説明

含ニッケル酸化鉱石のヒープリーチングのための改良法

ヒープリーチングによって含ニッケル酸化鉱石からニッケルおよびコバルトを回収する方法であって、a)含ニッケル酸化鉱石を1つ以上のヒープに形成する工程と、b)鉱石ヒープを浸出溶液で浸出する工程であって、浸出溶液は浸出媒体として酸補給高濃度塩水を含み、高濃度塩水は30g/lより高い全溶解固形物濃度を持つ工程と、c)得られたヒープ浸出液からニッケルおよびコバルトを回収する工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
一般に、本発明は含ニッケル酸化タイプの鉱石を浸出し、ニッケルおよびコバルト分(value)を回収する新しい湿式製錬法に関する。特に、本発明は鉱石と塩水または高濃度塩水(hypersaline water)から調製された浸出液体による鉱石のヒープリーチングによって、ニッケルおよびコバルトを含有するラテライト鉱石からニッケルおよびコバルトを抽出する方法を提供する。本方法は地下かん水が唯一の経済的な水源である乾燥地域における含ニッケル酸化鉱石鉱床、または海水しか利用できない島嶼または沿岸ラテライト鉱床に特に好適である。
【0002】
発明の背景
ニッケルおよびコバルトを含有する含ニッケル酸化鉱石鉱床、典型的にラテライト鉱石は、一般に同じ鉱床内に酸化タイプの鉱石すなわちリモナイト、およびケイ酸塩タイプの鉱石すなわちサプロライトを含んでいる。ニッケル含有量がより高いサプロライトは、フェロニッケルを製造する焙焼法および電気溶融法を伴った乾式製錬法によって商業的に処理される傾向にある。ニッケル含有量の低いリモナイトおよびリモナイト/サプロライトのブレンドについては電力要求および高い鉄/ニッケルの鉱石比率がこの加工ルートを過度に高価にし、これらの鉱石は通常、高圧酸浸出法(HPAL)またはCaron還元焙焼−炭酸アンモニウム浸出法のような乾式製錬と湿式製錬との組み合わせによって商業的に処理される。
【0003】
過去十年間、従来の高圧酸浸出(HPAL)のほかに、他の酸浸出法が、含ニッケル酸化鉱石を活用するために開発されてきた。例えば増強圧力酸浸出(EPAL)がBHP Billitonの名義の米国特許6,379,636に記載されている。ジャロサイトとしての鉄の沈殿を伴う大気圧攪拌浸出が同じくBHP Billitonの名義の米国特許6,261,527に記載されており、針鉄鉱としての鉄の沈殿を伴う大気圧攪拌浸出がQNI Tecnologyの名義のオーストラリア出願2003209829に記載されている。サプロライトの直接大気圧リーチングがCurlookの名義の米国特許6,379,637に記載されている。
【0004】
ヒープリーチングは品質の低い鉱石から無駄なく金属を抽出する通常の方法であり、これをうまく用いて銅、金、ウランおよび銀のような金属を回収している。それは通常、原鉱石を直接鉱床から、高さの異なるヒープの積み上げを伴う。浸出溶液はヒープの頂上に導入され、ヒープの全体に浸透する。流出液体はヒープの底から排出され、金属分(metal value)を回収する加工プラントに流される。
【0005】
ヒープリーチングはニッケルおよびコバルトの回収法において提案されており、例えば両方ともBHP Billitonの名義の米国特許5,571,308および6,312,500に記述されているが、それは未だ商業的に使用されていない。しかしながら、それは低い資本経費の提供に有望であり、HPAL法で要求される高価で高メンテナンスの高圧装置の必要性を除く。
【0006】
ニッケルおよびコバルトを含有する含ニッケル酸化鉱石のヒープリーチングを妨げる1つの問題は、このような鉱石が持つ多量の粘土成分である。粘土内容物のタイプは、母岩のタイプおよび粘土形成の物理化学的環境に依存するが、大抵の粘土は鉱石を通した浸出溶液の浸透に有害な影響を及ぼす。
【0007】
米国特許5,571,308(BHP Minerals International,Inc)はサプロライトのような高マグネシウム含有ラテライト鉱石のヒープリーチング法を記述している。この特許は、粘土タイプのサプロライトは低い浸透性を示し、この解決策として、浸出溶液のヒープを通した分布を保証するには鉱石のペレット化が必要であるということを指摘している。
【0008】
米国特許6,312,500(BHP Minerals International,Inc)は、多量の粘土成分(10重量%を上回る)を持つ鉱石に特に有効な、ニッケルを回収するためのラテライトのヒープリーチング法を記述している。この方法は、必要な場合に鉱石を分粒し、鉱石を浸出媒体(lixiviant)と接触させることによってペレットを形成し、集塊することを含む。ペレットをヒープに形成し、硫酸で浸出して金属分を抽出する。硫酸強化海水を浸出溶液として使用してもよい。
【0009】
上記両方の特許は、全ての鉱石原料をペレット化し、良好なヒープリーチングに必要なヒープの浸透性を向上させる必要性を明らかにする。
【0010】
湿式製錬法は、それらの性質によって大量の水を必要とする。含ニッケル酸化鉱石鉱床が存在する世界中の多くの地域において、良質の水は供給不足であり、高価な資源である。例えばオーストラリアの乾燥地域においては、高濃度塩地下水のみしか有効な量で利用することができず、ラテライトが小さな島に存在するインドネシアおよびフィリピンにおいては、海水のみしか有効な量で利用することができない。
【0011】
高濃度塩水はオーストラリアにおける2つのプラントにおいて、高圧酸浸出法に使用されているが、低いニッケル回収、増大する酸の使用量、ならびに高塩化物溶液条件に耐えるために要求される複雑な冶金が原因の浸出装置の高い資本コストおよびメンテナンスコストの見地から不利益が報告されている。
【0012】
上記文献、論文などの議論は、単に本発明の文脈を提供する目的のために明細書に含まれている。これらの事柄のいくつかまたは全てが、優先日以前にオーストラリアに存在したので、先行技術の基礎の一部を形成したかまたは本発明に関連する分野における通常の一般知識であったことは示唆されても示されていてもいない。
【0013】
本発明は先行技術に関連する1つ以上の問題を克服または少なくとも緩和することをめざす。
【0014】
発明の概要
驚くべきことに、酸補給塩水および高濃度塩水を含む浸出溶液を、ニッケルおよびコバルトを回収するための、含ニッケル酸化鉱石、特にラテライトのヒープリーチングに満足に使用できることが見出された。これは、非常に低い資本コストの装置しか必要とせず、代替の高圧または大気圧酸浸出法の複雑な冶金材料の問題をほとんど受けないヒープリーチングが、海水以外の高濃度塩水および/または塩水が利用できる水である場合に、含ニッケル酸化鉱石を処理するための低コストの代替案であることを意味する。
【0015】
したがって、第1の実施形態において、本発明はヒープリーチングによって含ニッケル酸化鉱石からニッケルおよびコバルトを回収する方法を提供し、前記方法は、
a)含ニッケル酸化鉱石を1つ以上のヒープに形成する工程と、
b)鉱石ヒープを浸出媒体として酸補給高濃度塩水を含む浸出溶液で浸出する工程であって、高濃度塩水は30g/lより高い全溶解固形物濃度を持つ工程と、
c)得られたヒープ浸出液からニッケルおよびコバルトを回収する工程と
を含む。
【0016】
本発明の方法に有用な高濃度塩水は一般に地上および/または地下かん水、またはある状況では濃縮海水または脱塩工程からの流出液をソースとする。典型的にかん水をソースとする水は、海水より高い塩分または全溶解固形物を持ち、驚くべきことに海水のそれをかなり超過する全溶解固形物濃度を持つ高濃度塩水は、ヒープリーチ法において向上したニッケルおよびコバルトの回収を与えることがわかった。本方法において有用な高濃度塩水の好ましい濃度は、40〜200g/l、最も好ましくは50〜150g/lの全溶解固形物濃度である。
【0017】
本方法の発明者は、海水以外の塩化された水体をソースとする塩水または高濃度塩水が本発明の方法に有用であることも見出した。したがって、さらなる実施形態において、本発明はヒープリーチングによって含ニッケル酸化鉱石からニッケルおよびコバルトを回収する方法を提供し、前記方法は、
a)含ニッケル酸化鉱石を1つ以上のヒープに形成する工程と、
b)浸出工程において鉱石ヒープを浸出溶液で浸出する工程であって、浸出溶液は浸出媒体として酸補給塩水または高濃度塩水を含み、水は5g/lより高い全溶解固形物濃度を持つ地上および/または地下かん水をソースとする工程と、
c)得られたヒープ浸出液からニッケルおよびコバルトを回収する工程と
を含む。
【0018】
本明細書において用いる限り「地上および/または地下かん水」という用語は、内陸で見出される塩化された水を含み、海水は除外される。一般に、かん水は特に乾燥地域の地下または地下水源において見出されるであろうが、塩化された内陸の湖、河またはクリークにおいても見出されるかもしれない。本明細書に記載した本発明の方法に有用なかん水において認められる全溶解固形物濃度は、少なくとも5g/lであろう。かん水をソースとする水の塩分は海水のそれよりも低いか高いか可変であり、全溶解固形物濃度は5〜200g/lに範囲であり得る。
【0019】
主として、地上または地下かん水ソースからの塩水または高濃度塩水の両方において、それどころか海水においても認められる溶解固形物は塩化ナトリウムであるが、塩化マグネシウムおよび塩化カリウムのような他の塩も通常、より少ない濃度で認められる。17g/lを超える塩素イオン濃度を持つ水は、本発明の方法に好適である。より好ましくは、24〜120g/lの塩素イオン濃度は本発明の方法に有用であって、30〜90g/lの濃度が最も好適であることがわかっている。
【0020】
一般に、海水は30g/l未満の全固形物濃度を持ち、そのおよそ27g/lはおよそ16.4g/lの塩素イオン濃度を持つ塩化ナトリウム塩であろう。本明細書および請求項において用いる限り「高濃度塩(hypersaline)」という用語は、海水よりも高い塩分を持つ水、すなわち30g/lを超える全溶解固形物含有量および/または17g/lを超える塩素イオン濃度を持つ水を意味する。
【0021】
27g/lの塩化ナトリウム濃度を持つ硫酸強化海水の使用は、米国特許6,312,500(BHP Minerals International Inc)にラテライト鉱石ヒープを浸出するための浸出溶液として開示されている。本発明の発明者は、この方法が、海水のそれよりも高い塩分を持つ、すなわち海水以外のソースからの塩水および/または高濃度塩水を用いて改善されるか、または商業的に実用的になり、高いニッケルおよびコバルトの回収を与えることを見出した。1つの実施形態において、本明細書に開示した方法は塩分が30g/lの全溶解固形物濃度を上回る方法において海水を利用する。例えば海水を濃縮するか、または地上または地下かん水からのもののような他の高濃度塩水と組み合わせて高濃度塩水溶液を形成してもよい。さらに他の実施形態において、供給水として海水または他の塩水または汽水を使用する脱塩プラントからの流出液を使用してもよい。脱塩プラントは通常、乾燥地域、および淡水のソースを供給するには淡水が不足している沿岸地域で使用される。このような流出液は高い塩分(一般に40〜200g/lの範囲の全溶解固形物濃度)を持ち、ヒープリーチ法における浸出溶液の使用に容易に変更することができる。
【0022】
ヒープリーチングのための鉱石の処理において、鉱石の集塊は浸出溶液の浸透を向上させるために必要であることがわかっており、1つ以上のヒープの形成に先立って、含ニッケル酸化鉱石を破砕し、大きな粒子サイズまたはペレット形状に集塊させてもよい。鉱石の集塊は、特に鉱石が高い粘土含有量を持つ場合、鉱石の浸透を向上させるであろう。しかしながら鉱石の集塊は全ての状況で必要とされるわけではなく、特に鉱石に関連する粘土含有量が低いか、または鉱石の密度がヒープリーチ段階の間に浸出溶液の十分な浸透が見込めるようなものである場合にはそうである。
【0023】
一般に含ニッケル酸化鉱石はラテライト性であって、本明細書においてはこれをラテライト性鉱石と呼ぶのが好都合であろう。本方法は地下かん水が唯一の経済的な水源である乾燥地域におけるラテライト鉱床か、もしくは海水しか利用できない島嶼または沿岸のラテライト鉱床で特に好適である。脱塩プラントは淡水のソースとしてしばしばこのような現場と関連し、脱塩プラントからの流出液は高濃度塩水のソースとしても使用できる。
【0024】
ホタル石のようなフッ化水素酸を発生するフッ化物を含む化合物を、塩水および/または高濃度塩水のいずれかで補給した浸出液とともに本方法に使用してもよい。したがって、本発明のさらなる実施形態において、酸ヒープリーチング条件においてフッ化水素酸を発生するホタル石または他のフッ化物含有化合物を、リーチングのために鉱石ヒープを調製する前に鉱石と混合してもよい。鉱石の中のいくらかのニッケルはノントロナイト粘土および非晶質鉄−ケイ酸塩ゲルと関連し、フッ化物含有化合物との酸反応によって生成するフッ化水素酸はシリカおよびケイ酸塩組織を攻撃し、これらに結合しているニッケル分を放出させる。好ましくは、1〜5%のフッ化物含有化合物、最も好ましくはホタル石を、集塊工程の間もしくは前、または鉱石をヒープにする時点で鉱石に加える。最も好ましくは、およそ1%のホタル石を加える。ホタル石の添加によって、向上したニッケルの回収を達成できることがわかっている。
【0025】
あるいは、フッ化物含有化合物が水溶性の場合、鉱石ヒープに適用する前にそれらを酸補給塩水および/または高濃度塩水の浸出溶液に加えてもよい。
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書において用いる限り含ニッケル酸化鉱石またはラテライト鉱石という用語は、鉱体全て、または通常よくあるが、ラテライト鉱体の一部の処理をいうことを意図している。例えば、本方法は、ラテライト鉱体の任意のフラクション、例えばリモナイト及びサプロライトのフラクションを個々に、または鉱体の任意の他のフラクションとともに処理するのに同様に適用できる。
【0027】
好ましい実施形態において、含ニッケル酸化鉱石を好ましくは25mm未満のサイズに破砕する。多くの含ニッケル酸化鉱石は高い粘土含有量を持ち、低い自然浸透率を持つ。浸透率を向上させるために、分粒された鉱石を集塊させてより大きな粒子サイズまたはペレット形状にする。濃硫酸が、破砕鉱石を集塊(これは一般に粘土質微粉をより大きな粒子に変換することによって達成される)して浸透性を増大させるのに好適に使用される。硫酸添加に続いて形成される石膏が、一般に鉱石粒子をより大きな粒子またはペレット形状に固めるように作用するであろう。集塊工程のためのあらゆる水要求を、必要であれば、浸出溶液に使用される塩水および/または高濃度塩水によって供給してもよい。
【0028】
集塊、および/またはペレット化は、全ての状況で必ずしも必要とされるわけではなく、特に鉱石に関連する粘土の含有量が低い場合、または鉱石の密度によりヒープリーチ段階の間に浸出溶液の十分な浸透を見込める場合にはそうである。このような状況においては、鉱石を前処理なしで単純にヒープに配置することできる。
【0029】
集塊されていてもいなくても、鉱石を少なくとも1つのヒープに配置してもよいが、好ましくは向流ヒープリーチシステムとして操作される第1および第2のヒープの2つのヒープに配置する。適切な場合にはさらなるヒープを配置してもよい。
【0030】
好ましい向流法において、少なくとも2つのヒープを第1および第2のヒープとして形成して配置し、前記方法は、
a)浸出溶液を第2のヒープに加えて中間生成物液体を作る工程と、
b)向流法で中間生成物液体を第1のヒープに加えて第1のヒープを浸出し、ニッケルおよびコバルト・リッチの生成物液体を作る工程と
を含む。
【0031】
中間生成物液体はニッケルおよびコバルトに富んでおり、低い酸性度であるが、鉄および多くの他の不純物も含んでいる。向流ヒープリーチ法は酸の消費が低い利点を持ち、浸出貴液において低い鉄濃度および高いニッケル濃度を達成し、単一ヒープシステムよりも酸性度が低い、より清浄な生成物液体をもたらす。
【0032】
一般に、本方法は、ニッケルおよびコバルトの回収のための全方法の一部を構成する。好ましい方法において、浸出溶液は関連するニッケルおよびコバルトの回収工程における他の酸流によって補給される。好ましくは、浸出溶液を補給するのに使用される酸流は、
a)下流のニッケルイオン交換工程または溶媒抽出法からのニッケル減損リサイクル抽残液、および/または
b)含ニッケル酸性鉱石の高圧または大気圧酸浸出法、またはそれらの組み合わせからの、少なくともニッケル、コバルトおよび鉄を含む酸性浸出液、および/または
c)硫化ニッケル鉱石または濃縮物の酸化圧力浸出または大気圧浸出からの酸性浸出液
を含む。
【0033】
好適な塩水および/または高濃度塩水の質は水のソースに依存して変わり、乾燥地域における地上または地下かん水がソースの場合には、典型的に5〜200g/lの範囲の全溶解固形物濃度を持つ。しかしながら、好ましくは40〜200g/lの全溶解固形物濃度を持つ高濃度塩水が用いられる。全溶解固形物は、一般に塩化ナトリウムを含むが、より低い濃度の塩化マグネシウムまたは塩化カリウムのような塩も含む塩であろう。海水をソースとする場合、水分のいくらかを留去し、高濃度塩水を調製することによってわずかに水を濃縮してもよく、または脱塩工程からの濃縮流出液を使用してもよい。海水および/または他の塩水および汽水を処理する脱塩プラントからの流出液は、典型的に40〜200g/lの全溶解固形物濃度を持つ。
【0034】
最も好ましくは、本発明の方法は、50〜150g/lの全溶解固形濃度を持つ高濃度塩水を利用する。驚くべきことに、発明者は、この範囲の酸補給高濃度塩水をヒープリーチ法に使用した場合、向上したニッケル回収が達成されることを見出した。好ましくは、高濃度塩水は17g/lを超え、より好もしくは24〜120g/l、最も好ましくは30〜90g/lの塩素イオン濃度を持つ。典型的な飲料水は0.5g/l未満の全溶解固形物を持つ。
【0035】
ニッケルおよびコバルトは、硫化物としての沈殿、混合水酸化物または炭酸塩処理のような通常の方法によって、溶媒抽出、イオン交換法、またはニッケルおよびコバルトを抽出ならびに分離する他の既知の湿式処理ルートによって浸出液から回収されるであろう。
【0036】

比較例1
比較のために、この例は酸性化海水を用いたヒープリーチングを示す。試験はインドネシア島のラテライト鉱石について行った。鉱石の組成は30.2%の鉄、8.60%のマグネシウム、および1.79%のニッケルであった。鉱石の試料を高さ1.24m、直径100mmの透明パースペックスカラムに充填し、硫酸溶液で処理してヒープリーチングを再現した。カラムへの供給溶液は、100g/lの硫酸を海水(およそ27g/lの塩化ナトリウム)にいれたものであり、塩水条件を作った。その結果を表1に示す。
【表1】

【0037】
試験を実施した比較的短い時間で、ヒープからの良好なニッケル回収を示した。
【0038】
例2
乾燥地域からのオーストラリアのラテライト鉱石試料を破砕し、全ての鉱石サンプルが25mm未満になるようにふるい分けした。鉱石の分析を表2に示す。
【表2】

【0039】
およそ10kgの集塊鉱石を含む8本のカラム(直径100mm×高さ1.86m)を立ててヒープリーチングをシミュレートし、塩酸系および硫酸系の両方の浸出速度を試験した。いくつかのカラムは、集塊の間にホタル石を加えた。
【0040】
浸出溶液を調製するために、合成過塩性溶液を調製し、鉱体の地域における地下かん水をシミュレートした。高濃度塩水溶液強度は、129g/lの塩化ナトリウムを含む140000ppmの全溶解固形物であった。表3に各々のカラムについての条件をまとめる。
【表3】

【0041】
試験の結果を表4に示す。
【表4】

【0042】
塩酸の場合の浸出速度は、明らかに硫酸のそれよりも良好であった。図1は、高濃度塩水を硫酸とともに使用した場合(試験BLS3)は、硫酸のみを使用した場合(試験BLS5)よりも、ニッケル浸出が良好であったことを示している。この結果は、例1において海水を使用した場合よりも向上したニッケル回収(BLC4およびBLS2)も示している。Error!
例3
例2(パイオニアカラム)における試験BLS2に基づいて、パイロットプラントのヒープ操作を確立した。パイロットプラントは、762kgチャージのヒープリーチングカラム(直径0.93m×高さ2.48)と、ニッケルおよびコバルトの回収のための30リットルのDow 4195イオン交換樹脂で充填したISEPパイロットイオン交換装置とで構成した。集塊条件を表5に略述する。浸透フラックスは、80リットル/日の流速に相当する5リットル/m/hrであった。
【表5】

【0043】
366kg/t鉱石の酸消費で74日間に渡る100mmパイオニアカラムについてのニッケル抽出は62%、コバルトについては30%であった。181.8kg/t鉱石の酸消費で53日間に渡る762kgのパイロットヒープについての抽出は、ニッケルについて29.6%、コバルトについて17.0%であった。図2は、これら2つのカラムが、ニッケルおよびコバルト浸出について同様の傾向/速度を持つことを示している。パイロットプラントカラムは、350kg/t鉱石の酸消費(集塊に使用した酸も含む)で、3ヶ月後に60%ニッケル抽出に近づいたであろうことが期待される。
【0044】
表6に53日間の浸出後の浸出データをまとめる。
【表6】

【0045】
53日間に渡るヒープ浸出液におけるニッケルおよびコバルトの平均濃度は、0.5g/lのNiおよび30mg/lのCoであることがわかった。パイオニアカラム試験でわかるように、ニッケル抽出に対するコバルト抽出は比較的低いことがわかった。これはおそらく、集塊内の物質移動、微視的および巨視的なスケールでの低い拡散速度、およびカラム内のチャネリングのせいであり、大部分は浸出されていない。鉱物学的観察において、コバルトは、硫酸で浸出するには難しいアスボラン(asbolane)に関連していることがわかった。浸出の間の石膏形成はアスボラン中であり、したがってコバルトの浸出速度を遅らせる。全ての例において、ニッケルの抽出はほぼ線形な割合で継続した。
【0046】
この例は、酸補給塩水または高濃度塩水が、ニッケルおよびコバルトを回収するためのラテライトのヒープリーチングにおいて満足に使用できることを証明する。
【0047】
上記の記述は、本発明の好ましい実施形態の例証となることを意図している。当業者には、多くの変形または代替が、本発明の精神から逸脱することなくなされるであろうことが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】記載なし。
【図2】記載なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒープリーチングによって含ニッケル酸化鉱石からニッケルおよびコバルトを回収する方法であって、
a)含ニッケル酸化鉱石を1つ以上のヒープに形成する工程と、
b)鉱石ヒープを浸出溶液で浸出する工程であって、浸出溶液は浸出媒体として酸補給高濃度塩水を含み、高濃度塩水は30g/lより高い全溶解固形物濃度を持つ工程と、
c)得られたヒープ浸出液からニッケルおよびコバルトを回収する工程と
を含む方法。
【請求項2】
ヒープリーチングによって含ニッケル酸化鉱石からニッケルおよびコバルトを回収する方法であって、
a)含ニッケル酸化鉱石を1つ以上のヒープに形成する工程と、
b)浸出工程において鉱石ヒープを浸出溶液で浸出する工程であって、浸出溶液は浸出媒体として酸補給塩水または高濃度塩水を含み、水は5g/lより高い全溶解固形物濃度を持つ地上および/または地下かん水をソースとする工程と、
c)得られたヒープ浸出液からニッケルおよびコバルトを回収する工程と
を含む方法。
【請求項3】
請求項1または2による方法であって、含ニッケル酸化鉱石が実質的にラテライトである方法。
【請求項4】
請求項1による方法であって、高濃度塩水が40〜200g/lの全溶解固形物濃度を持つ方法。
【請求項5】
請求項4による方法であって、高濃度塩水が50〜150g/lの全溶解固形物濃度を持つ方法。
【請求項6】
請求項1による方法であって、高濃度塩水が17g/lを超える塩素イオン濃度を持つ方法。
【請求項7】
請求項6による方法であって、高濃度塩水が24〜120g/lの塩素イオン濃度を持つ方法。
【請求項8】
請求項7による方法であって、高濃度塩水が30〜90g/lの塩素イオン濃度を持つ方法。
【請求項9】
請求項1による方法であって、高濃度塩水が地上および/または地下かん水、濃縮海水および/または脱塩プラントからの流出液をソースとする方法。
【請求項10】
請求項2による方法であって、地上または地下かん水をソースとする塩水または高濃度塩水が5〜200g/lの全溶解固形物濃度を持つ方法。
【請求項11】
請求項1または2による方法であって、鉱石を25mm未満のサイズに破砕した後、鉱石を1つ以上のヒープにする前に、粘土質微粉をより大きな粒子またはペレットに変換することによって集塊する方法。
【請求項12】
請求項11による方法であって、濃硫酸を用いて破砕鉱石を集塊する方法。
【請求項13】
請求項11による方法であって、浸出溶液に使用する塩水および/または高濃度塩水を集塊工程における水要求のために使用する方法。
【請求項14】
請求項1または2による方法であって、浸出溶液のために使用される塩水および/または高濃度塩水を硫酸または塩酸で補給する方法。
【請求項15】
請求項14による方法であって、酸が硫酸である方法。
【請求項16】
請求項1または2による方法であって、浸出溶液を、ニッケルおよびコバルト回収工程に関連したソースからの1つ以上の酸流で補給する方法。
【請求項17】
請求項16による方法であって、酸流は、
a)下流のニッケルイオン交換工程または溶媒抽出法からのニッケル減損リサイクル抽残液、および/または
b)含ニッケル酸性鉱石の高圧または大気圧酸浸出法、またはそれらの組み合わせからの、少なくともニッケル、コバルトおよび鉄を含む酸性浸出液、および/または
c)硫化ニッケル鉱石または濃縮物の酸化圧力浸出または大気圧浸出からの酸性浸出液
を含む方法。
【請求項18】
請求項1または2による方法であって、少なくとも2つのヒープを第1および第2のヒープとして形成して配置し、
a)浸出溶液を第2のヒープに加えて中間生成物液体を作る工程と、
b)向流法で中間生成物液体を第1のヒープに加えて第1のヒープを浸出し、ニッケルおよびコバルト・リッチの生成物液体を作る工程と
を含む方法。
【請求項19】
請求項18による方法であって、第2のヒープのニッケルが減損した場合、それが廃棄されて第1のヒープが第2のヒープになり、新たな鉱石ヒープが形成されて第1のヒープになる方法。
【請求項20】
請求項1または2による方法であって、フッ化水素酸を発生するフッ化物含有化合物を、浸出のための鉱石ヒープを調製する前に鉱石と混合する、および/または、それを鉱石ヒープに適用する前に酸補給塩水または高濃度塩水に加える方法。
【請求項21】
請求項20による方法であって、フッ化物含有化合物を、集塊工程の間または前に、または鉱石が1つ以上のヒープに配置されるところで鉱石に加える方法。
【請求項22】
請求項21による方法であって、フッ化物含有化合物を全鉱石含有量の1〜5重量%の量で加える方法。
【請求項23】
請求項20による方法であって、フッ化物含有化合物がホタル石である方法。
【請求項24】
請求項23による方法であって、全鉱石含有量のおよそ1〜5重量%のホタル石を、集塊工程の間または前に鉱石に加える方法。
【請求項25】
請求項1による方法であって、ニッケルおよびコバルトを、硫化物、水酸化物または炭酸塩としての沈殿により、または溶媒抽出またはイオン交換法により、浸出液から回収する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−540834(P2008−540834A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510358(P2008−510358)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000606
【国際公開番号】WO2006/119559
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(505289753)ビーエイチピー・ビリトン・エスエスエム・テクノロジー・ピーティーワイ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】