説明

吐出装置、スクリーン印刷用原版製造方法

【課題】精度の高いスクリーン印刷用原版を簡単な工程で製造する。
【解決手段】メッシュスクリーンに硬化性樹脂液を塗布して網含有樹脂層を形成して処理対象物を構成させ、処理対象物を吐出装置50の配置部材2上に配置し、吐出液を吐出する吐出ヘッド53と配置部材2とを相対的に移動させ、所望位置の網含有樹脂層に未硬化の硬化性樹脂を溶解させる吐出液を着弾させ、着弾位置の硬化性樹脂を溶解する。配置部材2の裏面に位置する吸引室6を排気し、処理対象物を真空吸着すると、溶解した硬化性樹脂を含有する吐出液は吸引室6に吸引され、所望パターンの開口を有する網含有樹脂層が得られ、それを硬化させると、スクリーン印刷用の原版が得られる。写真マスクを用いる必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真製版技術を用いないスクリーン印刷用原版の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーン印刷に用いられる印刷用原版の製造技術としては、写真製版技術を用いたものが公知の技術として知られている。
具体的には、型枠に張られたスクリーンに感光性樹脂を塗布・乾燥させ、この上に写真製版したネガ型またはポジ型のフィルムを密着貼付して露光し、現像処理することで製造される。
【0003】
しかしながら、このような製造方法では多数の工程を必要とするだけでなく、目的とする原版を作製するための原版が別に必要であったり、複数種類の専用設備が必要であったりするために、多大な製造コストがかかる等、種々の問題点があった。
【0004】
近年、それらの問題を解決する目的で特許文献1〜5にあるように、インクジェット法を用いた印刷用原版の製造方法が幾つか考案されている。
しかしながら、これら新たに考案された製造方法であっても、依然として複数の工程を必要としたり、複数の構成部材を組み合わせたりする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-48105号公報
【特許文献2】特開平11-277712号公報
【特許文献3】特開2001−30458号公報
【特許文献4】特開2003−89282号公報
【特許文献5】特開2009−28909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記製造工程の煩雑さを解決するために創作されたものであり、その目的は、少ない工程かつ少ない構成部材でもってスクリーン印刷用原版を作製できる製造装置と製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、配置面に処理対象物が配置される配置部材と、吐出液を吐出する吐出孔が設けられた吐出ヘッドと、前記配置部材と前記吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動装置と、前記配置部材上に配置された処理対象物の表面である着弾面の所望位置に向けて前記吐出孔から前記吐出液を吐出させる制御装置と、を有する吐出装置であって、前記配置部材の裏面には、吸引室が設けられ、前記配置部材の裏面は前記吸引室内に露出され、前記配置部材には、前記配置部材の前記配置面側の空間と裏面側の空間とを接続する複数の細孔が形成され、前記吸引室の圧力が前記配置面の上の圧力よりも低下すると、前記配置面の上に位置する液体が前記吸引室内に吸引されるように構成された吐出装置である。
本発明は吐出装置であって、前記吐出ヘッドには、前記吐出孔が複数個設けられた吐出装置である。
本発明は吐出装置であって、前記制御装置には、記憶装置が設けられ、前記記憶装置に記憶された吐出位置に向けて前記吐出孔から前記吐出液が吐出されるように構成された吐出装置である。
本発明は吐出装置であって、前記吸引室は、前記配置部材の下方に配置され、底面には傾斜が設けられた吐出装置である。
本発明は吐出装置であって、前記傾斜の上端よりも下端に近い位置に、液体を排出する排液口と、前記排液口を導通させ又は閉塞させる開閉装置とが設けられた吐出装置である。
本発明は吐出装置であって、前記配置部材は、多孔質部材で構成された吐出装置である。
本発明は、吐出装置を用い、網中の所望位置の網目を閉塞させ、スクリーン印刷用原版を形成する原版製造方法であって、前記網に樹脂を塗布し、前記樹脂によって前記網の網目を塞いで前記網と前記樹脂とを含む膜状の網含有樹脂層を形成し、前記網含有樹脂層を有する前記処理対象物を前記配置部材上に配置し、排気装置を動作させて前記吸引室の圧力を、前記処理対象物の前記着弾面が露出された雰囲気の圧力よりも小さくしながら、前記吐出孔から、前記樹脂を溶解させる溶解液を前記吐出液として、前記着弾面の所望位置に向けて吐出して着弾した部分の前記樹脂を溶解させ、前記樹脂の溶解物を含有し、前記配置面上に位置する前記溶解液を、前記細孔によって吸引して前記吸引室内に移動させ、所望位置の前記網目が開けられた前記網含有樹脂層に含有される前記樹脂を硬化させて前記原版を得る原版製造方法である。
本発明は、原版製造方法であって、前記樹脂には、光硬化性樹脂を用い、所望位置の前記網目が開けられた前記網含有樹脂層に前記樹脂を硬化させる波長の光を照射して、前記網含有樹脂層に含有された前記樹脂を硬化させる原版製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
スクリーン印刷用原版を構成する硬化した樹脂層を得るために、記憶したパターンに従って未硬化の網含有樹脂層に吐出液を吐出するので、写真マスクを用いる必要が無く、製造工程を削減することができる。
また、最終原版を作成するための別原版等が不用になるため、製造コストも削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一例の吐出装置の斜視図
【図2】吐出孔を説明するための図
【図3】(a):配置部材を説明するための平面図 (b):配置部材と吸引室を説明するための断面図
【図4】(a):メッシュスクリーンを説明するための平面図 (b):その断面図 (c):処理対象物の断面図
【図5】(a):処理対象物の平面図 (b):処理対象物と配置部材と吸着室の断面図
【図6】(a):開口が形成された処理対象物の平面図 (b):吸引室に移動した溶液を説明するための断面図
【図7】本発明の他の例の吐出装置
【発明を実施するための形態】
【0010】
<吐出装置>
図1は、本発明の一例の吐出装置50を示す斜視図である。
吐出装置50は、台座51と、台座51上に位置するステージ1と、ステージ1よりも上方に位置する吐出ヘッド53とを有している。
ステージ1には、後述する板状の配置部材2が設けられている。
【0011】
吐出装置50には、吐出ヘッド53と配置部材2とを相対的に移動させる移動装置10が設けられている。台座51は、上方を向いた表面である支持面21を水平にして配置されている。
【0012】
移動装置10は、ここでは、配置部材2を台座51に対して移動させる配置部材移動装置26と、吐出ヘッド53を台座51に対して移動させるヘッド移動装置25とで構成されている。
【0013】
先ず、配置部材移動装置26を説明すると、配置部材移動装置26は、支持面21上に互いに平行に配置された二本の主レール52と、ステージ1に設けられ、ステージ1を主レール52が伸びる方向に沿って移動させる主レール上移動装置61とで構成されている。
【0014】
ステージ1は、二本の主レール52上に渡って乗せられており、例えば、主レール上移動装置61を、主レール52上に配置された車輪と、その車輪を回転させるモータとによって構成し、車輪を回転させてステージ1を主レール52上で走行させることで移動させることができる。
【0015】
次に、ヘッド移動装置25を説明すると、台座51のうち、二本の主レール52の間の部分よりも外側の左右位置に、それぞれ支柱55が配置され、その下端が台座51に固定されており、支柱55の上端には、二本の支柱55に渡るように、ブリッジ54が取り付けられている。
【0016】
ヘッド移動装置25は、ブリッジ54に設けられた副レール56と、吐出ヘッド53に設けられ、吐出ヘッド53を副レール56が伸びる方向に沿って移動させる副レール上移動装置62とで構成されている。
【0017】
副レール上移動装置62は、例えば、副レール56上に配置された車輪と、その車輪を回転させるモータとによって構成することができるが、それに限定されるものではない。この例では、吐出ヘッド53は、副レール上移動装置62によって、副レール56に取り付けられている。
【0018】
移動装置10は、制御装置65に接続されており、制御装置65との間で信号を入出力するように構成されており、制御装置65が出力する信号によって、移動装置10は、ステージ1と吐出ヘッド53とを移動させることで、配置部材2と吐出ヘッド53とを相対的に移動させ、配置部材2と吐出ヘッド53とを所望の相対位置で静止させることが出来る。
【0019】
ここでは、吐出ヘッド53の移動方向と、ステージ1、即ち配置部材2の移動方向とは水平面内に位置し、吐出ヘッド53と配置部材2とは、互いに直交する方向に直線状に移動するようになっている。吐出ヘッド53とブリッジ54とは、ステージ1よりも高い位置に配置されており、移動の際に接触しない。
【0020】
また、二本の支柱55間の距離は、ステージ1が、二本の支柱55の間を通って移動できる大きさにされており、吐出ヘッド53が配置部材2の移動経路の上方に位置する状態で、配置部材2が吐出ヘッド53の下方位置を通過すると、吐出ヘッド53は、配置部材2の移動によって、配置部材2の移動方向の先頭位置から最後尾位置まで、配置部材2上を移動することができる。従って、配置部材2上に、配置部材2からはみ出ない板状の処理対象物を乗せると、吐出ヘッド53は、乗せられた処理対象物の表面上を縦断することができる。
【0021】
また、吐出ヘッド53の移動経路の下方に配置部材2が位置する状態で、吐出ヘッド53がブリッジ54の一端から他端に移動することができる。このとき、配置部材2上に、配置部材2からはみ出ない板状の処理対象物を乗せておくと、吐出ヘッド53は、処理対象物の表面上を横断することができる。
【0022】
台座51の外側には、吐出液が蓄液された吐出液タンク57が配置されている。
吐出ヘッド53の内部は中空にされており、吐出ヘッド53は、吐出液タンク57に接続されている。
吐出液タンク57にはポンプ等が設けられており、吐出液タンク57内の吐出液を、吐出ヘッド53の中空部分に供給できるようになっている。
【0023】
吐出ヘッド53は、吐出ヘッド53の下方を向く面が、配置部材2と対面できるように副レール56に取り付けられており、吐出ヘッド53のステージ1と対面する底面には、図2の符号58で示すように、一端が吐出ヘッド53内部の中空部分に接続され、他端が吐出ヘッド53の底面に開口する複数の吐出孔(ノズル)58が設けられている。
吐出ヘッド53の内部には、吐出ヘッド53内に供給された吐出液を吐出孔58から所定量吐出させる吐出部品が設けられている。
【0024】
吐出部品は吐出孔58と一対一に対応しており、制御装置65によって制御されており、制御装置65から吐出を指示する信号が入力された吐出部品は、対応する吐出孔58から吐出液を吐出する。吐出孔58から一回の吐出による液滴量を制御することができるし、また、吐出するタイミングを変えて、所望量の吐出液を所定領域に向けて吐出することもできる。
【0025】
配置部材2は、処理対象物が配置される表面である配置面24は平坦にされており、配置面24は上方に向けられて露出されている。
配置部材2には、図3(a)、(b)に示すように複数の細孔17が設けられている。図3(b)は、図1のA−A線切断断面図に相当する。
【0026】
各細孔17の一端の開口は配置面24に配置され、他端の開口は配置部材2の裏面に設けられている。従って、各細孔17は、配置部材2の配置面24とその裏面との間を貫通している。
配置部材2の裏面には吸引室6が配置されている。
【0027】
吸引室6の内部は中空であり、配置部材2は、吸引室6の天井に設けられた開口に嵌め込まれ、配置部材2の裏面が、吸引室6の内部中空部分に露出するようにされている。従って、配置部材2の配置面24側の空間と、裏面側に位置する吸引室6の内部空間とは、複数の細孔17によって接続されている。
【0028】
本例では、例えば細孔17の直径は10μm程度であり、液体や気体はその細孔を自由に通過することができるようにされている。
吸引室6には、排気装置36が接続されており、排気装置36を動作させると、吸引室6の内部空間に存する気体は排気装置36によって排気され、細孔17を通って、配置面24側の空間の気体が吸引室6内に吸引される。配置面24上に液体が配置されている場合は、液体は、気体と共に、吸引室6内に吸引される。
【0029】
<製造方法>
この吐出装置50は、スクリーン印刷に用いられ、所望位置にインクを通過させる開口を有する原版を形成する装置であり、原版の製造工程を説明すると、まず、配置部材2上に配置する処理対象物を形成するため、図4(a)に示すメッシュスクリーン3を用意する。
【0030】
メッシュスクリーン3は、金属製等の枠体27と網体19とを有し、網体19が枠体27に張られて構成されている。網体19は、網28と、網28によって囲まれた隙間である網目29とで構成されている。図4(b)は、網体19の部分的な断面の拡大図である。
【0031】
また、液状で硬化可能な硬化性樹脂を用意しておき、この網体19の部分に硬化性樹脂を塗布し、網目29を硬化性樹脂で充填し、乾燥させて溶剤を蒸発させ、図4(c)に示すような、網28と未硬化の硬化性樹脂30とを含有し、膜状になっている網含有樹脂層20を形成する。
【0032】
この網含有樹脂層20が形成されたメッシュスクリーンから成る処理対象物4を、配置部材2上に配置する。
図5(a)は、配置した状態の処理対象物4の平面図であり、同図(b)は、処理対象物4と配置部材2と吸引室6との断面図である。
【0033】
吸引室6の内部空間に存する気体は排気装置36によって排気され、吸引室6の内部空間の圧力は配置面24上の雰囲気の圧力よりも低下されており、配置部材2の表面上の処理対象物4は、配置部材2の表裏の圧力差によって、配置部材2に真空吸着される。
【0034】
吐出液タンク57に配置された吐出液は、網含有樹脂層20に含有される未硬化の硬化性樹脂30を溶解させる液体である。
網含有樹脂層20に開口を形成する位置は予め制御装置65に設けられた記憶装置66に記憶されており、配置部材2と吐出ヘッド53とを相対的に移動させ、吐出ヘッド53の吐出孔58から、硬化性樹脂30を溶解させる液体を、網含有樹脂層20に開口を形成する位置を目標として、目標に向けて吐出し、目標に着弾させる。
【0035】
目標は、網目29内に位置する場所に設定されており、網目29に充填された硬化性樹脂30の表面上に着弾すると、着弾した部分の硬化性樹脂30が、吐出液によって溶解される。
硬化性樹脂30の溶解は、網含有樹脂層20の表面で開始され、溶解は、網含有樹脂層20の表面に沿った方向の成分と、深さ方向の成分とを有する方向に進行する。
【0036】
硬化性樹脂30の溶解が深さ方向に進行し、網含有樹脂層20の底面に達すると、硬化性樹脂30の溶解物を含有する吐出液、即ち、溶液が処理対象物4の底面に露出し、配置部材2と対面するようになる。
【0037】
細孔17の配置面24上の開口の大きさは、網目29の大きさよりも小さくされ、また、配置面24上の細孔17の開口の個数の単位面積当たりの数は、配置面24上の網目29の単位面積当たりの個数よりも多くされており、各網目29と配置面24には、少なくとも一個の細孔17の開口が位置するようにされている。
【0038】
配置部材2と対面した硬化性樹脂30の溶解物を含有する吐出液は、開口が対面する細孔17に吸引され、吐出液が着弾した網目29内の硬化性樹脂30が除去される。
網28は吐出液によって溶解されないので、吐出液が接触しても残存する。
本発明では、金属製の板等に細孔17を形成した配置部材2を用いることができるが、配置部材2を通気性を有する多孔質材料で構成することもできる。
【0039】
また、ここでは、処理対象物4を配置部材2に真空吸着させながら吐出液を着弾させたが、処理対象物4の所望位置の網目29の表面に、硬化性樹脂30を溶解させる吐出液を吐出、着弾させ、網目29内の硬化性樹脂30を溶解させて、吐出液が着弾した網含有樹脂層20の底面に、硬化性樹脂30を含有する溶液を露出させた後、吸引室6内を減圧して処理対象物4を配置部材2に真空吸着させ、細孔17によって、溶解された硬化性樹脂30を含有する吐出液を吸引室6内に吸引するようにしても良い。
【0040】
処理対象物4の、記憶装置66の記憶内容に対応する位置の網目29の硬化性樹脂30が除去されると、その除去部分によって、網含有樹脂層20には、図6(a)に示すように、網28が残存し、網目29が貫通した開口33が形成される。
【0041】
溶解した硬化性樹脂30を含有する吐出液の処理について説明すると、図6(b)(及び図3(b)、図5(b))の符号31は吸引室6の底面であり、傾斜が設けられており、底面31の傾斜の下方位置には、排液口32が設けられ、排液口32には排液管35が接続されている。
【0042】
排液管35には開閉装置7が設けられており、開閉装置7を開けると、排液口32は吸引室6の外部と接続され、開閉装置7を閉じると、排液口32は閉塞され吸引室6の外部との接続は遮断される。
【0043】
吸引室6を排気装置36によって排気して減圧する際には、開閉装置7は閉じた状態にし、排液口32から気体が吸引室6内に侵入しないようにしておく。
この状態では、貫通された網目29を有する開口33と細孔17とを通って吸引室6内に気体が流入する。
その流入する気体は排気装置36によって吸引室6の内部から排出される。
【0044】
他方、吸引室6内に吸引された吐出液は、吸引室6の底面31に落下し、傾斜した底面31に沿って上方から下方に流れて移動する。このとき、開閉装置7が閉じられているので、排気口32から排出されずに底面31の傾斜の下端部分に集合され、吸引された吐出液によって液溜まり34が形成される。
【0045】
処理対象物4の所望位置に開口33が形成された後、吸引室6の排気を停止する。吸引室6の内部が吸引室6の外部の圧力と同程度になると開閉装置7を開けることができ、開閉装置7を開けると、液溜まり34に位置し、溶解された硬化性樹脂を含有する吐出液は、重力によって排液管35を下方に移動し、吸引室6の外部に排出される。
【0046】
次に、原版を製造するために、開口33が形成された網含有樹脂層20を硬化させる。
この例では、用いた硬化性樹脂は、所定波長の光に反応して硬化する樹脂であり、開口33が形成された処理対象物4は、配置部材2上から露光装置内に移動させ、露光装置によって残存する硬化性樹脂に光を照射して硬化させると、記憶装置66に記憶されたパターンの開口33を有する原版が得られる。
【0047】
なお、吐出液量は網含有樹脂層20の硬化性樹脂30を溶解除去するのに必要十分な適量として、印刷パターンも考慮して事前に調整する必要がある。吐出液量が過剰になると、網含有樹脂層20の硬化性樹脂30を必要以上に溶解除去して印刷パターンの精細度を下げる虞がある。
【0048】
逆に吐出液量が不足すると、硬化性樹脂30が除去されるまでの時間が長くなるか、領域が狭くなる虞がある。制御すべき吐出液量の範囲としては1滴につき、1pリットル〜50pリットルであればよい。
【0049】
光反応性の硬化性樹脂材料については、スクリーン印刷等で一般的な光硬化性レジスト等であればよく、また、感光性樹脂を溶解除去する吐出液についても印刷ヘッドから吐出可能な粘度,表面張力の性状を有した液体であればよい。感光性樹脂層の材質、厚み、前記吐出液の種類、メッシュの材質および構造については、印刷用原版が製造できる範囲で自由に設定することができる。
【0050】
なお、感光性を有する硬化性樹脂としては、主成分に、光重合や光架橋が可能な水溶性高分子または溶剤可溶性高分子等の感光性樹脂がある。
具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、マレイン酸ジエステル、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、ビニルアミノ基、グリシジル基、アセチレン性不飽和基を有するモノマー、プレポリマー、ポリマーであり、適切な光重合開始剤、光増感剤、光架橋剤等が配合された溶液を網体19に塗布することができる。
【0051】
本発明では光硬化性の樹脂だけではなく、熱硬化性樹脂、電子線によって硬化する樹脂などの硬化性樹脂も含まれる。
吐出液は、樹脂主成分を溶解できる水溶性有機溶媒等である。
【0052】
本例では、網28の材質はステンレスであり、網28は、250本/inch程度であり、網目29の開口の大きさは約100μm角となっている。
その網28に形成する網含有樹脂層20の厚みは、25μm〜50μm程度であり、網28の片面に塗布する。
【0053】
なお、上記実施例では、吐出ヘッド53と配置部材2とは台座51に対して移動できるように構成されていたが、図7に示すように、配置部材2の移動方向とは垂直方向に長く、配置部材2の移動方向とは垂直な方向の処理対象物4の長さよりも長い範囲に吐出孔58が配置された吐出ヘッド53’を用いて吐出装置50’を構成すると、吐出ヘッド53’を静止させて配置部材2を移動させることで、配置部材2上の処理対象物4の所望位置に吐出液を吐出することもできる。
【0054】
逆に、このような長さの吐出ヘッド53’を台座51に対して静止させた配置部材2上で、吐出ヘッド53’の長辺方向とは垂直で水平な方向に、吐出ヘッド53’を台座51に対して移動させ、配置部材2上の処理対象物4の所望位置に吐出液を吐出することもできる。
要するに、本発明の移動装置10には、ステージ1と吐出ヘッド53、53’とを相対的に移動させる装置であれば含まれる。
【符号の説明】
【0055】
2……配置部材
3……メッシュスクリーン
4……処理対象物
6……吸引室
10……移動装置
17……細孔
20……網含有樹脂層
24……配置面
50、50’……吐出装置
53、53’……吐出ヘッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置面に処理対象物が配置される配置部材と、
吐出液を吐出する吐出孔が設けられた吐出ヘッドと、
前記配置部材と前記吐出ヘッドとを相対的に移動させる移動装置と、
前記配置部材上に配置された処理対象物の表面である着弾面の所望位置に向けて前記吐出孔から前記吐出液を吐出させる制御装置と、
を有する吐出装置であって、
前記配置部材の裏面には、吸引室が設けられ、前記配置部材の裏面は前記吸引室内に露出され、
前記配置部材には、前記配置部材の前記配置面側の空間と裏面側の空間とを接続する複数の細孔が形成され、
前記吸引室の圧力が前記配置面の上の圧力よりも低下すると、前記配置面の上に位置する液体が前記吸引室内に吸引されるように構成された吐出装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドには、前記吐出孔が複数個設けられた請求項1記載の吐出装置。
【請求項3】
前記制御装置には、記憶装置が設けられ、前記記憶装置に記憶された吐出位置に向けて前記吐出孔から前記吐出液が吐出されるように構成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の吐出装置。
【請求項4】
前記吸引室は、前記配置部材の下方に配置され、底面には傾斜が設けられた請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の吐出装置。
【請求項5】
前記傾斜の上端よりも下端に近い位置に、液体を排出する排液口と、
前記排液口を導通させ又は閉塞させる開閉装置とが設けられた請求項4記載の吐出装置。
【請求項6】
前記配置部材は、多孔質部材で構成された請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の吐出装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の吐出装置を用い、網中の所望位置の網目を閉塞させ、スクリーン印刷用原版を形成する原版製造方法であって、
前記網に樹脂を塗布し、前記樹脂によって前記網の網目を塞いで前記網と前記樹脂とを含む膜状の網含有樹脂層を形成し、前記網含有樹脂層を有する前記処理対象物を前記配置部材上に配置し、
排気装置を動作させて前記吸引室の圧力を、前記処理対象物の前記着弾面が露出された雰囲気の圧力よりも小さくしながら、前記吐出孔から、前記樹脂を溶解させる溶解液を前記吐出液として、前記着弾面の所望位置に向けて吐出して着弾した部分の前記樹脂を溶解させ、
前記樹脂の溶解物を含有し、前記配置面上に位置する前記溶解液を、前記細孔によって吸引して前記吸引室内に移動させ、
所望位置の前記網目が開けられた前記網含有樹脂層に含有される前記樹脂を硬化させて前記原版を得る原版製造方法。
【請求項8】
前記樹脂には、光硬化性樹脂を用い、
所望位置の前記網目が開けられた前記網含有樹脂層に前記樹脂を硬化させる波長の光を照射して、前記網含有樹脂層に含有された前記樹脂を硬化させる請求項7記載の原版製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−148501(P2012−148501A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9388(P2011−9388)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】