説明

含フッ素重合体組成物製造方法及び含フッ素重合体組成物

成形加工による着色がないフッ素系成形体製造方法、及び、上記フッ素系成形体製造方法により製造されるフッ素系成形体を提供する。 含フッ素重合体とフッ素系アニオン界面活性剤とからなる重合生成物に酸化剤を接触させることよりなるフッ素系成形体製造方法であって、上記フッ素系アニオン界面活性剤は、(i)C−H結合とC−F結合とを有する疎水基と、(ii)−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である親水基とが結合してなる部分フッ素化化合物からなるものであることを特徴とするフッ素系成形体製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素重合体組成物製造方法及び含フッ素重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素重合体の製造方法として、CF(CF(CHSOM(式中、mは、2〜9の整数、nは、1〜3の整数、Mは1価のカチオンを示す。)で表される構造を有する界面活性剤、及び、この界面活性剤を分散剤として使用して水性媒体中で重合することからなる製造方法が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。
【0003】
この製造方法により得られたディスパージョンを凝集、洗浄、乾燥して粉末を得、この粉末を用いて成形加工することによりフッ素系成形体を製造すると、加熱等により着色が生じる問題があった。このような着色は、重合開始剤、界面活性剤、凝析剤、重合副生物であるオリゴマー等が成形加工時に炭化することが原因であると考えられる(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
含フッ素重合体を用いて成形加工する際に着色を防ぐ方法として、含フッ素重合体をオゾン接触させる方法が開示されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、特許文献5には、分散剤としてパーフルオロカルボン酸を用いて重合して得られた含フッ素重合体に関する方法が記載されており、C−H結合を有する化合物からなる界面活性剤を使用した場合については一切記載されていない。
【特許文献1】特開昭51−057790号公報
【特許文献2】米国特許第568884号明細書
【特許文献3】米国特許第5789508号明細書
【特許文献4】米国特許出願02/0037985号公開公報
【特許文献5】特開平11−181098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、成形加工による着色がない含フッ素重合体からなる組成物の製造方法、及び、上記製造方法により製造される含フッ素重合体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、含フッ素重合体(A)とフッ素系界面活性剤とからなる重合生成物に酸化剤を接触させることにより含フッ素重合体(B)からなる含フッ素重合体組成物を製造する含フッ素重合体組成物製造方法であって、上記フッ素系界面活性剤は、(i)C−H結合とC−F結合とを有する疎水基と、(ii)−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である親水基とが結合してなる部分フッ素化化合物からなるものであることを特徴とする含フッ素重合体組成物製造方法である。
【0007】
本発明は、フッ素系界面活性剤を用いて水性媒体中で重合することにより得られた含フッ素重合体(A)からなる重合生成物に酸化剤を接触させることにより含フッ素重合体(B)からなる含フッ素重合体組成物を製造する含フッ素重合体組成物製造方法であって、上記フッ素系界面活性剤は、(i)C−H結合とC−F結合とを有する疎水基と、(ii)−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である親水基とが結合してなる部分フッ素化化合物からなるものであることを特徴とする含フッ素重合体組成物製造方法である。
【0008】
本発明は、上記各含フッ素重合体組成物製造方法により製造された含フッ素重合体組成物であって、上記含フッ素重合体組成物は、水性分散体、スラリー、乾燥粉末、造粒粉末、又は、上記水性分散体、上記スラリー、上記乾燥粉末若しくは上記造粒粉末を用いて得られる成形体であることを特徴とする含フッ素重合体組成物である。以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の第1の含フッ素重合体組成物製造方法は、含フッ素重合体(A)とフッ素系界面活性剤とからなる重合生成物に酸化剤を接触させることにより含フッ素重合体(B)からなる含フッ素重合体組成物を製造するものである。
本明細書において、上記「含フッ素重合体(B)」は、含フッ素重合体(A)に由来するものであって、上記重合生成物に酸化剤を接触させた後におけるものである。上記含フッ素重合体(B)は、上記含フッ素重合体(A)が上記酸化剤により化学変化を受けるものである場合、上記含フッ素重合体(A)が上記酸化剤により化学変化を受けたものであり、上記含フッ素重合体(A)が上記酸化剤により化学変化を受けないものである場合、上記含フッ素重合体(A)そのものである。上記含フッ素重合体(A)が上記酸化剤により化学変化を受けたものとしては特に限定されず、例えば、含フッ素重合体(A)のポリマー鎖において重合等により生じた−COOH等の不安定末端基及び/又は炭素−炭素二重結合が上記酸化剤により分解したもの等が挙げられる。
本明細書において、上記含フッ素重合体(A)と上記含フッ素重合体(B)とを特に区別することなく主に両者に共通することについて述べるときは、(A)又は(B)を付すことなく単に「含フッ素重合体」という事項がある。
含フッ素重合体(A)については、後述する。
【0010】
本明細書において、上記「重合生成物」は、後述の含フッ素重合体組成物を製造するための原材料である。本発明では、上記重合生成物に酸化剤を接触させる処理を行って含フッ素重合体組成物を製造する。上記「重合生成物」は、上述のように含フッ素重合体(A)からなるものであり、上記含フッ素重合体(A)は重合反応による生成物であるので、本明細書において、上記含フッ素重合体組成物と区別するため便宜上「重合生成物」という。しかしながら、本明細書において、上記「重合生成物」は、含フッ素重合体(A)とフッ素系界面活性剤とからなるものであれば、例えば、(1)含フッ素重合体(A)を製造するための重合反応の終了後に得られる重合反応生成物であってもよいし、(2)上記重合反応生成物に濃縮、分散安定化処理、凝析、凝集、乾燥、造粒等の後処理を行うことにより得られる重合後処理物であってもよいし、(3)予め調製しておいた上記重合反応生成物又は上記重合後処理物にフッ素系界面活性剤を添加して水性媒体中に分散させてなる後調製ディスパージョンであってもよいし、(4)上記後調製ディスパージョンに濃縮、凝析、凝集、乾燥、造粒等の後処理を行うことにより得られる調製後処理物であってもよい。
【0011】
上記(3)の後調製ディスパージョンとしては、含フッ素重合体(A)を重合する際にフッ素系界面活性剤を用いないものであってもよい。上記(3)の後調製ディスパージョン及び上記(4)の調製後処理物としては、含フッ素重合体(A)100質量部あたりフッ素系界面活性剤を0.0001〜5質量部含有するものが好ましい。上記含フッ素重合体(A)100質量部あたりのフッ素系界面活性剤の含有量のより好ましい下限は、0.001質量部、更に好ましい下限は、0.01質量部であり、より好ましい上限は、2質量部、更に好ましい上限は、1質量部である。
【0012】
上記重合生成物としては、上記(1)の重合反応生成物又は上記(2)の重合後処理物が好ましく、上記(2)の重合後処理物がより好ましい。
上記(1)の重合反応生成物及び上記(2)の重合後処理物は、通常、フッ素系界面活性剤の存在下に含フッ素重合体(A)を重合して得られるものであり、好ましくは、後述の本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法における重合生成物である。
【0013】
本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法は、フッ素系界面活性剤を用いて水性媒体中で重合することにより得られた含フッ素重合体(A)からなる重合生成物に酸化剤を接触させることよりなるものである。
【0014】
本明細書において、上記「水性媒体」は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体である。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水に加え、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックス等のフッ素非含有有機溶媒及び/又はフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0015】
本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法において、重合は、上記フッ素系界面活性剤を用いて水性媒体中で重合するものであれば特に限定されない。
上記重合は、上記フッ素系界面活性剤、重合開始剤及び単量体を用いて、懸濁重合、乳化重合等、公知の重合方法により行うことができる。また、上記重合の際、上記フッ素系界面活性剤、単量体及び重合開始剤に加え、公知の連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤を添加して行うことができる。
【0016】
上記重合では、重合方法、単量体、所望の含フッ素重合体等の種類に応じて、重合温度、重合圧力等の反応条件を適宜設定できる。
例えば、単量体としてテトラフルオロエチレン[TFE]を使用する場合、50〜110℃の温度にて、0.3〜7MPaの圧力で行うことが好ましい。
【0017】
上記重合において、上記フッ素系界面活性剤の添加量は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量等によって適宜決定される。
上記フッ素系界面活性剤の上記重合時における合計添加量は、充分な分散力を得る点で、水性媒体の0.0001質量%以上が好ましく、製造コストや重合反応性の点で、5質量%以下が好ましい。
上記フッ素系界面活性剤の合計添加量のより好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は2質量%であり、更に好ましい上限は1質量%である。
上記重合において、上記フッ素系界面活性剤を用いるのであれば、その他の界面活性剤を用いてもよい。
【0018】
上記重合において、上記単量体の添加量は、目的とする含フッ素重合体の分子量や製造量等によって適宜決定される。
上記重合において、上記単量体は、経済性、生産性の点で、合計添加量で、水性媒体の10質量%以上の量を添加することが好ましく、また、付着等が少なく、反応系が安定する点で、150質量%以下の量で添加することが好ましい。上記添加量のより好ましい下限は20質量%であり、より好ましい上限は100質量%、更に好ましい上限は70質量%である。
【0019】
上記重合開始剤は、上記重合においてラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0020】
本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法において、上記重合生成物は、上述した重合を行うことにより得られる水性分散液であってもよいし、この水性分散液を公知の方法により濃縮するか又は分散安定化処理して得られるディスパージョンであってもよいし、上記水性分散液若しくは上記ディスパージョンを凝析又は凝集に供して回収して得られるスラリー(湿潤粉末)であってもよいし、上記スラリーを乾燥して得られる乾燥粉末であってもよいし、所望により上記乾燥粉末を造粒して得られる造粒粉末であってもよい。
上記重合生成物としては、酸化剤を接触させる際の取り扱いが容易な点で、上述の重合により得られる水性分散液、この水性分散液を濃縮するか若しくは分散安定化処理して得られるディスパージョン、上記スラリー、又は、上記乾燥粉末であることが好ましく、上記ディスパージョン、上記スラリー、又は、上記乾燥粉末であることがより好ましい。
【0021】
本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法において、上記重合生成物は、重合における添加量によるが、通常、含フッ素重合体(A)100質量部あたりフッ素系界面活性剤を0.0001〜5質量部含有するものが好ましい。上記含フッ素重合体(A)100質量部あたりのフッ素系界面活性剤の含有量のより好ましい下限は、0.001質量部、更に好ましい下限は、0.01質量部であり、より好ましい上限は、2質量部、更に好ましい上限は1質量部である。
【0022】
本明細書において、以下、上記本発明の第1の含フッ素重合体組成物製造方法と上記本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法とを特に区別しない場合、「第1の」又は「第2の」を付すことなく単に「本発明の含フッ素重合体組成物製造方法」という。以下に上記本発明の第1の含フッ素重合体組成物製造方法と上記本発明の第2の含フッ素重合体組成物製造方法とに共通する事項に関し、本発明の含フッ素重合体組成物製造方法について説明する。
【0023】
上記フッ素系界面活性剤は、(i)C−H結合とC−F結合とを有する疎水基と、(ii)−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である親水基とが結合してなる部分フッ素化化合物からなるものである。
本明細書において、上記「部分フッ素化」とは、C−H結合とC−F結合とを有する構造からなることを意味する。
上記部分フッ素化化合物は、上記(i)の疎水基及び上記(ii)の親水基とが結合してなるものであるので、界面活性剤として好ましい含フッ素重合体の乳化作用及び分散作用を有する。
【0024】
上記(i)の疎水基は、C−H結合とC−F結合とを有するものであれば特に限定されず、C、H又はF以外のヘテロ原子、例えば、O、N及び/又はSを主鎖に有するものであってもよいものである。
また、上記(i)の疎水基は、直鎖基であってもよいし、分岐鎖を有する基であってもよい。上記(i)の疎水基は、親水基と結合している炭素原子が、第一級炭素原子、第二級炭素原子又は第三級炭素原子の何れであってもよい。
上記(i)の疎水基は、エーテル酸素を主鎖に有しているか又は有していない部分フッ素化アルキル基であることが好ましい。
上記部分フッ素化アルキル基としては、炭素数3〜18のものが好ましい。上記炭素数のより好ましい下限は4、更に好ましい下限は6であり、より好ましい上限は12であり、炭素数8のものが特に好ましい。
【0025】
上記(i)の疎水基としては、また、主鎖に−CFX−(Xは、F又はHを表す)を有しているものであることが好ましく、主鎖に−CH−を有しているものが、より好ましい。
なお、上記部分フッ素化化合物は、上記(i)の疎水基中に−CH−構造が多く存在するほど、成形加工を行うことにより着色されやすいものと考えられる。これに対し、本発明の含フッ素重合体組成物製造方法は、上記(i)の疎水基が主鎖に2つ以上の−CH−を有しているものを使用しても、その着色防止効果を顕著に発揮することができる。
また、上記部分フッ素化化合物は、上記(i)の疎水基中の−CHX−(Xは、上記定義したもの。)が上記(ii)の親水基に隣接する場合、成形加工を行うことにより着色されやすく、更に上記−CHX−においてXがHである場合、より着色されやすい。これに対し、本発明の含フッ素重合体組成物製造方法では、[−CHX−(ii)の親水基]構造を有するものを使用しても、その着色防止効果を顕著に発揮することができる。
【0026】
上記(i)の疎水基としては、エーテル酸素を主鎖に有しているか又は有していない部分フッ素化アルキル基であって、主鎖に−CH−を有しているものが、更に好ましい。更に好ましい上記(i)の疎水基としては、例えば、一般式(i−I)
X(CF(CH−(i−I)
(式中、XはH又はFを表し、qは2〜12の整数を表し、rは1〜2の整数を表す。)で表される基等が挙げられる。
上記qの好ましい下限は4であり、上記qの好ましい上限は10、より好ましい上限は6である。
【0027】
上記(i−I)の疎水基としては、例えば、下記式(i−1)、式(i−2)、式(i−3)又は式(i−4)で表される基(以下、本明細書において、上記各基を総称して、「部分フッ素化アルキル基(T)」と称する)等が挙げられる。
H(CFCFCH− (i−1)
H(CFCFCH− (i−2)
F(CFCFCHCH− (i−3)
F(CFCFCHCH− (i−4)
【0028】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法における部分フッ素化化合物は、上記(i)の疎水基として上記式(i−1)、式(i−2)、式(i−3)又は式(i−4)で表される4種の基のうち何れか1種を有する分子の集合体であってもよいし、これら4種の基のうち何れか1種を有する分子と他の種を有する分子との混合物であってもよい。上記部分フッ素化化合物は、また、後述の一般式(1b)で表される部分フッ素化化合物(b)であり1分子中に2以上の疎水基Aを有するものである場合、上記1分子中の2以上の疎水基として、上記4種の基のうち1種のみを有しているものであってもよいし、上記4種の基のうち2種以上を有しているものであってもよい。本発明の含フッ素重合体組成物製造方法における部分フッ素化化合物は、分子の集合体又は1分子中における上記(i)の疎水基として、上記4種の基のうち2種以上を有する場合、調製容易である点で、上記2種以上の基の末端がHのみであるもの又はFのみであるものが好ましい。本発明の含フッ素重合体組成物製造方法における部分フッ素化化合物は、反応生成物をそのまま用いてもよく、反応生成物としての部分フッ素化化合物は、分子の集合体又は1分子中において、通常、上記4種の基のうち2種以上を有している。
【0029】
上記(ii)の親水基は、−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である。
上記(ii)の親水基としては、乳化力、分散力の点で、−COOM、−SOM及び−OSOMが好ましく、−COOM及び−SOMがより好ましい。
上記Mとしては、重合後、加熱処理により容易に除去し得る点で、NHが好ましく、乳化力や分散力の点で、Li、Na、Kが好ましい。
【0030】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法において、上記部分フッ素化化合物は、上記(i)の疎水基と上記(ii)の親水基とが結合してなるものであれば、例えば、ベタイン化合物であってもよいが、乳化力や分散力の点で、アニオン性化合物であることが好ましい。
【0031】
上記部分フッ素化化合物は、下記一般式(1a)
A−Q (1a)
〔式中、Aは、上記(i)の疎水基を表し、Qは、−COOM、−SOM又は−OSOMを表す。Mは、上記(ii)の親水基に関し定義したものと同じ。〕で表される部分フッ素化化合物(a)、又は、
下記一般式(1b)
[A−(O)−]PO(OM) (1b)
〔式中、Aは、上記疎水基を表し、zは、0又は1を表す。x、y及びMは、上記(ii)の親水基に関し定義したものと同じ。〕で表される部分フッ素化化合物(b)として表すことができる。
【0032】
上記部分フッ素化化合物としては、乳化力や分散力の点で部分フッ素化化合物(a)が好ましい。
【0033】
上記部分フッ素化化合物(a)としては、例えば、下記一般式(1a−1)
X−Rf−(CHn3−Q (1a−1)
(式中、Xは、上記定義したものと同じ。Rfは、炭素数2〜12のパーフルオロアルキレン基を表し、n3は、1〜6の整数を表し、Qは、上記一般式(1a)で定義したものと同じ。)で表される部分フッ素化アルキレンアニオン性化合物(a1)が好ましい。
【0034】
上記一般式(1a−1)において、上記Xとしては、Fが好ましい。
上記一般式(1a−1)において、上記Rfの炭素数の好ましい下限は4であり、好ましい上限は10であり、より好ましい上限は6である。
上記一般式(1a−1)において、上記n3の好ましい上限は3であり、より好ましい上限は2である。
上記一般式(1a−1)において、X−Rf−(CHn3−は、上述の部分フッ素化アルキル基(T)の何れかであることが好ましい。
上記一般式(1a−1)において、上記Qは、−COOM又は−SOMであることが好ましい。
【0035】
上記部分フッ素化アルキレンアニオン性化合物(a1)としては、乳化力や分散力の点で、下記一般式(2)
Rf−(CHn1−Q (2)
(式中、Rfは、炭素数2〜12のパーフルオロアルキル基を表し、n1は、1〜6の整数を表し、Qは、上記一般式(1a)で定義したものと同じ。)で表されるパーフルオロアルキル−アルキレンアニオン性化合物が好ましい。
【0036】
上記一般式(2)において、上記Rfの炭素数の好ましい下限は4であり、好ましい上限は10、より好ましい上限は6である。
上記一般式(2)において、上記n1の好ましい上限は3であり、より好ましい上限は2である。
【0037】
上記一般式(2)で表されるパーフルオロアルキル−アルキレンアニオン性化合物としては、例えば、下記一般式(3)
F(CF(CHn2SOM (3)
(式中、mは、2〜12の整数を表し、n2は、1〜6の整数を表し、Mは、上記(ii)の親水基に関し定義したものと同じ。)で表されるパーフルオロアルキル−アルキレンスルホン酸化合物が挙げられる。
上記mの好ましい下限は4であり、好ましい上限は10、より好ましい上限は6である。
上記n2の好ましい上限は3であり、より好ましい上限は2である。
【0038】
上記部分フッ素化化合物(a)としては、また、下記一般式(1a−2)
X−Rf−(CHn4−Rf−Q (1a−2)
(式中、Xは、上記定義したものと同じ。n4は、1〜3の整数を表す。Rfは、炭素数3〜8のパーフルオロアルキレン基又はオシキアルキレン基を表す。Rfは、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分枝鎖状のパーフルオロアルキレン基を表す。Qは、上記一般式(1a)で定義したものと同じ。)で表される部分フッ素化アルキレンアニオン性化合物(a2)であってもよい。
【0039】
上記一般式(1a−2)において、上記Xとしては、Fが好ましい。
上記一般式(1a−2)において、上記Rfの炭素数の好ましい下限は4であり、好ましい上限は6である。
上記一般式(1a−2)において、上記Rfの炭素数の好ましい下限は2であり、好ましい上限は3である。
上記一般式(1a−2)において、上記n4の好ましい上限は2である。
上記一般式(1a−2)において、X−Rf−(CHn4−は、上述の部分フッ素化アルキル基(T)の何れかであることが好ましい。
上記一般式(1a−2)において、上記Qとしては、−COOM(Mは、上記(ii)の親水基に関し定義したものと同じ。)が好ましい。
【0040】
上記部分フッ素化アルキレンアニオン性化合物(a2)としては、乳化力、分散力の点で、
F−Rf−(CHn4−Rf−COOM
(式中、n4、Rf、Rf及びMは、上記定義したものと同じ。)
で表されるものが好ましい。
【0041】
上記部分フッ素化化合物(a)としては、また、下記一般式(1a−3)
−Rf(CHn5OCO−CHQ−CH−COO(CHn6Rf−X (1a−3)
(式中、X及びXは、同一又は異なって、H又はFを表す。Rf及びRfは、同一又は異なって、フッ素原子を1つ以上含有する炭素数1〜6のアルキレン基を表す。n5及びn6は、同一又は異なって、1〜3の整数を表す。Qは、上記一般式(1a)で定義したものと同じ。)で表される部分フッ素化ジエステル化合物(a3)であってもよい。
【0042】
上記一般式(1a−3)において、上記X及びXとしては、それぞれFであることが好ましい。
上記一般式(1a−3)において、Rf及びRfの炭素数の好ましい下限は2であり、好ましい上限は4である。
上記一般式(1a−3)において、X−Rf(CHn5−、及び、−(CHn6Rf−Xは、同一又は異なって、上述の部分フッ素化アルキル基(T)の何れかであることが好ましい。
上記一般式(1a−3)において、上記n5及びn6の好ましい上限は2である。
上記一般式(1a−3)において、上記Qとしては、−SOM又は−COOM(Mは、上記(ii)の親水基に関し定義したものと同じ。)が好ましく、−SOMがより好ましい。
【0043】
上記部分フッ素化ジエステル化合物(a3)としては、乳化力、分散力の点で、
F−Rf(CHn5OCO−CH(SOM)−CH−COO(CHn6Rf−F
(式中、Rf、Rf、n5、n6及びMは、上記定義したものと同じ。)
で表されるものが好ましい。
【0044】
上記「含フッ素重合体」は、炭素原子に結合しているフッ素原子を有している重合体である。
本発明において、上記含フッ素重合体は、フッ素含有単量体の1種又は2種以上を重合することにより得られるものであるが、含フッ素重合体としての基本的な性能を損なわない範囲で、フッ素非含有単量体をも共重合させて得られるものであってもよい。
【0045】
上記「フッ素含有単量体」は、炭素原子に結合しているフッ素原子を少なくとも1個有する単量体である。上記「フッ素含有単量体」は、公知のものであれば特に限定されないが、炭素数1〜8のものが好ましい。
上記フッ素含有単量体としては、例えば、フルオロオレフィン、環式のフッ素化された単量体、フッ素化アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0046】
上記フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン[TFE]、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン等が挙げられ、炭素原子2〜6個を有するものが好ましい。
【0047】
上記環式のフッ素化された単量体としては、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール[PDD]、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン[PMD]等が好ましい。
【0048】
上記フッ素化アルキルビニルエーテルとしては、例えば、式CY=CYOR又はCY=CYOROR(Yは、同一又は異なって、H又はFであり、Rは、水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換されている炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換されている炭素数1〜8のアルキレン基である。)で表されるものが挙げられる。好ましい上記フッ素アルキルビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[PMVE]、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[PEVE]、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]が挙げられる。
【0049】
上記フッ素非含有単量体としては、上記フッ素含有単量体と共重合性を有するものであれば特に限定されず、例えば炭化水素系単量体等が挙げられる。上記炭化水素性単量体は、フッ素以外のハロゲン原子、酸素、窒素等の元素、各種置換基等を有するものであってもよい。
【0050】
上記炭化水素系単量体としては、例えば、アルケン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、アルキルアリルエステル類等が挙げられる。
上記置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、グリシジル基、アミノ基、アミド基、芳香族系置換基等が挙げられる。
【0051】
上記フッ素含有単量体としては、得られる含フッ素重合体(A)がパーフルオロポリマーであれば耐熱性等の物性に優れ、取り扱いが容易となるので、パーフルオロ単量体であることがより好ましい。
【0052】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法において、上記含フッ素重合体としては特に限定されないが、例えば、非溶融加工性含フッ素重合体、溶融加工性含フッ素重合体、エラストマー性共重合体等が挙げられる。
【0053】
上記非溶融加工性含フッ素重合体としては、TFE単独重合体、変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]等が挙げられる。本明細書において、上記「変性PTFE」とは、TFEと、TFE以外の微量単量体との共重合体であって、非溶融加工性であるものを意味する。
上記微量単量体としては、例えば、上述のパーフルオロオレフィン、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、環式のフッ素化された単量体、パーフルオロ(アルキルエチレン)等が挙げられる。
変性PTFEにおいて、上記微量単量体に由来する微量単量体単位の全単量体単位に占める含有率は、通常0.001〜2モル%の範囲である。
【0054】
本明細書において、上記微量単量体単位等の「単量体単位」は、含フッ素重合体の分子構造上の一部分であって、対応する単量体に由来する部分を意味する。例えば、TFE単位は、含フッ素重合体の分子構造上の一部分であって、TFEに由来する部分であり、−(CF−CF)−で表される。上記「全単量体単位」は、含フッ素重合体の分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。
本明細書において、「全単量体単位に占める微量単量体単位の含有率(モル%)」とは、上記「全単量体単位」が由来する単量体、即ち、含フッ素重合体を構成することとなった単量体全量に占める、上記微量単量体単位が由来する微量単量体のモル分率(モル%)を意味する。
【0055】
上記溶融加工性含フッ素重合体としては、例えば、エチレン/TFE共重合体[ETFE]、TFE/HFP共重合体[FEP]、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[TFE/PAVE共重合体]等が挙げられる。
上記TFE/PAVE共重合体[PFA]としては、TFE/PMVE共重合体[MFA]、TFE/PEVE共重合体、TFE/PPVE共重合体等が挙げられ、なかでも、MFA、TFE/PPVE共重合体が好ましく、TFE/PPVE共重合体がより好ましい。
【0056】
上記エラストマー性共重合体として、TFE/プロピレン共重合体、HFP/エチレン共重合体、HFP/エチレン/TFE共重合体、PVDF、VDF/HFP共重合体、HFP/エチレン共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体等が挙げられる。
【0057】
上記含フッ素重合体(A)としては、耐熱性等に優れ、成形加工しやすい点で、パーフルオロポリマーであることが好ましい。上記パーフルオロポリマーとしては、TFE単独重合体、変性PTFE、FEP、MFA、TFE/PEVE共重合体、TFE/PPVE共重合体が好ましく、TFE単独重合体、変性PTFE、FEP、TFE/PPVE共重合体がより好ましい。
【0058】
上記含フッ素重合体(A)は、上記重合の反応条件、単量体の添加量等を適宜設定することにより、所望の分子量や組成にすることができる。
【0059】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法は、上記含フッ素重合体(A)とフッ素系界面活性剤とからなる重合生成物に酸化剤を接触させることよりなるものである。
【0060】
上記重合生成物は、含フッ素重合体(A)を1〜99質量%含有するものであれば、数平均分子量1000未満の低分子量物(オリゴマー)、上記フッ素系界面活性剤等の界面活性剤、重合開始剤、凝析剤、水性媒体等を含むものであってもよい。
【0061】
上記重合生成物が水性分散液又はディスパージョンである場合、上記含フッ素重合体(A)の好ましい下限は10質量%であり、好ましい上限は70質量%である。
上記重合生成物が乾燥粉末である場合、上記含フッ素重合体(A)の好ましい下限は70質量%であり、好ましい上限は90質量%である。
【0062】
上記酸化剤としては、上述の数平均分子量1000未満の低分子量物(オリゴマー)、上記フッ素系界面活性剤等の界面活性剤、重合開始剤、凝析剤等を酸化、分解し得るものであれば特に限定されず、例えば、次亜塩素酸、塩素、オゾン及び過酸化水素よりなる群から選択される少なくとも1種等が挙げられる。なかでも、次亜塩素酸、塩素及び過酸化水素が好ましい。
上記酸化剤は、上記接触時、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0063】
上記接触は、例えば、(I)上記酸化剤を気体として上記重合生成物中に拡散させる方法、(II)液体とした上記酸化剤を上記重合生成物に混合させる方法により行うことができる。
上記接触の条件は、使用する重合生成物の組成や量、上記酸化剤の種類等により適宜設定することができる。
【0064】
上記(I)の方法により上記接触を行う場合、上記重合生成物は、上記酸化剤に対する接触面積が大きく、上記酸化剤が拡散しやすい点で、スラリー、又は、乾燥粉末であることが好ましい。
上記スラリーを乾燥して得られる乾燥粉末、又は、上記乾燥粉末は、懸濁重合により得られるモールディングパウダーであってもよいし、乳化重合により得られるファインパウダーであってもよい。
【0065】
上記(I)の方法は、上記酸化剤の反応性の点で、通常、30〜300℃の温度で行うことが好ましい。上記温度の好ましい下限は100℃であり、好ましい上限は250℃である。
上記(I)の方法において、特に含フッ素重合体(A)が溶融加工可能な粉末である場合、酸化剤の拡散速度を高くする点で、含フッ素重合体(A)の融点より低い温度で接触を行うことが好ましい。
【0066】
上記(I)の方法を行う場合、安全性の点で、上記酸化剤は、空気、窒素、ヘリウム等の不活性ガスとの混合ガスとして使用することが好ましい。
上記(I)の方法において、上記酸化剤は、その用いる種類にもよるが、上記混合ガス全量の0.1〜30質量%の量で使用することがより好ましい。
【0067】
上記(I)の方法において、上記酸化剤は、接触開始前に全使用量を添加してもよいし、接触開始時より逐次添加してもよい。
上記逐次添加を行う場合、その添加速度は接触させる重合生成物の組成や使用量等に応じて、適宜設定することができる。
【0068】
上記(I)の方法は、通常、3〜24時間の間行うことが好ましい。上記(I)の方法は、所望の着色防止効果を得る点で、4時間以上で行うことがより好ましく、製造コスト、副反応抑制の点で、20時間以内で行うことがより好ましい。
【0069】
上記(II)の方法により上記接触を行う場合、効率良く酸化剤を接触することができる点で、上記重合生成物は水性分散液、ディスパージョン等の水性分散体であることが好ましい。
上記(II)の方法は、酸化剤の反応性の点で、通常、10〜100℃の温度で行うことが好ましい。酸化剤の反応性の点で、上記温度の好ましい下限は20℃であり、安全性、副反応抑制の点で、好ましい上限は85℃である。
【0070】
上記(II)の方法を行う場合、上記酸化剤は、通常、重合生成物の0.01〜5質量%の量で使用することが好ましい。
上記酸化剤は、所望の着色防止効果を得る点で、重合生成物の0.1質量%以上の量で使用することがより好ましく、安全性や経済的な点で、重合生成物の2質量%以下の量で使用することがより好ましい。
【0071】
上記(II)の方法は、通常、1〜24時間行うことが好ましい。上記(II)の方法は、所望の着色防止効果を得る点で、2時間以上で行うことがより好ましく、製造コスト、副反応抑制の点で、20時間以内で行うことがより好ましい。
上記(II)の方法では、上記酸化剤と重合生成物とを攪拌することが好ましい。
【0072】
上記(II)の方法において、上記酸化剤は、接触開始前に全使用量を添加してもよいし、接触開始時より逐次添加してもよい。
上記酸化剤を逐次添加する場合、その添加速度は接触させる重合生成物の組成や使用量等に応じて、適宜設定することができる。
【0073】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法は、上記酸化剤の接触を行うことにより、含フッ素重合体(B)を用いて成形加工を行う際の着色を防止することができる。
上記酸化剤の接触による着色防止効果の機構は明らかではないが、上記重合生成物中に存在し得る重合開始剤、界面活性剤、凝析剤、重合副生物のオリゴマー等の着色原因物質が、上記重合生成物を用いた成形加工時に酸化剤の酸化作用により分解することから上記着色防止効果が得られるものと考えられる。
【0074】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法は、上記重合生成物に酸化剤を接触させる工程を経て含フッ素重合体組成物を製造するものである。
上記含フッ素重合体組成物は、含フッ素重合体(B)からなる組成物である。上記含フッ素重合体組成物は、用いた重合生成物と同様の形態、即ち、水性分散体、ディスパージョン、スラリー、乾燥粉末又は造粒粉末の何れであってもよいし、これらの形態から成形加工により得られる成形体であってもよい。上記含フッ素重合体組成物としての成形体は、本明細書において、以下、「含フッ素重合体成形体」ということがある。
【0075】
本明細書において、上記「含フッ素重合体成形体」は、重合生成物に上記酸化剤を接触させ、成形加工を行うことにより得られるものである。上記成形加工は、目的とする含フッ素重合体成形体の種類に応じ、例えば含フッ素重合体(B)の融点以上のような高温での加熱を行うが、キャスト製膜のように上記加熱を行わない方法であってもよい。上記含フッ素重合体成形体の形状は、特に限定されない。
【0076】
上記含フッ素重合体成形体は、(a)重合生成物としてのスラリー、乾燥粉末又は造粒粉末に、上記酸化剤を接触させ、混練機等を用いて溶融混練することにより得られるペレット、(b)上記酸化剤を接触させて得られる含フッ素重合体(B)、又は、上記(a)により得たペレット、スラリー、乾燥粉末若しくは造粒粉末を成形機に投入して成形することにより得られる成形品、(c)重合生成物としての水性分散体又はディスパージョンに上記酸化剤を接触させ、被塗装物に塗装することにより被塗装物上に形成されるコーティング、(d)重合生成物としての水性分散体又はディスパージョンに上記酸化剤を接触させ、多孔質体等の基材に含浸したのち所望により加熱する含浸加工により形成される被膜、及び、(e)重合生成物としての水性分散体又はディスパージョンに上記酸化剤を接触させ、基材上に塗布し乾燥して得られる塗布膜を、所望により例えば水中への投入等により上記基材から剥離することよりなるキャスト製膜により得られるキャスト膜を含む概念である。上記(c)の塗装は、被塗装物に塗布し、必要に応じて乾燥した後、含フッ素重合体の融点以上の温度で焼成する工程からなる。
本明細書において、上記ペレットの製造、上記成形品の製造、上記コーティングの製造、上記含浸加工及び上記キャスト製膜を総称して「成形加工」ということがある。
【0077】
上記含フッ素重合体成形体は、例えば、(A)重合生成物が乾燥粉末、造粒粉末又はペーストである場合、上述の酸化剤との接触を行い、続いて成形加工することにより得ることができ、(B)重合生成物が水性分散液又はディスパージョンである場合、上述の酸化剤との接触を行った後、凝析等により粉末又はペーストを調製した後、成形加工することにより得ることができる。
【0078】
上記成形加工は、公知の方法により適宜行うことができる。
上記成形加工の方法のうち、上記ペレットの製造方法としては特に限定されず、例えば、含フッ素重合体からなる粉末を混練機又は押出機に投入して溶融混練することによりペレットを製造する方法等が挙げられる。
上記成形品の製造方法としては特に限定されず、例えば、圧縮成形、押出成形、ペースト押出成形、射出成形等が挙げられる。
上記コーティングの塗装方法としては特に限定されず、例えば、吹付け塗装、浸漬塗装、はけ塗り塗装、静電塗装等が挙げられる。
上記成形加工の条件は、成形加工の方法の種類、成形加工する重合生成物の組成や量等に応じて、適宜設定することができる。
【0079】
上述の本発明の含フッ素重合体組成物製造方法により製造された含フッ素重合体組成物もまた、本発明の一つである。
本発明の含フッ素重合体組成物は、上述したように、水性分散体、スラリー、乾燥粉末又は造粒粉末であってもよいし、上記水性分散体、上記スラリー、上記乾燥粉末又は造粒粉末を用いて得られる成形体であってもよい。
本発明の含フッ素重合体組成物は、上述の本発明の含フッ素重合体組成物製造方法により製造されたものであるので、成形加工時に着色されておらず、外観に優れている。
【0080】
本発明の含フッ素重合体組成物は、成形体である場合、即ち、上述の含フッ素重合体成形体である場合、XYZ表色系のY値が40以上100未満であることが好ましい。上記XYZ表色系のY値は、明るさを表す指標であり、物体の視感反射率や視感透過率に等しい値である。上記Y値は、目視による場合、大きいほど白色に近い色となり、値が小さくなるに伴い灰色を経て黒色に近い色となる。
本明細書において、上記XYZ表色系のY値は、CIE1931表色系に従い、室温にて、色彩色差計CR−300(ミノルタ社製)を用いて測定して得られるY値を、百分率(%)で表した値である。
【0081】
本発明の含フッ素重合体組成物は、成形体である場合、上記XYZ表色系のY値のより好ましい下限は50であり、更に好ましい下限は60である。
本発明の含フッ素重合体組成物は、成形体である場合、上記範囲内のXYZ表色系のY値を有するので、白色度が高く、着色がないので外観に優れている。
【発明の効果】
【0082】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法は、上述の構成よりなるので、着色せず、優れた外観を示す含フッ素重合体組成物を得ることができる。
本発明の含フッ素重合体組成物は、上記含フッ素重合体組成物製造方法により製造されたものであるので、白色度が高く、着色がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によって限定されるものではない。
【0084】
各実施例及び比較例において、以下の方法を用いて各測定を行った。
(1)Y値(XYZ表色系):CIE1931表色系に従い、室温にて、色彩色差計CR−300(ミノルタ社製)を用いて測定した。
(2)固形分濃度:水性分散液を150℃で1時間乾燥した時の質量減少より求めた。
(3)平均一次粒子径:固形分濃度を約0.02質量%に希釈し、単位長さに対する550nmの投射光の透過率と電子顕微鏡写真により決定された平均粒子径との検量線を基にして、上記透過率から間接的に求めた。
(4)標準比重(SSG):ASTM D−1457 69に従い、測定した。
【0085】
合成例1
内容量3リットルの攪拌翼付きステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水1.5リットル、パラフィンワックスを60g(融点60℃)及び界面活性剤1[F(CFCFCHCHSONa]を2500mg仕込み、系内をTFEで置換した。内温を70℃にし、内圧が0.78MPaGになるように、TFEを圧入し、0.6質量%の過硫酸アンモニウム[APS]水溶液5gを仕込み、反応を開始した。重合の進行に伴って重合系内の圧力が低下するので、連続的にTFEを追加して内圧を0.78MPaGに保ち、反応を継続した。重合開始11時間後にTFEをパージして重合を停止した。得られたTFE単独重合体水性分散体について、固形分濃度及び平均一次粒子径を測定した。
【0086】
合成例2
合成例1において、界面活性剤1を、界面活性剤2[H(CFCFCHOOCCH(SONa)CHCOOCH(CFCFH]に変更し、TFE単独重合体水性分散体を得た。得られたTFE単独重合体水性分散体について、固形分濃度及び平均一次粒子径を測定した。
【0087】
各合成例により得られた成形体の測定結果を表1に示す。なお、界面活性剤濃度及び固形分濃度は、得られたTFE単独重合体水性分散体に基づき算出した値である。
【0088】
【表1】

【実施例1】
【0089】
攪拌翼を備えた1000ml三口フラスコに、合成例1で得られたTFE単独重合体水性分散体143g及びイオン交換水357gを入れ希釈した後、内温25℃、50rpmで攪拌しながら、次亜塩素酸の5質量%水溶液10mlを1時間かけて滴下した。さらに、1時間攪拌後、500rpmで機械攪拌によって水性分散液を凝集し、水をろ別後、再度500mlのイオン交換水で洗浄し、180℃で6時間乾燥して、TFE単独重合体のファインパウダーを得た。得られたファインパウダーより、ASTM D−1457 69に従って成形体を得た。得られた成形体について、SSG及びY値を測定した。
【実施例2】
【0090】
攪拌翼を備えた1000ml三口フラスコに、合成例1で得られたTFE単独重合体水性分散体300g及びイオン交換水200gを入れ希釈した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。得られた成形体のSSG及びY値を測定した。
【実施例3】
【0091】
攪拌翼を備えた1000ml三口フラスコに、合成例1で得られたTFE単独重合体水性分散体143g及びイオン交換水357gを入れ希釈した後、内温80℃、50rpmで攪拌しながら、過酸化水素の2質量%水溶液10mlを1時間かけて滴下した。さらに、2時間攪拌後、50rpmで機械攪拌によって水性分散液を凝集し、水をろ別後、再度500mlのイオン交換水で洗浄し、180℃で6時間乾燥して、TFE単独重合体のファインパウダーを得た。得られたファインパウダーより、ASTM D−1457 69に従って成形体を得た。得られた成形体について、SSG及びY値を測定した。
【0092】
比較例1
攪拌翼を備えた1000ml三口フラスコに、合成例1で得られたTFE単独重合体水性分散体143g及びイオン交換水357gを入れ希釈した後、500rpmで機械攪拌によって水性分散液を凝集し、水をろ別後、再度500mlのイオン交換水で洗浄し、180℃で6時間乾燥して、PTFEのファインパウダーを得た。得られたファインパウダーより、ASTM D−1457 69に従って成形体を得た。得られた成形体について、SSG及びY値を測定した。
【0093】
比較例2
合成例1で得られたTFE単独重合体水性分散体に代えて合成例2で得られたTFE単独重合体水性分散体を用いた以外は比較例1と同様にして、成形体を作り、SSG及びY値を測定した。
【0094】
各実施例及び各比較例で得られた成形体の測定結果について、表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2に示したように、実施例1〜3で得られた成形体と比較例1〜2で得られた成形体との間で、SSGは、ほぼ同じ値であるが、Y値は、実施例1〜3で得られた成形体の方が比較例1〜2で得られた成形体より高い値であった。このことから、酸化剤処理を行うことにより、成形体を構成する含フッ素重合体(A)の分子量を変化させることなく、着色を防止できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の含フッ素重合体組成物製造方法は、着色がなく、優れた外観を有する含フッ素重合体組成物を提供することができる。
本発明の含フッ素重合体組成物は、上記含フッ素重合体組成物製造方法により製造されたものであるので、白色度が高く着色がないので、美観が求められる各種コーティングや成形品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素重合体(A)とフッ素系界面活性剤とからなる重合生成物に酸化剤を接触させることにより含フッ素重合体(B)からなる含フッ素重合体組成物を製造する含フッ素重合体組成物製造方法であって、
前記フッ素系界面活性剤は、(i)C−H結合とC−F結合とを有する疎水基と、(ii)−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である親水基とが結合してなる部分フッ素化化合物からなるものである
ことを特徴とする含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項2】
フッ素系界面活性剤を用いて水性媒体中で重合することにより得られた含フッ素重合体(A)からなる重合生成物に酸化剤を接触させることにより含フッ素重合体(B)からなる含フッ素重合体組成物を製造する含フッ素重合体組成物製造方法であって、前記フッ素系界面活性剤は、(i)C−H結合とC−F結合とを有する疎水基と、(ii)−COOM、−SOM、−OSOM、−PO(OM)及び(−O)−PO(OM)〔式中、Mは、NH、Li、Na、K又はHを表し、x=(3−y)であり、yは、1又は2を表す。〕よりなる群から選択される1種である親水基とが結合してなる部分フッ素化化合物からなるものである
ことを特徴とする含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項3】
疎水基は、エーテル酸素を主鎖に有しているか又は有していない部分フッ素化アルキル基である請求項1又は2記載の含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項4】
疎水基は、主鎖に−CH−を有しているものである請求項1、2又は3記載の含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項5】
部分フッ素化化合物は、下記一般式(2)
Rf−(CHn1−Q (2)
(式中、Rfは、炭素数2〜12のパーフルオロアルキル基を表し、n1は、1〜6の整数を表し、Qは、−COOM、−SOM又は−OSOMを表す。Mは、前記と同じ。)で表されるパーフルオロアルキル−アルキレンアニオン性化合物である請求項1又は2記載の含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項6】
部分フッ素化化合物は、下記一般式(3)
F(CF(CHn2SOM (3)
(式中、mは、2〜12の整数を表し、n2は、1〜6の整数を表し、Mは、前記と同じ。)で表されるパーフルオロアルキル−アルキレンスルホン酸化合物である請求項1又は2記載の含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項7】
酸化剤は、次亜塩素酸、塩素、オゾン及び過酸化水素よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1、2、3、4、5又は6記載の含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項8】
含フッ素重合体(A)は、パーフルオロポリマーである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の含フッ素重合体組成物製造方法。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の含フッ素重合体組成物製造方法により製造された含フッ素重合体組成物であって、
前記含フッ素重合体組成物は、水性分散体、スラリー、乾燥粉末、造粒粉末、又は、前記水性分散体、前記スラリー、前記乾燥粉末若しくは前記造粒粉末を用いて得られる成形体である
ことを特徴とする含フッ素重合体組成物。
【請求項10】
含フッ素重合体組成物は、成形体であり、
前記成形体は、XYZ表色系のY値が40以上100未満である請求項9記載の含フッ素重合体組成物。

【国際公開番号】WO2005/033150
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514448(P2005−514448)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014391
【国際出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】