説明

吸収性ポリエステルの浄化方法及び装置

吸収性ポリマーをクリーニングする方法では、ポリマーを第1の溶剤(12)中に溶解させ、次に、ポリマーを強力な剪断力の影響下で乱流剪断場中の第2の溶剤に密に接触させる。この場合、第2の溶剤(41)は、吸収性ポリマーに対して非溶剤となっており、第1の溶剤(12)と無制限に混合可能である。次いで、第2の溶剤(41)の追加の結果として得られたポリマー懸濁液をドラム型剪断スクリーン(70)の回転式円筒形スクリーン本体(71)上又はその中に運び、次に湿ったポリマー塊状体をスクリーン本体(71)から取り出して乾燥させる。この方法は、高品質の吸収性ポリマーの製造に適しており、その上、工業規模で費用効果の良い仕方で実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性ポリエステルを浄化する方法であって、このポリマーを第1の溶剤中に溶解させ、次にポリマー溶液を乱流剪断場内において大きな剪断力の作用下で第2の溶剤に密に接触させ、第1の溶剤は、「正真正銘」の溶剤であり、第2の溶剤は、吸収性ポリエステルに対して非溶剤であり且つ第1の溶剤と無制限に混和性の関係をなしているような方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は又、この方法を用いて浄化された吸収性ポリエステル及びその使用に関する。
【0003】
本発明は、更に、吸収性ポリエステルを浄化する浄化装置であって、浄化装置は、その主要コンポーネントとして、このポリマーを第1の溶剤中で溶解させる溶解容器と、ポリマー懸濁液から湿った状態のポリマー塊状体を分離する分離装置と、ポリマー塊状物を乾燥させる乾燥機とを有するような浄化装置に関する。
【0004】
本発明の意味における吸収性ポリエステルは、ラクチド(L‐ラクチド、D‐ラクチド、DL‐ラクチド、メソ‐ラクチド)、グリコリド、ε‐カプロラクトン、ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、δ‐バレロラクトン、γ‐ブチロラクトン及びこれらに類似した重合性複素環式化合物を主成分とするホモポリマー又はコポリマーである。ポリマーは、複数の互いに異なるモノマーモジュールのうちの1つ又はその他で構成されるか、オプションとしてポリマー鎖中に別のモジュール、例えばエチレングリコールのユニットを含むかのいずれかであるのが良い。
【0005】
本発明の好ましいポリエステルは、D,L‐ラクチドのホモポリマー、異なる組成のD,L‐ラクチド及びグリコリドのコポリマー並びに上述のポリエステル単位及びポリエチレングリコールのブロックコポリマーである。
【背景技術】
【0006】
吸収性ポリエステルは、吸収性外科用インプラントの製造に、更に非経口的放出システムの調合のための医薬佐剤として広く用いられている原料である。例えば、ポリ(ラクチド)及び他の吸収性ポリエステルは、骨折の固定のための外科用インプラント、制御された組織再生のための小網(reticula)及びメンブレン及び皮下又は筋肉内注射、特に有効成分の制御された放出のためのマイクロカプセル及びインプラントに用いられている。体内への植え込み又は注入後、吸収性ポリエステルは、ゆっくりとした加水分解反応でオリゴマーに分解される。加水分解の最終生成物、例えば乳酸又はグリコール酸は、二酸化炭素及び水に代謝される。
【0007】
吸収性ポリエステルの合成は、当該技術分野において知られている。吸収性ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸(オキシカルボン酸とも呼ばれる)、例えば乳酸及び(又は)グリコール酸から重縮合により調製できる。もう1つのしばしば採用される合成経路は、対応の複素環式化合物の開環重合である。
【0008】
合成経路とは無関係に、粗ポリマーは、特定含有量の非変換モノマーを常に含んでおり、かかる非変換モノマーは、対応の合成法を最適化した場合でもあっても、1〜3%の値よりも小さい値に減少させることができない場合が多い。この理由は、開環重合が平衡反応であり、重縮合中であっても、線状重合体が、対応のヒドロキシカルボン酸と平衡状態で存在していることにある。
【0009】
ポリマー中におけるモノマーの存在は、以下の理由で極めて問題である。
a)環状モノマーは、加水分解に関して線状ポリマーと比較して極めて不安定なので、かかる環状モノマーは、湿分の流入時にポリエステルよりも迅速に分解する。加水分解により、酸当量物が生じ、この場合も又、ポリエステルの加水分解は、かかる酸当量物を触媒する。したがって、モノマー含有ポリエステルの植え込みにより、体内の材料の分解が大幅に加速される。
b)同じ理由で、モノマー含有ポリエステル及びこれから作られたインプラント又は医薬調合物の貯蔵の安定性が著しく損なわれる。
c)吸収性ポリエステルの安定性も又、モノマーが残留含有分として存在している場合、熱可塑性樹脂の処理中、損なわれる。
d)非浄化ポリエステルの封入又は包み込み挙動は、放出挙動及び分解挙動と同様、浄化ポリエステルの封入又は包み込み挙動とは異なっている。包み込まれた有効成分、例えばペプチドは、浄化ポリエステルと比較して自由酸の量が多い結果として、損傷状態又は破壊状態になる場合がある。
e)合成反応中、粗ポリマーの残留モノマー含有量は、制御するのが困難な場合が多い。この場合、残留モノマー含有量の変化により、分解速度、貯蔵の安定性及び処理安定性の許容できないバッチ間ばらつきが生じ、したがって、再現性のある品質の材料を得るには、残留モノマーの量を減少させるための次の浄化ステップが必ず行われなければならない。
【0010】
残留モノマーを吸収性ポリエステルから分離する浄化方法も又、当該技術分野において知られている。
【0011】
押し出し方法を用いてモノマーを部分的に結晶質のポリエステルから取り出すことができる。この目的にとっては、モノマーを溶解させるがポリマーを溶解させることはない溶剤が適している。適当な例としては、有機溶剤、例えばn‐ヘキサン、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、アセトン又はエチルアセテートが挙げられる。欧州特許第0456246号明細書は、例えば、溶剤として二酸化炭素を用いた吸収性ポリエステルの抽出方法を開示している。
【0012】
非晶質ポリエステルは、一般に、抽出方法では浄化できない。というのは、関連の溶剤は、ポリマーも又溶解させるか少なくともポリマーを膨潤させるかのいずれかだからである。超臨界又は圧力液化二酸化炭素を用いる場合、ポリマー塊状体は、圧力が除かれると、大幅に膨張し、これは又、この種の方法を実施するのを阻止する。先行技術は、非晶質ポリエステルの浄化のための多くの再沈殿方法を開示している。これら方法では、適当な溶剤中での粗ポリマーの分解が行われる。しかしながら、溶剤と混和性のある多量の過剰分の非溶剤の添加により、ポリマーの沈殿が生じる。クロロホルム中での分解によるポリ(L‐ラクチド)‐ポリ(エチレングリコール)‐ポリ(L‐ラクチド)の再沈殿及びメタノール又はメタノール/クロロホルム混合中での沈殿が、開示されている(ジェイ・マツモトット他著(J. Matsumoto et al.),「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル(Int. J. of Pharm)」,185,1999年,p93‐101)。開示された再沈殿法には、非常に多くの量の有機溶剤が使用されるという欠点があり、加うるに、固体/液体相分離及びかくして生成物の単離が極めて困難である。これは、特に、ポリエステルが、ポリマー溶液が非溶剤に接触する接触箇所のところで凝集する傾向があるということに起因している。したがって、工業規模での利用は、困難である。
【0013】
米国特許第4810775号明細書は、結晶度が最高20%までの吸収性ポリエステルの浄化方法を開示しており、かかる浄化方法では、ポリマーを溶剤中に溶解させ、次にポリマー溶液を乱流剪断場における大きな剪断力の作用下で沈殿剤に密に接触させる。乱流剪断場は、2種流体ノズルと、沈殿剤で満たされていて、2種流体ノズルが突き込まれている容器とから成る装置によって得られ、したがって、沈殿ポリマーは、非常に小さな粒子に分解される。しかしながら、この種の方法をどうすれば経済的に大規模に実施できるかということについては開示されていない。再沈殿中に生じるポリマー懸濁液の相分離は、遠心分離か、溶剤が多量に必要なので比較的小さなバッチサイズであっても大きくなければならない入れ物内への収集によるかのいずれかにより実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0456246号明細書
【特許文献2】米国特許第4810775号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】ジェイ・マツモトット他(J. Matsumotot et al. )著,「インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル(Int. J. of Pharm)」,185,1999年,p93‐101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、技術分野の項目のところで言及した種類の吸収性ポリエステル、特に非晶質ポリエステルの浄化方法であって、高く且つ再現性のある品質の吸収性ポリエステルを工業規模でも得ることができるようにする改良型浄化方法を提供することにある。本発明の目的は、更に、本発明の方法のための対応の装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この方法に関する目的は、本発明によれば、次に、第2の溶剤の添加により形成されたポリマー懸濁液をドラム型剪断スクリーンの回転式円筒形スクリーン本体上に又はその中に運び込み、次に、湿った状態のポリマー塊状体をスクリーン本体から分離し、次いでスクリーン本体上で乾燥させることによって達成される。
【0018】
これにより、ポリマー懸濁液を高い再現性で固相及び液相に分離することができる連続動作式分離方法が提供される。連続動作モードにより、一定品質のバッチを量とは無関係に提供することができる。
【0019】
方法の観点では、用いられる第1の溶剤は、アセトン、エチルアセテート、1,4‐ジオキサン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ヘキサフルオロイソプロパノール若しくは別のハロゲン化炭化水素又は上述の溶剤の混合物である。かくして、ポリエステルの種類及び溶液中でのポリエステルの固有粘度に応じて適当な溶剤が得られる。アセトン、クロロホルム又はジクロロメタンが、第1の溶剤として特に適していることが判明した。
好ましくは、用いられる第2の溶剤は、エタノール、メタノール若しくは水又はこれら溶剤の混合物である。かくして、用いられる第1の溶剤に応じて、特に効果的な沈降反応を達成することができ、水は、特に、第2の溶剤として用いられる。水は、非毒性であり且つ非爆発性であるが、費用効果が良く且つ特に環境的に受け入れ可能である。
【0020】
一実施形態によれば、第1の溶剤中に溶解された吸収性ポリエステルを濾過し、次に2種流体ノズルを経て第2の溶剤と混ぜ合わせる。これにより、乱流剪断場における大きな剪断量の作用下で密な接触状態が得られ、その結果として、最適な完全混合が達成される。別の徹底的な完全混合も又、両方の媒体が2つの別々のノズルからフロー管内に注入され、迅速に回転する攪拌機によって流動層を接触箇所のところに発生させた場合に達成できる。
【0021】
有利には、湿った状態のポリマー塊状体を重力並びに回転式円筒形スクリーン本体内に設けられた1つ又は2つ以上の螺旋状に取り付けられたコンベヤレール及び(又は)案内羽根によって分離する。これにより、ポリマー塊状物を連続的に、例えば入れ物内に運び込むことができる運搬の制約が生じる。
【0022】
少ない残留湿分又は残留溶剤含有量を得ることを目的として、湿った状態のポリマー塊状物を乾燥させるために、有利には、窒素又は空気を乾燥機中でかかるポリマー塊状物中に通す。
【0023】
本発明の方法は、特に非晶質又は部分結晶質の構造をもつ吸収性ポリエステルを費用効果が良い仕方で且つ一定品質で浄化するために利用できる。
【0024】
このようにして浄化された吸収性ポリエステルは、好ましくは、ラクチド(L‐ラクチド、D‐ラクチド、DL‐ラクチド、メソ‐ラクチド)、グリコリド、トリメチレンカーボネート、ε‐カプロラクトン、γ‐ブチロラクトン、ジオキサノン、δ‐バレロラクトン及び(又は)これらに類似した重合性複素環式化合物及び(又は)ポリエチレングリコールに由来する1つ又は2つ以上の単位を含む。D,L‐ラクチド若しくは任意所望の組成をもつD,L‐のラクチド及びグリコリドのコポリマー又はD,L‐ラクチド若しくは任意所望の組成をもつD,L‐ラクチド‐コグリコリド及びポリエチレングリコールのブロックコポリマーで構成された吸収性ポリエステルが特に好ましい。
【0025】
残留モノマー含有量は、本発明の方法を用いて浄化を実施した後では、1%未満、特に0.5%未満であり、0.1%未満の残留モノマー含有量が達成可能である。
乾燥後、吸収性ポリエステルの溶剤及び(又は)湿分は、2%未満であり、1%未満の値、特に0.5%未満の値が、有利な設定下において達成される。特に徹底的に乾燥させた場合、吸収性ポリエステルの溶剤及び(又は)湿分は、0.1%未満である。
【0026】
吸収性ポリエステルの特に好ましい使用により、医薬調合物又は吸収性インプラントの製造が可能になる。
【0027】
浄化装置に関連した目的は、本発明によれば、分離装置が、回転式円筒形スクリーン本体を有するドラム型剪断スクリーンとして構成されることによって達成される。
【0028】
例えば高固形分装填材料の連続脱湿又は脱水のための他の分野において従来用いられていたこの種の分離装置では、驚くべきこととして、この装置により、沈降反応から生じたポリマー懸濁液をたとえスループットが変動した場合であっても費用効果が良く且つ一定の品質でポリマー塊状物及び溶剤残留物に分離できることが判明した。
【0029】
円筒形スクリーン本体内に設けられたコンベヤレール及び(又は)案内羽根により、スクリーン本体の回転運動と関連して、ポリマー塊状物を例えば入れ物内に連続的に運び込むことができる。
【0030】
有利な実施形態では、ドラム型剪断スクリーンは、特に回転式円筒形スクリーン本体の上方で上部ハウジングカバーに設けられた吸引装置、特に吸引ノズルを備えた吸引装置を有している。これにより、吸引により溶剤蒸気を除去することができ、これは、例えばアセトン、エタノール又はメタノールが用いられている場合、特に有利である。というのは、吸引装置により、周囲の建物の防爆等級を減少させることができるからである。
【0031】
流動層乾燥機、循環空気乾燥機、又はチューブラフロー乾燥機として構成された乾燥機は、湿ったポリマー塊状物の効果的乾燥に特に適している。乾燥機は、好ましい実施形態では、円錐形部分及び円筒形部分を有し、乾燥剤、例えば窒素又は空気が下から流入することにより、乾燥させるべきポリマー塊状物の強力な又は徹底的な旋回状態が乾燥機の円錐形部分内で達成される。凝集を減少させるため、ポリマーのためにガータが設けられる。乾燥中、乾燥させるべきポリマー塊状体を乾燥機から取り出してガータによりすり砕くのが良く、その後、乾燥を続行させる。
【0032】
ポリマーが乾燥機から出て供給システムに入るのを阻止するため、乾燥機は、円筒形部分の内部に、少なくとも1つのスクリーンインサートを有する。浄化された吸収性ポリエステルを収集するため、乾燥機は、有利には、フィルタバッグを有する。フレーム内に設けられた乾燥機の自在軸受により、乾燥機を傾けることができ、かくして端部側が乾燥機に取り付けられていて、乾燥状態のポリマー粉末の入ったフィルタバッグを容易に取り外すことができる。さらに、乾燥させるべきポリマー塊状体を乾燥プロセス中、一層容易に徹底的に混合することができる。
【0033】
別の構成例によれば、ドラム型剪断スクリーン及び乾燥機の少なくとも材料案内部分は、ステンレス鋼で作られ、かくして、薬理学的要件に関して高い製品品質が保証される。
【0034】
上述の特徴及び以下に説明する特徴をそれぞれ特定の組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも利用できることは理解されよう。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。
【0035】
以下において、例示の実施形態を用いると共に関連の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法を実施する際に用いられる吸収性ポリエステルの浄化装置の略図である。
【図2】図1のドラム型剪断スクリーンの分解組立て斜視図である。
【図3】図1の乾燥機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
浄化装置1は、第1の方法ステップのためのその主要コンポーネントとして、溶解容器10を有し、浄化されるべき粗原料としてのポリエステル11がこの溶解容器内に投入される。溶解容器10の典型的なサイズは、50〜1,000lであり、これよりも大型のシステムの場合、2,000l以上という大きなものである場合がある。第1の溶剤12の追加により、攪拌機13の使用及び(又は)溶液の常時再循環により溶解容器10内でのポリエステル粗原料11の溶解が生じる。例えばリント又は糸屑の形態をしたポリエステル粗原料11中の不純物は、例えば濾過により分離される。例えば次の溶剤、即ち、アセトン、エチルアセテート、1.4‐ジオキサン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサフルオロイソプロパノール若しくは別のハロゲン化炭化水素又は上述の溶剤の混合物が、好ましい第1の溶剤12であることが判明した。吸収性ポリエステルでは、アセトン、クロロホルム又はジクロロメタンが、第1の溶剤12として特に適していることが判明した。
【0038】
ポンプ、例えばダイヤフラムポンプが、好ましくはステンレス鋼で作られた細目スクリーンを収容しているフィルタ30を介してポリマー溶液を圧送するために用いられる。このステップでは、不溶性不純物が分離されて除去される。典型的なメッシュサイズ(編目の大きさ)は、この場合、数μmであり、代表的には1μmから10μmである。
【0039】
次に、ポリマー溶液を2種流体ノズル40を介して第2の溶剤41と徹底的に混ぜ合わせ、この第2の溶剤は、ポリマーに対して非溶剤であり、その結果得られたポリマー懸濁液をコンベヤ60を介してドラム型剪断スクリーン30の回転式スクリーン本体71の内部に最も簡単な場合では直接的に或いは流れ管又はパイプを介して案内し、この場合、運搬は、重力、従来型ポンプ又はガスによる加圧によって実施するのが良い。用いられる第2の溶剤41は、沈殿のためのエタノール、メタノール若しくは水又はこれら溶剤の混合物である。水が、その毒性上の安全性及び環境的許容性に鑑みて特に好ましい第2の溶剤41である。
【0040】
ドラム型剪断スクリーン70の回転式スクリーン本体71の内部において、ポリマー懸濁液を溶剤混合物と沈殿状態のポリマー塊状体に分離することができる。スクリーン本体71内部に設けられた1つ又は2つ以上の螺旋状に取り付けられた案内レール及び(又は)案内羽根72が、ポリマー塊状体に運搬上の制約をもたらし、その結果、ポリマー塊状体は、固体出口75に移送される。溶剤混合物は、この場合、液体出口73を通って下方に流れ去る場合がある。溶剤蒸気をスクリーン本体71の上方に位置するドラム型剪断スクリーン70のハウジングカバー76に設けられた吸引装置74、例えば吸引ノズルを介して吸引により取り出すことができ、このことは、周囲建物の防爆等級に関して有利である。
【0041】
固体出口75のところに集まった依然として湿った状態のポリマー塊状体は、固体コンベヤ80を用いて乾燥機90内に直接的に移送されるか、或いは収集容器内に移送される。収集容器からの乾燥機90のバッチ式供給充填が、連続供給に加えて可能である。乾燥機90は、円錐形部分95及び円筒形部分96を有している。少なくとも1つのスクリーンインサート94が、円筒形部分96内に設けられている。乾燥剤91、例えば窒素又は空気が、乾燥機90の円錐形部分95内に下から側方に導入され、その結果、乾燥機90内部において徹底的な旋回が達成される。乾燥機90は、浄化されて乾燥した吸収性ポリエステルを収集するフィルタバッグ92を有している。
【0042】
図2に示されているドラム型剪断スクリーン70の構成では、内部には回転式スクリーン本体71が見え、ポリマー懸濁液をU字形チャネル経由でこの回転式スクリーン本体内に導入することができる。スクリーン本体71は、僅かに傾けて位置決めされている。スクリーン本体71内部の1つ又は2つ以上の螺旋に取り付けられた案内レール及び(又は)案内羽根72により、固体出口75へのポリマー塊状体の運搬が制限される。溶剤蒸気は、スクリーン本体71の上方に位置するドラム型剪断スクリーン70のハウジングカバー76に設けられている吸引装置74を介して吸引により取り出される。スクリーン本体71は、スクリーンの内部が駆動ユニットからの研磨材料で汚染された状態にならないようにするためにその後部が閉鎖されている。後部は、浄化目的で開放可能である。
【0043】
可動フレーム97内に配置された図3の乾燥機90を自在軸受93によって傾けることができる。フィルタバッグ92は、図示されていない。さらに、ドラム型剪断スクリーン70及び乾燥機90の少なくとも製品案内部分は、ステンレス鋼で作られている。
【0044】
以下において、本発明の方法について説明する。
【0045】
ポリエステル粗原料11を第1の溶剤12としてのあらかじめ計算された量のアセトンで溶解させる。ポリエステル粗原料11を秤量して溶解容器10内に投入する。計算された量のアセトンを追加し、約24時間から72時間以内に再循環により粗原料を溶解させる。混合比は、用いられる出発物質(モノマー又は複素環式化合物)及び粗原料の固有の粘度で決まり、例えば、D,L‐ラクチドとグリコリドのコポリマーでは、50:50モル%であり、即ち、固有粘度は、0.1%クロロホルム溶液として測定して0.5dl/gであり、沈殿のための溶液としてのアセトンに溶かした8重量%のポリマーは無しで済まされる。
【0046】
ポリマー溶液をポンプ20によってメッシュサイズが5μmのステンレス鋼製フィルタ30及び流量計を経て2種流体ノズル40内に運び込む。流量は、用いられる粗原料の性状で決まり、一般に最高20〔l/h〕までである。この数値は、アセトンの密度に合わせて調節された流量計に関している。沈殿すべきポリマー溶液の密度の差により、正確な流量測定が阻止される(質量流量計を除き)。2種流体ノズル40によりポリマー溶液を流量が約700〔l/h〕から1,000〔l/h〕で水ジェット中に注入し、溶解した粗原料は、フレーク又はファイバの形態ですぐに沈殿する。
【0047】
水と、生成物としてのフレークと、モノマーと、アセトンから成る懸濁液をパイプ経由でドラム型剪断スクリーン70中に案内する。この場合、懸濁液をドラム型剪断スクリーン70の後部領域中に案内する。回転運動の結果として、分離して除去されるべきモノマーを含む排出中の水/アセトン混合物は、先ず最初に、この場所に生成物層を形成する。生成物層が十分に重い場合、この生成物層は、壁から離脱状態になり、生成物クラスタ(雪だるまシステム)を形成する。前方に傾いた状態で延びる案内ばね72及び回転運動の結果として、これら生成物クラスタは、スクリーン本体71内で固体出口75に向かってゆっくりと運ばれる。水/アセトン混合物を一方において重力により、他方においてくさび形スクリーンプロフィールバー及びこの結果として生じるコアンダ効果により分離して除去する。
【0048】
固体を固体コンベヤ80によって乾燥機90又は収集容器内に案内する。チューブラフロー乾燥機として構成された乾燥機90内において、湿った状態のポリマー塊状体を空気又は窒素の貫流によって乾燥させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性ポリエステルを浄化する方法であって、このポリマーを第1の溶剤(12)中に溶解させ、次にポリマー溶液を乱流剪断場内において大きな剪断力の作用下で第2の溶剤(41)に密に接触させ、前記第1の溶剤(12)は、「正真正銘」の溶剤であり、第2の溶剤(41)は、前記吸収性ポリエステルに対して非溶剤であり、且つ、前記第1の溶剤(12)と無制限に混和性の関係をなしている、方法において、次に、前記第2の溶剤(41)の添加により形成されたポリマー懸濁液をドラム型剪断スクリーン(70)の回転式円筒形スクリーン本体(71)上に又はその中に運び込み、次に、湿った状態のポリマー塊状体を前記スクリーン本体(71)から分離し、次いで前記スクリーン本体上で乾燥させる、方法。
【請求項2】
用いられる前記第1の溶剤(12)は、アセトン、エチルアセテート、1,4‐ジオキサン、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、ヘキサフルオロイソプロパノール、若しくは、別のハロゲン化炭化水素、又は、上述の溶剤の混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
用いられる前記第1の溶剤(12)は、アセトン、クロロホルム、又は、ジクロロメタンである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
用いられる前記第2の溶剤(41)は、エタノール、メタノール、若しくは、水、又は、これら溶剤の混合物である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の溶剤(12)中に溶解した前記吸収性ポリエステルを濾過し、次に2種流体ノズル(40)を介して前記第2の溶剤(41)と混合する、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記湿った状態のポリマー塊状体を重力並びに前記回転式円筒形スクリーン本体(71)内に設けられた1つ又は2つ以上の螺旋状に取り付けられたコンベヤレール及び(又は)案内羽根(72)によって分離する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記湿った状態のポリマー塊状体を乾燥させるために窒素又は空気を乾燥機(90)内の前記湿った状態のポリマー塊状体中に通す、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法を用いて浄化された吸収性ポリエステルにおいて、前記吸収性ポリエステルは、非晶質又は部分的に結晶質のポリエステルである、吸収性ポリエステル。
【請求項9】
請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法を用いて浄化された吸収性ポリエステルにおいて、前記吸収性ポリエステルは、ラクチド(L‐ラクチド、D‐ラクチド、DL‐ラクチド、メソ‐ラクチド)、グリコリド、トリメチレンカーボネート、ε‐カプロラクトン、γ‐ブチロラクトン、ジオキサノン、δ‐バレロラクトン及び(又は)これらに類似した重合性複素環式化合物及び(又は)ポリエチレングリコールに由来する1つ又は2つ以上の単位を含む、吸収性ポリエステル。
【請求項10】
請求項1〜7のうちいずれか一に記載の方法を用いて浄化された吸収性ポリエステルにおいて、前記吸収性ポリエステルは、任意所望の組成をもつラクチド及びグリコリドのコポリマー及び(又は)任意所望の組成をもつポリエチレングリコールで構成されている、吸収性ポリエステル。
【請求項11】
残留モノマー含有量は、1%未満である、請求項8〜10のうちいずれか一に記載の吸収性ポリエステル。
【請求項12】
前記溶剤及び(又は)湿分は、2%未満である、請求項8〜10のうちいずれか一に記載の吸収性ポリエステル。
【請求項13】
医薬調合物又は吸収性インプラントの製造のための請求項8〜12のうちいずれか一に記載の吸収性ポリエステルの使用。
【請求項14】
吸収性ポリエステルを浄化する浄化装置であって、前記浄化装置は、その主要コンポーネントとして、このポリマーを第1の溶剤(12)中で溶解させる溶解容器(10)と、ポリマー懸濁液から湿った状態のポリマー塊状体を分離する分離装置と、前記ポリマー塊状物を乾燥させる乾燥機(90)とを有する、浄化装置において、前記分離装置は、回転式円筒形スクリーン本体(71)を有するドラム型剪断スクリーン(70)として構成されている、浄化装置。
【請求項15】
前記円筒形スクリーン本体(71)は、その内部に、コンベヤレール及び(又は)案内羽根(72)を有する、請求項14記載の浄化装置。
【請求項16】
前記ドラム型剪断スクリーン(70)は、前記回転式円筒形スクリーン本体(71)の上方で上部ハウジングカバー(76)に設けられた吸引装置(74)を有し、前記吸引装置は、特に吸引ノズルを備えている、請求項14記載の浄化装置。
【請求項17】
前記乾燥機(90)は、流動層乾燥機、循環空気乾燥機、又はチューブラフロー乾燥機である、請求項14〜16のうちいずれか一に記載の浄化装置。
【請求項18】
前記乾燥機(90)は、円錐形部分(95)及び円筒形部分(96)を有する、請求項14〜17のうちいずれか一に記載の浄化装置。
【請求項19】
前記乾燥機(90)は、前記円筒形部分(96)の内部に、少なくとも1つのスクリーンインサート(94)を有する、請求項14〜18のうちいずれか一に記載の浄化装置。
【請求項20】
前記乾燥機(90)は、浄化された前記吸収性ポリエステルを収集するフィルタバッグ(92)を有する、請求項14〜19のうちいずれか一に記載の浄化装置。
【請求項21】
前記乾燥機(90)は、自在軸受(93)を備えている、請求項14〜20のうちいずれか一に記載の浄化装置。
【請求項22】
前記ドラム型剪断スクリーン(70)及び前記乾燥機(90)の少なくとも材料案内部分は、ステンレス鋼で作られている、請求項14〜21のうちいずれか一に記載の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−526200(P2010−526200A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506903(P2010−506903)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055408
【国際公開番号】WO2008/135523
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】