説明

含フッ素ポリマー、含フッ素フィルム、およびその製造方法

【課題】本発明は、紫外領域の透過性にすぐれる含フッ素ポリマー、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位と四フッ化エチレンに基づく構成単位を有する含フッ素ポリマーであって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位の割合が各単量体に基づく構成単位の合計において40〜99モル%、四フッ化エチレンに基づく構成単位の割合が1〜60モル%であることを特徴とする含フッ素ポリマーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ポリマー、含フッ素フィルム、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素ポリマーは、耐熱性、耐薬品性、耐候性、撥水撥油性、非粘着性に優れ、さらには低屈折率、低誘電率などの性質を有している。特に低屈折率、低誘電率であることから、最近では光学材料や電気材料への利用が注目される。
【0003】
特許文献1では、エチレン、テトラフルオロエチレン、およびフルオロアルキル基を有するオレフィンの含フッ素ポリマーが記載されている。該含フッ素ポリマーは、低屈折率、透明性、および耐久性を有し、波長が850nmの光に対する透明性に優れることが記載されている。
【0004】
特許文献2では、テトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)である含フッ素ポリマーは、光をよく通す透明性、耐熱性、および耐候性に優れており、フレキシブル太陽電池用の保護材として利用できることが記載されている。
【0005】
しかしながら、エチレンに基づく構成単位を多く有する含フッ素ポリマーは短波長(300nm以下)の光を吸収するため、紫外領域での透過性が急激に低下することが知られている。太陽電池に利用する場合には、発電版であるシリコンに紫外光も通すことによって、発電効率はさらに向上させることが期待できる。そのため、保護材にはETFEの性質に加えて紫外領域での光の透過性に優れた性質を持った含フッ素ポリマーが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−164609号公報
【特許文献2】特開2009−177163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、紫外領域の光透過性に優れる含フッ素ポリマー、含フッ素フィルム、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する含フッ素ポリマー、含フッ素フィルム、およびその製造方法を提供する。
[1]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位と四フッ化エチレンに基づく構成単位を有する含フッ素ポリマーであって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位の割合が各単量体に基づく構成単位の合計において40〜99モル%、四フッ化エチレンに基づく構成単位の割合が1〜60モル%であることを特徴とする含フッ素ポリマー。
[2]前記含フッ素ポリマーが、さらに他の単量体に基づく構成単位を有する[1]に記載の含フッ素ポリマー。
[3][1]または[2]に記載の含フッ素ポリマーを有する含フッ素フィルム。
[4]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと四フッ化エチレンとを含む単量体混合物を、溶媒およびラジカル開始剤存在下、共重合させる含フッ素ポリマーの製造方法であって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの量が各単量体の合計において40〜99モル%、四フッ化エチレンの割合が各単量体の合計において1〜60モル%である含フッ素ポリマーの製造方法。
[5]前記単量体混合物が、さらにその他の単量体を含む[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含フッ素ポリマーおよび含フッ素フィルムは、紫外領域の光透過性に優れており、本発明の含フッ素ポリマーの製造方法は、紫外領域の光透過性に優れた含フッ素ポリマーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、紫外領域とは、波長が400nm以下の領域をいう。
【0011】
<含フッ素ポリマー>
本発明の含フッ素ポリマーは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位と四フッ化エチレンに基づく構成単位、および必要に応じてその他の単量体に基づく構成単位を有する。
【0012】
その他の単量体として、具体的には、エチレン、プロピレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフロロエチレン、1,2−ジクロロジフロロエチレン、1,1−ジクロロジフロロエチレン、クロロ−1,1,2−トリフロロエチレン、テトラフロロエチレン、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロ−2−フロロエチレン、1,1−ジクロロ−2−フロロエチレン、1−クロロ−2,2−ジフロロエチレン、1−クロロ−1,2−ジフロロエチレン、トリフロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、ビニリデンクロライド、1−クロロ−2−フロロエチレン、1−クロロ−1−フロロエチレン、1,2−ジフロロエチレン、ビニルクロライド、ビニルフロライド、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデンが挙げられる。なかでもエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニリデンが好ましく、エチレンが特に好ましい。その他の単量体は、上記1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0013】
含フッ素ポリマーにおける2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位の割合は、各単量体に基づく構成単位の合計において、40〜99モル%であり、50〜95モル%が好ましく、60〜90モル%がより好ましい。2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合が上記の範囲であれば、400nm以下の波長における光透過性が優れる。
【0014】
四フッ化エチレンに基づく構成単位の割合は、各単量体に基づく構成単位の合計において、1〜60モル%であり、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。四フッ化エチレンに基づく構成単位の割合が、上記の範囲であれば、四フッ化エチレンに基づく構成単位の高い結晶性のため、含フッ素ポリマーの耐熱性が優れる。
【0015】
含フッ素ポリマーにおける2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位と四フッ化エチレンに基づく構成単位の合計は、各単量体に基づく構成単位の合計において、光透過性の観点から90〜100モル%が好ましく、95〜99.9モル%がより好ましく、99〜99.9モル%が特に好ましい。
【0016】
その他の単量体の割合は、各単量体に基づく構成単位の合計において、0〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.1〜1モル%が特に好ましい。
【0017】
本発明における単量体に基づく構成単位の割合は、NMR分析および元素分析から求める。なお、NMR分析および元素分析から求められない場合は、含フッ素重合体の製造時の単量体の仕込み量に基づいて算出してもよい。
【0018】
含フッ素ポリマーの数平均分子量(Mn)は、1万〜20万が好ましく5万〜15万がより好ましく、10万〜15万が特に好ましい。含フッ素ポリマーの数平均分子量(Mn)が前記下限値以上であれば、光透過性が優れ、前記上限値以下であれば、フッ素系溶媒への溶解性が優れる。
【0019】
含フッ素ポリマーの数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される、サイトップ(登録商標)換算の分子量である。
【0020】
本発明の含フッ素ポリマーの形状は特に限定されない。例えば、粒子状、フィルム状、が挙げられる。なかでも、フィルム状であることが好ましい。
【0021】
一般的に、ポリマーは非結晶性であるか、結晶性であっても実用状態で非結晶状態または結晶化度が低い、あるいは結晶サイズが微細である場合に透明となる。本発明の含フッ素ポリマーは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンが有する−CF基がポリマー中に存在することによって、四フッ化エチレンのホモポリマーと比較して、結晶性が低く、非結晶性のポリマーもしくは実用状態で非結晶状態となることで透明性が向上すると思われる。
【0022】
<含フッ素フィルム>
本発明の含フッ素フィルムは、紫外領域の透過性に優れるフィルムとして、フレキシブル太陽電池用の保護材、薄膜製作やコーティングを必要とする先端的な電子・光学分野等の分野で用いることができる。
【0023】
本発明の含フッ素フィルムとしては、上記本発明の含フッ素ポリマーを有するフィルムである。含フッ素フィルムの製造方法としては、具体的に、含フッ素ポリマーが溶解または分散している重合粗液を面積の広いガラス等の基材に塗布し溶媒を揮発させる方法、重合粗液から貧溶媒化による再沈殿で含フッ素ポリマーの粒子を得て、再度溶媒に溶解させて溶媒を揮発させる方法があるが、工程が短く含フッ素ポリマーのロスの少ない点から前者の方が好ましい。
【0024】
基材としては、ガラス、PTFE樹脂、PFA樹脂、アクリル、金属板などが挙げられる。
【0025】
含フッ素フィルムは、ガラス繊維、カーボン繊維などを含んでいてもよい。カーボン繊維を含むことで、フィルムの強度を向上させることができる。
【0026】
含フッ素フィルムの膜厚は、1〜1000nmが好ましく、5〜500nmがより好ましく、10〜300nmが特に好ましい。
【0027】
膜厚の測定は、接触型膜厚測定、非接触型膜厚測定等を用いることができる。
【0028】
本発明の含フッ素フィルムは、本発明の含フッ素ポリマーを有するフィルムであることから、耐久性、および紫外領域の光透過性に優れる。紫外領域の光透過性として、例えば、膜厚100nmにおいて紫外光(波長300nm)の透過率は、80〜100%が好ましく、85〜100%以上がより好ましく、90〜99%が特に好ましい。
【0029】
<含フッ素ポリマーの製造方法>
本発明の含フッ素ポリマーの製造方法は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと四フッ化エチレンとを含む単量体混合物を、溶媒およびラジカル開始剤存在下、共重合させる含フッ素ポリマーの製造方法である。
【0030】
本発明における単量体混合物中の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの割合は、各単量体の合計量のうち、40〜99モル%が好ましく、50〜95モル%がより好ましく、60〜90モル%が特に好ましい。
【0031】
四フッ化エチレンの割合は、各単量体の合計量のうち、1〜60モル%が好ましく、5〜50モル%がより好ましく、10〜40モル%が特に好ましい。
【0032】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと四フッ化エチレンの合計量は、各単量体の合計量のうち、90〜100モル%が好ましく、95〜99.9モル%がより好ましく、99〜99.9モル%が特に好ましい。
【0033】
本発明における混合物中には、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび四フッ化エチレン以外のその他の単量体を含んでいてもよい。その他の単量体としては、前記の化合物を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0034】
その他の単量体を含む場合、その他の単量体の割合は、各単量体の合計量のうち、0〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.1〜1モル%が特に好ましい。
【0035】
溶媒としては、フッ素系溶媒、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、炭化水素系溶媒等用いることができる。
【0036】
フッ素系溶媒としては、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび四フッ化エチレンの溶解性に優れる溶媒が好ましい。フッ素系溶媒としては、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)が挙げられ、具体的には、C13H(トリデカフルオロヘキサン)、CFCFCHCl、CFClCFCHClF、CFClCFCl、CFCHCFH、CFCFCHCFH、CHClFCFCFCl等が挙げられる。なかでも、連鎖移動性がないことから、C13H(トリデカフルオロヘキサン)が好ましい。フッ素系溶媒は、上記1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
フッ素系溶媒以外のアルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、炭化水素系溶媒としては、エタノール、プロパノール、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサンまたはミネラルスピリッツ等が挙げられる。
フッ素系溶媒の割合は、溶媒の合計量に対して、90〜100質量%が好ましく、95〜99.9質量%がより好ましく、99〜99.9質量%が特に好ましい。
【0038】
溶媒の割合は、単量体混合物の合計量に対して、10〜99質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、40〜60質量%が特に好ましい。
【0039】
ラジカル開始剤としては、(CHCHOC=OOOC=OOCH(CH(t−ブチルパーオキシパーピバレート)、(CHCHC=OOOC=OCH(CH、CC=OOOC=OC、CC=OOOC=OC、(CHCOOC=OC(CHが挙げられる。ラジカル開始剤の量は、その種類、反応条件等に応じて適宜変更でき、単量体の合計100モル部に対して、0.01〜0.1モル部が好ましく、0.01〜0.04モル部がより好ましい。
【0040】
反応器の混合・攪拌形式としては、静止型混合器、充填物、超音波混合器、機械的混合器などが挙げられる。静止型混合器としては、たとえばスタティックミキサー(ステータチューブミキサータイプ、スパイラルミキサータイプ)があり、充填物としては樹脂ペレット、ラシヒリング、ポールリング、サドル等が挙げられる。機械的混合器には、マグネチックスターラーや攪拌翼を装着した軸を介して攪拌させるメカニカルスターラーなどがある。なかでも、高粘度の重合粗液を攪拌するため、高トルクでの回転が可能なメカニカルスターラーが好ましい。
【0041】
反応形式としては、回分式、連続式、半連続式のいずれであってもよい。
【0042】
重合反応温度は、―20〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。
【0043】
重合反応時間は、1〜24時間が好ましく、3〜10時間がより好ましい。
【0044】
重合反応は、通常密閉容器で行う。反応圧力は、0.1〜2MPaが好ましく、0.4〜1.5MPaがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】1234yf/TFE共重合体とETFE(膜厚100nm換算)の透過スペクトル
【実施例】
【0046】
(NMR測定)
NMRの測定は、下記のとおりである。測定する含フッ素ポリマーを重アセトンに溶解させ、ECA−600 FT−NMR分光計にて分析した。分析条件としては、共鳴周波数を19F核:564.55MHzとし、パルス幅は19F核:15.4μsとした。
【0047】
(透過率測定)
フィルム状で回収された含フッ素ポリマーの透過率は、UV−3000(SHIMADZU)を用いて行った。測定は、200〜800nmの波長における透過率を測定した。
【0048】
(膜厚測定)
膜厚の測定は、接触型膜厚測定機、Mitutoyo社製のデジマチックインジケータ(ID−C112B)を用いて行った。
【0049】
[例1(実施例)]
密閉したオートクレーブ(内容積30mlのSUS316製)を真空ポンプにて減圧した後、オートクレーブ中にトリデカフルオロヘキサン(26.5g)を導入した。つぎにオートクレーブ内を攪拌しながら、モノマーである2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(9.1g、0.080mol、以下1234yfとする。)および四フッ化エチレン(4.7g、0.047mol、以下、TFEとする。)をガス状態にて導入した。その後、反応系の温度を除々に66℃に上げると、反応系の圧力が1.26MPaとなった。温度が一定となったら、ラジカル重合開始剤である0.1wt%t−ブチルパーオキシパーピバレート(約4cc、以下PBPVとする。)をオートクレーブに導入し、重合開始とした。重合中は除々に圧力が停止していき、圧力減少が停止したところで反応系の温度を室温程度まで下げ、残存モノマーを放出して重合停止とした。オートクレーブを開放し、オートクレーブ中の溶液を回収し、80℃で一昼夜乾燥して透明な固形物(2.0g、収率13%)を得た。該固形物のNMR分析の結果、生成した固形物組成は1234yf:TFE=87:13(モル比)であった。
【0050】
[例2(実施例)]
密閉したオートクレーブ(内容積30mlのSUS316製)を真空ポンプにて減圧した後、オートクレーブ中にトリデカフルオロヘキサン(29.3g)を導入した。つぎにオートクレーブ内を攪拌しながら、1234yf(15.0g、0.13mol)およびTFE(7.3g、0.073mol)をガス状態にて導入した。その後、反応系の温度を除々に66℃に上げると、反応系の圧力が1.64MPaとなった。温度が一定となったら、ラジカル重合開始剤である0.1wt%PBPV(約5cc)をオートクレーブに導入し、重合開始とした。重合中は除々に圧力が停止していき、圧力減少が停止したところで反応系の温度を室温程度まで下げ、残存モノマーを放出して重合停止とした。オートクレーブを開放し、オートクレーブ中の溶液を回収し、80℃で一昼夜乾燥して透明な含フッ素ポリマーの固形物(0.93 g、収率4.1%)を得た。該含フッ素ポリマーの固形物のNMR分析の結果、生成した含フッ素ポリマーの組成は、1234fy:TFE=87:13(モル比)であった。
【0051】
[例3(実施例)]
密閉したオートクレーブ(内容積30mlのSUS316製)を真空ポンプにて減圧した後、オートクレーブ中にトリデカフルオロヘキサン(27.2g)を導入した。つぎにオートクレーブ内を攪拌しながら、1234yf(4.8g、0.042mol)およびTFE(9.8g、0.098mol)をガス状態にて導入した。その後、反応系の温度を除々に66℃に上げると、反応系の圧力が1.95MPaとなった。温度が一定となったら、ラジカル重合開始剤である0.1wt%t−ブチルパーオキシパーピバレート(PBPV;約2cc)をオートクレーブに導入し、重合開始とした。重合中は除々に圧力が停止していき、圧力減少が停止したところで反応系の温度を室温程度まで下げ、残存モノマーを放出して重合停止とした。オートクレーブを開放し、オートクレーブ中の溶液をシャーレに回収し、80℃で一昼夜乾燥したところ、透明なフィルム状の固形物(0.82g、収率5.5%)を得た。該固形物のNMR分析の結果、生成した固形物組成は1234yf:TFE=74:26(モル比)であった。
【0052】
また、回収された含フッ素ポリマーのフィルムを吸光度測定した結果を図1に示す。135nmの膜厚において300nmの波長の透過率は、90.6%(膜厚100nm換算で93.0%)であった。
【0053】
[例4(比較例)]
密閉したオートクレーブ(内容積30mlのSUS316製)を真空ポンプにて減圧した後、オートクレーブ中にトリデカフルオロヘキサン(28.4g)を導入した。つぎにオートクレーブ内を攪拌しながら、1234yf(19.3g、0.17mol)をガス状態にて導入した。その後、反応系の温度を除々に30℃に上げると、反応系の圧力が0.52MPaとなった。温度が一定となったら、ラジカル重合開始剤である0.1wt%ジパーフルオロプロピオニルパーオキサイド(PFPr;約2cc)をオートクレーブに導入し、重合開始とした。重合中は除々に圧力が停止していき、圧力減少が停止したところで反応系の温度を室温程度まで下げ、残存モノマーを放出して重合停止とした。オートクレーブを開放し、オートクレーブ中の溶液を回収し、80℃で一昼夜乾燥して透明な固形物(0.82g、収率4.1%)を得た。
【0054】
[例5(比較例)]
本発明の含フッ素ポリマーとの透過率の比較のため、FluonETFE(登録商標)C−88APグレードのフィルム(膜厚110nm)について吸光度測定を行い、スペクトルを図1に示す。その結果、300nm波長における膜厚100nm換算での透過率は、51.8%であった。実施例3における本発明の含フッ素ポリマーは、同条件下で93.0%であることから、該含フッ素ポリマーの透明性が向上していることが確認された。
【0055】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の方法を用いて製造される含フッ素ポリマーは、従来のフッ素樹脂の特性に加えて透明性を有しており、さらにはフッ素系溶剤に可溶であるため、薄膜製作やコーティングが可能であることから、先端的な電子・光学分野にて活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位と四フッ化エチレンに基づく構成単位を有する含フッ素ポリマーであって、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに基づく構成単位の割合が各単量体に基づく構成単位の合計において40〜99モル%、四フッ化エチレンに基づく構成単位の割合が1〜60モル%であることを特徴とする含フッ素ポリマー。
【請求項2】
前記含フッ素ポリマーが、さらに他の単量体に基づく構成単位を有する請求項1に記載の含フッ素ポリマー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の含フッ素ポリマーを有する含フッ素フィルム。
【請求項4】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンと四フッ化エチレンとを含む単量体混合物を、溶媒およびラジカル開始剤存在下、共重合させる含フッ素ポリマーの製造方法であって、
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの量が各単量体の合計において40〜99モル%、四フッ化エチレンの割合が各単量体の合計において1〜60モル%である含フッ素ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記単量体混合物が、さらにその他の単量体を含む請求項4に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−92164(P2012−92164A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238441(P2010−238441)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】