説明

吸収性ポリマ組成物、インプラントおよびインプラントの製造方法。

【課題】医療用インプラントの製造に有用な新規のポリマ組成物、骨形成特性を有するインプラント、およびインプラントの製造方法を提供。
【解決手段】ポリマ組成物は、吸収性ポリマ(類)またはコポリマ(類)のポリママトリックスを有する基材と、グリセロールモノ、ジまたはトリエステル誘導体とを含み、グリセロールモノ、ジまたはトリエステル誘導体は、組成物に骨形成特性を付与する量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラントの製造において有用な新規のポリマ組成物に関するものである。さらに具体的には、本発明の実施例は、骨形成特性を有するポリマ組成物に関するものである。ポリマ組成物は、生分解性または生体吸収性であり、生体中に移植するための医療用インプラントに成形することができる。骨形成特性を有するインプラントおよびインプラントの製造方法も開示する。
【背景技術】
【0002】
骨の治癒過程は、事象の複雑なカスケードである。血液の損失を抑え、細胞遊走を開始し、その結果、修復が行われるように、迅速で多岐にわたる事象が骨折または骨切断によって活性化される。最近の考え方によると、これらの細胞の事象の大部分は、骨折部位での適切なサブセットの細胞の遊走、増殖および分化を誘導する成長因子、すなわち低分子量糖蛋白質によって制御されていることが示唆されている。
【0003】
詳細な事がかなり分かっているにもかかわらず、骨治癒は全体としてはいまだにその課程は少ししか理解されていない。この不足する情報および実験データに基づいて、機械的刺激、電磁場、低強度超音波、骨伝導材料、たとえばヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(TCP)、生理活性ガラス等、および成長因子などの骨誘導材料などの骨の成長を高めるいくつかの方法が研究によって明らかにされている。
【0004】
骨誘導とは、何らかの物質あるいは刺激等が、骨形成過程を生じさせる細胞応答を開始または亢進している過程である。成長因子はこの作用を有することが知られている広いグループの分子である。最近の知見によれば、骨形成蛋白質(BMP)は、未分化間葉細胞の骨芽細胞への分化を誘導することによって、異所性に骨形成を誘導することが分かっている唯一の成長因子である。ゆえに、いくつかのBMPが、補足的用量を投与した時、骨治癒過程を加速することが示されている。
【0005】
たとえば、特許文献1において、BMPなどの種々の治療薬のデリバリシステムとしての生分解性フィルム包帯剤が開示されている。治療薬は、一定の制御された放出速度でフィルム包帯剤から放出される。しかしながら、BMPは遺伝子工学によって製造されていて、まだかなり高価である。また、BMPの正しい用量の放出は困難で、将来に向かっての大きな課題を提示している。
【0006】
公知の材料、方法およびインプラントは高価で、そのような材料、方法およびインプラントの利用は、抑制されている。
【0007】
特許文献2において、GBRで生分解性ポリマが使用できる程度に、公知の可塑剤、すなわちN-メチル-2-ピロリドン(NMP)で処理することにより、生分解性ポリマの硬さを柔らかくし、その柔軟性が高められることが開示されている。さらに、NMP自体が、予期せぬ骨形成誘導作用を有していることが開示されている。
【0008】
特許文献3において、固形生分解性インプラントを生体中の本来の場所に形成するための、流動性のある組成物が開示されている。この組成物は、非ポリマで非水溶性の生分解性材料および生体適合性溶媒、たとえばNMPを含んでいて、さらにグリセロールトリアセテート(トリアセチン)などの放出速度変更剤も含んでいてもよい。制御された放出インプラントとして適した非ポリマシステムも開示されている。トリアセチンの骨形成誘導作用の可能性については記述または示唆はされていない。
【0009】
特許文献4において、モノリシック骨の治療のための方法が開示され、この方法では、たとえば、モノアセチンおよびトリアセチンなどのポリヒドロキシエステル類が機械的強度を維持する薬剤として使用されている。これらのエステル類の骨形成誘導作用の可能性について記述または示唆はされていない。
【特許文献1】米国特許第5,725,491号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003-0104029 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第5,888,533号明細書
【特許文献4】米国特許出願第6,162,258号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の欠点を軽減するような、骨形成特性を有する新規な吸収性ポリマ組成物を提供することである。他の目的は、骨形成特性を有する新規な吸収性インプラントを提供することである。さらに別の目的は、骨形成特性を有する吸収性インプラントを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、吸収性ポリマ(類)またはコポリマ(類)のポリママトリックスを含む基材と、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステル、とくにグリセリルトリアセテート、すなわち、トリアセチンなどの1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールジまたはトリエステルとを含む吸収性インプラント、吸収性インプラントを製造する方法、および吸収性ポリマ組成物を提供することによって達成される。ここでは、「トリアセチン」および「ジアセチン」という一般用語は、それぞれグリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートの代わりに使用されている。
【0012】
本発明の1つの実施例によれば、ポリママトリックスは、ポリ乳酸/ポリグリコール酸/トリメチレンカーボネートコポリマ(PLA/PGA/TMC)を80/10/10の割合で含んでいる。
【0013】
本発明の他の実施例によれば、ポリママトリックスは、ポリD,L-乳酸/ポリL-乳酸/トリメチレンカーボネートコポリマ(PLDLA/PLA/TMC)を55/40/5の割合で含んでいる。
【0014】
本発明の第3の実施例によれば、ポリママトリックスは、80重量%P(L/DL)LA(70/30)および20重量%PLLA/TMC(70/30)を含んでいる。
【0015】
本発明の第4の実施例によれば、インプラントは膜である。
【0016】
本発明の方法の1つの実施例によれば、本方法は次の段階を含む。すなわち、インプラントのポリママトリックスのポリマ(類)またはコポリマ(類)を選択し、ポリママトリックスを形成するためにポリマ(類)またはコポリマ(類)を混合し、ポリママトリックスからインプラントを成形し、インプラントに骨形成特性を付与する量で、1〜6個の炭素を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルをインプラントに添加する段階を含む。本発明の方法のとくに好ましい実施例では、1〜4個の炭素原子、さらに好ましくは2〜3個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールジおよびトリエステル、すなわちグリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートなどの酢酸およびプロピオン酸、および最も好ましくはグリセリルトリアセテート、すなわちトリアセチンを有するカルボン酸を持つグリセロールジおよびトリエステル類が用いられている。
【0017】
本発明の方法の他の実施例によれば、本方法は次の段階を含む。すなわち、インプラントのポリママトリックスのポリマ(類)またはコポリマ(類)を選択し、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルを、インプラントに骨形成特性を付与する量で、ポリママトリックスに添加し、前記ポリママトリックスおよび前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルの混合物からインプラントを成形する段階を含む。本発明の方法のとくに好ましい実施例において、1〜4個の炭素原子、さらに好ましくはグリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートなどの2〜3個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールジおよびトリエステル、および最も好ましくはグリセリルトリアセテート、すなわちトリアセチンが用いられる。
【0018】
本発明の方法の1つの実施例によれば、グリセロールモノ、ジまたはトリエステル誘導体は、当業者には自明の従来の方法で化学的にインプラントに結合し、時間がたてば、モノ、ジまたはトリアシルグリセロールとして放出される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリマ組成物、インプラントおよび方法の利点は、骨治癒を高める公知の方式と比較して、実質的に安価な生成物が得られることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明について以下に、添付図面を参照して好ましい実施例により詳細に説明する。
【0021】
本発明は、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステル、好ましくは1〜4個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールジまたはトリエステル、さらに好ましくはグリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートなどの2〜3個の炭素原子を有するもの、および最も好ましくはグリセリルトリアセテート、すなわちトリアセチンと、吸収性ポリマまたはコポリマとの組合せに関するものである。本発明は、吸収性マトリックス材料と公知の可塑材、すなわちグリセリルトリアセテートまたはトリアセチンを一定の比率で結合することによって、骨形成特性を有するインプラントが達成されるという予期せぬ認識に基づいている。このように、インプラントはポリマ組成物の骨形成特性により骨の成長を誘導し、骨切断および骨折後の骨の治癒を高める。
【0022】
インプラントの形は、膜、フィルム、プレート、メッシュプレート、ねじ、タップまたは他の成形された部品を含むが、それに限定されない。
【0023】
インプラントは次の物より製造することができる。たとえばポリグリコール酸、ポリ乳酸類、ポリカプロラクトン類、ポリトリメチレンカーボネート類、ポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシペンタン酸類、ポリジオキサノン類、ポリオルトエステル類、ポリカーボネート類、ポリチロシンカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリアルキレンオキサレート類、ポリアルキレンスクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリペプチド類、ポリデプシペプチド類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール類、ポリエステルアミド類、ポリアミド類、ポリ無水物類、ポリウレタン類、ポリホスファゼン類、ポリシアノアクリレート類、ポリフマラート類、ポリ(アミノ酸類)、変性ポリサッカリド類(たとえば、セルロース、デンプン、デキストラン、キチン、キトサン等)、変性蛋白質類(たとえば、コラーゲン、カゼイン、フィブリン等)、およびそれらのコポリマ類、ターポリマ類、またはそれらの組合せまたは混合物またはポリマブレンドである。ポリグリコール酸、ポリ(L-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(L-乳酸-co-D,L-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(L-乳酸-co-カプロラクトン)、ポリ(D,L-乳酸-co-カプロラクトン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリ(L-乳酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-乳酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノンおよびそれらのコポリマ類、ターポリマ類およびポリマブレンド類は、非常に好ましいポリマ類である。
【実施例1】
【0024】
ポリ乳酸/ポリグリコール酸/トリメチレンカーボネートコポリマ(PLA/PGA/TMC)の粒を、80/10/10の割合で加圧成型することにより、0.2mmの厚さのフィルムを形成した。用いられた加圧温度は、180℃で、圧力は、130バールであった。フィルムから5個の矩形の部品を切り出した。
【0025】
個々のフィルム部品の重量を、1mgの精度の天秤で測った。その後、フィルム部品を、個々にトリアセチンに24時間浸した。浸した後、残りのトリアセチンを除去し、フィルム部品を20分間、空気で乾燥し、部品の重量を再度測定した。
【0026】
トリアセチンでの浸潤の前後のフィルム部品の重量を表1に示す。高分子フィルム中に拡散したトリアセチンの平均量は50.1%であった。
【0027】
【表1】

ここに記載した方法で製造したGTR膜を、実施例2に開示したラットによる比較研究で用いた。
【実施例2】
【0028】
このラットによる研究は、トリアセチンで処理した時のPLA/PGA/TMCおよびPLDLA/PLA/TMC膜の骨形成効果を示す。試験した膜の詳細は、次の表2からわかる。
【0029】
【表2】

研究計画には、それぞれ8mmの人為的開頭欠損を持つ4匹のラットが含まれていた。欠損を生分解性膜で処理した。吸収性膜のマトリックスを表2に示す。
【0030】
手術後5週間目にラットを殺し、頭蓋冠骨切除を行った。骨の再生をX線写真で測定した。
【0031】
図1Aから図1Cは、トリアセチンで処理した膜は、X線写真で測定された骨再生を増進させることを示す結果を表す。
【実施例3】
【0032】
本発明の方法の1つの実施例によれば、トリアセチンなどの1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルを、すでに医療用インプラントの形に成形されているポリママトリックスに加える。
【0033】
ポリマ組成物は、市販の粒状基材を市販のコポリマ添加物と乾燥混合することによって製造した。材料の組成は、80重量%P(L/DL)LA(70/30)および20重量%PLLA/TMC(70/30)であった。組成物を、所望の重量比に従って重量を測って容器に入れ、その後、容器をTurbula T2Fシェーカミキサで、均一な乾燥混合物が得られるまで30分間回転させた。その後、得られた混合物を60℃で8〜12時間、真空中で乾燥し、その後溶融混合および射出成形により、プレート形試験片を成型した。用いた射出成形機は、300kNの成形型締力を持つ全電動のFanuc Roboshot Alpha i30A射出成形機であった。射出ユニットには、高速(最大66cm3/秒〜330mm/秒)、高圧力(最大2500バール)の射出オプションが備え付けられていた。胴の直径は16mmで、それには、3バンドヒータゾーン、標準形状非腐食ねじ、および2.5mmの穴のある標準開口ノズルが備え付けられていた。工程の計量段階の間における材料の押出し溶融混合および均質化の条件には、40〜60バールの背圧、60〜100rpmのスクリュー速度および160〜230℃の胴温度が含まれていた。射出成形条件には、180〜230℃のノズル温度、80〜300mm/秒の射出速度、2500バールの最大射出圧力、3〜8秒間の1000〜2300バールのパック圧力、10〜22秒の冷却時間、および20〜30℃の成型温度が含まれていた。全体のサイクル時間は、1つの射出成形工程サイクルの間が、次の段階から成る20〜40秒であった。すなわち、型を閉じる、解けた溶融ポリマの型への投入、パック圧力、冷却段階の間に次のサイクルのために押出機を測定している間の冷却、型を開く、および型からの物の放出である。
【0034】
プレートを、25kGyの標準線量でガンマ線照射により殺菌した。殺菌後、プレート全体または矩形部分を、24時間トリアセチン(1,2,3-トリアセトキシプロパン、1,2,3-トリアセチルグリセロール、>98.5%、Sigma Inc., 米国)に沈めた。吸収性ポリママトリックスは、トリアセチンに浸されている時にトリアセチンを吸収する。インキュベーションの次に、残りのトリアセチンを排出するように、膜をホルダに置く。その後、トリアセチンを詰めたインプラントを生体に移植すると、トリアセチンは一定時間の間にゆるやかに放出される。もし放出速度が適切なら、トリアセチンは骨形成特性を持っている。ほとんどの薬剤と同様に、トリアセチンの濃度は治療ウインドウと呼ばれる一定の限度内でなければならない。ウインドウより下ではトリアセチンは、効果がない。同様にウインドウより上では、トリアセチンは、ある種の蛋白質、他の分子または細胞株を阻害することによって悪い現象を示す。トリアセチンの含量は、好ましくは0.05重量%と60重量%との間で、さらに好ましくは10重量%と50重量%との間である。
【0035】
本発明の方法の1つの好ましい実施例によれば、ポリママトリックスを医療用インプラントの形に成形する前に、トリアセチンなどの1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルを、ポリママトリックスまたはその成分の1つと混合する。混合は押出機、混合機、またはそれ自体は公知の同様の装置で行うことができる。
【0036】
製造工程で、トリアセチンがすでに入っている容器に当該インプラントを詰めることによって、トリアセチンをインプラントに加えることもできる。当該容器で保管している間に、トリアセチンは、インプラントのポリママトリックスに吸収される。
【0037】
本発明のポリマ組成物は、射出成形、圧縮成形、押出し、または他の当業者に知られている溶融成形法によって、インプラントに成形できる。
【実施例4】
【0038】
実施例4は、本発明の1つの好ましい実施例を示し、ここでは、インプラントは、歯周欠損を治療するための組織再生誘導(GTR)におけるバリア膜である。
【0039】
膜は、PLA/PGAマトリックスポリマ類を含んでいる。膜は、プラスチックブリスタなどのパッケージのスロットに詰められている。トリアセチンで前もって浸した膜を作るための製造において、または次のような外科手術の1つの段階として、膜の準備が行われる。
1. パッケージを開いた後に、適当量のトリアセチンを膜スロットに注ぐ。膜を、適切な期間、たとえば5分〜10分、好ましくは60分間、トリアセチンに完全に浸す。
2. 膜をスロットより取り出す。
3. 残りのトリアセチンを拭い去る。
4. 歯肉軟部組織が欠損側を満たすことを防ぐために、歯肉軟部組織と、治癒している骨組織および/または歯周組織との間のバリアとして、膜を用いる準備ができている。通常の手術室の温度および湿度の条件では、膜は、数時間は展性を維持している。
【実施例5】
【0040】
種々の可塑材の骨形成効果をトリアセチンのそれと比較するために、MC3T3-E1細胞を、10%胎児子牛血清(Life Technologies, Inc., Grand Island、ニューヨーク)、50μg/mlゲンタマイシンおよび50μg/mlアスコルビン酸を含有するアルファ修飾最小必須培地(Life
Technologies, Inc.)で生育させた。この細胞株に対するトリアセチンの作用を調べるために、1ウエル当り1x105 細胞を6ウエルプレートに植え、それに続いてトリアセチンを加えた。培地の交換は3日後に行い、アルカリホスファターゼ(ALP)をLowry, O.、等[J. Biol. Chem. 207 (1954) 19〜37頁]に従って測定した。400μlの 1M NaOHを加えることにより、遊離した p-ニトロフェノールを p-ニトロフェニレート(p-nitorophenylate)に変換し、これを、410nm(epsilon=17500/molxcm)で吸光度を測定することにより定量した。アルカリホスファターゼ活性を全ての蛋白質について正規化し、mg蛋白質当り1分間に生成する nmolニトロフェニレートとして表現した。
【0041】
MC3T3-E1細胞を、異なった溶媒の増加する量で処理し、6日後にMC3T3-E1細胞の成熟に対する効果を、アルカリホスファターゼ活性により測定した。結果を図2に示す。
【0042】
MC3T3-E1細胞の成熟は、0から6mMの範囲で加えられたトリアセチンの量に対して、濃度に依存して増加した。メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)のような、他の溶媒は、前骨芽細胞の成熟に対して明確な効果を示さなかった。
【0043】
本発明のインプラントは、たとえば、骨再生誘導での適用に利用でき、骨再生誘導では、新しい骨形成が必要とされている部位で、軟部組織内部成長または筋肉脱出を避けて骨再生を高めるために、トリアセチン付加バリア膜の効果が必要である。
【0044】
技術の進歩に伴い、本発明の概念はさまざまな方法で実施可能であるということは、当業者には明白である。本発明およびその実施例は、上記の実施例に制限されるものではなく、特許請求の範囲内でさまざまに変化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1Aは、臨界サイズの欠損が処置せずに残ったラットの頭蓋冠骨のX線写真を示し、図1Bは、前記欠損を(PLA/PGA/TMC)80/10/10膜で覆ったラットの頭蓋冠骨を示し、図1Cは、前記欠損を(PLA/PGA/TMC)80/10/10膜で覆い、実施例1で説明したようにトリアセチンで処理したラットの頭蓋冠骨を示している。
【図2】図2は、前骨芽細胞のアルカリリン酸エステル活性に対する種々の溶媒の作用を、トリアセチンと比較して示す。
【符号の説明】
【0046】
EtOH エタノール
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
MetOH メタノール
TA トリアセチン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性ポリマ組成物において、該組成物は、
吸収性ポリマまたはコポリマのポリママトリックスを含む基材と、
1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルとを含み、
前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、該組成物に骨形成特性を付与する量であることを特徴とする吸収性ポリマ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の吸収性ポリマ組成物において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、グリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートから選ばれることを特徴とする吸収性ポリマ組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の吸収性ポリマ組成物において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルがグリセリルトリアセテートであることを特徴とする吸収性ポリマ組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の吸収性ポリマ組成物において、前記ポリママトリックスは、ポリエチレングリコール類、ポリグリコール酸、ポリ乳酸類、ポリカプロラクトン類、ポリトリメチレンカーボネート類、ポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシペンタン酸類、ポリジオキサノン類、ポリオルトエステル類、ポリカーボネート類、ポリチロシンカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリアルキレンオキサレート類、ポリアルキレンスクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリペプチド類、ポリデプシペプチド類、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド類、ポリアミド類、ポリ無水物類、ポリウレタン類、ポリホスファゼン類、ポリシアノアクリレート類、ポリフマラート類、ポリ(アミン酸類)、変性ポリサッカリド類、変性蛋白質類、およびそれらのコポリマ類、ターポリマ類、またはそれらの組合せまたは混合物またはポリマブレンド類から成るグループより選ばれることを特徴とする吸収性ポリマ組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の吸収性ポリマ組成物において、前記ポリママトリックスは、
ポリグリコール酸、ポリ(L-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(L-乳酸-co-D,L-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(L-乳酸-co-カプロラクトン)、ポリ(D,L-乳酸-co-カプロラクトン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリ(L-乳酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-乳酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノンおよびそれらのコポリマ類、ターポリマ類またはそれらの組合せまたは混合物またはポリマブレンド類から成るグループより選ばれることを特徴とする吸収性ポリマ組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の吸収性ポリマ組成物において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、0.05重量%と60重量%との間の量であることを特徴とする吸収性ポリマ組成物。
【請求項7】
骨形成特性を有する吸収性インプラントにおいて、該吸収性インプラントは、吸収性ポリマまたはコポリマのポリママトリックスを含む基材と、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルとを含むことを特徴とする吸収性インプラント。
【請求項8】
請求項7に記載の吸収性インプラントにおいて、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、グリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートより選ばれることを特徴とする吸収性インプラント。
【請求項9】
請求項7に記載の吸収性インプラントにおいて、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、グリセリルトリアセテートであることを特徴とする吸収性インプラント。
【請求項10】
請求項7に記載の吸収性インプラントにおいて、前記ポリママトリックスは、ポリグリコール酸、ポリ乳酸類、ポリカプロラクトン類、ポリトリメチレンカーボネート類、ポリヒドロキシブチレート類、ポリヒドロキシペンタン酸類、ポリジオキサノン類、ポリオルトエステル類、ポリカーボネート類、ポリチロシンカーボネート類、ポリオルトカーボネート類、ポリアルキレンオキサレート類、ポリアルキレンスクシネート類、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリペプチド類、ポリデプシペプチド類、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド類、ポリアミド類、ポリ無水物類、ポリウレタン類、ポリホスファゼン類、ポリシアノアクリレート類、ポリフマラート類、ポリ(アミノ酸類)、変性ポリサッカリド類、変性蛋白質、およびそれらのコポリマ類、ターポリマ類、またはそれらの組合せまたは混合物またはポリマブレンド類から成るグループより選ばれることを特徴とする吸収性インプラント。
【請求項11】
請求項7に記載の吸収性インプラントにおいて、前記ポリママトリックスは、ポリグリコール酸、ポリ(L-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(L-乳酸-co-D,L-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(L-乳酸-co-カプロラクトン)、ポリ(D,L-乳酸-co-カプロラクトン)、ポリトリメチレンカーボネート、ポリ(L-乳酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-乳酸-co-トリメチレンカーボネート)、ポリジオキサノンおよびそれらのコポリマ類、ターポリマ類またはそれらの組合せまたは混合物またはポリマブレンド類から成るグループより選ばれることを特徴とする吸収性インプラント。
【請求項12】
請求項7に記載の骨形成特性を有する吸収性インプラントにおいて、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、0.05重量%と50重量%との間の量であることを特徴とする骨形成特性を有する吸収性インプラント。
【請求項13】
骨形成特性を有するインプラントの製造方法において、該製造方法は、
該インプラントのポリママトリックスのポリマ(類)またはコポリマ(類)を選択する段階と、
該ポリママトリックスに、1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルを、前記インプラントに骨形成特性を付与する量で加える段階と、
前記ポリママトリックスおよび前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルの混合物からインプラントを形成する段階とを含むことを特徴とするインプラントの製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルはグリセリルトリアセテートであることを特徴とするインプラントの製造方法。
【請求項15】
骨形成特性を有するインプラントの製造方法において、該インプラントの製造方法は、
該インプラントのポリママトリックスのポリマ(類)またはコポリマ(類)を選択する段階と、
該ポリママトリックスを形成するために該ポリマ(類)またはコポリマ(類)を混合する段階と、
該ポリママトリックスから前記インプラントを形成する段階と、
1〜6個の炭素原子を有するカルボン酸を持つグリセロールモノ、ジまたはトリエステルを前記インプラントに、該インプラントに骨形成特性を付与する量で加える段階とを含むことを特徴とするインプラントの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルを、グリセリルトリアセテートおよびグリセリルジアセテートより選ぶことを特徴とするインプラントの製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルは、グリセリルトリアセテートであることを特徴とするインプラントの製造方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステルはトリアセチンであり、グリセリルトリアセテートを手術前に前記インプラントに加えることを特徴とするインプラントの製造方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、前記グリセロールモノ、ジまたはトリエステル誘導体を前記インプラントに化学的に結合させることを特徴とするインプラントの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−314795(P2006−314795A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131658(P2006−131658)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(505287232)ザ ユニバーシティ オブ チューリッヒ (4)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF ZURICH
【Fターム(参考)】