説明

吸収体

【課題】吸収性ポリマーの含有割合を増やしても、吸収性ポリマーの移動が起こり難く、吸収性能の低下やシャリ感による装着感の悪化を防止しつつ薄型化を図ることのできる、吸収体を提供すること。
【解決手段】本発明の吸収体1は、繊維集合体に吸収性ポリマーが含有されてなる吸収性コア4と、該吸収性コア4の上下面を被覆するコアラップシート5とを有してなる。吸収性ポリマーは、吸収性コア4の平面方向に均一に分散しており、吸収性コア4の上下面それぞれが接着剤を介してコアラップシート5に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体に関し、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品用に好ましく用い得る吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、一般的に、液透過性の表面シート、液不透過性又は撥水性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えている。吸収体は、一般的に、液保持性の吸収性コアが液透過性のコアラップシートで被覆されて構成されている。吸収性コアは、一般的に、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体に吸収性ポリマーが散布されて形成されている。
【0003】
近時、吸収性物品においては、吸収体の厚みを薄くすることが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−118117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、吸収体の厚みを単純に従来品に比べて薄くすると吸収性能が劣るものとなる。そのため、吸収性ポリマーの含有量を多くして吸収性能を補うことが考えられるが、単純に吸収性ポリマーの含有量を多くした場合には、該ポリマーが吸収体中を移動しやすくなり、吸収性能にむらが生じて漏れが生じ易くなったり、該ポリマーの分布にムラが生じて、該ポリマーの密度が高くなった部分に、ポリマー同士が擦れ合うことによる「シャリ感」を生じて、装着感が悪化したりする。
【0006】
従って、本発明の目的は、吸収性ポリマーの含有割合を増やしても、吸収性ポリマーの移動が起こり難く、吸収性能の低下やシャリ感による装着感の悪化を防止しつつ薄型化を図ることのできる、吸収体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、繊維集合体に吸収性ポリマーが含有されてなる吸収性コアと、該吸収性コアの上下面を被覆するコアラップシートとを有し、前記吸収性ポリマーは、前記吸収性コアの平面方向に均一に分散しており、前記吸収性コアの上下面それぞれが接着剤を介してコアラップシートに固定されている吸収体を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の吸収体によれば、吸収性ポリマーの含有割合を増やしても、吸収性ポリマーの移動が起こり難く、吸収性能の低下やシャリ感による装着感の悪化を防止しつつ薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基いて説明する。
本発明の一実施形態である吸収体1は、図1及び図2に示すように、繊維集合体2に吸収性ポリマー3が含有されてなる吸収性コア4と、該吸収性コア4の上下面を被覆するコアラップシート5とを有する。吸収性ポリマー3は、吸収性コア4の平面方向に均一に分散している。吸収性コア4の上下面それぞれは、接着剤(図示せず)を介してコアラップシート5に固定されている。吸収性ポリマー3は、粒子状である。
【0010】
以下、本実施形態の吸収体1についてより詳細に説明する。
本実施形態の吸収体1は、図1に示すように、平面視して矩形状をなし、縦長に形成されている。吸収体1は、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品、特に使い捨ておむつの吸収体として好ましく用いられ、該吸収性物品に組み込む際には、その長手方向を、吸収性物品の長手方向(着用者の前後方向と一致する方向)に一致させる。
【0011】
吸収体1は、吸収性コア4と、該吸収性コア4を被覆するコアラップシート5からなる。
吸収性コア4は、図1に示すように、長手方向中央部が括れた部分を有し、砂時計状の平面視形状を有している。
吸収性コア4は、繊維集合体2に吸収性ポリマー3が含有されてなる。
【0012】
繊維集合体2は、親水性の短繊維や親水性を有する長繊維等からなる。
親水性の短繊維としては、木材パルプ、レーヨン、コットン等の天然パルプや、ポリエチレン等の合成樹脂を素材とする合成パルプが挙げられる。天然パルプと合成パルプとは、何れか一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。親水性を有する長繊維としては、本来的に親水性を有する長繊維や、本来的には親水性を有さないが親水化処理が施されることによって親水性が付与された長繊維が挙げられる。
繊維集合体2は、好ましくはパルプ繊維を主体として構成されていることが好ましく、繊維集合体2中のパルプ繊維の割合は20〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。
【0013】
吸収性コア4においては、繊維集合体2に、吸収性ポリマー3が含有されている。吸収性ポリマー3を含有させる方法としては、短繊維や長繊維のウエブ等の繊維集合体2に吸収性ポリマー3を散布する方法、短繊維と吸収性ポリマーとを混合積繊する方法等が挙げられる。
【0014】
吸収性ポリマー3は、吸収性コア4の平面方向に均一に分散している。
本発明において「平面方向に均一に分散している」とは、吸収性コア4を、吸収体の長手方向及び幅方向のそれぞれにおいて複数の領域に分割し、その分割領域ごとに吸収性ポリマー3の含有量を測定したときに、吸収体の長手方向の分割領域の列と、吸収体の幅方向の分割領域の列の何れについても、吸収性ポリマー3の含有量のバラツキが所定の値以下であるこという。
吸収性ポリマーが平面方向に均一に分散しているか否かは、吸収性ポリマーの含有量を直接測定して判定することもできるが、吸収性ポリマーの含有量にほぼ比例して増減する生理食塩水の遠心保持量に基づき判定することが簡便であり好ましい。
【0015】
より具体的には、図3に示すように、吸収性コア4上に、該吸収性コア4の長手方向に延びる長手方向中心線LLと該吸収性コア4の長手方向端縁に沿って該吸収性コア4の幅方向に延びる幅方向基準線LTとを想定し、これらの両線LL,LTと平行な辺を持つ一辺30mmの正方形状の領域を、幅方向基準線LTに隣接させ且つ該正方形状の領域の中心点が長手方向中心線LLと重なるように配置し、その領域(図中、斜線を付した領域)を基準区画Pとする。
そして、基準区画Pと同じ形の区画を、吸収性コア4の長手方向及び幅方向それぞれに、区画同士を隣接させて配置し、これらの区画を分割領域とする。
【0016】
また、各分割領域のうち、吸収性コア4と重なっていない部分があるものについては測定対象外とする。
そして、測定対象外の分割領域を除く、測定対象の各分割領域について、生理食塩水の遠心保持量を測定し、標準偏差を算出する。また、分割領域の列毎の標準偏差(列標準偏差)の、当該列中の分割領域の生理食塩水の遠心保持量の平均値(列平均)に対する比(列標準偏差/列平均)を算出する。
そして、吸収体の長手方向の分割領域の列及び吸収体の幅方向の分割領域の列の何れの列についても、前記比(列標準偏差/列平均)が、0.20以下である場合を「平面方向に均一に分散している」ものとする。前記比(列標準偏差/列平均)は、何れの列についても、0.15以下であることが好ましく、0.13以下であることがより好ましい。また、全データの標準偏差が1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。
【0017】
尚、生理食塩水の遠心保持量測定は、次の測定方法により行う。
各分割領域それぞれについて、保水性の無い素材(ナイロン等)からなるメッシュ袋に各分割領域を入れ、以下の操作をメッシュ袋ごとに吸収性ポリマーの脱落が無いように行う。まず、分割領域ごとに秤量する(この値を(A)とする)。次に、各分割領域を生理食塩水中に30分浸漬させる。その後、各分割領域を10分間吊り下げて自然落下による水切りを行う。次に、各分割領域について800rpmの速度で10分間、遠心脱水機による水切りを行う。
そして、水切り後の各分割領域の重量(この値を(B)とする)を測定する。
そして、水切り後においても各分割領域中に保持されている水分量を、(B)−(A)の計算により求め、その値を、生理食塩水の遠心保持量とする。
【0018】
吸収性ポリマーとしては、従来、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができ、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系のものが挙げられる。吸収性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液吸収性保持力を有し、ゲル化する性質を有する高吸収性ポリマーが好ましく、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、アクリル酸(塩)重合体などが適当である。
【0019】
コアラップシート5は、吸収性コア4の少なくとも上下面を被覆している。
図1及び図2に示すように、本実施形態の吸収体1においては、幅の異なる2枚のコアラップシート5A、5Bを吸収性コア4の上下面に配し、一方のコアラップシート5Aの両側部を他方のコアラップシート5B側に折り返して接合している。これにより、吸収性コア4の上下面及び両側縁部がコアラップシート5により被覆されている。本実施形態においては、更に吸収性コア4の長手方向両端から延出したコアラップシート同士が接合されており、吸収性コア4の長手方向両端部もコアラップシート5により被覆されている。
【0020】
コアラップシート5としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品において従来用いられているティッシュペーパや液透過性の不織布等を特に制限なく用いることができる。 不織布としては、例えばスパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン−メルトブローン−スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、エアスルー不織布が挙げられる。吸収性コア4の上下面を互いに異なる種類のコアラップシート5で被覆することもできる。
【0021】
吸収性コア4は、上下両面がそれぞれコアラップシート5に接着剤を介して接合されている。接着剤の塗工態様は、ベタ塗り、スプレー塗工、スパイラル、ストライプ、ドットのパターン塗工等が挙げられるが、使い捨ておむつ等の吸収性物品に組み込まれたときに、肌側に向けられる面側の塗工パターンは、吸収性能を阻害しないように、スパイラル、ストライプ、ドット等のパターン塗工が好ましい。
接着剤は、従来、使い捨ておむつ等の吸収性物品の製造に用いられている各種のものを特に制限なく用いることができる。
【0022】
繊維集合体2の坪量は、吸収体1の薄型化を図ると共に繊維間に吸収性ポリマーを保持して該ポリマーの移動を抑制する観点から、50〜250g/m2であることが好ましく、100〜230g/m2であることがより好ましい。
また、繊維集合体2の坪量に対する吸収性ポリマー(SAP)の坪量の比(SAP/繊維材料)は、例えば1.30以上とすることもできる。
また、吸収体1の厚みは、剛性を抑え、例えば吸収性物品の吸収体として使用されたときの身体形状へのフィット性やそれによる漏れ防止性を向上させる観点から、3.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0〜2.5mmであり、更に好ましくは1.5〜2.0mmである。
また、吸収性コア中の吸収性ポリマーの含有率は、50〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。
【0023】
次に、上述した吸収体1の製造に適した吸収体の製造方法(以下、本製造方法ともいう)について説明する。
先ず、本製造方法に使用する吸収体の製造装置について説明する。
図4に示すように、吸収体の製造装置10は、外周面に複数の集積用凹部21が所定の間隔で形成された回転ドラム20と、回転ドラム20の外周面の一部を覆う一端部を有し、飛散状態とされた吸収体の原料を、回転ドラム20の外周面に供給するダクト30を備えている。
【0024】
回転ドラム20は、円筒状をなし、図4中の矢印A方向に回転駆動されるようになされている。回転ドラム20の外周面には、製造する吸収性コアの形状に対応する形状の集積用凹部21,21・・が形成されている。回転ドラム20には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内の仕切られた空間B及びCが負圧に維持されるようになっている。個々の集積用凹部21の底面部には、多数の細孔(図示せず)が形成されており、集積用凹部が負圧に維持された空間上を通過している間、該集積用凹部の底面部の細孔が吸引孔として機能する。
【0025】
ダクト30における、回転ドラム20側とは反対側の端部付近には、パルプ繊維等の繊維材料22をダクト30内に飛散状態として供給する繊維材料供給装置(図示せず)が設けられている。また、ダクト30における、回転ドラム20と前記繊維材料の導入部位との間には、該ダクト30内に吸収性ポリマーを導入するポリマー導入口31が設けられている。
ダクト30は、図5及び図6に示すように、上面32、下面33及び一対の側面34,34によって囲まれた断面矩形状の内部空間を有している。図4に示すように、ダクト30の内部空間は、繊維材料の導入部から吸収性ポリマーの導入部を経て、該吸収性ポリマーの導入部と回転ドラム20との中間部位くらいまでは、ゆるやかに上下方向に拡大しており、回転ドラム20の近傍においては、上下方向に急激に拡大している。一方、ダクト30の一対の前記側面34,34は、ドラムの略全長に亘って互いに略平行である。以下、ダクト30の内壁面を構成する上記上面32、上記下面33及び上記側面34を、それぞれ、ダクト30の上面32、下面33及び側面34という。図5〜図8中X方向は、吸収体の原料(繊維材料22等)を搬送する空気流の流れ方向であり、Y方向はその流れ方向に直交する方向である。X方向はダクトの長手方向でもあり、Y方向はダクトの幅方向でもある。
【0026】
本吸収体の製造装置10は、ダクト30の内部空間上半部の両側2箇所に設けられたポリマー導入口31から、吸収性ポリマー(粒子)3をダクト30内に導入するようになされている。ポリマー導入口31は、図6に示すように、ダクト30内の上面32と各側面34,34との交点35,35近傍に形成されている。より具体的には、ダクト30の一対の側面34,34における上面32近傍に形成されている。ポリマー導入口31は、ダクト30の内壁面に矩形状に開口している。
ポリマー導入口31が形成された部分におけるダクト30の外壁面には、ポケット状の接続部材36が取り付けられている。ポケット状の接続部材36は、ポリマー供給管37の一端部を差し込んで固定できるようになっている。ポリマー供給管36の他端は、ポリマーの収容部38に接続されている。ポリマーの収容部38に収容されているポリマーは、2つのポリマー供給管37に等量に分割され、それぞれ、ポリマー導入口31からダクト内に導入されるようになされている。
ポリマーの収容部38からポリマー導入口31へのポリマーの移動は、主に重力による自然落下であり、ポリマーの収容部38側に送気ファン等のブロー手段は設けられていない。尚、ポリマー導入口31からのポリマーの導入の開始及び停止は、オガーフィダーの動作によることにより行うことができる。
【0027】
本吸収体の製造装置10は、更に、集積用凹部21に原料を堆積させる前の回転ドラム20の外周面上に第1コアラップシート5Bを供給する第1コアラップシート供給機構と、集積用凹部21に原料を堆積させた後の回転ドラム20の外周面上に第2コアラップシート5Aを供給する第2コアラップシート供給機構と、回転ドラムの外周面上に供給する直前の第1及び第2コアラップシート5A,5Bにそれぞれ接着剤を塗工する2つの接着剤塗工装置6A,6Bとを備えている。
【0028】
本吸収体の製造装置を用いて吸収体1を製造するには、先ず、回転ドラム20を回転させると共に、上記吸気ファンを作動させる。また、第1及び第2コアラップシート供給機構及び接着剤塗工装置6A,6Bを作動させる。
吸気ファンの作動により、空間B上に位置する集積用凹部20の底面部に吸引力が生じると共に、ダクト30内に、回転ドラム20の外周面に向けて流れる空気流が生じる。
そして、ダクト30内に、繊維材料を飛散するように導入すると共に、2つのポリマー導入口31それぞれから、吸収性ポリマーをダクト30内に導入する。
【0029】
回転ドラム20には、先ず、第1コアラップシート5Bが供給され、該シート5Bにより内面が覆われた状態の集積用凹部21内に、繊維材料及び吸収性ポリマーが吸引されて堆積する。そして、これらが堆積した後の集積用凹部21上に、第2コアラップシート5Aが供給される。
【0030】
集積用凹部21内の繊維材料及び吸収性ポリマーの堆積物は、繊維材料からなる繊維集合体に吸収性ポリマーが含有されている構成であり、それらが、第1及び第2コアラップシート5A,5B間に間欠的に配置されたものは、吸収体の連続体1Aである。繊維材料及び吸収性ポリマーの堆積物は、堆積物の排出部Eまで搬送され、第1及び第2コアラップシート5A,5Bに挟まれた状態で、回転ドラム20から離れる方向に引っ張られ集積用凹部21から離型される。
回転ドラム20の外周面から離れた吸収体の連続体1Aは、ベルトコンベア等の任意の搬送手段により搬送され、後の工程において、繊維材料及び吸収性ポリマーの堆積物のない部分で切断されて個々の吸収体となる。
【0031】
本製造方法によれば、ダクト30の両側2箇所に設けられた一対のポリマー導入口31それぞれから、吸収性ポリマーをダクト30内に導入していることによって、吸収性ポリマーを、得られる吸収体の長手方向のみならず幅方向にも良好に分散させることができる。これにより、上述した吸収体1のように、吸収性ポリマーが吸収性コアの平面方向に均一に分散している吸収体を効率よく連続生産することができる。
尚、吸収体の幅方向にポリマーを均一に分散させるには、図6に示すダクト30のように、一対の側面34,34それぞれにおける上面32近傍にポリマー導入口31を形成するのに代えて、図7に示すように、ダクト30の上面32における一対の側面34,34それぞれの近傍にポリマー導入口31を形成しても良い。
【0032】
ポリマー導入口31の水平方向の位置(水平方向の中心位置)は、ダクト30の側面34からの離間距離W1(図7参照)が、上面32の全幅Wの0〜25%となる位置が好ましく、0〜15%となる位置がより好ましい。
また、ポリマー導入口31の鉛直方向の位置(鉛直方向の中心位置)は、ダクト30の上面32からの離間距離T1(図6参照)が、ダクト30の長手方向同位置における側面34の高さTの10〜40%となる位置が好ましく、15〜35%となる位置がより好ましい。
また、左右のポリマー導入口31の位置は、ダクト30の長手方向においてずれていても良いが、図8に示すように、ダクト30の長手方向において略同じ位置であることが好ましい。
【0033】
本吸収体の製造装置10においては、図4、図5及び図8に示すように、ダクト30の各側面34における、ポリマー導入口31よりも回転ドラム20寄りの位置に、略三角錐状の部材41,42が固定されている。また、ダクト30の下面33における、ポリマー導入口31よりも回転ドラム20寄りの位置には、三角柱状の部材43が設けられている。部材41,42がない場合、パルプ、ポリマーの重量の違いにより分離し、層状になりやすい。部材41,42は、ドラム内の空気流を攪拌及び風速向上するもので、これらを設けることで、吸収体の長手方向における吸収性ポリマーの分布をより均一なものとすることができる。部材41,42の固定位置は、ダクト30の側面における高さ方向中央部付近が好ましく、ポリマー導入口31近辺がより好ましい。部材41,42の形状は、空気流を撹乱することのできる限り特に制限されないが、回転ドラム20に近づくにつれて、側面34からの突出高さが漸増する形状であることが好ましい。
尚、本吸収体の製造装置10を用いて吸収体1を製造する際には、コアラップシート5A,5Bとして、何れも通気性を有するものが用いられる。
【0034】
以上、本発明の吸収体の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されず適宜変更可能である。
例えば、コアラップシート5による吸収性コア4の被覆形態は、吸収性コア4の幅の2倍以上3倍以下の幅を有する一枚のコアラップシートの幅方向中央部に吸収性コア4を載置し、該吸収性コア4の両側縁から延出した部分を、該吸収性コア4の他面側に折り返して接合する形態や、吸収性コア4の幅よりも若干幅広の2枚のコアラップシートを用い、これら2枚のコアラップシートをそれぞれ吸収性コアの上面側及び下面側に配し、2枚のコアラップシートにおける吸収性コア4の両側縁から延出した部分同士を吸収性コア4の側方で接合する形態等であっても良い。
また、吸収性コア4の平面視形状は、矩形等、任意の形状とすることができる。
また、本発明の吸収体は、液透過性の表面シート、液不透過性又は撥水性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備え、身体に当接させて用いられる吸収性物品の吸収体として好ましく用いられるが、それ以外の用途に用いることもできる。
【実施例】
【0035】
〔実施例1、2〕
パルプ繊維の坪量(繊維集合体の坪量に同じ)が220g/m2 、高吸収性ポリマーの坪量が290g/m2 となるように、パルプ繊維及び高吸収性ポリマーを、上述した吸収体の製造装置10と同様の構成を有する吸収体の製造装置におけるダクトに供給した。吸収体一枚当たりのパルプ繊維及び高吸収性ポリマーの量は、順に8.3g、11gであった。尚、ポリマー導入口は、ダクトの上半部の両側それぞれに設けられており、より具体的には、ダクトの側面それぞれにおける上面近傍に設けられたポリマー導入口(前記T1/T=0.275、前記W1/W=0)から高吸収性ポリマーを導入した。
【0036】
〔実施例3〕
パルプ繊維の坪量(繊維集合体の坪量に同じ)が167g/m2 、高吸収性ポリマーの坪量が265g/m2 となるように代えた以外は、実施例1と同様にして吸収体を製造した。
【0037】
〔比較例1、2〕
パルプ繊維の坪量(繊維集合体の坪量に同じ)が258g/m2 、高吸収性ポリマーの坪量が258g/m2 となるようにし、また、ポリマー導入口をダクトの上面における幅方向中央部に一つのみ設け、更に上述した部材41〜43を設けない以外は、実施例1と同様にして吸収体を製造した。
【0038】
〔比較例3〕
パルプ繊維の坪量(繊維集合体の坪量に同じ)が220g/m2 、高吸収性ポリマーの坪量が320g/m2 となるようにし、また、ポリマー導入口をダクトの上面における幅方向中央部に一つのみ設け、更に上述した部材41〜43を設けない以外は、実施例1と同様にして吸収体を製造した。
【0039】
実施例及び比較例で得られた各吸収体について、上述した方法により、基準区画及びそれに連続する区画を設定し、各区画に含まれる領域について、生理食塩水の遠心保持量を測定した。
そして、吸収体の長手方向及び幅方向それぞれについて分割領域の列毎に、遠心保持量の標準偏差、及び分割領域の列毎の標準偏差(列標準偏差)の、当該列中の分割領域の遠心保持量の平均値(列平均)に対する比(列標準偏差/列平均)を算出した。
これらの結果を、下記〔表1〕〜〔表6〕に示した。
【0040】
【表1】

【表2】

【表3】

【0041】
【表4】

【表5】

【表6】

【0042】
〔遠心保持量による評価結果〕
上記〔表1〕〜〔表6〕に示す結果から、実施例の吸収体においては、高吸収性ポリマーが吸収性コアの平面方向に均一に分散しており、比較例の吸収体においては、高吸収性ポリマーが吸収性コアの平面方向に均一に分散していないことが判る。
【0043】
〔ポリマーの移動のし難さの評価〕
実施例及び比較例の各吸収体について、下記方法により吸収性ポリマーの担持率を測定し、ポリマーの移動のし難さを評価した。その結果を、吸収性ポリマー(SAP)とパルプ繊維(パルプ)との配合比(SAP/パルプ)と共に表7に示した。
【0044】
【表7】

【0045】
〔担持率の測定方法〕
各吸収体を、長手方向の中央部において切断し、サンプル片AとBを得る。このサンプル片の切断面を真下にして、振幅14cmで、0.6回/1秒の速度で左右に往復50回振動を与える。この切断面から落下した吸収性ポリマーの重量を測定し、次式で高吸収性ポリマーの担持率を算出する。
【0046】
【数1】

【0047】
表7より、実施例1〜3の吸収体は、比較例の吸収体に比べて吸収性ポリマーの比率を高めても担持率が良好に維持されることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の吸収体の一実施形態を示す一部破断平面図である。
【図2】図1に示す吸収体のII−II線断面図である。
【図3】基準区画及びそれに連続する区画を設定した状態を示す吸収性コアの平面図である。
【図4】本発明の吸収体の製造に好ましく用いられる吸収体の製造装置を示す模式図である。
【図5】図4に示す吸収体の製造装置におけるダクトの、吸収性ポリマー導入口付近の構成を示す斜視図である。
【図6】図4に示す吸収体の製造装置におけるダクトの、吸収性ポリマー導入口を通る断面を示す鉛直方向断面図(図4のIII−III線断面図)である。
【図7】吸収性ポリマー導入口の好ましい形成位置を説明するためのダクトの断面図(図6相当図)である。
【図8】図4に示す吸収体の製造装置におけるダクトの、吸収性ポリマー導入口を通る断面を示す水平方向断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 吸収体
2 繊維集合体
3 吸収性ポリマー
4 吸収性コア
5 コアラップシート
10 吸収体の製造装置
20 回転ドラム
30 ダクト
31 吸収性ポリマー導入口
32 ダクトの上面
33 ダクトの下面
34 ダクトの側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維集合体に吸収性ポリマーが含有されてなる吸収性コアと、該吸収性コアの上下面を被覆するコアラップシートとを有し、
前記吸収性ポリマーは、前記吸収性コアの平面方向に均一に分散しており、
前記吸収性コアの上下面それぞれが接着剤を介してコアラップシートに固定されている吸収体。
【請求項2】
前記吸収性コア中の前記吸収性ポリマーの含有率が50〜90質量%である請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
前記繊維集合体の坪量が50〜250g/m2である請求項1又は2記載の吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−154775(P2008−154775A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346749(P2006−346749)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】