説明

吸収分光に基づく土壌中の硝酸性窒素濃度の測定

土壌中の硝酸性窒素濃度は、硝酸性窒素の200nmの吸収ピークに基づいて推定される。一実施形態において、デバイスは、200nmの吸収ピークに近い波長を含む波長領域(スペクトル動作領域)にわたって土壌と抽出溶媒との混合物の減衰スペクトルを測定し、次にその減衰スペクトルに基づいて硝酸性窒素濃度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月7日に出願された米国仮出願第61/215,696号明細書の利益を主張するものであり、その仮出願は開示内容の全体の参照により本願に包含される。
【0002】
1.技術分野
本発明は、概略的には、土壌中の硝酸性窒素濃度の測定に関する。
【背景技術】
【0003】
2.従来の技術
土壌中の栄養素レベルは、時空間的に大幅な変動がある。従って、栄養素レベルの変動に対処する、「精密農業」と呼ばれることが多い局所的な栄養素管理スキーマの開発への取り組みがかなり行われている。局所的な栄養素管理は、生産者が栄養素を必要な場所に局所的に適用するのを可能にすることによってその環境への影響を削減しながら農業効率を上げる。栄養コストの増加及び現在の慣行農法による環境への結果に対する意識の高まりが、農業効率の向上及び環境への影響をますます重要なものにしている。
【0004】
硝酸性窒素は、さまざまな作物にとって最も重要な栄養素の1つであるが、特に土壌中で移動しやすいので、空間的変動が大きくなりがちである。硝酸性窒素測定に対する従来の手法は、実験室ベースの土壌測定に基づく。土壌サンプルは、典型的には、実験室に郵送され、そこでサンプルが開けられ、分類され、乾燥され、粉末にされ、次に測定される。この処理は、極めて費用がかかり、検査結果を入手できるまでに最大2週間かかることがある。これは、かなりの難点になり得る。
【0005】
例として、とうもろこし産地における最盛期の窒素管理は、実験室ベースの土壌検査の納期が遅れるという理由で、困難なことが多い。とうもろこし生産者が土壌の窒素レベルを測定することができる時期を拡張することによって、とうもろこし生産者が最後の施肥を行う前に現場を検査するのを可能にするであろう。これによって、とうもろこし生産者が生育期の後で現場を検査して、より良い窒素管理の慣行を実施するのが可能になるであろう。さらに、生産者が降雨後の再検査などで現場を即座に再検査するのを可能にすることによって、生産者がさらに効率的な窒素管理の慣行を採り入れるのを可能にするであろう。さらに、実験室ベースの土壌測定のコストは、サンプル数に比例して上がるので、高いグリッド密度でサンプリングすると非常に費用がかかる。
【0006】
その結果、精密農業の利益を拡張するために、より速く、より簡単及び/又はより費用のかからない土壌測定技術を開発することへの関心が高まっている。使用される技術は、中赤外(mid-IR)分光法からイオン選択性電極の領域にわたる。しかしながら、このような方法のそれぞれは、費用、低精度、厳格な較正要件又は使用の困難さがいくつか組み合わされることで苦慮してきた。
【0007】
1つの手法は、必要な窒素を推測するのに使用することができる、実質的な色測定である正規化植生指数(NDVI)を測定することができるキャノピーセンサー及び衛星画像に基づく。このような方法は、典型的には、高速で単位エーカー当たり比較的低コストで動作する。残念ながら、水不足及び病気などの、作物の色に影響を与え得る多くの要因があることから、NDVI測定に対する数多くの障害がある。そのため、低精度に苦慮しているように思える。さらに、この方法を役立てるには、密集した作物キャノピーを必要とし、動作上の厳しい制限をその使用に課す。その方法は、旬が終わる極めて遅い時期しか使用することができない。
【0008】
イオン選択性電極を使用して、土壌の硝酸性窒素を高速で「on-the-go」測定する最近の取り組みもいくつかある。しかしながら、イオン選択膜の脆弱性は、土壌測定のロバスト性及び再現性に関する問題をかなり引き起こしている。イオン選択性システムも較正を頻繁に必要とするので、現場での日常的使用には魅力がない。
【0009】
一般に科学用品店又は製造業者から入手できる硝酸塩「試験紙」も使用されている。しかしながら、硝酸塩試験紙は、典型的には、実験室ベースの標準検査と比較して精度が悪いことで苦慮し、消費試薬を含む幅広いサンプル調整を必要とする。例えば、硝酸塩試験紙の標準の調整時間は、典型的には30分近くかかり、数多くの調整段階を含み、反応段階の精密なタイミングを必要とする。
【0010】
最近の別の手法において、光吸収は、土壌の硝酸塩含有量の現場観測に対して使用されている。しかしながら、この手法は、光プローブが多孔質ステンレス製ケーシング内に封入されたフィルタリング方法に基づく。その結果、その方法は、測定時間が非常に長い(数十時間)ことで苦慮する。さらに、この手法は、硝酸塩の吸収ピークを300nmで測定することに焦点を合わせている。しかしながら、300nmにおけるピークは、比較的弱い吸収の断面積なので、典型的な農業用土壌に見られる硝酸塩濃度値を測定する時に問題が出る。例えば、300nmのピークに基づく実験結果は、典型的には硝酸性窒素濃度が100ppm以下では感度を明示しないのに対し、農学的に関連する土壌の硝酸性窒素濃度レベルは、0−50ppmの領域である。
【0011】
従って、迅速で経済的な土壌の硝酸性窒素測定システムは、農業の硝酸塩使用の効率をかなり上げることができる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、硝酸性窒素の200nmの吸収ピークに基づいて土壌中の硝酸性窒素濃度を推定することによって、先行技術の制限を克服する。一実施形態において、デバイスは、200nmの吸収ピークに近い波長を含む波長領域で土壌と抽出溶媒との混合物の減衰スペクトル(吸収に加えて散乱による効果も含み得る)を測定し、次にその減衰スペクトルに基づいて硝酸性窒素濃度を判定する。その波長領域をスペクトル動作領域と呼ぶ。
【0013】
一実施例において、そのようなデバイスは、光源、検出器、サンプルチャンバー及びプロセッサを含む。光源は、200nmに近い(しかし、必ずしも200nmを含まない)十分な光量を含むスペクトル動作領域に広がる光を発生する。サンプルチャンバーは、土壌と抽出溶媒との混合物(例えば、水と土壌との混合物)を入れる。光は、光源からサンプルチャンバー内の土壌と抽出溶媒との混合物を通って検出器まで伝搬する。200nmにおける高吸収により、土壌と抽出溶媒との混合物を通る光路長は、例えば、ほとんどの場合で2mm以下と短い。検出器(例えば、分光器)は、スペクトル動作領域にわたる異なる波長(土壌スペクトル信号)で検出器が受信する光を示す信号を発生する。プロセッサは、土壌スペクトル信号を使用して水と土壌との混合物に対する減衰スペクトルを計算し、次にその減衰スペクトルに基づいて硝酸性窒素濃度を推定する。200nmにおける硝酸性窒素の吸収ピークの強度を推定するためのさまざまな手法は、減衰スペクトルの分析に基づく。
【0014】
1つの手法において、プロセッサは、土壌スペクトル信号、基準スペクトル信号及び暗スペクトル信号に基づいて減衰スペクトルを判定する。基準スペクトル信号は、サンプルチャンバーが土壌を除いた抽出溶媒だけを含む時に発生し、暗スペクトル信号は、検出器への光源入射を除いて発生する。この3つの信号を異なる時間及び異なるやり方で発生させることができる。例えば、同じ機器を使用して、信号の一部又はすべてを異なる時間に発生させることができる。基準スペクトル信号及び暗スペクトル信号を較正処理の一部として発生させ得る。別個の基準チャンバーを使用して、土壌スペクトル信号と並行して基準スペクトル信号を発生し得る。他のバリエーションも明白であろう。
【0015】
スペクトル動作領域は、20nmの半値全幅を有する200nmの吸収ピークを的確に推定するために選択される。その領域は通常、他の発生源(例えば、硝酸性窒素、土壌散乱、腐植酸、有機物/炭素、無機塩類など)からの寄与を十分裏付けるに足るデータを提供するために、より長い波長(例えば、可視光線、近IR及び/又は中IR)にも拡張する。光源は、関心のある波長において十分な出力を提供するために選択される。光源は、好適には、より長い波長が検出器の応答を支配しないように、深UV領域(およそ200nm)においてより長い波長に対して十分な出力を有する。
【0016】
ひとたび減衰スペクトルが計算されると、いくつかの異なる手法を使用して硝酸性窒素濃度を判定することができる。およそ200nmの減衰スペクトルは、硝酸性窒素の吸収ピークを含むだけでなく、他の発生源からの寄与も含む。硝酸性窒素濃度を推定する時にそのような他の土壌の干渉も考慮に入れる。いくつかの手法は、異なる発生源からの寄与による物理的モデルに基づく。例えば、各寄与のスペクトル形状が分かり、又はモデル化される場合、測定された減衰スペクトルを異なる発生源からの寄与の合計としてモデル化することができる。回帰モデルを使用して次に各寄与の相対重量を判定することができ、今度はその重量を使用して各発生源の濃度を推定することができる。
【0017】
別の手法において、他の土壌干渉からの寄与は、周知であり又は別個に判定され得る。それらを次に、減衰スペクトルから差し引くことにより、200nmにおける吸収ピークを推定することができる。ガウス関数をこの残留ピークに適合して硝酸性窒素濃度を推定することができる。
【0018】
他の手法はさらに実証的であり、例えば、既知の硝酸性窒素濃度を有する実サンプルを使用した訓練に基づく。部分最小二乗回帰は、可能な1つの実証的手法である。部分最小二乗回帰は、バックグラウンド干渉に左右されない硝酸性窒素濃度値に対する200nmにおける硝酸性窒素の吸収ピークの相関関係を抽出することができる多変量統計分析技術である。
【0019】
場合によっては、プロセッサは、土壌と抽出溶媒との混合物が実際に定常状態濃度に達するまで、濃度を推定する時間的力学を利用することもできる。土壌成分の抽出は、ある時定数を有する。土壌と抽出溶媒との混合物が特定の土壌成分に関して均質になるまで、いくらか時間がかかり得る。抽出処理の間に、その濃度を異なる時間に測定することができる。データ点は、次に、土壌と抽出溶媒との混合物がその定常状態に達するまで、定常状態濃度の生成を予想することができるため、処理全体の時間を節約する。
【0020】
硝酸塩が土壌から放出される速度は、土壌のタイプ及びその土壌がいかに素早く分解されるかによってある程度決まる。土壌を分解するためのさらに積極的な機構を用いると、硝酸性窒素濃度は、実時間を実質的に60秒以下にして推定されるはずである。
【0021】
上記の手法を他の技術と組み合わせることもできる。例えば、土壌サンプルを処理するのにフィルタリング又は遠心処理を使用することができる。土壌のタイプ、吸湿、伝導性、温度、周囲湿度及びpHといった他の発生源から獲得される情報を硝酸性窒素濃度の推定に使用することもできる。
【0022】
本明細書で説明される特徴及び利点は、すべてを包括しているわけではなく、特に多くの付加的な特徴及び利点は、図面、明細書及び特許請求の範囲の観点から当業者には明らかであろう。さらに本明細書で使用される言葉は主に読み易さ及び教示を目的として選択されたものであり、発明の主題を詳述又は限定するために選択されたわけではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
開示される実施形態は、他の利点及び特徴を有し、それらは添付図面と併用される時に、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲からさらに容易に明らかであろう。
【図1】本発明に従った土壌分析デバイスのブロック図である。
【図2】図1のデバイスの動作を図示したフロー図である。
【図3】本発明に従った別の土壌分析デバイスの図である。
【図4A】異なる発生源からの寄与を特定する減衰スペクトルのグラフである。
【図4B】異なる発生源からの寄与を特定する減衰スペクトルのグラフである。
【図5】減衰スペクトルに適合する曲線を図示したグラフである。
【図6】本発明の精度を検査する実験を集約したグラフである。
【図7】栄養素濃度を時間の関数としたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図表及び以下の説明は、本発明の好適実施形態の実施例のみに関わる。以下の考察から、本明細書で説明される構造及び方法の代替的な実施形態は、特許請求の範囲の発明の原理から逸脱せずに用いられ得る実行可能な代替手段として容易に認識されるであろうことに留意されたい。
【0025】
図1は、本発明に従った土壌分析デバイスのブロック図である。そのデバイスは、光源110、サンプルチャンバー120、検出器130及びプロセッサ140を含む。サンプルチャンバー120は、土壌と抽出溶媒との混合物を含むように構成される。それは、光源110からの光150が土壌と抽出溶媒との混合物を通って検出器130まで伝搬するように、光源110と検出器130との間で光学的に配置されている。プロセッサ140は、検出器130に結合されている。
【0026】
土壌分析デデバイスは、200nmにおける硝酸性窒素の吸収ピークを使用して土壌中の硝酸性窒素濃度を測定する。この例では、そのデバイスは、200nmの吸収ピークに近い波長を含む広波長領域(これをスペクトル動作領域と呼ぶ)にわたって土壌と抽出溶媒との混合物の減衰スペクトルを判断することによってこれを行う。
【0027】
図2は、このデバイスの動作を図示したフロー図である。210において土壌と抽出溶媒との混合物は、サンプルチャンバー120内に提供される。220において光源110は、スペクトル動作領域に広がる光を発生し、この光は、サンプルチャンバー120を照らす。230においてこの光は、土壌と抽出溶媒との混合物に伝搬し、そして異なる波長の異なる光量によって減衰する。出口光は、検出器130(典型的には分光器)へ入射し、検出器は240において異なる波長の光量を検出する。250において検出器130によって発生した結果として生じる信号は、土壌スペクトル信号と呼ばれ、土壌による減衰を裏付ける多くの波長にわたるスペクトルを示す。検出器130は、スペクトル動作領域にわたって感知できる。260においてプロセッサ140は、土壌スペクトル信号に基づいて土壌と抽出溶媒との混合物の減衰スペクトルを推定する。減衰スペクトルは、スペクトル動作領域にわたって計算される。次に270においてプロセッサ140は、その減衰スペクトルに基づいて硝酸性窒素濃度を測定する。
【0028】
さらに詳細には、スペクトル動作領域は、典型的には、深UVと可視光線の両方を含む。このデバイスは200nmにおける吸収ピークに基づくので、吸収の強度を推定するためにスペクトル動作領域は、このピークに近い波長を含む。例えば、スペクトル動作領域は、200nmの両側が少なくとも10nm(即ち、190−210nm又は20nmの半値全幅)、好適には20nm(180−220nm)又はさらに好適には30nm(170−230nm)を含み得る(しかし、これに限らない)。スペクトル動作領域は、200nmを含む必要はない。200nmの吸収ピークは幅20nmを有するので、ピークの両側の波長は、ピークを推定するのに十分可能である。例えば、スペクトル動作領域は、ピークの片側のみ:205nm以上、210nm以上、又は215nm以上である波長を含み得る。230nm以上も遠く離れた領域でさえも、その状況次第で良い結果を生成する可能性がある。200nmの吸収ピークを推定するには、典型的には、スペクトル動作領域の下端を判定する。このピーク周辺の波長サンプルが多いほど、一般的に良い結果につながるであろう。しかしながら、吸収ピークは20nmの半値全幅を有するので、スペクトル動作領域を160−170nmまで下方に拡張することは、ピークが幅3−4以下の領域を表す。
【0029】
上端側では、スペクトル動作領域は、硝酸性窒素吸収以外のスペクトルの寄与を裏付けるのに十分なはずである。そのため、スペクトル動作領域は、典型的には、可視光線まで拡張及びその域を超える可能性がある。典型的なスペクトル動作領域は、上端側が500−1100nm領域のある場所まで拡張し得るが、この領域外の波長も拡張可能である。
【0030】
下端及び上端領域から判断すると、典型的なスペクトル動作領域は、150−500nm、150−850nm、150−1100nm、170−1100nm、180−1100nm,190−500nm及び190−850nmを含む。スペクトル動作領域は、波長領域にわたって継続しなくてもよい。例えば、光源110が複数のデバイスを含む場合、スペクトル動作領域は180−220nm及び400−800nmと思われる。スペクトル動作領域は、離散光源、同調可能な発光波長を有する光源、又は狭線幅波長)を含むと思われる。
【0031】
図3は、本発明に従った別の土壌分析デバイスの図である。図3において、光源、検出器及びプロセッサは図示していない。サンプルチャンバー320は、200nmにおいてよく透過する2つの石英光学ウィンドウによって定義される。入射光はファイバー312によって届けられ、出口光はファイバー332によって集められる。土壌と抽出溶媒との混合物は、サンプルチャンバー320に接続されている混合チャンバー370内で作り出される。
【0032】
1つの具体的な設計において、光源は、ヘレウス社製紫外−可視領域ファイバー光モデルDTM6/50Sである。この光源は、2つの別個の制御可能な電球を有する。1つの電球は、片方の電球と比較してUVが強い。別個に制御することによってユーザ又は製造業者が、照明光のUV含有量を可視光含有量と比較して調節するのを可能にする。その光ファイバーは、標準のシリカファイバーである。検出器は、波長領域が190−850nmのステラネット社製EPP2000C分光器である。代替的な検出器は、波長領域が175−1100nmのオーシャンオプティクス社製Maya2000Pro分光器である。その分光器の波長領域は、光源よりも狭く、この例において分光器がスペクトル動作領域を190−850nm又は175−1100nmで判定する。
【0033】
この実施例の抽出溶媒は水である。水と土壌との混合物では、例えば、460mLの水が混ざった土壌5−7.5gの土壌重量比は約1−1.5%である。検出器を透過するのに十分な光がある限り、より多くの土壌を使用することができる。例えば、光学的に吸収の少ない土壌であれば土壌の比率をより高く(5%)して使用することができる。吸収の少ない土壌はまた、硝酸性窒素信号が十分強い限り使用することもできる。他の抽出溶媒は、塩化カリウム、フッ化アンモニウム及び塩酸(ブレイ法);重炭酸ナトリウム(オルセン法);又は硝酸アンモニウム、酢酸、フッ化アンモニウム、及びEDTA(メーリッヒ法)を含むが、これに限らない。
【0034】
土壌は、電動攪拌器によって水と混ぜられる。加熱又は超音波などの他の機構を使用して、水と土壌との混合物内にある関連する土壌栄養素の抽出速度を上げることもできる。フィルタリング、遠心処理、機械式選別又は他の手法は、混合物をさらに調整するのに使用され得る。この特定の設計は、複雑さが増して処理時間が長引くのを避けるためにフィルタリング又は遠心処理を使用しない。
【0035】
水と土壌との混合物は、サンプルチャンバー320に入って、その中を通り抜ける光を減衰する。高吸収により、水と土壌との混合物を通る光路は、好適には短く、典型的には1cm以下であり、一般的には2mmより短い。
【0036】
分光器は、水と土壌との混合物による減衰の後に残った光を検出する。この信号を土壌スペクトル信号Isoilと呼ぶ。この分光器は、スペクトル動作領域を1nm波長増分又は全波長領域にわたっておよそ650サンプルをサンプリングする。他の波長サンプリングも使用することができる。例えば、そのサンプリングは、200nmの吸収ピーク周辺(又は狭域スペクトル特性が予期されるその他の領域)ではより細かくなり、広域スペクトル特性のみが予期される領域ではより粗くなり得る。硝酸塩の吸収ピークは、ほとんどの場合5nmの分解能で合理的にサンプリングされ得るガウス幅〜20nmである。
【0037】
プロセッサは、土壌スペクトル信号Isoilに基づいて減衰スペクトルを推定する。この設計において、付加的な2つの信号:基準スペクトル信号Iref及び暗スペクトル信号Idarkも使用する。基準スペクトル信号Irefは、サンプルチャンバーが土壌以外の水で満たされた時の応答である。暗スペクトル信号Idarkは、検出器へ入射する光が無い時の応答である。例えば、光源をスイッチオフ又は遮断することができる。減衰スペクトルは次のように計算される。
【0038】
【数1】

【0039】
この手法は出力源のスペクトル変数に関して標準化されていることに留意されたい。
【0040】
soil、Iref及びIdarkの測定を、互いに関して異なる時間及び異なるやり方において行うことができる。例えば、その測定は、時間を多重化することができる。ある時間では、Idarkの光源がスイッチオフ又は遮断される。別の時間では、Irefの光源がスイッチオンされてサンプルチャンバーが水で満たされる。3番目の時間では、Isoilのサンプルチャンバーは、水と土壌との混合物で満たされる。異なる頻度で異なる測定を行うことができる。例えば、Iref及びIdarkは、Isoilのすべてのサンプル測定に対して測定されなくてもよい。1つの手法において、Iref及びIdarkは、定期的に(例えば、1時間に1度、又は1日に1度、又はある較正期間に1度)又は較正手順の一部として測定される。
【0041】
代替的な手法において、Isoil、Iref及びIdarkの測定を、異なる機器また複数の光ビーム路を使用して並行して行うことができる。例えば、第2のチャンバーを水で満たすことができる。サンプルチャンバーと第2のチャンバー(基準チャンバー)の両方を同時に精査することができる。
【0042】
さらに、3つの測定Isoil、Iref及びIdarkすべてを常に必要とするわけではない。ある場合では、同様又は代わりの情報は、他の発生源から獲得され得る。例えば、分光器がよく特性化されて安定している場合、Idarkの暗カウントは、容易に製造業者から供給されるか、又はその他の手順によって判定され得る。別の例として、減衰スペクトルは、サンプルチャンバーに入る前の光の強度及びサンプルチャンバーを出る光の強度に基づいて推定され得る。代替的には、基準測定は、光が水ではなく空気中(又は空のサンプルチャンバーを通って)に伝搬する光路に基づいて行われ得る。ある場合では、基準ビームが水(土壌を除く)か、又は空気だけ(水も土壌もない)のいずれかを通過し得る、ビーム基準測定を同時に行うこと(デュアルビーム)は有利であると思われる。水の吸収などの要因は、直接測定以外のモデル又は方法によって裏付けられ得る。
【0043】
1つの手法において、光は2つの光路をとることができ、1つの光路は水と土壌との混合物を通り、もう1つの基準光路は水と土壌との混合物を通らない(例えば、水も土壌も除いた空気のみを通る)。この光は、2つの光路を切り替え得るか又は2つのビームを各光路に1つずつに分割し得る。空気のみの基準測定Irefairは、土壌無しの水を通る基準測定Irefwaterと比較される。この2つの関係は、極めて安定していると考えられる。現場では、デバイスは、水と土壌との混合物Isoilの測定よび空気のみの基準測定Irefairを行う。次に、以前に判定されたIrefairとIrefwaterとの関係に基づくIrefairから判定することができる。
【0044】
減衰スペクトルα(λ)から、プロセッサは硝酸性窒素濃度を推定する。硝酸性窒素の濃度(200nmにおける吸収ピークを有する)は、200nmにおける減衰スペクトルを周知の硝酸性窒素濃度を用いた標準の減衰スペクトルと比較することにのみ基づいて推定され得る。しかしながら、200nmにおける測定は、一部には硝酸性窒素濃度により、一部には水と土壌との混合物内の他の干渉による。そのため、硝酸性窒素濃度の推定を、このような他の干渉を裏付けることによってかなり向上させることができる。
【0045】
土壌粒子、腐植酸及び/又は有機物、及び無機塩類からの散乱は、UV硝酸性窒素測定に干渉する3つの共通源である。図4Aは、異なる発生源からの寄与を特定する減衰スペクトルのグラフである。曲線410は、水と土壌の混合比が50:1で積極的に攪拌され、〜1mmの光路長セルをとるフィルターにかけられていない減衰スペクトルをグラフにしたものである。土壌は、〜8.5ppmの硝酸塩濃度を有する(カドミウム還元及び個別のアナライザーを介して測定される)。スペクトルは、200nm近くでははっきりとした硝酸塩の吸収ピーク、250nm近くでは弱い有機物の吸収ピーク、及び土壌粒子からの散乱による広域バックグラウンド減衰(500nmで〜1)を示す。
【0046】
図4Bは、溶解塩の濃溶液の2つの減衰スペクトルを示し、溶解塩のスペクトル形状が硝酸性窒素のものとかなり異なることを図示している。曲線420は25mMol KClであり、曲線430は40mMol(NH42SO4である。見ての通り、グラフで使用された濃度は、典型的な土壌に見られるであろう濃度よりもずっと高い。例えば、典型的な土壌レベルのK重量0−1000ppmは、水と土壌の溶液比が50:1の0−20ppmKに対応するであろうし、その間の流入は溶液中のKレベルの重量〜54,000ppmを示す。土壌を除いた基準測定を使用して水の供給による干渉の効果(イオン、残留硝酸塩など)を取り除くことができるため、水を蒸留又は精製する必要がなくなることにも留意されたい。
【0047】
異なる手法を使用してこのような干渉を裏付けることができる。いくつかの手法は、異なる発生源からの寄与の物理的モデルに基づく。その他の手法は、さらに実証的であり、例えば、既知の硝酸性窒素濃度を有する実サンプルに基づく訓練がある。
【0048】
好適な水と土壌の比率が20:1以下において、土壌粒子からの散乱は、最大のバックグラウンド信号を出すように予期される。しかしながら、このバックグラウンドのスペクトル形状(より短い波長で確実に増加する広域吸収/消散として現れる)は、200nmにおいてピークのガウス分布形状及びガウス幅20nmで明確に定義された硝酸塩の吸収とは異なる。このスペクトル形状の結果、スペクトルのデコンボリューション及び曲線適合技術使用してこの干渉を効果的に取り除き得る。さらに、必要であれば、水と土壌との混合物の濁度を下げるために凝集剤又は塩を付加し得るが、このような物質は着目しているUV領域で吸収されないように選択されるべきである。
【0049】
有機物及び腐植酸は、それらがUVにおいて吸収されることより、付加的で潜在的な干渉源である。これは主に、典型的には254nm周辺で吸収される共役炭素−炭素結合によるが、これは、存在する特定の分子種よって変わり得る。適切な曲線適合アルゴリズムを使用してこのようなスペクトル的にはっきりとした干渉の効果を取り除き得る。さらに、農業用土壌内の土壌有機物は、強熱減量技術を用いて測定すると典型的には1−10%であり、このうちのごく一部が反応性(共役)炭素であるので、これらの干渉の大きさは比較的小さいと予期される。
【0050】
いくつかの無機塩類(KCl、NaClなど)も、溶液に溶かされる時に深UVにおいて吸収することができる。しかしながら、有機物を用いると、この吸収のスペクトル形状は、典型的には190nm以下まで拡張している波長の減少に伴う吸収が比較的急に増加することから成る、硝酸性窒素の吸収スペクトルとは典型的に全く異なる。例えば、図4の流入を見てみる。このはっきりとした形状によって、この干渉が適切な曲線適合アルゴリズムを用いて取り除かれたことが認められる。
【0051】
1つの手法において、減衰スペクトルは、2つの硝酸性窒素の吸収ピーク(201nm及び302nmにおけるガウス曲線としてモデル化される)、及び硝酸塩、有機/腐植物吸収を裏付ける1又は複数のガウス曲線、及びレイリーバックグラウンド減衰から成るものとしてモデル化される。土壌の代表的なセットにこのタイプの分析を行うことによって、バックグラウンド干渉を取り除くのに最適に適合するパラメータを判定することができる。可能な適合アルゴリズムの例を以下に示す。
【0052】
【数2】

【0053】
ここでのλは波長であり、wjは関心のある種類に対する吸収ピークの幅であり、λjは吸収ピークの中心であり、Cj項に対する合計は潜在的な吸収干渉(硝酸塩、有機物など)であり、そしてAR及びBRはレイリー散乱を裏付ける。
【0054】
図5は、3つのガウス分布:200nmにおける硝酸性窒素の吸収ピーク(ガウス分布1)、レイリー散乱(ガウス分布2)、及び有機炭素(ガウス分布3)に基づく曲線適合を図示する。実曲線510は、減衰スペクトルを示す。
【0055】
他のタイプの物理的モードも使用することができる。例えば、硝酸性窒素による200nmにおける狭域(〜20nmの全幅)吸収ピークの上に広域バックグラウンドを適合することによって、土壌の硝酸性窒素に対するUV測定から土壌干渉を取り除くのが可能である。バックグラウンド適合関数の特定の実施形態は、多項式バックグラウンド、1又は複数のガウス分布バックグラウンド又は実証的に導かれた関数を含み得る。土壌と抽出溶媒との混合物の測定を行う時に最初に抽出溶媒内の純粋な硝酸性窒素を測定し、次に測定されたこれらの吸収ピーク及び幅を適合定数として使用することによって、硝酸性窒素による狭域ピークを特性化することができる。
【0056】
異なる手法において、硝酸性窒素濃度の推定を、例えば、学習アルゴリズム又は他の適応又は自己組織化アルゴリズムに基づいて実証的に判定することができる。訓練セットは、減衰スペクトル及びそれらに対応する硝酸性窒素濃度のサンプルを含む。訓練セットは好適には現場で予期される異なる変動、例えば、異なる土壌のタイプ及びバックグラウンドの寄与をカバーする。このセットは、選択されるアルゴリズムを訓練するのに使用される。測定された減衰スペクトルは次に、硝酸性窒素濃度を推定する訓練されたアルゴリズムに入力される。
【0057】
1つの手法において、部分最小二乗回帰が使用される。予備実験において、部分最小二乗回帰は、+/−3.5ppmの精度を達成することができる。土壌中の硝酸性窒素濃度に対する4ppmの精度は、土壌と水の混合比が1:20における硝酸性窒素濃度に対する0.2ppmの精度に対応することに留意されたい。これは、分析の多くのタイプに受け入れられるであろう。他のタイプの主成分分析も使用することができる。
【0058】
他の情報源も使用することができる。例えば、土壌のタイプが既知(例えば、砂状、シルト質、粘土質)である場合、それを硝酸性窒素濃度を推定するための入力として使用することができる。pH、伝導性、土壌と水の混合物の粘着性、土壌水分量、土壌の反射スペクトル、及び土壌密度も硝酸性窒素濃度を推定するための入力として使用することができる。
【0059】
いくつかの設計において、硝酸性窒素濃度の推定に加えて、プロセッサは、推定の信頼度も示す。例えば、ある減衰スペクトルに適合するのが難しい場合、プロセッサは、推定を提供するだけでなくサンプルに適合不良とフラグを立てると思われる。これは、例えば、減衰スペクトルが未知の干渉を含んだ場合に起こると思われる。必要に応じて、このサンプルは次に、廃棄又は分析のために実験室に送られ得る。
【0060】
図6は、実験を集約したグラフである。この実験は、さまざまな土壌タイプ(砂状、ローム質、粘土質など)を表す10個の土壌サンプルに基づく。各ドットは1つのサンプルを表す。これらのサンプルのそれぞれに対して、上記の手法(減衰スペクトル及びお200nmの吸収ピークに基づく)の使用及び標準のCd還元技術も使用して、硝酸性窒素濃度が推定された。点線は2つの技術の間の完全相関になる。サンプルのドットは、点線近く収まっている。これらの結果は、上記の技術を使用して商用関連のレベルにおいて土壌の硝酸性窒素レベルを素早く正確に予測する実行可能性を示す。
【0061】
ある場合では、抽出溶媒を有する土壌を混ぜる時に、抽出溶媒内の関心のある1又は複数の栄養素に分解するのにかなり時間がかかり得る。図7は、栄養素濃度(例えば、硝酸性窒素濃度)を時間の関数として、栄養素の最終濃度の時間外挿を図示したグラフである。これを使用して測定速度を向上させることができる。
【0062】
UV−可視分光法の機器は、1秒よりずっと短い測定時間の後に正確な信号を与えることができる。関心のある測定は、関連するすべての栄養素が溶液の一部分になった後の最終値であることが多い。測定された値が一定になる前に、飽和値を予測するために、測定されたデータ点を時間の関数として使用することによって有効な測定時間を減少させることができる。
【0063】
図7を参照すると、処理は土壌と抽出溶媒との混合から始まる。図7に示すように、関心のある栄養素の濃度(例えば、硝酸性窒素濃度)は異なる時間に計算されるため、濃度対時間のプロットを生成する。データ点は、最終の回答(例えば、指数又は他の漸近関数)を予測する関数形式に適合する曲線である。曲線適合は、より多くのデータ点が集められる時に更新される。適合のエラーも推定される。土壌測定サイクルは、推定されたエラーがある閾値より少ないか、又は設定されたある最大測定時間を超過した時に終結する。図7を参照すると、測定システムが基本的な抽出処理よりもずっと速い場合、適合関数は、抽出処理が実際に最終値に達する前にその最終値を上手く推定することができるため、濃度を推定するのに必要な時間が削減される。
【0064】
データ点を適合する処理をいくつかのやり方で行うことができる。1つの手法は、物理的に又は化学的に動機付けられた時間依存性の式に対するデータ点の最小二乗回帰を伴う。そのような1つの関数は、定数がマイナスで、指数関数的に減少する関数である。もう1つの関数は、時間の関数とした多項式である。もう1つの関数は、このような関数形式とさまざまな適合パラメータとのいくつかの線形結合である。時間依存性に適合する代替的な手法は、適切にラベル付けされたデータの大規模なセットで訓練されたマシン学習アルゴリズムの使用である。
【0065】
時間依存性に適合する速度及び形状に関するパラメータを使用することもできる。関連パラメータの例は、土壌の抽出溶媒/水分含量(すでに分解された栄養素の量に相関する)及び物理的抽出処理に関する土壌組成(粘土、シルト、砂、有機物などの割合)に関する測定を含む。
【0066】
さまざまな実施形態において、減衰スペクトルを、光を土壌と抽出溶媒との混合物に直接伝搬すること以外の技術によって獲得することができる。例えば、近接場光ファイバー吸収分光法又は減衰全反射法(ATR)は、減衰スペクトルを測定する2つの代替的な技術である。
【0067】
他の態様において、硝酸性窒素濃度の測定は、他の測定と組み合わされる。一実施形態において、光検出器は、散乱光を測定する。この信号は、微粒子(土壌と抽出溶媒との混合物に見られ微粒子など)が光を強く散乱するために光の透過測定に干渉するので、土壌干渉を削減するための付加的な入力として使用される。
【0068】
別の実施形態は、UV、可視光線、近IR及び/又は中IRスペクトルにおいて抽出溶媒を混合する前の、土壌の光反射率の測定を含み得る。波長の関数としての乾燥土壌の反射率は、一般的に土壌のタイプに相関する。関心のあるデータをエンドユーザに提供するため及び付加的な検査のために、このような情報を、本明細書で論じられた他の実施形態と併せて使用することができる。
【0069】
別の実施形態は、土壌水分、土壌の伝導性、温度、周囲湿度、土壌pH、土壌/抽出溶媒溶液の粘着性などの付加的な測定の統合を含み、それは、それ自体が有用であるだけでなく精度を上げるための上記の測定と統合することもできる。例えば、土壌の水分量を測定することによって、硝酸性窒素測定を、初期の土壌サンプルから水の重量を差し引くことによってさらに正確にすることができる。
【0070】
上記の手法は多くの利点を有する。ある実施例は、実験室ベースの土壌サンプリングの精度だけでなくかなり高速にすることと、低コストにすることとを組み合わせる可能性を有する。硝酸性窒素を土壌内で直接測定することによって、間接的なNDVI測定を妨げる干渉が避けられる。さらに、300nmの吸収ピークよりはむしろ200nmの吸収ピークを使用することによって、硝酸性窒素のより低い濃度を測定することができる。農業学的に関連させるために、硝酸性窒素測定システムは、一般的に0〜50ppmの領域で土壌の硝酸性窒素濃度を正確に測定することができるはずである。さらに、上述の手法を、化学試薬を用いない高速の携帯計器に実装することができるので、土壌化学実験室と比較してより時宜にかなった費用効果的な高密度分析を提示する。現場計器を使用して、現場にわたって高密度分析で実時間において硝酸性窒素濃度を実質的にサンプリングすることができる。
【0071】
これによって、生産者が土壌の硝酸性窒素レベルを急速で経済的に測定するのを可能にするため、生産者が自分達の肥料管理の決定を向上させることができる。例えば、窒素の分割適用(側方施肥を介して)は、窒素の使用効率を大いに向上させることができる。しかしながら、側方施肥は時間依存であり、どれくらいの窒素を適用するかを管理する決定は、現在の土壌検査手順のコスト及び納期の遅れによって制限されることが多い。肥料はかなり農業コストがかかり肥料の非効率的な使用は、社会的及び環境のコストを付加的に大きくする。窒素ベースの肥料に使用から生じる亜酸化窒素は、地球温暖化に拍車をかける大きな原因であり、農業からの硝酸塩流出は深刻な水質問題を引き起こす。このため、肥料管理を向上させることは経済的及び環境に大きな利益を得るであろう。
【0072】
本開示を読むにあたり、当業者はさらに付加的で代替的な構造及び機能設計を認識するであろう。そのため、特定の実施形態及び適用を説明したが、当然のことながら、本発明は本明細書で開示された明確な構造及び構成要素に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義された発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された本願発明の方法及び装置の配置、動作及び詳細において、当業者には明らかであろうさまざまな改良、変更及びバリエーションをなし得るであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル動作領域にわたる減衰に基づいて土壌中の硝酸性窒素を測定するためのデバイスであって、
前記スペクトル動作領域に広がる光を発生する光源であって、前記スペクトル動作領域は少なくとも230nmと同程度に短い波長を含む光源と、
前記スペクトル動作領域に広がる感度を有する検出器と、
土壌と抽出溶媒との混合物を含むように構成されたサンプルチャンバーであって、前記光は前記光源から前記検出器まで伝搬し及び前記サンプルチャンバー内の前記土壌と抽出溶媒との混合物によって減衰され、前記検出器は前記スペクトル動作領域にわたる異なる波長で前記検出器によって受信される前記光を示す土壌スペクトル信号を発生するサンプルチャンバーと、
前記検出器に結合されるプロセッサであって、前記土壌スペクトル信号に基づいて前記スペクトル動作領域にわたる前記土壌と抽出溶媒との混合物の減衰スペクトルを推定し、及び前記減衰スペクトルに基づいて前記硝酸性窒素濃度を推定するプロセッサと
を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記スペクトル動作領域は、200nmの硝酸性窒素吸収ピークを含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記デバイスは、50ppm以下の硝酸性窒素濃度を推定できることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記サンプルチャンバーは、前記光源と前記検出器との間で光学的に配置され、前記光は前記サンプルチャンバー内の前記土壌と抽出溶媒との混合物を通って伝搬することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記土壌スペクトル信号、基準スペクトル信号及び暗スペクトル信号に基づく前記減衰スペクトルを推定し、前記基準スペクトル信号は、前記サンプルチャンバーが土壌を除いた抽出溶媒を含む時に発生され、及び前記暗スペクトル信号は、前記検出器で前記光源入射からの光を除いて発生されることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
異なる時間において、前記サンプルチャンバーは、前記土壌と抽出溶媒との混合物又は土壌を除いた抽出溶媒を含み、前記検出器は、前記サンプルチャンバーが前記土壌と抽出溶媒との混合物を含む時に前記土壌スペクトル信号を発生し、及び前記検出器は、前記サンプルチャンバーが土壌を除いた抽出溶媒を含む時に基準スペクトル信号を発生し、前記プロセッサは、前記土壌スペクトル信号及び前記基準信号に基づいて前記減衰スペクトルを推定することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
土壌を除いた抽出溶媒を含むように構成された第2のサンプルチャンバーであって、前記プロセッサは、前記土壌スペクトル信号及び基準スペクトル信号に基づいて前記減衰スペクトルを推定し、前記基準スペクトル信号は、土壌を除いた抽出溶媒を含む前記第2のサンプルチャンバーから発生される第2のサンプルチャンバーをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記土壌と抽出溶媒との混合物によって減衰されないが前記光源から前記検出器までの基準光路であって、前記プロセッサは、前記土壌スペクトル信号及び基準スペクトル信号に基づいて前記減衰スペクトルを推定し、前記基準スペクトル信号は、前記基準光路に基づいて発生される基準光路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記スペクトル動作領域は、190−500nmまでの波長領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記スペクトル動作領域は、190−850nmまでの波長領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記スペクトル動作領域は、180−1100nmまでの波長領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記スペクトル動作領域は、200nm周辺に中心が置かれた少なくとも20nmの全幅の波長領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記スペクトル動作領域は、200nm周辺に中心が置かれた少なくとも40nmの全幅の波長領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記スペクトル動作領域は、200nm周辺に中心が置かれた少なくとも60nmの全幅の波長領域を含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記スペクトル動作領域は、160nm以下の波長まで拡張しないことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記スペクトル動作領域は、少なくとも215nmぐらい短い波長まで拡張することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
前記スペクトル動作領域は、少なくとも210nmぐらい短い波長まで拡張することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記検出されたスペクトル信号は、1nm又はそれよりも粗い分解能でサンプリングされることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記検出されたスペクトル信号は、5nm又はそれよりも粗い分解能でサンプリングされることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記検出されたスペクトル信号は、可視光線よりも細かい200nm周辺の分解能でサンプリングされることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記サンプルチャンバーが入る前記土壌と抽出溶媒との混合物の前記硝酸性窒素濃度を1分以内に推定することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記プロセッサの曲線は、前記減衰スペクトルに適合し、前記曲線の少なくとも1つの成分は前記硝酸性窒素の200nmの吸収ピークに基づいて適合することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記プロセッサは、土壌のタイプを受信し及び前記土壌のタイプに基づいて前記硝酸性窒素濃度をさらに推定することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記プロセッサは、土壌の伝導性を受信し及び前記土壌の伝導性に基づいて前記硝酸性窒素濃度をさらに推定することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記プロセッサは、部分最小二乗回帰を前記減衰スペクトルに適用して前記硝酸性窒素濃度を推定することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記プロセッサは、吸収スペクトルのセット及びそれらに対応する硝酸性窒素濃度に基づいて訓練され、並びに前記プロセッサは、その訓練に基づいて前記硝酸性窒素濃度を推定することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項27】
前記プロセッサの曲線は、前記減衰スペクトルに適合し、前記曲線の少なくとも1つの成分はガウスバックグラウンドスペクトルに基づいて適合することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
前記プロセッサは、前記硝酸性窒素濃度を測定時間の関数として推定し及び最後に推定された硝酸性窒素濃度に対する推定を予想することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
前記土壌と抽出溶媒との混合物を通る前記光路は、長くても1cmであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項30】
前記土壌と抽出溶媒との混合物を通る前記光路は、長くても2mmであることを特徴とする請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記光源のUVスペクトルを前記光源の可視スペクトルとは別個に制御することができることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項32】
前記光源は、2つの電球を含み、その1つは他方よりも比較的強いUVスペクトルを有し、及びそれらは別個に制御されることを特徴とする請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記土壌と抽出溶媒との混合物をフィルターにかけるフィルターであって、前記光は、前記フィルターにかけられた土壌と抽出溶媒との混合物を通って伝搬するフィルターをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
前記光は、フィルターにかけられていない土壌と抽出溶媒との混合物を通って伝搬することをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項35】
前記土壌と抽出溶媒との混合物を分離するための遠心分離機であって、前記光は、前記分離された土壌と抽出溶媒との混合物を通って伝搬する遠心分離機をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項36】
スペクトル動作領域にわたる減衰に基づいて土壌中の前記硝酸性窒素を測定するための方法であって、
前記スペクトル動作領域に広がる光を発生するステップであって、前記スペクトル動作領域は少なくとも230nmと同程度に短い波長を含むステップと、
前記光を減衰する土壌と抽出溶媒との混合物を提供するステップと、
前記減衰された光を検出するステップと、
前記スペクトル動作領域にわたる異なる波長で検出された前記光を示す土壌スペクトル信号を発生するステップと、
前記土壌スペクトル信号に基づいて前記スペクトル動作領域にわたる前記土壌と抽出溶媒との混合物の減衰スペクトルを推定するステップと、
前記減衰スペクトルに基づいて前記硝酸性窒素濃度を推定するステップと
を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526289(P2012−526289A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510013(P2012−510013)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/034048
【国際公開番号】WO2010/129874
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511269509)ソラム インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】