説明

含フッ素ポリエーテル系化合物を含有する硬化性組成物

【課題】フッ素化合物の特性を十分に発揮するために十分なフッ素含量を有し、かつ非フッ素系化合物との相溶性が高く、多様な化合物と混合することができ、また、必要に応じて汎用溶剤で希釈して粘性や塗布性を調節することが可能な硬化性含フッ素ポリエーテル系組成物を提供すること。
【解決手段】(A)特定一般式で表される単位を含み、かつ、分子中にヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和結合を少なくとも2個有する含フッ素ポリエーテル系化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物、および(C)ヒドロシリル化触媒、を必須成分とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリエーテル系化合物を含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(a)分子中にヒドロシリル化可能なアルケニル基を少なくとも2個有する含フッ素ポリエーテル系化合物、(b)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物、(c)ヒドロシリル化触媒、を必須成分とする含フッ素硬化性組成物は、短時間の加熱により、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性、低透湿性、電気特性、離型性、撥水性、等に優れた硬化物を与えることが知られおり(例えば、特許文献1および2参照)、これらの特性が要求される各種工業分野に使用されている。しかしながら、これらで用いられている(a)成分の含フッ素ポリエーテル系化合物はフッ素を含有していない化合物との相溶性が悪く、組成物の相溶性を高めるために(b)成分のヒドロシリル基含有化合物にもフッ素原子を導入する必要があった。また、組成物の粘性や塗布性を調節するために、高価なフッ素系溶剤を使用する必要があった。汎用溶剤への溶解性が高いヒドロシリル化反応利用型硬化性含フッ素ポリマー組成物が知られている(例えば、特許文献3参照)が、ここで用いられている含フッ素ポリマーはフッ素系モノマーと非フッ素系モノマーのラジカル共重合によって形成されるものであり、ポリマー中のフッ素含率には自ずと限界があった。
【0003】
【特許文献1】特開平06−271765号公報
【特許文献2】特開2002−194201号公報
【特許文献3】国際公開第08/044765号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性、低透湿性、電気特性、離型性、撥水性、等においてフッ素化合物の特性を十分に発揮するために十分なフッ素含量を有し、かつ非フッ素系化合物との相溶性が高く、多様な化合物と混合することができ、また、必要に応じて汎用溶剤で希釈して粘性や塗布性を調節することが可能な含フッ素硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以下の手段により前記課題を解決した。
【0006】
1.
(A)下記一般式(I)で表される単位を含み、かつ、分子中にヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和結合を少なくとも2個有することを特徴とする含フッ素ポリエーテル系化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物、及び
(C)ヒドロシリル化触媒
を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(I)中、Rfはペルフルオロアルキレン基を示し、RfおよびRfは、それぞれ独立に、フッ素原子、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf、Rf、Rfのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよく、Xは各々独立に、酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Zは各々独立に、−CF−で表される基またはカルボニル基を示し、Lは2価の有機基を示し、aは1〜1000の整数を示す。
2.
一般式(I)で表される単位を含む含フッ素ポリエーテル系化合物が下記一般式(II)及び(III)から選ばれる少なくとも1種[一般式(II)及び(III)中、X、L、Z、Rf、Rf及びRfは一般式(I)におけるそれらと同義であり、Z’は−CF−で表される基またはカルボニル基を示し、X’は酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Aは単結合または下記一般式(IV)で表される基を示し、b、cは、それぞれ独立に、0〜100の整数を示し、Qは炭素−炭素不飽和結合含有基を示し、Q’は水素原子または炭素−炭素不飽和結合含有基を示す]で表される末端構造を有することを特徴とする.上記1に記載の硬化性組成物。
【0009】
【化2】

【0010】
3.
2価の有機基を表すL中に炭素−炭素不飽和結合含有基Qを有することを特徴とする.上記1または2に記載の硬化性組成物。
4.
一般式(I)における全てのXとZについて、Xが酸素原子または硫黄原子であり、Zが−CF−で表される基であることを特徴とする.上記1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、非フッ素系化合物との相溶性が高く、必要に応じて汎用溶剤で希釈して粘性や塗布性を調節することが可能であり、硬化後は、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性、低透湿性、電気特性、離型性、撥水性等、フッ素化合物特有の性能を有する含フッ素硬化性組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、
(A)下記一般式(I)で表される単位を含み、かつ、分子中にヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和結合を少なくとも2個有することを特徴とする含フッ素ポリエーテル系化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物、及び
(C)ヒドロシリル化触媒
を含有することを特徴とする。
【0013】
【化3】

一般式(I)中、Rfはペルフルオロアルキレン基を示し、RfおよびRfは、それぞれ独立に、フッ素原子、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf、Rf、Rfのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよく、Xは各々独立に、酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Zは各々独立に、−CF−で表される基またはカルボニル基を示し、Lは2価の有機基を示し、aは1〜1000の整数を示す。
【0014】
成分(A)は、上記一般式(I)で表される単位を含み、かつ、分子中にヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和結合を少なくとも2個有する含フッ素ポリエーテル系化合物である。一般式(I)中、Rfはペルフルオロアルキレン基を示し、RfおよびRfはそれぞれ独立にフッ素原子、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf、Rf、Rfのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。Xは酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Zは−CF−で表される基またはカルボニル基を示し、Lは2価の有機基を示し、aは1〜1000の整数を示す。
【0015】
Rfで表されるペルフルオロアルキレン基は、炭素数1〜30のペルフルオロアルキレン基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、鎖中にエーテル結合を有していてもよい。好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは2〜10である。
RfおよびRfで表されるペルフルオロアルキル基は炭素数1〜30のペルフルオロアルキル基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、鎖中にエーテル結合を有していてもよい。好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは2〜10である。
RfおよびRfで表されるペルフルオロアルコキシ基は炭素数1〜30のペルフルオロアルコキシ基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、鎖中にエーテル結合を有していてもよい。好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは2〜10である。
Rf、Rfは、好ましくはRf=Rf=フッ素原子またはペルフルオロアルコキシ基であり、Rf=Rf=ペルフルオロアルコキシ基の場合、一般式(I)で表される単位は下記一般式(Ia)で表される単位であることが好ましく、より好ましくは下記一般式(Ib)で表される単位である。
【0016】
【化4】

【0017】
式中、Rfは4価のペルフルオロ連結基を表す。Rfで表される4価のペルフルオロ連結基は、炭素数1〜30のペルフルオロアルキレン基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、鎖中にエーテル結合を有していてもよい。好ましい炭素数としては4〜20であり、より好ましくは5〜10である。
【0018】
Rで示される脂肪族基は炭素数1〜30の置換または無置換の脂肪族基であり、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは1〜10である。
Rで示されるアリール基は炭素数6〜30の置換または無置換のアリール基であり、例えば、フェニル、ナフチル等が挙げられる。好ましい炭素数としては6〜20であり、より好ましくは6〜10である。
【0019】
上記脂肪族基やアリール基の好ましい置換基としては、例えば以下の置換基が挙げられる。ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素数20以下のアルキル基(例えば、メチル、エチル)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、シアノ基、カルボキシル基、炭素数20以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル)、炭素数30以下のアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、炭素数20以下のアルキルカルボニル基(例えば、アセチル)、炭素数30以下のアリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル)、ニトロ基、アミノ基(例えば、アミノ、ジメチルアミノ、アニリノ)、炭素数20以下のアシルアミノ基(例えば、アセトアミド、エトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド)、イミド基(例えば、スクシンイミド、フタルイミド)、イミノ基(例えば、ベンジリデンアミノ)、
【0020】
ヒドロキシ基、炭素数20以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、炭素数20以下のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、炭素数20以下のアルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、炭素数30以下のアリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、スルホ基、スルファモイル基(例えばスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、炭素数20以下のアルキルチオ基(例えばメチルチオ)、炭素数30以下のアリールチオ基(例えばフェニルチオ)、炭素数20以下のアルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル)、炭素数30以下のアリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル)、ヘテロ環基等。これらの置換基は更に置換されていても良く、置換基が複数ある場合は、同じでも異なっても良い。また置換基同士で結合して環を形成しても良い。
【0021】
Xは好ましくは酸素原子または硫黄原子であり、より好ましくは酸素原子である。また、Zは好ましくは−CF−で表される基である。
【0022】
Lで示される2価の有機基は好ましくはアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基であり、より好ましくは、−CHRfCH−(Rfは炭素数1〜30の2価のペルフルオロアルキル基を表し、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、鎖中にエーテル結合を有していてもよい。好ましい炭素数としては1〜20であり、より好ましくは2〜10である。)で示される含フッ素アルキレン基である。
【0023】
一般式(I)で表される単位を含む含フッ素ポリエーテル系化合物は、下記一般式(i)で示されるペルフルオロジエン化合物と、末端に−OH、−SHまたは−NHR(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)、好ましくは−OHまたは−SH、より好ましくは−OH、を少なくとも2つ有する化合物であって好ましくはHX−L−XHで表される化合物との付加反応により得ることができる。
【0024】
【化5】

【0025】
式中、Rf、Rf、Rf、X、Lは一般式(I)におけるそれらと同義である。
以下に一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
以下に、末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
上記一般式(i)で示されるペルフルオロジエン化合物と上記例のような末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物との付加反応において、仕込み原料中の−OH、−SHまたは−NHRで示される基の合計が(i)で示されるペルフルオロジエン化合物中のオレフィン官能基の合計より多い場合、下記式(IIa)の末端を有する付加反応生成物を得ることができる。尚、以下の説明において、式中の各記号は特にことわりのない限り一般式(I)におけるそれらと同義である。
【0034】
【化12】

【0035】
式(IIa)の末端を有する付加反応生成物に対してエチレンカーボネートまたはエチレンオキシド、およびグリシジルアルコールから選ばれる1種類以上を付加させることにより下式(IIb)の末端を有する付加反応生成物を得ることができる。尚、一般式(IV)におけるb、cがb=c=0の場合、本工程は必要ない。
【0036】
【化13】

【0037】
さらに、式(IIb)の末端を有する付加反応生成物に対し、Q−Yで表される炭素−炭素不飽和結合含有求電子性化合物を反応させることにより、上記式(II)の末端を有する本発明の含フッ素ポリエーテル系化合物を得ることができる。ここで、Yは脱離性の基または付加性の基を示す。脱離性の基としては、ハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニル)等を挙げることができる。また、付加性の基としてイソシアナト基等を挙げることができる。Qで表される炭素−炭素不飽和結合含有基としては、例えばビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基、スチリル基などのアリールアルケニル基、エチニル基、プロパルジル基などのアルキニル基、エチニルフェニル基などのアリールアルキニル基、スチリルメチル基等を挙げることができる。以下にQ−Yで表される炭素−炭素不飽和結合含有求電子性化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化14】

【0039】
上記一般式(i)で示されるペルフルオロジエン化合物と上記例のような末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物との付加反応において、仕込み原料中の−OH、−SHまたは−NHRで示される基の合計が(i)で示されるペルフルオロジエン化合物中のオレフィン官能基の合計より少ない場合、下記式(IIIa)の末端を有する付加反応生成物を得ることができる。
【0040】
【化15】

【0041】
式(IIIa)の末端を有する付加反応生成物に対し、H−X’−A−Qで表される炭素−炭素不飽和結合含有求核性化合物を反応させることにより、上記式(III)の末端を有する本発明の含フッ素ポリエーテル系化合物を得ることができる。X’は酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Z’は−CF−で表される基またはカルボニル基を示すが、X’が酸素原子または硫黄原子を示す時、Z’は好ましくは−CF−で表される基であり、X’が−NR−で表される基を示す時、Z’は好ましくはカルボニル基を示す。
以下にH−X’−A−Qで表される炭素−炭素不飽和結合含有求核性化合物の好ましい例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化16】

【0043】
【化17】

【0044】
本発明の(A)成分である含フッ素ポリエーテル化合物は、上述のように一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物と末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物(好ましくはHX−L−XHで表される化合物)とを付加反応させたのち末端の官能基を利用して炭素−炭素不飽和結合含有基を導入することにより合成することができる。この際、一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物および末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物(好ましくはHX−L−XHで表される化合物)は、それぞれ1種類ずつ用いてもよいが、どちらか一方あるいは両方とも2種類以上の化合物を混合して用いてもよい。また、逐次別のモノマーを添加してブロック状のポリマーを形成させてもよい。また、Q−Yで表される化合物やH−X’−A−Qで表される化合物は、上記多官能モノマー反応時に予め添加しておいてもよい。更に、多官能モノマー中に炭素−炭素不飽和結合を含有させてもよい。このようなモノマーとして例えば以下のような化合物を挙げることができる。
【0045】
【化18】

【0046】
(A)成分の含フッ素ポリエーテル系化合物の分子量はGPC (ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する数平均分子量が1,000〜1,000,000、好ましくは2,000〜60,000であり、DSC(示差走査熱量計により測定したガラス転移温度が−50〜150℃、好ましくは−30〜100℃のものである。分子量が小さすぎると、組成物を硬化した際の硬度が不十分になり、大きすぎると組成物の粘度が大きくなって取り扱いが難しくなる。
【0047】
(A)成分の含フッ素ポリエーテル系化合物の分子量は一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物および末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物(好ましくはHX−L−XHで表される化合物)の仕込み比によって調整することができる。例えば末端に−OH、−SHまたは−NHRを少なくとも2つ有する化合物としてHX−L−XHで表される化合物を用いる場合、一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物とHX−L−XHで表される化合物の仕込み比が1に近いほど得られるポリマーの分子量は大きくなる。一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物とHX−L−XHで表される化合物の仕込み比は好ましくは0.5〜2であり、より好ましくは0.65〜1.5である。
【0048】
一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物とHX−L−XHで表される化合物の反応は無触媒で行ってもよいが、反応促進に有効な触媒を用いるのが好ましい。反応促進に有効な触媒としては塩基触媒および金属触媒が挙げられる。
【0049】
好ましい塩基触媒としては、水酸化アルカリ金属(例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム)、水酸化アルカリ土類金属(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム)、炭酸アルカリ金属(例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム)、炭酸アルカリ土類金属(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)、炭酸水素アルカリ金属(例えば炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム)、炭酸水素アルカリ土類金属(例えば、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム)等の無機塩基およびピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基が挙げられる。より好ましい塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。
用いる塩基の当量数としては、反応させる−XHに対して0.1当量〜10当量が好ましく、より好ましくは0.5当量〜5当量である。
【0050】
好ましい金属触媒としては、例えばAngew.Chem.Int.Ed.2005,44,1128や特開2006−199625号公報に記載されているような第10族遷移金属触媒/配位子を挙げることができる。用いる遷移金属の当量数としては、反応させる−XHに対して0.005当量〜1当量が好ましく、より好ましくは0.01当量〜0.1当量である。
【0051】
一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物とHX−L−XHで表される化合物の反応は溶媒中で行ってよいし、無溶媒で行ってもよい。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の一般的な有機溶媒、AK−225(登録商標、旭ガラス社製)、2,2,2−トリフルオロエチルメチルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチルエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、2,4−ジフルオロトルエン、2,6−ジフルオロトルエン、3,4−ジフルオロトルエン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、1,3,5−トリフルオロベンゼン、2,3,4−トリフルオロトルエン、1,2,3,4−テトラフルオロベンゼン、1,2,3,5−テトラフルオロベンゼン、1,2,4,5−テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等の含フッ素溶媒、ペルフルオロアルカン化合物[FC−72(商品名、住友スリーエム社製)等]、ペルフルオロエーテル化合物[FC−75、FC−77(共に商品名、住友スリーエム社製)等]、ペルフルオロポリエーテル化合物[商品名:クライトックス(Krytox(登録商標)、DuPont社製)、フォブリン(Fomblin(登録商標)、AUSIMONT社製)、ガルデン(Galden(登録商標)、AUSIMONT社製)、デムナム{ダイキン工業社製}等]、クロロフルオロカーボン化合物(CFC−11,CFC−113等)、クロロフルオロポリエーテル化合物、ペルフルオロトリアルキルアミン化合物、不活性流体(商品名:フロリナート、Fluorinert(登録商標)、住友スリーエム社製)等のペルフルオロ溶媒、水およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
溶媒量はモノマーに対して質量比で0.1倍〜100倍用いるのが好ましく、より好ましくは1倍〜50倍、さらに好ましくは2倍〜20倍である。
【0052】
一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物とHX−L−XHで表される化合物の反応は、2相系で行ってもよい。その場合、2相間を繰り返し行き来することのできる相間移動触媒を用いることが好ましい。水および有機系溶媒との2相系に用いることのできる相間移動触媒としては、例えばベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩やテトラブチルホスホニウムブロミド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムブロミド等の4級ホスホニウム塩を挙げることができる。
【0053】
反応温度は−20℃〜150℃が好ましく、より好ましくは0℃〜100℃であり、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
一般式(i)で表されるペルフルオロジエン化合物とHX−L−XHで表される化合物の反応時間は、用いる触媒、基質、溶媒の種類や量、反応温度、攪拌効率等に依存するが、これらを制御して、それぞれ10分〜96時間で行うのが好ましく、より好ましくは30分〜48時間、さらに好ましくは1時間〜24時間である。
また、得られたポリマーとQ−Yで表される化合物やH−X’−A−Qで表される化合物との反応は、上記で述べたのと同様な条件(塩基、溶媒、温度等)で実施することができる。
【0054】
本発明の必須成分(B)である1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル(SiH)基を含有する化合物は架橋剤として働くものである。具体的な化合物としては例えば以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【化19】

【0056】
【化20】

【0057】
【化21】

【0058】
【化22】

【0059】
(B)成分は前記(A)成分と相溶することが好ましく、かかる観点から(B−1)、(B−4)、(B−6)、(B−9)、(B−10)、(B−11)、(B−16)、(B−17)、(B−23)、(B−34)等の化合物がより好ましい。
本組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分の含フッ素ポリエーテル系化合物中のヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和結合基1モルに対して、(B)成分中のヒドロシリル基が0.1〜20モルの範囲となる量が好ましく、より好ましくは、0.2〜10モルの範囲となる量である。(B)成分の含有量が上記範囲の下限より少ないと、得られる組成物が十分に硬化しなくなる傾向があり、一方、上限より多いと得られる硬化物の機械的特性が低下する傾向がある。
(B)成分は、前記特許文献1〜3などに記載されており、公知の方法で製造することができる。
【0060】
本発明の必須成分(C)であるヒドロシリル化触媒は、本発明の組成物の硬化反応(ヒドロシリル化反応)を促進するための触媒である。このような触媒として好ましいものは、例えば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒、イリジウム系触媒、等が挙げられる。これらの中で、入手性や硬化能の観点から白金系触媒がより好ましい。白金系触媒の中で好ましいものとしては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、白金のカルボニル錯体、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、等が挙げられる。
【0061】
本発明の組成物において、(C)成分であるヒドロシリル化触媒の含有量は前記(A)成分と(B)成分の質量の和に対して質量単位で0.1〜1000ppmの範囲となる量であることが好ましく、より好ましくは0.5〜500ppmの範囲の量である。(C)成分の含有量が上記範囲の下限より少ないと組成物の硬化を十分に促進することができない傾向がある。また、上記範囲の上限より多いと、得られる硬化物の着色が顕著になる等の問題が生じる傾向がある。
(C)成分は、前記特許文献1〜3などに記載されており、公知の方法で製造することができる。
【0062】
本発明の組成物は、上記で述べた(A)〜(C)の必須成分以外にも、性能向上や取り扱い性向上等の観点から様々な化合物を添加することができる。それらの化合物について以下に説明する。
本発明の組成物に反応抑制剤を配合することにより、組成物のポットライフ(使用可能時間)を長くすることができる。このような反応抑制剤の例としては、アセチレン系アルコール類(例えば、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−エチニルイソプロパノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等)、アルケニルシロキサン類(例えば、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン等)、マレート類(例えば、ジアリルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート等)、アミン類(例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、2,2’−ビピリジン等)、トリアリルシアヌレート、トリアゾール等を挙げることができる。これらの反応抑制剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは(A)成分と(B)成分の質量の和に対して質量単位で5〜100,000ppmの範囲となる量である。
【0063】
本発明の組成物は、導電性付与の観点からカーボンブラック、金属酸化物、金属微粉末、第4級アンモニウム塩、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等を有する有機化合物もしくは重合体、エーテルエステルイミドもしくはエーテルイミド重合体、エチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコールアクリレート等の導電性ユニットを有する化合物、または高分子化合物などの帯電防止剤といった化合物を添加することができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を混合して用いてもよい。これらの添加量は特に限定されないが、好ましくは(A)成分と(B)成分の質量の和に対して質量単位で0.01〜200%の範囲となる量であり、より好ましくは、1〜100%の範囲となる量である。
【0064】
本発明の組成物に溶剤を含有させることにより、組成物の粘度を調整することができる。特に組成物を塗布して使用する場合には塗布作業性が向上し、また、得られる塗膜の外観が良好になるという利点がある。このような溶剤の例としてはエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル等)エーテル類(例えば、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等)、ジメチルスルホキシド、スルホラン等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でケトン系溶剤が特に好ましい。
【0065】
本発明の組成物は、強度などの物性を付与する目的で、微粉末シリカ、タルク、酸化チタン、珪藻土、硫酸バリウム、カーボンブラック、(表面処理微細)炭酸カルシウム、(焼成)クレー、活性亜鉛華等の充填剤を添加することができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、任意の2種類以上を混合して用いてもよい。これらの添加量は特に限定されないが、好ましくは(A)成分と(B)成分の質量の和に対して質量単位で0.01〜200%の範囲となる量であり、より好ましくは、1〜100%の範囲となる量である。
【0066】
本発明の硬化性含フッ素ポリエーテル系化合物含有組成物は、耐溶剤性、耐薬品性に優れ、また、低表面エネルギーに由来して離型性、撥水性に優れているため、オイルシール、Oリング、シーラント、成形部品、押出部品、被覆、離型剤等の材料として有用である。また、本発明の組成物は、顔料、顔料分散剤、増粘剤、レべリング剤、消泡剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、艶消し剤、フィラー、コロイダルシリカ、防カビ剤、シランカップリング剤、皮張り防止剤、酸化防止剤、難燃剤、垂れ防止剤、帯電防止剤、防錆剤など添加剤を配合して塗料組成物として用いることができる。すなわち、本発明の硬化性含フッ素ポリマー組成物は、ヒドロシリル化反応により比較的低温で迅速に硬化し、得られる硬化物は優れた耐候性、耐薬品性、防汚性、光学的性質、機械的性質、基材への密着性等に優れることから、通常の硬化性組成物と同じく建材、自動車、航空機、船舶、電車などの屋外用の塗料として金属、コンクリート、プラスチックなどに直接、あるいはウオッシュプライマー、錆止め塗料、エポキシ塗料、アクリル樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料などの下塗り塗料の上に重ね塗りすることができる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の硬化性含フッ素ポリエーテル系化合物含有組成物を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
〔合成例1〕
ペルフルオロジエン(i−29)(4.80g,12mmol)、含フッ素ジオール(Nu−9)(8.99g,16mmol)および炭酸カリウム(6.9g,50mmol)をメチルエチルケトン(75ml)中、室温にて48時間撹拌した。上澄み液を少量濃縮してNMRを測定したところ、下記preP−1の平均構造を有することを確認した。
【0069】
【化23】

【0070】
上記溶液にアリルイソシアナート(0.67g, 8mmol)を添加し、さらに室温で3時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除去し、濾液を減圧にて濃縮することにより無色のワックス状ポリマーP−1 (14.0g)を得た。この化合物のNMRを測定したところ、下記平均構造(ビニル基量:0.55ミリモル/g)を有することを確認した。
【0071】
【化24】

【0072】
〔合成例2〕
ペルフルオロジエン(i−29)(4.80g,12mmol)、含フッ素ジオール(Nu−7)(6.18g,15mmol)および炭酸カリウム(6.2g,45mmol)をメチルエチルケトン(70ml)中、室温にて48時間撹拌した。上澄み液を少量濃縮してNMRを測定したところ、下記preP−2の平均構造を有することを確認した。
【0073】
【化25】

【0074】
上記溶液にアリルイソシアナート(0.50g, 6mmol)を添加し、さらに室温で3時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除去し、濾液を減圧にて濃縮することにより無色のワックス状ポリマーP−2 (11.2g)を得た。この化合物のNMRを測定したところ、下記平均構造(ビニル基量:0.52ミリモル/g)を有することを確認した。
【0075】
【化26】

【0076】
〔合成例3〕
ペルフルオロジエン(i−29)(4.00g,10mmol)、含フッ素ジオール(Nu−4)(3.15g,12mmol)および炭酸カリウム(5.5g,40mmol)をメチルエチルケトン(60ml)中、室温にて48時間撹拌した。上澄み液を少量濃縮してNMRを測定したところ、下記preP−3の平均構造を有することを確認した。
【0077】
【化27】

【0078】
上記溶液にアリルイソシアナート(0.34g,4mmol)を添加し、さらに室温で3時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除去し、濾液を減圧にて濃縮することにより無色のワックス状ポリマーP−3(7.2g)を得た。この化合物のNMRを測定したところ、下記平均構造(ビニル基量:0.53ミリモル/g)を有することを確認した。
【0079】
【化28】

【0080】
〔合成例4〕
ペルフルオロジエン(i−29)(4.80g,12mmol)、含フッ素ジオール(Nu−7)(4.12g,10mmol)および炭酸カリウム(6.2g,45mmol)をメチルエチルケトン(70ml)中、室温にて48時間撹拌した。上澄み液を少量濃縮してNMRを測定したところ、下記preP−4の平均構造を有することを確認した。
【0081】
【化29】

【0082】
上記溶液に下記含フッ素アルコール1(3.68g,4mmol)を添加し、さらに室温で24時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除去し、濾液を減圧にて濃縮することにより無色のワックス状ポリマーP−4(12.1g)を得た。この化合物のNMRを測定したところ、下記平均構造(ビニル基量:0.95ミリモル/g)を有することを確認した。
【0083】
【化30】

【0084】
〔合成例5〕
ペルフルオロジエン(i−29)(4.00g,10mmol)、含フッ素ジオール(Nu−7) (1.03g,2.5mmol)、下記含フッ素ジオール2(6.60g,7.5mmol)および炭酸カリウム(5.5g,40mmol)をメチルエチルケトン(70ml)中、室温にて48時間撹拌した。不溶物をセライト濾過により除去し、濾液を減圧にて濃縮することにより無色のワックス状ポリマーP−5(11.3g)を得た。この化合物のNMRを測定したところ、下記平均構造(ビニル基量:1.29ミリモル/g)を有することを確認した。
【0085】
【化31】

【0086】
〔合成例6〕
ペルフルオロジエン(i−4)(4.73g,12mmol)、含フッ素ジオール(Nu−9)(8.99g,16mmol)および炭酸カリウム(6.9g,50mmol)をメチルエチルケトン(75ml)中、室温にて48時間撹拌した。上澄み液を少量濃縮してNMRを測定したところ、下記preP−6の平均構造を有することを確認した。
【0087】
【化32】

【0088】
上記溶液にアリルイソシアナート(0.67g,8mmol)を添加し、さらに室温で3時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除去し、濾液を減圧にて濃縮することにより無色のワックス状ポリマーP−6(14.0g)を得た。この化合物のNMRを測定したところ、下記平均構造(ビニル基量:0.55ミリモル/g)を有することを確認した。
【0089】
【化33】

【0090】
〔合成例7:比較用フッ素非含有アルケニル基末端アクリル系ポリマーの合成〕
窒素雰囲気下、臭化第一銅(3.6g)およびアセトニトリル(62ml)を70℃で15分間攪拌し、これにアクリル酸ブチル(36ml)、アクリル酸エチル(50ml)、アクリル酸2−メトキシエチル(37.5ml)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(15.1g)、ペンタメチルジエチレントリアミン(0.18g)を加えた。この反応液を70℃で攪拌しながら、アクリル酸ブチル(144ml)、アクリル酸エチル(200ml)、アクリル酸2−メトキシエチル(150ml)の混合液を3時間かけて連続的に滴下[モノマーの滴下途中にペンタメチルジエチレントリアミン(0.63g)を追加した]し、70℃で2時間攪拌した。ここで、反応液に1,7−オクタジエン(124ml)およびペンタメチルジエチレントリアミン(2.2g)を添加し、さらに70℃で4時間攪拌した。得られた反応液をトルエンで希釈し、活性アルミナを通した後、揮発分を減圧にて留去した。濃縮残留物(285g)、酢酸カリウム(8.0g)、N,N-ジメチル酢酸アミド(290ml)を窒素気流下100℃で12時間攪拌し、減圧にてN,N-ジメチル酢酸アミド留去した後トルエンで希釈した。不溶物を活性アルミナでろ過し、濾液の揮発分を減圧にて留去した。濃縮残留物(285g)、酸性ケイ酸アルミ(14.3g)、塩基性ケイ酸アルミ(14.3g)、トルエン(520ml)を窒素気流下100℃で7時間攪拌した。不溶物を濾化後、濾液を減圧にて留去することにより、アルケニル基末端ポリ(アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メトキシエチル)共重合体(R−1)を得た。(R−1)の数平均分子量はGPC測定により19,300であり、また、NMR測定より一分子中に0.16ミリモル/gのビニル基を有することを確認した。
【0091】
〔実施例1〕
合成例1で合成した含フッ素ポリマー(P−1)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物(B−6)1.82重量部[含フッ素ポリマー(P−1)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
この硬化性フッ素ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例2〕
合成例2で合成した含フッ素ポリマー(P−2)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物(B−4)1.76重量部[含フッ素ポリマー(P−2)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
この硬化性フッ素ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0093】
〔実施例3〕
合成例3で合成した含フッ素ポリマー(P−3)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物[B−34(f=5)]1.59重量部[含フッ素ポリマー(P−3)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
この硬化性フッ素ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0094】
〔実施例4〕
合成例4で合成した含フッ素ポリマー(P−4)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物(B−6)3.14重量部[含フッ素ポリマー(P−4)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
この硬化性フッ素ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0095】
〔実施例5〕
合成例5で合成した含フッ素ポリマー(P−5)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物(B−6)4.27重量部[含フッ素ポリマー(P−5)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
この硬化性フッ素ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0096】
〔実施例6〕
合成例6で合成した含フッ素ポリマー(P−6)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物(B−6)1.82重量部[含フッ素ポリマー(P−6)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性フッ素ポリマー組成物を調製した。
この硬化性フッ素ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0097】
〔比較例1〕
合成例7で合成したフッ素非含有アルケニル基末端ポリ(アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メトキシエチル)共重合体(R−1)の30wt%メチルエチルケトン溶液を調製し、この溶液100重量部に上記シロキサン系化合物(B−6)0.53重量部[ポリマー(R−1)のビニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子が1モルとなる量]、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(組成物全体の質量に対して白金原子が50ppmとなる量)を加えてよく混合し、硬化性ポリマー組成物を調製した。
この硬化性ポリマー組成物をクリア塗料としてメイヤーバー塗布によりアルミニウム板(0.2mm厚)に塗装し、送風乾燥機で150℃、5分間乾燥させ、引き続き230℃で4分間乾燥させ、塗布膜厚約15μmの塗膜を作製した。この塗膜の鉛筆硬度、耐溶剤性、撥水性を調べた結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
a)JIS K5600に準じて行った。
b)メチルエチルケトンを含ませた布で100回ラビングした後の塗膜表面の状態を、次の基準にて目視で判断した。
1.塗膜が全て溶解する
2.塗膜の半分以上が溶解する。
3.塗膜が膨潤し顕著なつやびけがある。
4.わずかにつやびけがある。
5.変化ない。
c)水接触角を協和界面科学株式会社製 全自動接触角計(DM700)を用いて測定した。
【0100】
表1に示した結果より、本発明の組成物は、フッ素含率が高く、撥水性や高耐久性といったフッ素系化合物特有の性能を有する硬化性組成物であって、かつ、非フッ素系化合物との相溶性が良好で取扱い性に優れたものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で表される単位を含み、かつ、分子中にヒドロシリル化可能な炭素−炭素不飽和結合を少なくとも2個有することを特徴とする含フッ素ポリエーテル系化合物、
(B)1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物、及び
(C)ヒドロシリル化触媒
を含有することを特徴とする硬化性組成物。
【化1】

一般式(I)中、Rfはペルフルオロアルキレン基を示し、RfおよびRfは、それぞれ独立に、フッ素原子、ペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロアルコキシ基を示し、Rf、Rf、Rfのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよく、Xは各々独立に、酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Zは各々独立に、−CF−で表される基またはカルボニル基を示し、Lは2価の有機基を示し、aは1〜1000の整数を示す。
【請求項2】
一般式(I)で表される単位を含む含フッ素ポリエーテル系化合物が下記一般式(II)及び(III)から選ばれる少なくとも1種[一般式(II)及び(III)中、X、L、Z、Rf、Rf及びRfは一般式(I)におけるそれらと同義であり、Z’は−CF−で表される基またはカルボニル基を示し、X’は酸素原子、硫黄原子または−NR−(Rは水素原子、脂肪族基またはアリール基を示す)で表される基を示し、Aは単結合または下記一般式(IV)で表される基を示し、b、cは、それぞれ独立に、0〜100の整数を示し、Qは炭素−炭素不飽和結合含有基を示し、Q’は水素原子または炭素−炭素不飽和結合含有基を示す]で表される末端構造を有することを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【化2】

【請求項3】
2価の有機基を表すL中に炭素−炭素不飽和結合含有基Qを有することを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
一般式(I)における全てのXとZについて、Xが酸素原子または硫黄原子であり、Zが−CF−で表される基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2010−77267(P2010−77267A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246881(P2008−246881)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】