説明

含水液状媒体の凝縮方法及び凝縮装置

【課題】凝縮部内の目詰まりを発生させる含水液状媒体の氷結を検出して迅速に氷を解凍させる。
【解決手段】含水液状媒体の気化された蒸気用の導管が接続される蒸気導入口31と、含水液状媒体が凝縮した後のキャリアガス用の導管が接続されるキャリアガス吸引口32と、凝縮された含水液状媒体を取り出すための取出口37を有する空洞部30と、空洞部30の外周面33に貼付けられる少なくとも一つ以上の熱電変換素子41〜46と、空洞部30内に結氷が発生したことを検出する結氷検出素子61、62と、凝縮処理開始時には熱電変換素子41〜46に対して空洞部30を冷却する極性で電源電力を供給し、結氷検出素子61、62で結氷が検出されると熱電変換素子41〜46の電流方向を反転させる制御装置27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水液状媒体(溶媒)に混合物(溶質)を含ませた溶液から、含水液状媒体を分離回収する方法及び小型凝縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に関する関心が高まっており、また、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質等に対するISOといった基準及びPRTR(Pollutant Release and Transfer Register)のような法律規制が厳しくなっている。このような動きを受けて、溶媒の排出量の削減のため、使用済み液状媒体を再利用することに関心が高まっており、この目的に供する装置として、最近、有機溶媒蒸留装置、溶媒再生装置、自動溶剤回収装置等の名称で各種の分離装置の市販が行われている。
【0003】
特に、最近では、PRTR法の他に、労働安全衛生法などによる作業環境の規制等もあり、有機溶媒等の使用量そのものも減らす方向にある。このため、溶媒を利用する研究規模も小規模になる傾向がある。また、研究規模の小規模化により、溶媒使用量の低減、廃棄物排出の逓減、研究のスピード、研究処理量等の効率化を計ることができ、実験の効率を著しく改善することができる。なお、研究に使用した液状溶媒を再生するには、その使用済み液状溶媒を加温蒸発させ、発生した蒸気を凝縮装置で凝縮させて液状溶媒を回収する方法が用いられる。なお、溶媒を凝縮させることで液状溶媒を回収するとともに、キャリアガスを乾燥させることができる。
【0004】
上記のように小規模化の研究動向に対応する小規模実験用の機器の整備が急務である。しかし、市販されている回転式蒸発装置(ロータリー・エバポレーター)は、蒸発フラスコが100〜1000mL対応のものがほとんどで、蒸発フラスコが10〜100mL対応のものは、発明者らが数ヶ月前に発売を開始した超小型エバポレーター(商品名ミニエバポ)しか見当たらない。現在、この超小型エバポレーターでは、市販のガラス製のジムロート型の凝縮器を従来型の冷媒循環装置に接続して使用している。従来型の冷媒循環装置とは、一般的な冷媒の圧縮と膨張による熱交換器を用いた装置である。
【0005】
しかし、上記組み合わせでは蒸発装置については小型化できるものの、凝縮器に接続される従来型の冷媒循環装置が大きいままなので、トータルの設置容積で判断すると、空間占拠率がまだ大きく、全体的には小型化の程度があまり高くなく、機能性および経済性を満たす装置ではない。このため回収装置トータルとしての小型化した凝縮装置が待望されている。なお、溶媒回収装置の小型化について、本発明の発明者は、熱電変換素子(ペルチェ素子)を使用して溶媒の気化のための加熱と凝縮のための冷却を行う小型の回収装置を提案している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載した小型の回収装置は、常温、大気圧下で液体の媒体を用いて、蒸発器で液状媒体を加熱して発生させた溶媒蒸気を凝縮器で凝縮回収し、残ったキャリアガスを、ダイヤフラムポンプで循環させる閉鎖系で有機溶媒を回収する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−131748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、含水有機溶媒の場合、従来の液状媒体回収装置では、装置内での氷結の問題があるため、冷却効率の良い冷媒を使用しづらいという問題があった。これは、例えば、冷媒循環装置の冷却効率を上げるために、氷点下でも流動する冷媒を用いた場合、回収される含水液状媒体の水分が凝縮器内で氷結する。すなわち、凝縮処理を連続して実施すると、次第に、氷結した氷が装置内にたまり、やがて凝縮器内(取出口等)の目詰まりを起こす。そのため、凝縮処理の途中で凝縮器を加熱して氷結した水分を溶解させる必要があり、加熱機能を持たない従来の装置では、凝縮された液状媒体の回収処理を連続してできなくなる。
【0008】
また、凝縮器内の氷を溶解させるためには、例えば、冷媒循環装置の冷媒を熱交換器で逆に暖めて送出して加熱する方法が考えられるが、加熱するため時間がかかり、凝縮処理の作業性を著しく悪化させる。
【0009】
あるいは、凝縮器内の氷を溶解させるためには、専用の電熱線等のヒーターで加熱する方法も考えられる。しかし、(a)冷媒循環装置とは別にヒーターを設けることや、(b)ヒーターを金属等の導電性の凝縮装置の筐体から電気的に絶縁すること、(c)ヒーターの熱で冷媒循環装置や凝縮装置の筐体に変形や変性が起きないような状態にするために耐熱不燃性スペーサーや耐熱不燃性絶縁物を介して設置すること、(d)ヒーターを演算素子や記憶装置を利用して制御すること等は、凝縮装置を複雑化させると共に、その外形と重量を増大させ、さらにコストを増大させる。
【0010】
また、凝縮装置内の氷結した氷の発生および凝縮器内の目詰まりは、単純に凝縮装置内の温度が氷点下になることでは検出できない。例えば、氷点下になっても所定の条件下では水分が氷結しない場合がある。他方、一部に氷結が発生した場合、結氷を冷却面積の増大として、それを利用することで冷却効率を向上させることができる。
ところで、凝縮器内の目詰まりを発生させる氷結を検出する必要があるが、これを温度で検出することは困難である。また、同様の理由から、逆に、加熱した結果の、凝縮器内の目詰まりを発生させた氷の解凍状態の検出も、温度で検出することは困難である。そのため、従来の氷結の確認及び加熱時間等の制御は、人の目により確認と加熱処理が実施されるマニュアル処理が多く、自動化は困難であった。
【0011】
また、特許文献1には、閉鎖系内を循環させる液状媒体を、ペルチェ素子のホットサイドとクールサイドを利用してホットサイド側の容器で蒸発させることと、クールサイド側の容器で凝縮させることは示されているが、含水液状媒体中の水分が氷結した場合の処理方法は示されていない。さらに、特許文献1に記載された凝縮部は、常温・大気圧で液状となる液状媒体を凝縮しており、閉鎖系内で、ほぼ大気圧のガス状の媒体(蒸気及びキャリアガス)を循環ポンプで強制的に流動させて循環させている。しかし、閉鎖系ではない系で、減圧下での強制的な溶媒蒸気の移動による溶媒蒸気の凝縮と回収については、特許文献1には示されていない。
【0012】
本発明の目的は、上記した従来装置の欠点を解決することにあり、凝縮器内の目詰まりを発生させる含水液状媒体の氷結を検出して、迅速に氷を解凍させることができる凝縮方法及び凝縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る含水液状媒体の凝縮方法は、熱電変換素子に空洞部冷却の電流方向で電源電力を供給するステップと、空洞部に入る蒸気と出るキャリアガスの各圧力を測定するステップと、各圧力の差圧を所定値と比較して結氷を検出するステップと、熱電変換素子への電流方向を反転して加熱するステップと、各圧力の差圧を所定値と比較して結氷の解凍を検出するステップと、熱電変換素子への電流方向を反転して冷却するステップとを有する。
【0014】
本態様の凝縮方法および凝縮装置によれば、熱電変換素子で冷却する空洞部へ入る蒸気の圧力と、出るキャリアガスの圧力の差圧から凝縮器内の目詰まりを発生させる結氷を検出し、熱電変換素子へ供給する電流方向を反転させて加熱する。これにより、迅速に結氷を溶解させることができるので、凝縮された液状媒体の回収処理の連続性を向上させ、回収効率を向上させることができる。従って、結氷を検出し、加熱する処理を自動化することができる。
【0015】
好ましくは、本発明に係る凝縮方法では、凝縮により液体化した含水液状媒体の凝縮滴を検出するステップと、凝縮により液体化した含水液状媒体の凝縮滴が無くなったことを検出するステップとを有するようにするとよい。
【0016】
本態様の凝縮方法によれば、空洞部で凝縮されて取出口から排出される含水液状媒体の凝縮滴とその量を検出することで、凝縮器内の目詰まりを発生させる結氷の解凍を検出できる。従って、結氷部を加熱する処理の時間を最適な時間までに制御して自動化することができる。
【0017】
好ましくは、本発明に係る凝縮方法では、熱電変換素子への電流方向を反転して加熱するステップの後に、加熱時間を計測するステップと、加熱時間が所定時間に達したことを判断するステップとを有するようにするとよい。
【0018】
本態様の凝縮方法および凝縮装置によれば、結氷部を加熱する処理の時間を、凝縮器内の目詰まりを発生させる結氷を解凍させるための所定時間に設定できる。この場合の所定値とは、例えば、冷却状態に蓄熱された凝縮部内の氷結を解凍させる効果が発揮される時間以上で、高温に弱い媒体や部材に変性を発生させるような過剰な加熱時間にならないような所定時間である。従って、解凍効果を発揮するしきい値以上で危険性のないしきい値以下に制限する加熱時間に設定でき、氷結を加熱する処理の時間を設定することで、自動化処理と、過剰な加熱時間にならない安全性を両立させることができる。
【0019】
好ましくは上記課題を解決するために、本発明に係る含水液状媒体の凝縮装置は、含水液状媒体の気化蒸気の導管接続口と、含水液状媒体凝縮後のキャリアガス吸引口と、凝縮後の含水液状媒体の取出口を有する空洞部と、空洞部の外周面に貼付けられる少なくとも一つ以上の熱電変換素子と、空洞部内の結氷を検出する結氷検出素子と、凝縮処理開始時には熱電変換素子に対して空洞部を冷却する電流方向で電源電力を供給し、結氷検出素子で結氷が検出されると熱電変換素子の電流方向を反転させる制御装置とを備える。
【0020】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、結氷検出素子が、蒸気導入口よりも上部の導管に設けられている第1圧力センサーと、キャリアガス吸引口よりも下部の導管に設けられている第2圧力センサーであり、制御装置は、各圧力センサーの差圧を求めて、当該差圧が結氷を検出するための所定値以上である場合に熱電変換素子の電流方向を反転させるようにし、この際、制御装置で圧力差を演算し、その差圧を所定値と比較することで、取出口を塞いで目詰まりを起こす状態の結氷を適切に検出する。
【0021】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、取出口から排出される凝縮滴を検出する滴検出素子を備え、制御装置は、滴検出素子による凝縮滴が検出されない場合に、熱電変換素子の電流方向を反転させるか、又は、熱電変換素子への電力供給を中止するようにするとよい。
【0022】
本態様の凝縮装置によれば、空洞部で凝縮されて取出口から排出される含水液状媒体の凝縮滴とその量を検出することで、凝縮器内(取出口等)の目詰まりを発生させる結氷の解凍レベルを検出でき、熱電変換素子の電流方向を切り替えて結氷部を加熱することができる。従って、結氷部の加熱処理時間を最適化することができる。
【0023】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、熱電変換素子の電流方向の反転時間を計測するタイマー(計時装置)を備え、制御装置は、タイマーが所定時間に達した場合に、熱電変換素子の電流方向の反転を解除するようにするとよい。
【0024】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部は、熱伝導率の良好な材料で形成された外周面に、熱電変換素子を密着させるための少なくとも一面の平坦面を有するようにするとよい。
【0025】
本態様の凝縮装置によれば、空洞部を熱伝導性の良好なアルミニウム等の材料で形成し、その外周面には、熱電変換素子を密着させるのに適した平坦な平面を形成するので、熱電変換素子の全面を密着させることができる。その結果、熱の伝導効率を良くすることができ、冷却から加熱への切り替え時に、凝縮部の温度を素早く加熱でき、逆に、加熱終了時には素早く冷却することができる。このことから、結氷を溶解させる処理を途中に挟む場合であっても、凝縮された液状媒体の回収効率を向上させることができる。
【0026】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部は、断面が多角形であり、外周の複数の平坦面の少なくとも2面に、熱電変換素子が密着されるようにするとよい。
【0027】
本態様の凝縮装置によれば、空洞部の外周面に取り付けられる熱電変換素子を複数にし、例えば、断面が四角形の対向する2面に各々取り付けることで、冷却又は加熱のために一つの熱電変換素子から熱が伝導される距離を減らし、空洞部を素早く冷却又は加熱することができる。
【0028】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部は、断面が正方形であり、対向する2組の平坦面の各2面に、熱電変換素子が密着されるようにするとよい。
【0029】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部外周面に配置される各熱電変換素子は、複数の素子の表面側と背面側を対向させることで直列させて積層されるようにするとよい。
【0030】
本態様の凝縮装置によれば、熱電変換素子を積層配置させることで、冷却及び加熱の温度を増加させることができ、空洞部で奪われる熱量に対して、供給する熱量を増加させることができる。従って、空洞部内の深冷化が可能になり、凝縮された液状媒体の回収効率を向上させることができる。その際に、深冷化により結氷が発生しやすくなるが、本態様の凝縮装置では、上記のように熱電変換素子の冷却から加熱への切替が可能であり、供給する熱量が多いので、必要最小限で最適な加熱時間に制御することで、回収効率を向上させることができる。
【0031】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部は、内周面が断面円形で平坦なシリンダ形状であり、蒸気導入口がシリンダ形状の内周面に設けられ、前記キャリアガス吸引口がシリンダ形状の内周面の上部に設けられ、取出口がシリンダ形状の内周面の下部に設けられるようにするとよい。
【0032】
本態様の凝縮装置によれば、シリンダ形状の内周面に蒸気導入口を設けることで、空洞部に導入された溶媒蒸気が空洞部の内周面に沿って流れやすくなる。さらに、空洞部に導入された溶媒蒸気が空洞部のシリンダ状内周面に沿ってサイクロン流になりやすくなる。溶媒蒸気が空洞部のシリンダ状内周面に沿ってサイクロン流になると、溶媒蒸気は遠心力により内周面を強く押圧しながら螺旋状に進行するため、冷却又は加熱効果を良好に得ることができる。特に、蒸気導入口をシリンダ形状の断面円形の中心に向けて設けないで、円の接線に近づけて設けることで、サイクロン流を形成しやすくできる。
【0033】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部の内周面は、含水液状媒体の気化された蒸気が接触する表面積を増大させる凹凸部が形成されるようにするとよい。
【0034】
本態様の凝縮装置によれば、空洞部の内周面に凹凸部を形成することで、内周面の表面積を増大させて、冷却又は加熱の効率を高めることができる。特に凹凸部をネジ状の螺旋溝、又は、多段のリング状溝にした場合、導入された蒸気のサイクロン流の内周面への接触面積を増大させることができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。
【0035】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部の内周面には、充填物の外周の少なくとも一部が接触する充填物が設置されることで、結果的に内周面の表面積を増大させて、含水溶媒蒸気の接触面積を増やすことができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。
【0036】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部の内周面に充填される充填物は、内周面に充填物の外周が接触する螺旋形状であるようにするとよく、コイル形状、又は、多段のリング形状のように、その内周面と連続して接触する螺旋形状の充填物を設置することで、導入された蒸気のサイクロン流の進行方向に対する抵抗を減少させつつ、溶媒蒸気の接触面積を増大させることができ、内周面と充填物間の熱の伝導面積も増大するので、冷却又は加熱の効率を高めることができる。
【0037】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、空洞部の内周面には、内周面における上部から下部に向かいシリンダ直径が減少する漏斗形状部が設けられるようにすることができる。
【0038】
本態様の凝縮装置によれば、空洞部の内周面に漏斗形状部を設け、含水溶媒蒸気の進行方向に沿って徐々に半径を狭くすることで、徐々に遠心力を高めてサイクロン効果を得ることができる。従って、導入された含水溶媒蒸気がサイクロン流の遠心力により内周面を強く押圧しながら螺旋状に進行するので、冷却又は加熱効果を良好に得ることができる。
【0039】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、含水液状媒体が凝縮した後の乾燥したキャリアガスを強制的に移動させる減圧ポンプを設けることができ、この減圧ポンプで空洞部内のキャリアガスを吸引するので、空洞部内を減圧することができ、さらに、蒸発器からの蒸気を空洞部に導入させることができる。本態様の凝縮装置では、上記のようにサイクロン流を利用することで、冷却又は加熱効果を良好に得ることができる。
【0040】
好ましくは、本発明に係る凝縮装置では、含水溶媒蒸気導入口は、シリンダ形状の内周面における上部に設けられる第1蒸気導入口と、シリンダ形状の内周面における下部に設けられる第2含水溶媒蒸気導入口との2箇所に設けられるようにするとよい。
【0041】
本態様の凝縮装置によれば、減圧程度が低くて大気圧に近い場合には、蒸気のサイクロン流の圧力も大きく、遠心力により内周面を強く押圧しながら螺旋状に進行するため、含水溶媒蒸気導入口とキャリアガス吸引口を直線的に配置した方が、内周面への接触を増大させることができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。しかし、減圧程度が高くて大気圧からかけ離れて気圧が低い場合には、蒸気導入口とキャリアガス吸引口を直線的な配置に変えて往復路的に配置することができ、含水溶媒蒸気の内周面への接触面積と時間を増大させることができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。従って、減圧程度が低い場合には、下部に設けられる第2蒸気導入口を用い、減圧程度が高い場合には、第1蒸気導入口を用いることで、気圧の相違による冷却又は加熱の効率のばらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の凝縮方法及び凝縮装置では、熱電変換素子で冷却する凝縮部内で、凝縮器内(取出口等)の目詰まりを発生させる含水液状媒体の氷結を検出し、熱電変換素子へ供給する電流方向を反転させて加熱することで、迅速に結氷を解凍させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る凝縮装置と蒸発装置の概要を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る凝縮装置の簡略化した概略構成を蒸発装置の簡略化した概略構成と共に示した図である。
【図3】図1、2の凝縮装置における第1の実施形態の空洞部及び熱電変換素子を拡大して示した図である。
【図4】図3の空洞部を拡大して示した図であり、(a)が上面図であり、(b)が側面から見た断面図である。
【図5】図3の空洞部を拡大して結氷と共に示した図であり、(a)が上面図であり、(b)が側面から見た断面図である。
【図6】第1の実施形態の凝縮装置の動作のフローチャートである。
【図7】第2の実施形態の空洞部及び熱電変換素子を拡大して示した図である。
【図8】第3の実施形態の空洞部を拡大して示した図であり、(a)が上面図であり、(b)が側面から見た断面図である。
【図9】第4の実施形態の空洞部を拡大して示した図であり、(a)が上面図であり、(b)が側面から見た断面図である。
【図10】従来の凝縮装置の簡略化した概略構成を蒸発装置の簡略化した概略構成と共に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
まず、本明細書における用語の意義につき説明する。「含水液状媒体」とは、本発明に係わる方法や装置での処理に付されている状況において、使用環境である操作圧が大気圧又はそれ以下の減圧環境で液状である限り特に限定されない。典型的には、常温・常圧で液体である媒体である。また、含水液状媒体の水分含有量は、およそ500ppm以上であればよい。さらに、基本となる液状媒体は、有機溶媒でも無機溶媒でもよく、極性溶媒でも無極性溶媒でもよい。また、含水液状媒体であれば、基本となる液状媒体が一種類の媒体でも、一種類の基本液状媒体に一種又は二種以上の他の種類の媒体が混合した混合媒体でもよい。
【0045】
本発明に係わる含水液状媒体の具体的な例としては、例えば、エーテル、塩化メチレン、ペンタン、二硫化炭素、THF、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、ヘキサン、エタノール、若しくはメタノールのようなアルコール、水を挙げることができる。更に、ベンゼン、トルエン、DMF、DMSO、アセトニトリル、ピグミア、NMPなどの溶媒を挙げることができる。
【0046】
<第1実施形態>
図1〜図6を用いて本発明の第1実施形態の凝縮装置について説明する。第1実施形態の凝縮装置では、図3に示すように、凝縮部26における断面四角形の空洞部30の平坦面33aと33bに、熱電変換素子であるペルチェ素子41、42、45、46が取り付けられる。ペルチェ素子41、42、45、46には、必要に応じて図3に示すように、各々に放熱用のヒートシンク51、52、55、56が設けられる。
【0047】
ここで、先に図1、図2等に示した蒸発装置(エバポレーター)1について簡単に説明する。蒸発装置1は、含水溶媒蒸気用の導管4により凝縮装置2と接続され、蒸発装置1内で含水液状媒体が気化させて生成した含水溶媒蒸気を凝縮装置2に送出する。蒸発装置1は、使用済みの含水液状媒体を入れるフラスコ11、フラスコ11を加熱する加温用のバス10、フラスコ11を軸の周りで回転させることでフラスコ11内の含水液状媒体を均等に加温させる回転装置12を有している。
【0048】
図1に示すように凝縮装置2は、導管4で送られてきた蒸気が導入され、蒸気を冷却することで凝縮処理が実施され、凝縮後の乾燥したキャリアガスが排出される凝縮部26を備える。凝縮部26内のキャリアガスは、導管5を介して外付けされた減圧ポンプ3により強制的に吸い出され、減圧ポンプ3から導管7を介して大気中に放出される。
【0049】
つまり、凝縮装置2は、蒸発装置1から移動してきた含水液状媒体の蒸気を凝縮するものである。また、凝縮後の気体(キャリアガス)は、減圧ポンプ3の排気口から大気に解放される方式が採用される。しかし、本実施形態に係わる凝縮装置2は、何らかのポンプにより、凝縮装置内の空気を強制的に移動させる条件に適応していれば、例えば、排気口から排出される気体を蒸発装置1へ循環させて戻す閉鎖系等であってもよい。
【0050】
図2に示すように凝縮部26内の熱伝導率が良好なアルミニウム等の金属材料により形成された空洞部30は、含水液状媒体の気化された蒸気用の導管4が接続される蒸気導入口31と、凝縮した後の乾燥したキャリアガス用の導管5が接続されるキャリアガス吸引口32と、取出口37を有する。また、図3に示すように空洞部30は、その外周面33に、熱電変換素子41、42、45、46を密着させることができる平坦面33a、33bを有し、断面が多角形の一つである四角形である。そして空洞部30の外周の平坦面33aと33b(対向する2面)には、熱電変換素子41、42、45、46が密着される。
【0051】
減圧ポンプ3は、空洞部30の内の空気を強制的に排出させて大気圧を減圧にする。この場合の空洞部30の内の空気は、乾燥したキャリアガスである。そして、減圧ポンプ3は、キャリアガス吸引口32の導管5と接続される。このようにして、減圧ポンプ3で空洞部30内のキャリアガスを吸引するので、空洞部30内を減圧にすることができ、さらに、空洞部30内の空気を吸引することで蒸発器1からの蒸気を空洞部30に移動させることができる。
【0052】
空洞部30の外観は、図3に示す如く、金属製で5面以上の多面体であればよいが、好ましくは、5〜6面体が好ましく、6面体がより好ましい。5面体とは、例えば、外周の断面が△の三角柱、6面体とは、外周断面が□の四角柱である。また、それぞれの面において、複数個の熱電変換素子が並列できる平面があればよいが、1平面に少なくとも2個以上の熱電変換素子が取り付けられる面積があることが好ましい。また、空洞部30に用いる金属は、熱伝導性の良いものであれば特に制限されないが、通常は、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ステンレス鋼、銅、亜鉛およびこれらの合金を用い、より好ましくは、アルミニウムを用いたものが良い。
【0053】
空洞部30は、含水液状蒸気の導入口(IN)である含水溶媒蒸気導入口31と、気体の排出口(OUT)であるキャリアガス吸引口32と、下部に凝縮して液化した含水液状媒体の排出口である取出口37と、気化した含水液状媒体が凝縮液化する内壁でできており、空洞部30には凝縮効率を高めるために、空洞の形状を変えたり、伝熱面積を増やすために適当な充填物を詰めたりすることができる。
【0054】
本明細書における凝縮装置2には、凝縮に供する空洞部30がある。この空洞部30の内側器壁(内周面34)、および後述する第3実施形態で用いられるように装着された螺旋状コイル、更に、空洞部30の充填物等は、予めフッ素樹脂焼き付け加工を施してあり、これにより、酸、アルカリによる腐食を防止するばかりでなく、気化した含水凝縮液の凝縮効率を高めるほか、フッ素樹脂による撥水効果により液滴化を促進し、さらに、器壁を覆う液滴の流下を促し、総合的に凝縮で生じた含水液状媒体の流出を改善する。
【0055】
第1実施形態では、金属製の小型の空洞部30の外壁部(外周面33)について、外周4面の下部および外周4面の上部に、それぞれ、ペルチェ素子を4個を装着するときの取り付け位置の概念を示した。すなわち、図3では4面の下部および4面の上部に4個のペルチェ素子を取り付ける位置を、黒矢印および白矢印でそれぞれ2カ所ずつ、計4カ所示している。
【0056】
凝縮装置2は、小型の凝縮部26が組み込まれており、強制大気流動下で気化した含水液状媒体の凝縮に供される。凝縮装置2は、例えば、低沸点の含水液状媒体は300〜100mmHg程度の強制大気流動下で、中沸点の含水液状媒体は、100〜30mmHg程度の強制大気流動下で、さらに、高沸点の含水液状媒体は、30〜3mmHg程度の強制大気流動下で、それぞれの含水液状媒体の沸点を参考に、最適の減圧条件下で使用することが好ましく、減圧度が高ければ、蒸発気体の導入口として排気口に近いIN(1)の第1蒸気導入口31aを使うことができるが、大気圧に近づくほどにIN(2)の第2蒸気導入口31bを使うことが好ましい。
【0057】
金属製の凝縮装置2は、外壁部(外周面33)に装着した熱電変換素子(ペルチェ素子)の電流方向の切替えにより冷却または加熱を行う制御方式をとるか、熱電変換素子を冷却と加熱で専用化する方式かのいずれかの選択を行うことができるが、その選択は含水液状媒体の種類による。例えば、親水性の液状媒体であるアルコール、エーテル、アセトン、アセトニトリルなどの場合は氷結しにくく、氷結してもシャーベット状で比較的溶液の移動が容易なため、冷却と加熱を恒常化する方式を選択することができるが、疎水性の液状媒体であるヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエンなどの場合は、氷結が起こりやすく、冷却または加熱を自動的に切り替えて行う方法を選択するとよい。
【0058】
本実施形態では、金属製の小型の凝縮部26の空洞部30の冷却方法には、熱電変換素子(ペルチェ素子)を2段に積み重ねて深冷化を行うなどにより、図5に示すような、円筒形の空洞部30内部に霜状の結氷70を作ることができるが、この霧氷状の氷を利用し、気化した含水液状媒体を効率よく凝縮することに利用することができる。このような空洞部30の霧氷を利用する凝縮法は、図8、図9に示すいずれの形状の凝縮部26を用いてもよい。
【0059】
このように空洞部30を熱伝導性の良好なアルミニウム等の材料で形成し、平面的に熱電変換素子41、42、45、46を密着させることで、熱の伝導効率を良くすることができ、冷却から加熱への切替時に、凝縮部26の温度を素早く加熱でき、逆に、加熱終了時には素早く冷却に戻すことができる。
【0060】
また、空洞部30の外周面33に取り付けられる熱電変換素子41、42、45、46を前記したように複数にし、空洞部30の断面の四角形における対向する2面(平坦面33aと33b)に各々取り付けることで、冷却又は加熱のために熱電変換素子41、42、45、46と外周面との密着性を高められるため、空洞部30を素早く冷却又は加熱することができる。
【0061】
空洞部30は、図3に示すように内周面34が断面円形のシリンダ形状である。また、含水溶媒蒸気導入口31は、図2、図3では、図示を簡単にする便宜上からシリンダ形状の上部に設けられたように示されているが、本実施形態としては図4、図5に示すようにシリンダ形状の内周面34に設けるとよい。その場合、キャリアガス吸引口32がシリンダ形状の内周面34の上部に、図4等に示すように必要に応じて内周面34の側面よりも直径の小さいキャリアガス用の導管5に接続される管を突出させて設け、取出口37がシリンダ形状の内周面34の下部に設けられるようにするとよい。
【0062】
また、本実施形態の空洞部30の含水溶媒蒸気導入口31は、図4、図5に示すようにシリンダ形状の内周面34における上部に設けられる第1蒸気導入口31aと、シリンダ形状の内周面34における下部に設けられる第2蒸気導入口31bとの2箇所に設けられるようにするとよい。
【0063】
このように蒸気導入口31を、第1蒸気導入口31aと第2蒸気導入口31bとの2箇所に設けた場合の効果について説明する。例えば、減圧程度が低くて大気圧に近い場合には、蒸気のサイクロン効果が大きく、遠心力により内周面を強く押圧しながら螺旋状に進行する。そのため、蒸気導入口31とキャリアガス吸引口32を直線的に配置した方が、内周面34への接触を増大させることができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。従って、減圧程度が低く大気圧に近い場合には、下部側に設けられる第2蒸気導入口31bを用いたほうが効率的となる。
【0064】
それに対して、減圧程度が高くて大気圧からかけ離れて気圧が低い場合には、含水溶媒蒸気導入口31とキャリアガス吸引口32を直線的に配置するよりも、例えば、往復路的に配置した方が、内周面への接触面積と接触する時間を増大させることができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。従って、減圧程度が高く大気圧よりも非常に低い気圧である場合には、第1蒸気導入口31aを用いたほうが効率的となる。
【0065】
また、図4等に示したようにシリンダ形状の内周面34に蒸気導入口31を設けることで、空洞部30に導入された含水溶媒蒸気が、空洞部30の内周面34に沿って流れやすくなる。さらに、空洞部30の内周面34を断面円形にすることで、空洞部30に導入された当該蒸気が空洞部30のシリンダ状内周面34に沿ってサイクロン流になりやすくなる。当該蒸気が空洞部30のシリンダ状内周面34に沿ってサイクロン流になると、当該蒸気は遠心力により内周面34を強く押圧しながら螺旋状に進行し、冷却又は加熱効果を良好に得ることができる。特に、後述する第4実施形態(図9)に示すように蒸気導入口31をシリンダ形状の断面円形の中心に向けて設けないで、円の接線に近づけて設けることで、サイクロン流を形成しやすくできる。
【0066】
次に、本実施形態の凝縮装置2の凝縮部26(空洞部30、熱電変換素子41、42、45、46等を含む)以外の要素部分を説明する。
凝縮装置2は、凝縮部26の他に、空洞部30内に結氷70が発生したことを検出する結氷検出素子61、62と、凝縮処理開始時には熱電変換素子41、42、45、46に電力を供給する電源25と、凝縮処理の開始時には電源25に対して空洞部30を冷却する極性で電源電力を供給し、結氷検出素子61、62で結氷が検出されると、熱電変換素子41、42、45、46への供給電源の電流方向を極性を反転させて電力の供給を制御する制御装置27とを備える。
【0067】
制御装置27は、メモリー等の記憶部とマイクロプロセッサ等の演算素子を有して、多種の装置の制御が可能である。制御装置27は、少なくとも電源25、熱電変換素子41、42、45、46、結氷検出素子61、62、滴検出素子63、タイマー64と接続され、各被接続機器/装置等と通信してデータの送受信を行い、凝縮装置2の各動作、各検出データに応じて各被接続機器/装置等の動作を、含水液状媒体の回収に最適に制御するものである。
【0068】
凝縮装置2によれば、熱電変換素子41、42、45、46で空洞部30を冷却し、結氷検出素子61、62で空洞部30の目詰まりを発生させる結氷を検出し、制御装置27で熱電変換素子41、42、45、46へ供給する電源電力の極性を反転させて加熱する。これにより、迅速に結氷を溶解させることができるので、凝縮された液状媒体の回収処理の連続性を向上させ、回収効率を向上させることができる。従って、結氷を検出し、加熱する処理を自動化することができる。
【0069】
本実施形態の結氷検出素子61、62は、含水溶媒蒸気導入口31よりも上部の導管4に設けられる第1圧力センサー61と、キャリアガス吸引口32よりも下部の導管5に設けられる第2圧力センサー62である。制御装置27は、各圧力センサー61、62の差圧を求めて、当該差圧が空洞部30を塞ぐ結氷を検出するための所定値以上である場合に、熱電変換素子41、42、45、46の電流方向を反転させる。なお、この場合の所定値は、液状媒体の種類、含水率、各センサーの圧力及び圧力差等の相違を基に、実験データ等から得ることができ、例えば、制御装置27内のメモリ等に記憶される。
【0070】
このように結氷検出素子61、62を空洞部30の蒸気導入口31よりも上部の第1圧力センサー61と、空洞部30のキャリアガス吸引口32よりも下部の第2圧力センサー62とすることで、制御装置27で圧力差を演算し、その差圧を所定値と比較することで、空洞部30を塞いで目詰まりを起こす状態の結氷を適切に検出することができる。
【0071】
また、図5に示したように、空洞部30の内周面34の一部に氷結70が発生しても、取出口37の近辺には氷結が発生せず、目詰まりを発生させない場合がある。その場合には、例えば、その氷結部70により冷却面積を増大させることができる。その場合、熱電変換素子41、42、45、46を制御して空洞部30の内周面34の氷結部70を利用することで、蒸気化した媒体の冷却効率を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態の凝縮装置2は、取出口37から排出される凝縮滴81を検出する滴検出素子63、及び、凝縮滴81を受け止めて蓄積する丸底フラスコ等の回収用容器21を備える。滴検出素子63は、例えば、光センサーであり、光学的に滴の発生、滴の数量、滴の大きさ等を検出する。制御装置27は、滴検出素子63による凝縮滴81が検出されない場合に、熱電変換素子41、42、45、46の電流方向を反転させる。
【0073】
このように滴検出素子63を設け、空洞部30で凝縮されて取出口37から排出される含水液状媒体の凝縮滴81とその量を検出することで、取出口37の目詰まりを発生させる結氷の解凍レベルを検出でき、熱電変換素子41、42、45、46の電流方向を切り替えて結氷部を加熱することができる。従って、結氷部を加熱する処理時間を最適化できる。
【0074】
また、本実施形態の凝縮装置2は、熱電変換素子41、42、45、46の電流方向の反転時間を計測するタイマー(計時装置)64を備える。制御装置27は、例えば、タイマー64が所定時間に達した場合に、熱電変換素子41、42、45、46の電流方向の反転を解除する。この場合の所定値は、例えば、取出口37の目詰まりを発生させる結氷の解凍所用時間であり、さらに、氷結を解凍させる時間以上で、過剰な加熱にならないような所定時間である。この所定時間は、実験等により求めることができ、例えば、制御装置27内のメモリ等に記憶される。
【0075】
このタイマー64で計測することにより、解凍効果を発揮する加熱時間を設定できる。
【0076】
本実施形態の凝縮装置2には、上記の他に、例えば、熱電変換素子41、42、45、46及びヒートシンク51、52、55、56等に対して送風するか、凝縮装置2内の空気を排出させる放熱ファン28が設けられ、電源25と接続される。
【0077】
ここで、本実施形態の凝縮装置2の構成と従来の構成の相違について、従来の凝縮装置6の構成図10を用いて説明する。従来は、冷蔵庫やエアーコンディショナー等と同様に冷媒を循環させる冷却器20を用いて、凝縮部22内の空洞部を冷媒で冷却することで、溶媒蒸気を凝縮させていた。従来は、結氷状態及び解凍状態を検出しておらず、その検出結果を受けて制御装置27により冷却を制御していない。結氷による閉塞が起こったときは、凝縮装置6の解凍操作はマニュアル操作で行われていた。
【0078】
次に、本実施形態の制御装置27の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。
凝縮装置2で凝縮処理が開始されると、制御装置27は、熱電変換素子41、42、45、46に空洞部30を冷却するモードで通電する(S1)。そして、制御装置27には、減圧ポンプ3により強制的に内部の気体を移動させることで空洞部30に入る溶媒蒸気の圧力を第1圧力センサー61で検出したデータと、空洞部30から吸い出されて出るキャリアガスの圧力を第2圧力センサー62で検出したデータが入力され、制御装置27により制御される(S2)。
【0079】
次に制御装置27は、測定された各圧力の差圧を演算し、メモリ等に記憶されている所定値(空洞部30を塞ぐ結氷を検出するための所定値)と比較し、差圧が所定値以下であるか否かを判断することで、空洞部30を塞ぐ結氷が発生しているか否かを判断する(S3)。差圧が所定値以下でない場合(S3:NO)には、制御装置27は、空洞部30を塞ぐ結氷は発生していないと判断してステップS2の計測を繰り返す。
【0080】
差圧が所定値以下である場合(S3:YES)には、制御装置27は、空洞部30を塞ぐ結氷が発生していると判断し、熱電変換素子41、42、45、46への電流方向を反転して、空洞部30を加熱する(S4)。それと共に制御装置27は、電流方向を反転して加熱を開始する時にタイマー64で計測を開始する(S5)。また、加熱開始に伴い、制御装置27は、滴検出素子63により滴の発生、滴の数量の検出を開始する(S6)。
【0081】
その後、制御装置27は、滴の発生を検出したか否かを判断し(S7)、検出できない場合(S7:NO)には、再度ステップS6の検出処理を繰り返す。滴の発生を検出した場合(S7:YES)には、制御装置27は、次にその時の差圧が所定値以上であるか否かを判断することで、空洞部30を塞ぐ結氷が解凍したか否かを検出する(S8)。差圧が所定値以上でない場合(S8:NO)には、制御装置27は、次にその時の経過時間が所定値以上経過したか否かを判断する(S9)。
【0082】
過剰な加熱時間が経過していない場合(S9:NO)には、制御装置27は、再度ステップS6の検出処理を繰り返す。過剰な加熱時間が経過した場合(S9:YES)には、制御装置27は、熱電変換素子41、42、45、46への電流方向を再度反転して、空洞部30を冷却する(S10)。また、差圧が所定値以上である場合(S8:YES)には、制御装置27は、空洞部30を塞ぐ結氷が解凍したと判断して、熱電変換素子41、42、45、46で、空洞部30を冷却する(S10)。
【0083】
その後、制御装置27は、凝縮処理の再開による滴の検出が無くなったか否かを判断し(S11)、滴が検出される場合(S11:NO)には、再度ステップS2以降の処理を繰り返す。滴が検出できなくなった場合(S11:YES)には、制御装置27は、凝縮する蒸気がなくなったと判断して熱電変換素子41、42、45、46への電源電力の供給を停止し、凝縮処理を終了する。
【0084】
<実施例>
以下、本発明を実施例に基づき、より詳細に説明する。なお、これらの実施例は、本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0085】
<<実施例1>>
図1に示した本実施形態の含水液状媒体用の凝縮装置2は、含水液状媒体を気化蒸発させる小型蒸発装置(ミニエバポ)である回転式の蒸発装置1と、減圧手段であるダイヤフラムポンプ3との間に設置して気化凝縮システムを構築する。回転式の蒸発装置1にとりつけた蒸発用丸底フラスコ(気化用含水液状媒体容器)11(100mL)に含水エタノール50mLを導入し、バス10で45℃に温めたのち、減圧ポンプ3を調節して、排気流量を2L/minとし、導管7より排気しつつ、回転式の蒸発装置1を稼動させて含水エタノールを気化蒸発させた。気化した含水エタノール蒸気は、導管4を経て熱電変換素子(ペルチェ素子)で冷却した小型の凝縮部26に導かれ、この小型凝縮部26の空洞部30の内壁(内周面34)で含水エタノールが凝縮される。このようにして、丸底フラスコ受器(回収用含水液状媒体容器)21に含水エタノールが約49mL得られた(>99%回収)。
【0086】
<<第1実施形態の変形例1>>
また、空洞部30の外周面33に配置される各熱電変換素子41、42、45、46は、図3では、一つの平坦面に対して、2枚を上下の別の位置に並べて配置しているが、例えば、平坦面の同一位置に、複数の素子の表面側と背面側を対向させることで素子を直列させて積層されるように配置することもできる。
【0087】
このように熱電変換素子を積層配置させた場合には、冷却温度を増加させることができ、空洞部で奪われる熱量に対して、供給する熱量を増加させることができる。従って、空洞部内の深冷化が可能になり、凝縮された液状媒体の回収効率を向上させることができる。その際に、深冷化により結氷が発生しやすくなるが、本態様の凝縮装置では、上記のように熱電変換素子の冷却から加熱への切替が可能であり、供給する熱量が多いので、必要最小限で最適な加熱時間に制御することで、回収効率を向上させることができる。
【0088】
このように本実施形態の凝縮装置では、熱電変換素子41、42、45、46で冷却する空洞部30内の目詰まりを発生させる含水液状媒体の氷結を検出し、含水液状媒体の氷結を加熱して解凍させる処理を自動化することができる。
【0089】
また本実施形態の凝縮装置では、熱電変換素子(ペルチェ素子)41、42、45、46が密着できる多面形の空洞部30を有する凝縮部26に、複数のペルチェ素子を用いることで、特に小型のロータリー・エバポレーター等からの少量の含水液状媒体の「濃縮・回収・乾燥除去」を行うために最適な熱量の凝縮方法及び凝縮装置2を提供することができる。また、本実施形態では、凝縮装置にペルチェ素子を用いているので、たとえ氷点以下に冷却して水分を捕捉氷結させても、冷却、昇温切替えを短時間に、自動的に、且つ、容易に行うことができる。このことから、低温乾燥処理の領域の研究に対して、新しい手段を提供することができる。
【0090】
<第2実施形態>
次に、図7を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と比較した場合に、第2実施形態に係る凝縮装置2では、空洞部30は、断面が正方形であり、対向する2組の平坦面33aと33b、33cと33dの各2面のうち、平坦面33aと33bには、第1実施形態と同様に熱電変換素子41、42、45、46が密着され、さらに平坦面33cと33dには、熱電変換素子61、62、65、66が密着される。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0091】
また、第2実施形態では、金属製の小型の凝縮部26の外壁部(外周面33)について、下部4面および上部4面に、それぞれ、ペルチェ素子8個を装着するときの取り付け位置の概念を示した。すなわち、図7では、同様に、矢印を四方向から二段組として、八個のペルチェ素子を装着する位置を白、黒の矢印で示している。
【0092】
空洞部30の外周面33に配置される各熱電変換素子41、42、45、46と61、62、65、66は、外周面33における周方向に隣接位置で半々になるように配置される。本実施形態では、表面側が密着される熱電変換素子41、42が平坦面33aに密着され、熱電変換素子61、62が平坦面33cに密着され、熱電変換素子45、46が平坦面33bに密着され、熱電変換素子65、66が平坦面33dに密着される。
【0093】
このように、冷却と加熱を切り替え可能な熱電変換素子41、42、45、46と61、62、65、66を、空洞部30の外周面33に取り付けることで、上記の第1実施形態の一対の場合よりも、空洞部30をさらに素早く冷却又は加熱することができる。
【0094】
<第3実施形態>
次に、図8を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態及び第2実施形態と比較した場合に、第3実施形態に係る凝縮装置では、空洞部30の内周面35に、含水液状媒体の気化された蒸気が接触する表面積を増大させる凹凸部38が形成される。その他の構成については、第1実施形態及び第2実施形態と同様である。
【0095】
本実施形態の凝縮装置2によれば、空洞部30の内周面35に凹凸部38を形成することで、内周面35の表面積を増大させて、冷却又は加熱の効率を高めることができる。特に図8(a)、(b)に示したように凹凸部38をネジ状の螺旋溝、又は、多段のリング状溝にした場合、蒸気の内周面への接触面積を増大させることができ、これにより、冷却又は加熱の効率を高めることができる。
【0096】
<第3実施形態の変形例>
また、本実施形態の凝縮装置2の変形例として、空洞部30の内周面35に凹凸部38を形成する代わりに、例えば、空洞部30の内周面35に充填物の外周の少なくとも一部が接触する充填物が設置されても同様な効果を得ることができる。例えば、空洞部30の内周面が第1実施形態の内周面34と同様に平坦な面として、その内周面34に充填される充填物を、内周面34に外周が接触する螺旋形状であるようにする。
【0097】
また、本実施形態の凝縮装置2は、気化した含水液状媒体を凝縮する空洞部30があり、空洞部30には液化した含水液状媒体の排出を促進するために、内側器壁(内周面34)に沿った螺旋状のコイルを装着することにより、凝縮液はコイル表面を伝いながら下部に移動し、コイルの下端から液滴となり外部へ流出する。この際、空洞部30の下部より流入してくる気化した含水液状媒体は、このコイルに向流的に器壁に沿って螺旋状に上昇しつつ凝縮し、液化するように構造的な工夫がなされており、更に、必要に応じて、適当な充填物を装着することもできる。
【0098】
このように空洞部30の内周面34に、その内周面34と接触する充填物を設置することで、結果的に内周面の表面積を増大させることと同様に、溶媒蒸気に対する接触面積を増やすことができ、冷却又は加熱の効率を高めることができる。特に、空洞部30の内周面34に、コイル形状、又は、多段のリング形状のように、その内周面34と連続して接触する螺旋形状の充填物を設置することで、溶媒蒸気の接触面積を増大させることができ、内周面と充填物間の熱の伝導面積も増大するので、冷却又は加熱の効率を高めることができる。
【0099】
<第4実施形態>
次に、図9を用いて、本発明の第4実施形態について説明する。第1〜第3実施形態と比較した場合に、第4実施形態に係る凝縮装置では、空洞部30の内周面36には上部から下部に向かいシリンダ直径が減少する漏斗形状部39が設けられている。また、第2蒸気導入口31bが無くなり、上部に一つの蒸気導入口31となっている。その他の構成については、第1〜第3実施形態と同様である。
【0100】
本実施形態の凝縮装置2によれば、空洞部30の内周面36に漏斗形状部39を設け、溶媒蒸気の進行方向に沿って徐々に半径を狭くすることで、徐々に遠心力を高めてサイクロン効果を得ることができる。従って、導入された蒸気の進行速度が上がり、蒸気は、内周面を強く押圧しながら螺旋状に進行するので、冷却又は加熱効果を良好に得ることができる。
【0101】
また、上記の各実施形態に示したように、本発明では、金属製で、含水溶媒蒸気中の水分の捕捉に最適な構造の空洞部30の設計について、各種の変形、応用が可能であるので、設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0102】
1 蒸発装置(エバポレーター)、
2、6 凝縮装置、
3 減圧ポンプ、
4、5、7 導管、
10 (温浴)バス、
11 フラスコ(気化用含水液状媒体容器)、
12 回転装置、
20 冷却器、
21 回収用含水液状媒体容器、
22、26 凝縮部、
25 電源、
27 制御装置、
28 放熱ファン、
30 空洞部、
31 蒸気導入口、
31a 第1蒸気導入口、
31b 第2蒸気導入口、
32 キャリアガス吸引口、
33 外周面、
33a、33b、33c、33d 平坦面、
34、35、36 内周面、
37 (凝縮媒体の)取出口、
38 凹凸部、
39 漏斗形状部、
41、42、45、46、61、62、65、66 ペルチェ素子(熱電変換素子)、
51、52、55、56 ヒートシンク、
61 第1圧力センサー(結氷検出素子)、
62 第2圧力センサー(結氷検出素子)、
63 滴検出素子、
64 タイマー(計時装置)、
70 結氷、
81 凝縮滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換素子に空洞部を冷却する電流方向で電源電力を供給するステップと、
空洞部に入る蒸気と出るキャリアガスの各圧力を測定するステップと、
前記各圧力の差圧を所定値と比較して結氷を検出するステップと、
熱電変換素子への電流方向を反転して加熱するステップと、
前記各圧力の差圧を所定値と比較して結氷の解凍を検出するステップと、
熱電変換素子への電流方向を反転して冷却するステップと
を有することを特徴とする含水液状媒体の凝縮方法。
【請求項2】
凝縮により液体化した含水液状媒体の凝縮滴を検出するステップと、
凝縮により液体化した含水液状媒体の凝縮滴が無くなったことを検出するステップと
を有することを特徴とする請求項1に記載の含水液状媒体の凝縮方法。
【請求項3】
前記熱電変換素子への電流方向を反転して加熱するステップの後に、
加熱時間を計測するステップと、
加熱時間が所定時間に達したことを判断するステップと
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の含水液状媒体の凝縮方法。
【請求項4】
含水液状媒体の気化蒸気の導管接続口と、含水液状媒体凝縮後のキャリアガス吸引口と、凝縮後の含水液状媒体の取出口を有する空洞部と、
前記空洞部の外周面に貼付けられる少なくとも一つ以上の熱電変換素子と、
前記空洞部内の結氷を検出する結氷検出素子と、
凝縮処理開始時には熱電変換素子に対して空洞部を冷却する電流方向で電源電力を供給し、結氷検出素子で結氷が検出されると熱電変換素子の電流方向を反転させる制御装置と
を備えることを特徴とする含水液状媒体の凝縮装置。
【請求項5】
前記結氷検出素子が、前記蒸気導入口よりも上部側の導管に設けられる第1圧力センサーと、前記キャリアガス吸引口よりも下部側の導管に設けられる第2圧力センサーであり、
前記制御装置は、前記各圧力センサーの差圧を求めて、当該差圧が結氷を検出するための所定値以上である場合に熱電変換素子の電流方向を反転させる
ことを特徴とする請求項4に記載の含水液状媒体の凝縮装置。
【請求項6】
前記取出口から排出される凝縮滴を検出する滴検出素子を備え、
前記制御装置は、滴検出素子による凝縮滴が検出されない場合に、熱電変換素子の電流方向を反転させるか、又は、熱電変換素子への電源電力供給を中止することを特徴とする請求項4又は5に記載の含水液状媒体の凝縮装置。
【請求項7】
前記熱電変換素子の電流方向の反転時間を計測するタイマーを備え、
前記制御装置は、タイマーが所定時間に達した場合に、熱電変換素子の電流方向の反転を解除する
ことを特徴とする請求項4〜6の何れか1項に記載の含水液状媒体の凝縮装置。
【請求項8】
前記空洞部は、熱伝導率の良好な材料で形成された外周面に、前記熱電変換素子を密着させるための少なくとも一面の平坦面を有する
ことを特徴とする請求項4〜7の何れか1項に記載の含水液状媒体の凝縮装置。
【請求項9】
前記空洞部は、
断面が円形のシリンダ形状又は漏斗形状の内周面を有し、
その内周面には、
平坦に形成されることと、凹凸部が形成されること、及び、前記内周面に少なくとも一部が接触する充填物が設置されること、
のうちから少なくとも一つの処理が実施される
ことを特徴とする請求項4〜8の何れか1項に記載の含水液状媒体の凝縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−5994(P2012−5994A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146309(P2010−146309)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(598173915)株式会社創造化学研究所 (4)
【Fターム(参考)】