向上した成長障害の処置方法
本出願は、成長ホルモンが所望の処置方法である状態および疾患の処置において、成長ホルモンと組み合わせて遊離脂肪酸調節因子を使用する方法に関する。特に、本発明は、向上した成長障害の処置方法、ならびに成長ホルモン処置の有害な結果を予防および/または減少させるための方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長ホルモンが所望の処置方法である、状態および疾患に関する。特に、本発明は、向上した成長障害の処置方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモン(GH)治療は、種々の状態の処置に使用される。しかし、従来のGH治療は、有害な副作用の存在を免れ得ない。GH治療の副作用としては、以下が挙げられる:耐糖能異常および/または糖尿病、水腫、良性頭蓋内圧亢進、関節痛、筋肉痛、糖尿病患者における血糖コントロールの悪化、知覚障害、および毛根管症候群。水腫は、細胞、組織、または漿膜腔(例えば、腹部)中の過剰な量の水状液の蓄積として定義される。症状としては、眼の周り、または足、足首、および脚における外表面の腫れが挙げられる。GH誘発性の塩貯留および水分貯留は、良性頭蓋内圧亢進を引き起こし得る。良性頭蓋内圧亢進は、占拠性病変の非存在下での増大した髄液圧によって特徴付けられる。これは、頭痛、視力喪失、悪心、嘔吐、および乳頭浮腫を示し得る。関節痛は、1箇所または複数個所の関節の疼痛である。筋肉痛は、任意の筋肉の動かす際の疼痛または不快症状である。知覚障害は、異常な灼熱感または穿痛感をいう用語であり、これは、一般的に手、腕、脚、または足において感じられるが、身体のいかなる部分でも起こり得る。毛根管症候群は、手首の腱または靭帯が(しばしば炎症により)肥大化する場合に起こる。手首の骨および靭帯で形成されるトンネルの狭窄は、親指の付け根で指および筋肉に到達する神経を圧迫する。症状は、指、特に、親指および人差し指および中指のヒリヒリ、チクチクするしびれ感から、拳を握るかまたは拳を作ることの困難さ、物を落とすことにまでに及ぶ。
【0003】
成長ホルモン治療を用いて処置された子供の中の数症で白血病が報告されたことから、成長ホルモン治療に伴う「癌の成長促進」の可能性にいくらか関心がよせられている。
【0004】
成長ホルモンは、インスリンシグナルカスケードにおける複数の工程を通じてインスリンの作用をアンタゴナイズすることが公知である。GH治療は、肝臓でのグルコース産生および末梢でのグルコース利用の増加のインスリン媒介抑制を減ずることが示されている(Sugimoto et al 1998)。いくつかのGHのインスリンアンタゴナイズ効果は、増大した脂質分解及びその後の血漿遊離脂肪酸(FFA)の増加がグルコース取り込みの阻害を導くことに起因していると考えられている(Moller et al 1987)。FFAは、骨格筋中のインスリン媒介グルコース取り込みを減ずることが公知であるので、循環FFAの増加は、インスリン感受性の減少に関連する(Felber et al 1964,Reaven et al 1988,Randle et al 1963)。
【0005】
幼児期のGH治療の糖尿病誘発効果は、近年強調されている。GH治療中の子供および青少年における2型糖尿病の高い罹患率が、この疾患の最大危険度の集団において見出された(Cutfield et al 2000)。出生時低体重の成人男性は、2型糖尿病、異常脂質血症、および高血圧症の罹患率が高い(Barker et al 1993,Barker 1994,Law et al 1991)。
【0006】
子宮内胎児発育遅延(IUGR)を示した思春期前の(prepubertal)の低身長児は、正常な出生時体重であった低身長児と比較して、明らかに低いインスリン感受性を有する、すなわち、彼らは、インスリン抵抗性であることが示されている(Hofman et al 1997)。正常な女児と比較した場合、ターナー症候群を有する女児はまた、低いインスリン感受性を示すことが示されている(Caprio et al 1991)。
【0007】
低下したインスリン感受性または二次的なインスリン過剰症は、上記の障害の全ての病因に関わる(Reaven et al 1991)。インスリン抵抗性は、2型糖尿病の危険性のある患者における2型糖尿病のマーカーであることが見出されている(Martin et al 1992)。非糖尿病性正常血糖のヒトおよび動物において、空腹時のインスリン過剰(hyperinsulinemia)は、インスリン感受性の低下に対する補完的反応である全身のインスリン分泌の増加を示す(Kahn et al 1993)。さらに、インスリン抵抗性は、高血圧症の病因に関与する。
【0008】
インスリン抵抗性および二次性インスリン過剰症は、出生時低体重の成人において比較的一般的に発症する高血圧症の病因において重要である(Barker et al 1993,Law et al 1991)。インスリンは、一酸化窒素の放出によって媒介される重要な血管拡張機能を有する(McNally et al 1995,Steinberg et al 1994)。インスリン誘発性血管拡張は、インスリン抵抗性によって特徴付けられる障害において低下する(Laakso et al 1992,Laakso et al 1993,Feldman et al 1993)。
【0009】
出願人は、IUGRの子供におけるGH治療の間に発症するインスリン感受性の顕著な低下が、処置の終了後3ヶ月間でもなお示されることを以前に観察している(Cutfield,et al 2000(2))。
【0010】
上記の観察に照らせば、成長障害のGH処置の副作用を排除する方法、または少なくとも軽減する方法を確立することは明らかに有益である。標準的なGH治療の体細胞原性(somatogenic)効果における相乗効果を生むがその所望でない副作用を減少させる化合物と、GH置換治療とを組合せる方法を確立することが、特に有益である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、成長ホルモン(GH)処置を必要とするか、またはその可能性を有する状態の処置において、GHおよび少なくとも1種の遊離脂肪酸(FFA)調節因子を含む組合せ治療の使用に関する。
【0012】
特に、本発明は、GH処置の方法に関し、これによってGH処置の体細胞原性効果は向上され、そしてhGH処置のいくつかの代謝性および乳腺刺激性の副作用が減少される。
【0013】
より詳細に、本発明は、成長ホルモン置換治療が必要な若年者患者の処置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長障害を処置する方法を提供し、前記方法は、前記哺乳動物に有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を成長ホルモンと組合せて投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させる方法を提供し、前記方法は、前記哺乳動物に有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を成長ホルモンと組合せて投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0016】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長ホルモン処置、好ましくは成長障害の有害な結果を予防または処置する方法を提供し、前記方法は、有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を成長ホルモンと組合せて投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、水腫である。別の好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、骨梁減少である。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0017】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長障害を処置するための医薬または組成物の製造における、成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子との組合せの使用に関する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0018】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させる医薬の製造における、少なくとも1種のFFA調節因子の使用に関する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。なお別の実施形態において、前記医薬は、前記成長ホルモンおよび前記FFA調節因子との組合せを含む。
【0019】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における、好ましくは成長障害を患った哺乳動物における、成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための医薬の製造における、少なくとも1種のFFA調節因子の使用に関する。好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、水腫である。別の好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、骨梁減少である。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。なお別の実施形態において、前記医薬は、前記成長ホルモンおよび前記FFA調節因子との組合せを含む。
【0020】
なおさらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法および使用の実施に適切な組成物を含む。特に、本発明は、成長障害を処置するための、および/または成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための組成物または医薬を提供し、前記組成物または医薬は成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子を含む。本発明の1つの実施形態において、前記FFA調節因子は、フィブリン酸またはフィブリン酸誘導体、好ましくはフェノフィブラートである。本発明の別の実施形態において、前記FFA調節因子は、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体、好ましくはアシピモックスである。
【0021】
本発明の方法、使用、または組成物のいずれかにおいて、前記FFA調節因子の投与は、成長ホルモン投与の前、成長ホルモン投与と組合せて、または成長ホルモン投与に続いて、行われ得る。
【0022】
定義
本明細書中に使用される場合、用語「成長ホルモン」または「GH」としては、以下が包含される:成長ホルモン;成長ホルモン分泌促進物質(GHSs);成長ホルモン放出タンパク質/ペプチド(GHRP);成長ホルモン放出ホルモン(GHRH);ソマトトロピン放出阻害因子(SRIF);成長ホルモンまたは成長ホルモン分泌促進物質の内因的(endogenous)放出を増大させる化合物;GHSの薬学的に受容可能な塩;アナログ;模倣物;機能的に等価なリガンド;プロドラッグ;代謝物;誘導体;アゴニスト;神経成長ホルモンレセプターの活性を増大する化合物;神経成長ホルモンレセプターに結合する化合物またはその化合物の濃度を増大させる化合物;GH、GHS、またはリガンド活性の阻害を減ずるかまたは防止する化合物;またはそれらのアンタゴニストのインヒビター。
【0023】
成長ホルモンおよび産生を刺激するか、またはその阻害を減ずるかまたは防止する薬剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:GHRP−1、GHRP−2(KP−102としてもまた公知)、GHRP−6、ヘキサレリン、G−7039、G−7502、L−692,429、L−629,585、L−163,191(aka MK−0677)、イパモレリン(ipamorelin)、NN703、GHS−25、CP−424,391、グレリン、SM−130686、もしくはGHRHのような成長ホルモン放出ペプチド、またはGHアンタゴニストのインヒビター(成長ホルモンに結合する物質または体内でGHの作用を防止するかまたは減ずる他の物質)。後者の化合物は、抑制機構の除去によって、有効なGH濃度に対して間接的な効果を発揮し、そしてこれらとしては、ソマトスタチン放出抑制因子(SRIF)のような物質が挙げられる。
【0024】
GHは、ネイティブ配列または改変形態の任意のGHであり得、そして任意の供給源(天然であれ、合成であれ、または組換えであれ)由来でもあり得る。例としては、ヒトGH、ウシGH、ラットGH、およびブタGHが挙げられる。しかし、GHは、ヒトGHが利用されることが好ましく、組換えヒトGHがより好ましい。ヒト成長ホルモンの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:天然であるか、またはヒトネイティブ配列を有する組換えGHであるヒト成長ホルモン(hGH)(例えば、GENOTROPINTM、ソマトトロピン、またはソマトロピン)、および組換えヒトネイティブ配列を含む組換え成長ホルモン(rGH)(これらとしては、組換えDNA技術によって生産された任意のGHまたはGH改変体をいう)、N末端にメチオニンを有するかまたは有さない成熟GH、ソマトレム、ソマトトロピン、およびソマトロピン。別の例としては、例えば、1988年7月5日に発行された米国特許第4,755,465号およびGoeddel et al.,Nature,282:544(1979)に記載されるプロセスによって大腸菌中で生産されたメチオニルヒト成長ホルモン(met−hGH)が挙げられる。Met−hGHは、PROTROPINTM(Genentech,Inc.U.S.A.)として市販され、N末端メチオニン残基の存在を除いて、天然ポリペプチドと同一である。別の例としては、NUTROPINTM(Genentech,Inc.,U.S.A.)として市販される組換えhGHが挙げられる。後者のhGHは、このメチオニン残基を欠き、そして天然のホルモンと同一のアミノ酸配列を有する。Gray et al.,Biotechnology 2:161(1984)を参照のこと。別のGHの例としては、米国特許第4,670,393号に記載される純粋な体細胞原性活性を有し、そして乳腺刺激性活性のないGHの胎盤型であるhGH改変体が挙げられる。例えば、WO 90/04788およびWO92/09690に記載されるもののようなGH改変体もまた包含される。
【0025】
特定の実施形態において、それらのGH分子またはGH改変体は、修飾され、好ましくはペグ化される。
【0026】
本明細書中で使用される場合、疾患の「処置」または疾患に対する「治療」は、疾患にかかりやすいが、疾患の症状を未だに経験していないか、または示していない動物において疾患が発症するのを予防すること(予防的処置)、疾患を阻害すること(その発病を遅らせるか、または止めること)、疾患の症状または副作用の軽減を提供すること、および疾患を軽減すること(疾患の退行を引き起こすこと)を包含する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「成長ホルモン処置の有害な結果」とは、成長ホルモン処置によって引き起こされる任意の副作用または有害事象をいう。従って、この用語としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:耐糖能異常、インスリン抵抗性、二次性インスリン過剰症、糖尿病、異常脂質血症、高血圧症、肥満症、ナトリウム貯留および水分貯留に関連する状態(水腫を含む)、骨梁減少、良性頭蓋内圧亢進、関節痛、筋肉痛、糖尿病患者の血糖コントロールの悪化、知覚障害、および手根管症候群。好ましくは、本発明は、水腫および/または骨梁減少の処置に関する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「遊離脂肪酸(FFA)調節因子」とは、脂質低下効果を有する、すなわち、FFAレベルを低下させる任意の化合物をいう。本発明のFFA調節因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フィブリン酸およびその誘導体、ならびにニコチン酸(ナイアシン)およびその誘導体。フィブラートの効果は、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)の活性化によって媒介される。PPARαは、肝臓中の脂肪酸の異化経路を刺激することによってフィブラートの低トリグリセリド(hypotriglyceridemic)効果を媒介すると考えられている。PPARαアクチベータはまた、脂肪組織の量を減少させる。フェノフィブラート、シプロフィブラート、およびGW9578は、動物モデルにおいて、体重および脂肪組織の量に対して、悪影響を与えることなく、インスリン抵抗性を低下させることが見出されている。PPARαアゴニストは、インスリン感受性作用を直接的に与え得る。ベザフィブラートは、脂肪沈着を減少させ、そしてインスリン感受性を改善することが示されている。脂肪細胞において、ニコチン酸は、アデニリルシクラーゼを阻害し、ホルモン感受性リパーゼの抑制を生じることによって脂肪分解を低下させる(Holm et al.,(2000)Molecular mechanisms regulating hormone−sensitive lipase and lipolysis.Annu Rev Nutr 20:365−393)。一晩のアシピモックス(ニコチン酸の長期間作用性アナログ)投与は、脂肪分解を阻害し、血漿FFAレベルを低下させ、インスリン抵抗性を低下させ、炭水化物の酸化を増加させ、経口的ブドウ糖負荷を改善し、そして痩せた糖尿病でない被験体および肥満であるが糖尿病でない被験体、ならびに耐糖能異常または2型糖尿病を有する被験体の血漿インスリンレベルを低下させることが示されている(Santomauro et al.(1999)Overnight lowering of free fatty acids with acipimox improves insulin resistance and glucose tolerance in obese diabetic and nondiabetic subjects.Diabetes 48:1836−1841)。フィブリン酸誘導体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェノフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ベザフィブラート、およびシプロフィブラート。ニコチン酸(ナイアシン)誘導体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:持続放出ナイアシン;制御放出ナイアシン;ナイアシンアミド(ニコチンアミド);アシピモックス(5−メチルピラジンカルボン酸4−オキシド);およびニコチン酸エステル(ニコチン酸メチル、ニコチン酸ヘキシル)、ニセリトロール、アシフラン(acifran)、シクロヘキシルフェニルニコチナート、およびシクロヘキシルフェニル−オキシドニコチナート。
【0029】
本明細書中で使用される場合、成長ホルモンおよび1種またはそれ以上の遊離脂肪酸調節因子についての用語「共投与」、「共投与される」、および「組合せ」とは、以下を意味することを意図し、そして以下を参照し、そして包含する:
GHおよびFFA調節因子が、処置の必要な患者へと実質的に同時に成分を放出する単回投薬形態に一緒に処方される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの同時投与、
GHおよびFFA調節因子が、処置の必要な患者によって実質的に同時に取り込まれる別の投薬形態に各々別に処方され、成分が患者に実質的に同時に放出される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの実質的同時投与、
GHおよびFFA調節因子が、各投与の間の有意な時間間隔で、処置の必要な患者によって連続的に取り込まれる別の投薬形態に各々別に処方され、成分が患者に実質的に異なる時間で放出される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの連続投与、および
GHおよびFFA調節因子が、制御された様式で成分を放出する単回投薬形態に一緒に処方され、これらが、患者によって同じ時間におよび/または異なる時間で、同時に、連続して、および/またはオーバーラップして投与される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの連続投与。
【0030】
hGH処置の「体細胞原性効果」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:成長促進、体重増加、および骨−タンパク同化作用(osteo−anabolic action)。
【0031】
hGH処置の「乳腺刺激性効果」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:プロラクチンレセプター(PRLR)シグナル伝達に関連する外因性成長ホルモンの効果。これらの効果としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:乳腺発達、浸透バランスおよび細胞増殖の変化。
【0032】
hGH処置の「代謝効果」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:脂質分解の刺激、IGF−Iの分泌刺激、および糖尿病誘発効果。
【0033】
(GHを使用して処置される状態)
GHを使用して処置される状態としては、以下が挙げられる:成長障害、ならびに成人性成長ホルモン欠損症(aGHD)、慢性腎不全(CRI)、エイズの消耗性疾患(Aids wasting)、老化、勃起障害、HIVリポジストロフィ、線維筋痛、骨粗鬆症、記憶障害、うつ病、クローン病、外傷性脳損傷、くも膜下出血(Subarachnoid haemorrhage)、ヌーナン症候群、末期腎不全(ESRD)、骨髄幹細胞レスキュー(Bone marrow stem cell rescue)、代謝症候群、およびグルココルチコイドミオパシー。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「成長障害」とは、低身長を引き起こす任意の状態をいう。このような状態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症(GHD)、子宮内胎児発育遅延(IUGR)、妊娠期間のわりに小柄に生まれた子供における成長阻害(SGA)、超低出生体重(VLBW)、異形成症を含む骨格異常、染色体変異(ターナー症候群、ダウン症、プラダーウィリ症候群)、慢性腎不全関連成長遅延、体質性成長遅延、嚢胞性線維症関連成長遅延、特発性低身長(ISS)、小児におけるグルココルチコイド処置に起因する低身長、早産児に見られる成長不全、または低身長を引き起こす任意の他の状態。
【0035】
(GH欠損症)
成長ホルモン欠損症の診断は、成長ホルモン刺激試験を必要とする。使用される試験としては、インスリン低血糖試験、またはインスリン耐性試験(ITT)、L−ドーパ刺激試験、アルギニン注入試験、およびアルギニン/GHRH試験が挙げられる。3〜5ng/mL未満の成人における成長ホルモン分泌レベルのピークは、GHDを示す。子供において、10ng/mLを下回る値は、不十分であると考えられる。成長ホルモン欠損症は、通常、原則毎日の皮下注射によって与えられる組換えヒト成長ホルモンで処置される。
【0036】
子供におけるGHDの様々な原因があり、そしてほとんどが視床下部または下垂体における問題に関連し得る。特に稀な場合において、成長ホルモンの体内利用の不具合が生じる。成長ホルモン欠損症を有するほとんどの子供において、不具合が視床下部にある。他の下垂体ホルモンがまた通常分泌されない場合、子供は下垂体機能低下症を有すると言われている。先天性下垂体機能低下症において、下垂体または視床下部の異常な形成は、胎児の発育の間に生じる。後天性下垂体機能低下症は、出産の間、または出産後に生じる下垂体または視床下部に対する損傷によって生じる。重度の頭部損傷、疾患に起因する脳傷害、放射線治療、または腫瘍によって引き起こされ得る。
【0037】
子供におけるGHDの世界的な罹患率は、生産児10,000人に少なくとも1人であると見積もられ、そしていくつかの特定の国は、生産児4,000人に1人という高い罹患率を報告している。成長ホルモンが不足している子供は、通常、1年に2インチ未満の成長パターンを示す。多くの場合において、子供は、2または3歳までに正常な成長をし、次いで、遅延型成長の兆候を示し始める。低身長の他の可能性が除外される場合、成長ホルモン欠損症の試験が行われる。毎日の皮下注射に分けて体重1kgにつき0.30mgまでの週用量が、GHD子供に対して推奨される。
【0038】
成人において、成長ホルモンの不足は、以下の状況において発症し得る;大きな下垂体部腫瘍の存在、下垂体腫瘍または他の脳腫瘍の手術後または放射線治療後、視床下部障害に続いて、および成人における幼児期の成長ホルモン欠損症の持続。成人性GHDの臨床的特長としては、以下が挙げられる:倦怠感、筋衰弱、運動能力の低下、体重増加、体脂肪の増加および筋肉量の減少、LDLコレステロールおよびトリグリセロールの増加、ならびにHDLコレステロールの減少、心臓麻痺、心不全、および発作の危険性の増加、骨量の減少、不安およびうつ病、健康感覚の著しい欠損、社会的隔離、ならびに活力の減少。米国において、計35,000人と推定される成人がGHDを有し、そして毎年約6,000人がGHDの新規症例を発症する。平均70kgの男性について、治療開始時の推奨される投薬量は、皮下注射で毎日約0.3mgである。個々の要求に基づいて、35歳より若い患者において1日あたり最大1.75mgまで、および35歳より上の患者において1日あたり最大0.875mgまで、用量は増加し得る。特に、年配の患者または過体重の患者において、有害な事象の発症を最小限にするために、より低用量とする必要があり得る。
【0039】
(プラダーウィリ症候群)
プラダーウィリ症候群は、低血圧症、性腺機能低下症、過食症、認識機能障、および問題行動によって特徴付けられる第15染色体の障害である;主な病状は、病的肥満である。代表的に、成長ホルモンが不足しており、低身長、思春期の急成長の不足、および高体脂肪率(正常な体重を有するものでさえ)を引き起こす。GH治療の必要性が、子供および成人の両方において評価されるべきである。子供において、成長率が減少するか、または身長が3パーセンタイルを下回る場合、GH治療が考慮されるべきである。成長ホルモン置換は、身長を正常化し、そして脂肪のない体を増加させることを助ける;これらの両方は、体重管理を助ける。通常の週用量は、体重1kgにつき0.24mg/kgである;これは週にわたって6〜7の少ない用量に分けられる。
【0040】
(ターナー症候群)
ターナー症候群は、女子の生産児約2,500人に1人に発症する。これは、X染色体の異常または非存在に起因し、そして低身長に高い頻度で関連し、これはGH処置によって改善され得る。ターナー症候群の他の特徴としては、短い首、および時には、翼状頚、外反肘、短い第4および第5の中手骨および中足骨、盾型の胸、および原発性性機能低下症が挙げられ得る。身長の伸びは、ターナー症候群を有する患者で異なるので、GHを用いて処置するかどうかおよびこのような処置の時期の決定は、個別の基準でなされる。しばしば、患者の身長が5パーセンタイルを下回る場合、または標準偏差が平均以下の2未満の標準偏差に下回る場合、処置が開始される。しばしば、処置はGHDを処置するのに使用されるよりもわずかに高いGH用量で開始される;一般的な開始用量は、毎日の用量に分けられ、週に0.375mg/kgである。
【0041】
(慢性腎不全)
慢性腎不全(CRI)は、米国において約3,000の子供に発症する。それは、腎臓が老廃物を排出し、尿を濃縮し、および電解質を貯蔵する能力を段階的および漸進的に消失することにより現れる。1つには腎疾患は成長ホルモンの代謝を妨げるという理由で、慢性腎疾患を有する子供の約3分の1は、異常成長を有する。腎臓疾患を処置するためにしばしば使用される副腎皮質ステロイドホルモンはまた、成長を遅延し得る。腎臓移植は、子供が成長を正常に再開するのを助けるが、ほとんどの子供は、移植前の成長不足を取り戻さない。腎疾患を発病する年齢が腎機能の低下より成長遅延に影響を与える(すなわち、疾患を発病する子供が若いほど成長が遅れる)。GH処置は、週に6または7回与えられ、週あたり0.35mg/kgの投薬量で与えられ得る。
【0042】
(体質性成長遅延)
体質性成長遅延は、正常な出生前の成長、およびその後の、幼年期および幼児期の間の成長の減速により特徴付けられ、そしてその時の身長のパーセンタイルの低下に反映される。3歳と小児期後期の間、成長は正常な速度で進む。明白な成長減速度の時期は、思春期の始まりの直前に観察され得る。体質性遅延を有する子供は、思春期が遅くなる。時には、体質性成長遅延に付随し悪化した低身長と思春期の発達の組合せは、大きな心理社会的な思春期ストレスを引き起こし、GHDを処置するために使用されるのと同様の様式および投薬量で投与されるGHを用いる処置が必要となり得る。
【0043】
(嚢胞性線維症)
嚢胞性線維症(CF)は、アメリカにおいて最も一般的な致死遺伝障害である。米国においておよそ1000人が、毎年嚢胞性線維症を有して産まれる。嚢胞性線維症は、粘液分泌の粘性が増大する外分泌腺の機能障害を引き起こし、これは、肺疾患、膵外分泌機能不全、および腸閉塞をもたらす。早期の診断および処置は、CFを有する子供の死亡率を著しく減少させる。しかし、栄養失調および乏しい成長は、重大な問題のままである。不十分な体重増加、体重減少、および栄養不良は、エネルギー取り込みの低下、エネルギー損失の増加、およびエネルギー消費の増加を引き起こす。CFを有するヒトの28%が、身長について10パーセンタイルを下回り、そして34%が、体重について10パーセンタイルを下回ることが報告されている。GH治療が、嚢胞性線維症を有する患者において、身長の増加速度、体重の増加速度、脂肪のない体(LBM)、および肺機能を改善することが研究によって示されている。
【0044】
(骨異形成症)
軟骨形成不全症のような低身長に関連する骨異形成症は、GHを用いて処置され得る。軟骨形成不全症は、線維芽細胞増殖因子レセプターIII型遺伝子に作用する一般的な障害であり、これは出産時に明らかとなる。出生児20,000人に約1人が発症し、そして全人種および両方の性別において発症する。胎児の発育および幼児期の間、鼻および耳のようないくつかの場所を除いて、通常、軟骨が骨に成長する。軟骨形成不全症を有する個体において、長骨の成長板における軟骨細胞が骨になる速度が遅く、短骨および身長の低下をもたらす。
【0045】
軟骨形成不全症は、以下によって特徴づけされる:低身長、短肢、近位端(proximal extremity)(上腕および大腿部)、体に対して不相応に大きい頭の出現、骨格(四肢)の異常、中指と薬指との間に持続的な(persistent)空間を有する異常な手の出現(三叉手)、著しい脊柱後弯症および脊柱前弯症(脊椎湾曲)、アヒル歩行、がに股、突出した(目立った)額(前頭骨のこぶ)、低血圧症、および羊水過多症(病気に冒された幼児が産まれる場合に現れる)。GHは、日本および南アフリカのようないくつかの国において、軟骨形成不全症を処置するために承認されているが、FDA承認は有していない。
【0046】
(子宮内発育遅延(IUGR)および妊娠期間の短い子供(SGA子供))
GH処置は、子宮内発育遅延を有する子供または妊娠期間の短い幼児(この状態はまたラッセル−シルバー症候群と呼ばれる)に有益であり得る。子宮内発育遅延の1つの定義は、妊娠期間に対して10パーセンタイル以下の体重であるか、または、妊娠期間について平均以下の2標準偏差の出生時体重である。遅れを取り戻す成長が見られない子供は、GH処置の利益を享受し得ることが、研究で示されている。
【0047】
本発明は、GHとFFA調節因子との共投与が、脂質分解を防止することによってインスリン感受性の低下を改善し、GH治療単独と比較して水腫効果(oedemic effect)を増大させ、そしてGH単独よりも線形成長を増大するような相乗作用を発揮するという驚くべき知見に基づいている。
【0048】
本発明は、GH治療に関連する状態を軽減し、そして先行技術に存在する方法を効果的に向上させることを目的とする新しい方法および組成物を提供する。さらに、本発明に開示される新規な応用が、先行技術に存在する方法の有益な代替物を公衆に提供するものである。
【0049】
(処置の方法)
広義には、本発明は、成長ホルモン(GH)処置の結果の処置または予防に関する。GHは、一般的に低身長を引き起こす状態を処置するために使用され、低身長としては、制限されないが以下が挙げられる:成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症、子宮内発育遅延(ラッセル−シルバー症候群)、骨格異常、染色体異常(ターナー症候群、ダウン症)、または慢性腎不全関連成長遅延。GH処置は、上記のような多数の状態に寄与することが示されている。迅速なGH処置を超えて広がるこのような状態もまた、観察されている。完全に予防されないにせよ、FFA調節因子の投与、好ましくはGH処置との組合せ投与によってこのような結果が少なくとも緩和され得ることを、出願人は確立した。GHへのFFAの添加は、前処置の状態または正常な子供の状態にインスリン感受性を修正する。成長ホルモン処置の有害な結果が症状として観察されない場合、この結果の発生率は、少なくとも予防的に緩和され得る。
【0050】
GH治療の有害な効果を軽減しながら、GHの成長増加効果をFFA調節因子の使用によって向上させることが、特定の有利な点である。
【0051】
結果として、組合せ処置は、(GHの投与を用いて)低身長状態を処置する有用な方法を提供し、同時に、処置のいくつかの有害な結果を少なくとも減少させる。
【0052】
(薬学的組成物)
一般的に、本発明の化合物は、以下の経路の1つによって薬学的組成物として投与される:経口、局所的、全身(例えば、経皮、鼻腔内、肺内、または坐薬によって)、非経口(例えば、筋内、皮下、動脈内、腹腔内、または静脈内の注射)、移植によって、浸透ポンプ、経皮パッチなどのようなデバイスによる注入によって。組成物は、錠剤、ピル、カプセル、カシェ剤、トローチ、顆粒、半固体、粉末、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、エアロゾル、または任意の他の適切な製剤の形態を取り得る:そして薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。適切な賦形剤は当業者に周知であり、そしてそれらおよび組成物を処方する方法は、以下のような標準的な参考文献において見出され得る:Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1975;Liberman,et al.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;Kibbe,et al.,Eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients(3rd Ed.),American Pharmaceutical Association,Washington,1999;およびGennaro AR:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott,Williams and Wilkins,Philadephia,PA(2000)。特に、注射可能な溶液に適切な液体キャリアとしては、水、生理食塩水、デキストロース水溶液などが挙げられ、等張液が静脈投与に好ましい。
【0053】
本発明の方法における処置または予防に使用される活性化合物(GHおよびFFA調節因子)は、処方され、そして個々の被験体の臨床状態(特に、GH単独での処置の副作用)、組成物の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医師に公知である他の因子を考慮して、良好な医療にふさわしい方法で投薬される。各患者に対する各活性化合物(GHおよびFFA調節因子)の特定の用量レベルは、以下に挙げられる色々な因子に依存することが理解される:利用される特定の薬剤の活性、年齢、体重、健康、性別、食生活、投与の時間、排出の割合、選択された活性剤の組合せ、特定の状態もしくは処置される障害の重症度、および投与の形態。従って、本明細書中の目的のための各構成要素の「有効量」は、このような考慮によって決定され、そして所望の効果を達成する量であり、前記所望の効果としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:被験体の成長速度の増加、および/またはGH処置の有害な結果、特にインスリン感受性、水腫、および/または骨梁減少(trabecular bone loss)の悪化を減少させ、そして/または予防すること。適切な投薬量は、試験において決定され得る。
【0054】
(FFA調節因子の投与)
一般的に、フィブラートの日用量は、通常、0.1mg〜100mg/kg、代表的に0.1〜20mg/kgの範囲である。静脈注射用量は、例えば、0.01mg〜0.1g/kg、代表的に、0.01mg〜10mg/kgの範囲であり、これは、1分間に0.1μg〜1mgの範囲の注入として簡便に投与され得る。この目的に適切な輸液は、例えば、1ミリリットルあたり0.01μg〜0.1mgを含んでもよい。単位用量は、例えば、各成分の0.1μg〜1gを含んでもよい。従って、注射用アンプルは、例えば、0.1μg〜0.1gを含んでもよく、そして錠剤またはカプセルのような経口投与可能な単位用量製剤は、例えば、0.1mg〜1gの範囲で含んでもよい。好ましくは、フィブラート、特にフェノフィブラートは、毎日、約50〜450mgの量で投与される。
【0055】
ニコチン酸またはニコチン酸誘導体の全日用量は、一般的に、単回用量または分割量で約500〜約10,000mg/日、または単回用量または分割量で約1000〜約8000mg/日、もしくは約3000〜約6000mg/日の範囲であり得る。
【0056】
好ましくは、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体は、経口投与される。錠剤またはカプセルのような経口投与可能な単位用量製剤は、例えば、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体を約50〜約500mg、または約200mg〜約1000mg、または約500〜約3000mgを含み得る。
【0057】
本発明のニコチン酸またはニコチン酸誘導体の経口送達は、当該分野で周知のように、製剤中に含まれ、多数の機構によって胃腸管への薬物の即時送達、または持続性送達、または徐放送達を提供し得る。即時送達性製剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:経口溶液、経口懸濁液、高速溶解性錠剤またはカプセル、崩壊性錠剤など。持続性送達または徐放性送達の製剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胃腸管のpHの変化に基づいた投薬形態からのpH感受性放出、錠剤またはカプセルの遅延性侵食、製剤の物理的特性に基づいた胃における保持、腸管の粘膜内層への投薬形態の生物学的付着、または投薬形態からの活性薬物の酵素的放出。意図される効果は、活性薬物分子が投薬形態の操作により作用部位に送達される時間にわたって延長されることである。従って、腸溶性コート化製剤および腸溶性コート化制御放出製剤は、本発明の範囲内である。適切な腸溶性コーティングとしては、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびメタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルのアニオン性ポリマーが挙げられる。NIASPAN(登録商標)錠剤(Kos Pharmaceuticals)において見られるような延長性放出製剤を含む、製剤の非限定的例は、米国特許第6,080,428号および同第6,129,930号に開示され、この両方は参照によって全体が本明細書中に加入されている。
【0058】
(GHの投与)
好ましくは、被験体に投与されるGHの有効量は、1日につき約0.001mg/kgと約0.2mg/kgとの間であり;より好ましくは、GHの有効量は、1日につき約0.01mg/kgと約0.1mg/kgとの間である。他の局面において、被験体に投与されるGHの有効量は、週に少なくとも約0.2mg/kgである。別の局面において、GHの有効量は、週に少なくとも約0.25mg/kgである。別の局面において、GHの有効量は、週に少なくとも約0.3mg/kgである。1つの実施形態において、GHの用量は、週に約0.3〜1.0mg/kgの範囲であり、そして別の実施形態において、週に0.35〜1.0mg/kgの範囲である。好ましくは、成長ホルモンは、約7.4〜7.8のpHで処方される。
【0059】
好ましくは、GHは、1日に1回、皮下投与される。好ましい局面において、GHの用量は、1日につき約0.001と0.2mg/kgとの間である。なおより好ましくは、GHの用量は、1日につき約0.010と0.10mg/kgとの間である。
【0060】
GHは、適切に、例えば、特定の時間(例えば、1日に1回)に特定の用量の注射形態で、連続的にまたは非連続的に投与され、注射時に血漿GH濃度が増加し、次いで、次の注射時まで血漿GH濃度が減少する。別の非連続的投与方法は、活性成分の非連続性放出(例えば、イニシャルバースト)、次いで、活性成分の放出前の遅延を提供するPLGAミクロスフェアおよび利用可能な多くの移植デバイスの使用によってもたらされる。例えば、米国特許第4,767,628号を参照のこと。
【0061】
GHはまた、血液中に連続的に存在するように投与され、GHの投与の持続時間を維持し得る。例えば、浸透ミニポンプのようなミニポンプによる連続注入を用いて達成されることが、最も好ましい。あるいは、GHの頻繁な注射の使用(すなわち、1日に1回より多く、例えば、1日に2回または3回)によって達成されることが適切である。
【0062】
なお別の実施形態において、血液からのGHのクリアランスを遅延させるか、または、例えば、注射部位からのGHの遅延性放出をもたらす、長期作用性GH製剤を使用して、GHは投与され得る。GH血漿クリアランスを延長する長期作用性製剤は、複合体化されたGH、または1つまたはそれ以上のその結合タンパク質(WO 92/08985)もしくは以下:PEG、およびポリプロピレングリコールホモポリマー、およびポリオキシエチレンポリオール(すなわち、室温で水に溶解性のもの)から選択される水溶性ポリマーのような高分子に簡便に(可逆結合または不可逆結合によって)結合体化されたGHの形態であってもよい。あるいは、GHは、ポリマーに複合体化されるか、または結合され、その循環半減期を増加されてもよい。この目的に有用なポリエチレンポリオールおよびポリオキシエチレンポリオールの例としては、以下が挙げられる:ポリオキシエチレングリセロール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレングルコースなど。ポリオキシエチレングリセロールのグリセロールバックボーンは、モノグルセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド中の、例えば、動物およびヒトに生じるのと同じバックボーンである。
【0063】
ポリマーは任意の特定の分子量を有する必要はないが、好ましくは、分子量は約3500と100,000との間であり、より好ましくは、5000と40,000との間である。PEGホモポリマーは非置換であることが好ましいが、一端がアルキル基で置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基は、C1〜C4アルキル基であり、最も好ましくは、メチル基である。最も好ましくは、ポリマーはPEGの非置換ホモポリマー、PEGのモノメチル置換ホモポリマー(mPEG)、またはポリオキシエチレングリセロール(POG)であり、そして約5000〜40,000の分子量を有する。
【0064】
PEGに結合体化されたGHを生産する特定の方法としては、PEG−GHについての米国特許第4,179,337号、および同第4,935,465号(これは、GHに可逆的であるが共有結合されたPEGならびにWO 99/03887、WO03/044056、およびWO 2004/22630に開示されるPEG−hGH結合体化も開示する)に記載される方法が挙げられる。
【0065】
GHはまた、徐放系によって適切に投与され得る。本明細書中で有用な徐放性組成物の例としては、造形品の形態で半浸透性ポリマーマトリクス(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)が挙げられる。徐放性マトリクスとしては、以下が挙げられる:ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers,22,547−556(1983)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98−105(1982)、エチレンビニルアセテート(Langer et al.,supra)、またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)、またはPLGAミクロスフェア。
【0066】
徐放性GH組成物としてはまた、リポソーム取り込み(liposomally entrapped)GHが挙げられる。GHを含むリポソームは、それ自体が公知である方法によって調製される:DE 3,218,121;Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692(1985);Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030−4034(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願83−118008;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびにEP 102,324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30molパーセントコレステロールよりも多い、小さな(約200〜800オングストローム)単層型であるが、治療に最適なように選択された比率が調整される。さらに、生物学的に活性な徐放性製剤が、米国特許第4,857,505号に記載されるように、活性化多糖に共有結合したGHの付加から作製され得る。さらに、米国特許第4,837,381は、遅延放出のための、脂肪、もしくはワックス、またはそれらの混合物と、GHとのミクロスフェア組成物を記載する。
【0067】
1つの実施形態において、非経口投与のために、GHは、一般に、所定の純度でGHを、薬学的に受容可能なキャリア(すなわち、利用される投薬量および濃度で受容者に対して非毒性であり、かつ製剤の他の成分と適合するキャリア)と、注射可能な単位投薬形態(溶液、懸濁液、またはエマルション)に混合することによって処方される。例えば、好ましくは、製剤は、酸化剤およびポリペプチドに有害であることが公知であるほかの化合物を含まない。一般的に、製剤は、GHを液体キャリア、もしくは微粉化した固体キャリア、またはその両方と接触させることによって製造される。次いで、必要である場合、生成物は、所望の製剤に成形される。好ましくは、キャリアは、非経口キャリアであり、より好ましくは、受容者の血液と等張性である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクル、ならびにリポソームはまた、本明細書に有用である。
【0068】
キャリアは、微量の等張性および化学的安定性を増強する物質のような添加物を適切に含む。このような物質は、利用される投薬量および濃度で受容者に対して非毒性であり、そして、これらとしては以下が挙げられる:リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸、またはそれらの塩のような緩衝化剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖類、二糖類、および他の炭水化物(セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポリキサマー、またはPEG)。
【0069】
GHは、代表的に、約4.5〜8のpHで、約0.1mg/mL〜100mg/mL、好ましくは、1〜10mg/mLの濃度でこのようなビヒクルに別々に処方される。GHが7.4〜7.8のpHであることが好ましい。前述の特定の賦形剤、キャリア、または安定剤の使用が、GH塩の製剤をもたらすことが理解される。
【0070】
以上、その好ましい形態と共に本発明を説明してきたが、当業者に明らかな代替物および医薬品もまた、開示される本発明の精神および範囲に含まれることを意図している。
【0071】
(薬理的研究1)
線形成長の改善およびGH治療に関連する代謝異常の減少についての、GHおよびFFA調節因子を含む組合せ治療の効果を評価するための研究。
【0072】
(研究設計)
この研究は、胎児の成長遅延に起因する低身長について十分に特徴付けられたげっ歯類モデルを利用した(Woodall et al.1996)。
【0073】
全体的な実験設計の図式を以下に示す。
【化1】
【0074】
(実験手順−方法および分析手順)
(動物モデル)
SGAを誘発させるために使用した栄養不足の母親のげっ歯類モデルは、始めに、Liggins Institute,Faculty of Medical and Health Sciences,University of Auckland by Woodall et al.(1996)において特徴付けられた。以降、このモデルは、数件の国際的な論文審査のある学術誌に公開されている(Woodall et al.1996,1998;Vickers et al.2000,2001)。
【0075】
SGAを誘発するためのこの実験的な取り組みは、22日齢の胎児において30〜35%の成長遅延をもたらし、そして出生後の成長障害を持続し、そして少なくとも90日齢までに遅れを取り戻す成長の兆候を示さない。これらの動物は、成体のように、高血圧症、インスリン抵抗性、および体幹の肥満を発症する。
【0076】
(SGAの子を産生するための動物プロトコル)
処女Wistarラット(75〜100月齢)を、雄を導入する前にこの動物の発情期の段階を評価するためラットの発情周期モニター(Fine Science Tools INC.,North Vancouver,BC,Canada)を使用して交尾させた。妊娠の1日目を、膣スミア中の精子の存在によって決定した。交配の確認後、ラットを、寝具類として経木を備え、水へ自由にアクセスできる標準的なラット籠中に個々に収容した。動物部屋を25℃にて12時間明:12時間暗サイクルで維持した。自由に食事を摂れるようにか(ADグループおよび里親養育(cross fostering)のための母獣)、または自由に30%の食事を摂れる(UNグループ、自由に食事を摂らせた母獣の前日の食物摂取を測定することによって決定した)ように、母獣をランダムに割り当てた。食物の組成は、タンパク質18%、脂肪4%、繊維3%、灰分7%、および炭水化物58%である(Diet 86,Skellerup Stock Foods,Auckland,New Zealand)。食物摂取および体重を、毎日記録した。誕生後、UNの子は、自由な食事の母親に里親養育された。里親養育は、制限された食事の母獣における乳分泌の不足に起因して、必要である。産子数は、同腹の子あたり8匹に調節し、適切かつ標準的な栄養を確保した。全ての子の体重を、毎日記録した。離乳した子(21日齢)を性別判定し、体重を合わせ、そして標準的な籠に対をなして収容した。研究の残りの間、全ての動物に自由に食事を与えた。母獣をCO2窒息によって屠殺し、そして断頭術によって余分な子を屠殺した。全ての動物の倫理は、Animal Ethics Committee at the University of Aucklandによって認可された。
【0077】
この実験において、雄の子のみを使用した。
【0078】
身長および空腹時インスリン濃度において予測される統計的に有意な差異を実証するために、10のグループの大きさが必要であることが、出力計算の使用により決定した。
【0079】
(試験化合物)
(組換えウシ成長ホルモン(rbGH))
実験的用途での利用が比較的容易であるため、げっ歯類における多くの研究が、ヒトGH(hGH)を用いる処置を利用する。しかし、hGHは、プロラクチンレセプターおよびGHレセプターの両方に結合するので、ラットの乳腺刺激性特性および体細胞原性特性の両方を有する。これは、hGH、bGH、oPRL、およびラット成長ホルモン(rGH)、ならびにラットプロラクチン(rPRL)を使用する結合研究において明確に実証されている。ラット肝細胞は、hGHを結合する2種類の結合部位を含む。第一に、体細胞原性結合部位は、成長促進ホルモンのbGHおよびrGHに特異的である。第二に、乳腺刺激性結合部位は、乳腺刺激性ホルモンのoPRLおよびrPRLに特異的である。ヒトGHは、両方の部位への結合を示す(Ranke et al.,1976)。
【0080】
組換えラットGHは、ラージスケールの動物実験のための、十分な量が入手可能でなかった。従って、bGH(ラットの純粋なソマトゲン(somatogen)およびラットプロラクチンレセプターに対するリガンドでない試薬(Yamada et al,1984))を研究に使用した。
【0081】
動物は、1日あたり5mg/kgの用量および100μlの容量で、皮下注射によ
ってbGHで処置された。細いゲージの糖尿病用シリンジを使用して、0800および1700hに、分割量(2×2.5mg/kg/日)としてこれを投与した。コントロール動物を、同一の処置プロトコルを使用して生理食塩水を投与した。
【0082】
(フィブラート)
フェノフィブラートは、フィブラート(フィブリン酸誘導体薬物)のクラスに属する。フィブラートは、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターα(PPAR−α)の媒介によって、血清トリグリセリドレベルを有効に低下させる脂質低下剤である。さらに、フィブラートは、血清コレステロールレベルを低下させることが公知である。
【0083】
フェノフィブラートを、1日あたり、体重1kgにつき30mgの投薬量で、毎日、強制飼養で経口投与した(0800h)。
【0084】
(アシピモックス)
アシピモックスは、強力な長期作用性ニコチン酸(NA)アナログである。脂質低下剤としてのアシピモックスは、トリグリセリドおよび非エステル化脂肪酸の血清濃度を低下させる。アシピモックスは、脂質分解の阻害によってGH誘発性インスリン抵抗性を部分的に予防することが示されている(Segerlantz et al.2001)。アシピモックス(Pharmacia)を、1日あたり、体重1kgにつき20mgの用量で、毎日、強制飼養で経口投与した(0800h)(Blachere et al.2001)。
【0085】
(観察)
(体重)
動物は、実験の間、毎日午前8〜9時の間に体重を測られた。個々の動物を、臨床的変化、処置に対する反応、または健康障害のいずれの兆候についても毎日観察した。いずれの処置グループにおいても、有害ストレス反応および関連症状のいかなる兆候も現れなかった。
【0086】
(食物消費)
食物摂取は、一日基準で測定した。ラット1匹あたりの相対的な食物摂取(体重1gにつき1日あたりの摂取されたグラム)を、各グループにおいて、各対に与えられた食物の量および各対によって残された食べ残しの食物の量を使用して計算した。
【0087】
(水消費)
研究のそれぞれの日の同じ時間に水ボトルを計量することによって、水消費を毎日計算した。
【0088】
(身長)
身長(鼻〜肛門および鼻〜尾)および骨長(脛骨、大腿骨長)を、末梢骨定量的コンピュータ断層法(peripheral quantitative computed tomography)(pQCT、Stratec)分析を使用して、死後に評価した。骨密度もまた、pQCTによって評価した。
【0089】
(血圧)
最高血圧および最低血圧、ならびに心拍数を、製造者の指示書にしたがって、尾の血圧計バンド(tail cuff)のプレチスモグラフィーによって記録した(Blood pressure analyser IITC,Life Science,Woodland Hills,CA,USA)。ラットを温室(25〜28℃)の透明なプラスチック管に拘束した。10〜15分の順応の後、血圧計バンドを尾に置き、そして240mmHgに膨らませた。3mmHg/秒の速度での収縮の間、脈拍を記録し、そして脈拍の再現を使用して最高血圧を測定した。最低3回の明らかな最高血圧の記録を、動物1匹に対してとった。報告された測定の変動係数は5%未満であることを、前回の観察が示す。
【0090】
(血漿分析)
血液サンプルを、一晩の断食の後に回収した。サンプルを尾の静脈から回収し、そして最後にハロタン麻酔下、断頭術を行った。血液サンプルを、ヘパリンを添加した管に回収し、そして血漿を回収するために遠心分離した。次いで、血液サンプルを、インスリン、グルコース、FFA、レプチン、IGF−I、グリセロール、トリグリセリド、コレステロール、副腎皮質ステロイド、肝機能のマーカー(ALT、AST、ALP)、およびタンパク質合成のマーカーについて分析した。
【0091】
血漿FFA、トリグリセリド、およびグリセロールを、診断キット(それぞれ、Boehringer−Mannheim#1383175およびSigma#337)によって測定した。血漿レプチン、インスリンを、市販されているキット(Linco,St Charles,MO,US)を使用して測定した。血漿IGF−Iを、前記のようにRIAによって測定した(Vickers et al.,2000)。血漿グルコース濃度を、比食分析プレートアッセイを使用して測定した。全ての他の血漿分析(肝臓酵素、電気分解など)を、Agriquality Laboratory Services(Auckland,New Zealand)によるBM/Hitachi 737分析器によって測定した。
【0092】
(組織研究)
最後に、動物をハロタン麻酔下、断頭術によって屠殺した。組織(心臓、肝臓、筋肉、および脂肪(皮下および内臓))を回収し、重さを測り、そして引き続く分析のために液体窒素中でスナップ凍結させた。リガンド結合分析を使用して成長ホルモンレセプターを試験するために、肝臓組織のアリコートをまた−20℃で凍結させた。
【0093】
(データ分析)
多重回帰分析または要因ANOVA/ANCOVAを使用して、データを分析し、適切な場合、事後補正する(出生前の影響および出生後の処置効果)。利用される統計パッケージは、StatView(Version 5,SAS Institute)であった。
【0094】
以前のデータは、提案された研究のための出子計算の基準を提供した(α=0.05の場合)。インスリン感受性について、nが10である場合、0.15ng/mlのSDを有する、80%の出力で0.2ng/mlの変化、および95%で0.26ng/mlの変化を検出した。身長について、nが10である場合、5.2mmのSDを有する、80%の出力で6.88mmの変化、および95%で7.97mmの変化を検出する。
【0095】
(結果)
妊娠15日目まで、妊娠1日目のSGAグループの妊娠している雌と比較して母親の体重は、わずかに減少した。妊娠15日目から、SGA母獣は体重が増加し、そして出産時までに交配前の体重に達した。産子数における2つのグループ間に有意な差異はなかった(AD 13.4±0.4、SGA 12.8±1.1)。母親の栄養不足は、出産時のSGA母獣からの子における著しい体重減少によって示される胎児の成長遅延をもたらした(AD雄6.1±0.49g、SGA 4.3±0.6g、p<0.0001)。ADの子と比較して、誕生時のSGAの子における鼻〜肛門(NA)および鼻〜尾(NT)の長さは、著しく短かった(NA:AD雄49.3±2.43mm、SGA雄44±3.0mm;NT:AD雄65.9±2.8mm、SGA雄58±4.1mm、両方の長さについてp<0.0001)。出産から22日目の離乳期まで、体重はSGAの子において著しく低いままであった。処置の開始時、SGAの子は、AD動物よりも有意に軽く(p<0.0001)、そして全体重は、研究の残りの間、SGAの子において有意に低いままであった。
【0096】
(体重反応)
体重増加(グラムの増加)は、生理食塩水グループと比較して、全ての処置グループにおいて有意に増加した(p<0.0001)(図1)。GHで処置された動物と各組合せ治療で処置された動物との間の絶対的体重増加に有意な差異はなかった。しかし、GHおよびアシピモックスで処置された動物は、GHおよびフィブラートで処置された動物と比較して、有意な体重増加を有した。SGA動物は、全ての処置グループについてAD動物よりも有意に軽く、そして統計的相互作用はなかった。
【0097】
GH単独と比較して、GHおよびアシピモックスで処置されたAD動物は、体重増加においてGH単独動物と徐々に相違を示した(図1)。しかし、AD動物における組合せ処置の効果は、GH単独処置と比較して、出生後約57日目まで減少を現した。SGA動物において、GHおよびフェノフィブラートの組合せ治療は、GH処置動物と比較して有意な体重増加を示したが、この効果は、共治療の約2週間後に減少し、そして試験の最後まで、これらの動物は、GH処置動物よりもわずかに遅い速度で成長した。しかし、GHおよびアシピモックスで処置されたSGA動物は、GH処置動物と比較して、ゆっくりではあるが明確な体重増加を示し、これは試験の最後まで減少しなかった(図2)。
【0098】
GH単独と比較して、体重増加に対する組合せ治療の非常に有益な効果があることを、1日あたりの体重変化の分析がまた示唆する。GHおよびアシピモックス処置された動物において、特に、SGA動物において、これは、最も注目される(図3)。
【0099】
(骨長)
脛骨を、10%の中性緩衝化ホルマリンに貯蔵した。組織を骨および骨長から取り去り、面積および密度(皮層および小柱(trabecular))を、pQCT(Stratec)を使用して評価した。脛骨長は、SGAの子において有意に減少した。GHは、全ての処置グループにおいて脛骨長を有意に増加した。しかし、GHおよびアシピモックス組合せ治療は、脛骨成長に対するGH誘発性効果を向上させた(p<0.0001)(図4)。GHおよびフェノフィブラート処置された動物における脛骨長は、GH単独のものと有意に違わなかった。脛骨長は、全身長(鼻〜肛門)と高い関連性があった(図5)。全脛骨面積は、SGA動物において有意に減少し、そして全ての処置動物において増加した。
【0100】
興味深いことに、GH処置は、骨梁量を有意に減少させた。しかし、組合せ治療で処置されたこれらのAD動物およびSGA動物において、この骨梁減少が現れなかった(表1)。
【表1】
【0101】
SSI(骨強度指数(stress strain index))は、SGA動物において有意に減少し、そして全てのGH/GH組合せ処置動物において増加した。
【0102】
全ての骨密度は、いずれの処置グループにおいても有意に変化しなかったが、GHグループにおける総骨密度を低下する傾向があり(p=0.056)、これは組合せ治療グループにおいて観察されなかった。皮層骨密度(皮層および皮質下、mm2)は、いずれの処置グループにおいても有意に変化しなかった。
【0103】
(身長)
鼻〜肛門の長さは、GH処置により有意に増加し、さらに、GHおよびアシピモックスでの組合せ治療を使用するとさらに増加した(GH対GHおよびアシピモックスについて、p<0.005)(図6)。
【0104】
(体格指数(BMI))
BMIを以下を使用して計算した:体重/鼻〜肛門の長さ(cm)2。BMIは、AD動物と比較してSGA動物において有意に低かった(p<0.05)。BMIは、生理食塩水処置動物およびGH処置動物の両方と比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において有意に低かった(p<0.005)。生理食塩水処置動物とGH処置動物との間に、BMIの有意な差異はなかった。GH処置動物と比較してGHおよびアシピモックス処置動物における脂質分解の欠損に起因して、BMIの変化は、おそらく、GH単独の場合を上回る線形成長の増加を示す。
【0105】
(食物摂取)
いずれの処置グループにおいても、相対的な食物摂取に有意な差異はなかった(体重1gあたりに摂取されるグラム)。SGA動物は過食症であり、食物摂取はAD動物と比較してわずかであるが有意に増加しており(p<0.05)、この結果は、発明者らの以前の観察結果と一致した2。
【0106】
(水摂取)
いずれの処置グループの間においても、水摂取に有意な差異はなかった。しかし、GH+アシピモックス処置グループ、特にAD動物において、相対的な水摂取を増加する傾向があった(体重1gあたりに摂取される水)(p=0.09)。AD動物と比較して、SGA動物は、わずかであるが有意に低い相対的水摂取を有した(p<0.05)。
【0107】
(血液ヘマトクリット値)
GH処置の十分に特徴付けられた効果は、血漿値の増加である(Johannsson et al,2002)。血液ヘマトクリット値の減少は、GH治療の水貯留効果に関連する血漿値増加の確実なマーカーである。予想通りに、ADグループおよびSGAグループの両方において、血液血漿ヘマトクリット値は、GH処置動物において有意に減少した。ヘマトクリット値の減少はまたGHおよびフェノフィブラート処置動物において観察されたが、驚くべきことに、GHおよびアシピモックス組合せにはヘマトクリット値低下の効果はなかった。GH単独、ならびにGHおよびフェノフィブラートグループと比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、血漿ヘマトクリット値は有意に高く、そして生理食塩水のものとの有意な差異はなかったにもかかわらず(図7)、GHおよびフィブリン酸誘導性FFA調節因子の組合せは、GH誘発性水分貯留の改善に対する相乗作用の程度を示した。
【0108】
(肝臓)
体重に対する肝臓の重さは、AD動物とSGA動物との間に有意な差異はなかった。相対的な肝臓の重さは、GHおよびフェノフィブラートで処置されたAD動物およびSGA動物において有意に増加した(図8)。GH単独またはアシピモックスと組合せたGHは、肝臓の重さに対する効果は有さなかった。
【0109】
(後腹膜脂肪沈着)
相対的な後腹膜脂肪沈着について、AD動物とSGA動物との間の有意な差異はなかった。GH処置、またはGHおよびフェノフィブラートとの組合せ処置は、生理食塩水コントロールと比較して、腹膜後脂肪量を有意に減少させた(図9)。後腹膜脂肪は、GH治療により有意に減少したが、組合せ治療によって、特に、アシピモックスと組合せてGHを投与したSGA動物において、この脂肪分解は部分的に阻害された。
【0110】
(腎臓)
AD動物と比較して、SGA動物において、腎臓の重さは体重に対して有意に減少した(p<0.005)。全ての他の処置グループと比較して、GH+フェノフィブラート動物において、相対的な腎臓の重さは有意に増加した。生理食塩水コントロールと比較して、GH動物において、相対的な腎臓の重さは減少したが、GHおよびアシピモックス処置動物は、コントロールとの有意な差異はなかった。
【0111】
(副腎)
副腎の重さは、AD動物とSGA動物との間で有意な差異はなかった。生理食塩水コントロールと比較して、全ての処置グループにおいて、副腎の重さは有意に増加した。GH単独で処置された動物と比較して、GHおよびフェノフィブラート処置動物、ならびにGHおよびアシピモックス処置動物において、副腎の重さは有意に増加した(図10)。
【0112】
(脾臓)
AD動物と比較して、SGA動物において、相対的な脾臓の重さは有意に増加した。全ての処置グループにおいて、体重に対する脾臓の重さは増加し、そしてコントロールと比較してGH+フェノフィブラート動物において、さらに脾臓を成長させる傾向にあった(p=0.056)(図11)。
【0113】
(IGF−I)
生理食塩水コントロールと比較して、GH処置のAD動物およびSGA動物、ならびにGHおよびアシピモックス組合せ処置のAD動物およびSGA動物において、血漿IGF−Iは有意に増加した(図12)。しかし、GH+フェノフィブラート処置動物において、血漿IGF−Iは有意に増大しなかった。GHおよびアシピモックス処置動物において見られるIGF−Iの増加と、GH処置動物におけるIGF−Iの増加に有意な差異はなかった。
【0114】
(空腹時インスリン値)
生理食塩水処置と比較して、GHおよびフェノフィブラート処置動物において、空腹時血漿インスリン値は有意に増加した。インスリン濃度は、GHおよびアシピモックス処置動物と有意に変わらなかったが、GH単独、またはフェノフィブラートと組合せたGHで処置した動物よりも有意に低かった(図13)。AD動物とSGA動物との間のインスリンレベルの有意な差異はなかった。
【0115】
(空腹時グルコース)
空腹時血漿グルコースは、AD動物とSGA動物との間で有意な差異はなく、そしてGH治療による有意な変化もなかった(図14)。GH単独と比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、血漿グルコースは有意に低く、そしてGHおよびアシピモックス処置動物において、グルコースはコントロールよりも全体的に低い傾向にあった(p=0.07)。生理食塩水、ならびにGH/GHおよびアシピモックス処置動物と比較して、GHおよびフェノフィブラートグループにおいて、グルコースは有意に増加した。AD動物とSGA動物との間のグルコースレベルにおいて、有意な差異はなかった。
【0116】
(レプチン)
AD動物とSGA動物との間で、血漿レプチン濃度に統計的に有意な差異はなかった(図15)。生理食塩水処置動物ならびにGHおよびフィブラートを受けた動物と比較して、GH処置動物において、レプチンは増大した。GH処置動物とGHおよびアシピモックスを投与された動物との間で、レプチン濃度の差異はなかった。
【0117】
(遊離脂肪酸(FFA))
血漿FFAは、AD動物とSGA動物との間で有意な差異はなかった。生理食塩水処置およびGH単独で処置された動物と比較して、GHおよびアシピモックスで処置されたAD動物およびSGA動物において、血漿FFAは有意に減少した(図16)。興味深いことに、GHおよびフィブラートの組合せは、FFA濃度を低下させず、そしてGHおよびアシピモックスで処置されたものよりも有意に高かった。
【0118】
(トリグリセリド)
血漿トリグリセリドは、AD動物とSGA動物との間で、有意な差異はなかった(図17)。全ての他の処置グループと比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、トリグリセリドは有意に低下した。生理食塩水コントロールと比較して、トリグリセリドに対する有意なGH処置効果はなかった。
【0119】
(遊離グリセロール)
AD動物とSGA動物との間で、血漿グリセロールに差異はなかった(図18)。全ての他の処置グループと比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、血漿グリセロールは、有意に減少した(図18)。
【0120】
(最高血圧)
発明者らのグループが以前に示したように、SGA動物において、最高血圧は有意に上昇した(図19)。GH、またはGHおよびFFA調節因子を用いたSGAの子の処置は、最高血圧を有意に低下させ、そして正常化させた(図20)。これは、GHの抗高血圧効果に対する発明者らの以前の報告に一致する(Vickers et al.2002)。最高血圧は、AD動物において正常であり、そして処置の効果はなかった。
【0121】
(議論)
体重増加に対する組合せ治療の効果は、低出生時体重の動物の場合と同様に、正常動物においても顕著だった。しかし、AD動物におけるGHおよびアシピモックスの組合せ治療に関して、GH処置動物と比較して、試験の間、体重増加は横這い状態であった。用量効果のこの低下は、SGA動物において観察されず、試験が進行するにつれ、GH処置動物と比較して、体重増加の明確な相違があった。
【0122】
GHおよびニコチン酸誘導性FFA調節因子、アシピモックスからなる相乗的な組合せ治療が線形成長を、GH単独またはフェノフィブラートと組合せたGHを上回って有意に増加させたことを発明者らは予想外に見出した。
【0123】
GH単独治療およびGH組合せ治療は、コントロールと比較して、全ての処置グループにおいて骨長を増加させた。GHおよびアシピモックス組合せ処置が、脛骨成長に対するGH効果を明らかに向上させ、そしてフェノフィブラートと組合せたGHよりも脛骨長の大きな増加を達成したことを、発明者らは見出した。
【0124】
さらに、両方の組合せ治療が、GH単独治療と関連して骨梁減少を低下させることを、発明者らが発見している。
【0125】
GHまたはフィブリン酸誘導性FFA調節因子と組合せたGHで処置された動物と比較して、GHおよびニコチン酸誘導性FFA調節因子、アシピモックスからなる組合せ治療が、その処置グループにおける血漿量に対して有益な効果を有することを、発明者らは予想外に見出した。GHおよびアシピモックス処置グループにおいて、GH単独治療に付随する血漿量の増加はなかった。
【0126】
AD動物と比較して、SGA動物は高い血圧を有した。GH単独または発明者らの以前の特許を受けた観察と一致する組合せ方法(approach)のいずれかを使用して、このグループにおける最高血圧を正常化した。
【0127】
要約すると、GHおよびアシピモックス治療は線形成長を、GH単独の成長を上回って増加させ、そしてGH治療に通常付随する水分貯留効果を改善した。GHおよびフェノフィブラートの組合せは、GHおよびアシピモックスの組合せよりも効果的でなかった。発明者らは、GH単独治療に対し、GHおよびアシピモックス共治療の代謝利点(インスリン感受性の改善およびGH処置によって誘発された脂質分解効果の遮断、すなわち、薬理的抗脂質分解を含む)を観察した。
【0128】
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【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】各処置のサブグループについての体重増加曲線を示す:自由(AD)グループ)(1A)および妊娠期間に対して小柄なグループ(SGA)(1B)。
【図2】GH単独で処置された動物の体重増加の差異を示す:AD動物(2A)およびSGA動物(2B)。
【図3】体重の毎日の変化を示す(3AのAD動物;3BのSGA動物)。底部の軸は処置の日数である。
【図4】4Aは、AD動物およびSGA動物両方について、生理食塩水で処置されたグループの変化の割合として脛骨長の変化を示す。図4Bは、全ての処置グループの非調整脛骨長を表す。
【図5】全身長(鼻〜肛門)と脛骨長との間の関係を示す。
【図6】死後のADグループ(6A)およびSGAグループ(6B)の肛門〜鼻の長さを示す。
【図7】血液ヘマトクリット値に対するADグループおよび栄養不足(UN)グループにおける各処置の効果を示す。
【図8】全体重の割合としての各処置グループの肝臓の重さの変化を示す。
【図9】全体重の割合としての各処置グループの後腹膜の脂肪量を示す。
【図10】全体重の割合としての各処置グループの副腎の重さを示す。
【図11】全体重の割合としての各処置グループの脾臓の重さを示す。
【図12】と殺時の各処置グループの血漿IGF−I濃度を示す。
【図13】一晩の断食後の、各処置グループの血漿インスリン濃度を示す。
【図14】各処置グループの空腹時血漿グルコース濃度を示す。
【図15】試験完了時の各処置グループの血漿レプチン濃度を示す。
【図16】一晩の断食後の、各処置グループの血漿遊離脂肪酸(FFA)レベルを示す。
【図17】一晩の断食後の、各処置グループの血漿トリグリセリドを示す。
【図18】各処置グループの血漿遊離グリセロールを示す。
【図19】各処置グループの最高血圧を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長ホルモンが所望の処置方法である、状態および疾患に関する。特に、本発明は、向上した成長障害の処置方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモン(GH)治療は、種々の状態の処置に使用される。しかし、従来のGH治療は、有害な副作用の存在を免れ得ない。GH治療の副作用としては、以下が挙げられる:耐糖能異常および/または糖尿病、水腫、良性頭蓋内圧亢進、関節痛、筋肉痛、糖尿病患者における血糖コントロールの悪化、知覚障害、および毛根管症候群。水腫は、細胞、組織、または漿膜腔(例えば、腹部)中の過剰な量の水状液の蓄積として定義される。症状としては、眼の周り、または足、足首、および脚における外表面の腫れが挙げられる。GH誘発性の塩貯留および水分貯留は、良性頭蓋内圧亢進を引き起こし得る。良性頭蓋内圧亢進は、占拠性病変の非存在下での増大した髄液圧によって特徴付けられる。これは、頭痛、視力喪失、悪心、嘔吐、および乳頭浮腫を示し得る。関節痛は、1箇所または複数個所の関節の疼痛である。筋肉痛は、任意の筋肉の動かす際の疼痛または不快症状である。知覚障害は、異常な灼熱感または穿痛感をいう用語であり、これは、一般的に手、腕、脚、または足において感じられるが、身体のいかなる部分でも起こり得る。毛根管症候群は、手首の腱または靭帯が(しばしば炎症により)肥大化する場合に起こる。手首の骨および靭帯で形成されるトンネルの狭窄は、親指の付け根で指および筋肉に到達する神経を圧迫する。症状は、指、特に、親指および人差し指および中指のヒリヒリ、チクチクするしびれ感から、拳を握るかまたは拳を作ることの困難さ、物を落とすことにまでに及ぶ。
【0003】
成長ホルモン治療を用いて処置された子供の中の数症で白血病が報告されたことから、成長ホルモン治療に伴う「癌の成長促進」の可能性にいくらか関心がよせられている。
【0004】
成長ホルモンは、インスリンシグナルカスケードにおける複数の工程を通じてインスリンの作用をアンタゴナイズすることが公知である。GH治療は、肝臓でのグルコース産生および末梢でのグルコース利用の増加のインスリン媒介抑制を減ずることが示されている(Sugimoto et al 1998)。いくつかのGHのインスリンアンタゴナイズ効果は、増大した脂質分解及びその後の血漿遊離脂肪酸(FFA)の増加がグルコース取り込みの阻害を導くことに起因していると考えられている(Moller et al 1987)。FFAは、骨格筋中のインスリン媒介グルコース取り込みを減ずることが公知であるので、循環FFAの増加は、インスリン感受性の減少に関連する(Felber et al 1964,Reaven et al 1988,Randle et al 1963)。
【0005】
幼児期のGH治療の糖尿病誘発効果は、近年強調されている。GH治療中の子供および青少年における2型糖尿病の高い罹患率が、この疾患の最大危険度の集団において見出された(Cutfield et al 2000)。出生時低体重の成人男性は、2型糖尿病、異常脂質血症、および高血圧症の罹患率が高い(Barker et al 1993,Barker 1994,Law et al 1991)。
【0006】
子宮内胎児発育遅延(IUGR)を示した思春期前の(prepubertal)の低身長児は、正常な出生時体重であった低身長児と比較して、明らかに低いインスリン感受性を有する、すなわち、彼らは、インスリン抵抗性であることが示されている(Hofman et al 1997)。正常な女児と比較した場合、ターナー症候群を有する女児はまた、低いインスリン感受性を示すことが示されている(Caprio et al 1991)。
【0007】
低下したインスリン感受性または二次的なインスリン過剰症は、上記の障害の全ての病因に関わる(Reaven et al 1991)。インスリン抵抗性は、2型糖尿病の危険性のある患者における2型糖尿病のマーカーであることが見出されている(Martin et al 1992)。非糖尿病性正常血糖のヒトおよび動物において、空腹時のインスリン過剰(hyperinsulinemia)は、インスリン感受性の低下に対する補完的反応である全身のインスリン分泌の増加を示す(Kahn et al 1993)。さらに、インスリン抵抗性は、高血圧症の病因に関与する。
【0008】
インスリン抵抗性および二次性インスリン過剰症は、出生時低体重の成人において比較的一般的に発症する高血圧症の病因において重要である(Barker et al 1993,Law et al 1991)。インスリンは、一酸化窒素の放出によって媒介される重要な血管拡張機能を有する(McNally et al 1995,Steinberg et al 1994)。インスリン誘発性血管拡張は、インスリン抵抗性によって特徴付けられる障害において低下する(Laakso et al 1992,Laakso et al 1993,Feldman et al 1993)。
【0009】
出願人は、IUGRの子供におけるGH治療の間に発症するインスリン感受性の顕著な低下が、処置の終了後3ヶ月間でもなお示されることを以前に観察している(Cutfield,et al 2000(2))。
【0010】
上記の観察に照らせば、成長障害のGH処置の副作用を排除する方法、または少なくとも軽減する方法を確立することは明らかに有益である。標準的なGH治療の体細胞原性(somatogenic)効果における相乗効果を生むがその所望でない副作用を減少させる化合物と、GH置換治療とを組合せる方法を確立することが、特に有益である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、成長ホルモン(GH)処置を必要とするか、またはその可能性を有する状態の処置において、GHおよび少なくとも1種の遊離脂肪酸(FFA)調節因子を含む組合せ治療の使用に関する。
【0012】
特に、本発明は、GH処置の方法に関し、これによってGH処置の体細胞原性効果は向上され、そしてhGH処置のいくつかの代謝性および乳腺刺激性の副作用が減少される。
【0013】
より詳細に、本発明は、成長ホルモン置換治療が必要な若年者患者の処置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長障害を処置する方法を提供し、前記方法は、前記哺乳動物に有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を成長ホルモンと組合せて投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させる方法を提供し、前記方法は、前記哺乳動物に有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を成長ホルモンと組合せて投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0016】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長ホルモン処置、好ましくは成長障害の有害な結果を予防または処置する方法を提供し、前記方法は、有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を成長ホルモンと組合せて投与する工程を包含する。好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、水腫である。別の好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、骨梁減少である。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0017】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長障害を処置するための医薬または組成物の製造における、成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子との組合せの使用に関する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。
【0018】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させる医薬の製造における、少なくとも1種のFFA調節因子の使用に関する。好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。なお別の実施形態において、前記医薬は、前記成長ホルモンおよび前記FFA調節因子との組合せを含む。
【0019】
なお別の実施形態において、本発明は、哺乳動物における、好ましくは成長障害を患った哺乳動物における、成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための医薬の製造における、少なくとも1種のFFA調節因子の使用に関する。好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、水腫である。別の好ましい実施形態において、GH処置の前記有害な結果は、骨梁減少である。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物はヒトである。なお別の好ましい実施形態において、前記哺乳動物は、若年であり、より好ましくは子供または青年である。なお別の実施形態において、前記医薬は、前記成長ホルモンおよび前記FFA調節因子との組合せを含む。
【0020】
なおさらなる実施形態において、本発明は、本発明の方法および使用の実施に適切な組成物を含む。特に、本発明は、成長障害を処置するための、および/または成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための組成物または医薬を提供し、前記組成物または医薬は成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子を含む。本発明の1つの実施形態において、前記FFA調節因子は、フィブリン酸またはフィブリン酸誘導体、好ましくはフェノフィブラートである。本発明の別の実施形態において、前記FFA調節因子は、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体、好ましくはアシピモックスである。
【0021】
本発明の方法、使用、または組成物のいずれかにおいて、前記FFA調節因子の投与は、成長ホルモン投与の前、成長ホルモン投与と組合せて、または成長ホルモン投与に続いて、行われ得る。
【0022】
定義
本明細書中に使用される場合、用語「成長ホルモン」または「GH」としては、以下が包含される:成長ホルモン;成長ホルモン分泌促進物質(GHSs);成長ホルモン放出タンパク質/ペプチド(GHRP);成長ホルモン放出ホルモン(GHRH);ソマトトロピン放出阻害因子(SRIF);成長ホルモンまたは成長ホルモン分泌促進物質の内因的(endogenous)放出を増大させる化合物;GHSの薬学的に受容可能な塩;アナログ;模倣物;機能的に等価なリガンド;プロドラッグ;代謝物;誘導体;アゴニスト;神経成長ホルモンレセプターの活性を増大する化合物;神経成長ホルモンレセプターに結合する化合物またはその化合物の濃度を増大させる化合物;GH、GHS、またはリガンド活性の阻害を減ずるかまたは防止する化合物;またはそれらのアンタゴニストのインヒビター。
【0023】
成長ホルモンおよび産生を刺激するか、またはその阻害を減ずるかまたは防止する薬剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:GHRP−1、GHRP−2(KP−102としてもまた公知)、GHRP−6、ヘキサレリン、G−7039、G−7502、L−692,429、L−629,585、L−163,191(aka MK−0677)、イパモレリン(ipamorelin)、NN703、GHS−25、CP−424,391、グレリン、SM−130686、もしくはGHRHのような成長ホルモン放出ペプチド、またはGHアンタゴニストのインヒビター(成長ホルモンに結合する物質または体内でGHの作用を防止するかまたは減ずる他の物質)。後者の化合物は、抑制機構の除去によって、有効なGH濃度に対して間接的な効果を発揮し、そしてこれらとしては、ソマトスタチン放出抑制因子(SRIF)のような物質が挙げられる。
【0024】
GHは、ネイティブ配列または改変形態の任意のGHであり得、そして任意の供給源(天然であれ、合成であれ、または組換えであれ)由来でもあり得る。例としては、ヒトGH、ウシGH、ラットGH、およびブタGHが挙げられる。しかし、GHは、ヒトGHが利用されることが好ましく、組換えヒトGHがより好ましい。ヒト成長ホルモンの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:天然であるか、またはヒトネイティブ配列を有する組換えGHであるヒト成長ホルモン(hGH)(例えば、GENOTROPINTM、ソマトトロピン、またはソマトロピン)、および組換えヒトネイティブ配列を含む組換え成長ホルモン(rGH)(これらとしては、組換えDNA技術によって生産された任意のGHまたはGH改変体をいう)、N末端にメチオニンを有するかまたは有さない成熟GH、ソマトレム、ソマトトロピン、およびソマトロピン。別の例としては、例えば、1988年7月5日に発行された米国特許第4,755,465号およびGoeddel et al.,Nature,282:544(1979)に記載されるプロセスによって大腸菌中で生産されたメチオニルヒト成長ホルモン(met−hGH)が挙げられる。Met−hGHは、PROTROPINTM(Genentech,Inc.U.S.A.)として市販され、N末端メチオニン残基の存在を除いて、天然ポリペプチドと同一である。別の例としては、NUTROPINTM(Genentech,Inc.,U.S.A.)として市販される組換えhGHが挙げられる。後者のhGHは、このメチオニン残基を欠き、そして天然のホルモンと同一のアミノ酸配列を有する。Gray et al.,Biotechnology 2:161(1984)を参照のこと。別のGHの例としては、米国特許第4,670,393号に記載される純粋な体細胞原性活性を有し、そして乳腺刺激性活性のないGHの胎盤型であるhGH改変体が挙げられる。例えば、WO 90/04788およびWO92/09690に記載されるもののようなGH改変体もまた包含される。
【0025】
特定の実施形態において、それらのGH分子またはGH改変体は、修飾され、好ましくはペグ化される。
【0026】
本明細書中で使用される場合、疾患の「処置」または疾患に対する「治療」は、疾患にかかりやすいが、疾患の症状を未だに経験していないか、または示していない動物において疾患が発症するのを予防すること(予防的処置)、疾患を阻害すること(その発病を遅らせるか、または止めること)、疾患の症状または副作用の軽減を提供すること、および疾患を軽減すること(疾患の退行を引き起こすこと)を包含する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、用語「成長ホルモン処置の有害な結果」とは、成長ホルモン処置によって引き起こされる任意の副作用または有害事象をいう。従って、この用語としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:耐糖能異常、インスリン抵抗性、二次性インスリン過剰症、糖尿病、異常脂質血症、高血圧症、肥満症、ナトリウム貯留および水分貯留に関連する状態(水腫を含む)、骨梁減少、良性頭蓋内圧亢進、関節痛、筋肉痛、糖尿病患者の血糖コントロールの悪化、知覚障害、および手根管症候群。好ましくは、本発明は、水腫および/または骨梁減少の処置に関する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「遊離脂肪酸(FFA)調節因子」とは、脂質低下効果を有する、すなわち、FFAレベルを低下させる任意の化合物をいう。本発明のFFA調節因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フィブリン酸およびその誘導体、ならびにニコチン酸(ナイアシン)およびその誘導体。フィブラートの効果は、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)の活性化によって媒介される。PPARαは、肝臓中の脂肪酸の異化経路を刺激することによってフィブラートの低トリグリセリド(hypotriglyceridemic)効果を媒介すると考えられている。PPARαアクチベータはまた、脂肪組織の量を減少させる。フェノフィブラート、シプロフィブラート、およびGW9578は、動物モデルにおいて、体重および脂肪組織の量に対して、悪影響を与えることなく、インスリン抵抗性を低下させることが見出されている。PPARαアゴニストは、インスリン感受性作用を直接的に与え得る。ベザフィブラートは、脂肪沈着を減少させ、そしてインスリン感受性を改善することが示されている。脂肪細胞において、ニコチン酸は、アデニリルシクラーゼを阻害し、ホルモン感受性リパーゼの抑制を生じることによって脂肪分解を低下させる(Holm et al.,(2000)Molecular mechanisms regulating hormone−sensitive lipase and lipolysis.Annu Rev Nutr 20:365−393)。一晩のアシピモックス(ニコチン酸の長期間作用性アナログ)投与は、脂肪分解を阻害し、血漿FFAレベルを低下させ、インスリン抵抗性を低下させ、炭水化物の酸化を増加させ、経口的ブドウ糖負荷を改善し、そして痩せた糖尿病でない被験体および肥満であるが糖尿病でない被験体、ならびに耐糖能異常または2型糖尿病を有する被験体の血漿インスリンレベルを低下させることが示されている(Santomauro et al.(1999)Overnight lowering of free fatty acids with acipimox improves insulin resistance and glucose tolerance in obese diabetic and nondiabetic subjects.Diabetes 48:1836−1841)。フィブリン酸誘導体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フェノフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、ベザフィブラート、およびシプロフィブラート。ニコチン酸(ナイアシン)誘導体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:持続放出ナイアシン;制御放出ナイアシン;ナイアシンアミド(ニコチンアミド);アシピモックス(5−メチルピラジンカルボン酸4−オキシド);およびニコチン酸エステル(ニコチン酸メチル、ニコチン酸ヘキシル)、ニセリトロール、アシフラン(acifran)、シクロヘキシルフェニルニコチナート、およびシクロヘキシルフェニル−オキシドニコチナート。
【0029】
本明細書中で使用される場合、成長ホルモンおよび1種またはそれ以上の遊離脂肪酸調節因子についての用語「共投与」、「共投与される」、および「組合せ」とは、以下を意味することを意図し、そして以下を参照し、そして包含する:
GHおよびFFA調節因子が、処置の必要な患者へと実質的に同時に成分を放出する単回投薬形態に一緒に処方される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの同時投与、
GHおよびFFA調節因子が、処置の必要な患者によって実質的に同時に取り込まれる別の投薬形態に各々別に処方され、成分が患者に実質的に同時に放出される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの実質的同時投与、
GHおよびFFA調節因子が、各投与の間の有意な時間間隔で、処置の必要な患者によって連続的に取り込まれる別の投薬形態に各々別に処方され、成分が患者に実質的に異なる時間で放出される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの連続投与、および
GHおよびFFA調節因子が、制御された様式で成分を放出する単回投薬形態に一緒に処方され、これらが、患者によって同じ時間におよび/または異なる時間で、同時に、連続して、および/またはオーバーラップして投与される場合の、処置が必要な患者へのGHおよびFFA調節因子の前記組合せの連続投与。
【0030】
hGH処置の「体細胞原性効果」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:成長促進、体重増加、および骨−タンパク同化作用(osteo−anabolic action)。
【0031】
hGH処置の「乳腺刺激性効果」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:プロラクチンレセプター(PRLR)シグナル伝達に関連する外因性成長ホルモンの効果。これらの効果としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:乳腺発達、浸透バランスおよび細胞増殖の変化。
【0032】
hGH処置の「代謝効果」としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:脂質分解の刺激、IGF−Iの分泌刺激、および糖尿病誘発効果。
【0033】
(GHを使用して処置される状態)
GHを使用して処置される状態としては、以下が挙げられる:成長障害、ならびに成人性成長ホルモン欠損症(aGHD)、慢性腎不全(CRI)、エイズの消耗性疾患(Aids wasting)、老化、勃起障害、HIVリポジストロフィ、線維筋痛、骨粗鬆症、記憶障害、うつ病、クローン病、外傷性脳損傷、くも膜下出血(Subarachnoid haemorrhage)、ヌーナン症候群、末期腎不全(ESRD)、骨髄幹細胞レスキュー(Bone marrow stem cell rescue)、代謝症候群、およびグルココルチコイドミオパシー。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「成長障害」とは、低身長を引き起こす任意の状態をいう。このような状態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症(GHD)、子宮内胎児発育遅延(IUGR)、妊娠期間のわりに小柄に生まれた子供における成長阻害(SGA)、超低出生体重(VLBW)、異形成症を含む骨格異常、染色体変異(ターナー症候群、ダウン症、プラダーウィリ症候群)、慢性腎不全関連成長遅延、体質性成長遅延、嚢胞性線維症関連成長遅延、特発性低身長(ISS)、小児におけるグルココルチコイド処置に起因する低身長、早産児に見られる成長不全、または低身長を引き起こす任意の他の状態。
【0035】
(GH欠損症)
成長ホルモン欠損症の診断は、成長ホルモン刺激試験を必要とする。使用される試験としては、インスリン低血糖試験、またはインスリン耐性試験(ITT)、L−ドーパ刺激試験、アルギニン注入試験、およびアルギニン/GHRH試験が挙げられる。3〜5ng/mL未満の成人における成長ホルモン分泌レベルのピークは、GHDを示す。子供において、10ng/mLを下回る値は、不十分であると考えられる。成長ホルモン欠損症は、通常、原則毎日の皮下注射によって与えられる組換えヒト成長ホルモンで処置される。
【0036】
子供におけるGHDの様々な原因があり、そしてほとんどが視床下部または下垂体における問題に関連し得る。特に稀な場合において、成長ホルモンの体内利用の不具合が生じる。成長ホルモン欠損症を有するほとんどの子供において、不具合が視床下部にある。他の下垂体ホルモンがまた通常分泌されない場合、子供は下垂体機能低下症を有すると言われている。先天性下垂体機能低下症において、下垂体または視床下部の異常な形成は、胎児の発育の間に生じる。後天性下垂体機能低下症は、出産の間、または出産後に生じる下垂体または視床下部に対する損傷によって生じる。重度の頭部損傷、疾患に起因する脳傷害、放射線治療、または腫瘍によって引き起こされ得る。
【0037】
子供におけるGHDの世界的な罹患率は、生産児10,000人に少なくとも1人であると見積もられ、そしていくつかの特定の国は、生産児4,000人に1人という高い罹患率を報告している。成長ホルモンが不足している子供は、通常、1年に2インチ未満の成長パターンを示す。多くの場合において、子供は、2または3歳までに正常な成長をし、次いで、遅延型成長の兆候を示し始める。低身長の他の可能性が除外される場合、成長ホルモン欠損症の試験が行われる。毎日の皮下注射に分けて体重1kgにつき0.30mgまでの週用量が、GHD子供に対して推奨される。
【0038】
成人において、成長ホルモンの不足は、以下の状況において発症し得る;大きな下垂体部腫瘍の存在、下垂体腫瘍または他の脳腫瘍の手術後または放射線治療後、視床下部障害に続いて、および成人における幼児期の成長ホルモン欠損症の持続。成人性GHDの臨床的特長としては、以下が挙げられる:倦怠感、筋衰弱、運動能力の低下、体重増加、体脂肪の増加および筋肉量の減少、LDLコレステロールおよびトリグリセロールの増加、ならびにHDLコレステロールの減少、心臓麻痺、心不全、および発作の危険性の増加、骨量の減少、不安およびうつ病、健康感覚の著しい欠損、社会的隔離、ならびに活力の減少。米国において、計35,000人と推定される成人がGHDを有し、そして毎年約6,000人がGHDの新規症例を発症する。平均70kgの男性について、治療開始時の推奨される投薬量は、皮下注射で毎日約0.3mgである。個々の要求に基づいて、35歳より若い患者において1日あたり最大1.75mgまで、および35歳より上の患者において1日あたり最大0.875mgまで、用量は増加し得る。特に、年配の患者または過体重の患者において、有害な事象の発症を最小限にするために、より低用量とする必要があり得る。
【0039】
(プラダーウィリ症候群)
プラダーウィリ症候群は、低血圧症、性腺機能低下症、過食症、認識機能障、および問題行動によって特徴付けられる第15染色体の障害である;主な病状は、病的肥満である。代表的に、成長ホルモンが不足しており、低身長、思春期の急成長の不足、および高体脂肪率(正常な体重を有するものでさえ)を引き起こす。GH治療の必要性が、子供および成人の両方において評価されるべきである。子供において、成長率が減少するか、または身長が3パーセンタイルを下回る場合、GH治療が考慮されるべきである。成長ホルモン置換は、身長を正常化し、そして脂肪のない体を増加させることを助ける;これらの両方は、体重管理を助ける。通常の週用量は、体重1kgにつき0.24mg/kgである;これは週にわたって6〜7の少ない用量に分けられる。
【0040】
(ターナー症候群)
ターナー症候群は、女子の生産児約2,500人に1人に発症する。これは、X染色体の異常または非存在に起因し、そして低身長に高い頻度で関連し、これはGH処置によって改善され得る。ターナー症候群の他の特徴としては、短い首、および時には、翼状頚、外反肘、短い第4および第5の中手骨および中足骨、盾型の胸、および原発性性機能低下症が挙げられ得る。身長の伸びは、ターナー症候群を有する患者で異なるので、GHを用いて処置するかどうかおよびこのような処置の時期の決定は、個別の基準でなされる。しばしば、患者の身長が5パーセンタイルを下回る場合、または標準偏差が平均以下の2未満の標準偏差に下回る場合、処置が開始される。しばしば、処置はGHDを処置するのに使用されるよりもわずかに高いGH用量で開始される;一般的な開始用量は、毎日の用量に分けられ、週に0.375mg/kgである。
【0041】
(慢性腎不全)
慢性腎不全(CRI)は、米国において約3,000の子供に発症する。それは、腎臓が老廃物を排出し、尿を濃縮し、および電解質を貯蔵する能力を段階的および漸進的に消失することにより現れる。1つには腎疾患は成長ホルモンの代謝を妨げるという理由で、慢性腎疾患を有する子供の約3分の1は、異常成長を有する。腎臓疾患を処置するためにしばしば使用される副腎皮質ステロイドホルモンはまた、成長を遅延し得る。腎臓移植は、子供が成長を正常に再開するのを助けるが、ほとんどの子供は、移植前の成長不足を取り戻さない。腎疾患を発病する年齢が腎機能の低下より成長遅延に影響を与える(すなわち、疾患を発病する子供が若いほど成長が遅れる)。GH処置は、週に6または7回与えられ、週あたり0.35mg/kgの投薬量で与えられ得る。
【0042】
(体質性成長遅延)
体質性成長遅延は、正常な出生前の成長、およびその後の、幼年期および幼児期の間の成長の減速により特徴付けられ、そしてその時の身長のパーセンタイルの低下に反映される。3歳と小児期後期の間、成長は正常な速度で進む。明白な成長減速度の時期は、思春期の始まりの直前に観察され得る。体質性遅延を有する子供は、思春期が遅くなる。時には、体質性成長遅延に付随し悪化した低身長と思春期の発達の組合せは、大きな心理社会的な思春期ストレスを引き起こし、GHDを処置するために使用されるのと同様の様式および投薬量で投与されるGHを用いる処置が必要となり得る。
【0043】
(嚢胞性線維症)
嚢胞性線維症(CF)は、アメリカにおいて最も一般的な致死遺伝障害である。米国においておよそ1000人が、毎年嚢胞性線維症を有して産まれる。嚢胞性線維症は、粘液分泌の粘性が増大する外分泌腺の機能障害を引き起こし、これは、肺疾患、膵外分泌機能不全、および腸閉塞をもたらす。早期の診断および処置は、CFを有する子供の死亡率を著しく減少させる。しかし、栄養失調および乏しい成長は、重大な問題のままである。不十分な体重増加、体重減少、および栄養不良は、エネルギー取り込みの低下、エネルギー損失の増加、およびエネルギー消費の増加を引き起こす。CFを有するヒトの28%が、身長について10パーセンタイルを下回り、そして34%が、体重について10パーセンタイルを下回ることが報告されている。GH治療が、嚢胞性線維症を有する患者において、身長の増加速度、体重の増加速度、脂肪のない体(LBM)、および肺機能を改善することが研究によって示されている。
【0044】
(骨異形成症)
軟骨形成不全症のような低身長に関連する骨異形成症は、GHを用いて処置され得る。軟骨形成不全症は、線維芽細胞増殖因子レセプターIII型遺伝子に作用する一般的な障害であり、これは出産時に明らかとなる。出生児20,000人に約1人が発症し、そして全人種および両方の性別において発症する。胎児の発育および幼児期の間、鼻および耳のようないくつかの場所を除いて、通常、軟骨が骨に成長する。軟骨形成不全症を有する個体において、長骨の成長板における軟骨細胞が骨になる速度が遅く、短骨および身長の低下をもたらす。
【0045】
軟骨形成不全症は、以下によって特徴づけされる:低身長、短肢、近位端(proximal extremity)(上腕および大腿部)、体に対して不相応に大きい頭の出現、骨格(四肢)の異常、中指と薬指との間に持続的な(persistent)空間を有する異常な手の出現(三叉手)、著しい脊柱後弯症および脊柱前弯症(脊椎湾曲)、アヒル歩行、がに股、突出した(目立った)額(前頭骨のこぶ)、低血圧症、および羊水過多症(病気に冒された幼児が産まれる場合に現れる)。GHは、日本および南アフリカのようないくつかの国において、軟骨形成不全症を処置するために承認されているが、FDA承認は有していない。
【0046】
(子宮内発育遅延(IUGR)および妊娠期間の短い子供(SGA子供))
GH処置は、子宮内発育遅延を有する子供または妊娠期間の短い幼児(この状態はまたラッセル−シルバー症候群と呼ばれる)に有益であり得る。子宮内発育遅延の1つの定義は、妊娠期間に対して10パーセンタイル以下の体重であるか、または、妊娠期間について平均以下の2標準偏差の出生時体重である。遅れを取り戻す成長が見られない子供は、GH処置の利益を享受し得ることが、研究で示されている。
【0047】
本発明は、GHとFFA調節因子との共投与が、脂質分解を防止することによってインスリン感受性の低下を改善し、GH治療単独と比較して水腫効果(oedemic effect)を増大させ、そしてGH単独よりも線形成長を増大するような相乗作用を発揮するという驚くべき知見に基づいている。
【0048】
本発明は、GH治療に関連する状態を軽減し、そして先行技術に存在する方法を効果的に向上させることを目的とする新しい方法および組成物を提供する。さらに、本発明に開示される新規な応用が、先行技術に存在する方法の有益な代替物を公衆に提供するものである。
【0049】
(処置の方法)
広義には、本発明は、成長ホルモン(GH)処置の結果の処置または予防に関する。GHは、一般的に低身長を引き起こす状態を処置するために使用され、低身長としては、制限されないが以下が挙げられる:成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症、子宮内発育遅延(ラッセル−シルバー症候群)、骨格異常、染色体異常(ターナー症候群、ダウン症)、または慢性腎不全関連成長遅延。GH処置は、上記のような多数の状態に寄与することが示されている。迅速なGH処置を超えて広がるこのような状態もまた、観察されている。完全に予防されないにせよ、FFA調節因子の投与、好ましくはGH処置との組合せ投与によってこのような結果が少なくとも緩和され得ることを、出願人は確立した。GHへのFFAの添加は、前処置の状態または正常な子供の状態にインスリン感受性を修正する。成長ホルモン処置の有害な結果が症状として観察されない場合、この結果の発生率は、少なくとも予防的に緩和され得る。
【0050】
GH治療の有害な効果を軽減しながら、GHの成長増加効果をFFA調節因子の使用によって向上させることが、特定の有利な点である。
【0051】
結果として、組合せ処置は、(GHの投与を用いて)低身長状態を処置する有用な方法を提供し、同時に、処置のいくつかの有害な結果を少なくとも減少させる。
【0052】
(薬学的組成物)
一般的に、本発明の化合物は、以下の経路の1つによって薬学的組成物として投与される:経口、局所的、全身(例えば、経皮、鼻腔内、肺内、または坐薬によって)、非経口(例えば、筋内、皮下、動脈内、腹腔内、または静脈内の注射)、移植によって、浸透ポンプ、経皮パッチなどのようなデバイスによる注入によって。組成物は、錠剤、ピル、カプセル、カシェ剤、トローチ、顆粒、半固体、粉末、徐放性製剤、溶液、懸濁液、エマルション、エリキシル、エアロゾル、または任意の他の適切な製剤の形態を取り得る:そして薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。適切な賦形剤は当業者に周知であり、そしてそれらおよび組成物を処方する方法は、以下のような標準的な参考文献において見出され得る:Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1975;Liberman,et al.,Eds.,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;Kibbe,et al.,Eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients(3rd Ed.),American Pharmaceutical Association,Washington,1999;およびGennaro AR:Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Lippincott,Williams and Wilkins,Philadephia,PA(2000)。特に、注射可能な溶液に適切な液体キャリアとしては、水、生理食塩水、デキストロース水溶液などが挙げられ、等張液が静脈投与に好ましい。
【0053】
本発明の方法における処置または予防に使用される活性化合物(GHおよびFFA調節因子)は、処方され、そして個々の被験体の臨床状態(特に、GH単独での処置の副作用)、組成物の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医師に公知である他の因子を考慮して、良好な医療にふさわしい方法で投薬される。各患者に対する各活性化合物(GHおよびFFA調節因子)の特定の用量レベルは、以下に挙げられる色々な因子に依存することが理解される:利用される特定の薬剤の活性、年齢、体重、健康、性別、食生活、投与の時間、排出の割合、選択された活性剤の組合せ、特定の状態もしくは処置される障害の重症度、および投与の形態。従って、本明細書中の目的のための各構成要素の「有効量」は、このような考慮によって決定され、そして所望の効果を達成する量であり、前記所望の効果としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:被験体の成長速度の増加、および/またはGH処置の有害な結果、特にインスリン感受性、水腫、および/または骨梁減少(trabecular bone loss)の悪化を減少させ、そして/または予防すること。適切な投薬量は、試験において決定され得る。
【0054】
(FFA調節因子の投与)
一般的に、フィブラートの日用量は、通常、0.1mg〜100mg/kg、代表的に0.1〜20mg/kgの範囲である。静脈注射用量は、例えば、0.01mg〜0.1g/kg、代表的に、0.01mg〜10mg/kgの範囲であり、これは、1分間に0.1μg〜1mgの範囲の注入として簡便に投与され得る。この目的に適切な輸液は、例えば、1ミリリットルあたり0.01μg〜0.1mgを含んでもよい。単位用量は、例えば、各成分の0.1μg〜1gを含んでもよい。従って、注射用アンプルは、例えば、0.1μg〜0.1gを含んでもよく、そして錠剤またはカプセルのような経口投与可能な単位用量製剤は、例えば、0.1mg〜1gの範囲で含んでもよい。好ましくは、フィブラート、特にフェノフィブラートは、毎日、約50〜450mgの量で投与される。
【0055】
ニコチン酸またはニコチン酸誘導体の全日用量は、一般的に、単回用量または分割量で約500〜約10,000mg/日、または単回用量または分割量で約1000〜約8000mg/日、もしくは約3000〜約6000mg/日の範囲であり得る。
【0056】
好ましくは、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体は、経口投与される。錠剤またはカプセルのような経口投与可能な単位用量製剤は、例えば、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体を約50〜約500mg、または約200mg〜約1000mg、または約500〜約3000mgを含み得る。
【0057】
本発明のニコチン酸またはニコチン酸誘導体の経口送達は、当該分野で周知のように、製剤中に含まれ、多数の機構によって胃腸管への薬物の即時送達、または持続性送達、または徐放送達を提供し得る。即時送達性製剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:経口溶液、経口懸濁液、高速溶解性錠剤またはカプセル、崩壊性錠剤など。持続性送達または徐放性送達の製剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:胃腸管のpHの変化に基づいた投薬形態からのpH感受性放出、錠剤またはカプセルの遅延性侵食、製剤の物理的特性に基づいた胃における保持、腸管の粘膜内層への投薬形態の生物学的付着、または投薬形態からの活性薬物の酵素的放出。意図される効果は、活性薬物分子が投薬形態の操作により作用部位に送達される時間にわたって延長されることである。従って、腸溶性コート化製剤および腸溶性コート化制御放出製剤は、本発明の範囲内である。適切な腸溶性コーティングとしては、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびメタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルのアニオン性ポリマーが挙げられる。NIASPAN(登録商標)錠剤(Kos Pharmaceuticals)において見られるような延長性放出製剤を含む、製剤の非限定的例は、米国特許第6,080,428号および同第6,129,930号に開示され、この両方は参照によって全体が本明細書中に加入されている。
【0058】
(GHの投与)
好ましくは、被験体に投与されるGHの有効量は、1日につき約0.001mg/kgと約0.2mg/kgとの間であり;より好ましくは、GHの有効量は、1日につき約0.01mg/kgと約0.1mg/kgとの間である。他の局面において、被験体に投与されるGHの有効量は、週に少なくとも約0.2mg/kgである。別の局面において、GHの有効量は、週に少なくとも約0.25mg/kgである。別の局面において、GHの有効量は、週に少なくとも約0.3mg/kgである。1つの実施形態において、GHの用量は、週に約0.3〜1.0mg/kgの範囲であり、そして別の実施形態において、週に0.35〜1.0mg/kgの範囲である。好ましくは、成長ホルモンは、約7.4〜7.8のpHで処方される。
【0059】
好ましくは、GHは、1日に1回、皮下投与される。好ましい局面において、GHの用量は、1日につき約0.001と0.2mg/kgとの間である。なおより好ましくは、GHの用量は、1日につき約0.010と0.10mg/kgとの間である。
【0060】
GHは、適切に、例えば、特定の時間(例えば、1日に1回)に特定の用量の注射形態で、連続的にまたは非連続的に投与され、注射時に血漿GH濃度が増加し、次いで、次の注射時まで血漿GH濃度が減少する。別の非連続的投与方法は、活性成分の非連続性放出(例えば、イニシャルバースト)、次いで、活性成分の放出前の遅延を提供するPLGAミクロスフェアおよび利用可能な多くの移植デバイスの使用によってもたらされる。例えば、米国特許第4,767,628号を参照のこと。
【0061】
GHはまた、血液中に連続的に存在するように投与され、GHの投与の持続時間を維持し得る。例えば、浸透ミニポンプのようなミニポンプによる連続注入を用いて達成されることが、最も好ましい。あるいは、GHの頻繁な注射の使用(すなわち、1日に1回より多く、例えば、1日に2回または3回)によって達成されることが適切である。
【0062】
なお別の実施形態において、血液からのGHのクリアランスを遅延させるか、または、例えば、注射部位からのGHの遅延性放出をもたらす、長期作用性GH製剤を使用して、GHは投与され得る。GH血漿クリアランスを延長する長期作用性製剤は、複合体化されたGH、または1つまたはそれ以上のその結合タンパク質(WO 92/08985)もしくは以下:PEG、およびポリプロピレングリコールホモポリマー、およびポリオキシエチレンポリオール(すなわち、室温で水に溶解性のもの)から選択される水溶性ポリマーのような高分子に簡便に(可逆結合または不可逆結合によって)結合体化されたGHの形態であってもよい。あるいは、GHは、ポリマーに複合体化されるか、または結合され、その循環半減期を増加されてもよい。この目的に有用なポリエチレンポリオールおよびポリオキシエチレンポリオールの例としては、以下が挙げられる:ポリオキシエチレングリセロール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレングルコースなど。ポリオキシエチレングリセロールのグリセロールバックボーンは、モノグルセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド中の、例えば、動物およびヒトに生じるのと同じバックボーンである。
【0063】
ポリマーは任意の特定の分子量を有する必要はないが、好ましくは、分子量は約3500と100,000との間であり、より好ましくは、5000と40,000との間である。PEGホモポリマーは非置換であることが好ましいが、一端がアルキル基で置換されていてもよい。好ましくは、アルキル基は、C1〜C4アルキル基であり、最も好ましくは、メチル基である。最も好ましくは、ポリマーはPEGの非置換ホモポリマー、PEGのモノメチル置換ホモポリマー(mPEG)、またはポリオキシエチレングリセロール(POG)であり、そして約5000〜40,000の分子量を有する。
【0064】
PEGに結合体化されたGHを生産する特定の方法としては、PEG−GHについての米国特許第4,179,337号、および同第4,935,465号(これは、GHに可逆的であるが共有結合されたPEGならびにWO 99/03887、WO03/044056、およびWO 2004/22630に開示されるPEG−hGH結合体化も開示する)に記載される方法が挙げられる。
【0065】
GHはまた、徐放系によって適切に投与され得る。本明細書中で有用な徐放性組成物の例としては、造形品の形態で半浸透性ポリマーマトリクス(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)が挙げられる。徐放性マトリクスとしては、以下が挙げられる:ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP 58,481)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers,22,547−556(1983)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98−105(1982)、エチレンビニルアセテート(Langer et al.,supra)、またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)、またはPLGAミクロスフェア。
【0066】
徐放性GH組成物としてはまた、リポソーム取り込み(liposomally entrapped)GHが挙げられる。GHを含むリポソームは、それ自体が公知である方法によって調製される:DE 3,218,121;Epstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692(1985);Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030−4034(1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願83−118008;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号;ならびにEP 102,324。通常、リポソームは、脂質含有量が約30molパーセントコレステロールよりも多い、小さな(約200〜800オングストローム)単層型であるが、治療に最適なように選択された比率が調整される。さらに、生物学的に活性な徐放性製剤が、米国特許第4,857,505号に記載されるように、活性化多糖に共有結合したGHの付加から作製され得る。さらに、米国特許第4,837,381は、遅延放出のための、脂肪、もしくはワックス、またはそれらの混合物と、GHとのミクロスフェア組成物を記載する。
【0067】
1つの実施形態において、非経口投与のために、GHは、一般に、所定の純度でGHを、薬学的に受容可能なキャリア(すなわち、利用される投薬量および濃度で受容者に対して非毒性であり、かつ製剤の他の成分と適合するキャリア)と、注射可能な単位投薬形態(溶液、懸濁液、またはエマルション)に混合することによって処方される。例えば、好ましくは、製剤は、酸化剤およびポリペプチドに有害であることが公知であるほかの化合物を含まない。一般的に、製剤は、GHを液体キャリア、もしくは微粉化した固体キャリア、またはその両方と接触させることによって製造される。次いで、必要である場合、生成物は、所望の製剤に成形される。好ましくは、キャリアは、非経口キャリアであり、より好ましくは、受容者の血液と等張性である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンガー溶液、およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクル、ならびにリポソームはまた、本明細書に有用である。
【0068】
キャリアは、微量の等張性および化学的安定性を増強する物質のような添加物を適切に含む。このような物質は、利用される投薬量および濃度で受容者に対して非毒性であり、そして、これらとしては以下が挙げられる:リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸、またはそれらの塩のような緩衝化剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖類、二糖類、および他の炭水化物(セルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポリキサマー、またはPEG)。
【0069】
GHは、代表的に、約4.5〜8のpHで、約0.1mg/mL〜100mg/mL、好ましくは、1〜10mg/mLの濃度でこのようなビヒクルに別々に処方される。GHが7.4〜7.8のpHであることが好ましい。前述の特定の賦形剤、キャリア、または安定剤の使用が、GH塩の製剤をもたらすことが理解される。
【0070】
以上、その好ましい形態と共に本発明を説明してきたが、当業者に明らかな代替物および医薬品もまた、開示される本発明の精神および範囲に含まれることを意図している。
【0071】
(薬理的研究1)
線形成長の改善およびGH治療に関連する代謝異常の減少についての、GHおよびFFA調節因子を含む組合せ治療の効果を評価するための研究。
【0072】
(研究設計)
この研究は、胎児の成長遅延に起因する低身長について十分に特徴付けられたげっ歯類モデルを利用した(Woodall et al.1996)。
【0073】
全体的な実験設計の図式を以下に示す。
【化1】
【0074】
(実験手順−方法および分析手順)
(動物モデル)
SGAを誘発させるために使用した栄養不足の母親のげっ歯類モデルは、始めに、Liggins Institute,Faculty of Medical and Health Sciences,University of Auckland by Woodall et al.(1996)において特徴付けられた。以降、このモデルは、数件の国際的な論文審査のある学術誌に公開されている(Woodall et al.1996,1998;Vickers et al.2000,2001)。
【0075】
SGAを誘発するためのこの実験的な取り組みは、22日齢の胎児において30〜35%の成長遅延をもたらし、そして出生後の成長障害を持続し、そして少なくとも90日齢までに遅れを取り戻す成長の兆候を示さない。これらの動物は、成体のように、高血圧症、インスリン抵抗性、および体幹の肥満を発症する。
【0076】
(SGAの子を産生するための動物プロトコル)
処女Wistarラット(75〜100月齢)を、雄を導入する前にこの動物の発情期の段階を評価するためラットの発情周期モニター(Fine Science Tools INC.,North Vancouver,BC,Canada)を使用して交尾させた。妊娠の1日目を、膣スミア中の精子の存在によって決定した。交配の確認後、ラットを、寝具類として経木を備え、水へ自由にアクセスできる標準的なラット籠中に個々に収容した。動物部屋を25℃にて12時間明:12時間暗サイクルで維持した。自由に食事を摂れるようにか(ADグループおよび里親養育(cross fostering)のための母獣)、または自由に30%の食事を摂れる(UNグループ、自由に食事を摂らせた母獣の前日の食物摂取を測定することによって決定した)ように、母獣をランダムに割り当てた。食物の組成は、タンパク質18%、脂肪4%、繊維3%、灰分7%、および炭水化物58%である(Diet 86,Skellerup Stock Foods,Auckland,New Zealand)。食物摂取および体重を、毎日記録した。誕生後、UNの子は、自由な食事の母親に里親養育された。里親養育は、制限された食事の母獣における乳分泌の不足に起因して、必要である。産子数は、同腹の子あたり8匹に調節し、適切かつ標準的な栄養を確保した。全ての子の体重を、毎日記録した。離乳した子(21日齢)を性別判定し、体重を合わせ、そして標準的な籠に対をなして収容した。研究の残りの間、全ての動物に自由に食事を与えた。母獣をCO2窒息によって屠殺し、そして断頭術によって余分な子を屠殺した。全ての動物の倫理は、Animal Ethics Committee at the University of Aucklandによって認可された。
【0077】
この実験において、雄の子のみを使用した。
【0078】
身長および空腹時インスリン濃度において予測される統計的に有意な差異を実証するために、10のグループの大きさが必要であることが、出力計算の使用により決定した。
【0079】
(試験化合物)
(組換えウシ成長ホルモン(rbGH))
実験的用途での利用が比較的容易であるため、げっ歯類における多くの研究が、ヒトGH(hGH)を用いる処置を利用する。しかし、hGHは、プロラクチンレセプターおよびGHレセプターの両方に結合するので、ラットの乳腺刺激性特性および体細胞原性特性の両方を有する。これは、hGH、bGH、oPRL、およびラット成長ホルモン(rGH)、ならびにラットプロラクチン(rPRL)を使用する結合研究において明確に実証されている。ラット肝細胞は、hGHを結合する2種類の結合部位を含む。第一に、体細胞原性結合部位は、成長促進ホルモンのbGHおよびrGHに特異的である。第二に、乳腺刺激性結合部位は、乳腺刺激性ホルモンのoPRLおよびrPRLに特異的である。ヒトGHは、両方の部位への結合を示す(Ranke et al.,1976)。
【0080】
組換えラットGHは、ラージスケールの動物実験のための、十分な量が入手可能でなかった。従って、bGH(ラットの純粋なソマトゲン(somatogen)およびラットプロラクチンレセプターに対するリガンドでない試薬(Yamada et al,1984))を研究に使用した。
【0081】
動物は、1日あたり5mg/kgの用量および100μlの容量で、皮下注射によ
ってbGHで処置された。細いゲージの糖尿病用シリンジを使用して、0800および1700hに、分割量(2×2.5mg/kg/日)としてこれを投与した。コントロール動物を、同一の処置プロトコルを使用して生理食塩水を投与した。
【0082】
(フィブラート)
フェノフィブラートは、フィブラート(フィブリン酸誘導体薬物)のクラスに属する。フィブラートは、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターα(PPAR−α)の媒介によって、血清トリグリセリドレベルを有効に低下させる脂質低下剤である。さらに、フィブラートは、血清コレステロールレベルを低下させることが公知である。
【0083】
フェノフィブラートを、1日あたり、体重1kgにつき30mgの投薬量で、毎日、強制飼養で経口投与した(0800h)。
【0084】
(アシピモックス)
アシピモックスは、強力な長期作用性ニコチン酸(NA)アナログである。脂質低下剤としてのアシピモックスは、トリグリセリドおよび非エステル化脂肪酸の血清濃度を低下させる。アシピモックスは、脂質分解の阻害によってGH誘発性インスリン抵抗性を部分的に予防することが示されている(Segerlantz et al.2001)。アシピモックス(Pharmacia)を、1日あたり、体重1kgにつき20mgの用量で、毎日、強制飼養で経口投与した(0800h)(Blachere et al.2001)。
【0085】
(観察)
(体重)
動物は、実験の間、毎日午前8〜9時の間に体重を測られた。個々の動物を、臨床的変化、処置に対する反応、または健康障害のいずれの兆候についても毎日観察した。いずれの処置グループにおいても、有害ストレス反応および関連症状のいかなる兆候も現れなかった。
【0086】
(食物消費)
食物摂取は、一日基準で測定した。ラット1匹あたりの相対的な食物摂取(体重1gにつき1日あたりの摂取されたグラム)を、各グループにおいて、各対に与えられた食物の量および各対によって残された食べ残しの食物の量を使用して計算した。
【0087】
(水消費)
研究のそれぞれの日の同じ時間に水ボトルを計量することによって、水消費を毎日計算した。
【0088】
(身長)
身長(鼻〜肛門および鼻〜尾)および骨長(脛骨、大腿骨長)を、末梢骨定量的コンピュータ断層法(peripheral quantitative computed tomography)(pQCT、Stratec)分析を使用して、死後に評価した。骨密度もまた、pQCTによって評価した。
【0089】
(血圧)
最高血圧および最低血圧、ならびに心拍数を、製造者の指示書にしたがって、尾の血圧計バンド(tail cuff)のプレチスモグラフィーによって記録した(Blood pressure analyser IITC,Life Science,Woodland Hills,CA,USA)。ラットを温室(25〜28℃)の透明なプラスチック管に拘束した。10〜15分の順応の後、血圧計バンドを尾に置き、そして240mmHgに膨らませた。3mmHg/秒の速度での収縮の間、脈拍を記録し、そして脈拍の再現を使用して最高血圧を測定した。最低3回の明らかな最高血圧の記録を、動物1匹に対してとった。報告された測定の変動係数は5%未満であることを、前回の観察が示す。
【0090】
(血漿分析)
血液サンプルを、一晩の断食の後に回収した。サンプルを尾の静脈から回収し、そして最後にハロタン麻酔下、断頭術を行った。血液サンプルを、ヘパリンを添加した管に回収し、そして血漿を回収するために遠心分離した。次いで、血液サンプルを、インスリン、グルコース、FFA、レプチン、IGF−I、グリセロール、トリグリセリド、コレステロール、副腎皮質ステロイド、肝機能のマーカー(ALT、AST、ALP)、およびタンパク質合成のマーカーについて分析した。
【0091】
血漿FFA、トリグリセリド、およびグリセロールを、診断キット(それぞれ、Boehringer−Mannheim#1383175およびSigma#337)によって測定した。血漿レプチン、インスリンを、市販されているキット(Linco,St Charles,MO,US)を使用して測定した。血漿IGF−Iを、前記のようにRIAによって測定した(Vickers et al.,2000)。血漿グルコース濃度を、比食分析プレートアッセイを使用して測定した。全ての他の血漿分析(肝臓酵素、電気分解など)を、Agriquality Laboratory Services(Auckland,New Zealand)によるBM/Hitachi 737分析器によって測定した。
【0092】
(組織研究)
最後に、動物をハロタン麻酔下、断頭術によって屠殺した。組織(心臓、肝臓、筋肉、および脂肪(皮下および内臓))を回収し、重さを測り、そして引き続く分析のために液体窒素中でスナップ凍結させた。リガンド結合分析を使用して成長ホルモンレセプターを試験するために、肝臓組織のアリコートをまた−20℃で凍結させた。
【0093】
(データ分析)
多重回帰分析または要因ANOVA/ANCOVAを使用して、データを分析し、適切な場合、事後補正する(出生前の影響および出生後の処置効果)。利用される統計パッケージは、StatView(Version 5,SAS Institute)であった。
【0094】
以前のデータは、提案された研究のための出子計算の基準を提供した(α=0.05の場合)。インスリン感受性について、nが10である場合、0.15ng/mlのSDを有する、80%の出力で0.2ng/mlの変化、および95%で0.26ng/mlの変化を検出した。身長について、nが10である場合、5.2mmのSDを有する、80%の出力で6.88mmの変化、および95%で7.97mmの変化を検出する。
【0095】
(結果)
妊娠15日目まで、妊娠1日目のSGAグループの妊娠している雌と比較して母親の体重は、わずかに減少した。妊娠15日目から、SGA母獣は体重が増加し、そして出産時までに交配前の体重に達した。産子数における2つのグループ間に有意な差異はなかった(AD 13.4±0.4、SGA 12.8±1.1)。母親の栄養不足は、出産時のSGA母獣からの子における著しい体重減少によって示される胎児の成長遅延をもたらした(AD雄6.1±0.49g、SGA 4.3±0.6g、p<0.0001)。ADの子と比較して、誕生時のSGAの子における鼻〜肛門(NA)および鼻〜尾(NT)の長さは、著しく短かった(NA:AD雄49.3±2.43mm、SGA雄44±3.0mm;NT:AD雄65.9±2.8mm、SGA雄58±4.1mm、両方の長さについてp<0.0001)。出産から22日目の離乳期まで、体重はSGAの子において著しく低いままであった。処置の開始時、SGAの子は、AD動物よりも有意に軽く(p<0.0001)、そして全体重は、研究の残りの間、SGAの子において有意に低いままであった。
【0096】
(体重反応)
体重増加(グラムの増加)は、生理食塩水グループと比較して、全ての処置グループにおいて有意に増加した(p<0.0001)(図1)。GHで処置された動物と各組合せ治療で処置された動物との間の絶対的体重増加に有意な差異はなかった。しかし、GHおよびアシピモックスで処置された動物は、GHおよびフィブラートで処置された動物と比較して、有意な体重増加を有した。SGA動物は、全ての処置グループについてAD動物よりも有意に軽く、そして統計的相互作用はなかった。
【0097】
GH単独と比較して、GHおよびアシピモックスで処置されたAD動物は、体重増加においてGH単独動物と徐々に相違を示した(図1)。しかし、AD動物における組合せ処置の効果は、GH単独処置と比較して、出生後約57日目まで減少を現した。SGA動物において、GHおよびフェノフィブラートの組合せ治療は、GH処置動物と比較して有意な体重増加を示したが、この効果は、共治療の約2週間後に減少し、そして試験の最後まで、これらの動物は、GH処置動物よりもわずかに遅い速度で成長した。しかし、GHおよびアシピモックスで処置されたSGA動物は、GH処置動物と比較して、ゆっくりではあるが明確な体重増加を示し、これは試験の最後まで減少しなかった(図2)。
【0098】
GH単独と比較して、体重増加に対する組合せ治療の非常に有益な効果があることを、1日あたりの体重変化の分析がまた示唆する。GHおよびアシピモックス処置された動物において、特に、SGA動物において、これは、最も注目される(図3)。
【0099】
(骨長)
脛骨を、10%の中性緩衝化ホルマリンに貯蔵した。組織を骨および骨長から取り去り、面積および密度(皮層および小柱(trabecular))を、pQCT(Stratec)を使用して評価した。脛骨長は、SGAの子において有意に減少した。GHは、全ての処置グループにおいて脛骨長を有意に増加した。しかし、GHおよびアシピモックス組合せ治療は、脛骨成長に対するGH誘発性効果を向上させた(p<0.0001)(図4)。GHおよびフェノフィブラート処置された動物における脛骨長は、GH単独のものと有意に違わなかった。脛骨長は、全身長(鼻〜肛門)と高い関連性があった(図5)。全脛骨面積は、SGA動物において有意に減少し、そして全ての処置動物において増加した。
【0100】
興味深いことに、GH処置は、骨梁量を有意に減少させた。しかし、組合せ治療で処置されたこれらのAD動物およびSGA動物において、この骨梁減少が現れなかった(表1)。
【表1】
【0101】
SSI(骨強度指数(stress strain index))は、SGA動物において有意に減少し、そして全てのGH/GH組合せ処置動物において増加した。
【0102】
全ての骨密度は、いずれの処置グループにおいても有意に変化しなかったが、GHグループにおける総骨密度を低下する傾向があり(p=0.056)、これは組合せ治療グループにおいて観察されなかった。皮層骨密度(皮層および皮質下、mm2)は、いずれの処置グループにおいても有意に変化しなかった。
【0103】
(身長)
鼻〜肛門の長さは、GH処置により有意に増加し、さらに、GHおよびアシピモックスでの組合せ治療を使用するとさらに増加した(GH対GHおよびアシピモックスについて、p<0.005)(図6)。
【0104】
(体格指数(BMI))
BMIを以下を使用して計算した:体重/鼻〜肛門の長さ(cm)2。BMIは、AD動物と比較してSGA動物において有意に低かった(p<0.05)。BMIは、生理食塩水処置動物およびGH処置動物の両方と比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において有意に低かった(p<0.005)。生理食塩水処置動物とGH処置動物との間に、BMIの有意な差異はなかった。GH処置動物と比較してGHおよびアシピモックス処置動物における脂質分解の欠損に起因して、BMIの変化は、おそらく、GH単独の場合を上回る線形成長の増加を示す。
【0105】
(食物摂取)
いずれの処置グループにおいても、相対的な食物摂取に有意な差異はなかった(体重1gあたりに摂取されるグラム)。SGA動物は過食症であり、食物摂取はAD動物と比較してわずかであるが有意に増加しており(p<0.05)、この結果は、発明者らの以前の観察結果と一致した2。
【0106】
(水摂取)
いずれの処置グループの間においても、水摂取に有意な差異はなかった。しかし、GH+アシピモックス処置グループ、特にAD動物において、相対的な水摂取を増加する傾向があった(体重1gあたりに摂取される水)(p=0.09)。AD動物と比較して、SGA動物は、わずかであるが有意に低い相対的水摂取を有した(p<0.05)。
【0107】
(血液ヘマトクリット値)
GH処置の十分に特徴付けられた効果は、血漿値の増加である(Johannsson et al,2002)。血液ヘマトクリット値の減少は、GH治療の水貯留効果に関連する血漿値増加の確実なマーカーである。予想通りに、ADグループおよびSGAグループの両方において、血液血漿ヘマトクリット値は、GH処置動物において有意に減少した。ヘマトクリット値の減少はまたGHおよびフェノフィブラート処置動物において観察されたが、驚くべきことに、GHおよびアシピモックス組合せにはヘマトクリット値低下の効果はなかった。GH単独、ならびにGHおよびフェノフィブラートグループと比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、血漿ヘマトクリット値は有意に高く、そして生理食塩水のものとの有意な差異はなかったにもかかわらず(図7)、GHおよびフィブリン酸誘導性FFA調節因子の組合せは、GH誘発性水分貯留の改善に対する相乗作用の程度を示した。
【0108】
(肝臓)
体重に対する肝臓の重さは、AD動物とSGA動物との間に有意な差異はなかった。相対的な肝臓の重さは、GHおよびフェノフィブラートで処置されたAD動物およびSGA動物において有意に増加した(図8)。GH単独またはアシピモックスと組合せたGHは、肝臓の重さに対する効果は有さなかった。
【0109】
(後腹膜脂肪沈着)
相対的な後腹膜脂肪沈着について、AD動物とSGA動物との間の有意な差異はなかった。GH処置、またはGHおよびフェノフィブラートとの組合せ処置は、生理食塩水コントロールと比較して、腹膜後脂肪量を有意に減少させた(図9)。後腹膜脂肪は、GH治療により有意に減少したが、組合せ治療によって、特に、アシピモックスと組合せてGHを投与したSGA動物において、この脂肪分解は部分的に阻害された。
【0110】
(腎臓)
AD動物と比較して、SGA動物において、腎臓の重さは体重に対して有意に減少した(p<0.005)。全ての他の処置グループと比較して、GH+フェノフィブラート動物において、相対的な腎臓の重さは有意に増加した。生理食塩水コントロールと比較して、GH動物において、相対的な腎臓の重さは減少したが、GHおよびアシピモックス処置動物は、コントロールとの有意な差異はなかった。
【0111】
(副腎)
副腎の重さは、AD動物とSGA動物との間で有意な差異はなかった。生理食塩水コントロールと比較して、全ての処置グループにおいて、副腎の重さは有意に増加した。GH単独で処置された動物と比較して、GHおよびフェノフィブラート処置動物、ならびにGHおよびアシピモックス処置動物において、副腎の重さは有意に増加した(図10)。
【0112】
(脾臓)
AD動物と比較して、SGA動物において、相対的な脾臓の重さは有意に増加した。全ての処置グループにおいて、体重に対する脾臓の重さは増加し、そしてコントロールと比較してGH+フェノフィブラート動物において、さらに脾臓を成長させる傾向にあった(p=0.056)(図11)。
【0113】
(IGF−I)
生理食塩水コントロールと比較して、GH処置のAD動物およびSGA動物、ならびにGHおよびアシピモックス組合せ処置のAD動物およびSGA動物において、血漿IGF−Iは有意に増加した(図12)。しかし、GH+フェノフィブラート処置動物において、血漿IGF−Iは有意に増大しなかった。GHおよびアシピモックス処置動物において見られるIGF−Iの増加と、GH処置動物におけるIGF−Iの増加に有意な差異はなかった。
【0114】
(空腹時インスリン値)
生理食塩水処置と比較して、GHおよびフェノフィブラート処置動物において、空腹時血漿インスリン値は有意に増加した。インスリン濃度は、GHおよびアシピモックス処置動物と有意に変わらなかったが、GH単独、またはフェノフィブラートと組合せたGHで処置した動物よりも有意に低かった(図13)。AD動物とSGA動物との間のインスリンレベルの有意な差異はなかった。
【0115】
(空腹時グルコース)
空腹時血漿グルコースは、AD動物とSGA動物との間で有意な差異はなく、そしてGH治療による有意な変化もなかった(図14)。GH単独と比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、血漿グルコースは有意に低く、そしてGHおよびアシピモックス処置動物において、グルコースはコントロールよりも全体的に低い傾向にあった(p=0.07)。生理食塩水、ならびにGH/GHおよびアシピモックス処置動物と比較して、GHおよびフェノフィブラートグループにおいて、グルコースは有意に増加した。AD動物とSGA動物との間のグルコースレベルにおいて、有意な差異はなかった。
【0116】
(レプチン)
AD動物とSGA動物との間で、血漿レプチン濃度に統計的に有意な差異はなかった(図15)。生理食塩水処置動物ならびにGHおよびフィブラートを受けた動物と比較して、GH処置動物において、レプチンは増大した。GH処置動物とGHおよびアシピモックスを投与された動物との間で、レプチン濃度の差異はなかった。
【0117】
(遊離脂肪酸(FFA))
血漿FFAは、AD動物とSGA動物との間で有意な差異はなかった。生理食塩水処置およびGH単独で処置された動物と比較して、GHおよびアシピモックスで処置されたAD動物およびSGA動物において、血漿FFAは有意に減少した(図16)。興味深いことに、GHおよびフィブラートの組合せは、FFA濃度を低下させず、そしてGHおよびアシピモックスで処置されたものよりも有意に高かった。
【0118】
(トリグリセリド)
血漿トリグリセリドは、AD動物とSGA動物との間で、有意な差異はなかった(図17)。全ての他の処置グループと比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、トリグリセリドは有意に低下した。生理食塩水コントロールと比較して、トリグリセリドに対する有意なGH処置効果はなかった。
【0119】
(遊離グリセロール)
AD動物とSGA動物との間で、血漿グリセロールに差異はなかった(図18)。全ての他の処置グループと比較して、GHおよびアシピモックス処置動物において、血漿グリセロールは、有意に減少した(図18)。
【0120】
(最高血圧)
発明者らのグループが以前に示したように、SGA動物において、最高血圧は有意に上昇した(図19)。GH、またはGHおよびFFA調節因子を用いたSGAの子の処置は、最高血圧を有意に低下させ、そして正常化させた(図20)。これは、GHの抗高血圧効果に対する発明者らの以前の報告に一致する(Vickers et al.2002)。最高血圧は、AD動物において正常であり、そして処置の効果はなかった。
【0121】
(議論)
体重増加に対する組合せ治療の効果は、低出生時体重の動物の場合と同様に、正常動物においても顕著だった。しかし、AD動物におけるGHおよびアシピモックスの組合せ治療に関して、GH処置動物と比較して、試験の間、体重増加は横這い状態であった。用量効果のこの低下は、SGA動物において観察されず、試験が進行するにつれ、GH処置動物と比較して、体重増加の明確な相違があった。
【0122】
GHおよびニコチン酸誘導性FFA調節因子、アシピモックスからなる相乗的な組合せ治療が線形成長を、GH単独またはフェノフィブラートと組合せたGHを上回って有意に増加させたことを発明者らは予想外に見出した。
【0123】
GH単独治療およびGH組合せ治療は、コントロールと比較して、全ての処置グループにおいて骨長を増加させた。GHおよびアシピモックス組合せ処置が、脛骨成長に対するGH効果を明らかに向上させ、そしてフェノフィブラートと組合せたGHよりも脛骨長の大きな増加を達成したことを、発明者らは見出した。
【0124】
さらに、両方の組合せ治療が、GH単独治療と関連して骨梁減少を低下させることを、発明者らが発見している。
【0125】
GHまたはフィブリン酸誘導性FFA調節因子と組合せたGHで処置された動物と比較して、GHおよびニコチン酸誘導性FFA調節因子、アシピモックスからなる組合せ治療が、その処置グループにおける血漿量に対して有益な効果を有することを、発明者らは予想外に見出した。GHおよびアシピモックス処置グループにおいて、GH単独治療に付随する血漿量の増加はなかった。
【0126】
AD動物と比較して、SGA動物は高い血圧を有した。GH単独または発明者らの以前の特許を受けた観察と一致する組合せ方法(approach)のいずれかを使用して、このグループにおける最高血圧を正常化した。
【0127】
要約すると、GHおよびアシピモックス治療は線形成長を、GH単独の成長を上回って増加させ、そしてGH治療に通常付随する水分貯留効果を改善した。GHおよびフェノフィブラートの組合せは、GHおよびアシピモックスの組合せよりも効果的でなかった。発明者らは、GH単独治療に対し、GHおよびアシピモックス共治療の代謝利点(インスリン感受性の改善およびGH処置によって誘発された脂質分解効果の遮断、すなわち、薬理的抗脂質分解を含む)を観察した。
【0128】
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【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】各処置のサブグループについての体重増加曲線を示す:自由(AD)グループ)(1A)および妊娠期間に対して小柄なグループ(SGA)(1B)。
【図2】GH単独で処置された動物の体重増加の差異を示す:AD動物(2A)およびSGA動物(2B)。
【図3】体重の毎日の変化を示す(3AのAD動物;3BのSGA動物)。底部の軸は処置の日数である。
【図4】4Aは、AD動物およびSGA動物両方について、生理食塩水で処置されたグループの変化の割合として脛骨長の変化を示す。図4Bは、全ての処置グループの非調整脛骨長を表す。
【図5】全身長(鼻〜肛門)と脛骨長との間の関係を示す。
【図6】死後のADグループ(6A)およびSGAグループ(6B)の肛門〜鼻の長さを示す。
【図7】血液ヘマトクリット値に対するADグループおよび栄養不足(UN)グループにおける各処置の効果を示す。
【図8】全体重の割合としての各処置グループの肝臓の重さの変化を示す。
【図9】全体重の割合としての各処置グループの後腹膜の脂肪量を示す。
【図10】全体重の割合としての各処置グループの副腎の重さを示す。
【図11】全体重の割合としての各処置グループの脾臓の重さを示す。
【図12】と殺時の各処置グループの血漿IGF−I濃度を示す。
【図13】一晩の断食後の、各処置グループの血漿インスリン濃度を示す。
【図14】各処置グループの空腹時血漿グルコース濃度を示す。
【図15】試験完了時の各処置グループの血漿レプチン濃度を示す。
【図16】一晩の断食後の、各処置グループの血漿遊離脂肪酸(FFA)レベルを示す。
【図17】一晩の断食後の、各処置グループの血漿トリグリセリドを示す。
【図18】各処置グループの血漿遊離グリセロールを示す。
【図19】各処置グループの最高血圧を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
若年者に有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を、成長ホルモンと組合せて投与することを包含する、若年者における成長障害を処置する方法。
【請求項2】
有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を、成長ホルモンと組合せて投与することを包含する、若年者における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させる方法。
【請求項3】
成長ホルモン処置と組合せて有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を投与することを包含する、哺乳動物における成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置する方法。
【請求項4】
哺乳動物が成長障害を患っている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
有害な結果が水腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
有害な結果がGH治療の初期段階に関連する骨梁減少である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
若年者または哺乳動物がヒトである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
成長障害が、成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症、子宮内発育遅延、未熟児、妊娠期間のわりに小柄に生まれた子供における成長阻害、超低出生体重、骨格異常、染色体変異、慢性腎不全関連成長遅延、体質性成長遅延、嚢胞性線維症関連成長遅延、特発性低身長、小児におけるグルココルチコイド処置に起因する低身長、早産児がかかえる成長不全、または低身長を引き起こす任意の他の状態からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
FFA調節因子が、フィブリン酸、ニコチン酸、フィブリン酸誘導体、またはニコチン酸誘導体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
FFA調節因子が、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
FFA調節因子が、アシピモックスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
GHが、皮下注射によって投与される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
FFA調節因子が、経口投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
若年者における成長障害を処置するための医薬または組成物の調製における、成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子との組合せの使用。
【請求項15】
若年者における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させるための医薬の製造における、少なくとも1種のFFA調節因子の使用。
【請求項16】
哺乳動物における成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための医薬の製造における少なくとも1種のFFA調節因子の使用。
【請求項17】
哺乳動物が成長障害を患っている、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
有害な結果が水腫である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
有害な結果が、GH治療の初期段階に関連する骨梁減少である、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
若年者または哺乳動物がヒトである、請求項14〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
成長障害が、成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症、子宮内発育遅延、未熟児、妊娠期間のわりに小柄に生まれた子供における成長阻害、超低出生体重、骨格異常、染色体変異、慢性腎不全関連成長遅延、体質性成長遅延、嚢胞性線維症関連成長遅延、突発性低身長、小児におけるグルココルチコイド処置に起因する低身長、早産児がかかえる成長不全、または低身長を引き起こす任意の他の状態からなる群から選択される、請求項14〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
医薬が、成長ホルモンおよびFFA調節因子の組合せを含む、請求項15〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
FFA調節因子が、フィブリン酸、ニコチン酸、フィブリン酸誘導体、またはニコチン酸誘導体である、請求項14〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
FFA調節因子がアシピモックスである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子を含む、成長障害を処置するため、および/または成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための組成物または医薬。
【請求項27】
組成物または医薬が、成長ホルモンおよび/またはFFA調節因子に対して適切な薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
FFA調節因子がフィブリン酸またはフィブリン酸誘導体である、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
FFA調節因子がフェノフィブラートである、請求項28に記載の組成物。
【請求項1】
若年者に有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を、成長ホルモンと組合せて投与することを包含する、若年者における成長障害を処置する方法。
【請求項2】
有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を、成長ホルモンと組合せて投与することを包含する、若年者における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させる方法。
【請求項3】
成長ホルモン処置と組合せて有効量の少なくとも1種のFFA調節因子を投与することを包含する、哺乳動物における成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置する方法。
【請求項4】
哺乳動物が成長障害を患っている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
有害な結果が水腫である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
有害な結果がGH治療の初期段階に関連する骨梁減少である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
若年者または哺乳動物がヒトである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
成長障害が、成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症、子宮内発育遅延、未熟児、妊娠期間のわりに小柄に生まれた子供における成長阻害、超低出生体重、骨格異常、染色体変異、慢性腎不全関連成長遅延、体質性成長遅延、嚢胞性線維症関連成長遅延、特発性低身長、小児におけるグルココルチコイド処置に起因する低身長、早産児がかかえる成長不全、または低身長を引き起こす任意の他の状態からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
FFA調節因子が、フィブリン酸、ニコチン酸、フィブリン酸誘導体、またはニコチン酸誘導体である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
FFA調節因子が、ニコチン酸またはニコチン酸誘導体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
FFA調節因子が、アシピモックスである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
GHが、皮下注射によって投与される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
FFA調節因子が、経口投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
若年者における成長障害を処置するための医薬または組成物の調製における、成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子との組合せの使用。
【請求項15】
若年者における成長ホルモン治療の成長促進効果を向上させるための医薬の製造における、少なくとも1種のFFA調節因子の使用。
【請求項16】
哺乳動物における成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための医薬の製造における少なくとも1種のFFA調節因子の使用。
【請求項17】
哺乳動物が成長障害を患っている、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
有害な結果が水腫である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
有害な結果が、GH治療の初期段階に関連する骨梁減少である、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
若年者または哺乳動物がヒトである、請求項14〜19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
成長障害が、成長ホルモン不全、成長ホルモン欠損症、子宮内発育遅延、未熟児、妊娠期間のわりに小柄に生まれた子供における成長阻害、超低出生体重、骨格異常、染色体変異、慢性腎不全関連成長遅延、体質性成長遅延、嚢胞性線維症関連成長遅延、突発性低身長、小児におけるグルココルチコイド処置に起因する低身長、早産児がかかえる成長不全、または低身長を引き起こす任意の他の状態からなる群から選択される、請求項14〜20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
医薬が、成長ホルモンおよびFFA調節因子の組合せを含む、請求項15〜21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
FFA調節因子が、フィブリン酸、ニコチン酸、フィブリン酸誘導体、またはニコチン酸誘導体である、請求項14〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
FFA調節因子がアシピモックスである、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
成長ホルモンおよび少なくとも1種のFFA調節因子を含む、成長障害を処置するため、および/または成長ホルモン処置の有害な結果を予防または処置するための組成物または医薬。
【請求項27】
組成物または医薬が、成長ホルモンおよび/またはFFA調節因子に対して適切な薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
FFA調節因子がフィブリン酸またはフィブリン酸誘導体である、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
FFA調節因子がフェノフィブラートである、請求項28に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2007−505892(P2007−505892A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526732(P2006−526732)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003063
【国際公開番号】WO2005/027894
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(505275262)ファイザー・ヘルス・アクティエボラーグ (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003063
【国際公開番号】WO2005/027894
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(505275262)ファイザー・ヘルス・アクティエボラーグ (7)
【Fターム(参考)】
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