説明

吸収性のインプラントならびに止血および骨欠損の処置における、それらの使用

【課題】出血および欠損のような骨の状態の管理、処置、血量および有利な制御に関する吸収性インプラントの提供。
【解決手段】分散媒体と密接に混合された微粉末充填剤の医学的に有用な吸収性のパテ様および非パテ様組成物で、外科的介入または外傷に起因する骨出血の制御のための、およびおよび骨治癒を改善するための下記成分を含有する骨誘導性マトリックス。成分1.カルボン酸アニオンおよび金属カチオンを含む、微粉末化カルボン酸塩、と成分2.下記成分2のグループa)からg)から成る群から選択されるメンバーを含む、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2003年9月23日出願の米国特許仮出願60/504,978の優先権を主張する。
連邦政府の援助を受けた研究または開発に関する声明(該当なし)
コンパクトディスクで提出された配列表、表もしくはコンピュータープログラムリストに関する参照(37CFR 1.52(e)(5)参照)(該当なし)
【0002】
発明の背景
技術分野
本発明は、様々な粘度、結合力および粘稠度を有する物質、最も特にパテ様物質ならびにクリーム、泥膏、軟膏、ローションおよびゲルの使用を介した、出血および欠損のような骨の状態の管理、処置、血量および有利な制御に関する。より特に、吸収促進剤、骨生長誘発物質、および各々感染または腫瘍増殖の危険性を減少させるための抗感染剤または抗新生物剤、鎮痛剤、血管収縮剤および止血剤のような凝血誘発剤を含み得る、様々な新規の、外科的にインプラント可能な、吸収性の製剤を骨止血デバイスおよび/または骨治癒または治療アジュバントとして使用する。該組成物はまた放射線不透過剤および着色剤も含み得る。
【背景技術】
【0003】
関連技術の記載
海綿骨質および皮質骨は、その血管構造が破壊されたときに出血する、相対的に血管が多い組織を含む。故に、骨が外科的に切開されるか、または、例えば、開放骨折または複雑骨折で、外傷により骨折したとき、医学的に解決すべき少なくとも2種の主要な問題が存在する。第一のものは、骨からの出血の発生である。骨からの出血が続発したとき、それは、不利な外科的結果を防止するために止めるか、または有効に制御(止血)しなければならない。第2の問題は、傷ついた骨の治癒を促進するための骨の生長(骨形成)である。骨を外科的に切除する一般的方法は、胸骨の切断を伴う開胸手術、股関節インプラントを含む整形外科的および背骨手術、脊椎または頭蓋切開を伴う脳外科的手術、切断術、外傷処置、および多くの他の方法を含む。
【0004】
現在まで、骨止血は、(i)市販の非吸収性の“骨蝋”の出血表面への手動での浸透、(ii)酸化セルロースまたは微結晶性コラーゲンのような種々の止血剤の使用および(iii)電気メスの1種またはそれ以上により達成している。これらの技術のいずれも、何ら明白な程度まで骨形成を促進しない。有効で、急速に吸収性の骨止血物質のまだ満たされていない必要性に加えて、骨欠損間隙を満たし、このような空洞の治癒を促進するための物質の外科的要求もある。この目的で外科医に現在利用可能な様々なペースト様物質は、ほとんど一般的に、適当な生体適合性媒体に懸濁した粗製に粉砕された、脱塩異種骨を利用する。これらの組成物は、骨形成を誘発し、欠損を治癒するために設計されているが、それらの粘稠度、非結合性およびそれらの組成の物理的特性のために、損傷した骨に確実に付着せず、有効な止血剤ではない。
【0005】
骨止血および骨治癒各々に関する先行技術の2つの主体がある。下記のように、現在まで、主として、可塑性非吸収性の蝋を利用した製品のみが、外科医にとって骨止血に利用可能なものであった。間に合わせの、例えば、酸化セルロースを用いたデバイス、ならびに電気メス(下記)の骨破壊的使用の欠点は、満足のいく代替物ではない。
【0006】
技術の最初の主体は、特に、有効な機械的タンポナーデとして働き、血が流れるのを防止する、手で出血している骨表面の孔に押しつける骨蝋に向けられている。現在利用可能な骨蝋は、非吸収性の成分、例えば蜜蝋、パラフィン、ワセリン、脂肪エステル可塑剤などから成る。これらの製品は、使用前に温めなければならず、そして、柔らかく、練ることができ、外科医によって切断した骨表面上または骨表面内に広げられるようになる。利用可能な骨蝋が吸収性でなく、外科医が置いた場所にいつまでも残るために、それらは骨形成を阻害する永続的な物理的バリアとして働き、それにより骨治癒を妨げるか、遅くする。加えて、このような部位は、永続する感染の術後繁殖起点として作用する。このような感染が起こったら、それは通常慢性化し、慣用の抗感染剤治療を使用した処置が困難であり、感染部位を外科的摘出するための、再開放がしばしば必要となる。これらの理由のために、骨蝋は広範な整形外科的使用を享受しない。
【0007】
この適用において使用される他の製品または技術は、軟組織止血に適応される酸化セルロース製品、例えば、Surgicel(登録商標)を含み、これは吸収性であり、骨蝋について上記のような合併症を誘発するとは予測されない。しかしながら、それらは、その不適切な物理的形態(織物)のために有効な止血製品ではなく、骨孔内に接着しないため、切断した骨で有効に使用することが困難すぎる。
【0008】
流れている閉じている血管を熱により焼く電気メスは時間がかかり、広範な組織傷害を起こし、骨形成を遅延させる可能性があり、正常な骨癒合を妨害する軟組織内部生長を起こし、全般にそして特に脊椎手術の整形外科的手術の困難な問題を提示する。
【0009】
単独でまたはフィブリンと組み合わせて種々の送達媒体に懸濁している様々な形態のコラーゲンが骨止血剤として提案されているが、例えば、貯蔵安定性、凝集性および生体適合性に関する問題が、実行を妨げている。
【0010】
合成吸収性ポリマーのこの適用への適合は、おそらく、加水分解的に不安定な合成吸収性ポリマーを、妥当な包装物の貯蔵寿命、有用な取り扱い特性ならびに許容される生体適合性および吸収速度を有する実用的な製品へと適当に製剤化することが技術的に困難であるために、成功していない。
【0011】
先行技術の主要な第2の主体は、骨治癒および骨欠損の処置に関する。先行技術文献が主に記載している骨治癒は、切除された骨空洞のような欠損に適用されるように、処理された粒子の異種骨を送達し、担持するための、生体適合性吸収性媒体の開発である。様々なポリヒドロキシ化合物、ポリオールのエステル誘発体、ヒドロゲルなどを含むこれらの液体またはペースト様媒体は、媒体の粘度を増加させるための添加剤(媒体の分散を遅らせ、それによりインプラントした塊の凝集性を延長するため)または新しい骨生長を誘発するような因子を含むことがある。抗感染剤、抗腫瘍剤および他の添加剤もこれらの製品に関して記載されている。これらの組成物が、骨止血剤として適用され、作用し、または文献に記載されそして請求されている例はない。
【0012】
A. 骨止血
吸収性の骨止血剤を提供する試みは、完全には成功していない。フィブリンおよびコラーゲンを含む吸収性の骨シーラント(英国特許1,584,080)は、手術室での混合が必要である。報告されている、ポリエチレングリコール中の微小繊維コラーゲンの止血分散(米国6,117,444)は、グリコールが消費されるため、結合力を失うのが早すぎる。軟組織止血のために設計された微結晶性コラーゲン凍結乾燥スポンジ(米国6,454,787)は、骨出血制御に適したものではない。ポリラクチド(米国4,186,448)、ラクチド/グリコリドオリゴマー(米国5,143,730、6,420,454)、鋳造可能ポリマーブレンド(米国5,641,502)、吸収性の、ヒドロゲル形成合成物(米国6,413,539)を使用した止血剤は、骨止血には容易に適用されない。合成吸収性ポリマー物質であるポリジオキサノン(米国4,443,430)は、生体適合性、プロトン性送達媒体中の相対的な不安定性のため、用いるのが困難である。他の吸収性のポリエステル、例えばカプロラクトンポリマー(米国6,485,749)が骨蝋の代替物として記載されている。
【0013】
好ましくは脂肪酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、吸収促進剤、例えば、デキストランおよび媒体、例えば、ヒマシ油を組み合わせた室温でパテ様粘稠度の系(米国4,568,536)が、歯周病を処置するための、抗生物質、例えば、メクロシクリンスルホサリチレートおよび他の薬理学的活性剤を送達するための吸収性の、生体適合性マトリックスとして開発された。しかしながら、この技術は、米国4,439,420および米国4,650,665に記載の類似の吸収性の組成物と共に、それらが、急速な骨治癒に最適と考えられない長期間にわたる吸収時間のための薬剤送達のために設計され、それらが、毒物学的に許容されないインプラント材料であると現在考えられているポリサッカライドであるデキストランを包含するため、不十分である。
【0014】
B. 骨欠損治癒
骨欠損治癒のため(止血のためではない)に設計された物質は、ポリオール、例えば、グリセロールおよびポリオール誘発体、例えば、グリセロールモノアセテート(米国5,073,373、米国5,484,601)から成る群から選択される生体適合性担体中の、通常1から12mmの間の粒子サイズを有する、粉砕した異種の脱塩骨形成性皮質骨および/または海綿骨粉末に基づく。例えば、抗感染剤および抗腫瘍剤、界面活性剤、ビタミン、内分泌組織など、多くの添加剤がこの組成物に関して言及されている。この方法の変法(米国5,284,655)は、膨張剤と接触させた後、脱塩骨成分の容量の少なくとも10%の増加を必要とする。脱塩骨粒子を膨張させるための生体適合性懸濁化剤は、ポリオールおよびそのエステル、スクロース、ポリサッカライド、アルギン酸、アミロース、寒天などから成る群から選択される。5,073,373特許のさらなる態様(米国5,290,558)は、流動性粉末を提供し、多数の天然および合成ポリヒドロキシ物質ならびにそれらのエステル誘発体を、脱塩骨粉末と様々な添加剤、例えばBMP、IGF−1、抗感染剤、ヒドロキシアパタイト、界面活性剤、生体内分解性ポリマーおよび様々な濃縮剤、例えばPVA、PVP、CMC、ゼラチン、デキストラン、コラーゲン、ポリアクリル酸塩などのための媒体として請求している。骨欠損充填剤(米国5,314,476)の取り扱い特性、特に懸濁媒体が消散した後のインプラント接着を改善するために、相対的に高い(10:1)平均長さ対平均厚さ比の脱塩骨粒子を’558特許に記載の媒体に懸濁する。全く異なる試み(米国6,030,635)において高分子電解質、例えばヒアルロン酸ナトリウム、キトサンおよびN,O−カルボキシメチルキトサンの水溶液を使用した、粉砕した脱塩骨担体が請求されている。これらの粘性の、高分子量ヒドロゲルは、抗感染剤および他の添加剤を含み得る。米国特許6,030,635(米国6,437,018)の変法は、より小さい粒子サイズの石灰化または脱塩骨のためのより粘性のヒドロゲル担体を形成させるための、リン酸ナトリウム緩衝液の添加を含む。
【0015】
最近公開された特許(米国6,565,884)は、レシチンまたは不飽和トリグリセリド、例えばコーン油含有レシチンに懸濁させた脱塩骨基質を利用した組成物を記載する。本製品は骨生長を誘発すると言われる。しかしながら、界面活性組成物は、インプラント後、容易に洗い流され得ることがありそうである。新規骨形成を刺激する有用な物質を提供するためのさらに別の試み(米国6,576,249)において、脱塩骨基質を水に溶解して粘性溶液を形成し、それに水溶性、ゲル様懸濁液を形成する石灰化または脱塩骨基質粒子を添加する方法が記載されている。
【0016】
先に記載のように、主に歯周病の処置のための、様々な薬剤の制御された送達のためのマトリックスとして作用する系の研究において、作業者が開発した骨(歯)に接着する吸収性の、生体適合性、パテ様組成物が、室温で柔軟であり(conformable)、適用が容易であった(米国4,568,536)。本組成物の主要な目的は、薬剤送達の延長であり、本システムは、骨止血剤として特に開発された以前に記載のパテ様組成物(米国4,439,420)を非常に利用していた。
【0017】
米国4,439,420に記載の組成物は、3種の物質、脂肪酸塩、好ましくはステアリン酸カルシウム、流体基剤、好ましくはヒマシ油、および吸収促進剤、好ましくはデキストランの組み合わせに基本的に基づく。この好ましい組成物は、筋肉内インプラントとしての吸収性を試験したとき、吸収に約4週間かかると記載された。止血デバイスの有効性に関する情報またはデータは存在せず、実際に骨止血デバイスとして使用したときの本物質の吸収速度を決定するための実験は行われていないようであった。骨梁の封入された間隙からの吸収は、モデルとして使用された解剖学的により“開放”されている筋肉内部位からの吸収よりも著しく遅いことが予測されるであろう。
【0018】
4,439,420特許は、3種の好ましい成分の代替物を記載している。ステアリン酸カルシウムの代替は10個から22個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸のマグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウムおよびバリウム塩(まとめて、脂肪酸塩)である。ヒマシ油の代替は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、ゴマ油、アーモンド油、綿実油、コーン油、オリーブ油、タラ肝油、ベニバナ油およびダイズ油(まとめて脂肪酸塩と混合して、遅延吸収性のパテ様塊を形成する分子)である。デキストランの代替は、Carbowas(登録商標)、Pluronics(登録商標)、グリセリンおよびプロピレングリコールであり、これは、術後に流体を吸収しおよび/または消失させ、それによりインプラント塊が組織内に残ることを物理的に妨害することにより、吸収促進剤として働く。
【0019】
4,439,420パテ様組成物が骨止血に適していない主な理由は、該材料が最終的には生物分解性であるが、吸収が遅すぎ、故に、物理的バリアとして作用することにより、新規骨生長浸潤および治癒を非吸収性の、パラフィン−ベースの骨蝋が行うのと同程度阻害することである。加えて、該特許に記載の好ましい組成物は、毒物学的に許容されない成分、すなわち、デキストランを含む。最後に、4,439,420組成物は“繊維状物質を全く含まない”ものであり、これは骨止血デバイスの望まれる特性である、最適骨形成には著しく不利であり得る。骨形成および治癒を促進するために脱塩骨、骨生長因子および繊維状コラーゲンのような薬剤をならびに感染を阻害するために抗感染剤を添加することは、4,439,420特許には記載されていない。
【発明の概要】
【0020】
発明の概要
本発明の製剤は、様々な粘度および結合力を有し、そしてパテおよび非パテ製剤粘稠度を含む組成物である。
【0021】
“パテ”なる用語は、本明細書では当分野で一般的に使用され、かつ当業者に既知の通りに使用する。様々な粘度の軟塊(例えばペストリー軟塊)、塑像用粘土、およびガラス工用パテが、適応および最終的使用に依存して、適当な製品の粘稠度の例である。骨に接着できるものを含む、様々な粘稠度のパテが本発明で使用できる。一般に、液体分散媒体と密接に混合した微粉末から製造された、柔らかく、鋳造可能であり、好ましくは非弾性であり、結合性の混合物であって、いずれの方向にも変形できる形を有するパテが、本発明のパテ様組成物に適した粘稠度である。下記に示す通り、しかしながら、上記のパテよりも低い結合力を有する組成物が本発明の範囲内であり、そしてより粘性で、高い結合力のパテがあまり適していない具体的な適用において使用し得る。本発明の目的で、本発明のパテとパテと見なされないが(すなわち非パテ)、まだ本発明の範囲内である物質の間の大きな差は、非パテが、パテ製剤の結合力よりも低い結合力を有することである。個々の本発明の非パテはクリーム、泥膏、軟膏、ローション、泡状物、ゲル、泡立てた卵白、ホイップクリームなどの結合力を有することにより特徴付けられる。好ましくは、該非パテは、本発明のパテの結合力の一部しか有さず、一般的に言って、パテで同じことが起こらないであろう小さい力で、容易につぶせるかまたは容易にばらせる傾向にある。下記の記載は、主に本発明のパテの内容を記載しているが、しかしながら、小さい結合力の物質が望ましいとき、当業者は平易に成分または特性を適切に変化させ、または同じ目的を達成するための他の物質を添加することは、理解されよう。
【0022】
本発明は、いくつかは以前から使用されているが、本願の分散媒体とは使用されていない微粉末充填剤と密接に混合した、以前はこのようなパテ様および非パテ様組成物の製造について報告されていなかった分散媒体を使用した、医学的に有用な吸収性のパテ様および非パテ様組成物の形成に関する。
【0023】
無菌の吸収性骨止血剤、すなわち、事実上即時の機械的止血を提供し、また、止血効果を落とすことなく相対的に短時間で体内に吸収されるであろう物質は、現在利用可能な物質よりも著しい医学的利点を有するであろう。それは骨形成および続く骨治癒の阻害が最小であろう。さらに、生長因子、特に例えば血小板由来生長因子(PDGF)および/または骨形態形成タンパク質などのような骨治癒アジュバントを、骨治癒工程を刺激するために、製剤に添加できる。さらに、コラーゲン、脱塩骨基質(DBM)および/またはヒドロキシアパタイトのような薬剤の添加は、止血性物質を、有利に骨伝導性(osteoconductive)および骨誘導性にする。適当な抗感染剤、例えばトブラマイシンまたはゲンタマイシンにより類型化される抗生物質またはヨウ素、銀塩、コロイダル・シルバーなどの静菌および殺菌物質の添加は、特に汚染された開放創傷、例えば複雑骨折において、感染の可能性を減少させるために働く。着色剤の添加は、手術工程中、視覚的に助けるであろう。放射線不透過性物質の添加は、X線を使用した術後後遺症の観察を可能にする。化学療法剤または放射線核種の添加は、パテを、例えば、腫瘍切除に起因する骨空洞に使用するとき、有用である。疼痛を軽減するための鎮痛剤化合物ならびに出血を減少させるための血管収縮剤および凝血誘発剤は有用な添加剤である。
【0024】
本発明の製品の製造に関して下記の新規で進歩的な概念は、少なくとも2種の成分、すなわち、充填剤である成分1、および、適当な比率で充填剤と密接に混合したとき本発明の製品の基剤を産生する分散媒体である成分2を含む。適当な成分2の選択は、許容される時間内に体内に吸収される組成物をもたらすであろう。このような場合、成分2は、それ自体吸収促進剤として作用し、そして、製剤は別の吸収促進剤を必要としないであろう。望むならば、しかしながら、本発明の組成物はまた、パテの体内への吸収の促進に働く任意の成分と共に提供され得る。
【0025】
故に、本発明は、外科的介入または外傷に起因する骨からの出血を制御するための、および骨治癒を促進するための骨誘導性マトリックスを提供するための、機械的止血性タンポナーデとして有用なインプラント可能な、適当に吸収性の、生体適合性パテ様組成物を提供する。
【0026】
従って、本発明の一つの局面は、物質としての滅菌可能パテ様組成物および、該パテ様組成物を骨の出血領域に物理的に押しつける工程を含み、故に機械的に出血を止め、その後、該組成物は術後、吸収され、体内から危険なく排出されるものである、その使用法を提供する。
【0027】
他の態様において、開放創傷において有用であるが、必ずしもこれに限定されず、抗感染剤をパテ様組成物に添加し、その後、術後にそこから放出され、術後感染の発生を阻害する。
【0028】
他の局面において、本発明は、最初の止血および新規骨形成の刺激の2つの目的のための新規パテ様組成物を形成するために、当分野で既知の非吸収性または吸収が遅い骨止血性物質に、1種またはそれ以上の石灰化または脱塩骨粒子、コラーゲン、ヒドロキシアパタイト、骨形態形成タンパク質および/または他の骨成長因子を添加することを提供する。
【0029】
他の局面において、本発明は、骨生長刺激性添加剤を含むパテ様組成物に、術後感染の発生を阻害するための、抗感染剤を添加することを提供する。
【0030】
抗生物質、静菌または殺菌物質であり得る抗感染剤を、パテ様塊に添加してよく、または可逆的に、パテ内に包含すべき添加剤、例えばゼラチンまたはコラーゲンと結合させてよい。例えば、抗感染剤としてのヨウ素使用において、ヨウ素とゼラチン、コラーゲンまたはPVPとの複合体を使用し得る。加えて、コロイダル・シルバー、銀塩、またはゼラチンまたは他のポリマーとの銀錯体を使用し得る。さらにまた、抗生物質を、上記のようにパテに添加できることに加えて、送達系の一部として、好ましくはパテの成分の一部として添加し得る。特に、粉末コラーゲンに結合したゲンタマイシンが、有用な抗生物質放出系の例である。同様に、抗新生物剤を同様の方法でパテ様組成物に、好ましくは遊離の薬剤として添加でき、有効な抗腫瘍活性物質を提供する。疼痛を軽減するための鎮痛剤、化学的止血剤として作用する凝血誘発剤、および抗炎症剤もまた添加し得る。さらに、放射線不透過性成分をX線観察を可能にするために添加してよく、そして着色剤を術中の作業を改善するために添加してよい。
【0031】
さらなる目的、特性および利点は、下記の記載から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の詳細な説明
本発明の組成物は、少なくとも2種および好ましくは3種、4種またはそれ以上の成分を含む組成物を含む。それらは最も好ましくは身体吸収性である。多くの態様において、それらはパテ様粘稠度を有する。一つの態様において、本組成物は、パテ様組成物を冒されている領域に適用することにより、骨からの出血を止めるのに有用な機械的止血性タンポナーデである。“機械的止血性タンポナーデ”とは、化学的手段を使用して出血を全部または一部止める化学的止血手段として働くものに対する対語として、組成物が、骨の出血領域に機械的に押しつけることにより、出血を止める働きをするものを意味する。他の態様において、本組成物は、機械的止血性であることに加えて、またそれらが、骨生長の誘発を助けるために付加的成分、すなわち骨生長誘発物質を含む点で、骨形成性である。本段落の最初のセンテンスで記載した少なくとも2種の成分のうち、成分1は、第二の成分、すなわち本発明の分散媒体成分2と密接に混合したとき、パテ様粘稠度を形成するのに十分な程小さい平均粒子サイズを有する微粉末充填物質である。成分1の例は、ヒドロキシアパタイト、カルボン酸塩、好ましくは脂肪酸塩、例えばステアリン酸カルシウムまたはその同族体、例えばラウリン酸カルシウム、または他の微粉末剤、例えば合成吸収性ポリマー、例えばポリグリコリド、ポリラクチド、ラクチドとグリコリドのコポリマー、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ならびに吸収性のガラス(例えば五酸化リン製のものなど)である。成分2分散媒体は、成分1と密接に混合したとき、パテ様インプラントの形成を可能にする液体である。本発明の2成分組成物が、本明細書に記載の適当な止血物質の基本的特性を提供するが、必要であれば、下記の任意の成分3から12を含み得て、これは必須ではない。例えば、任意の成分3は吸収促進剤、および任意の成分4は骨生長誘発物質である。他の成分は、本発明のパテ様および非パテ様組成物に、下記により詳述するような付加的特性を提供するために添加し得る。
【0033】
下記は種々の成分の詳細な記載である。
【0034】
成分1
成分1は、液体分散媒体である成分2と混合したとき本発明の組成物を形成する、微粉末化生体適合性身体吸収性物質である。成分1物質の平均粒子サイズが約50ミクロンまたはそれ以下であるとき適当な組成物が得られるが、特にパテ様組成物が望まれるとき、好ましい平均粒子サイズは約3〜約25ミクロンおよび最も好ましくは約6〜約15ミクロンの範囲である。非パテ組成物についての粒子サイズは、望むならば、パテ組成物よりも大きい。
【0035】
本明細書での使用に適した適当な材料の一組の例は、カルボン酸アニオンおよび金属カチオンを有する1種またはそれ以上のカルボン酸の塩であり、そのいくつかは当分野で既知であり、米国特許4,439,420および4,568,536に記載されている。適当には、該塩は、鎖中に約6個から22個の炭素原子、および好ましくは8個から20個の炭素原子を有する飽和または不飽和カルボン酸のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウムまたはバリウム塩である。カルボン酸アニオンを供給する好ましい飽和カルボン酸は、脂肪族酸例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、およびそれらの中断同族体から選択されるが、最も好ましい酸は高級脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸であり、ステアリン酸が最も好ましい。パルミチン酸カルシウムおよびパルミチン酸アルミニウムおよびステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸アルミニウムが好ましい塩であり、ステアリン酸カルシウムが、その優れた安全性特性およびパテ形成特性のために、最も好ましい。しかしながら、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、またはラウリン酸アルミニウムも同様に適している。
【0036】
カルボン酸アニオンの供給に使用し得る適当な不飽和脂肪族酸の例は、オレイン酸およびリノール酸であり、それについては上記と同じカチオンを使用する。
【0037】
カルボン酸塩以外の微細な、例えば、約50ミクロンまたはそれ以下の物質が有効な成分1物質であり得ることが判明した。例えば、驚くべきことに、微粉末ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)が、とりわけ平均粒子サイズ約25ミクロンより小さいとき、とりわけ液体分散剤(成分2)としての酢酸トコフェリルと共に、優れたパテを形成することが判明した。さらに、他の物質、そのいくつかは成分4と関連して記載しているが、微粉末として提供されたとき、成分1として有用である。これらの例は、脱塩骨基質(DBM)、石灰化骨基質(MBM)、不溶性吸収性のコラーゲン、コラーゲン由来のゼラチン、モノサッカライド、およびポリサッカライドである。全ての生体適合性物質が、非常に小さな粒子サイズに変換されたとき、医学的に有用な組成物を形成するであろうと考えられる。本発明の組成物を形成するとき、例えば、成分1として6−12ミクロンのヒドロキシアパタイト粒子、適当な成分2、適当な成分3、例えばゼラチン有りまたは無し、および成分4として骨細片、例えば粒子サイズ約0.5から約1mmまたはそれ以上の脱塩骨基質または石灰化骨基質を含む組成物を産生することは、珍しくないであろう。他の例は、粉砕された合成吸収性のホモ−およびコ−ポリマー、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド、ラクチドとグリコリドのコポリマー、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ジオキサノンのおよびカプロラクトンのおよび炭酸トリメチレンのコポリマー、ゼラチン、モノサッカライド、例えばグルコースおよびマンノース、およびポリサッカライド、例えばカルボキシメチルセルロース、および、Surgicel(登録商標)に類型化できる酸化セルロース、デンプン、適当には粉砂糖の形でのスクロース、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサンおよびそのアセチル誘発体など、ならびに吸収性のガラスなどである。加えて、通常の意味では吸収性と見なされない、ある生物学的活性物質、例えば生体ガラス(下記成分4に関連して詳述している)が、微粉末形で成分1として使用できる。例えば、約25ミクロン以下の平均粒子サイズの吸収性ポリマーが、例えば、酢酸トコフェリルまたは、米国特許4,439,420のトリグリセリド油、とりわけヒマシ油と混合したとき、有用で安定な吸収性の止血性パテを形成するであろう。故に、十分に小さい粒子サイズまで小さくできる全ての天然または合成吸収性ポリマーが、適当な適合性の媒体と混合したとき、安定な吸収性のパテを形成できる。
【0038】
五酸化リン(二酸化シリコンの代わりに)製であり、アルカリまたはアルカリ土類金属酸化物、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムをネットワークポリマーとして含む吸収性のガラスは水性媒体にゆっくり溶解し、そして成分1として使用できる。加えて、このような化合物は、吸収促進剤、すなわち、成分3として使用でき、この場合、それらは成分1として使用するときのように微粉末形である必要はないであろう。米国特許4,612,923は、これらのガラスの製造の先行技術ならびに合成吸収可能手術デバイスのための強度強化剤および硬度増強剤のための添加剤としての適用に関する。米国特許4,612,923の実施例1に記載の325メッシュガラスを、さらに50ミクロン以下まで粉砕したとき、得られる微粉末は、米国特許4,439,420および本明細書に記載の媒体と混合したとき、医学的に有用な吸収性のパテをもたらす。このようなガラスの水溶解(吸収)速度は、アルカリ金属酸化物の割合を増加させることにより増加でき、アルカリ土類金属酸化物の割合を増加させることにより、減少できる。
【0039】
上記のこの新規の試み、すなわち、充填媒体成分1の粒子サイズを劇的に減少させることによる有用な吸収性のパテの形成は、先行技術の多くの問題、とりわけ骨止血剤としての合成吸収性ポリマーのそれを解決する。
【0040】
成分2
第2の成分、すなわち、本発明の組成物を得るために成分1と混合する物質として、医学的パテを製造するための分散媒体として現在まで用いられていなかったいくつかのクラスの物質を記載し得る。最初は、成分2は生体適合性であり、好ましくは、液体形が、パテまたは非パテ塊を形成するための成分1との混合を容易にするため液体であることに注意すべきである。しかしながら、成分2はまた、液体媒体(液化剤、下記により詳細に記載する通り)を成分1および2の媒体として作用させるために使用したとき、固体でもあり得る。
【0041】
本明細書で使用する用語の理解を助けるために、そして本発明のこの態様と先行技術との区別を助けるために、おそらく、現時点では、本明細書で使用する化学基の性質を、適当な化学的区別を確実にするために、関連する古典的化学用語の簡単なレビューにより強調するのが有用であろう。
【0042】
カルボン酸は、OH基のカルボニル官能基への共有結合を介した結合により定義される物質である。結果として、カルボン酸はカルボニル官能性(例えば、アルデヒド、ケトン)またはヒドロキシル官能性(アルコール)のいずれかを含む物質と、完全に異なる物理的および化学的特性を有する。同じ区別が、共有結合を介して直接結合していないカルボニル基およびヒドロキシル基の両方を有する物質、例えばケトンおよびアルコールの両方の特性を示すが、カルボン酸特性は示さないヒドロキシアセトンにも当てはまる。カルボン酸は常にカルボニル基とOH基の組み合わせであり、酸性特性を有するが、OH基はアルコールのヒドロキシル基の特性を有しない。モノカルボン酸は、したがって、モノヒドロキシ化合物とは記載できない。これを説明するために、両方ともOH基を含む2個の炭素化合物である酢酸およびエタノールを考慮する。酢酸において、OH基の水素原子は、水中でイオンとして遊離しているが、一方エタノールにおいては、ヒドロキシル基の水素原子はこのように遊離していない。故に、カルボン酸は解離し、塩基とカルボン酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウムを形成し、これは解離して塩基と塩を形成しないアルコールのヒドロキシル基とカルボン酸のOH基を明らかに区別する特性である。故に、カルボン酸をアルコール、1価アルコール、またはこのような用語のいくつかとして特徴付けることは、これが化学的意味でアルコールではないため、完全に間違いである。カルボキシルOH基を有しないとの単純な理由のため、またポリカルボン酸をポリアルコール、またはポリヒドロキシ化合物またはポリオールと呼ぶことはできない。このような基はアルコールとして特徴付けられない。これらの区別の例は、既知の分子、クエン酸を考慮して説明する。この物質は、3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基を同じ分子内に有する。クエン酸はモノヒドロキシ(1価)アルコールならびにポリカルボン酸である。クエン酸が3個のカルボキシルOH基を有するという事実は、このモノヒドロキシ化合物をポリヒドロキシ化合物と分類しない。反応性、合成および反応の大きな差異のため、全ての有機化学の教科書では、アルコールの化学は常にカルボン酸の化学と別の章で考えられている。
【0043】
アルコールは、炭化水素のヒドロキシル誘発体または水のアルキル誘発体のいずれかと見なされ得る。それらはR−OH構造(ここで、Rはアルキル基である)に類型化できる。カルボン酸ヒドロキシル基の容易にイオン化する水素原子と対照的に、R−OH水素原子は、事実上水中でイオン化しない。これに基づき、脂肪族アルコールは、酸性ではなく、むしろ中性と見なされる。1個またはそれ以上のヒドロキシル基は、例えば、プロパンが1個のヒドロキシル基(プロピルアルコール)、2個のヒドロキシル基(プロパンジオールまたはプロピレングリコール)または3個のヒドロキシル基(プロパントリオールまたはグリセロール)を有するように、炭化水素部分に付加し得る。プロピレングリコールおよびグリセロールは、ポリオールの単純な例である。ポリサッカライド、例えばヒアルロン酸は、各モノマー単位に多くのヒドロキシル基を含み、まとめてポリオールと呼ばれる。アルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのように短いアルキル鎖を有し得、または、それらは、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールなどのように、長いアルキル鎖を有し得る。ラウリン酸(C1123COOH、脂肪酸)およびラウリルアルコール(C1225OH、脂肪アルコール)は、それらが両方とも12個の炭素原子を有していても、酸化状態および官能性が完全に異なる分子であることに注意することは、非常に重要である。
【0044】
エステルは、一般に、カルボン酸とアルコールの反応に由来し、加水分解により元のカルボン酸およびアルコールに変換して戻り得る。故に、酢酸およびエチルアルコールは、酢酸エチルおよび水を形成するエステル化反応により結合する。脂肪(または植物油もしくは動物油)なる用語は、様々な長鎖飽和または不飽和脂肪酸とグリセリン(グリセリド)のエステルと認められる。パテ様物質を製造するための媒体として先行技術で言及されている油は、排他的に、グリセリド、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、オリーブ油など、ならびに単純脂肪酸エステル、例えばラウリン酸エチルである。パテ様物質を製造するための媒体として先行技術で提案されていないものは、遊離液体脂肪カルボン酸、例えば飽和カプリル酸および不飽和オレイン酸である。最も重要なことは、脂肪アルコールと低分子量モノ−またはポリカルボン酸のエステル、例えば、ラウリル酢酸エステル(ラウリルアルコールと酢酸のエステル)の使用が、パテ様物質の製造に関して完全に新規であり、そしてラウリン酸エチル(ラウリン酸とエチルアルコールのエステル)を言及する先行技術と化学的に異なることである。
【0045】
本発明の成分、より特に成分2の記載に戻って、該要素はより具体的に下記の通り記載される:
成分2の第1のクラスとして、C−C181価アルコールとC−C脂肪族モノカルボン酸の1個またはそれ以上の吸収性のエステルがある。1価アルコールは、C−C18アルコール、例えばオクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、およびそれらの中断同族体から選択される。好ましいアルコールは、高級脂肪族、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、およびステアリルアルコールである。C−Cモノカルボン酸と形成される有用なエステルの例は、ラウリル酢酸エステルおよびプロピオン酸ミリスチルである。
【0046】
成分2の第2のクラスとして、C−C181価アルコールとポリカルボン酸の1種またはそれ以上の吸収性のエステルがある。C−C181価アルコールには、エステルの第1のクラスで述べたC−C18アルコールに加えて、低級脂肪族、C−Cアルコール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、およびオクタノールがあり、これらは対応するエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、ヘキシルおよびオクチル部分を産生する。ポリカルボン酸は、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、クエン酸、リンゴ酸、およびエステル化ポリカルボン酸の、もしあればヒドロキシ官能基のエステル、とりわけアセチルクエン酸およびアセチルリンゴ酸から選択される。当業者には、アルコール/酸エステルの多くの組み合わせを上記から選択できることは明白であるが、1価アルコール/ポリ酸エステルのうち本発明での使用に好ましいものは、コハク酸ジエチル、コハク酸ジオクチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルおよびそれらの高級および低級同族体、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸ブチリルトリエチル、ならびに、それらの高級および低級同族体、リンゴ酸ジエチル、リンゴ酸ジペンチル、およびリンゴ酸アセチルジエチル、およびそれらの高級および低級同族体である。
【0047】
成分2として好適な他のクラスの物質は、高級C−C12から約C30まで、および好ましくは液体または液化可能1価アルコール、例えばオクタノールおよびデカノールである。このクラスのとりわけ驚くべきことに適した態様は、光学活性またはラセミ体形の、アルファ、ベータ、ガンマおよびデルタ形のいずれかの芳香族性アルコールトコフェロール(ビタミンE)、ならびにC−C10脂肪族モノカルボン酸、ポリカルボン酸またはそれらの混合物との液体トコフェロールエステル(本明細書でトコフェロールエステルと呼ぶこともある)である。有用なのは、トコフェロールエステル例えば、酢酸エステル、酪酸エステル、カプロン酸エステル、カプリル酸エステル、カプリン酸エステル、およびそれらの中断同族体、および前段落に記載のもののようなポリカルボン酸エステル、とりわけコハク酸、クエン酸、およびリンゴ酸のエステルであり、コハク酸エステルがとりわけ好ましい。
【0048】
成分2として有用な他のクラスの物質は、約10−14個の炭素原子を有する、炭化水素である。例えば、デカンおよびドデカンが適している。
【0049】
成分2として有用な他のクラスの物質は、液体または液化可能な飽和または不飽和の遊離カルボン酸、例えば非エステル化脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、カプリル酸、カプリン酸およびラウリン酸である。このクラスで、通常液体である飽和脂肪酸が適しているが、それらの不快な匂いのため、望ましくない可能性がある。室温で液体である低融点共融混合物由来の低融点飽和遊離脂肪酸混合物も適し得る。飽和遊離脂肪酸の一つの利点は、放射線滅菌に対する改善された安定性にあるが、一方、不飽和酸、例えば、オレイン酸は無酸素容器中で放射線滅菌する必要がある。固体酸の高級同族体も、液化媒体または他の適当な成分の存在下で成分1と混合して使用できる。それが成分2の液化を確実にし、同様に生体適合性である限り、何れの適合性液体も使用し得る。
【0050】
成分2として有用な他のクラスの物質は、全て約80℃より高い融点を有する、単純ジアルキルエーテルクラスおよびアルキルアリールエーテルクラスならびにアルキレングリコール、例えばエチレングリコールの環状ポリマー(クラウンエーテルとして既知)のエーテル、例えば、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−n−オクチルエーテル、および非対称性エーテル、例えばエチルヘキシルエーテル、エチルフェニルエーテルなど、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの、エチレンオキシド対プロピレンオキシドの様々な比率のかつ様々な分子量、好ましくは1000から10,000(Pluronics(登録商標))のブロックコポリマーである。それらは液体または固体形で利用できる。適当な物質の例は、下記実施例42、56および57に示すものである。成分2としての使用に適していることに加え、それらは吸収促進剤(成分3)としても使用し得る。それらは、商品名Pluronics(登録商標)で、BASF Corp. Mt. Olive, New Jersey 07828から入手可能である。
【0051】
成分2として有用な他のクラスの物質は、約80℃より高い融点を有する、対称性および非対称性ジアルキルケトンおよびアルキルアリールケトン、例えばメチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルペンチルケトン、および2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノンおよびメチルフェニルケトンである。
【0052】
成分2として有用な他のクラスの物質は、ポリヒドロキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物エステル、ポリヒドロキシ化合物の溶液、およびそれらの混合物、および脂肪酸エステルから成る群から選択される。これらの中で好ましいのは、非環状多価アルコール、ポリアルキレングリコール、およびそれらの混合物から成る群から選択される液体ポリヒドロキシ化合物である。前記の具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、トリメチルオールエタン、トリメチルオールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、グリセロールの脂肪酸モノエステルの液体溶液、例えばモノラウリン酸グリセロールである。前記の中の固体は、適当な溶媒媒体、例えばプロピレングリコール、グリセロール、モノアセチン、ジアセチン、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物に溶解または分散し得る。グリセリドとして、特記し得るのはモノグリセリド、例えば、酢酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、それらの同族体など、ジグリセリド、例えば二酢酸グリセリル、二カプリン酸グリセリル、二酪酸グリセリル、二ラウリン酸グリセリルなど、およびトリグリセリド、例えばオリーブ油、ヒマシ油、アーモンド油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、タラ肝油、ベニバナ油およびダイズ油である。前記のポリヒドロキシ化合物はまた、望むならば、成分3吸収促進剤として使用し得ることは注意すべきである。DBM粉末が製剤中に存在するとき(例えば、成分1)、ポリヒドロキシ化合物は非環状多価アルコール、非還元糖、糖アルコール、糖酸、モノサッカライド、ジサッカライド、水溶性または水分散可能オリゴサッカライド、ポリサッカライド、ポリアルキレングリコールまたはそれらの混合物ではあり得ない。
【0053】
一般的適用性の記載において、室温で液体である物質が成分2として好ましい成分2物質であり、それが液体であるため、液化剤が必要ではないことは注意すべきである。また成分2物質として有用であるのは、しかしながら、室温で固体である成分である。このような場合、とりわけパテが望まれるとき、固体成分2を液化または可溶化できる吸収性の生体適合性液化剤の使用を介して、成分1と混合する前、混合中、または混合後に、固体成分2を液体形に変換する。本明細書で使用する“液化剤”は、固体を可溶化できる薬剤、例えば、適当な溶媒、または、その用語の通常の意味では溶媒と見なされ得ない薬剤でさえある何らかの他の薬剤、または、固体を液化できる薬剤、例えば熱源(heat)、または、固体を液体中に分散液として分散でき、均質なパテ、クリームまたは泥膏状物質の形成を助ける薬剤を意味する。適当な薬剤は、成分2と類似しているが、厳密に本明細書で成分2として記載されているものではない。
【0054】
モノアルコールとモノ−またはポリカルボン酸のエステルを使用する前記の新規な概念および組成物は、吸収性の骨止血インプラントを提供する。相対的に低分子量の非毒性の急速に分解可能な単純エステル、例えばコハク酸ジエチル、クエン酸トリエチルおよびラウリル酢酸エステルが、成分2についてより高い分子量の脂肪酸トリグリセリド、例えば、ヒマシ油の代替物となることが判明した。本発明のこの局面は故に、成分2の当分野で既知のバージョン、すなわち疎水性のゆっくり吸収されるエステル、例えばリシノール酸トリグリセリド、ヒマシ油ならびに脂肪酸エステル、例えばミリスチン酸イソプロピルに類型化できるトリグリセリドおよび吸収促進剤の使用の必要性の一方または両方の除外を可能にする。
【0055】
当分野で既知の成分2物質、例えば米国特許4,439,420のものを含む、これらの当分野で既知のパテ組成物は、しかしながら、本発明の他の局面に従い、有用な骨形成性骨止血物質を得るために使用できる。例えゆっくり吸収される特性を有しても骨形成特性を有する骨止血性組成物を得ることが望まれるとき、当分野で既知の組成物を、骨形成性物質、例えば脱塩骨基質(DBM)、石灰化骨基質(MBM)、ヒドロキシアパタイト、または生長因子、例えば骨形態形成タンパク質および血小板由来生長因子(PDGF)の添加により改良し得ることが判明した。
【0056】
成分3−任意
通常親水性物質である第3成分は、吸収促進剤として任意に包含され、インプラントされた塊の分解を物理的に助けることにより、吸収の動態の制御するためにさえ使用し得る。先行技術で使用された加速剤は、それらが毒性でないか、他に生体不適合性でない限り、使用し得る。Carbowax(登録商標)、Pluronics(登録商標)(上記および下記の成分2に関する記載参照)およびグリセリン、プロピレングリコール、レシチン、ベタインおよびポリヒドロキシ化合物、例えばヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、およびキトサンおよびそのアセチル誘発体としてのこのような先行技術化合物を、本発明の組成物に、吸収促進剤として、上記の警告を有して使用し得る。この目的で使用するのに好ましいのは、しかしながら、膨張可能または可溶性および吸収性である他の物質、例えば、精製した粉末状で不溶性の繊維状であるが膨張可能なコラーゲン、より急速に吸収可能な可溶性トロポコラーゲン、例えばVitrogen(登録商標)およびより急速に吸収可能な冷水および温水可溶性ポリペプチド、例えばゼラチンとして例示できる、可溶性または不溶性のいずれかの天然または合成ポリペプチドである。レシチンおよびオクチルフェニルエトキシレート、例えばTriton(登録商標)X 100は、膨張性を助けるための生体適合性界面活性剤として使用し得る。ポリビニルピロリドンおよび他の可溶性、吸収性のポリマー、例えば成分2について上述のエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー;および相対的に親水性のポリペプチド、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸およびそれらの塩もこの内容において機能する。最も好ましくは、本発明の組成物は、第3の成分として、不溶性繊維状コラーゲン、可溶性コラーゲン、ゼラチン、オクチルフェニルエトキシレート(例えば、Triton(登録商標) X 100)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー、ポリビニルピロリドンまたは吸収性の五酸化リン製ガラスまたは前記の安定な混合物を含む。約200−500ミクロンの範囲の粒子サイズが適当な結果をもたらすが、より大きなまたは小さな粒子サイズを最終使用者の望みに依存して、用い得る。ゼラチン、PVPおよび他のポリマーは脱塩骨技術で濃厚剤として使用されているが、吸収促進剤としては使用されていない。ゼラチンの濃厚特性は、ゼラチンのブルームナンバーに依存して変化する。100−300のブルームナンバーを有するゼラチンが、本発明の組成物で適当であるが、この範囲から逸脱した価も、得られた製品が最終使用者に十分であれば、使用し得る。
【0057】
上記の特性を有する組成物を産生するための成分のある適当な比率の例は下記である:
成分1. 最終組成物の約5から80重量%、好ましくは約20から50重量%。
成分2. 最終組成物の約10から70重量%、好ましくは約20から50重量%。
成分3. 最終組成物の約0から約80重量%、好ましくは約10−70重量%。
【0058】
前記は、パテの粘稠度を有する物質の内容をほとんど提示しているが、ある適用において、相対的に低い粘性または低い凝集性を有することが望ましいことがある。例えば、本発明の組成物を、高い粘性のパテが非常に苦労してやっと適用できる骨の空間(ドリルで開けたまたは他の方法で形成された、例えば毛髪様骨折)に置くことが望ましいことがある。本発明のパテ組成物の低い粘性形は、他でも望ましいことがあろう。必要なことは、本明細書に記載の比率を、より液体の粘稠度を可能にするために変更するか、この目的で適合性の液体希釈剤を添加することのみである。この試みを使用して、注射可能形態の物質を同様に得ることができる。他の低い結合力の、非パテ組成物、例えば、先に言及したクリーム、軟膏、ゲル、ローションなどを同じ方法で製造し得る。
【0059】
成分4−任意
上記の製品は、適当な止血性製品であり、それはまた骨創傷部位での骨の生長を可能にするであろう。故に、それらは骨誘導性である。本発明の望ましい局面は、止血性製品をまた骨誘導性にし、すなわち、製品に、骨生長誘発物質(骨形成性物質)である成分4を骨生長を誘発するのに十分な量で添加することである。故に、骨形成性物質、例えば成長因子、例えば血小板由来生長因子(PDGF)、形質転換成長因子ベータ(TGF−ベータ)、インスリン関連生長因子−I(IGF−I)、インスリン関連生長因子−II(IGF−II)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、ベータ−2−ミクログロブリン(BDGF II)、骨形態形成タンパク質(BMP)およびこれらの組み合わせが骨形成を様々な程度で刺激する。他の骨生長誘発物質、例えば脱塩骨基質(DBM)、オステオネクチン、オステオカルシン、オステオゲニンおよびこれらの組み合わせ、石灰化骨基質(MBM)、および/またはヒドロキシアパタイト、正常な骨の成分、ならびに生物活性ガラスが本止血性製品に適切に骨形成性を付与する。ヒドロキシアパタイトは、無機リン酸カルシウムミネラルであり、とりわけ、合成的にまたは珊瑚(全ての有機物質が除かれているこのものから)から製造され、それは、新規骨組織の急速な内部生長を助けることが証明されている。生物活性ガラスは、生体適合性である微粉末ガラス粒子である。それらは、骨インプラント物質として有用である。一連の生体ガラスが、VITRYXXTMとして、Schott, GmbH, Mainz, Germanyから市販されている。製造者によると、体内へインプラントしたとき、表面が再形成され、“ヒドロキシカルボ−アパタイト”を形成し、その上に骨修復細胞が沈着し、新規骨組織を形成する。
【0060】
使用するとき、本発明の組成物に添加すべき骨形成性物質の適当な量は、物質に依存して、約0.001から約60重量%、好ましくは約0.001から約40重量%である。成分4、すなわち、骨形成性物質として使用するとき、大きな平均粒子サイズのDBMまたは石灰化骨のようなある種の薬剤を使用することが好ましい。適当な大きな平均粒子サイズは、約0.05から10mm、好ましくは約0.1から5mm、最も好ましくは約0.5から1mmである。しかしながら、より小さいまたはより大きな粒子サイズのまたはより高分子量またはより低分子量の成分4の使用が、最終使用者の要求を満たすならば、また適当であろう。
【0061】
本発明の組成物において使用すべき骨形成性物質の相対量に関して、骨増殖誘発有効量を使用するであろうし、これは、組成物において、物質が骨誘導性であるのに適当な量および平均粒子サイズであることを意味する。使用する量は、骨形成性薬剤の効果および該物質の平均粒子サイズに依存して変化し得る。例えば、成長因子、例えばBMP、血小板由来生長因子(PDGF)などは、わずかな重量パーセント濃度で有効であるが、一方DBM、石灰化骨基質およびヒドロキシアパタイトの有効量は、通常より高い重量パーセント濃度、例えば、約10%から約50%またはそれ以上であり、好ましくは成分1において使用するものよりも幾分大きな粒子サイズを有する。
【0062】
骨生長誘発物質の添加は、本発明の組成物を改善するだけでなく、それから新規組成物を産生するための先行技術の止血製剤も改善する。このような添加はこれらの止血製剤に同様に骨形成性を付与する。骨形成性物質の存在はまた、相対的に大きな粒子がパテ構造を“広げ”、故に、誘発された骨が増殖し得る空間を提供するため、骨誘発特性も改善すること考えられている。
【0063】
このような添加によりとりわけ改善される先行技術の止血製剤は、米国特許4,439,420および4,568,536に記載のものであり、これら各々は全ての目的のために本明細書に引用して包含する。故に、本願の明細書および特許請求の範囲は、上記の特許の完全な明細書および特許請求の範囲が逐語的にここに再現されているかのように読むべきである。簡便のために、これらの特許の製剤は、一般的に、骨からの出血を制御するための吸収性の止血組成物を含むと特徴付けられ得て、それらは:生体適合性脂肪酸塩を含む成分(該脂肪酸塩のカチオンはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウムおよびバリウムから成る群から選択される)およびエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、ポリヒドロキシ化合物、ポリエチレングリコールおよびメトキシポリエチレングリコール、トリグリセリドおよび脂肪酸エステルから成る群から選択される身体吸収性の生体適合性基剤を含む成分および任意の吸収促進剤を含む。故に、本発明のこの局面においては、骨生長誘発物質が上記の先行技術製剤に添加され、骨形成性止血性物質ならびに骨誘導性骨欠損充填物質を産生する。
【0064】
他の任意の成分
上記の組成物に、薬学的に有効量の抗感染剤を、単独でまたはその持続放出のための支持体に結合させて添加し得る。このような抗感染物質の例は、単独で、または、例えばコラーゲンに結合させたテトラサイクリン、バンコマイシン、セファロスポリン、およびアミノグリコシド、例えばトブラマイシンおよびゲンタマイシンを、および前記の組み合わせ、単独またはPVP錯体としてのヨウ素、単独、またはゼラチン、コラーゲンのような担体に結合したコロイダル・シルバー、銀塩などである。
【0065】
他の物質、例えば凝血誘発剤、例えば、エピネフリン、タンニン酸、硫酸鉄(II)、および3価金属と1価金属のダブル・スルフェート、例えばカリウムアルミニウムスルフェートおよびアンモニウムアルミニウムスルフェート;抗新生物剤、例えばメトトレキサート、シスプラチン、ドキソルビシン、およびそれらの組み合わせ、放射線核種、例えばストロンチウムストロンチウム89など;鎮痛剤、例えばベンゾカイン、リドカイン、テトラカイン、フェンタニル(強力な非オピオイド)など、抗炎症性物質、例えば非特異的イブプロフェンおよびアスピリン、またはCOX−2特異的阻害剤、例えばロフェコキシブおよびセレコキシブ(celeboxib);放射線不透過性物質、例えばヨード化合物、例えば、Ethiodol(登録商標)(Savage Laboratories)として入手可能なエチルモノヨードステアレート、およびバリウム塩、例えばステアリン酸バリウムを、それらの治療的または診断的目的を達成するのに有効な量で製剤に添加し得る。選択する着色剤の特性に依存して、着色剤、例えばゲンチアナバイオレット、D&C Violet #2、およびD&C Green #6が適している。
【0066】
本発明のある態様において、本発明の組成物を水と密接に混合することが望まれ得る。通常10%の程度までまたはそれ以上の小量の水の存在は、様々な方法で、とりわけ組成物の触感品質を変えるのを助ける。この点に関して、得られた組成物はしばしば、水の添加なしの組成物に存在し得るものよりも粗さが減少した感覚を与える。ある例において、より疎水性の媒体を基剤とするよりもむしろ水または他の水性液体を基剤とした、パテ様製剤またはパテより低い結合力を有する低い稠密度の非パテ製剤、例えばクリーム、泥膏、または本明細書で上記したような他のこのような物質を提供することが望まれる。充填剤、例えば金属脂肪酸塩、例えば、ステアリン酸カルシウムおよび本明細書に記載の他の非湿潤性充填剤は、水により濡れず、水でパテ様(またはより稠密度の低い)組成物を提供しない。しかしながら、我々は、小量の界面活性物質、例えば、レシチン、Pluronics(登録商標)、例えばPluronic L-35(登録商標)での充填剤の処理が、成分2が水性媒体であるとき、非湿潤性充填剤を、適当な脂肪酸塩−水製剤の製造を可能にするのに十分な可溶性を与えることを発見した。適当な水性媒体は水、塩水、種々の生体適合性緩衝溶液、種々の体液、例えば血液、血清、血液成分濃縮物などである。
【0067】
上記のパテはより疎水性の物質を使用して製造したパテと比較して潅水に抵抗性が低く、それらはより急速なインプラントの分解が望まれる骨欠損修復に適用を有する。非イオン性、カチオン性、およびアニオン性界面活性剤が適しているが、ドデシルトリメチル塩化アンモニウム、ナトリウムラウリルスルフェート、ノノキシノール−9、Tween、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Tergitol-7、すなわち、ナトリウムヘプタデシルスルフェート、および抗微生物界面活性剤、1−ラウリル−3−エチルベンゾ−トリアゾリウムブロマイドなどにより例示されるような、事実上全ての生体適合性界面活性剤を使用できる。非パテ様組成物、例えばクリーム、泥膏などは、さらなる量の水の使用により製造し得る。これは、水の代わりに血液を使用してパテ−またはクリーム−様組成物を形成することが望まれる、手術工程中にとりわけ有用である。
【0068】
本発明の凝血誘発剤の使用に関する前記の記載は、本組成物が使用に際して化学的に止血できる態様を説明する。すなわち、本発明の組成物への止血物質の添加は、これらの組成物が機械的止血性であろうとなかろうと、化学的止血物質として作用する能力を有する組成物を提供する。故に、既に機械的止血性であるパテは、凝血誘発物質の添加により、より優れた止血性となり得る。同様に、明白な機械的止血特性を欠き得る低い結合力のクリームまたは泥膏を、凝血物質の添加により止血性とできる。後者の例は、股関節手術における、本発明の血管収縮剤で修飾されたペーストの薄層の出血している寛骨臼への適用である。
【0069】
上記の成分は、適当な比率で添加したとき、様々な程度の多くの好ましい特性を有する、有用なパテ様および非パテ様薬剤を産生する。成分の種々の組み合わせが、パテ様特性を開発するための製造工程において、異なる時間および温度を必要とし得る。例えば、ある物質は、パテ様状態を達成するために他の成分より長くかかり得る。一般に、本発明のパテ様組成物は、合理的な時間内、通常30日以内に吸収性であるが、吸収時間はある適用のために数ヶ月またはそれ以上まで伸ばし得る。それらは通常、環境温度で手で鋳造可能であり、形作ることができ、血液の存在下で十分に取り扱いでき、かつ、生理食塩水で洗浄できる。それらは、触感が粘着性であるときがあるが、濡れたまたは乾燥した手術用手袋に、それほど付着することはない。それらは、DBMまたはある種の抗生物質のような放射線感受性物質が存在しないとき、放射線滅菌できる。
【0070】
選択した物質の実際の比率は、物質それ自体、使用する成分の数、および最終パテ組成物に望まれる使用に依存して変化するであろう。使用者は、成分の最終的な使用に望まれる他の特性を維持しながら、得るべき粘性、結合力、および粘稠度、すなわち流動可能な液体粘稠度から、クリーム、泥膏、軟膏、ゲルなどを介して、より凝集性のパテ様粘稠度までの必要性を指標にする。
【0071】
本明細書に記載の組成物は、外科的に使用するとき、無菌でなければならない。下記に示すもの以外、全て、例えば、標準コバルト60放射線源および25kGyの公称線量を使用して、滅菌可能である。例外は、脱塩骨基質、骨形態形成タンパク質、ある種の抗生物質、不飽和分子、例えばオレイン酸などの放射線感受性添加剤を含む製剤である。このような物質を使用するとき、塊のパテ様物質を放射線滅菌し、無菌的に予め滅菌した放射線感受性添加剤を添加し、続いて無菌的に包装することにより、無菌を達成し得る。
【0072】
本明細書に記載の組成物は、無菌または滅菌可能であり、いくつかの形に包装でき得る。包装物それ自体無菌または滅菌可能であり得る。組成物は、無定形(すなわち、形がないかまたは特定の形がない)の物質、例えば泥膏、クリームまたはパテ、またはその容器の形として包装し得る。それらは、一般に平行六面体形または一般に丸形であり、前記の例は小さい煉瓦型または平板(板状チューインガムの形)および、後者の例は円筒形、卵形または球形の製品である。あるいは、適用が許可し、粘性が適当であれば、製品を、適当な断面および形の孔を通して絞り出すかまたは押し出せる、シリンジ様またはプランジャーを利用したディスペンサーに包装できる。コーキンに適用するのに準じた機械を利用したデバイスも包含し得る。他の包装物は、例えば、何らかの適当な形で処置すべき表面に分配するために形作られ、大きさを整えられた孔を有する、歯磨き粉型チューブのような圧搾可能、変形可能チューブ、またはコーキンに使用するもののような折りたためるチューブを含む。包装物は、上包みとして、外部バリア、例えば、剥がせるブリスターポーチを含み、滅菌場所への包装物の無菌的送達を可能にし得る。
【0073】
本発明はまた本発明の組成物の使用も考慮する。例えば、一つの態様は、有効量の本発明の組成物のいずれかの、出血している骨への適用による、骨の出血の機械的制御法であり、ここで、該組成物は本発明のパテ組成物のような十分に濃い粘稠度を有する。このような場合、本組成物は機械的止血タンポナーデである。
【0074】
本発明の使用法の他の態様は、前記の凝血誘発剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかの適用による、骨の出血の化学的制御法である。パテの場合、本組成物は、化学的止血性タンポナーデである。凝血誘発剤もまた含む本発明の機械的止血性タンポナーデは、機械的止血剤および化学的止血剤の両方として働く。
【0075】
本発明の他の方法は、とりわけ本該組成物が、骨生長誘発物質、例えばDBM、石灰化骨基質、骨形態形成タンパク質、ヒドロキシアパタイトなどを含むとき、骨生長誘発剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかを骨の冒されている領域に適用することによる骨欠損における骨の生長を誘発する方法である。
【0076】
他の方法は、抗感染剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかを、処置すべき骨の冒されている領域に適用することによる、骨中または骨周囲の感染を処置する方法である。
【0077】
他の方法は、抗新生物剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかを、このような細胞を含む骨の冒されている領域に適用することによる、骨中または骨周囲の癌細胞を破壊する方法である。
【0078】
他の方法は、鎮痛剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかを冒されている領域に適用することによる、骨中または骨周囲からの痛みを軽減する方法である。
【0079】
他の方法は、抗炎症剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかを、冒されている領域に適用することによる、骨中または骨周囲の炎症を制御する方法である。
【0080】
他の方法は、放射線不透過剤を含む有効量の本発明の組成物のいずれかを冒されている領域に適用し、その後X線写真上に該領域を可視化し、該領域の状態を決定することによる、インプラントが適用されている骨中の状態を評価する方法である。
【0081】
他の方法は、充填剤をカチオン性、アニオン性、または非イオン性界面活性剤で処理し、水自体、塩水または体液、例えば血液、血清などの任意の液体源を使用して充填剤を処理することにより、水−ベースのパテを製造することによる、疎水性であり得る本発明で使用される充填剤の何れかに可溶性を付与する方法である。
【0082】
当業者は、組成物を適用すべき方法およびその量を知っているであろう。ある適用において、大量のタンポナーデを使用し得るが、他方では少量のみが必要であるか、望まれるかもしれない。
【0083】
下記の方法および例は、本発明の好ましい態様のより十分な記載を意図し、その有用性および適用性を証明するものである。
【0084】
下記実施例は、本発明の具体的態様を記載する。
【実施例】
【0085】
実施例1
本実施例およびその後の実施例において、特記されない限り、本組成物は、全ての乾燥試薬を最初に機械的に混合し、その後、徐々に何らかの液体試薬を添加することにより製造した。本組成物は所望の粘稠度が得られるまで、室温でスパーテルで“加工”した。ある例では、粘稠度を改善するための該物質が付加的成分を必要とするとき、その物質を添加し、混合物を所望のパテ様粘稠度が得られるまで、練るかまたは“加工”した。成分は重量部で示す。
【0086】
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
該サンプルは、優れた水抵抗性、物理的および止血特性および水抵抗特性を有するパテ様塊を産生し、すなわち、それは流れている水道水の力により流そうとする試みにおいて、強く抵抗した。
【0087】
実施例1a)
液体成分の比率を変えることにより、本発明の組成物はより低い(すなわちより液体の)またはより高い(すなわちより硬い)粘性となり得る。低い粘性製剤の例は下記である:実施例1のパテ製剤に3gのクエン酸アセチルトリエチルを添加する。得られる製品は、クリーム様粘稠度を有し、適当な環境下で、止血剤としてまたは薬剤のような種々の添加剤の送達剤として骨に適用し得る。
【0088】
実施例2
ステアリン酸カルシウムと骨生長誘発物質の部分的置換
a)成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
成分4 ヒドロキシアパタイト(6−12ミクロン粒子サイズ) 1g
得られる製品は、実施例1の製品と同等の特性を有するパテ様塊である。区別できる明紫色を付与するのに十分な小量のゲンチアナバイオレットを上記製剤に添加したとき、実施例1の製品の特性を有する着色製品が得られる。
【0089】
b)ステアリン酸カルシウムとヒドロキシアパタイトの完全な置換
成分1 ヒドロキシアパタイト(6−12ミクロン粒子サイズ) 2g
成分2 酢酸トコフェリル 2.5g
成分3 ゼラチン 2g
本組成物を室温で72時間静置し、実施例1の製品の特性を有する製品を産生した。
【0090】
実施例3
成分1 パルミチン酸アルミニウム 5g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
得られる製品は、実施例1の製品について記載したのと類似の特性を有するパテ様塊である。
【0091】
実施例3a)、3b)、3c)
実施例3のパテ様製剤を、実施例3製剤を下記のように修飾することにより、低い粘性とした:
【表1】

【0092】
製剤3aは、軟パテの粘稠度を有する。
製剤3bは、ケーキのアイシングのような濃いクリームの粘稠度を有する。
製剤3cは、冷やした蜜のようなゆっくり流れる粘稠度を有する。
これらの各々は骨に止血剤として適用できる。
【0093】
実施例4
成分1 ステアリン酸カルシウム 5g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
成分4 DBM 3g
得られる製品は、実施例1の製品の止血特性に加えて、骨誘導性の付加的特性を有する。
【0094】
実施例5
【表2】

得られる製品5aは、パテ様であり、実施例1のものと類似の物理的特性を有した。製品5bもまたパテ様であり、5aよりも早い吸収性である。Triton(登録商標)X 100 はDow Cemical Co., Midland, Michiganから入手可能である。
【0095】
実施例6
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 クエン酸トリエチル 3g
成分3 ゼラチン 3g
得られる製品はパテ様であり、止血剤として有用な物理的特性であったが、実施例5の製品と比較したとき、好ましくない。
【0096】
実施例7
成分1 ステアリン酸カルシウム 2g
成分2 クエン酸アセチルトリエチル 2g
得られる製品は、実施例1のものと同等の優れたパテ様特性および物理的特性を有する。
【0097】
実施例8
成分1 ステアリン酸カルシウム 0.5g
成分2 クエン酸トリエチル 1g
成分4 ヒドロキシアパタイト 2g
止血特性を有する低い粘性の注射可能組成物をもたらす。
【0098】
実施例9
成分1 ステアリン酸カルシウム .5g
成分2 酢酸トコフェリル 2g
成分4 ヒドロキシアパタイト 2g
優れたパテ様特性および水抵抗性を有する組成物をもたらした。
【0099】
実施例10
成分1 ヒドロキシアパタイト 2g
成分2 クエン酸トリエチル 2.5g
粗い骨表面に良好な接着および充填特性で容易に適用できる、組成物をもたらした。
【0100】
実施例11
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 酢酸トコフェリル 1.0g
成分2 クエン酸トリエチル 1.5g
成分3 ゼラチン 2g
得られる製品は実施例1のものと類似のパテ様物質であり、実施例1のものよりも幾分粘性であった。
【0101】
実施例12
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 ラウリン酸 4g
成分2 酢酸トコフェリル .5g
ステアリン酸カルシウムを融解したラウリン酸と混合し、良好なパテを形成し、それは冷やすと、固化した。この固体を次いで破砕し、トコフェロールと混合して良好なパテを産生した。
得られる製品は体温でパテ様粘稠度を有し、室温で幾分硬い粘稠度である。
【0102】
実施例13
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 クエン酸トリエチル 4g
成分2 ラウリン酸 4g
得られる製品はパテ様であり、実施例1のものと類似の物理的特性を有し、幾分凝集性が低かった。
【0103】
実施例14
成分1 ステアリン酸カルシウム 2g
成分2 ドデカン 1g
得られる製品は良好な水抵抗性を有し、低い粘性であり、そして実施例1と同等な他の物理的特性であった。
【0104】
実施例15
成分1 ステアリン酸カルシウム 2g
成分2 オクタノール−1 1g
得られる製品は低い粘性であり、実施例14のものと類似の物理的特性であったが、幾分凝集性が低かった。
【0105】
実施例16
成分1 ステアリン酸カルシウム 2g
成分2 コハク酸ジエチル 2g
成分3 ゼラチン 2g
得られる製品は、実施例1と類似の良好なパテであった。
【0106】
実施例17
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 コハク酸ジエチル 3g
得られる製品は、実施例16を超える改善された粘稠度を有する良好なパテであった。
【0107】
実施例18
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 クエン酸アセチルトリエチル 3g
成分3 ゼラチン 3g
得られる製品は、実施例1で得られたものと同等であった。
【0108】
実施例19
成分1 パルミチン酸アルミニウム 4g
成分2 酢酸トコフェリル .3g
成分2 クエン酸トリエチル 3g
得られる製品は、良好な水抵抗性および良好な止血特性の柔らかい、幾分半透明のパテであった。
【0109】
実施例20
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
成分4 脱塩骨基質 1g
得られる製品は、実施例1の製品と同等の特性を有するパテ様塊であり、同様に骨形成特性を有する。
【0110】
実施例21
成分1 ヒドロキシアパタイト 3g
成分2 酢酸トコフェリル 3.5g
成分3 ゼラチン 3g
本実施例において、物質は最初は柔らかく、油性であり、結合力を欠いた。しかしながら、室温に72時間放置すると、良好な水抵抗性の優れたパテが形成された。酢酸トコフェリルの量をさらに3g増やすと、ゼラチンに起因する粗さを有する泥膏となる。
【0111】
実施例22
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 ジ−n−ヘキシルエーテル 2.5g
成分3 ゼラチン 2g
得られる製品はパテ様であり、実施例1のものと同様の良好な水抵抗性および物理的特性を有する。
【0112】
実施例23
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 ジ−n−ペンチルケトン 2.5g
成分3 ゼラチン 2g
得られる製品はパテ様であり、実施例22のものと同様の良好な水抵抗性および物理的特性を有する。
【0113】
実施例24
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ウシコラーゲン(粉末) 3g
得られる製品はパテ様であり、実施例23のものと同様の良好な水抵抗性および物理的特性を有する。加えて、本パテは、吸収促進剤(成分3)として存在する繊維状の粉末状コラーゲンスポンジが存在する結果、繊維状手触りを有する。
【0114】
実施例25
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ウシコラーゲン(粉末) 3g
硫酸ゲンタマイシンを含む
*欧州で利用可能なCollatamp G
これらは抗感染剤特性を有する止血パテをもたらす。
【0115】
実施例26
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
抗感染剤 硫酸ゲンタマイシン 120mg
酢酸トコフェリルを添加してパテとする前に、120mgの硫酸ゲンタマイシンを乾燥成分と混合する以外、実施例1を繰り返す。この実施例は、抗感染特性を有するパテの製造を証明する。
【0116】
実施例27
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
ゼラチンを2%水性硝酸銀に2時間、室温で浸し、2回蒸留水および1回アセトンで洗浄し、一晩乾燥する以外、実施例1を繰り返す。この製剤は、銀/ゼラチン複合体の存在のために抗感染特性を有する。
【0117】
実施例28
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
10mgのゼラチンを、一晩、10マイクログラムの凍結乾燥ヒト骨形成タンパク質(BMP-2, Sigma-Aldrich)を含む1mlの水性溶液に浸し、一晩乾燥させる以外、実施例1を繰り返す。湿ったゼラチンをアセトンで洗浄して、残った湿気を除き、残りのゼラチンと組み合わせて、骨形成性および止血性特性を有するパテを産生する。
【0118】
実施例29
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
0.5mlのBetadine(登録商標)(ポビドン−ヨウ素、10%;1%利用可能ヨウ素に対応)を10gの実施例1で形成したパテに混合する以外、実施例1を繰り返す。塊は褐色に変わり、抗感染特性を有する。
【0119】
実施例30
成分1 微粉化ポリ乳酸 3g
成分2 酢酸トコフェリル 1.5g
本混合物は、実施例1の製品と同等な良好な水抵抗性および特性の優れたパテを形成した。
【0120】
実施例31
下記組成物は、約40%ステアリン酸カルシウム、30%デキストランおよび30%ヒマシ油の好ましい組成物として米国特許4,439,420に記載されている。水を添加したとき、好ましい組成は38%ステアリン酸カルシウム、28%デキストラン、27%ヒマシ油および7%水である(全て重量%である)。本組成物を、環境温度で機械的撹拌により製造し、熱感受性成分が分解する可能性を避けた。
【0121】
ステアリン酸カルシウム 4g
ヒマシ油 3g
デキストラン 3g
ステアリン酸カルシウムおよびデキストランを50mlガラスビーカーで混合し、ヒマシ油を撹拌しながらスパーテルを使用して添加した。数分間、混合物をスパーテルで室温で“加工”した後、粘稠度が徐々に変化した。本混合物は脆くなり、さらに加工した後、パテ様となった。小量の水(約1g)の添加はデキストランの砂のような性質を減少させる。
【0122】
実施例32
実施例31の製剤を下記に示すように改変し、本発明の新規なパテ様組成物を製造した。この塊は有効な止血剤であり、有効な骨形成性骨欠損充填剤である。
ステアリン酸カルシウム 2g
ヒマシ油 1.5g
デキストラン 1.5g
DBM(脱塩骨基質) 1.5g
本実施例の目的は、DBMを米国特許4,439,420に添加し、骨形成特性を有するパテ様塊を得ることができることを示すことである。
【0123】
実施例33
成分1 パルミチン酸アルミニウム 5g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
添加剤 メトトレキサート .2g
新規化学療法的パテを、骨腫瘍の外科的切除後、骨欠損に詰める。
【0124】
実施例34
成分1 パルミチン酸アルミニウム 5g
成分2 酢酸トコフェリル 3g
成分3 ゼラチン 3g
添加剤 ストロンチウム89(塩として)
上記製剤は、放射活性有効量のストロンチウム89と共に提供したとき、実施例33に記載のような放射線治療的パテを産生する。
【0125】
実施例35
成分1 微粉化吸収性ホスフェートガラス 3g
成分2 酢酸トコフェリル 1g
リン酸二水素ナトリウム水和物を含むるつぼを、4時間、約800℃で加熱し、急速に冷却した。得られる吸収性リンガラス塊を次いでハンマーで壊し、断片を回転ボールミルで約72時間微粉化した。良好な物理的特性および水抵抗性を有するパテ様塊が形成されるまで、細かい微粉化ガラス(3g)を酢酸トコフェリル(1.0g)と共に撹拌した。
【0126】
実施例36
成分1 ステアリン酸カルシウム 3g
成分2 ラウリン酸エチル 3g
成分4 脱塩骨基質 1g
本実施例の目的は、DBMを米国特許4,439,420に添加し、骨形成特性を有するパテ様塊を得ることができることを示すことである。
【0127】
実施例37
成分1 ヒドロキシアパタイト 3g
成分2 パルミチン酸イソプロピル 3.5g
成分3 ゼラチン 3g
室温に72時間放置すると、実施例2のものと同等な良好な水抵抗性の優れたパテが得られる。
【0128】
実施例38
成分1 ステアリン酸カルシウム 5g
成分2 グリセロール(USP) 15g
3gのステアリン酸カルシウムを、グリセロールを3gずつ増やしながら、混合物がクリーム様粘稠度となるまで混合した(合計15gのグリセロール)。この段階で、さらに2gのステアリン酸カルシウムを混合物に混ぜ入れ、よく泡立てた卵白の粘稠度および見かけを有する組成物を得た。
【0129】
実施例39
成分1 ステアリン酸カルシウム 1g
成分2 酢酸トコフェリル 1g
成分3 グリセロール .25g
優れた水抵抗性の相対的に柔らかいパテをもたらす。
【0130】
実施例40
成分1 スクロース(粉砂糖) 3g
成分2 オリーブ油 2g
非常に容易に洗い流せ、低水抵抗性が望まれるときに非常に有用な硬いパテをもたらす。
【0131】
実施例41
上記実施例38の製品3gを、30ppmのコロイダル・シルバー(Source Naturals, Inc., Scotts Valley, CA 98006)を含む0.75mlの脱イオン水と混合した。得られる止血性クリームは、抗菌性銀の存在によりオフホワイト色となり、元のクリームよりも幾分粘性が低かった。
【0132】
実施例42
成分1 ステアリン酸カルシウム 4g
成分2 Pluronic(登録商標)L-35 0.2g
(分子量1900)
成分12 水 2g
*Pluronic 588310, Lot WPAW-502B, BASF, Corp. Mt. Olive, NJ 07828-1234
成分をパテ様塊が得られるまで、撹拌しながら合わせる。本物質は、過剰の水に容易に分散する。
【0133】
実施例43
成分1 ステアリン酸カルシウム 12.0g
成分2 d,1−アルファ酢酸トコフェリル 7.5g
成分3 ダイズレシチン顆粒 1.3g
ステアリン酸カルシウムおよびレシチン(Archer-Daniels-Midland Ultralec P)を乾式で混合し、次いで酢酸トコフェリルを激しく撹拌しながら添加した。パテが形成され、それは良好な水抵抗性および取り扱い特性を有したが、レシチンの代わりにゼラチンを含む対応する製剤よりも幾分粘着性であった。
【0134】
実施例44
成分1 ステアリン酸カルシウム 0.6g
成分1 ジャガイモデンプン 3.8g
成分2 d,l−アルファ酢酸トコフェリル 1.6g
*-Razin International, Inc.
6527 Route 9
Howell, New Jersey 07731
酢酸トコフェリルおよびステアリン酸カルシウムを一緒に混合し、デンプンを次いで添加した。混合物は、良好な水抵抗性の柔らかい白色パテを形成した。手術後癒着の形成を防止するために、デンプンを分解するために、パテを、コバルト60源からの25kGyの電離ガンマ放射を使用して分解することが必要であるかもしれない。あるいは、デンプンをパテに製剤する前に、放射線分解に付し得る。
【0135】
下記実施例45−51は、実施例1に記載の通りに製造した、良好な水抵抗性を有し、カルシウム塩の量に対してゼラチンの量を増やしていくと、ゆっくりした吸収性からより急速な吸収性へと徐々に増加した吸収性を有する、パテ組成物を示す。
【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

得られる製品は、実施例53のパテと類似の特性を有する。
【0138】
製剤a)におけるゼラチンは、40重量%で存在し、該組成物は良好な水抵抗性および吸収性の良好なパテ粘稠度を有する。
【0139】
整形外科的工程において骨に固定するピンまたはスクリュー、例えばペディクル・スクリュー(pedicle screw)の媒体として使用し得る濃厚な製剤が望ましいとき、上記製剤a)を、その中に大きな粒子サイズの骨細片を包含させ、適当な骨の部位に適用することにより、修飾し得る。故に、31部のDBM、粒子サイズ1−5mmを69部の製剤a)に添加したとき、製剤b)が得られ、31%DBMおよび28%ゼラチンを含む。その粘稠度は、濃い、濃厚なパテのものであり、その中にピンまたはスクリューを置き、隣接する骨に固定できるものである。同時に、製剤の骨形成特性がピンまたはスクリューの周辺の骨の生長を可能にし、故に、隣接する骨構造へのそれらの永久的な固定を可能にする。
【0140】
実施例53
成分1 ステアリン酸Ca 3.0g
成分2 酢酸トコフェリル 0.4g
成分2 クエン酸トリブチル 2.3g
成分3 ゼラチン 2.0g
非常に良好な止血性および吸収性特性を有するパテをもたらす。
【0141】
実施例54
成分1 ステアリン酸Ca 3.0
成分2 酢酸トコフェリル 0.4
成分2 クエン酸アセチルトリブチル 2.3
成分3 ゼラチン 2.0
得られる製品は、実施例53のパテと類似の特性を有する。
【0142】
実施例55
成分1 ステアリン酸カルシウム 2.0g
成分2 酢酸トコフェリル 1.5g
成分3 Pluronic(登録商標) F-38* 2.0g
(分子量4700)
*製品583095, Lot WP1W-515B, BASF Corp., Mt. Olive, NJ 07828-1234
Pluronicは“香錠(Pastille)”として提供され、混合前に挽いて粉末にする。本混合物は優れたパテを形成した。
【0143】
実施例56
成分1 ステアリン酸カルシウム 4.0g
成分2 Pluronic(登録商標)L-35 3.0g
(分子量1900)
本実施例のPluronicは粘性液体であり、優れたパテを形成した。Pluronicが水溶性であるため、吸収促進剤の添加は必要なかった。
【0144】
前記の実施例は本発明の具体的態様の例である。本発明の範囲内の他の態様は、前記の明細書の記載に従い、当業者により製造され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊密な混合物で、下記の成分1および2を含み、かつ、下記の任意の成分3、4、5、6、7、8、9、10、11および12を全く含まないか、あるいは、これらの何れか1個またはそれ以上を含む、組成物:
成分1. カルボン酸アニオンおよび金属カチオンを含む、微粉末化カルボン酸塩と
成分2. 下記成分2のグループa)からg)から成る群から選択されるメンバーを含む、組成物:
グループa)i)1種またはそれ以上のC−C181価アルコールとC−C脂肪族モノカルボン酸のエステル
ii)1種またはそれ以上のC−C181価アルコールとポリカルボン酸のエステル
または
iii)i)およびii)の混合物、
グループb)8個から約30個の炭素原子を有する1価アルコール、
グループc)約10個から約14個の炭素原子を有する炭化水素、
グループd)遊離の液体飽和または不飽和カルボン酸、
グループe)1)ジアルキルエーテル、アルキルアリールエーテル、またはクラウンエーテル(各々約80℃より高い沸点を有する)、または2)エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマー
グループf)約80℃より高い沸点を有するジアルキルケトン、
グループg)ポリヒドロキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物エステルおよびポリヒドロキシ化合物エーテルから成る群から選択されるメンバーを含む組成物、
成分2が室温で固体形の場合は、さらに成分2のための任意の生体適合性液化剤、
成分3. 任意の吸収促進剤、
成分4. 任意の骨生長誘発物質、
成分5. 任意の着色剤、
成分6. 任意の抗感染剤、
成分7. 任意の抗新生物剤、
成分8. 任意の鎮痛剤、
成分9. 任意の凝血誘発剤、
成分10. 任意の抗炎症剤、
成分11. 任意の放射線不透過剤、
成分12. 任意の量の水。

【公開番号】特開2012−115682(P2012−115682A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−4202(P2012−4202)
【出願日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【分割の表示】特願2006−527998(P2006−527998)の分割
【原出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(508024119)オーソコン・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ORTHOCON, INC.
【Fターム(参考)】