説明

含ヘテロ芳香族化合物および光学材料

【課題】屈折率の分散特性(アッペ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(異常分散特性)、色収差補正機能の高い特性を有する含ヘテロ芳香族化合物および光学材料を提供する。
【解決手段】下記の式1で表される構造からなる含ヘテロ芳香族化合物。前記へテロ環化合物が、sp2炭素を介して少なくとも2つ以上結合していることが好ましい。


(式中、Pは芳香族化合物、Qは少なくとも1つ以上のπ電子を有するヘテロ環化合物、Cはsp2炭素原子、Mは酸素を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ヘテロ芳香族化合物および光学材料に関し、特に屈折率の分散特性(アッペ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(異常分散特性)特性を有する含ヘテロ芳香族化合物、光学材料および光学用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に化合物の屈折率は、短波長側になるにつれ徐々に屈折率が高くなる。この屈折率の波長分散性を計る指標として、アッベ数(νd)や2次分散特性(θg,F)が挙げられる。このアッペ数やθg、Fは、それぞれの化合物特有の値であるが、多くの場合ある一定の範囲内に収まっている。従来の光学材料の屈折率とアッベ数を図1に示す。
【0003】
なお、アッベ数(νd)、2次分散特性(θg,F)は以下の式で表される。
アッベ数[νd]=(nd−1)/(nF−nC)
2次分散特性[θg,F]=(ng−nF)/(nF−nC)
(ndは波長587.6nmでの屈折率、nFは波長486.1nmでの屈折率、nCは波長656.3nmでの屈折率、ngは波長435.8nmでの屈折率)
【0004】
しかし、化合物の構造を詳細に設計することにより、前記一定の範囲内から外れた屈折率異常分散特性(高θg,F)を有する化合物も合成されている。例えば、一般的な樹脂であるポリビニルカルバゾール(図1中のA)は、汎用材料よりも異常分散特性(高θg,F)を有している。
【0005】
一般に、屈折光学系は、分散特性の異なる硝材を組み合わせることによって色収差を減らしている。例えば、望遠鏡等の対物レンズでは分散の小さい硝材を正レンズ、分散の大きい硝材を負レンズとし、これらを組み合わせて用いることで軸上に現れる色収差を補正している。この為、レンズの構成、枚数が制限される場合や使用される硝材が限られている場合などでは、色収差を十分に補正することが非常に困難となる場合がある。このような課題を解決する方法の一つとして、異常分散特性を有するガラス材料を活用した光学素子類の設計が行われている(特許文献1乃至6)。
【0006】
また、色収差補正機能に優れる非球面形状等を有する光学素子を製造する場合、光学ガラスを材料として用いるより、球面ガラス等の上に樹脂を成形等する方が量産性や成形性、形状の自由度、軽量性に優れるという利点がある。しかし、従来樹脂の光学特性は、図1に示すように限られた一定の範囲内に収まっており、特異な分散特性を示す樹脂類は非常に少ない。
【0007】
一方、本発明者らは、従来よりも高い色収差補正機能を光学素子に付与するためには、光学素子の材料特性としてθg,Fで表される2次分散特性が汎用の材料から外れて、より大きい特性(異常分散特性)であることが光学設計上、極めて有効であることに着目した。具体的には、図1中、νd、θg,Fの関係がガラス若しくはポリマーの汎用材料のプロットからずれている範囲B(νd<31、θg,F>0.69)の特性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−313047号公報
【特許文献2】特開2004−212512号公報
【特許文献3】特開2004−252196号公報
【特許文献4】特開2002−098895号公報
【特許文献5】特開2007−178825号公報
【特許文献6】特開2007−186421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図1中の範囲B内の特性(高θg、F)を有する材料で実用性のあるものが現状存在しない。
本発明は、この様な背景技術に鑑みて、屈折率の分散特性(アッペ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(異常分散特性)、色収差補正機能の高い特性を有する含ヘテロ芳香族化合物、光学材料および光学用樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する含ヘテロ芳香族化合物は、芳香族化合物に、π電子を有するへテロ環化合物が、sp2炭素原子を介して少なくとも1つ以上結合していることを特徴とする。
【0011】
また、前記含ヘテロ芳香族化合物が、下記の(式1)で表される構造からなることが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、Pは芳香族化合物、Qは少なくとも1つ以上のπ電子を有するヘテロ環化合物、Cはsp2炭素原子、Mは酸素を表す。)
また、上記の課題を解決する光学材料は、前記含ヘテロ芳香族化合物を含有することを特徴とする。
また、上記の課題を解決する光学用樹脂組成物は、前記光学材料を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屈折率の分散特性(アッペ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(異常分散特性)、色収差補正機能の高い特性を有する含ヘテロ芳香族化合物、光学材料および光学用樹脂組成物を提供することができる。
【0015】
また、本発明によれば、図1中の範囲B内の特性を有する光学材料を提供することができる。該光学材料により成形した光学素子を用いることで、効率良く色収差を取り除くことができる。そのため、光学系をより軽量短小化することができる。なお、以下で特性(高θg、F)とは図1中の範囲B内のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】市販されている光学材料の屈折率とアッベ数の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に特定されない。
本発明に係る含ヘテロ芳香族化合物は、芳香族化合物に、π電子を有するへテロ環化合物が、sp2炭素原子を介して少なくとも1つ以上結合していることを特徴とする。
【0018】
本発明者等は、図1中の範囲B内の特性を満たす材料について鋭意検討を重ねた結果、π電子を多く含有し適度に長い共役構造を有する化合物が特性(高θg、F)と実用性を兼ね備えた材料になることを見出した。すなわち、芳香族化合物にπ電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して少なくとも1つ以上結合している含ヘテロ芳香族化合物である。好ましくは、芳香族化合物にπ電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して少なくとも2つ以上結合している含ヘテロ芳香族化合物のほうがより高θg,Fになるため好適である。
【0019】
一般に、芳香族化合物に代表されるπ電子を多く含有し長い共役構造を有する化合物は、汎用材料よりもバンドギャップが小さいため、紫外領域の吸収端が可視光領域側にシフトしている。その影響により、前記π電子を多く含有し長い共役構造を有する化合物は、高屈折率特性を有するようになる。この高屈折率特性は、短波長側により影響を与えるため、必然的に高θg、F化が進行し化合物の特性は図1中の該範囲B内に収まるようになる。しかし、単純にπ電子を多く含有し、長い共役構造を有するだけでは実用性のある材料は得られない。特に大きな芳香族化合物(π電子を多く含有)は、合成性や他の化合物との相溶性、着色の点において課題が残る。また、π電子を多く含有し長い共役構造を有する非芳香族化合物(ポリエン等)は、電子環状反応やDiels−Alder反応等が室温で進行しやすくなり、保存安定性が非常に低下する。さらに、ポリアセチレンやポリチオフェン等のように、π電子を多く含有し、長い共役構造を有する化合物は、着色する可能性もある。そのため、前記π電子を多く含有し適度に長い共役構造を有する化合物が望ましい。
【0020】
前記π電子を多く含有し適度に長い共役構造を実現する手段としては、sp2炭素を介して芳香族化合物と、π電子を有するヘテロ環化合物を結合させることが好適である。その理由は、前記芳香族化合物中の置換基と前記sp2炭素上の置換基の立体反発で、芳香族化合物の平面とsp2炭素の平面が同一平面上からねじれ、共役構造が芳香族化合物側とsp2炭素を含む前記π電子を有するヘテロ環化合物側それぞれで適度な長さになるからである。適度な長さの共役構造になることで、電子環状反応やDiels−Alder反応等に対する保存安定性や相溶性、着色等の実用性の改善も可能となる。また、前記π電子を有するヘテロ環化合物中のヘテロ原子は、前記含ヘテロ芳香族化合物の特性向上に寄与している。すなわち、へテロ原子上の非共有電子対が適度な長さを有する共役構造の適度な伸長あるいは芳香族化に良い影響を与えているからである。
【0021】
またヘテロ原子の導入により、前記含ヘテロ芳香族化合物の保存安定性も改善される。例えば、π電子を有する5員環化合物のシクロペンタジエン(ヘテロ原子非含有)は、反応性が非常に高く、常温では常に2量体としてしか存在しない。一方、同様の骨格でヘテロ原子が導入された5員環化合物のチオフェン、フラン、ピロール等は、ヘテロ原子の非共有電子対による芳香族化で2量体ではなく単量体として安定に存在する。
【0022】
以上の理由により、芳香族化合物に、π電子を有するヘテロ環化合物が、sp2炭素を介して結合している含ヘテロ芳香族化合物が前記課題を解決する手段として好適である。このことは、DFTによるシミュレーション結果からも支持されている。前記へテロ環化合物が、sp2炭素を介して少なくとも2つ以上結合していることが好ましい。
【0023】
本発明に係る含ヘテロ芳香族化合物は、下記の式1で表される構造からなる化合物が好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
式1中、Pは芳香族化合物、Qは少なくとも1つ以上のπ電子を有するヘテロ環化合物、Cはsp2炭素原子、Mは酸素を表す。
本発明において、π電子とは、π結合を形成している電子を表す。また、sp2炭素原子とは、平面構造で2つの単結合と1つの二重結合を有する炭素を表す。
【0026】
前記芳香族化合物としては、具体的にはベンゼン系、ナフタレン系、アントラセン系、フルオレン系、ビフェニル系、ジアリールエーテル系、ジアリールスルフィド系、ジアリールケトン系、ビナフタレン系、ピリジン系、カルバゾール系、チアントレン系、ジベンゾジオキサン系、ベンゾフラン系、アセナフチレン系、アクリジン系、ベンゾチアゾール系、キノリン系、イソキノリン系、ピレン系、インダゾール系、インドール系、インダン系、インデン系、ベンゾアントラセン系、ベンゾキノリン系、ベンゾオキサゾール系、ビキノリン系、フェナントレン系、フェナントロリン系、ビフルオレニリデン系、フェロセン系、フェノキサチイン系、ジベンゾチオフェン系、ジベンゾフラン系等であって、これらはエーテル部位、エポキシ部位、スルフィド部位、チイラン部位、エステル部位、アミド部位、ウレタン部位、カルボニル部位、イミン部位、エナミン部位、オキシム部位、イソシアナート部位、ニトリル部位、カーボナート部位、チオカーボナート部位、オレフィン部位、イソニトリル部位等を含んでも良く、これらに限定されない。ここで、系とは該化合物を主骨格とする構造であることを意味する。
【0027】
ベンゼン系としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ニトロベンゼン、安息香酸、安息香酸エステル、フェノール、クレゾール、アニソール、チオアニソール、アニリン、トルイジン等であるがこれらに限定されない。ナフタレン系としては、ナフタレン、ナフトール、一置換ナフタレン、2,6−二置換ナフタレン、1,8−二置換ナフタレン、1,5−二置換ナフタレン等であるがこれらに限定されない。フルオレン系としては、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等の9,9’−二置換フルオレン等であるがこれらに限定されない。
【0028】
以下に本発明に用いられる芳香族化合物の好ましい具体例を示す。
(1)芳香族化合物が、下記の式2で表される化合物からなることが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、Y1からY6の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0031】
すなわち、好ましくは、前記芳香族化合物が式2で表される構造であって、式2中のY1からY6には少なくとも前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が一つ以上ある含ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、式2中のY1からY6には、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が二つ以上あることが、より高θg,Fになるため望ましい。さらに好ましくは、合成上と特性上(高θg,F)の観点から、式2中のY1、Y4にはπ電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、Y2、Y3、Y5、Y6は水素原子であることが望ましい。
【0032】
また、式2中のY1からY6の中で、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。さらに好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基である。さらに好ましくは、市販材料から容易に合成できるため水素原子である。
【0033】
また、式2で表される構造に導入される前記アルキル基としては、炭素数1から3ものが好ましく、炭素数が4以上になると特性(高θg、F)が低下するため望ましくない。具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、プロパルギル等であるがこれに限られたものではない。好ましくは、炭素数が大きくなると特性(高θg、F)が低下する可能性があるため、メチルである。
【0034】
一方、式2で表される構造に導入される前記アルケニル基としては、炭素数1から3のものが良く、炭素数が4以上になると特性(高θg、F)が低下するため望ましくない。具体的には、ビニル、プロペニル、イソプロペニル等であるがこれに限られたものではない。好ましくは、炭素鎖が長くなると特性(高θg、F)が低下することと合成上の容易さよりビニルである。
【0035】
また式2で表される構造に導入される前記アルキニル基としては、合成上の容易さよりフェニルアセチレニルであるがこれに限られたものではない。
また式2で表される構造に導入される前記アリール基としては、アリール基上の炭素置換基の炭素数が0から3のものが良く、炭素数が4以上になると特性(高θg、F)が低下するため望ましくない。具体的には、フェニル、4−ビニルフェニル、4−アリルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メチルフェニル、4−メチルチオフェニル、4−ニトロフェニル、4−クロロフェニル、4−ブロモフェニル、4−フルオロフェニル等であるがこれらに限られたものではない。
【0036】
また式2で表される構造に導入されるアリル基としては、2−プロペニル基であるがこれに限られたものではない。
また式2で表される構造に導入されるアルコキシ基としては、炭素数1から3あるいはフェニル上の炭素数が0から3のものが良く、炭素数が4以上になると特性(高θg、F)が低下するため望ましくない。具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ、4−ビニルフェノキシ、4−メチルチオフェノキシ、4−ニトロフェノキシ、4−クロロフェノキシ、4−ブロモフェノキシ、4−フロオロフェノキシ等であるがこれらに限られたものではない。
【0037】
また式2で表される構造に導入されるカルボニルオキシ基としては、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アセチルオキシ等であるがこれらに限られたものではない。
(2)芳香族化合物は、下記の式3で表される構造からなる化合物が好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
(式中、Y39からY46の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。A5、A6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。)
【0040】
すなわち、少なくとも前記芳香族化合物が式3で表される構造であって、式中のY39からY46には少なくとも前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が一つ以上ある含ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、式3中のY39からY46には、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が二つ以上あることが、より高θg,Fになるため望ましい。さらに好ましくは、合成上と特性上(高θg,F)の観点から式3中のY40、Y44が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であることが望ましい。
【0041】
このとき、式3中のY39からY46の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y40、Y44)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限られるものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY39、Y41からY43、Y45、Y46が水素原子である。
【0042】
また、式3中のY42、Y46が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であっても良い。このとき、式4中のY39からY46の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y42、Y46)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限ったものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY39からY41、Y43からY45が水素原子である。
【0043】
式3中のA5、A6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基である。
また、式3で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(3)芳香族化合物は、下記の式4で表される構造からなる化合物が好ましい。
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、Y47からY54の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。A7、A8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。)
【0046】
前記芳香族化合物が式4で表される構造であって、式4中のY47からY54には少なくとも前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が一つ以上ある含ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、式4中のY47からY54には、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が二つ以上あることが、より高θg,Fになるため望ましい。
【0047】
さらに好ましくは、合成上と特性上(高θg,F)の観点から式4中のY48、Y53が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であることが望ましい。このとき、式4中のY47からY54の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y48、Y53)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限ったものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY47、Y49からY52、Y54が水素原子である。
【0048】
式4中のA7、A8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基である。
また、式4で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(4)芳香族化合物は、下記の式5で表される構造からなる化合物が好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
(式中、Y55からY62の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0051】
前記芳香族化合物が式5で表される構造であって、式5中のY55からY62には少なくとも前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が一つ以上ある含ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、式5中のY55からY62には、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が二つ以上あることが、より高θg,Fになるため望ましい。
【0052】
さらに好ましくは、合成上と特性上(高θg,F)の観点から、式5中のY56、Y60が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であることが望ましい。このとき、式5中のY55からY62の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y56、Y60)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限ったものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY55、Y57からY59、Y61、Y62が水素原子である。
【0053】
また、式5で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(5)芳香族化合物は、下記の式6で表される構造からなる化合物が好ましい。
【0054】
【化7】

【0055】
(式中、Y63からY70の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0056】
すなわち、前記芳香族化合物が式6で表される構造であって、式6中のY63からY70には少なくとも前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が一つ以上ある含ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、式7中のY63からY70には、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が二つ以上あることが、より高θg,Fになるため望ましい。
【0057】
さらに好ましくは、合成上と特性上(高θg,F)の観点から、式6中のY65、Y68が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であることが望ましい。このとき、式6中のY63からY70の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y65、Y68)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限ったものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY63、Y64、Y66、Y67、Y69、Y70が水素原子である。
【0058】
また、式6で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(6)芳香族化合物は、下記の式7で表される構造からなる化合物が好ましい。
【0059】
【化8】

【0060】
(式中、Y71からY80の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【0061】
すなわち、前記芳香族化合物が式7で表される構造であって、式7中のY71からY80には少なくとも前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が一つ以上ある含ヘテロ芳香族化合物である。より好ましくは、式7中のY71からY80には、前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位が二つ以上あることが、より高θg,Fになるため望ましい。
【0062】
さらに好ましくは、合成上と特性上(高θg,F)の観点から式7中のY71、Y80が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であることが望ましい。このとき、式7中のY71からY80の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y71、Y80)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限ったものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY72からY79が水素原子である。また、式7中のY73、Y78が前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位であっても良い。このとき、式7中のY71からY80の中で前記π電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合している部位(Y73、Y78)以外の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限ったものではない。好ましくは、合成上の容易さから水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基である。より好ましくは、市販材料から容易に合成できるためY71、Y72、Y74からY77、Y79、Y80が水素原子である。
【0063】
また、式7で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
【0064】
次に、本発明に用いられるπ電子を有するヘテロ環化合物について説明する。
前記π電子を有するヘテロ環化合物としては、O、N、S、Si、P、Ge等を含んだ環状化合物であれば何でも良くこれらに限定されない。好ましくは、生成物の安定性や試薬の入手しやすさ等の観点より、O、N、Sをヘテロ原子とするヘテロ環化合物が望ましい。具体的には、チオフェン系、ベンゾチオフェン系、ジベンゾチオフェン系、フラン系、ベンゾフラン系、ジベンゾフラン系、ピロール系、ベンゾピロール系、カルバゾール系、ピリジン系、ピリミジン系、ピリダジン系、ピラジン系、キノリン系、イソキノリン系、チアゾール系、イミダゾール系、インドール系、インダゾール系、ナフチリジン系、キノキサリン系、フェナントロリン系、オキサゾール系、ピラゾール系、イソオキサゾール系、イソチアゾール系等であるがこれらに限定されない。
【0065】
以下に、本発明に用いられるπ電子を有するヘテロ環化合物の具体例を示す。
π電子を有するヘテロ環化合物は、下記の式8ないし式11のいずれかの化合物であるのが好ましい。
(7)ヘテロ環化合物が、下記の式8で表される化合物からなることが好ましい。
【0066】
【化9】

【0067】
(式中、X1は前記sp2炭素と結合しており、X2からX4は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【0068】
すなわち、前記π電子を有するヘテロ環化合物が、式8で表される構造であって、式8中のX1は、前記芳香族化合物とsp2炭素を介して結合している部位であり、残りのX2からX4の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基等であり、これらは、エーテル、スルフィド、ケトン、エステル、アクリル、メタクリル等を含んでも良くこれらに限定されない。好ましくは、合成上の観点からX2、X3が水素原子の場合はX4が水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基であることが望ましく、X3、X4が水素原子の場合は、X2が水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基であることが望ましい。
【0069】
また、式8で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(8)ヘテロ環化合物が、下記の式9で表される化合物からなることが好ましい。
【0070】
【化10】

【0071】
(式中、X8は前記sp2炭素と結合しており、X5からX7は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【0072】
すなわち、前記π電子を有するヘテロ環化合物が式9で表される構造であっても良い。このとき、式9中のX8は、前記芳香族化合物とsp2炭素を介して結合している部位であり、残りのX5からX7の置換基としては、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基等であり、これらは、エーテル、スルフィド、ケトン、エステル、アクリル、メタクリル等を含んでも良く、これらに限定されない。好ましくは、合成上の観点からX6、X7が水素原子の場合はX5が水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基であることが望ましく、X5、X6が水素原子の場合は、X7が水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基であることが望ましい。
【0073】
また、式9で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(9)ヘテロ環化合物が、下記の式10で表される化合物からなることが好ましい。
【0074】
【化11】

【0075】
(式中、X9は前記sp2炭素と結合しており、X10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【0076】
すなわち、前記π電子を有するヘテロ環化合物が式10で表される構造であっても良い。このとき、式10中のX9は、前記芳香族化合物とsp2炭素を介して結合している部位であり、X10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基等であり、これらは、エーテル、スルフィド、ケトン、エステル、アクリル、メタクリル等を含んでも良く、これらに限定されない。好ましくは、合成上の容易さと生成物の安定性、特性(高θg、F)より、X10としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基であることが望ましい。
【0077】
また、式10で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
(10)ヘテロ環化合物が、下記の式11で表される化合物からなることが好ましい。
【0078】
【化12】

【0079】
(式中、X11は前記sp2炭素と結合しており、X12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【0080】
すなわち、前記π電子を有するヘテロ環化合物が式11で表される構造であっても良い。このとき、式11中のX11は、前記芳香族化合物とsp2炭素を介して結合している部位であり、X12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基等であり、これらは、エーテル、スルフィド、ケトン、エステル、アクリル、メタクリル等を含んでも良く、これらに限定されない。好ましくは、合成上の容易さと生成物の安定性、特性(高θg、F)より、X12としては水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基であることが望ましい。
【0081】
また、式11で表される構造に導入される前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基の好ましい具体的な化合物としては、前記式1で示した化合物と同様である。
【0082】
次に、本発明に係る含ヘテロ芳香族化合物の製造方法について一例を挙げて説明する。
前記芳香族化合物にπ電子を有するヘテロ環化合物がsp2炭素を介して結合していることを特徴とする含ヘテロ芳香族化合物は、反応式12あるいは反応式13から反応式15で表される代表的な2通りの合成ルートによって得ることができる。反応式12の合成ルートは、強酸条件下で行うため、原料や生成物が強酸性条件下で安定でなければならない。一方反応式13から反応式15で表される合成ルートは、反応式12の合成ルートに比べて温和な条件下であるため、強酸性条件下において不安定な化合物を原料や生成物として扱うことが可能である。なお、反応式12から反応式15で表された合成ルートは、前記含ヘテロ芳香族化合物の代表的な合成ルートの一例であり、これらに限定されるわけではない。
【0083】
【化13】

【0084】
【化14】

【0085】
【化15】

【0086】
【化16】

【0087】
反応式12は、Friedel−Craftsアシル化反応を活用した合成ルートである。使用する溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル系、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン系、ニトロメタン、ニトロエタン等の含窒素系などが挙げられるが、これらに限られない。反応条件等を考慮すると、好ましくはニトロメタン、ニトロエタンである。
【0088】
また、前記Friedel−Craftsアシル化反応で用いる酸試薬としては、遷移金属塩類やトリフルオロメタンスルホン酸等の強酸が挙げられる。遷移金属としては、Al、Si、Sc、Ti、Fe、Ga、Ge、Y、Zr、In、Sn等が挙げられるが、これらに限られたものではない。塩の種類としては、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等が挙げられるが、これらに限られたものではない。一般的なFriedel−Craftsアシル化反応ではAlClが用いられる。また、反応の進行度合によっては、様々な手段で反応を促進させても良い。例えば、通常加熱、マイクロ波による加熱、マイクロリアクタ等である。但し、用いる酸試薬によっては、加熱することで副生成物が多く生成することもある。
【0089】
反応式13は、前記π電子を有するヘテロ環化合物に置換基が導入されている前記含ヘテロ芳香族化合物の合成中間体であるジアルデヒド体の合成ルートの一つであってこれに限定されない。反応式13に用いられる芳香族化合物のジブロモ化(ヨウ素化でも良い)は、NBS(あるいはNIS)あるいは臭素(あるいはヨウ素)により進行する。NBS(NIS)を用いる際は、反応促進剤として少量の酸触媒を添加しても良い。
【0090】
また、ジブロモ化(ヨウ素化)の際の反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン系、ジメチルホルムアミド等の含窒素系等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
ジブロモ化(ヨウ素化)した芳香族化合物は、有機金属種を作用させた後にDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)と反応させてジアルデヒドとする。このときの有機金属種としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、イソプロピルグリニャール試薬等が挙げられるがこれらに限定されない。また、金属Mgを直接作用させてグリニャール試薬とした後にDMFと反応させても良い。これらの反応の溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系が望ましい。
【0092】
反応式14は、前記π電子を有するヘテロ環化合物に置換基が導入されている前記含ヘテロ芳香族化合物の合成ルートの一つであってこれに限定されない。2,5−ジハロチオフェンに有機金属試薬を作用させてトランスメタル化した後、脱離基を有する置換基と反応させることで置換基を有するチオフェンが合成できる。このとき、2,5−ジハロチオフェンのハロゲン(X)としては、ヨウ素、臭素、塩素であって、二つとも同じハロゲンである必要はない。好ましくは、ヨウ素は化合物の安定性が低く、塩素は反応性が低いため、臭素である。
【0093】
トランスメタル化反応で用いる有機金属試薬としては、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、メチルリチウム、イソプロピルグリニャール試薬等であるがこれらに限定されない。また、リチウム、マグネシムを作用させて直接トランスメタル化しても良く、金属はこれらに限ったものではない。該反応の反応溶媒としては、エーテル系のものが良く、具体的にはジエチルエーテル、ジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等であるがこれらに限定されない。前記脱離基を有する置換基の脱離基としては、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素、アルコキシ、アセトキシ、トリフルオロアセトキシ、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、p−トルエンスルホニルオキシ、アルキルチオ等であるがこれらに限定されない。
【0094】
得られた置換基を有するチオフェンに有機金属試薬を作用させることでトランスメタル化し、別途調製した(反応式13参照)ジアルデヒドと反応させることで前記含ヘテロ芳香族化合物の前駆体であるジアルコール体が合成できる(反応式14参照)。このときの有機金属試薬としては、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、メチルリチウム、イソプロピルグリニャール試薬等であるがこれらに限定されない。また、リチウム、マグネシムを作用させて直接トランスメタル化しても良く、金属はこれらに限ったものではない。該反応の反応溶媒としては、エーテル系のものが良く、具体的にはジエチルエーテル、ジメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等であるがこれらに限定されない。
【0095】
次に、得られたジアルコール体を既知の方法により酸化することで、前記π電子を有するへテロ環化合物に置換基が導入された含ヘテロ芳香族化合物が合成できる(反応式15参照)。酸化反応としては、既知の方法であれば特に制限無く利用できる。酸化剤としては、オゾン、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、塩素酸カリウム、ニクロム酸カリウム、臭素酸ナトリウム、ハロゲン、四酸化オスミウム、二酸化マンガン、DMSO、デス・マーチン試薬、過酢酸、mCPBA、クロム酸、酸化鉛、TPAP等であるがこれらに限定されない。但し、過酸化物類を利用する場合、ヘテロ原子の酸化に注意する必要がある。
【0096】
以上の手法により、前記π電子を有するへテロ環化合物に置換基が導入されている前記含ヘテロ芳香族化合物が合成できるが、この手法に限られない。
次に、本発明に係る光学材料について説明する。本発明の光学材料は、上記の含ヘテロ芳香族化合物と重合開始剤、さらに必要に応じて光増感剤を含有する組成物からなる。重合開始剤には、光照射によりラジカル種を発生するものやカチオン種を発生するもの、熱によりラジカル種を発生するもの等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0097】
上記光学材料は、必要に応じて汎用樹脂と混合し、光学用樹脂組成物として利用することも可能である。本発明の光学用樹脂組成物に含有される汎用樹脂の含有量は、光学用樹脂組成物全体に対して0.01重量%以上50.00重量%以下、好ましくは0.01重量%以上30重量%以下が望ましい。
【0098】
光照射によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、2―ベンジル―2―ジメチルアミノ―1―(4―モルフォリノフェニル)―1―ブタノン、1―ヒドロキシ―シクロヘキシル―フェニルケトン、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニル―プロパン―1―オン、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド、4―フェニルベンゾフェノン、4―フェノキシベンゾフェノン、4,4’―ジフェニルベンゾフェノン、4,4’―ジフェノキシベンゾフェノン等であるがこれらに限定されない。また、光照射によりカチオン種を発生する重合開始剤としては、イルガキュア250が好適な重合開始剤として挙げられるがこれに限定されない。
【0099】
さらに、熱によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t―ブチルパーオキシピバレート、t―ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t―ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t―ブチルパーオキシネオデカノエート、t―ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0100】
光として紫外線等を照射して重合を開始させる場合には、公知の増感剤等を使用することもできる。増感剤の代表的なものとしては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0101】
なお、重合可能な樹脂成分に対する光重合開始剤の添加比率は、光照射量、更には、付加的な加熱温度に応じて適宜選択することができる。また、得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて、調整することもできる。
【0102】
本発明の光学材料の硬化・成形に用いる光重合開始剤の添加量は、重合可能な成分に対して0.01重量%以上10.00重量%以下の範囲が好ましい。光重合開始剤は樹脂の反応性、光照射の波長によって1種類のみで使用することもできるし、2種類以上を併用して使用することもできる。
【0103】
また、本発明の光学材料には、汎用樹脂を混合することで、粘度や密度、光学特性、着色度合、硬化性を調整した光学用樹脂組成物にすることもできる。汎用樹脂の量が多くなると特性(高θg、F)低下の可能性があるため、汎用樹脂の割合は、光学用樹脂組成物全体に対して0.01重量%以上50.00重量%以下、好ましくは0.01重量%以上30重量%以下の範囲にすることが望ましい。
【0104】
利用できる汎用樹脂に限定はなく、例えば、1,3−アダマンタンジオールジメタクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、2(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等であるがこれらに限定されない。
【0105】
また、前記汎用樹脂は熱可塑性樹脂でもよく、例えば、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種又は2種以上のランダム又はブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上のα−オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、1−ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素原子系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン,アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0106】
本発明の光学材料及び光学用樹脂組成物の成形体を形成する方法は、例えば、光透過性材料からなる基板上に膜厚の薄い層構造を形成するには、ガラス基板に、金属材料からなる型を設け、両者の間に流動性の光学材料又は光学用樹脂組成物を流し込み、軽く抑えることで、型成形を行なう。その状態に保ったまま該光学材料又は該光学用樹脂組成物の重合を行う。かかる重合反応に供する光照射は、光重合開始剤を用いたラジカル生成に起因する機構に対応して、好適な波長の光、通常、紫外光もしくは可視光を用いて行う。例えば、前記基板に利用する光透過性材料、具体的にはガラス基板を介して、成形されている光学材料調製用のモノマー等の原料に対して、均一に光照射を実施する。照射される光量は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に応じて、また、含有される光重合開始剤の含有比率に応じて、適宜選択される。
【0107】
一方、かかる光重合反応による光学材料又は光学用樹脂組成物の成形体の作製においては、照射される光が型成形されているモノマー等の原料の全体に均一に照射されることがより好ましい。従って、利用される光照射は、基板に利用する光透過性材料、例えばガラス基板を介して、均一に行うことが可能な波長の光を選択することが一層好ましい。その際、光透過性材料の基板上に形成する光学材料の成形体の総厚を薄くすることは、本発明にはより好適である。
【0108】
同様に、熱重合法により成形体の作製を行うこともできる。この場合、全体の温度をより均一とすることが望ましく、光透過性材料の基板上に形成する重合性組成物の成形体の総厚を薄くすることは、本発明にはより好適なものとなる。また形成する光学材料又は光学用樹脂組成物の成形体の総厚を厚くする場合には、より膜厚、樹脂成分の吸収、微粒子成分の吸収を考慮した照射量、照射強度、光源等の選択が必要である。
【0109】
一方、前記熱可塑性樹脂との混合組成物の成形体を形成する過程としては、特に限定されるものはないが、低複屈折性、機械強度及び寸法精度等の特性に優れた成形物を得るためには、溶融成形が特に好ましい。溶融成形法としては、プレス成形、押し出し成形、射出成形等が挙げられるが、成形性及び生産性の観点から射出成形が好ましい。また、成形工程における成形条件は、使用目的又は成形方法により適宜選択されるが、射出成形における樹脂組成物の温度は、150℃から400℃の範囲であることが好ましく、200℃から350℃の範囲であることがより好ましく、200℃から330℃の範囲であることが特に好ましい。前記温度範囲で成形することにより、成形時に適度な流動性を樹脂に付与して成形品のヒケやひずみの発生とともに、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、さらには、成形物の黄変を効果的に防止することができる。
【0110】
本発明の光学材料を上記の成形方法で成形された成形物は光学素子として用いることができる。光学素子としては、例えばカメラレンズ等が挙げられる。
【実施例1】
【0111】
2,6−ジメチルナフタレン0.5gと、2−チオフェンカルボニルクロリド1.0gのニトロメタン溶液10mlに塩化アルミニウム0.94gを添加し攪拌する。反応進行度合をTLCで確認後、1N塩酸で反応を停止して有機相をクロロホルムで抽出する。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機相を濃縮することで下記の反応式16に記載の生成物が白色結晶として得られる。得られた生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0112】
【化17】

【0113】
H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.36(s,6H)、7.08(m,2H)、7.29(m,4H)、7.62(m,2H)、7.77(m,2H)
【実施例2】
【0114】
2,6−ジメチルナフタレン0.5gと、3−メチル−2−チオフェンカルボニルクロリド1.0gのニトロメタン溶液10mlに塩化アルミニウム0.94gを添加し攪拌する。反応進行度合をTLCで確認後、1N塩酸で反応を停止して有機相をクロロホルムで抽出する。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機相を濃縮することで下記の反応式17に記載の生成物が白色結晶として得られる。得られた生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0115】
【化18】

【0116】
H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.2(s,6H)、2.5(s,6H)、6.8(m,2H)、7.5(m,2H)、7.5(m,2H)、9.3(m,2H)
【実施例3】
【0117】
2,6−ジメチルナフタレン0.5gと4−メチル−2−チオフェンカルボニルクロリド1.0gのニトロメタン溶液10mlに塩化アルミニウム0.94gを添加し攪拌する。反応進行度合をTLCで確認後、1N塩酸で反応を停止して有機相をクロロホルムで抽出する。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機相を濃縮することで下記の反応式18に記載の生成物が白色結晶として得られる。得られた生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0118】
【化19】

【0119】
H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.2(s,6H)、2.5(s,6H)、7.2(m,2H)、7.4(m,2H)、7.5(m,2H)、9.3(m,2H)
【実施例4】
【0120】
2,6−ジメチルナフタレン0.5gと、2−ベンゾチオフェンカルボニルクロリド1.5gのニトロメタン溶液10mlに塩化アルミニウム0.94gを添加し攪拌する。反応進行度合をTLCで確認後、1N塩酸で反応を停止して有機相をクロロホルムで抽出する。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機相を濃縮することで下記の式19に記載の生成物が白色結晶として得られる。得られた生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0121】
【化20】

【0122】
H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.5(s,6H)、7.2−7.5(m、6H)、7.5−7.8(m、6H)、9.3(m,2H)
【実施例5】
【0123】
2,6−ジメチルナフタレン0.5gと、2−フランカルボニルクロリド1.0gのニトロメタン溶液10mlに塩化アルミニウム0.94gを添加し攪拌する。反応進行度合をTLCで確認後、1N塩酸で反応を停止して有機相をクロロホルムで抽出する。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、有機相を濃縮することで下記の反応式20に記載の生成物が白色結晶として得られる。得られた生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0124】
【化21】

【0125】
H−NMR(CDCl3;TMS):δ 2.5(s,6H)、6.4(m,2H)、7.2(m,2H)、7.5(m,2H)、7.7(m,2H)9.3(m,2H)
【実施例6】
【0126】
2,6−ジメチルナフタレン(25g)のクロロホルム(220ml)溶液に臭素(56g)を0℃でゆっくり滴下し、滴下後室温まで昇温して室温で2時間撹拌する。反応進行度合をTLCで確認後、水で反応を停止して有機相をクロロホルムで抽出する。得られた有機相をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥する。有機相を濃縮後、沈殿物をエタノールで再結晶を行うことで反応式21に記載の生成物(45g)が薄黄色結晶として収率90%で得られる。
【0127】
【化22】

【0128】
反応式21で合成したジブロモナフタレン(6.0g)のジエチルエーテル(20ml)/トルエン(60ml)溶液に2.2当量のn−ブチルリチウム(2.6M、16ml)を0℃でゆっくりと滴下し、同温で1時間撹拌した後室温で2時間撹拌する。その後、4.0当量のN,N−ジメチルホルムアミドを滴下した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止する。有機相を酢酸エチルで抽出した後、得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥する。有機相を濃縮後、粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで反応式22に記載の生成物(2.5g)が白色結晶として収率61%で得られる。
【0129】
【化23】

【0130】
2−ブロモチオフェン(1.0g)のテトラヒドロフラン溶液に1.1当量のn−ブチルリチウム(2.6M、2.6ml)を‐78℃でゆっくり滴下し、同温で1時間撹拌した後0℃でさらに1時間撹拌する。そこに反応式22で合成したジアルデヒド(0.5g)を添加して反応進行度合をTLCで確認した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止する。有機相を酢酸エチルで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。有機相を濃縮してえられた粗生成物のクロロホルム溶液に、1000wt%の二酸化マンガンを添加して室温で6時間反応を行う。二酸化マンガンをろ過した後に有機相を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製することで反応式23に記載の生成物(0.5g)が収率56%で得られる。得られた生成物は1HNMRにより構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0131】
【化24】

【実施例7】
【0132】
実施例6の反応式23に記載の方法で、2-ブロモチオフェン(1.0g)をベンゾチオフェン(0.8g)に変更した以外は同様にすることで反応式24に記載の生成物(0.7g)が収率62%で得られる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0133】
【化25】

【実施例8】
【0134】
実施例6の反応式23に記載の方法で、2-ブロモチオフェン(1.0g)を2,5−ジブロモフラン(1.4g)に変更した以外は同様にすることで反応式25に記載の生成物(0.9g)が収率73%で得られる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0135】
【化26】

【実施例9】
【0136】
実施例6の反応式21に記載の方法で、反応式21に記載の2,6−ジメチルナフタレン(25g)を2,2‘−ビフェノール(30g)に変更した以外は同様にすることで反応式26に記載の生成物(41g)が収率74%で得られる。
【0137】
【化27】

【0138】
その後、反応式26で得られたジブロモ体(5.0g)のクロロホルム(40ml)溶液にジヒドロピラン(3.7g)を添加して0℃まで冷却し、触媒量のp−トルエンスルホン酸水和物を加える。反応進行度合をTLCで確認後、トリエチルアミンで反応を停止する。有機相を酢酸エチルで希釈後、炭酸水素ナトリウム水溶液で有機相を洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。無水硫酸マグネシウムをろ過した後、有機相を濃縮して得られる沈殿物をエタノールで再結晶を行うことで反応式27に記載の生成物(6.7g)が白色結晶として収率90%で得られる
【0139】
【化28】

【0140】
その後、実施例6の反応式22に記載の方法で、反応式22に記載のジブロモナフタレン(6.0g)を反応式27で合成したジブロモ体(9.8g)に変更した以外は同様にすることで反応式28に記載の生成物(6.1g)が収率78%で得られる。
【0141】
【化29】

【0142】
その後、2−ブロモチオフェン(1.0g)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)に1.1当量のn−ブチルリチウム(2.6M、2.6ml)を‐78℃でゆっくり滴下し、同温で1時間撹拌した後0℃でさらに1時間撹拌する。そこに反応式35で合成したジアルデヒド(1.0g)を添加して反応進行度合をTLCで確認した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を停止する。有機相を酢酸エチルで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。有機相を濃縮してえられた粗生成物のクロロホルム溶液に、1000wt%の二酸化マンガンを添加して室温で6時間反応を行う。二酸化マンガンをろ過した後に有機相を1NHCl水溶液で洗浄し、得られる有機相を濃縮してカラムクロマトグラフィーで精製することで反応式29に記載の生成物(0.8g)が収率85%で得られる。得られた生成物は1HNMRにより構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0143】
【化30】

【実施例10】
【0144】
水素化ナトリウム(55%)(0.2g)のテトラヒドロフラン溶液(30ml)に反応式29で合成したジアルコール(1.0g)を0℃でゆっくりと添加し、同温で1時間撹拌する。次にアリルブロミド(0.8g)を添加して反応進行度合をTLCで確認した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止する。有機相を酢酸エチルで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。有機相を濃縮してえられた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することで反応式30に記載の生成物(0.9g)が薄黄色液体として収率72%で得られる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0145】
【化31】

【実施例11】
【0146】
反応式29で合成した化合物(1.1g)のクロロホルム(30ml)溶液に0℃で3.0当量のメタクリル酸クロリド(0.9g)を添加して同温で0.5時間撹拌する。次に、同温で3.0当量のトリエチルアミン(0.8g)をゆっくり滴下してさらに同温で1時間撹拌する。反応進行度合をTLCで確認後、炭酸水素ナトリウム水溶液で反応を停止させ、有機相を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。得られた有機相を濃縮後、カラムクロマトグラフィーで精製することで反応式31に記載の生成物(1.1g)が無色液体として収率79%で得られる。得られた生成物は1HNMRにより構造を確認した。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0147】
【化32】

【実施例12】
【0148】
実施例6の反応式21に記載の方法で、2,6−ジメチルナフタレン(25g)をチアントレン(35g)に変更した以外は同様にすることで反応式32に記載の生成物(37g)が収率61%で得られる。
【0149】
【化33】

【0150】
その後、実施例6の反応式22に記載の方法で、反応式22に記載のジブロモナフタレン(6.0g)を反応式32に記載の方法で合成したジブロモチアントレン(7.2g)に変更した以外は同様にすることで反応式33に記載の生成物(3.3g)が収率63%で得られる
【0151】
【化34】

【0152】
その後、実施例6の反応式23に記載の方法で、反応式23に記載のジアルデヒド(0.5g)を反応式33に記載の方法で合成したジアルデヒド(0.6g)に変更した以外は同様にすることで反応式34に記載の生成物(0.5g)が収率56%で得られる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0153】
【化35】

【実施例13】
【0154】
実施例6の反応式22に記載の方法で、反応式22に記載のジブロモナフタレン(6.0g)を2,2‘−ジブロモビフェニル(6.0g)に変更した以外は同様にすることで反応式35に記載の生成物(3.1g)が収率77%で得られる。
【0155】
【化36】

【0156】
その後、実施例6の反応式23に記載の方法で、反応式23に記載のジアルデヒド(0.5g)を反応式35に記載の方法で合成したジアルデヒド(0.5g)に変更した以外は同様にすることで反応式36に記載の生成物(0.6g)が収率71%で得られる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0157】
【化37】

【実施例14】
【0158】
実施例6の反応式22に記載の方法で、反応式22に記載のジブロモナフタレン(6.0g)を2,8−ジブロモジベンゾチオフェン(6.5g)に変更した以外は同様にすることで反応式37に記載の生成物(3.1g)が収率68%で得られる。
【0159】
【化38】

【0160】
その後、実施例6の反応式23に記載の方法で、反応式23に記載のジアルデヒド(0.5g)を反応式37に記載の方法で合成したジアルデヒド(0.6g)に変更した以外は同様にすることで反応式38に記載の生成物(0.7g)が収率75%で得られる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0161】
【化39】

比較例1
【0162】
実施例1で合成した含ヘテロ芳香族化合物0.5gのテトラヒドロフラン溶液10mlをー78℃まで冷却し、そこに塩化ビニルマグネシウム1.0ml、1.0Mを作用させ、同温で1時間反応させる。室温までゆっくり昇温しながらTLCで反応進行度合を確認し、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止して有機相を酢酸エチルで抽出する。得られた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、下記の反応式39に記載の芳香族化合物とπ電子を有するヘテロ環がsp2炭素を介して結合していない含ヘテロ芳香族化合物が合成できる。また、得られた生成物の光学特性を表1に示す。
【0163】
【化40】

【0164】
なお、屈折率はアッベ屈折計(カルニュー光学工業)を用いて測定し、また、透過率は光路長12.5μmの膜を成形し、日立ハイテクノロジー社製分光光度計U−4000(製品名)で測定した。光学特性が図1中のB範囲内でかつ430nmでの透過率が60%以上のものを総合評価○とし、それ以外を総合評価×とした。なお、総合評価○のもので透過率が80%未満のものに関しては、薄膜化することで光学材料として利用可能である。
【0165】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の含ヘテロ芳香族化合物および光学材料は、屈折率の分散特性(アッペ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(異常分散特性)、色収差補正機能の高い特性を有するので、カメラレンズ等の複数枚のレンズを有する装置に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物に、π電子を有するへテロ環化合物が、sp2炭素原子を介して少なくとも1つ以上結合していることを特徴とする含ヘテロ芳香族化合物。
【請求項2】
前記へテロ環化合物が、sp2炭素を介して少なくとも2つ以上結合していることを特徴とする請求項1に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【請求項3】
前記含ヘテロ芳香族化合物が、下記の式1で表される構造からなることを特徴とする請求項1または2に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化1】

(式中、Pは芳香族化合物、Qは少なくとも1つ以上のπ電子を有するヘテロ環化合物、Cはsp2炭素原子、Mは酸素を表す。)
【請求項4】
前記芳香族化合物が、下記の式2で表される化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化2】

(式中、Y1からY6の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【請求項5】
前記式1中のY1、Y4にはπ電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、Y2、Y3、Y5、Y6は水素原子であることを特徴とする請求項4に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【請求項6】
前記芳香族化合物が、下記の式3で表される化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化3】

(式中、Y39からY46の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。A5、A6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。)
【請求項7】
前記芳香族化合物が、下記の式4で表される化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化4】

(式中、Y47からY54の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。A7、A8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。)
【請求項8】
前記芳香族化合物が、下記の式5で表される化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化5】

(式中、Y55からY62の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【請求項9】
前記芳香族化合物が、下記の式6で表される化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化6】

(式中、Y63からY70の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【請求項10】
前記芳香族化合物が、下記の式7で表される化合物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化7】

(式中、Y71からY80の少なくとも1つには、π電子を有するへテロ環化合物がsp2炭素を介して結合しており、残りは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基のいずれかを表す。)
【請求項11】
前記π電子を有するヘテロ環化合物が、下記の式8ないし式11のいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかの項に記載の含ヘテロ芳香族化合物。
【化8】

(式中、X1は前記sp2炭素と結合しており、X2からX4は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【化9】

(式中、X8は前記sp2炭素と結合しており、X5からX7は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【化10】

(式中、X9は前記sp2炭素と結合しており、X10は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【化11】

(式中、X11は前記sp2炭素と結合しており、X12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基のいずれかを表す。)
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の含ヘテロ芳香族化合物を含有することを特徴とする光学材料。
【請求項13】
請求項12に記載の光学材料を含有することを特徴とする光学用樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−202530(P2010−202530A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47042(P2009−47042)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】