1時間保った。
次に、加熱を停止し、液温が50℃まで低下した時点で、精製トルエン(2mL)を注射器で加えて希釈し、さらに、1−ブタノールと脱水メタノールとの混合液(体積比にして1:1の混合物):10mlを注入して不溶物を生じさせた。この不溶物を遠心分離(3000rpm)し、デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、室温にて14時間真空乾燥することにより、InPで構成された粒子(コア領域となるべき粒子)を得た。
【0145】
次に、空冷式のリービッヒ還流管と反応温度調節のための熱電対とを装着した褐色の3口フラスコに15gのTOPOを入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、150℃に加熱し、この状態で、減圧と乾燥Arガスによる復圧とを繰り返し行った。
上記のような減圧・復圧を伴う加熱処理を2時間行った後、液温を100℃にし、ここに、上記のようにして調製したInPで構成された粒子(0.094g)とトリオクチルホスフィン(1.5g)との混合物を添加した。
【0146】
次に、この液体(第3の液体)を、減圧下、100℃に加熱した状態で、マグネチックスターラーで80分間攪拌した。その後、液温を180℃にして、乾燥Arガスで復圧した。
次に、この180℃に加熱された第3の液体の入ったフラスコに、別途調製した第4の液体を、注射器で20分間かけて滴下し、その後、液温を90℃まで低下させ1時間攪拌し、さらに室温で14時間攪拌した後、90℃で3時間攪拌した。ここで、第4の液体としては、乾燥窒素雰囲気のグローブボックス内で調製された、ジエチル亜鉛の1規定(1N)のn−ヘキサン溶液(1.34mL)と、ビス(トリメチルシリル)スルフィド(0.239g)と、トリオクチルホスフィン(9mL)との混合物を用いた。
【0147】
次に、加熱を停止し、n−ブタノール(8mL)を反応液に加え、室温まで冷却した。
次に、乾燥窒素気流下、上記室温まで冷却した液体を16mLのメタノール中に滴下した。
その後、この液体中に含まれる不溶物を遠心分離し、デカンテーションにより上澄み液を除去して分離し、室温にて真空乾燥することにより、InPで構成されたコア領域の外表面にZnSで構成されたシェル領域が設けられた粉末状の量子ドットを得た。
その後、得られた量子ドットを、酸化防止剤としてのビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートを含むデカリンに分散させることにより、赤色発光層形成用の吐出液(分散液)を得た。
【0148】
<緑色発光層形成用吐出液(分散液)>
トリオクチルホスフィン(TOP)の代わりにトリデシルホスフィンオキシド(TDP)を用い、TOPOとTDPとの使用比率比を体積比で1:0.8とし、量子ドットの粒径を4.1nmとした以外は、上記赤色発光層形成用吐出液と同様にして、緑色発光層形成用の吐出液(分散液)を調製した。
【0149】
<青色発光層形成用吐出液(分散液)>
トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリデシルホスフィンオキシド(TDP)に加えて、トリフェニルホスフィン(TPP)を用い、TOPOとTDPとTPPとの使用比率比を体積比で1:0.8:0.2とし、量子ドットの粒径を2.1nmとした以外は、上記赤色発光層形成用吐出液と同様にして、青色発光層形成用の吐出液(分散液)を調製した。
このようにして、3種の吐出液(分散液)からなる吐出液セットを得た。
【0150】
(実施例2〜10)
吐出液セットを構成する各吐出液(分散液)の組成を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、3種の吐出液(分散液)からなる吐出液セットを作製した。なお、量子ドットがZnSにInとAgをドープした化合物であるZnAgInSで構成されたものについては、コア粒子(ZnAgInS)の形成において、Ag源としてAgClを用い、Zn源としてジエチルジチオカルバミン酸亜鉛((CNCSZn)を用い、S源としてトリオクチルホスフィンを用いて粒子を形成し、その後シェル領域の形成を行わず、得られた粒子をそのまま量子ドットした。
【0151】
(比較例1〜4)
吐出液セットを構成する各吐出液(分散液)の組成を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして、3種の吐出液(分散液)からなる吐出液セットを作製した。
(比較例5)
本比較例では、吐出液セットを構成する吐出液として、有機発光材料を含むものを用いた。以下、吐出液セットを構成する各吐出液について説明する。
【0152】
<赤色発光層形成用吐出液>
有機発光材料としてのナイルレッドと、デカリンとを混合することにより、赤色発光層形成用の吐出液を得た。得られた吐出液中におけるナイルレッドの含有率は5.0wt%、デカリンの含有率は95.0wt%であった。
<緑色発光層形成用吐出液>
有機発光材料としてのクマリン6と、デカリンとを混合することにより、緑色発光層形成用の吐出液を得た。得られた吐出液中におけるクマリン6の含有率は5.0wt%、デカリンの含有率は95.0wt%であった。
【0153】
<青色発光層形成用吐出液>
有機発光材料としてのTPB(1,1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン)と、デカリンとを混合することにより、青色発光層形成用の吐出液を得た。得られた吐出液中におけるTPBの含有率は5.0wt%、デカリンの含有率は95.0wt%であった。
このようにして、3種の吐出液からなる吐出液セットを得た。
前記各実施例および各比較例で得られた吐出液セットを構成する吐出液は、いずれも、後述する試験、評価に供するまでの間、温度:25℃、酸素濃度:10ppm以下、湿度:10%RH以下の環境下で保存した。
【0154】
前記各実施例および各比較例について、吐出液セットを構成する各吐出液の構成を、表1、表2、表3にまとめて示した。なお、表中、赤色発光層形成用吐出液を「R吐出液」、緑色発光層形成用吐出液を「G吐出液」、青色発光層形成用吐出液を「B吐出液」、トリオクチルホスフィン(TOP)を「c」、トリデシルホスフィンオキシド(TOPO)を「d」、トリブチルホスフィン(TBP)を「e」、デカリンを「A」、テトラリンを「B」、ブトキシエタノールを「C」、オクタン酸エチルを「D」、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを「E」、ビス(2−ブトキシエチル)エーテルを「F」、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを「G」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「H」、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを「I」、トリエチレングリコールジメチルエーテルを「J」、ナイルレッドを「NR」、クマリン6を「C6」、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートを「f」、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを「g」、2,6−ジ−t−ブチルフェノールを「h」で示した。また、表中、「吐出液の粘度」の欄には、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された25℃における吐出液の粘度を示し、「沸点」の欄には、分散媒の常圧(1気圧)における沸点を示し、「蒸気圧」の欄には、分散媒の25℃における蒸気圧を示した。
【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

【0157】
【表3】

【0158】
[2]ミスト中に含まれるCd、Pb、Crの総量
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例の吐出液セットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各吐出液について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、それぞれ、100000発(100000滴)の液滴の連続吐出を行った。この際のチャンバー内の設定温度は25℃、レンジは0.5℃(25±0.25℃)とした。
【0159】
上記のような液滴吐出時および液滴吐出終了後2時間経過するまで、以下のような方法により、チャンバー内の雰囲気中に含まれるCd、Pb、Crを回収し、これらの総量を求めた。
すなわち、10×10cmの板ガラスをチャンバー内に設置された液滴吐出装置の吐出領域の外周から20cmの位置に水平に設置し、分散液の吐出時および吐出後2時間経過するまで、大気中に霧散した分散液のミストを補足した。補足された分散液を分散液と同じ溶剤で回収し、面積あたりのCd、Pb、Cr量を計測した。また、吐出直後のチャンバー内の雰囲気を回収し焼成・分析することで飛散しているCd、Pb、Cr総量を求めた。
以上のようにして得られた雰囲気中に含まれるCd、Pb、Cr量について、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0160】
A:雰囲気中に含まれていたCd、Pb、Crの量の総和が、0.001μg未満。
B:雰囲気中に含まれていたCd、Pb、Crの量の総和が、0.001μg以上0.01μg未満。
C:雰囲気中に含まれていたCd、Pb、Crの量の総和が、0.01μg以上0.05μg未満。
D:雰囲気中に含まれていたCd、Pb、Crの量の総和が、0.05μg以上0.08μg未満。
E:雰囲気中に含まれていたCd、Pb、Crの量の総和が、0.08μg以上。
【0161】
[3]液滴吐出の安定性評価(安定吐出性評価)
[3.1]着弾位置精度評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例の吐出液セットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各吐出液について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、10000発(10000滴)の液滴の連続吐出を行った。この際のチャンバー内の設定温度は25℃、レンジは0.5℃(25±0.25℃)とした。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルから吐出された10000発の液滴について、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:ズレ量dの平均値が0.05μm未満。
B:ズレ量dの平均値が0.05μm以上0.10μm未満。
C:ズレ量dの平均値が0.10μm以上。
【0162】
[3.2]液滴吐出量の安定性評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例の吐出液セットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各吐出液について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、10000発(10000滴)の液滴の連続吐出を行った。この際のチャンバー内の設定温度は25℃、レンジは0.5℃(25±0.25℃)とした。液滴吐出ヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。
A:ΔW/Wの値が、0.025未満。
B:ΔW/Wの値が、0.025以上0.625未満。
C:ΔW/Wの値が、0.625以上。
【0163】
[3.3]間欠印字性能評価
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置および前記各実施例および各比較例の吐出液セットを用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各吐出液について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、1000発(1000滴)の液滴の連続吐出を行い、その後、30秒間、液滴の吐出を中断した(1シーケンス目)。その後、同様に、液滴の連続吐出、および、滴々の吐出の中断の操作を繰り返し行った。この際のチャンバー内の設定温度は25℃、レンジは0.5℃(25±0.25℃)とした。液滴吐出ヘッドの中央部付近の指定したノズルについて、1シーケンス目に吐出された液滴の平均重量W[ng]と、10シーケンス目に吐出された液滴の平均重量W10[ng]とを求めた。そして、WとW10との差の絶対値の、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(|W−W10|/W)を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。|W−W10|/Wの値が小さいほど、間欠印字性能(液滴吐出量の安定性)に優れていると言える。
A:|W−W10|/Wの値が、0.025未満。
B:|W−W10|/Wの値が、0.025以上0.625未満。
C:|W−W10|/Wの値が、0.625以上。
【0164】
[3.4]連続吐出試験
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した図3〜図6に示すような液滴吐出装置、前記各実施例および各比較例の吐出液セットを用いて、50%RHの環境下で、液滴吐出装置を24時間、連続で運転させることにより、吐出液セットを構成する各吐出液の吐出を行った。この際のチャンバー内の設定温度は25℃、レンジは0.5℃(25±0.25℃)とした。
連続運転後における、液滴吐出ヘッドを構成するノズルの目詰まりの発生率([(目詰まりノズル数)/(全ノズル数)]×100)を求め、ノズルの目詰まりが発生しているものについては、可塑材料で構成されたクリーニング部材により、目詰まりの解消が可能であるか否かを調べた。その結果を、以下の4段階の基準に従い、評価した。
【0165】
A:ノズルの目詰まりの発生がない。
B:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%未満(ただし、ゼロを除く)であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
C:ノズルの目詰まりの発生率が0.5%以上1.0%未満であり、かつ、クリーニングによる目詰まりの解消が可能。
D:ノズルの目詰まりの発生率が1.0%以上、または、クリーニングによる目詰まりの解消が不可能。
なお、上記の評価は、各実施例および各比較例について、同様の条件で行った。
【0166】
[4]画像表示装置の製造
前記各実施例および各比較例で作製した吐出液(吐出液セット)を用いて、上述したような方法により、図1、図2に示すような画像表示装置を製造した。このとき、各実施例、各比較例で吐出液を変更した以外は、同様の条件で、画像表示装置を製造した。
特に、発光層の形成は、以下のようにして行った。
【0167】
すなわち、上述したような方法により、隔壁部、電子輸送層が形成されたTFT回路基板を用意した。
次に、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて、3種の吐出液(赤色発光層形成用吐出液、緑色発光層形成用吐出液、青色発光層形成用吐出液)の吐出を行った。液滴吐出装置が有する液滴吐出ヘッドのノズル(ノズル孔)の孔径は、20μmであった。
【0168】
液滴吐出時における吐出液の液温は、25℃となるように調整した。また、吐出液の液滴量(1滴あたりの体積)は、各色に対応する吐出液とも、12pLであった(吐出工程)。このとき、各セル内において、複数種の吐出液が混ざり合わないように、各セルについて、それぞれ、1種類の吐出液を付与した。
次に、室温(20℃)下、50Paまで減圧した雰囲気下で10分間静置し、その後、雰囲気圧を大気圧まで徐々に戻し、さらに、大気圧下、150℃で10分間の熱処理を施すことにより、電子輸送層の表面に、発光層が形成された。形成された発光層は、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層のいずれも、20nmであった。この際の雰囲気中における酸素濃度は、10ppmであった。
上記のような方法を用いて、各実施例および各比較例の吐出液(吐出液セット)を用いて、それぞれ、1000枚の画像表示装置を製造した。
なお、上記[2]〜[4]の試験、評価での薄膜パターン形成は、いずれも、酸素濃度:10ppm以下、湿度:10%RH以下の環境下で行った。
【0169】
[5]画像表示装置の評価
上記のようにして得られた各画像表示装置を用いて、以下のような評価を行った。
[5.1]耐熱性の評価
前記各実施例および各比較例の吐出液(吐出液セット)を用いて製造された画像表示装置のうち、それぞれ、1〜10枚目に製造された画像表示装置について、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った際の色度を、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて求めた。
【0170】
次に、これらの画像表示装置を、雰囲気温度:60℃、相対湿度:90%の環境下に500時間放置した。
その後、徐冷した画像表示装置について、上記と同様の条件で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った際の色度を求めた。そして、各画像表示装置について、上記のような熱処理の前後での色差(JIS Z 8729で規定されるL表示系での色差ΔEab)を求めた。そして、前記各実施例および各比較例の各10枚の画像表示装置についての色差の平均値について、以下の3段階の基準に従い、評価した。この色差の平均値が小さいほど、吐出液(吐出液セット)の耐熱性が優れていると言える。
A:色差の平均値が3未満。
B:色差の平均値が3以上5未満。
C:色差の平均値が5以上。
【0171】
[5.2]耐光性の評価
前記各実施例および各比較例の吐出液(吐出液セット)を用いて製造された画像表示装置のうち、それぞれ、11〜20枚目に製造された画像表示装置について、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った際の色度を、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて求めた。
次に、これらの画像表示装置を、雰囲気温度:60℃、相対湿度:50%の環境下に置き、画像表示部に、波長:340nmの紫外線を、放射度0.25W/m、45kJ/mの条件で、240時間照射した。
【0172】
その後、上記と同様の条件で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った際の色度を求めた。そして、各画像表示装置について、上記のような紫外線照射の前後での色差(JIS Z 8729で規定されるL表示系での色差ΔEab)を求めた。そして、前記各実施例および各比較例の各10枚の画像表示装置についての色差の平均値について、以下の3段階の基準に従い、評価した。この色差の平均値が小さいほど、吐出液(吐出液セット)の耐光性が優れていると言える。
A:色差の平均値が3未満。
B:色差の平均値が3以上5未満。
C:色差の平均値が5以上。
【0173】
[5.3]色むら、濃度むら、光漏れ
前記各実施例および各比較例の吐出液(吐出液セット)を用いて製造された画像表示装置のうち、それぞれ、1000枚目に製造された画像表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0174】
A:色むら、濃度むら、光漏れが全く認められない。
B:色むら、濃度むら、光漏れがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むら、光漏れがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むら、光漏れがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むら、光漏れが顕著に認められる。
なお、上記の評価においては、各画像表示装置について、同様の条件で表示を行い、同様の条件で観察、測定を行った。
【0175】
[5.4]個体間での特性差
前記各実施例および各比較例の吐出液(吐出液セット)を用いて製造された画像表示装置のうち、それぞれ、990〜999枚目に製造された画像表示装置を用意し、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行い、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)を用いて測色した。その結果から、各実施例および各比較例について、それぞれ、990〜999枚目に製造された画像表示装置で最大となる色差(Lab表示系での色差ΔE)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0176】
A:色差(ΔE)が2未満。
B:色差(ΔE)が2以上3未満。
C:色差(ΔE)が3以上4未満。
D:色差(ΔE)が4以上5未満。
E:色差(ΔE)が5以上。
なお、上記の評価においては、各画像表示装置について、同様の条件で観察、測定を行った。
【0177】
[5.5]色再現範囲の評価
前記各実施例および各比較例の吐出液(吐出液セット)を用いて製造された画像表示装置のうち、それぞれ、21〜30枚目に製造された画像表示装置について、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った際のxy表示系による色度(R(xy)、G(xy)、B(xy))を求め、NTSC比を算出した。前記各実施例および各比較例の各10枚の画像表示装置についてNTSC比の平均値を求め、以下の3段階の基準に従い、評価した。NTSC比が高いほど、色再現範囲が広いと言える。
【0178】
A:NTSC比(平均値)が78%以上。
B:NTSC比(平均値)が70以上78%未満。
C:NTSC比(平均値)が70%未満。
これらの結果を表4、表5、表6に示す。表中、「ミスト中に含まれるCd、Pb、Crの総量」、「液滴吐出の安定性評価」に関しては、「赤色」の欄に、赤色発光層形成用吐出液についての評価を示し、「緑色」の欄に、緑色発光層形成用吐出液についての評価を示し、「青色」の欄に、青色発光層形成用吐出液についての評価を示した。また、「画像表示装置の評価」に関しては、「赤色」の欄に、赤色の単色表示時についての評価を示し、「緑色」の欄に、緑色の単色表示時についての評価を示し、「青色」の欄に、青色の単色表示時についての評価を示した。
【0179】
【表4】

【0180】
【表5】

【0181】
【表6】

【0182】
表4、表5、表6から明らかなように、本発明では、液滴吐出に伴い、雰囲気中に拡散(飛散)するCd、Pb、Crの量が極めて少ないものであった。また、本発明では、耐久性(耐熱性、耐光性)に優れるとともに、色再現域の広い画像を表示することができた。また、本発明では、色むら、濃度むら、光漏れの発生が抑制されており、個体間での特性のばらつきも小さかった。これに対し、各比較例では、満足な結果が得られなかった。特に、量子ドット中のCd、Pb、Crの含有率の総量が所定値以上の比較例1〜4では、雰囲気中に拡散(飛散)するCd、Pb、Crの量が本発明に比べて極端に多いものであった。また、比較例5では、液滴吐出の安定性が低く、また、得られた画像表示装置の耐久性が低く、個体間での特性差が大きかった。また、比較例5で得られた画像表示装置は、色むら等が顕著で、色再現範囲も狭かった。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明の発光装置を適用したアクティブマトリックス型表示装置の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリックス型表示装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】発光層(薄膜)の形成に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図5】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図6】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図7】本発明の画像表示装置を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータ(電子機器)の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の画像表示装置を適用した携帯電話機(PHSも含む)(電子機器)の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の画像表示装置を適用したディジタルスチルカメラ(電子機器)の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0184】
1…発光素子 2…吐出液(分散液) 3…陰極 5…電子輸送層 6…発光層 7…正孔輸送層 8…陽極 9…上基板 10…表示装置 20…TFT回路基板 21…基板 22…回路部 23…下地保護層 24…駆動用TFT 241…半導体層 242…ゲート絶縁層 243…ゲート電極 244…ソース電極 245…ドレイン電極 25…第1層間絶縁層 26…第2層間絶縁層 27…配線 31…第1隔壁部 32…第2隔壁部 35…隔壁部 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…チューブ(送液チューブ) 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル(ノズル孔) 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に用いられる吐出液であって、
微粒子状の量子ドットと、前記量子ドットを分散させる分散媒とを含み、
前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする吐出液。
【請求項2】
吐出液中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、5.0ppm以下である請求項1に記載の吐出液。
【請求項3】
吐出液中における前記量子ドットの含有率が、0.005〜6.0wt%である請求項1または2に記載の吐出液。
【請求項4】
前記分散媒が、デカリン、テトラリン、ブトキシエタノール、オクタン酸エチル、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ドデカン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、および、1,3−ブチレングリコールジアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の吐出液。
【請求項5】
吐出液中における前記分散媒の含有率は、70〜98wt%である請求項1ないし4のいずれかに記載の吐出液。
【請求項6】
前記量子ドットは、Si、Ge、GaN、GaP、InN、InP、Ga、Ga、In、In、ZnO、ZnS、In、Agまたはこれらの混合物で構成されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の吐出液。
【請求項7】
ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法に用いられる吐出液を複数種備えた吐出液セットであって、
前記吐出液は、微粒子状の量子ドットと、前記量子ドットを分散させる分散媒とを含むものであり、
前記量子ドットの粒径が、前記吐出液間で異なるものであり、かつ、
複数種の前記吐出液のそれぞれにおいて、前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする吐出液セット。
【請求項8】
ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、分散媒と微粒子状の量子ドットとを含み、前記量子ドットが前記分散媒中に分散してなる吐出液を吐出し、受け面に所定パターンで付着させる吐出工程と、
前記受け面に付着した前記吐出液から前記分散媒の少なくとも一部を除去する分散媒除去工程とを有し、
前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が、100ppm以下であることを特徴とする薄膜パターン形成方法。
【請求項9】
前記液滴吐出法は、インクジェット法である請求項8に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項10】
異なる粒径の前記量子ドットを含む複数種の前記吐出液を用いる請求項8または9に記載の薄膜パターンの形成方法。
【請求項11】
前記吐出液を、複数個の微小単位が行列状に配置するように吐出する請求項8ないし10のいずれかに記載の薄膜パターン形成方法。
【請求項12】
ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が100ppm以下の量子ドットと、当該量子ドットを分散させる分散媒とを含む分散液を吐出して、吐出された前記分散液から前記分散媒の少なくとも一部を除去して得られたことを特徴とする薄膜。
【請求項13】
ノズル孔から間欠的に液滴を吐出する液滴吐出法により、前記量子ドット中におけるCd、Pb、Crの含有率の総量が100ppm以下の量子ドットと、当該量子ドットを分散させる分散媒とを含む分散液を吐出して、吐出された前記分散液から前記分散媒の少なくとも一部を除去して得られた発光層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項13に記載の発光素子を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−9995(P2010−9995A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169412(P2008−169412)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】