説明

含フッ素環芳香環の改善された製造方法

【課題】含フッ素環芳香族化合物をハロゲン交換反応(ハレックス反応)によって高い収率で製造するための技術的にあまり複雑でない方法を提供する。
【解決手段】含二フッ素環又は含多フッ素環の芳香族化合物を、相応の含二ハロゲン環又は含多ハロゲン環の弱く活性化された芳香族化合物の2個以上のハロゲン置換基を特定の触媒の存在下に一反応工程だけで交換させることで得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の存在下で複数のハロゲン置換基のハロゲン交換反応(ハレックス(halex)反応)によって一段階で含フッ素環芳香族化合物を製造するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素環芳香族化合物は、医薬品用途及び農業化学用途の生物学的活性物質のための重要な中間体である。
【0003】
ハレックス反応は、非プロトン性の極めて極性の溶剤中で金属フッ化物を用いて高温で、かつアルキルアンモニウム塩又はアルキルホスホニウム塩(US−A4287374号)、ピリジニウム塩(WO87/04149号)、クラウンエーテル(DE−A19702282号)又はテトラアミドホスホニウム塩(WO98/05610号)の存在下に実施することは知られている。かかる反応の欠点は、特に弱く活性化された芳香族化合物を使用する場合に、高い反応温度及び長い反応時間が必要とされることである。これにより、高いエネルギー消費及び低い空時収量がもたらされる。高い反応温度は、しばしば不所望の副生成物及び分解生成物をもたらす。更に大量の高価な溶剤が必要とされる。
【0004】
特に、弱く活性化された芳香族化合物の複数のハロゲン置換基の交換は今日では一般的な問題である。
【0005】
例えばEP−A1266904号から、環上でハロゲン置換された芳香族化合物にフッ化物を用いて40〜260℃の高温で、かつ特定の触媒の存在下にハレックス反応を行うことは知られている。しかしながら、この反応の欠点は、特に弱く活性化された芳香族化合物、例えばテトラフルオロベンゾトリフルオライドの場合に、2個以上のハロゲン原子の交換のために、フッ化物量及び溶剤量を低く保つために少なくとも二段階の反応が必要とされることである。そのような二段階の反応又は多段階の反応は、中間体の単離のため収率の損失をもたらすだけでなく、比較的高い水準で工程を複雑なものにする。3,4−ジクロロベンゾニトリルでは、実のところ1個だけの塩素置換基をフッ素に交換することだけが選択的である。
【0006】
ハレックス反応による4,5,6−トリフルオロピリミジンの製造は今日では文献において、4,5,6−トリフルオロピリミジンからハレックス反応によって製造される5−クロロ−4,6−ジピリミジンの中間段階(DE−A19602095号)を経由して説明されているだけである。
【0007】
非常に弱く活性化された芳香族化合物である1,3,5−トリクロロベンゼンは、ハレックス反応によって300℃より高い温度でのみ1,3,5−トリクロロフルオロベンゼンに変換できるが、工業的規模での実現には費用がかかり過ぎ不都合であって、前記の温度ではかなりの材料的問題、例えば金属製タンクの場合には応力腐食割れが生ずる。
【0008】
1,3,5−トリクロロベンゼンから出発して比較的低温で1,3,5−トリフルオロベンゼンを製造する試みは、所望の生成物を全く形成しないか(WO−A02/092226号)、又は14%以下の低い収率をもたらすに過ぎない(WO−A02/092608号)。
【0009】
また弱く活性化された3,4,5−トリクロロベンゾトリフルオライドとKFとの反応の場合には、主成分としての3−クロロ−4,5−ジフルオロベンゾトリフルオライドに加えて、3,4,5−トリフルオロベンゾトリフルオライドが単に副生成物として明らかに10%未満の収率で形成される。
【0010】
従って、ハレックス反応において、弱く活性化された芳香族化合物の2個以上のハロゲン置換基をフッ素置換基で交換するのに適当であり、公知法の前記に詳説した欠点を有さず、かつ相応の含フッ素環芳香族化合物を良好な収率で得る反応が依然として要求されている。
【特許文献1】US−A4287374号
【特許文献2】WO87/04149号
【特許文献3】DE−A19702282号
【特許文献4】WO98/05610号
【特許文献5】EP−A1266904号
【特許文献6】EP−A19602095号
【特許文献7】WO−A02/092226号
【特許文献8】WO−A02/092608号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の課題は、含フッ素環芳香族化合物をハロゲン交換反応(ハレックス反応)によって良好な収率で製造するための技術的にあまり複雑でない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
意想外にも、含二フッ素環又は含多フッ素環の芳香族化合物は、相応の含二ハロゲン環又は含多ハロゲン環の弱く活性化された芳香族化合物の2個以上のハロゲン置換基を特定の触媒の存在下に一反応工程だけで交換させる場合に良好な収率で得られることが判明した。
【0013】
従って本発明は、一般式(I)
【0014】
【化1】

[式中、
AはN又はCHであり、
DはN又はCHであり、
EはN、CH、C−CF、C−CN又はCFであり、かつ
はH、CN又はF、有利にはH又はFであるが、但し、
A、D及びEは全て同時に同じ定義を有さず、有利には全て同時にNではないか、又は全て同時にCHではない]の化合物を、一般式(II)
【0015】
【化2】

[式中、
AはN又はCHであり、
DはN又はCHであり、
EはN、CH、C−CF、C−CN又はC−Halであり、
はH、Cl、Br、I又はCN、有利にはH、Cl、Br又はCN、より有利にはH又はClであり、かつ
HalはCl、Br又はI、有利にはCl又はBr、より有利にはClであるが、但し、
A、D及びEは全て同時に同じ定義を有さず、有利には全て同時にNではないか、又は全て同時にCHではない]の化合物とフッ化物とを、一般式(III)
【0016】
【化3】

[式中、
Aは式(IV)又は(V)
【0017】
【化4】

の基であり、かつ
Bは、Aとは無関係に、式(IV)、(V)、(VIa)又は(VIb)
【0018】
【化5】

の基であり、その際、
個々のRは同一又は異なって、それぞれ直鎖状又は分枝鎖状のC〜C10−アルキル、直鎖状又は分枝鎖状のC〜C10−アルキレン又はC〜C12−アリールであり、
式中の1つ以上のNR基は、1個の窒素原子及びその他は炭素原子から形成される3員ないし5員の飽和又は不飽和の環であってもよく
式(IV)及び式(VIa)中の
【0019】
【化6】

基は、2個の窒素原子及びその他は炭素原子を含有する飽和又は不飽和の4員ないし8員の環の基であってもよく、
XはN又はPであり、かつ
An(−)は1価のアニオンである]の少なくとも1種の化合物の存在下で反応させることによって製造する方法であって、該反応を一段階で実施することを特徴とする方法を提供する。
【0020】
本発明の文脈においては、一段階の反応とは、該反応において部分的にフッ素化された中間体の単離又は後処理がないことを意味する。
【0021】
本発明による方法は、有利には
A及びDがそれぞれNであり、かつEがCH、C−CF又はC−CNであるか、又は
A及びDがそれぞれCHであり、かつEがN、C−CF又はC−CNであるか、又は
AがNであり、DがCHであり、かつEがC−CFであるか、又は
A及びDがそれぞれCHであり、かつ一般式(I)においてEがCFであり、かつ一般式(II)においてEがC−Halであって、Halが一般式(II)についての前記の定義と同様であると、一般式(I)の化合物を一般式(II)の化合物から製造するために適している。
【0022】
本発明による方法は、より有利には3,5−ジフルオロピリジン、4,5,6−トリフルオロピリミジン、1,3,5−トリフルオロベンゼン又は3,4,5−トリフルオロベンゾトリフルオライドの製造のために、特に4,5,6−トリフルオロピリミジン、1,3,5−トリフルオロベンゼン又は3,4,5−トリフルオロベンゾトリフルオライドの製造のために適している。このために使用される一般式(II)の化合物は、より有利には3,5−ジクロロピリジン、4,5,6−トリクロロピリミジン、1,3,5−トリクロロベンゼン又は3,4,5−トリクロロベンゾトリフルオライド、特に4,5,6−トリクロロピリミジン、1,3,5−トリクロロベンゼン又は3,4,5−トリクロロベンゾトリフルオライドである。
【0023】
本発明による方法で使用される一般式(II)の化合物は、弱く活性化された芳香族化合物、すなわち交換されるべきハロゲン置換基の少なくとも1個、有利には少なくとも2個に対してメタ(m)位に中程度の電子吸引性基を有する芳香族化合物である。本発明の文脈では、中程度の電子吸引性基は、交換されるべきハロゲン置換基の少なくとも1個、有利には少なくとも2個に対して有利なメタ配置であることを考慮して、特に芳香環中の窒素原子、また環炭素原子上のハロゲン置換基、CF置換基又はCN置換基であり、その際、ハロゲンはCl、BrもしくはI、又は既に交換されたFのいずれであってもよい。
【0024】
一般式(IV)、(V)、(VI−a)及び(VI−b)中の同じ窒素原子に結合された2個のR基は同一であることが好ましい。
【0025】
基は、有利にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル又はn−ブチルであるか、又はNR基は1個の窒素原子とその他は炭素原子から形成される5員ないし7員の飽和又は不飽和の環であるか、又は
式(IV)又は式(VIa)中の
【0026】
【化7】

基は2個の窒素原子とその他は炭素原子を有する飽和の5員ないし7員の環であり、
Xは窒素であり、かつ
An(−)は塩化物イオン、臭化物イオン、(CHSiF(−)、HF(−)、H(−)、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、炭酸イオン又は硫酸イオンである。
【0027】
一般式(III)の特に有利な化合物は、式(III−1)ないし式(III−6)
【0028】
【化8】

の化合物である。
【0029】
ハロゲンをフッ素と交換するのに有用なフッ化物は、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属及びアンモニウムのフッ化物である。フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カルシウム及びフッ化アンモニウムが有利であり、またそれらの互いの混合物並びにフッ化リチウム、フッ化ルビジウム及び/又はフッ化セシウムとのその混合物が有利である。
【0030】
芳香族化合物の環に結合され、フッ素に交換されるべき1モルのハロゲンに対して、例えば0.001〜0.5モル、有利には0.01〜0.1モルの式(III)の1種以上の化合物及び、例えば0.8〜2当量、有利には1.1〜1.5当量の1種以上のハロゲン化物を使用できる。
【0031】
一般式(III)の化合物は、単離された形で又は溶液の形で使用できる。好適な溶剤は、例えば双極性非プロトン性及び/又は非極性非プロトン性の溶剤である。
【0032】
本発明による方法は、有利には40〜260℃、より有利には70〜240℃の範囲の温度で実施される。160〜220℃がより特に有利である。
【0033】
本発明による方法は、溶剤の存在又は不在下に実施してよい。本発明による方法を少なくとも1種の溶剤の存在下に実施することが有利である。適当な溶剤には、例えば双極性非プロトン性及び/又は非極性非プロトン性の溶剤が含まれる。適当な双極性非プロトン性溶剤は、例えばジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリン−2−オン、N−メチルピロリドン、アセトニトリル及びベンゾニトリルである。適当な非極性非プロトン性溶剤は、例えばベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン及びクロロアルカン、例えばジクロロメタンである。前記の列記した溶剤は、同様に一般式(III)の化合物の溶液のために好適である。
【0034】
非極性非プロトン性溶剤及び双極性非プロトン性溶剤は任意の量で、例えばそれぞれの場合に、フッ素に交換可能なハロゲンによって置換された用いられる芳香族化合物に対して、0.1〜500質量%、有利には0.2〜300質量%の量で使用できる。
【0035】
また溶剤の混合物を使用することもでき、50質量%以上の双極性非プロトン性溶剤を含有する溶剤混合物を使用することが好ましい。
【0036】
また、本発明による方法をフリーラジカル捕捉剤の存在又は不在下に実施することもできる。適当なフリーラジカル捕捉剤は、例えば芳香族のニトロ化合物、有利にはニトロベンゼン、3−ニトロジメチルベンザミド又は1,3−ジニトロベンゼン、より有利にはニトロベンゼン又は3−ニトロジメチルベンザミドである。フリーラジカル捕捉剤は、一般式(II)の化合物の量に対して10モル%以下の量で使用できる。フリーラジカル捕捉剤の使用によって、脱ハロゲン化による副生成物の形成を明らかに低減できる。
【0037】
本発明による方法での反応時間は、例えば2〜48時間の範囲であってよい。
【0038】
本発明による方法は、減圧、標準圧力又は高圧で実施できる。標準圧力又は高圧、例えば1〜16バール、より有利には2〜10バールで実施することが好ましい。
【0039】
原則的に、式(I)の化合物は、大気酸素の存在又は不在下に取り扱いできる。しかしながら保護ガス下で式(I)の化合物を取り扱い、本発明による方法を保護ガス下で実施することが好ましい。好適な保護ガスは、例えば窒素及びアルゴンである。
【0040】
本発明による方法は不連続式又は連続式に実施できる。
【0041】
本発明による方法の実施後に存在する反応混合物の後処理のために、その手段は、例えば冷却後に反応混合物と水とを混合し、形成する有機相を分離して、分離された有機相を減圧下に分別蒸留することであってよい。本発明による方法の実施後に存在する反応混合物をまた直接的に蒸留してもよい。更に、該反応混合物に溶剤を添加し、濾過によって固体成分を分離し、そして濾液を減圧下に蒸留することもできる。更に、一般式(I)の生成物を反応混合物から、減圧下での蒸留(加圧蒸留)によって分離してもよい。他の後処理手段を用いてもよい。
【0042】
一般式(III)の触媒の製造は公知であり、そして例えばSynthesis 1979, 215-216, Angewandte Chemie 104, 864, 1992又はEP−A1266904号に記載されている。幾つかの場合には、式(III)の化合物の製造において、式(III)に相当する2種以上の個々の化合物の混合物が得られることが認められている。かかる混合物はまた本発明による方法のための触媒として適当である。
【0043】
含二フッ素環又は含多フッ素環の芳香族化合物の製造のための本発明による方法は、公知の方法に対して一工程で行われ、従って、従来技術と比較して、材料、エネルギー及びタンク内張りに関してより低い水準のプロセス技術的複雑性が要求されるに過ぎない。更に目的生成物は少なくとも従来技術に匹敵する、通常はそれより高い収率で得ることができる。本発明による方法は従って従来技術と比較して明らかに改善された方法である。
【0044】
以下の実施例は、本発明を例によって説明するものであり、制限するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0045】
式(III−1)の化合物(CNC触媒)の製造
【0046】
【化9】

【0047】
(N,N−ジメチルイミダゾリジノ)テトラメチルグアニジニウムクロライド
600mlのトルエンをまず装入し、そして360gのホスゲンを室温(23℃)で3.5時間かけて添加した。引き続き344g(3.00モル)の1,3−ジメチルイミダゾリジノンを450mlのトルエンに溶かしたものを1.5時間かけて添加し、その間に温度は40℃に保持した。ガスの発生が止まった後に、過剰のホスゲンを窒素バブリングによって除去した。該懸濁液を不活性ガス下に濾過し、そして438g(2.56モル)の(N,N−ジメチルイミダゾリジノ)クロライドが無色の固体として得られた。収率:85%。融点:156〜158℃。
【0048】
600mlのジクロロメタン及び400g(2.34モル)の(N,N−ジメチルイミダゾリジノ)クロライドをまず装入する。引き続き、552gのテトラメチルグアニジン(2当量、4.8モル)を冷却しながら2時間かけて添加する。引き続き溶剤を除去し、そしてその固体残留物に600mlのメタノールを添加する。次いで、その懸濁液に432g(2.4モル)の30%のナトリウムメトキシド溶液(メタノール中)を冷却しながら添加し、そして該混合物を室温で1時間撹拌する。溶剤を除去し、そして200mlのジクロロメタンを次いで残留物に添加する。沈殿物を濾過分離し、そして廃棄する。濾液を濃縮乾涸させる。449g(1.80モル)の(N,N−ジメチルイミダゾリジノ)テトラメチルグアニジニウムクロライド(式(III−1)のCNC触媒)を単離する。収率:94%;融点:145〜147℃。
【0049】
実施例1: 3,5−ジフルオロピリジンの製造
【0050】
【化10】

【0051】
1000gのジクロロピリジン及び1580gの無水フッ化カリウムをまず1700mlのスルホラン中でオートクレーブに装入した。引き続き84gのCNC触媒(化合物(III−1))を添加し、窒素を注入して3バールにし、そして該混合物を撹拌しながら48時間にわたり205℃に加熱した。反応の間に、12.4バールの最大総圧が生じた。引き続き、該混合物を10℃に冷却し、そして生成物を標準圧力で留去した。再蒸留後に、473gのジクロロピリジン(理論値の60%)が無色の液体として得られた。
【0052】
実施例2: 4,5,6−トリフルオロピリミジンの製造
【0053】
【化11】

【0054】
7160mlのスルホラン及び3876gのKFをまずオートクレーブに装入し、そして150℃で1時間撹拌した。引き続き該混合物を、700mlのスルホランを減圧下で蒸留することによって乾燥させた。次いで該混合物を90℃に冷却し、そして窒素通気させ、そして45℃に加熱した、3122gの4,5,6−トリクロロピリミジン及び2386gの無水スルホランの溶液をポンプ圧送した。次いで、166gのCNC触媒及び20.5gのニトロベンゼンを迅速に添加し、そしてその容器を密閉した。該混合物を撹拌しながら5時間にわたり200℃に加熱し、そして引き続き11時間にわたり220℃に加熱した。反応の間に、6.5バールの最大総圧が生じた。該混合物を撹拌しながら40℃に冷却し、そして氷冷された受容器中に向けて緩慢に減圧させた。内部温度を緩慢に150℃に高め、そして生成物をまず標準圧力で、後に減圧下に留去した。粗生成物の再蒸留後に、1540gの4,5,6−トリフルオロピリミジン(理論値の66%)が無色の液体として得られた。
【0055】
実施例3: 3,4,5−トリフルオロベンゾトリフルオライドの製造方法
【0056】
【化12】

【0057】
860gの無水スルホラン及び524gの無水KFをまず、湿分を排除してオートクレーブに装入し、そして500gの3,4,5−トリクロロベンゾトリフルオライド、5gのニトロベンゼン及び25gのCNC触媒を添加した。その容器を密封し、そして引き続き該混合物を5時間にわたり200℃に加熱し、次いで更に12時間にわたり220℃に加熱した。反応の間に、9バールの最大総圧が生じた。次いで該混合物を20℃に冷却し、そして冷却された受容器に向けて減圧させた。生成物を標準圧力で留去した。粗生成物の再蒸留後に、300gの3,4,5−トリフルオロベンゾトリフルオライド(理論値の75%)が無色の液体として得られた。
【0058】
実施例4: 1,3,5−トリフルオロベンゼンの製造
【0059】
【化13】

【0060】
500gの1,3,5−トリクロロベンゼン、1180mlのスルホラン、10.7gの3−ニトロジメチルベンザミド及び640gの無水KFをまずオートクレーブに装入し、次いで48gのCNC触媒を添加し、そしてオートクレーブを密封した。該混合物を48時間にわたり220℃に加熱した。反応の間に、8バールの最大総圧が生じた。引き続き、該混合物を20℃に冷却した。生成物をまず標準圧力で、後に減圧下に留去した。87質量%の1,3,5−トリフルオロベンゼン(理論値の74%)及び8.8質量%のジフルオロクロロベンゼン(理論値の6.7質量%)の割合を有する310gの無色の液体が得られた。1,3,5−トリフルオロベンゼン及びジフルオロクロロベンゼンは公知のように蒸留により分離できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、
AはN又はCHであり、
DはN又はCHであり、
EはN、CH、C−CF、C−CN又はCFであり、かつ
はH、CN又はFであるが、但し、
A、D及びEは全て同時に同じ定義を有さない]の化合物を、一般式(II)
【化2】

[式中、
AはN又はCHであり、
DはN又はCHであり、
EはN、CH、C−CF、C−CN又はC−Halであり、
はH、Cl、Br、I又はCNであり、かつ
HalはCl、Br又はIであるが、但し、
A、D及びEは全て同時に同じ定義を有さない]の化合物とフッ化物とを、一般式(III)
【化3】

[式中、
Aは式(IV)又は(V)
【化4】

の基であり、かつ
Bは、Aとは無関係に、式(IV)、(V)、(VIa)又は(VIb)
【化5】

の基であり、その際、
個々のRは同一又は異なって、それぞれ直鎖状又は分枝鎖状のC〜C10−アルキル、直鎖状又は分枝鎖状のC〜C10−アルキレン又はC〜C12−アリールであり、
式中の1つ以上のNR基は、1個の窒素原子及びその他は炭素原子から形成される3員ないし5員の飽和又は不飽和の環であってもよく
式(IV)及び式(VIa)中の
【化6】

基は、2個の窒素原子及びその他は炭素原子を含有する飽和又は不飽和の4員ないし8員環の基であってもよく、
XはN又はPであり、かつ
An(−)は1価のアニオンである]の少なくとも1種の化合物の存在下で反応させることによって製造する方法であって、該反応を一段階で実施することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法によって製造される、一般式I
【化7】

[式中、A、D、E及びXはそれぞれ請求項1の定義と同様である]の化合物。
【請求項3】
医薬品用途及び農業化学用途の生物学的活性物質の製造のための中間体としての、請求項2記載の化合物の使用。

【公開番号】特開2006−22105(P2006−22105A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200600(P2005−200600)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【Fターム(参考)】