説明

吐水装置

【課題】眼に光が入ることなく、光を皮膚のみに良好に当てて、皮膚を刺激できる吐水装置を提供する。
【解決手段】発光部4で発生された光を水とともに光水流6として吐水できるように構成するとともに、光水流6の外周側からは、光を遮ることのできる気泡水流7を吐水できるように構成する。光水流により、吐水による刺激とともに光の刺激を皮膚に与えることができ、吐水装置の使用時に良好に光で皮膚を刺激することができるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に光の刺激を与えることのできる吐水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、シャワー空間の天井付近に円環形状のシャワーヘッドを設け、このシャワーヘッドの吐水部に、複数のLED(発光ダイオード)ランプを設けて構成したものが存在する。
【特許文献1】特開2003−319885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のシャワーヘッドに設けられているLEDは、照明装置として機能し、視覚面からのくつろぎ効果を得るためのものであった。
また、円柱状に吐水される水により、外側は光を遮る効果はあるが、使用者がシャワーを浴びる際にLEDからの光が眼に入り易く、LEDの光により眼を痛めてしまう可能性があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、光を眼に入れずに皮膚のみに照射できる吐水装置を提供するものであり、その請求項1は、発光部で発生された光を水とともに光水流として吐水できるように構成するとともに、該光水流の外周側からは、光を遮ることのできる気泡水流を吐水できるように構成したことである。
【0005】
また請求項2は、発光部で発生された光を吐水出口から照射できるように構成するとともに、照射される光の外周側からは、該光を遮ることのできる気泡水流を吐水できるように構成したことである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の吐水装置は、発光部で発生された光を水とともに光水流として吐水できるように構成するとともに、該光水流の外周側からは、光を遮ることのできる気泡水流を吐水できるように構成したことにより、光水流により、吐水による刺激とともに光の刺激を皮膚に与えることができ、吐水装置の使用時に良好に光で皮膚を刺激することができるものとなる。
なお、皮膚の知覚神経を刺激すると、すべての組織でインスリン様成長因子−I(IGF−I)が作られて、これが血液にのって全身に回り人体の健康増進作用が高まることが知られており、皮膚を刺激して良好に健康増進作用を高めることができるものとなる。
また、光水流から外に漏れようとする光は、外周側の気泡を含んだ気泡水流により遮蔽されるために、光が眼に入ることがなく、眼を痛めることなく皮膚のみに良好に光を当てることができるものとなる。
【0007】
また、発光部で発生された光を吐水出口から照射できるように構成するとともに、照射される光の外周側からは、該光を遮ることのできる気泡水流を吐水できるように構成したことにより、吐水出口から光を照射させて、手等の皮膚に光の刺激を与えることができ、これにより良好に健康増進作用を高めることができるものとなる。
また、外周側から吐水される気泡水流により光は遮られて、外側へは光が漏れないために、眼に光が入ることがなく、眼を痛めることなく皮膚のみに良好に光を当てることができるものとなる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施例の吐水装置の概略断面構成図である。
吐水装置1の下向きに開口された吐水出口1aの中央部には光流路2が形成されており、この光流路2の外周には外周流路3が形成されている。
光流路2の上面側の吐水装置1内には、発光部4が設けられており、この発光部4は、青色光(420nm〜520nm)を含む光、好ましくは、青色光(420nm〜520nm)を含みかつ赤色光を含まない可視光を発生することのできる光源であり、例えば高輝度青色LEDで構成されている。
【0009】
この発光部4が点灯されると、光流路2内を通り真下に吐水される整流内に、光導波効果で光が導かれ、整流が光を含んだ光水流6として吐水されるものであり、この光水流6を人体の皮膚に当てることにより、水が当たる刺激と同時に、波長420nm〜520nmの青色光の固有エネルギーにより、光の刺激を皮膚に与えることができるものである。
なお、高輝度青色LEDからの青色光は指向性が鋭く、屈折率が大きいために、外側へ光が漏れ難く、下方の手等の皮膚に対して確実に光の刺激が与えられるものとなる。
【0010】
また、吐水装置1の外周流路3の吐水出口1a側先端には、泡末を生成させるメッシュ状の気泡発生部5が設けられており、気泡発生部5を通過することにより、外周流路3を通り吐出される水は気泡を含んだ気泡水流7となり、光水流6の外周側に気泡水流7が吐水されるように構成されている。
この気泡水流7は、光水流6の外周側に吐水されることで、光水流6から外側へ漏れようとする光をこの気泡水流7で良好に遮ることができ、従って、光水流6の光が外側へ漏れることが防がれて、光が眼に入ることなく、良好に手等の皮膚のみに当たるように構成されている。また、この気泡水流7は、マイクロバブル水にすることもでき、同様にマイクロバブル水により光が外部へ漏れることが防がれる。
【0011】
このような吐水装置1は、例えば図2に示すように、浴槽Bの長手方向端側に立ち上げ状に配置して使用することができる。
図2の場合は、吐水装置1は浴槽Bのフランジから立ち上がる立ち上がり部1bの上端に湾曲部1cが形成され、湾曲部1cから浴槽B内に向かって下傾状に下傾部1dが一体形成されて、この下傾部1dの先端が吐水出口1aとなっている。
【0012】
この吐水出口1aは、図3に拡大して示すような水平方向に横長状に形成され、中央部に横長の光流路2が形成され、その上下に外周流路3a,3bが設けられて、この外周流路3a,3bからは前述した気泡を含んだ気泡水流7、またはマイクロバブル水が吐水されるものであり、中央の光水流2からは発光部4からの光を光導波効果で導く整流が吐水されるものである。
浴槽B内に入浴中に吐水装置1から吐水させることにより、首や肩に吐水とともに光が当たり、肩や首の皮膚を良好に光と吐水される水で刺激して、良好に健康増進作用を高めることができるものとなる。また、マイクロバブル水の温浴効果により、更に良好に健康増進作用を高められる。
また、光は気泡水流7またはマイクロバブル水に遮られるため、眼に入ることが防がれ、良好に皮膚のみに光が当たるものである。
【0013】
なお、図2のような吐水装置1においては、図4に示すように、光流路2の上方のみに外周流路3aを形成させておいても、入浴者の眼に光を当たらなくすることができるものである。即ち、この場合は、吐水装置1の下傾部1d先端の吐水出口1aから下傾状に吐水されるため、上方側に外周流路3aのみを設けておいても、浴槽B内の入浴者に対し良好に光を遮って眼に入らないようにすることができるものである。
【0014】
次に、図6に示すものは第2実施例であり、図5では一例としてのハンドシャワーを示す。
吐水装置11は、握り部11cの先端にヘッド部11bが形成されており、ヘッド部11b先端の吐水口中央部には光を照射することのできる光流路2が形成され、その外周側に外周流路3が形成されている。この外周流路3の先端には泡末水を生成させることのできるメッシュ状の気泡発生部5が設けられており、外周流路3を流れて気泡発生部5で気泡が発生された気泡水流7またはマイクロバブル水が吐水されるものである。
【0015】
中央部では、発光部4で発生された光が光流路2を通り照射光8として下方側へ照射されるように構成されており、光のみの照射光8を良好に手等の皮膚に当てて健康増進作用を高めることができ、しかも、周囲に同時に気泡水流7またはマイクロバブル水が吐水されることで、光の外側への漏れを良好に気泡水流7またはマイクロバブル水で遮蔽することができ、眼に光が入らないようにして、良好に皮膚のみに光を当てて皮膚を刺激することができるものである。
【0016】
なお、図7に示すように、吐水装置11のヘッド部11bの上面外側に透光部材9を設け、その外側に発光部4を設けた構成であっても良く、発光部4からの光は、透光部材9から光流路2を通り出口側から照射光8として照射されるものである。
なお、吐水装置11全体を透明素材で形成させ、外側に発光部4を設ける構成としても良く、その場合は、光が外周流路3側へ漏れないように、内部にしきりを設けておくと良い。
【0017】
なお、図8は足浴用水栓を示すものであり、浴室13の壁面13aから室内へ水平に突出させて足浴用水栓14が設けられている。
この足浴用水栓14内には、図9に拡大して示すように、3個の発光部4a,4b,4cが間隔をおいて設けられ、各発光部4a,4b,4cから青色の光が発せられるように構成されており、各発光部4a,4b,4cから下方へ延びて光流路2a,2b,2cが配置され、発光部4a,4b,4cからの青色の光を光導波効果で下方へ導き、光流路2a,2b,2c内を流れる水の中に青色の光を入れて、光水流6a,6b,6cとして下方へ向かって吐水できるように構成されている。
また発光部4a,4b,4cの上方の足浴用水栓14内には、流路3が形成されており、この流路3は足浴用水栓14の先端側で下方へ曲げられて、下方に向かって微細気泡(マイクロバブル)を含む気泡水流7を吐出できるように構成されている。
【0018】
このような足浴用水栓14では、青色光を含む光水流6a,6b,6cと、微細気泡(マイクロバブル)を含む気泡水流7が別々に吐水されるものであり、図8に示すように、浴室13内でイスに座り足を足浴用水栓14の下方に入れ、良好に光水流6a,6b,6cを足に当て、また気泡水流7を足に当てて使用することができるものであり、座った人の手前側に気泡水流7が吐水されるため、光水流6a,6b,6cからの光が使用者の眼に入ることはなく、良好に気泡水流7で光を遮ることができるものであり、光水流6a,6b,6cを足に当てることで足が刺激されて健康増進作用が高められ、また微細気泡(マイクロバブル)を含む気泡水流7による温浴効果により、更に健康増進作用が高められるものである。
【0019】
なお、図10は、皮膚の知覚神経を刺激することで放出され、健康増進作用を有するインスリン様成長因子−I(IGF−I)の産出を促すカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)(単位はpg/ml)の放出濃度を測定した結果を示すものである。
マウスの脊髄後根神経節細胞を5日間培養後、10分間各色の光を照射し、培養上清中に放出されたカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の濃度を測定した。
図中、左側のNoは光を照射しなかった場合であり、図中Blueは青色LEDからの青色光(420〜520nm)を照射した場合であり、図中Redは赤色LEDからの赤色光(570〜670nm)を照射した場合であり、図中Greenは緑色LEDからの緑色光(475〜575nm)を照射した場合である。
また、図中n=5は、サンプル数が5であることを示している。
測定結果は、光を照射しなかった場合は130pg/ml、青色光の場合は170pg/ml、赤色光の場合は80pg/ml、緑色光の場合は130pg/mlのCGRPの放出濃度が測定され、この結果、光を照射しなかった場合と比較して、CGRP放出濃度は、青色光では増加し、赤色光では減少し、緑色光では変化なしであった。
以上の結果によりIGF−Iを増加させるためには青色光が最も適していることが確認された。青色光によるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出の増加は、青色光による水の機能もしくは構造変化が重要に寄与すると思料される。
【0020】
なお、更に図11に示すような実験装置を使用して実験を行った。
即ち、図11の装置では、水槽16に循環路17が接続されており、循環路17内には吸い込みポンプ18と微細気泡を発生させる微細気泡発生装置19を設けておく。浴槽16内には、板21を立てて、この板21にケージ22を取り付け、ケージ22内にマウスMを入れて、水槽16内にマウスMの頭部を除く体が浸かる程度に水Wを入れる。また、水槽16の外側に、水Wの水面よりも下方位置に青色光を発する青色LED20を設けて、青色LED20からの光がマウスMに当たるように設定した。このような装置において、五匹のマウスMを使用して実験を行い、図12の結果が得られた。
【0021】
なお、微細気泡発生装置19で発生されて浴槽16内に噴出される微細気泡Bは、直径100マイクロメートル以下のマイクロバブルである。また、浴槽16内の水Wは40℃に設定したものであり、マウスMを40℃の水Wに5分間浸漬させた場合のインスリン様成長因子−I(IGF−I)の濃度を測定した結果を、白抜きのControlで示す。
また、マイクロバブルMBのみを5分間マウスMに作用させた場合のインスリン様成長因子−I(IGF−I)の濃度を測定した結果を、複数の点を入れた部分で示す。
また、マイクロバブルMBと青色光を同時にマウスMに5分間作用させた場合のインスリン様成長因子−I(IGF−I)の濃度を測定した結果を、黒色の部分で示す。
図12に示すように、マウスの心臓,肺,肝臓,腎臓,胃,空腸,脳,脊髄,皮膚,血漿の各部位において測定を行ったが、この結果、マイクロバブルMBのみをマウスMに作用させた場合でもIGF−1は増加するが、マイクロバブルMBと青色光を併用させるとIGF−1の増加が各部位とも一層促進されていることが確認された。
この結果、マイクロバブルMBと青色光との併用は、健康促進作用を効率良く増加させることのできる方法として有効であると言える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施例の吐水装置の概略断面構成図である。
【図2】吐水装置を浴槽に設けた場合の斜視構成図である。
【図3】図2における吐水装置の吐水出口の拡大構成図である。
【図4】吐水出口の変更例を示す拡大構成図である。
【図5】第2実施例の一例としてのハンドシャワーの使用状態の斜視構成図である。
【図6】第2実施例の吐水装置の使用状態の概略断面構成図である。
【図7】発光部を外側に設けた場合の吐水装置の概略断面構成図である。
【図8】足浴用水栓を使用している状態の使用状態図である。
【図9】足浴用水栓の拡大断面構成図である。
【図10】皮膚の知覚神経を刺激することで放出され、健康増進物質であるインシュリン様成長因子(IGF−I)の産出を促すカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の放出濃度を測定した結果を示すデータ図である。
【図11】実験装置の概略構成図である。
【図12】図11の装置を用いて実験し、インシュリン様成長因子(IGF−I)濃度を測定した結果を示すデータ図である。
【符号の説明】
【0023】
1,11 吐水装置
1a 吐水出口
2,2a,2b,2c 光流路
3 外周流路
4,4a,4b,4c 発光部
5 気泡発生部
6,6a,6b,6c 光水流
7 気泡水流
8 照射光
9 透光部材
13 浴室
13a 壁面
14 足浴用水栓
19 微細気泡発生装置
16 水槽
17 循環路
18 吸い込みポンプ
20 青色LED
21 板
22 ゲージ
M マウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部で発生された光を水とともに光水流として吐水できるように構成するとともに、該光水流の外周側からは、光を遮ることのできる気泡水流を吐水できるように構成したことを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
発光部で発生された光を吐水出口から照射できるように構成するとともに、照射される光の外周側からは、該光を遮ることのできる気泡水流を吐水できるように構成したことを特徴とする吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−95547(P2009−95547A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271292(P2007−271292)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】